(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】データロガー
(51)【国際特許分類】
G01N 15/06 20060101AFI20221025BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20221025BHJP
G01D 9/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G01N15/06 D
F24F7/06 C
G01D9/00 A
(21)【出願番号】P 2018148442
(22)【出願日】2018-08-07
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】内田 裕之
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0063833(US,A1)
【文献】特開昭63-107131(JP,A)
【文献】特開2013-011460(JP,A)
【文献】特開2000-019095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
F24F 7/06
G01D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データロガー本体と、該データロガー本体に着脱可能なパーティクルセンサとを備えるデータロガーであって、
前記データロガー本体は、装着された前記パーティクルセンサによって測定される測定データを、ネットワークを介して予め設定された時間間隔で送信するものであり、
前記パーティクルセンサは、
圧電デバイスを構成する圧電片に電極を形成するクリーンルーム内の、前記圧電片を洗浄する洗浄機内に設置されると共に、前記
洗浄機内のパーティクルを測定するものであり、
前記データロガー本体は、前記パーティクルセンサによって測定される前記測定データの値と予め定められている閾値とを比較して、その比較結果に応じた制御信号を出力し、前記
洗浄機の稼働、停止を制御する、
ことを特徴とするデータロガー。
【請求項2】
前記データロガー本体は、前記パーティクルセンサ、及び、該パーティクルセンサ以外の他のセンサを、デイジーチェーン接続可能である、
請求項1に記載のデータロガー。
【請求項3】
前記他のセンサが、温度センサ及び湿度センサの少なくともいずれか一方のセンサである、
請求項
2に記載のデータロガー。
【請求項4】
前記データロガー本体は、前記ネットワークに無線通信可能に接続される、
請求項
1ないし3のいずれか一項に記載のデータロガー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データロガーに関し、更に詳しくは、クリーンルームなどの清浄度の測定に好適なデータロガーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスや住宅における環境を快適なものとするために、オフィス等における温度、湿度、空気汚れ等の環境をセンサで測定し、空調を制御する空調管理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のオフィスや住宅と異なり、電子部品の製造ラインにおける製造現場の環境等の変動は、製品の歩留まりや品質に大きく影響する。
【0005】
特に、製造現場であるクリーンルームや製造装置内部の環境を、塵埃等の浮遊微粒子(パーティクル)を少なくした一定の清浄度に保つことは重要である。
【0006】
クリーンルーム等の清浄度の測定には、一般にパーティクルカウンタが使用される。かかるパーティクルカウンタを用いてクリーンルーム等の被測定室内のパーティクルを測定する場合、測定者がパーティクルカウンタを測定すべき被測定室内に持ち込んでパーティクルカウンタによる測定が行われる。この場合、被測定室内に測定者が入室することになり、測定者の動作によって、被測定室内の空気の流れが乱れたり、浮遊微粒子が掻き回されたりするため、パーティクルカウンタによる測定に影響を与えることがある。
【0007】
また、測定者による測定が行われた時点の測定データしか得ることができず、連続的な測定データを取得するのが困難である。
【0008】
本発明は、上記のような点に鑑みて為されたものであって、電子部品の製造現場の環境である清浄度を、リアルタイムで連続的に測定するのに好適なデータロガーを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0010】
すなわち、本発明のデータロガーは、データロガー本体と、該データロガー本体に着脱可能なパーティクルセンサとを備えるデータロガーであって、前記データロガー本体は、装着された前記パーティクルセンサによって測定される測定データを、ネットワークを介して予め設定された時間間隔で送信するものであり、前記パーティクルセンサは、圧電デバイスを構成する圧電片に電極を形成するクリーンルーム内の、前記圧電片を洗浄する洗浄機内に設置されると共に、前記洗浄機内のパーティクルを測定するものであり、前記データロガー本体は、前記パーティクルセンサによって測定される前記測定データの値と予め定められている閾値とを比較して、その比較結果に応じた制御信号を出力し、前記洗浄機の稼働、停止を制御する。
【0011】
本発明のデータロガーによれば、データロガー本体に接続されたパーティクルセンサによって圧電デバイスを構成する圧電片に電極を形成するクリーンルーム内の、前記圧電片を洗浄する洗浄機内のパーティクルを測定して、ネットワークを介して予め設定された時間間隔で送信するので、測定者がパーティクルカウンタを被測定室内に持ち込んで測定する必要がなく、被測定室内の空気の流れが乱されて測定に影響を与えるといったことがなく、また、測定者による測定が行われた時点に限らず、連続した測定データをリアルタイムで取得することができる。
更に、本発明のデータロガー本体は、パーティクルセンサによって測定される測定データの値と予め定められている閾値とを比較して、その比較結果に応じた制御信号を出力して、クリーンルーム内に設置される洗浄機の稼働、停止を制御することができる。
【0013】
本発明によれば、圧電デバイスの歩留まりに影響する圧電片に電極を形成するクリーンルーム内で、圧電片を洗浄する洗浄機内のパーティクルを、連続的にリアルタイムで測定することができる。これによって、異物の介在を防ぐなど圧電片の電極形成状態を最適なものとすることができ、圧電デバイスの電気的な特性の向上や歩留まり向上に有効である。
【0014】
本発明のデータロガーでは、前記データロガー本体は、前記パーティクルセンサ、及び、該パーティクルセンサ以外の他のセンサを、デイジーチェーン接続可能である構成としてもよい。
【0015】
上記構成によれば、データロガー本体に接続するセンサを、デイジーチェーン接続によって容易に増設して、パーティクル以外の環境データ等の測定を行うことが可能となる。
【0016】
本発明のデータロガーでは、前記他のセンサが、温度センサ及び湿度センサの少なくともいずれか一方のセンサである構成としてもよい。
【0017】
上記構成によれば、データロガー本体には、温度センサ及び湿度センサの少なくともいずれか一方のセンサが増設できるので、パーティクル以外に温度や湿度の測定を併せて行うことが可能となる。
【0020】
本発明のデータロガーでは、前記データロガー本体は、前記ネットワークに無線通信可能に接続される構成としてもよい。
【0021】
上記構成によれば、データロガー本体は、無線通信可能であるので、ケーブル等を用いてネットワークに電気的に接続する必要がなく、設置場所の選択の自由度が高まる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、データロガー本体に接続されたパーティクルセンサによって圧電デバイスを構成する圧電片に電極を形成するクリーンルーム内の、前記圧電片を洗浄する洗浄機内のパーティクルを測定して、ネットワークを介して予め設定された時間間隔で送信するので、測定者がパーティクルカウンタを被測定室内に持ち込んで測定する必要がなく、被測定室内の空気の流れが乱されて測定に影響を与えることがなく、また、測定者による測定が行われた時点に限らず、連続した測定データをリアルタイムで取得することができる。更に、パーティクルセンサによって測定される測定データの値と予め定められている閾値とを比較して、その比較結果に応じた制御信号を出力して、クリーンルーム内に設置される洗浄機の稼働、停止を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係るデータロガーを備えるモニタリングシステムの概略構成図である。
【
図2】
図2は
図1のデータロガーの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は
図1のデータロガーに接続されたパーティクルセンサによって測定されたパーティクルの変化を示す図である。
【
図4】
図4は本発明の
参考例に係るデータロガーを備える他のモニタリングシステムの概略構成図である。
【
図5】
図5は
図4のデータロガーの制御動作を説明するための湿度変化を示す図である。
【
図6】
図6は
図4のデータロガーの動作を説明するための概略フローチャートである。
【
図7】
図7は
図4のデータロガーに接続された温湿度センサによって測定された温度及び湿度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るデータロガーを備えるモニタリングシステムの概略構成図である。
【0026】
このモニタリングシステムは、クリーンルーム等のパーティクルをモニタリングして、装置の稼働、停止を制御するシステムである。
【0027】
このモニタリングシステムでは、第1拠点1におけるクリーンルームのパーティクルを測定し、測定した測定データを、第2拠点2に送信するものである。
【0028】
第1拠点1は、例えば、工場などを想定することができ、第2拠点2は、例えば、本社などを想定することができる。
【0029】
なお、上記想定に限らず、例えば、第1,第2拠点1,2は、同一の工場における、電子部品の製造ラインの製造現場及び製造現場から離れた事務所や研究所などを想定することができ、測定する対象等に応じて、拠点の数を含めて種々の態様を想定することができる。
【0030】
このモニタリングシステムは、電子部品としての圧電デバイス、この実施形態では水晶振動子の水晶片に電極を形成するためのクリーンルームである蒸着室のパーティクルを測定し、蒸着室の清浄度を監視すると共に、水晶片をドライ洗浄する洗浄機の稼動、停止を制御するものである。
【0031】
第1拠点1が、工場の水晶振動子の製造ラインにおいて、蒸着によって水晶片に電極を形成するための蒸着室である。
【0032】
この蒸着室は、空気中における塵埃等の浮遊微粒子であるパーティクルを少なくして空気の清浄度が高度に保たれたクリーンルームである。蒸着室には、空気中の塵埃を除去するために、HEPAフィルタ等のエアフィルタを通じて空気が送り込まれる。
【0033】
蒸着室内には、作業台であるクリーンベンチ3と、水晶片のドライ洗浄を行う洗浄機4と、蒸着装置5が配置されている。
【0034】
第1拠点1と第2拠点2とは、ネットワーク6を介して接続されている。このネットワーク6は、例えば、LAN( Local Area Network )等の専用線で構成されている。
【0035】
第1拠点1である蒸着室のネットワーク6には、無線LANの第1アクセスポイント7を介して本発明の実施形態に係る第1~第4データロガー(Data Logger)8~11が無線通信可能に接続されると共に、第1アクセスポイント7を介して各データロガー8~11で測定される測定データの異常を警告する第1,第2警告灯12,13が無線通信可能に接続される。
【0036】
第2拠点2である本社のネットワーク6には、データサーバ14が接続されると共に、無線LANの第2アクセスポイント15を介して第3警告灯16が無線通信可能に接続される。また、ネットワーク6には、クライアント端末17が接続される。第3警告灯16は、第1~第4データロガー8~11のいずれかによって測定される測定データの異常を警告する。
【0037】
第1拠点1の各データロガー8~11及び第1,第2拠点1,2の各警告灯12,13,15は、無線通信可能であるので、ケーブルを用いてネットワーク6に電気的に接続する必要がなく、設置場所の選択の自由度が高まる。
【0038】
図2は、第1データロガー8の機能構成を示すブロック図である。第1~第4データロガー8~11は、同じ機能構成であるので、
図2では、第1データロガー8を代表的に示して説明する。
【0039】
データロガー8は、データロガー本体18を備えており、このデータロガー本体18には、パーティクルセンサ19を含む複数のセンサが、着脱自在に接続可能である。パーティクルセンサ19以外の他のセンサとして、例えば、温湿度センサ20、圧力センサ21、電圧センサ22などが、センサ用バス23を介して接続可能である。複数のセンサは、デイジーチェーン接続して増設可能である。
【0040】
パーティクルセンサ19は、レーザ光を通過する試料気体中の微粒子が発生する散乱光を検出してパーティクルを計測するものであり、この実施形態のパーティクルセンサ19は、内蔵のヒータで上昇気流を発生させて試料気体を取り込むものであり、公知のセンサである。
【0041】
データロガー本体18は、各部に電源を供給する電源部24と、メモリ25と、マイクロSDカードが挿入されるマイクロSDスロット26と、パソコン等のUSB端子を有する機器との接続インターフェースであるUSBインターフェース27と、液晶表示部28と、例えば、無線LAN通信を行うための無線モジュール29と、後述の制御信号を出力するデジタルI/O30と、各部を制御するCPU31とを備える。
【0042】
データロガー8では、データロガー本体18のマイクロSDスロット26に、初期設定情報が記憶されたマイクロSDカードを挿入して、初期設定情報を読出して初期設定を行うことが可能である。また、データロガー本体18のUSBインターフェース27にパソコンを接続して、パソコンからデータロガー8の初期設定を行うことも可能である。この初期設定では、上記センサ19~22で測定されるデータを、
図1のデータサーバ14に送信する時間間隔等を含む設定が行われる。
【0043】
図1に示される第1~第4データロガー8~11には、図示しないパーティクルセンサ19がそれぞれ接続される。第1データロガー8は、クリーンベンチ3に配置されており、パーティクルセンサ19によってクリーンベンチ3のパーティクルを測定する。第2データロガー9は、洗浄機4内に配置されており、パーティクルセンサ19によって洗浄機4内のパーティクルを測定する。第3データロガー10は、蒸着装置5の近傍に配置されており、パーティクルセンサ19によって蒸着装置5の近傍のパーティクルを測定する。第4データロガー11は、蒸着室の、例えば、中央付近に配置されており、パーティクルセンサ19によって中央付近のパーティクルを測定する。
【0044】
第1~第4データロガー8~11では、設定された時間間隔で、各データロガー8~11にそれぞれ接続されたパーティクルセンサ19によって測定された測定データを、ネットワーク6を介してデータサーバ14に送信する。
【0045】
データサーバ14は、各データロガー8~11からの測定データを受信して、記憶部としてのデータベースに格納する。データサーバ14は、測定データを監視し、予め設定されている管理範囲を外れたことを検知すると、すなわち、異常を検知すると、異常を検知したデータロガー8~11に対応する警告フラグを立てる。
【0046】
第1,第2警告灯12,13及び第3警告灯16は、データサーバ14の警告フラグを監視しており、第1,第2警告灯12,13及び第3警告灯16は、自身に対応した警告フラグを検知すると、点灯やブザーなどによって異常を報知する。この報知は、測定データが前記管理範囲に収まってデータサーバ14が警告フラグを落すまで継続する。この実施形態では、第1,第2データロガー8,9によって測定される測定データの異常を、第1警告灯12によって報知し、第3,第4データロガー10,11によって測定される測定データの異常を、第2警告灯13によって報知する。
【0047】
この実施形態では、上記のようにデータサーバ14は、測定データを監視し、異常を検知すると、異常が検知されたデータロガー8~11に対応する警告フラグを立て、各警告灯12,13,16が、データサーバ14の警告フラグを監視し、対応する警告フラグが検知されると、異常を報知するようにしたが、本発明の他の実施形態として、データサーバ14は、異常を検知したときには、異常を検知したデータロガー8~11に対応する警告信号を警告灯12,13,16に送信し、警告信号を受信した対応する警告灯12,13,16が、異常を報知するようにしてもよい。
【0048】
クライアント端末17では、インターネットブラウザを利用して、データサーバ14にアクセスしてデータベースに格納されている測定データを閲覧することができる。クライアント端末17では、データサーバ14の測定データの一覧表示やグラフ表示等を閲覧することができる。データサーバ14は、測定データの一覧表示では、測定値に応じた色分け表示を行う。例えば、測定値が管理範囲の境界値に近づいたときには、該当する欄や測定値を、例えば、黄色で表示し、測定値が管理範囲を超えたときには、該当する欄や測定値を、例えば、赤色で表示するといった色分けによる強調表示を行って、クライアント端末17の操作者に注意を促す。また、測定値が途絶えた場合には、該当する欄を、例えば、赤色で点滅させるなどの表示を行う。
【0049】
更に、この実施形態では、データサーバ14は、測定データを監視し、測定データが、予め設定されている管理範囲を外れたことを検知したときには、上記のように対応する警告フラグを立てる一方、警告の電子メールをクライアント端末17に送信する。
【0050】
この実施形態では、第2データロガー9は、上記
図2に示されるデジタルI/O30からの制御信号(デジタル出力)によって、洗浄機4の稼働、停止を制御する。具体的には、第2データロガー9に接続されたパーティクルセンサ19によって測定される洗浄機4内のパーティクルの測定値が、予め定められている閾値である所定値を超えているときには、第2データロガー9は、制御信号によって洗浄機4の稼働を禁止し、あるいは、洗浄機4の稼働中に、パーティクルの測定値が、前記所定値を超えたときには、稼動を停止させる。洗浄機4内のパーティクルの測定値が、前記所定値以下であるときには、第2データロガー9は、制御信号によって洗浄機4の稼働を許容する。なお、洗浄機4の稼働中に、稼動を停止したときには、もう一度、水晶片の洗浄を行う。
【0051】
これによって、洗浄機4における水晶片のドライ洗浄は、パーティクル量が所定値以下の清浄度の高い状況で行われる。
【0052】
また、第1,第3,第4データロガー8,10,11に接続されたパーティクルセンサ19で測定されるパーティクルの量が、管理範囲を超えると、第1,第2警告灯12,13による警告が行われるので、作業者は、作業を中断するなどして清浄度が回復するまで待機することができる。これによって、パーティクルの量が、管理範囲を超えて、上限規格値及び下限規格値で規定される規格範囲を超えるのを防止することができる。
【0053】
図3は、このモニタリングシステムによって測定されたパーティクルの変化を示す図であり、縦軸がパーティクルの量を、横軸が時間をそれぞれ示している。
【0054】
この
図3に示すように、連続的にパーティクルを測定しているので、突発的なパーティクル量の増大も見逃すことなく、把握することができる。
【0055】
本実施形態によれば、データロガー本体18に接続されたパーティクルセンサ19によってクリーンルームのパーティクルを測定して、ネットワーク6を介して予め設定された時間間隔でデータサーバ14に送信するので、測定者がパーティクルカウンタをクリーンルーム内に持ち込んで測定する必要がなく、クリーンルーム内の空気の流れが乱されて測定に影響を与えるといったことがなく、また、測定者がパーティクルを測定した時点に限らず、連続したパーティクルの測定データをリアルタイムで取得することができる。
【0056】
本実施形態によれば、第2データロガー9は、洗浄機4内のパーティクルの測定値が所定値を超えると、洗浄機4の稼働を禁止あるいは停止させ、所定値以下に回復すると、洗浄機4の稼働を許容するので、洗浄機4における水晶片のドライ洗浄を、パーティクル量が所定値以下の清浄度の高い状況で行うことができる。
【0057】
また、パーティクル量が管理範囲を超えるなどの異常が生じると、警告灯12,13,16による警告や警告の電子メールが送信されるので、作業者は、適宜の措置、例えば、清浄度が回復するまで、作業を中断するといったことが可能となる。
【0058】
これによって、異物の介在を防ぐなど水晶片の電極形成状態を最適なものとすることができ、水晶振動子の電気的な特性の向上や歩留まり向上を図ることができる。
【0059】
本実施形態では、より多くのデータロガーを配置して清浄度を監視することによって、蒸着室における局所的、突発的な発塵を把握することが可能となり、清浄度の監視の精度が向上する。
【0060】
更に、データサーバ14でパーティクルの測定データを一元管理してトレーサビリティを確保することができ、製品の不良が生じた場合には、データサーバ14のパーティクルの測定データを解析して、不良原因がパーティクルに起因するか否かの判断に利用することができる。
【0061】
[
参考例]
図4は、本発明の
参考例に係るデータロガーを備え、パーティクル及び温湿度をモニタリングして湿度を制御するシステムの概略構成図であり、
図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0062】
このモニタリングシステムは、電子部品の製造ラインの製造現場、例えば、電子部品を構成する部材を加工する加工室のパーティクル及び温湿度を測定し、湿度を制御するものである。
【0063】
第1拠点1aが、工場の電子部品の製造ラインの、例えば、加工室であり、第2拠点2aが、例えば、工場の事務所である。
【0064】
この第1拠点1aである加工室には、圧縮窒素配管35からの圧縮窒素を利用して、純水配管36から供給される純水を霧状にして噴霧するための第1~第4スプレーガン37~40が配設されている。圧縮窒素配管35は分岐されており、分岐された一方の圧縮窒素配管35aには、第1,第2スプレーガン37,38への圧縮窒素の供給、遮断を行う第1電磁弁41が設けられ、他方の圧縮窒素配管35bには、第3,第4スプレーガン39,40への圧縮窒素の供給、遮断を行う第2電磁弁42が設けられている。
【0065】
第1拠点1aである加工室のネットワーク6には、無線LANの第1アクセスポイント43を介して第1,第2データロガー44,45が無線通信可能に接続されると共に、前記第1アクセスポイント43を介して各データロガー44,45で測定される測定データの異常を警告する第1,第2警告灯46,47が無線通信可能に接続される。
【0066】
第1,第2データロガー44,45は、上記実施形態のデータロガーと同様の機能構成を有し、図示しないパーティクルセンサ19が接続されると共に、温湿度センサ20が接続される。第1データロガー44に接続されるパーティクルセンサ19及び温湿度センサ20は、加工室内の、例えば、中央付近のパーティクル及び温湿度を測定し、第2データロガー45に接続されるパーティクルセンサ19及び温湿度センサ20は、加工室内の、例えば、出入口付近のパーティクル及び温湿度を測定する。
【0067】
第1,第2データロガー44,45は、上記
図2のデジタルI/O30からのデジタル出力(制御信号)によって、第1,第2電磁弁41,42の開閉を制御することによって、第1~第4スプレーガン37~40のオン、オフを制御し、加工室内の湿度を調整する。
【0068】
第2拠点2aである事務所のネットワーク6には、データサーバ14が接続されると共に、無線LANの第2アクセスポイント48を介して第3警告灯49が無線通信可能に接続される。また、ネットワーク6には、クライアント端末17が接続される。
【0069】
このモニタリングシステムでは、上記実施形態と同様に、第1,第2データロガー44,45は、設定された時間間隔で、各データロガー44,45にそれぞれ接続されたパーティクルセンサ19及び温湿度センサ20によって測定された測定データを、ネットワーク6を介してデータサーバ14に送信する。
【0070】
データサーバ14は、各データロガー44,45からの測定データを受信して、記憶部としてのデータベースにそれぞれ格納する。データサーバ14は、測定データを監視し、予め設定されている管理範囲を外れたことを検知すると、すなわち、異常を検知すると、異常を検知したデータロガー44,45に対応する警告フラグを立てると共に、警告の電子メールをクライアント端末17に送信する。
【0071】
第1,第2警告灯46,47及び第3警告灯49は、データサーバ14の警告フラグを監視しており、第1,第2警告灯46,47及び第3警告灯49は、自身に対応した警告フラグを検知すると、点灯やブザーなどによって異常を報知する。この報知は、測定データが前記管理範囲に収まってデータサーバ14が警告フラグを落すまで継続する。
【0072】
この参考例では、第1データロガー44によって測定される測定データの異常を、第1警告灯46によって報知し、第2データロガー45によって測定される測定データの異常を、第2警告灯47によって報知する。また、第2拠点2aの第3警告灯49は、いずれかのデータロガー44,45によって測定される測定データの異常が生じると、異常を報知する。
【0073】
クライアント端末17では、データサーバ14の測定データの一覧表示やグラフ表示等を閲覧することができる。データサーバ14は、測定データの一覧表示では、測定値に応じた色分けによる強調表示を行う。
【0074】
更に、この参考例のモニタリングシステムでは、第1,第2データロガー44,45は、予めそれぞれのデータロガー自身(メモリ25等)に設定されている湿度範囲と、各データロガー44,45にそれぞれ接続される温湿度センサ20,20によって測定された湿度とをそれぞれ比較し、その比較結果に基づいて、第1~第4スプレーガン37~40に供給されている圧縮窒素の供給、遮断を行う第1,第2電磁弁41,42の開閉をそれぞれ制御する。
【0075】
このように各データロガー44,45自身が、接続される温湿度センサ20,20によって測定された湿度に基づいて、第1~第4スプレーガン37~40に供給されている圧縮窒素の供給、遮断を行う第1,第2電磁弁41,42の開閉をそれぞれ制御するので、データサーバ14が、そのデータベースに格納される測定データである湿度に基づいて、データロガー44,45を介して第1,第2電磁弁41,42の開閉をそれぞれ制御する場合に比べて、迅速な対応が可能となる。
【0076】
図5は、この第1,第2データロガー44,45による第1,第2電磁弁41,42の開閉制御を説明するための湿度変化を示す図である。この
図5において、縦軸が測定される湿度を、横軸が時間をそれぞれ示している。第1,第2データロガー44,45は上記のように同じ機能構成であるので、第1データロガー44について説明する。
【0077】
データロガー44には、湿度の制御上限値及び制御下限値が予めそれぞれ設定されていると共に、湿度の規格上限値及び規格下限値が設定されている。
【0078】
この
図5に示されるように、データロガー44に接続される温湿度センサ20によって測定される加工室の湿度が上昇し、時点t1で制御上限値に達すると、データロガー44は、第1電磁弁41を閉じて、第1,第2スプレーガン37,38をOFFし、純水の噴霧を停止する。温湿度センサ20によって測定される加工室の湿度が低下し、制御上限値を下回り、更に、時点t2で制御下限値に達すると、データロガー44は、第1電磁弁41を開き、第1,第2スプレーガン37,38をONし、純水の噴霧を開始する。
【0079】
温湿度センサ20によって測定される加工室の湿度が再び上昇し、時点t3で制御上限値に達すると、データロガー44は、再び、第1電磁弁41を閉じて、第1,第2スプレーガン37,38をOFFし、純水の噴霧を停止する。
【0080】
このようにデータロガー44は、温湿度センサ20によって測定される加工室の湿度が、制御上限値以上になると、第1電磁弁41を閉じて、第1,第2スプレーガン37,38をOFFし、温湿度センサ20によって測定される加工室の湿度が、制御下限値以下になると、第1電磁弁41を開いて、第1,第2スプレーガン37,38をONするという、制御を繰返す。
【0081】
これによって、
図5に示されるように、加工室の湿度を、規格上限値及び規格下限値で規定される規格範囲内に制御することができる。
【0082】
データサーバ14は、データベースの測定データであるパーティクル、温度及び湿度を監視し、パーティクルが管理範囲を外れ、あるいは、温度又は湿度が、前記規格範囲よりも狭い予め定めた管理範囲を外れたことを検知すると、上記のように、管理範囲を外れたデータロガー44,45に対応する警告フラグを立てると共に、警告の電子メールをクライアント端末17に送信する。これによって、警告フラグを監視していた対応する第1,第2警告灯46,47及び第3警告灯49は、点灯やブザーなどによって異常を報知する。この実施形態では、パーティクル、温度、及び、湿度によって、各警告灯46,47,49の点灯色を異ならせている。
【0083】
図6は、この
参考例の第1,第2データロガー44,45の動作を説明するための概略フローチャートである。
【0084】
この参考例のデータロガー44,45は、パーティクルセンサ19が接続されると共に、温湿度センサ20を増設可能なデータロガーであり、パーティクルセンサ19のみを接続してパーティクルのみを測定するモードと、温湿度センサ20を増設して、パーティクルの測定に加えて、温湿度を測定するモードとを備えている。
【0085】
上記のように第1,第2データロガー44,45は、機能構成が同じであるので、第1データロガー44について説明する。
【0086】
先ず、起動処理として、データロガー本体18のマイクロSDスロット26に、マイクロSDカードが装着されているか否かを確認し(ステップS1)、マイクロSDカードが装着されていないときには、ステップS2に移り、マイクロSDカードが装着されているときには、マイクロSDカード内の初期設定ファイルの有無を確認し(ステップS6)、初期設定ファイルが無いときには、ステップS2に移り、初期設定ファイルがあるときには、初期設定ファイルから初期設定情報を取得してデータロガー本体18のメモリ25に格納してステップS2に移る。
【0087】
ステップS2では、メモリ25の初期設定情報に基づいて、無線接続やセンサによる測定の時間間隔などのデータロガー自身の初期設定を行い、ステップS3に移る。このように初回起動時には、マイクロSDカードを介して初期設定情報が設定される。ステップS3では、パーティクルセンサ19が接続されているか否かを確認し、接続されているときには、接続確認のためにパーティクルを測定してメモリ25に測定データを格納してステップS5に移り(ステップS4)、接続されていないときには、液晶表示部33に、パーティクルセンサ19が接続されていない旨の警告表示を行い、ステップS3に戻る(ステップS8)。この警告表示によって、作業者は、データロガー本体18にパーティクルセンサ19を接続する。
【0088】
ステップS5では、温湿度センサ20が接続されているか否かを確認し、温湿度センサ20が接続されているときには、接続確認のために温湿度を測定して測定データをメモリ25に格納し、パーティクルセンサ19によるパーティクルの測定と温湿度センサ20による温湿度の測定との両者の測定を行うデュアルモードで初期設定を完了してステップS11に移る(ステップS9)。温湿度センサ20が接続されていないときには、温湿度センサ20を使用しない温湿度センサ無しモード、すなわち、パーティクルセンサ19によってパーティクルのみを測定するモードで初期設定を完了してステップS11に移る(ステップS10)。
【0089】
ステップS11では、データを測定して液晶表示部33に表示し、この実施形態のデータロガー44では、湿度の測定データに基づいて、上記のように第1電磁バルブ41の開閉を制御して、第1,第2スプレーガン37,38のオン、オフ制御を行い(ステップS12)、ネットワーク6との無線接続を確認し(ステップS13)、無線接続に問題がないときには、ステップS14に移り、無線接続に問題があるときには、ステップS11に戻る。
【0090】
ステップS14では、受信電波強度を確認し、受信電波強度が所定レベル以上であるときには、ステップS15に移り、受信電波強度が所定レベル未満であるときには、液晶表示部28に、受信電波強度が弱い旨の表示、例えば、「W
i-Fi_Low」を表示してステップS15に移る(ステップS18)。
【0091】
ステップS15では、データの測定の時間間隔をタイマでカウントし、設定値未満であるときには、ステップS11に戻り、設定値に達したときには、測定したデータを送信処理し(ステップS16)、ネットワーク6経由で初期設定の内容を変更するデータの受信を監視し(ステップS17)、データの受信がないときには、ステップS11に戻り、データの受信があったときには、受信したデータが、ロガーIPの変更データであるときには、ステップS1に戻って起動処理を行って受信データをロガー本体に設定し、受信したデータが、ロガーIPの変更データ以外のデータであるときには、受信データをロガー本体に設定してステップS11に戻る(ステップS19)。
【0092】
図7(a),(b)は、この
参考例の第1,2データロガー44,45にそれぞれ接続された温湿度センサ20,20によって測定された温度及び湿度の変化をそれぞれ示すものである。
図7(a),(b)において、黒三角は、第1データロガー44に接続された温湿度センサ20によって測定された温度及び湿度の変化を示し、黒四角は、第2データロガー45に接続された温湿度センサ20によって測定された温度及び湿度の変化を示している。
【0093】
この
図7(a),(b)においては、温度及び湿度の規格上限値及び規格下限値をそれぞれ破線で示している。
【0094】
本参考例によれば、電子部品の製造ラインにおける加工室内のパーティクル、温度及び湿度をモニタリングすると共に、データロガー44,45によって、スプレーガン37~40のオン、オフを制御して、湿度を規格範囲内に制御することができる。
【0095】
また、パーティクルや温度が変動して、例えば、管理範囲を外れるなどの異常が生じると、警告灯46,47,49による警告や警告の電子メールが送信されるので、作業者は、直ちに適宜の措置、例えば、空調設備を調整するといったことが可能となる。
【0096】
第1拠点1aの上記加工室は、クリーンルームに限らず、例えば、研磨砥粒を使用して研磨加工を行う加工室などであってもよく、パーティクルとして、研磨砥粒を測定し、作業環境の管理を行うようにしてもよい。
【0097】
[その他の実施形態]
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0098】
(1)測定データは、上記のパーティクル、温度、湿度に限らず、データロガー本体に種々のセンサを接続して、各種の環境データや製造装置の設定パラメータに関するデータを測定してもよい。
【0099】
データロガー本体に、例えば、圧力センサを接続して製造装置、例えば、圧電デバイスである水晶振動子の水晶振動片を、パッケージを構成するベースに接着剤によって接合して搭載する搭載装置において、前記接着剤を吐出するディスペンサーの吐出圧力を測定してもよい。
【0100】
あるいは、データロガー本体に、振動センサを接続し、水晶板を切断するワイヤーソーのモータなどの振動を測定してもよい。
【0101】
(2)上記参考例では、温湿度センサをデータロガー本体に接続して温度及び湿度をモニタリングしたが、温度及び湿度から露点を算出して、露点を測定するようにしてもよく、あるいは、データロガー本体に露点計を接続して露点を測定するようにしてもよい。
【0102】
(3)上記実施形態では、データロガー及び警告灯は、無線LANによって無線接続したが、無線LANに限らず、Bluetooth(登録商標)等を用いてもよく、また、無線に限らず、有線接続であってもよい。
【0103】
(4)データロガーが接続されるネットワークは、インターネットを経由するものであってもよく、遠隔地の工場における電子部品の製造ラインの製造現場のパーティクル等を、ネットワークを介してデータサーバに送信してもよい。
【符号の説明】
【0104】
1,1a 第1拠点
2,2a 第2拠点
4 洗浄機
6 ネットワーク
8~11,44,45 データロガー
14 データサーバ
17 クライアント端末
18 データロガー本体
19 パーティクルセンサ
20 温湿度センサ
37~40 スプレーガン
41,42 電磁弁