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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20221025BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20221025BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20221025BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20221025BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20221025BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20221025BHJP
   H01M 50/477 20210101ALI20221025BHJP
   H01M 50/486 20210101ALI20221025BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M50/474
H01M50/184 C
H01M50/186
H01M50/105
H01M50/477
H01M50/486
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018133044
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020013637
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】垣内 孝宏
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-044920(JP,A)
【文献】特開2017-147222(JP,A)
【文献】特開2004-039271(JP,A)
【文献】国際公開第2012/036153(WO,A1)
【文献】特開2003-092132(JP,A)
【文献】特開2018-029041(JP,A)
【文献】特開2010-205633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0585
H01M 50/471-50/486
H01M 50/584
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含む非結着体からなる正極活物質層が正極集電体の表面に形成されてなる正極と、負極活物質を含む非結着体からなる負極活物質層が負極集電体の表面に形成されてなる負極とが、電解質層を介して積層されてなる積層体と、
前記積層体を覆って密封する外装体と、
前記積層体の端部と前記外装体との間に配置された緩衝部材と、を有し、
前記積層体は、前記正極集電体および前記負極集電体の縁部に沿って枠状に配置された枠体をさらに有し、
前記緩衝部材は、前記枠体の外側に配置され、
前記正極活物質層および前記負極活物質層は、前記枠体の内側に、前記枠体との間に隙間を設けて配置される、電池。
【請求項2】
前記外装体は、角部を有し、
前記緩衝部材は、前記外装体の前記角部に配置される、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記積層体と接触する複数の接触面を有する、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
前記外装体の少なくとも一部は、前記積層体を収容するための凹部が形成されたカップ形状を有し、
前記緩衝部材は、前記外装体のカップ形状の開口部側の厚さが底部側の厚さよりも厚くなるように形成される、請求項1~3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記緩衝部材は、樹脂材料を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記積層体の外形は、積層方向から見て4つの角部を備える矩形形状を有し、
前記緩衝部材は、前記積層体の4つの前記角部のそれぞれに配置され、
前記積層方向から見た前記積層体の長辺および短辺が前記外装体と接している、請求項1に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギー問題の解決へ向けて、種々の電気自動車の普及が期待されている。これら電気自動車の普及の鍵を握るモータ駆動用電源などの車載電源として、電池の開発が鋭意行われている。電池は、例えば特許文献1に開示されているように正極と負極とが電解質層を介して積層されてなる発電要素を外装体に収容して構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-103123号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池を車載電源として用いた場合、電池には振動入力が加わる。このとき、発電要素が外装体の内部で振動することによって、発電要素と外装体との間に擦れが生じ、外装体が摩耗劣化する可能性がある。特に、電池の体積エネルギー密度を高めるために電極の電極活物質層を厚膜化した場合、発電要素の質量が大きくなるため発電要素の振動によって外装体が劣化する問題がより顕著となる。
【0005】
また、本発明者らが検討を行ったところ、電極活物質層を厚膜化した電極を製造する場合、電極活物質スラリーを乾燥させてバインダを結晶化させる工程において電極活物質層にひび割れが生じる場合があることが判明した。電極活物質層のひび割れは電池性能を大きく低下させる原因となりうる。そこで本発明者らは、このようなひび割れの発生を防止するため、バインダによって結着されていない(すなわち、非結着体からなる)電極活物質層が集電体の表面に配置された電極を用いることについて検討を進めた。
【0006】
そこで本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、振動入力による外装体の劣化を抑制できる電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る電池は、正極と負極とが電解質層を介して積層されてなる積層体と、前記積層体を覆って密封する外装体と、前記積層体の端部と前記外装体との間に配置された緩衝部材と、を有する。ここで、前記正極は、正極活物質を含む非結着体からなる正極活物質層が正極集電体の表面に形成されてなる。前記負極は、負極活物質を含む非結着体からなる負極活物質層が負極集電体の表面に形成されてなる。前記積層体は、前記正極集電体および前記負極集電体の縁部に沿って枠状に配置された枠体をさらに有する。前記緩衝部材は、前記枠体の外側に配置される。前記正極活物質層および前記負極活物質層は、前記枠体の内側に、前記枠体との間に隙間を設けて配置される。
【発明の効果】
【0008】
上述のように構成された電池によれば、緩衝部材を配置することによって積層体の端部と外装体との間に生じる擦れを抑制し、振動入力による外装体の劣化を抑制できる。これにより、電池を車載電源に長期間使用しても外装体の機能が損なわれることなく、電池の長寿命化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電池の全体構造の概略を示す斜視図である。
図2図1のA-A線に沿う断面図である。
図3図2の一点破線で囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
図4図2のB-B線に沿う断面図である。
図5図4の一点破線で囲んだ部分を拡大して示す断面図である。
図6図1に示す電池の端部を示す部分断面図である。
図7】緩衝部材の斜視図である。
図8】変形例に係る電池の全体構造の概略を示す斜視図である。
図9図8のC-C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。
なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
<電池>
本発明の実施形態に係る電池の一例として非水電解質二次電池の1種である双極型リチウムイオン二次電池について説明する。ここで、双極型リチウムイオン二次電池とは、直列接続された双極型電極を含み、正極と負極との間をリチウムイオンが移動することで充電や放電を行う二次電池である。なお、本発明を適用する電池は双極型リチウムイオン二次電池に制限されない。例えば、本発明は、発電要素において電極が並列接続されてなる形式のいわゆる並列積層型電池などの従来公知の任意の二次電池にも適用可能である。以下の説明では、双極型リチウムイオン二次電池を単に「電池」と称する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る電池10の全体構造の概略を示す斜視図である。図2は、図1のA-A線に沿う断面図である。図1および図2に示すように、電池10は、外部からの衝撃や環境劣化から充放電反応に寄与する発電要素11を保護するために、発電要素11が外装体12の内部に封止された構造を有する。
【0013】
図1に示すように、電池10では、外装体12の内部で積層体11に隣接するように配置された正極集電板(正極タブ)34aおよび負極集電板(負極タブ)34bの一部が外装体12の外部へ導出している。
【0014】
図3は、図2の一点破線で囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図3に示すように、本実施形態の電池10の発電要素は、複数の単セル14が積層されてなる積層体11から構成される。以下、発電要素のことを「積層体11」とも称する。なお、単セル14の積層回数は、所望する電圧に応じて調節することが好ましい。本明細書では、複数の単セル14が積層される方向を「積層方向」と称し、図中に矢印Zで示す。また、積層方向Zに直交する平面を図中に矢印Xおよび矢印Yで示す。
【0015】
図4は、図2のB-B線に沿う電池10を積層方向から見た断面図である。図4に示す本形態では、積層体11の外形は、積層方向から見て4つの角部11aを備える略矩形形状を有する。ここで、「角部」とは、積層体11の外形を形成する2つの面のなす角を意味し、角形状に限定されず、丸み面や角面に面取りされた形状を有していてもよい。図4に示す本形態では、角部11aは、円弧形状の丸み面を有する。なお、積層体11の外形は、矩形形状に限定されず、積層方向から見て3つや5つ以上の角部11aを備える略多角形形状でもよいし、積層方向から見て角部11aを備えない円形や楕円形状でもよい。
【0016】
図2図4に示すように、積層体11の端部と外装体12との間には緩衝部材13が配置される。車載時には電池10に振動入力が入る。振動入力によって、積層体11の端部と外装体12との間に擦れが生じて、外装体12が摩耗により破損する可能性がある。本形態の電池10のように、積層体11の端部と外装体12との間に緩衝部材13を配置することによって、積層体11の端部と外装体12との間に生じる擦れを抑制し、振動入力による外装体12の劣化を抑制できる。これにより、電池10を車載電源に長期間使用しても外装体12の機能が損なわれることなく、電池10の長寿命化が可能となる。
【0017】
[外装体]
外装体12は、高出力化や冷却性能に優れ、EV、HEV用の大型機器用電池に好適に利用することができるという観点から、ラミネートフィルムによって構成することが好ましい。
【0018】
ラミネートフィルムは、例えば、金属層の両面に樹脂フィルムを積層した3層構造のラミネートシートから構成されうる。3層構造のラミネートシートのうち、積層体11側に配置される最内層の樹脂フィルムは、外装体12を封止する際に接着層として機能する。最内層の樹脂フィルムとしては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アイオノマー、エチレンビニルアセテート(EVA)などの熱融着性樹脂を用いて形成することができる。中間層の金属層は、例えばアルミニウム、ニッケルなどの箔状の金属を用いて形成することができる。最外層の樹脂フィルムは、外部からの衝撃や環境因子による腐食から金属層を保護する機能を有する。最外層の樹脂フィルムとしては、例えば剛性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロンなどを用いて形成することができる。上記の中でも、成形性や軽量化の観点から、外装体12を構成するラミネートフィルムとしては、金属層にアルミニウムを用いたアルミネートラミネートフィルムがより好ましく用いられる。
【0019】
図2に示すように、外装体12の少なくとも一部は、積層体11を覆うように収容するための凹部が形成されたカップ形状を有する。電池10の製造工程において、外装体12は、成形型を用いた絞り加工によってカップ形状に成形される。このため、外装体12の側面には、絞り加工する際に用いる成形型の抜き勾配に対応する傾斜面12Sが形成される。
【0020】
図1に示す本形態では、外装体12のカップ形状は、積層方向から見て積層体11の角部11aに対応する4つの角部12aを備える矩形形状を有する。なお、外装体12のカップ形状は、積層体11を収容できる限りにおいて特に限定されず、積層方向から見て3つや5つ以上の角部12aを備える略多角形形状でもよいし、積層方向から見て角部12aを備えない円形や楕円形状でもよい。
【0021】
外装体12の角部12aは、絞り加工による成形時に皺が発生しやすい。外装体12に皺が発生した部分は応力集中が起こりやすいため、皺を起点に亀裂が生じやすくなる。このため、外装体12の角部12aでは、振動入力によって積層体11との擦れが発生した場合、摩耗により破損しやすくなる。外装体12が3層構造のラミネートシートから構成される場合、外装体12の最内層の樹脂フィルムが破れて金属層が露出して電解液によって腐食したり、外装体12が破れて内部の真空状態を保持できなくなったりする可能性がある。
【0022】
外装体の摩耗による破損を防止するために、例えば、外装体を肉厚化したり、外装体をアルミニウムの鋳物や鋼板から構成したりすることが考えられるが、電池の製造コストが大幅に増加してしまう。
【0023】
本発明では、図1図3に示すように、積層体11の端部と外装体12との間に緩衝部材13を配置するという簡単な構成によって、積層体11と外装体12とが接触することを抑制できる。これによって、電池の製造コストを大幅に増加させることなく、積層体11の端部と外装体12との間に生じる擦れを抑制できる。
【0024】
[緩衝部材]
緩衝部材13は、積層体11の端部と外装体12との間に配置されて、両者の接触による擦れを抑制する。緩衝部材13は、積層体11の端部と外装体12との間に配置される限りにおいて、その配置は特に限定されないが、外装体12の少なくとも1つの角部12aに配置されることが好ましい。図4に示す本形態では、緩衝部材13は、外装体12の4つの角部12aに配置される。
【0025】
図5は、図4の一点破線で囲んだ部分を拡大して示す断面図である。図5に示すように、緩衝部材13は、積層体11と接触する複数の接触面S1を有する。緩衝部材13が2箇所以上の接触面S1で積層体11と接触しているため、緩衝部材13と積層体11との間の位置ずれを抑制できる。これにより、緩衝部材13の位置ずれによって積層体11と外装体12とが接触して擦れが生じることを抑制できる。
【0026】
緩衝部材13と積層体11との間の位置ずれをより確実に抑制する観点から、複数の接触面S1のうち、少なくとも2つの接触面S1は互いに交差するように形成されることが好ましい。図4および図5に示す本形態では、接触面S1は、積層体11の4つの角部11aを構成する面(XZ方向およびYZ方向に略平行な面)に接触するように形成される。これにより、緩衝部材13と積層体11との間のXY方向の位置ずれをより確実に抑制することができる。
【0027】
図6は、図1に示す電池10の端部を示す部分断面図である。図7は、緩衝部材13の斜視図である。図2および図6に示すように、緩衝部材13の外装体12と対向する側の表面13Sは、外装体12の成形型の抜き勾配に対応する傾斜面12Sに沿うように形成される。このため、緩衝部材13は、外装体12のカップ形状の開口部12H側の厚さt1は、底部12B側の厚さt2よりも厚くなるように形成されている。さらに、図6に示す本形態では、緩衝部材13は、積層体11の積層方向の外装体12のカップ形状の開口部12H側から底部12B側に向かって(図2図6の下方向に向かって)厚さが漸減するように形成されている。上記のように、緩衝部材13は、外装体12の成形型の抜き勾配に対応する傾斜面12Sに沿って配置されるため、外装体12と積層体11との間の隙間を埋めて、外装体12に密着して外装体12に皺が発生することを抑制できる。
【0028】
緩衝部材13を構成する材料としては、樹脂材料や絶縁処理が施された金属材料などが挙げられる。外装体12との擦れによって表面が摩耗した場合に絶縁性を確保する観点から、緩衝部材13を構成する材料は樹脂材料を含むことが好ましい。緩衝部材13を構成する樹脂材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、テフロン(登録商標)(PTFE)、ダイフロン(PCTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0029】
[単セル]
単セル14は、図3に示すように、正極29および負極59を電解質層40を介して積層して構成される。正極29は、正極活物質層30が正極集電体20の表面に配置されてなる。負極59は、負極活物質層50が負極集電体60の表面に配置されてなる。
【0030】
正極29および負極59は、集電体20、60の一方の面に電気的に結合した正極活物質層30が形成され、集電体20、60の他方の面に電気的に結合した負極活物質層50が形成された双極型電極を構成する。なお、図3では、集電体20、60は、正極集電体20および負極集電体60を組み合わせた積層構造(2層構造)として図示しているが、単独の材料からなる単層構造であってもよい。
【0031】
また、単セル14は、集電体20、60の表面の縁部に沿って配置された枠体80をさらに有する。枠体80の外側には、緩衝部材13が配置され、枠体80の内側には、電極活物質層30、50が配置される。なお、本明細書では、単セル14の面方向(図中のXY方向)の端部側を面方向の「外側」と称し、単セル14の面方向の中央側を面方向の「内側」と称する。
【0032】
単セル14のうち枠体80が配置された端部は質量が大きくなるため、曲げモーメントが大きくなる。また、単セル14の端部は、強固に支持されていない。このため、電池10に振動入力が加わった際に、単セル14の端部は振動しやすく、振幅も大きくなる。本形態では、図3に示すように枠体80の外側、すなわち、外装体12と枠体80との間に緩衝部材13を配置することによって、枠体80の振動によって起こる積層体11と外装体12との擦れを抑制することができる。
【0033】
[集電体]
集電体20、60は、正極活物質層30と接する一方の面から、負極活物質層50と接する他方の面へと電子の移動を媒介する機能を有する。集電体20、60を構成する材料は、特に限定されないが、例えば、導電性を有する樹脂や、金属が用いられうる。
【0034】
集電体20、60の軽量化の観点からは、集電体20、60は、導電性を有する樹脂によって形成された樹脂集電体であることが好ましい。なお、単セル14間のリチウムイオンの移動を遮断する観点からは、樹脂集電体の一部に金属層を設けてもよい。
【0035】
具体的には、樹脂集電体の構成材料である導電性を有する樹脂としては、導電性高分子材料または非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂が挙げられる。導電性高分子材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、およびポリオキサジアゾールなどが挙げられる。かような導電性高分子材料は、導電性フィラーを添加しなくても十分な導電性を有するため、製造工程の容易化または集電体の軽量化の点において有利である。
【0036】
非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレン(PE;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)など)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはポリスチレン(PS)などが挙げられる。かような非導電性高分子材料は、優れた耐電位性または耐溶媒性を有しうる。
【0037】
導電性フィラーは、導電性を有する物質であれば特に制限なく用いることができる。例えば、導電性、耐電位性、またはリチウムイオン遮断性に優れた材料として、金属および導電性カーボンなどが挙げられる。金属としては、特に制限はないが、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、白金、鉄、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、アンチモン、およびカリウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属もしくはこれらの金属を含む合金または金属酸化物を含むことが好ましい。また、導電性カーボンとしては、特に制限はない。好ましくは、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)、ブラックパール(登録商標)、カーボンナノファイバー、ケッチェンブラック(登録商標)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノホーン、カーボンナノバルーン、およびフラーレンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0038】
導電性フィラーの添加量は、集電体20、60に十分な導電性を付与できる量であれば特に制限はなく、好ましくは、5~35体積%程度である。
【0039】
また、集電体20、60が金属によって形成される場合は、金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。これらのほか、ニッケルとアルミニウムとのクラッド材、銅とアルミニウムとのクラッド材、またはこれらの金属のめっき材などが好ましく用いられうる。また、金属表面にアルミニウムが被覆されてなる箔であってもよい。なかでも、電子伝導性や電池作動電位、集電体20、60へのスパッタリングによる負極活物質の密着性等の観点からは、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケルが好ましい。
【0040】
[電極活物質層(正極活物質層、負極活物質層)]
電極活物質層30、50(正極活物質層30、負極活物質層50)は、電極活物質(正極活物質または負極活物質)を含む非結着体からなる。また、電極活物質層30、50は、必要に応じて、被覆剤(被覆用樹脂、導電助剤)、導電部材等を含んでもよい。さらに、電極活物質層30、50は、必要に応じてイオン伝導性ポリマー、リチウム塩等を含んでもよい。
【0041】
ここで、「電極活物質を含む非結着体からなる」とは、電極活物質が結着剤(バインダともいう)により互いの位置を固定されていない状態であることを意味する。また、活物質層が電極活物質の非結着体からなるか否かは、活物質層を電解液中に完全に含浸した場合に活物質層が崩壊するか否かを観察することで確認できる。
【0042】
電極活物質を含む非結着体からなる活物質層とするためには、活物質層を形成する際にスラリーからなる塗膜を乾燥させる工程を実質的に含まないようにする、といった手法が挙げられる。また、活物質層(活物質層を形成するためのスラリー)が実質的に結着剤を含まないようにする、といった手法によっても活物質を含む非結着体からなる活物質層を形成することができる。ここで、活物質層(活物質層を形成するためのスラリー)が実質的に結着剤を含まないとは、具体的には、結着剤の含有量が、活物質層(電極活物質スラリー)に含まれる全固形分量100質量%に対して、1質量%以下(下限0質量%)であることを意味する。当該結着剤の含有量は、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
【0043】
なお、本明細書において活物質層が実質的に含まないとする結着剤とは活物質粒子同士および活物質粒子と集電体とを結着固定するために用いられる公知の溶媒(分散媒)乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレンおよびスチレン-ブタジエンゴムが挙げられる。これらのリチウムイオン電池用結着剤は、水又は有機溶媒に溶解又は分散して使用され、溶媒(分散媒)成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質粒子同士および活物質粒子と集電体とを強固に固定する。
【0044】
(正極活物質)
正極活物質としては、例えば、LiMn、LiCoO、LiNiO、Li(Ni-Mn-Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの等のリチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム-遷移金属リン酸化合物、リチウム-遷移金属硫酸化合物などが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、リチウム-遷移金属複合酸化物が、正極活物質として用いられる。より好ましくはリチウムとニッケルとを含有する複合酸化物が用いられる。さらに好ましくはLi(Ni-Mn-Co)Oおよびこれらの遷移金属の一部が他の元素により置換されたもの(以下、単に「NMC複合酸化物」とも称する)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(以下単に、「NCA複合酸化物」とも称する)などが用いられる。NMC複合酸化物は、リチウム原子層と遷移金属(Mn、NiおよびCoが秩序正しく配置)原子層とが酸素原子層を介して交互に積み重なった層状結晶構造を有する。そして、遷移金属1原子あたり1個のLi原子が含まれ、取り出せるLi量が、スピネル系リチウムマンガン酸化物の2倍、つまり供給能力が2倍になり、高い容量を持つことができる。
【0045】
(負極活物質)
負極活物質としては、例えば、グラファイト(黒鉛)、ソフトカーボン、ハードカーボン等の炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物(例えば、LiTi12)、金属材料(スズ、シリコン)、リチウム合金系負極材料(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-アルミニウム-マンガン合金等)などが挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。好ましくは、容量、出力特性の観点から、炭素材料、リチウム-遷移金属複合酸化物、リチウム合金系負極材料が、負極活物質として好ましく用いられる。なお、上記以外の負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。また、(メタ)アクリレート系共重合体等の被覆用樹脂は特に炭素材料に対して付着しやすいという性質を有している。したがって、構造的に安定した電極材料を提供するという観点からは、負極活物質として炭素材料を用いることが好ましい。
【0046】
(導電助剤)
導電助剤は、被覆用樹脂とともに電極活物質の表面を被覆する被覆剤として用いられる。導電助剤は、被覆剤中で電子伝導パスを形成し、電極活物質層30、50の電子移動抵抗を低減することで、電池の高レートでの出力特性向上に寄与し得る。
【0047】
導電助剤としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン等の金属、これらの金属を含む合金または金属酸化物;グラファイト、炭素繊維(具体的には、気相成長炭素繊維(VGCF)等)、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック(具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等のカーボンが挙げられるが、これらに限定されない。また、粒子状のセラミック材料や樹脂材料の周りに上記金属材料をめっき等でコーティングしたものも導電助剤として使用できる。これらの導電助剤のなかでも、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ステンレス、銀、金、およびカーボンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、カーボンを少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。これらの導電助剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても構わない。
【0048】
導電助剤の形状は、粒子状または繊維状であることが好ましい。導電助剤が粒子状である場合、粒子の形状は特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であっても構わない。導電助剤が粒子状である場合の平均粒子径(一次粒子径)は、100nm以下であることが好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、導電助剤の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0049】
(導電部材)
導電部材は、電極活物質層30、50中で電子伝導パスを形成する機能を有する。特に、導電部材の少なくとも一部が、電極活物質層30、50の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成していることが好ましい。このような形態を有することで、電極活物質層30、50中の厚さ方向の電子移動抵抗がさらに低減されるため、電池の高レートでの出力特性をより一層向上しうる。なお、導電部材の少なくとも一部が、電極活物質層30、50の2つの主面同士を電気的に接続する導電通路を形成しているか否かは、SEMや光学顕微鏡を用いて電極活物質層30、50の断面を観察することにより確認することができる。
【0050】
導電部材は、繊維状の形態を有する導電性繊維であることが好ましい。具体的には、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレスのような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を、導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。なかでも、導電性に優れ、軽量であることから炭素繊維が好ましい。
【0051】
本実施形態の電池10において、電極活物質層30、50の厚さは、正極活物質層30については、好ましくは150~1500μmであり、より好ましくは180~950μmであり、さらに好ましくは200~800μmである。また、負極活物質層50の厚さは、好ましくは150~1500μmであり、より好ましくは180~1200μmであり、さらに好ましくは200~1000μmである。電極活物質層30、50の厚さが上述した下限値以上の値であれば、電池のエネルギー密度を十分に高めることができる。一方、電極活物質層30、50の厚さが上述した上限値以下の値であれば、電極活物質層30、50の構造を十分に維持することができる。
【0052】
上記のように、電池のエネルギー密度を高めるために電極活物質層30、50を厚膜化した場合、積層体11の質量が大きくなる。このため、電池10に振動入力が加わって積層体11が外装体12の内部で振動した際に、積層体11が外装体12に与える衝撃エネルギーが大きくなる。その結果、積層体11の端部と外装体12との間に擦れが発生して外装体12が破損する可能性が高くなる。よって、厚膜化した電極活物質層30、50を含む電池10に本発明を適用することによって、積層体11の端部と外装体12との間の擦れの発生を抑制して、上記問題を十分に抑制できるという本発明の効果がより顕著なものとなる。
【0053】
[電解質層]
電解質層40に使用される電解質は、特に制限はなく、液体電解質(電解液)、ゲルポリマー電解質などが制限なく用いられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保されうる。
【0054】
本形態では、電解質層にセパレータを用いてもよい。セパレータは、電解質を保持して正極29と負極59との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極29と負極59との間の隔壁としての機能を有する。特に電解質として液体電解質(電解液)を使用する場合には、セパレータを用いることが好ましい。セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータ等を挙げることができる。
【0055】
電解液(液体電解質)は、溶媒にリチウム塩が溶解した形態を有する。電解液を構成する溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類が挙げられる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsFLiClO、Li[(FSON](LiFSI)等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO、およびLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。
【0056】
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の電解液が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することで容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HEP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。
【0057】
ゲルポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
【0058】
[正極集電板および負極集電板]
集電板34a、34bを構成する材料は、特に制限されず、リチウムイオン二次電池用の集電板として従来用いられている公知の高導電性材料が用いられうる。集電板34a、34bの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス、これらの合金等の金属材料が好ましい。軽量、耐食性、高導電性の観点から、より好ましくはアルミニウム、銅であり、特に好ましくはアルミニウムである。なお、正極集電板34aと負極集電板34bとでは、同一の材料が用いられてもよいし、異なる材料が用いられてもよい。
【0059】
[枠体]
枠体80は、外形が集電体20、60の縁部の形状にほぼ等しい矩形枠状を有する。枠体80は、電解質層40と集電体20、60との間に配置されて両者の間隔を保持する。これにより、枠体80は、電極活物質層30、50の積層方向の厚さの変形を規制するスペーサ機能を発揮する。特に、高エネルギー密度の観点から厚膜化した非結着体からなる電極活物質層30、50は、乾燥電極に比べて柔らかく変形しやすい。電極活物質層30、50が変形すると内部抵抗が高くなって、電池性能が低下する可能性がある。このため、枠体80を配置することによって、電極活物質層30、50の変形を抑制し、変形に伴う電池性能の低下を抑制することができる。
【0060】
なお、図3に示す形態では、枠体80は、電解質層40と負極集電体60との間に配置しているが、これに限定されず、電解質層40と正極集電体20との間に配置してもよい。
【0061】
単セル14のうち枠体80が配置された端部は質量が大きくなるため、曲げモーメントが大きくなる。また、単セル14の端部は、強固に支持されていない。このため、電池10に振動入力が加わった際に、単セル14の端部は振動しやすく、振幅も大きくなる。
【0062】
また、電池10の製造工程では、枠体80を電解質層40に接合した組立体を形成した後に、該組立体を介して正極29および負極59を積層する。この際、正極29および負極59の電極活物質層30、50を枠体80の内側に配置するように積層するためには、電極活物質層30、50の面積を枠体80の内側の面積よりも小さく形成しておく必要がある。
【0063】
上記製造上の制約から、枠体80は、電極活物質層30、50との間に隙間を設けて配置される。このため、集電体20、60のうち電極活物質層30、50が配置された部分と枠体80が配置された部分との間は、剛性が急激に低下する変曲点となる。振動入力が加わった際に、当該変形点が折れ曲がりの起点(曲げモーメントの支点)となって、枠体80が配置された単セル14の端部が振動しやすくなる。これにより、枠体80と外装体12との間の擦れが発生しやすくなる。このため、本形態の電池10に本発明を適用することによって、積層体11の端部と外装体12との間の擦れの発生を抑制して、上記問題を十分に抑制できるという本発明の効果がより顕著なものとなる。
【0064】
枠体80を構成する材料としては、絶縁性、電解液に対する耐久性やシール性、電池動作温度やヒートシールの熱に対する耐熱性等を有するものであればよい。枠体80を構成する材料としては、例えば、絶縁材料または、表面に絶縁処理を施した導電性材料が採用されうる。
【0065】
絶縁材料としては、例えば、非導電性高分子材料が挙げられる。非導電性高分子材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネイト(PC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)のいずれか一つ以上を含む材料が挙げられる。また、上記の非導電性高分子材料とガラス繊維、カーボンナノファイバー、セルロースナノファイバー等の強化繊維とを組み合わせた複合材料などを用いてもよい。
【0066】
導電性材料としては、例えば、金属材料が挙げられる。金属材料としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、チタン、銅などが挙げられる。絶縁処理の方法は、特に限定されないが、例えば、上記金属材料の表面にポリオレフィン系の樹脂等を被覆する方法が挙げられる。
【0067】
図3に示すように、枠体80は、シール部材90を用いて集電体20、60および電解質層40に接合される。シール部材90は、正極活物質層30、負極活物質層50および電解質層40の周囲を液密に封止し、電解液の漏れによる液絡を防止している。
【0068】
シール部材90を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよい。例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴム(エチレン-プロピレン-ジエンゴム:EPDM)等が用いられうる。また、イソシアネート系接着剤や、アクリル樹脂系接着剤、シアノアクリレート系接着剤などを用いてもよく、ホットメルト接着剤(ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂)などを用いてもよい。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性等の観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層の構成材料として好ましく用いられ、非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とするエチレン、プロピレン、ブテンを共重合した樹脂を用いることが好ましい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態に係る電池10は、非結着体からなる電極活物質層30、50を含む積層体(発電要素)11と、積層体11を覆って密封する外装体12と、積層体11の端部と外装体12との間に配置された緩衝部材13と、を有する。
【0070】
上記構成を備える電池10によれば、積層体11の端部と外装体12との間に緩衝部材13を配置することによって、積層体11と外装体12とが接触することを抑制できる。これにより、積層体11の端部と外装体12との間に生じる擦れを抑制できる。その結果、振動入力による外装体12の劣化を抑制して、電池10を車載に長期間使用しても外装体12の機能が損なわれることなく、電池10の長寿命化が可能となる。
【0071】
また、積層体11は、集電体20、60の縁部に沿って枠状に配置された枠体80をさらに有する。緩衝部材13は、枠体80の外側に配置される。
【0072】
上記構成によれば、枠体80は、電極活物質層30、50の変形を抑制して、変形に伴う電池性能の低下を抑制できる。一方で、単セル14のうち枠体80が配置された端部は質量が大きくなるため、曲げモーメントが大きくなる。このため、電池10に振動入力が加わった際に、単セル14の端部は振動しやすく、振幅も大きくなる。上記構成のように枠体80の外側、すなわち、外装体12と枠体80との間に緩衝部材13を配置することによって、振動入力による枠体80の振動によって起こる積層体11と外装体12との擦れを抑制することができる。
【0073】
また、電極活物質層30、50は、枠体80の内側に、枠体80との間に隙間を設けて配置される。これにより、枠体80の内側に電極活物質層30、50を配置する作業が容易となるため、製造時間を短縮することができる。一方で、枠体80が配置された単セル14の端部が振動しやすくなるため、枠体80と外装体12との間の擦れが発生しやすくなる。したがって、外装体12と枠体80との間に緩衝部材13を配置することによって、積層体11の端部と外装体12との間の擦れの発生を抑制して、上記問題を十分に抑制できるという本発明の効果がより顕著なものとなる。
【0074】
また、外装体12は、複数の角部12aを有し、緩衝部材13は外装体12の少なくとも1つの角部12aに配置される。外装体12の角部12aは、外力が加わった際に応力が集中しやすく、成形時に皺が発生しやすいため、摩耗しやすい。したがって、摩耗しやすい外装体12の角部12aに緩衝部材13を配置することによって、外装体12の劣化をより確実に抑制できる。
【0075】
また、緩衝部材13は、積層体11と接触する複数(少なくとも2つ)の接触面S1を有する。緩衝部材13が2箇所以上の接触面S1で積層体11と接触しているため、緩衝部材13と積層体11との間の位置ずれを抑制できる。これにより、緩衝部材13の位置ずれによって積層体11と外装体12とが緩衝して振動入力による摩耗が生じることを抑制できる。
【0076】
また、外装体12の少なくとも一部は、積層体11を収容するための凹部が形成されたカップ形状を有する。緩衝部材13は、外装体12のカップ形状の開口部12H側の厚さt1が底部12B側の厚さt2よりも厚くなるように形成される。これにより、緩衝部材13は、外装体12の成形型の抜き勾配に対応する傾斜面12Sに沿って配置されるため、外装体12と積層体11との間の隙間を埋めて、外装体12に密着して外装体12に皺が発生することを抑制できる。
【0077】
また、緩衝部材13は、樹脂材料を含むことにより、絶縁体として機能させることができる。これにより、単セル14間が端部で短絡することを抑制できる。
【0078】
<変形例>
次に、図8および図9を参照して、変形例に係る電池の構成を説明する。なお、前述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0079】
図8は、変形例に係る電池の全体構造の概略を示す斜視図である。図9は、図8のC-C線に沿う断面図である。前述した実施形態では、緩衝部材を外装体12の角部12aおよび積層体11の角部11aに対応する箇所のみに配置していたが、変形例では、緩衝部材113が積層体11の端部の全周に配置される点において前述した実施形態と相違する。
【0080】
図8および図9に示す変形例に係る電池のように、積層体11の端部の全周に緩衝部材113を枠状に配置することによって、外装体12と積層体11との擦れをより確実に抑制できる。これにより、振動入力による外装体12の劣化をより確実に抑制して、電池を車載に長期間使用しても外装体12の機能が損なわれることなく、電池の長寿命化が可能となる。
【0081】
また、緩衝部材113は、積層体11の端部の全周に、積層体11と接触する複数の接触面S2を有する。このため、緩衝部材113と積層体11との位置ずれをより確実に抑制できる。
【0082】
図8および図9に示す形態では、4枚の板状の緩衝部材113を組み合わせることによって積層体11の周りに枠状に配置しているが、これに限定されず、例えば緩衝部材113を1つの枠状部材によって構成してもよい。
【0083】
以上、実施形態および変形例を通じて本発明に係る電池を説明したが、本発明は実施形態および変形例において説明した内容のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0084】
例えば、積層体は枠体を備える構成に限定されず、枠体を備えない構成としてもよい。
【0085】
また、枠体はシール部材を用いて集電体および電解質層に接合されるとしたが、これに限定されず、例えば、枠体自体をヒートシール可能な熱溶着剤等の材料によって構成することによってシール部材を省いた構造としてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 電池、
11 積層体(発電要素)、
11a 角部、
12 外装体、
12H 開口部、
12B 底部、
12S 傾斜面、
12a 角部、
13、113 緩衝部材、
14 単セル、
20 正極集電体、
29 正極、
30 正極活物質層、
40 電解質層、
50 負極活物質層、
59 負極、
60 負極集電体、
80 枠体、
90 シール部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9