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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】シンチレータパネルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20221025BHJP
   G01N 23/041 20180101ALI20221025BHJP
   G21K 4/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01N23/041
G21K4/00 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018140130
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020016562
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-03-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有本 直
(72)【発明者】
【氏名】進藤 浩通
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-227520(JP,A)
【文献】特開2016-001264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
G21K 4/00
G01N 23/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレータ層と非シンチレータ層が、放射線の入射方向に対して略平行方向に繰り返し積層された積層体を含むシンチレータパネルにおいて、前記積層体における各層の積層角が扇状に変化する傾斜構造を有し、かつ、各層の放射線源への外挿面が一本の線上で交差するシンチレータパネルの製造方法において、
シンチレータ層と非シンチレータ層を繰り返し積層する工程、
積層体の各層の積層角が扇状に変化するように、積層体を湾曲させる工程を有し、
前記シンチレータ層と非シンチレータ層の少なくともいずれかが、弾性率10GPa未満の有機材料を含有し、湾曲には上下一組となる湾曲治具を使用し、上下の湾曲治具間には、所定の円弧状(扇状)となるように、空隙が設けられ、上下の湾曲治具間に積層体を載置して、前記積層体を湾曲させ、
湾曲された構造を固定化する工程、
前記湾曲された構造を固定化したのち、前記積層体の上面と底面とが平行面となるようにスライスする工程を有することを特徴とする、シンチレータパネルの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タルボ・システムなどに好適な新規なシンチレータパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、X線画像診断では、X線の物体透過後の減弱を画像化する吸収画像が用いられている。一方でX線は電磁波の一種であることから、この波動性に着目し、X線物体透過後の位相の変化を画像化する試みが近年なされてきた。これらはそれぞれ吸収コントラストと位相コントラストと呼ばれる。この位相コントラストを用いた撮影技術は、従来の吸収コントラストと比較して、軽元素への感度が高いことから、これが多く含まれる人体の軟部組織への感度が高いと考えられている。
【0003】
しかしながら、従来の位相コントラスト撮影技術は、シンクロトロンX線源や微小焦点X線管を用いる必要があったため、前者は巨大な施設が必要であること、後者は人体を撮影する為に十分なX線量が確保できないことから、一般医療施設での実用は難しいと考えられていた。
この課題を解決するために、従来から医療現場で用いられるX線源を用いて位相コントラスト画像を取得することができる、X線タルボ・ロー干渉計を用いた、X線画像診断(タルボ・システム)が期待されている。
【0004】
タルボ・ロー干渉計は、図5に示されるように、医療用X線管とFPDの間にG0格子、G1格子、G2格子が各々配置され、被写体によるX線の屈折をモアレ縞として可視化するものである。上部に配置されたX線源から縦方向にX線が照射され、G0、被写体、G1、G2を通って画像検出器に到達する。
格子の製造方法としては、例えば、X線透過性の高いシリコンウェハをエッチングして格子状の凹部を設け、その中にX線遮蔽性の高い重金属を充填する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、上記方法では、入手できるシリコンウェハのサイズやエッチング装置の制約等により大面積化が困難であり、撮影対象は小さな部位に限定される。また、エッチングによってシリコンウェハに深い凹部を形成するのは容易でない上に、凹部の奥まで金属を均一に充填することも難しいため、X線を充分遮蔽するだけの厚みを有する格子は作製困難である。このため、特に高圧撮影条件ではX線が格子を透過してしまい良好な画像を得ることが出来ない。
【0006】
そこで、シンチレータに格子機能を付与し、格子形状に発光させるシンチレータが着目されている。
たとえば、Applied Physics Letter 98, 171107(2011)の「Structured scintillator for x-ray grating interferometry」(Paul Scherrer Institute(PSI))」には、シリコンウェハをエッチングして作製した格子の溝に蛍光体(CsI)を充填した格子形状のシンチレータが開示されている。
【0007】
しかしながら、上記方式では、前述のG2格子の作製方法と同じくシリコンウェハを使用しているため、シリコンウェハ起因の課題である面積の制約や厚膜化が困難な状況は改善されていない。さらに、CsIの発光がシリコン格子の壁面での衝突を繰り返すうちに減衰し、輝度が低下するといった新たな課題も発生している。また、依然として高圧撮影条件ではX線が格子を透過してしまい良好な画像を得ることが出来ないという課題はあった。
このため撮影部位に制約がなく、厚みある被写体の撮影も可能な新たなシンチレータの出現が望まれていた。
【0008】
そこで、本発明者らは、格子形状を有するシンチレータとして、シンチレータ層と非シンチレータ層との積層体から構成されるシンチレータに着目した。格子形状を有するシンチレータは、照射されたX線はシンチレータ層内で発光し、一方、非シンチレータ層内をX線は通過し、発光をセンサにて検出するように構成され、本出願人はWO2017/154261、特開2017-223568号公報、特開2017-227520号公報(特許文献1~3)として提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2017/154261
【文献】特開2017-223568号公報
【文献】特開2017-227520号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Applied Physics Letter 98, 171107(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
X線等の放射線を発する線源は一般に点波源であるため、個々のシンチレータ層と非シンチレータ層が完全に平行に形成されている場合には、シンチレータの中心から外れるにしたがって放射線が斜め入射する現象が生じる。その結果、シンチレータ端部では放射線が充分に透過しない、いわゆるケラレが生じてしまう。ケラレは、シンチレータが大面積化するほど深刻な問題となる。このため本発明の課題は、周辺領域で、X線ケラレの少ない格子形状シンチレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような状況の下、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、格子形状のシンチレータにおいて、端部になるほど傾斜を大きくする構造を採用して、点波源に対し、常に、平行になるような傾斜構造とすることで、上記問題点を解決することを見出した。ただし、非特許文献1のような無機材料のみで構成される格子形状を有するシンチレータでは、傾斜化自体が難しい。そこで、傾斜構造を構成するために、特許文献1~3にある格子形状を有するシンチレータを採用し、かつ変形しやすい有機材料をシンチレータ層や非シンチレータ層に使用することで、所定の傾斜構造を形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成は以下の通りである。
[1]シンチレータ層と非シンチレータ層が、放射線の入射方向に対して略平行方向に繰り返し積層された積層体を含むシンチレータパネルにおいて、前記積層体における各層の積層角が扇状に変化する傾斜構造を有し、かつ、各層の放射線源への外挿面が一本の線上で交差することを特徴とするシンチレータパネル。
[2]前記シンチレータ層と非シンチレータ層の少なくともいずれかが、弾性率10GPa未満の有機材料を含有していることを特徴とする[1]のシンチレータパネル。
[3]シンチレータ層と非シンチレータ層が、放射線の入射方向に対して略平行方向に繰り返し積層された積層体を含むシンチレータパネルにおいて、前記積層体における各層の積層角が扇状に変化する傾斜構造を有し、かつ、各層の放射線源への外挿面が一本の線上で交差するシンチレータパネルの製造方法において、
シンチレータ層と非シンチレータ層を繰り返し積層する工程、
積層体の各層の積層角が扇状に変化するように、積層体を湾曲させる工程を有することを特徴とする、積層型シンチレータパネルの製造方法。
[4]前記積層体を湾曲させる工程の後に、湾曲された構造を固定化する工程を有することを特徴とする、[3]のシンチレータパネルの製造方法。
[5]前記湾曲された構造を固定化する工程の後に、前記積層体の上面と底面とが平行面となるようにスライスする工程を有することを特徴とする、[3]または[4]のシンチレータパネルの製造方法。
[6][1]または[2]のシンチレータパネルと光電変換パネルが対向して配置されていることを特徴とする放射線変換パネル。
[7][6]の放射線変換パネルを用いることを特徴とするタルボ撮影装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、端部でもシンチレータ層および非シンチレータ層の形状と平行に、放射線が入射するため、端部でのケラレが抑制され、信号ボケの少ない、高い画像特性を有するシンチレータパネルが得られる。
【0014】
このため、本発明のシンチレータパネルは、高圧撮影も可能となり、胸腹部、大腿部、肘関節、膝関節、股関節などの厚みある被写体の撮影も可能となる。
【0015】
従来、軟骨の画像診断では、MRIが主流であり、大がかりな機材を使うため撮影コストが高く、撮影時間も長いという欠点もあった。これに対し、本発明によれば、より低コストでスピーディーなX線画像で、軟骨、筋腱、靭帯などの軟部組織や、内臓組織を写すことができる。このため、関節リュウマチ、変形性膝関節症等の整形外科疾患や、乳がんをはじめ、柔らかい組織の画像診断などへ、広く応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかるシンチレータパネルの一態様の概略図である。
図2】本発明のシンチレータパネルの製造方法の概略模式図である。
図3】本発明にかかるシンチレータパネルを含むタルボ・シンチレータの概略構成図である。
図4】光電変換素子を組み合わせた一態様の概略図である。
図5】タルボ・シンチレータの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のシンチレータパネルについて説明する。
本発明にかかるシンチレータパネルは、図1に示されるように、シンチレータ層と非シンチレータ層が、放射線の入射方向に対して略平行方向に繰り返し積層された積層体を含むシンチレータパネルにおいて、前記積層体における各層の積層角が扇状に変化する傾斜構造を有し、かつ、各層の外挿面が一本の線上で交差することを特徴とする。
【0018】
放射線によるシンチレータの発光を、検出器を介して電気信号に変換しデジタル画像を取得することが出来る。
略平行とは、ほぼ平行あり、多少の傾斜があっても略平行の範疇に含まれる。本発明は、このような積層体を含む格子形状を有するシンチレータである。
【0019】
図1に示されるように、積層体中の非シンチレータ層、シンチレータ層の放射線方向の断面は、台形となる。外挿は、台形の上底と下底の中間点をそれぞれ直線で結び、その直線を放射線側に延ばすことが、本発明における「外挿」に意味する。
【0020】
扇状とは、同心円であり、中心から所定の中心角で、半径と弧とで囲まれた図形(扇形)に広がったものであり、本発明では同心円の弦部および弦と平行に内側が切り取られ、積層体全体としての断面が台形となる。積層体の各層の外挿面が交差する線は同心円の中心であり、中心から積層体への垂線と外挿面との角度が、各層の積層角となる。同心円の中心に、放射線源が位置し、放射線源からシンチレータ積層体までの距離に応じて積層角は適宜選択される。
【0021】
一対のシンチレータ層と非シンチレータ層の入射方向に対して垂直方向の厚さ、すなわち積層方向の厚さ(以下、積層ピッチ)は、およびシンチレータ層と非シンチレータ層の積層方向の厚さの比率(以下、duty比)はタルボ干渉条件より導かれるが、一般的には、積層ピッチは0.5~50・香Aduty比は30/70~70/30であることが好ましい。積層ピッチの繰り返し積層数は、充分な面積の診断画像を得るために1,000~500,000層であることが好ましい。
【0022】
本発明にかかるシンチレータパネルを構成するシンレータ層と非シンチレータ層からなる積層体の放射線源方向への厚さは特に制限されず、50~2,000μm程度であればよい。厚さが前記範囲の下限値よりも薄い場合、シンチレータの発光強度が弱くなり画質が低下する。また、前記範囲の上限値よりも厚い場合、シンチレータの発光が光電変換パネルに届く距離が長くなるため光が拡散しやすくなり鮮鋭性が低下する。このため、目的に応じて適宜厚さは選択される。
【0023】
積層体
積層体を構成するシンチレータ層とはシンチレータを主成分として含有する層であり、シンチレータ粒子を含有することが好ましい。
【0024】
・シンチレータ層
シンチレータ層を構成する材料としては、X線などの放射線を可視光などの異なる波長に変換することが可能な物質を適宜使用することが出来る。具体的には、「蛍光体ハンドブック」(蛍光体同学会編・オーム社・1987年)の284頁から299頁に至る箇所に記載されたシンチレータ及び蛍光体や、米国Lawrence Berkeley National LaboratoryのWebホームページ「Scintillation Properties(http://scintillator.lbl.gov/)」に記載の物質などが考えられるが、ここに指摘されていない物質でも、「X線などの放射線を可視光などの異なる波長に変換することが可能な物質」であれば、シンチレータとして用いることが出来る。
【0025】
シンチレータの構成材料の組成としては、以下の例が挙げられる。まず、
基本組成式(I):MIX・aMIIX'2・bMIIIX''3:zAで表わされる金属ハロゲン化物系蛍光体が挙げられる。
【0026】
上記基本組成式(I)において、MIは1価の陽イオンになり得る元素、すなわち、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、タリウム(Tl)および銀(Ag)などからなる群より選択される少なくとも1種を表す。
【0027】
IIは2価の陽イオンになり得る元素、すなわち、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)およびカドミウム(Cd)などからなる群より選択される少なくとも1種を表す。
【0028】
IIIは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)およびランタノイドに属する元素からなる群より選択される少なくとも1種を表す。
X、X'およびX''は、それぞれハロゲン元素を表わすが、それぞれが異なる元素であっても、同じ元素であっても良い。
【0029】
Aは、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Na、Mg、Cu、Ag(銀)、TlおよびBi(ビスマス)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を表す。
a、bおよびzはそれぞれ独立に、0a<0.5、0b<0.5、0<z<1.0の範囲内の数値を表わす。
【0030】
また、
基本組成式(II):MIIFX:zLnで表わされる希土類賦活金属フッ化ハロゲン化物系蛍光体も挙げられる。
【0031】
上記基本組成式(II)において、MIIは少なくとも1種のアルカリ土類金属元素を、Lnはランタノイドに属する少なくとも1種の元素を、Xは、少なくとも1種のハロゲン元素を、それぞれ表す。またzは、0<z0.2である。
【0032】
また、
基本組成式(III):Ln22S:zAで表される希土類酸硫化物系蛍光体も挙げられる。
【0033】
上記基本組成式(III)において、Lnはランタノイドに属する少なくとも1種の元素を、Aは、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Na、Mg、Cu、Ag(銀)、TlおよびBi(ビスマス)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を、それぞれ表す。またzは、0<z<1である。
【0034】
また、
基本組成式(IV):MIIS:zAで表される金属硫化物系蛍光体も挙げられる。
【0035】
上記基本組成式(IV)において、MIIは2価の陽イオンになり得る元素、すなわちアルカリ土類金属、Zn(亜鉛)、Sr(ストロンチウム)、Ga(ガリウム)等からなる群より選択される少なくとも1種の元素を、Aは、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Na、Mg、Cu、Ag(銀)、TlおよびBi(ビスマス)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を、それぞれ表す。またzは、0<z<1である。
【0036】
また、
基本組成式(V):MIIa(AG)b:zAで表される金属オキソ酸塩系蛍光体も挙げられる。
【0037】
上記基本組成式(V)において、MIIは陽イオンになり得る金属元素を、(AG)はリン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、タングステン酸塩、アルミン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種のオキソ酸基を、Aは、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Na、Mg、Cu、Ag(銀)、TlおよびBi(ビスマス)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を、それぞれ表す。
またaおよびbは、金属及びオキソ酸基の価数に応じて取り得る値全てを表す。zは、0<z<1である。
【0038】
また、
基本組成式(VI):Mab:zAで表わされる金属酸化物系蛍光体が挙げられる。
【0039】
上記基本組成式(VI)において、Mは陽イオンになり得る金属元素より選択される少なくとも1種の元素を表わすが、特にランタノイドに属する金属が好ましい。具体例としては、Gd23やLu23などが挙げられる。
【0040】
Aは、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Na、Mg、Cu、Ag(銀)、TlおよびBi(ビスマス)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を、それぞれ表わすが、特にランタノイドに属する金属が好ましい。具体例としては
またaおよびbは、金属及びオキソ酸基の価数に応じて取り得る値全てを表す。zは、0<z<1である。
【0041】
また他に、
基本組成式(VII):LnOX:zAで表わされる金属酸ハロゲン化物系蛍光体が挙げられる。
【0042】
上記基本組成式(VII)において、Lnはランタノイドに属する少なくとも1種の元素を、Xは、少なくとも1種のハロゲン元素を、Aは、Y、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Na、Mg、Cu、Ag(銀)、TlおよびBi(ビスマス)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を、それぞれ表す。またzは、0<z<1である。
【0043】
本発明では、シンチレータ層は少なくともGdO2S、CsI、GdAlO3、NaI、CsBr、La2O2S、Y2O2S、Lu2O3を母体とする蛍光体を1種類以上含むものが好ましい。
【0044】
シンチレータ粒子の平均粒子径は、シンチレータ層の厚さに応じて選択され、シンチレータ層の厚さに対して、150%以下が好ましく、100%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。シンチレータ粒子の平均粒子径が上記範囲を超えると、シンチレータ層にシンチレータ粒子が収まりきらず、積層構造が乱れることでタルボ干渉機能が低下する。
【0045】
シンチレータ層にバインダーとして接着性樹脂が含まれていることが好ましい。また、接着性樹脂は、シンチレータの発光の伝搬を阻害しないように、シンチレータの発光波長に対して透明な材料であることが好ましい。
【0046】
接着性樹脂としては、本発明の目的を損なわない限り特に限定されず、例えば、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;および、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル系コポリマー、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリ(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂などのような合成高分子物質が挙げられるが。なお、これらの樹脂はエポキシやイソシアネート等の架橋剤によって架橋されたものであってもよく、これらの接着性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。接着性樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
【0047】
本発明では、シンチレータ層と非シンチレータ層の少なくとも一方に、弾性率10GPa未満の有機材料が含まれていることが好ましいが、たとえばシンチレータ層に前記有機材料を含有する場合、バインダーとして使用される接着性樹脂が有機材料に該当する。
【0048】
シンチレータ層中の接着性樹脂の含有率は、好ましくは1~80vol%、より好ましくは5~70vol%、更に好ましくは10~60vol%である。前記範囲の下限値よりも低いと充分な接着性が得られず、逆に前記範囲の上限値よりも高いと、シンチレータ粒子の含有率が不充分となり、輝度が低下する。
【0049】
シンチレータ層の形成方法としては、前記シンチレータ粒子と接着性樹脂を溶媒に溶解もしくは分散した組成物を、非シンチレータ層表面にコートしてもよいし、前記シンチレータ粒子と接着性樹脂を含有する混合物を加熱溶融して調製した組成物を非シンチレータ層表面にコートしてもよい。さらに各種蒸着法を用いてシンチレータ層を形成する方法、別途作製したシンチレータ層を転写するなどを用いることが可能である。
【0050】
前記シンチレータ粒子と接着性樹脂を溶媒に溶解もしくは分散した組成物をコートする場合、使用できる溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等の低級アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、キシレン等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等の低級脂肪酸と低級アルコールとのエステル、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メトキシプロパノールプロピレングリコールモノメチルエーテル 、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等などのエーテル、ベンゼントリオール、メチレンクロライド、エチレンクロライドなどのハロゲン化炭化水素及びそれらの混合物などが挙げられる。使用される組成物には、組成物中のシンチレータ粒子の分散性を向上させるための分散剤、また、形成後のシンチレータ層中における接着性樹脂とシンチレータ粒子との間の結合力を向上させるための硬化剤や可塑剤などの種々の添加剤が混合されていてもよい。
【0051】
分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。硬化剤は、熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂の硬化剤として公知のものを使用できる。
【0052】
前記シンチレータ粒子と接着性樹脂を含有する混合物を加熱溶融してコートする場合、接着性樹脂としてホットメルト樹脂を使用することが好ましい。ホットメルト樹脂には、例えば、ポリオレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリウレタン系若しくはアクリル系の樹脂を主成分としたものを用いることができる。これらのうち、光透過性、防湿性及び接着性の観点から、ポリオレフィン系の樹脂を主成分としたものが好ましい。ポリオレフィン系の樹脂としては、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-アクリル酸エステル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂等を用いることができる。なお、これらの樹脂は、二種以上組み合わせた、いわゆるポリマーブレンドとして用いてもよい。
【0053】
シンチレータ層を形成するための組成物のコート手段としては、特に制約はないが、通常のコート手段、例えば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーター、押し出しコーター、ダイコーター、グラビアコーター、リップコーター、キャピラリー式コーター、バーコーター、ディップ、スプレー、スピンなどの一般的な方式を用いることができる。
【0054】
・非シンチレータ層
本発明における非シンチレータ層とは、シンチレータを主成分として含まない層であり、非シンチレータ層中のシンチレータの含有量は10vol%未満、好ましくは1vol%未満であるが、0vol%であることが最も好ましい。
【0055】
非シンチレータ層は、各種のガラス、高分子材料、金属等が主成分として含むものを採用可能である。本発明では、シンチレータ層と非シンチレータ層の少なくともいずれかが、弾性率10GPa未満の有機材料を含有していることが好ましいため、シンチレータ層に前記有機材料が含まれる場合、非シンチレータ層の構成材料は特に制限されない。非シンチレータ層は、単層で用いても良いし、複数を組み合わせて複合体にして用いても良い。
【0056】
具体的には、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラス等の板ガラス;サファイア、窒化珪素、炭化珪素等のセラミック;
シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素等の半導体;
ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)を始めとするポリエステル、ナイロンを始めとする脂肪族ポリアミド、あるいは、芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリアセテート、セルロースアセテート、エポキシ、ビスマレイミド、ポリ乳酸、ポリフェニレンサルファイドやポリエーテルスルホンを始めとする含硫黄ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタンなどポリマー;
【0057】
炭素繊維やガラス繊維など(特に、これら繊維を含む繊維強化樹脂シート)
アルミニウム、鉄、銅等の金属箔、キトサンやセルロースなどを含むバイオナノファイバーなどを使用できる。
【0058】
上記で一例を示したポリマー材料の弾性率は一般的に10GPa未満である。
なお、非シンチレータ層は光透過性であっても非透過性であってもよいが光透過性であることが好ましい。非シンチレータ層が非光透過性の場合、非シンチレータ層によりシンチレータの発光光が吸収されるため輝度は低下する。一方、非シンチレータ層が光透過性の場合、光吸収が起こりにくいため輝度は向上する。
【0059】
本発明のシンチレータを構成する積層体は、シンチレータ層と非シンチレータ層とを積層させて、シンチレータ層と非シンチレータ層を接合することで製造される。本発明における接合とは、シンチレータ層と非シンチレータ層を接着して一体化することを指す。接合方法としては接着剤層を介して両者を接着することもできるが、シンチレータ層もしくは非シンチレータ層に接着性樹脂を予め含有させておき、加圧により両者を密着させることで、接着剤層を介さずに接合することが、プロセス簡略化の観点より、好ましい。また、加圧した状態で加熱することで、接着性を有する物質が溶融もしくは硬化し接着が強固なものになり更に好ましい。また、非シンチレータ層表面に、前記したようにシンチレータ層を形成しうる組成物をコートすることによってシンチレータ層と非シンチレータ層を接合することも可能である。
【0060】
積層型シンチレータパネルの作製
本発明にかかる製造方法の一例を、図2を参照しながら説明する。
本発明の格子形状を有する積層型シンチレータは、シンチレータ層と非シンチレータ層の積層を繰り返した後、隣り合った各層を接合することで作製される。
【0061】
シンチレータ層と非シンチレータ層を繰り返し積層する方法としては特に制約は無いが、例えば、シンチレータ層および非シンチレータ層の交互に繰り返し積層してもよい。
本発明では、図2にあるように、前記シンチレータ層と前記非シンチレータ層があらかじめ接合された部分積層体を複数作成したのち、当該複数の部分積層体をさらに積層して前記積層体を形成することが、効率性の観点で好ましい。
【0062】
たとえば、予め、一対のシンチレータ層と非シンチレータ層からなる部分積層体の積層および断裁を繰り返して、積層してもよい。
シンチレータ層と非シンチレータ層からなる部分積層体が巻取り可能なフィルム形状であれば、コアに巻取ることによって効率的に積層することが可能となる。巻取りコアとしては筒状でも平板でもよい。
シンチレータ層と非シンチレータ層からなる部分積層体の形成方法には特に制約は無いが、非シンチレータ層としてポリマーフィルムを選択し、その片面に、シンチレータ粒子と接着性樹脂を含有する組成物をコートすることでシンチレータ層を形成してよい。また、ポリマーフィルムの両面に、シンチレータ粒子と接着性樹脂を含有する組成物をコートしてもよい。
【0063】
部分積層体は、前記したように、シンチレータ粒子と接着性樹脂を含有する組成物をポリマーフィルム上にコートして形成すると、工程が簡略化できる上に複数枚のシートへの分割が容易となる。分割方法は特に制限されず、通常の裁断方法が選択される。
【0064】
また、あらかじめ転写基材に、シンチレータ層を塗設したものを、非シンチレータ層からなるフィルム上に転写してもよい。転写基材は必要に応じて、剥離などの手段により脱着される。
【0065】
本発明では、前記シンチレータ層と前記非シンチレータ層が平行に配置されるように前記積層体を加圧することで、前記シンチレータ層と前記非シンチレータ層とを接合する。
【0066】
積層ピッチを所望の値に調整するには、複数のシンチレータ層と非シンチレータ層よりなる繰り返し積層体を所望の寸法になるように熱圧着、すなわち加圧した状態で加熱すればよい。その際、積層構造が傾斜しないよう、積層方向に対して垂直に加圧する必要がある。
複数のシンチレータ層と非シンチレータ層の繰り返し積層体を所望の寸法になるように加圧する方法には特に制約は無いが、積層体が所望の寸法以上に圧縮されないように、予め、金属等のスペーサを設けた状態で加圧することが好ましい。その際の圧力としては1MPa~10GPaが好ましい。圧力が前記範囲の下限値よりも低いと、積層体に含まれる樹脂成分を所定の寸法に変形させることが出来ない恐れがある。圧力が前記範囲の上限値よりも高いと、スペーサが変形してしまう場合があり、積層体を所望の寸法以上に圧縮してしまう恐れがある。
【0067】
前記積層体を熱圧着、すなわち加圧した状態で加熱すると、積層体内のシンチレータ層と非シンチレータ層との接合をより強固なものとすることができる。加熱する条件としては、樹脂の種類にもよるが、熱可塑性樹脂ではガラス転移点以上、熱硬化性樹脂では硬化温度以上の温度で、いずれも0.5~24時間程度加熱することが好ましい。加熱温度としては、一般的に40℃~250℃であることが好ましい。積層体を加圧しながら加熱する方法には、特に制約は無いが、発熱体が装着されたプレス機を用いても良いし、積層体を所定の寸法になるように箱型の治具に封じ込めた状態でオーブン加熱しても良いし、箱型の治具に発熱体が装着されていても良い。
【0068】
積層体が加圧される前の状態としては、シンチレータ層の内部、非シンチレータ層の内部、もしくはシンチレータ層と非シンチレータ層の界面に空隙が存在していることが好ましい。もし空隙が全く存在しない状態で加圧した場合には、積層端面より構成材料の一部が流出して積層ピッチに乱れが生じるか、あるいは加圧を解除すると元の寸法に戻ってしまうこともある。空隙が存在していれば、加圧しても空隙がクッションとなり、空隙がゼロになるまでの範囲であれば積層体を任意の寸法に調整することが出来、即ち、積層ピッチを任意の値に調整することが出来る。空隙率は、積層体の実測体積(面積×厚さ)と、積層体の理論体積(重量÷密度)を用いて次式より算出される。
【0069】
(積層体の実測体積-積層体の理論体積)÷積層体の理論体積×100
積層体の面積が一定であれば、空隙率は、積層体の実測厚さと、積層体の理論厚さ(重量÷密度÷面積)を用いて次式より算出される。
(積層体の実測厚さ-積層体の理論厚さ)÷積層体の理論厚さ×100
【0070】
シンチレータ層の加熱後の空隙率は30vol%以下であることが好ましい。上記範囲を超えるとシンチレータの充填率が低下し輝度が低下する。
【0071】
シンチレータ層や非シンチレータ層の内部に空隙を設ける手段としては、例えば、シンチレータ層や非シンチレータ層の作製過程で層内に気泡を含有させても良いし、中空のポリマー粒子を添加しても良い。一方、シンチレータ層あるいは非シンチレータ層の表面に凹凸が存在する場合でも、両者の接触界面に空隙が出来るため同様の効果が得られる。シンチレータ層や非シンチレータ層の表面に凹凸も設ける手段としては、例えば、ブラスト処理やエンボス処理のような凹凸処理を層の表面に施しても良いし、層内にフィラーを含有させることで表面に凹凸を形成させても良い。シンチレータ粒子と接着性樹脂を含有する組成物をポリマーフィルム上に塗設することによりシンチレータ層を形成する場合、シンチレータ層の表面に凹凸が形成され、ポリマーフィルムとの接触界面に空隙を設けることが出来る。凹凸の大きさは、フィラーの粒径や分散性を制御することによって任意に調整することが出来る。得られた積層体ブロックを所定の厚さとなるように切り出す。
【0072】
作製した傾斜構造を有さない積層体を、同心円で所定の積層角となるように円弧状に湾曲させる。湾曲の際に、積層ピッチが変動しないようにするため、積層体側面の片側もしくは両側に接着剤を介して仮支持体を設けてもよい。
【0073】
湾曲には通常上下一組となる湾曲治具が使用される。上下の湾曲治具間には、所定の円弧状(扇状)となるように、空隙が設けられ、積層体を載置したのち、上下の湾曲治具間を必要に応じ加圧して、積層体を湾曲させる。治具は通常、金型や、シリコンやテフロンなどの枠型が使用される。
【0074】
湾曲させた積層体(湾曲積層体)は、治具に固定した状態で加熱処理を施してもよい。これにより、湾曲した状態で固化される。前記加熱処理は前記した熱圧着と同様な条件が採用される。
加熱処理後、放射線源から同心円となる円弧の弦および弦と平行な面を、積層体の厚みが、所定の厚さとなるように切断する。切断方法は特に制限されず、ワイヤーやナイフでスライスするように切断してもよく、また、機械切削や研磨、あるいはエッチングなどで所定の厚さとなるように、削ってもよい。
【0075】
こうして傾斜構造を設けた積層体に必要に応じて、積層構造を維持するために、放射線入射側、あるいはその反対側に、支持体が貼り合わされていてもよい。支持体はX線透過性と剛性を兼ね備えた材料が好ましく、例えば、炭素繊維強化樹脂(CFRP)やアモルファスカーボンシートを用いることができる。支持体との貼合には、公知の接着性樹脂からなる接着層を介してもよく、また支持体を用いずに検出器に直接貼り合わせてもよい。
【0076】
検出器
本発明では、放射線を受けてシンチレータ層から発する光を検出する検出器が、上記傾斜構造を有する積層体からなるシンチレータと組み合わせて使用される。検出器は、放射線の出射側または入射側に設けられる。
検出器において、外部からのX線が、シンチレータ層によって光に変換され、この光が、検出器によって電気信号に変換されるとともに、位置情報と関連づけられた形で外部に出力可能な状態とされる。
【0077】
本発明で用いられる検出器は、光を、電気信号に変換して、外部に出力する役割を有するものであり、従来公知のものを用いることができれば、その構成は特に制限はないものの、通常、基板と、画像信号出力層と、光電変換素子とがこの順で積層された形態を有している。
【0078】
このうち、光電変換素子は、シンチレータ層で発生した光を吸収して、電荷の形に変換する機能を有している。ここで、光電変換素子は、そのような機能を有する限り、いかなる具体的な構造を有していてもよい。例えば、本発明で用いられる光電変換素子は、透明電極と、入光した光により励起されて電荷を発生する電荷発生層と、対電極とからなるものとすることができる。これら透明電極、電荷発生層および対電極は、いずれも、従来公知のものを用いることができる。また、本発明で用いられる光電変換素子は、適当なフォトセンサーから構成されていても良く、例えば、複数のフォトダイオードを2次元的に配置してなるものであってもよく、あるいは、CCD(Charge Coupled Devices)、CMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)センサなどの2次元的なフォトセンサーからなるものであってもよい。これらは、X線を透過するので、照射側に設けられても、シンチレータの発光に影響を及ぼすことが少ない。
【0079】
検出器とシンチレータ部材との界面での光学ロスを低減するためには、屈折率が1.0(空気)を超える透明な材料で接合されていることが好ましい。積層型シンチレータパネルと光電変換パネルの接合方法に特に指定は無いが、例えば接着剤や両面テープ、ホットメルトシートなどを用いることが出来る。
【0080】
本発明によれば、輝度、MTFが高く、しかもX線ケラレなどによるノイズも低減されたシンチレータパネルが得られる。このようなシンチレータパネルは、位相コントラスト像を撮像することができる。
このため、本発明のシンチレータパネルは、タルボ・システムに好適に使用できる。図3は、本発明にかかるシンチレータパネルを含むシンチレータパネルを含むタルボ・シンチレータの概略構成図である。
【0081】
本発明のシンチレータまた、シンチレータパネルがG2格子の機能を既に持ち合わせているため、G2格子は装置から取り外した状態でも使用できる。なお、タルボ撮影装置について、特開2016-220865号公報、特開2016-220787号公報、特開2016-209017号公報、特開2016-150173号公報などに詳細に記載されている。
図1
図2
図3
図4
図5