(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】サクション基礎構造体
(51)【国際特許分類】
E02D 27/18 20060101AFI20221025BHJP
E02D 23/00 20060101ALI20221025BHJP
E02D 23/08 20060101ALI20221025BHJP
E02D 27/52 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
E02D27/18
E02D23/00 C
E02D23/08 Z
E02D27/52 Z
(21)【出願番号】P 2018149183
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 政人
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】栗本 卓
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-100578(JP,A)
【文献】特開2017-223006(JP,A)
【文献】特開2004-353217(JP,A)
【文献】特開2004-339695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/18
E02D 23/00
E02D 23/08
E02D 27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造物と接続される頂版部と、前記頂版部から下方に向けて延設されたスカート部とを備え
、前記頂版部及び前記スカート部と水底地盤とによって画成領域を画成した後、前記スカート部全体の先端を前記水底地盤の所定深度まで沈設して設置するサクション基礎構造体であって、
前記画成領域から水を強制排水するための
設置用排水管と、
前記設置用排水管を介して水が強制排水された後の
前記画成領域に充填材を間詰め注入する充填管と、
前記頂版部の下面から下方に向け
て突出し
、間詰め注入されて硬化した前記充填材の下部に注水するための撤去用注水管と、を具備し、
前記撤去用注水管の周面には、複数の注水孔が形成され、前記注水孔には、管内から管外への通水性を確保した状態で、管内への土砂の侵入を防止する機能を有する目詰まり防止部材が設けられていることを特徴とするサクション基礎構造体。
【請求項2】
前記目詰まり防止部材は、前記注水孔を内側から覆うドレーン材であることを特徴とする請求項1記載のサクション基礎構造体。
【請求項3】
前記目詰まり防止部材は、前記注水孔を外側から覆い、前記撤去用注水管の先端側に位置する下端部が固定され、上端側が開くように取り付けられている弁部材であることを特徴とする請求項1記載のサクション基礎構造体。
【請求項4】
前記撤去用注水管の
先端から所定長の周面には
、鍔部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のサクション基礎構造体。
【請求項5】
前記撤去用注水管は、先端が尖鋭型の閉塞構造であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のサクション基礎構造体。
【請求項6】
前記頂版部の下面には、下方に向けて突出する差筋が設置されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のサクション基礎構造体。
【請求項7】
前記設置用排水管と前記撤去用注水管とは、2重管として一体化されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のサクション基礎構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スカート部を備えたサクション基礎構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
水中に基礎構造物を構築する工法の一種として、サクション基礎工法が知られている(例えば、特許文献1参照)。サクション基礎工法では、洋上風車等の上部構造物と接続される頂版部と、頂版部から下方に向けて一体に延設された筒状のスカート部とを備えたサクション基礎構造体を用いる。スカート部の先端を水底地盤中に貫入させた状態で、頂版部とスカート部と水底地盤とで画成された領域(以下、画成領域と称す)から水を排出し、サクション荷重を作用させ、サクション基礎構造体を所定深度まで沈設する。その後、画成領域にグラウトやモルタルなどの充填材を間詰め注入する。これにより、充填材の硬化後は、上部構造物の荷重が水底地盤に伝達され、サクション基礎構造体の安定化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、供用期間が経過した後に撤去することが前提である場合、画成領域に充填材を間詰め注入できないという問題点があった。すなわち、サクション基礎構造体は、画成領域にポンプを用いて注水し、正圧状態とすることで、無振動・無騒音で撤去することが可能である。特許文献1のように画成領域に充填材を間詰め注入した場合、この撤去手法を用いることができない。
【0005】
画成領域に充填材を間詰め注入しない場合、波浪や強風により上部構造物に対して水平方向に大きな繰返し荷重が作用しても、画成領域内の水の体積は、圧縮されずに移動するだけなので、繰返し荷重に対する面的な抵抗力として期待できない。従って、スカート部の根入れ長及び水平抵抗幅を大きくして、繰返し荷重が極限先端支持力や極限周面摩擦力を超えないようにする必要があるが、スカート部の寸法・構造を大規模にしなければならず、経済的でない。
【0006】
なお、スカート部に水平変位が発生し、回転して一部持ち上げられて初めて負圧(サクション圧)が作用し引抜き抵抗力が増大する。しかし、サクション圧を基礎の抵抗力として機能させるには、水平変位を許容することになり、危険である。すなわち、繰返し荷重が作用し、サクション基礎構造体に水平変形が生じると、水平変位が累積してしまう。これにより、基礎としての性能(スカート部の周面摩擦力や先端支持力)が低下し、最悪の場合、上部構造物が傾斜して倒壊してしまう虞がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、設置時に充填材を間詰め注入しても、注水によって簡単に撤去することができるサクション基礎構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のサクション基礎構造体は、上部構造物と接続される頂版部と、前記頂版部から下方に向けて延設されたスカート部とを備え、前記頂版部及び前記スカート部と水底地盤とによって画成領域を画成した後、前記スカート部全体の先端を前記水底地盤の所定深度まで沈設して設置するサクション基礎構造体であって、前記画成領域から水を強制排水するための設置用排水管と、前記設置用排水管を介して水が強制排水された後の前記画成領域に充填材を間詰め注入する充填管と、前記頂版部の下面から下方に向けて突出し、間詰め注入されて硬化した前記充填材の下部に注水するための撤去用注水管と、を具備し、前記撤去用注水管の周面には、複数の注水孔が形成され、前記注水孔には、管内から管外への通水性を確保した状態で、管内への土砂の侵入を防止する機能を有する目詰まり防止部材が設けられていることを特徴とする。
さらに、本発明のサクション基礎構造体において、前記目詰まり防止部材は、前記注水孔を内側から覆うドレーン材であっても良い。
さらに、本発明のサクション基礎構造体において、
前記目詰まり防止部材は、前記注水孔を外側から覆い、前記撤去用注水管の先端側に位置する下端部が固定され、上端側が開くように取り付けられている弁部材であっても良い。
さらに、本発明のサクション基礎構造体において、
前記撤去用注水管の先端から所定長の周面には、鍔部が設けられていても良い。
さらに、本発明のサクション基礎構造体において、前記撤去用注水管は、先端が尖鋭型
の閉塞構造であっても良い。
さらに、本発明のサクション基礎構造体において、前記頂版部の下面には、下方に向けて突出する差筋が設置されていても良い。
さらに、本発明のサクション基礎構造体において、前記設置用排水管と前記撤去用注水管とは、2重管として一体化されていても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設置時に充填材を間詰め注入しても、撤去用注水管6から注水することで、充填材と水底との間に注水圧を作用させることができ、簡単にサクション基礎構造体を撤去することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るサクション基礎構造体の実施形態の構成を示す側断面図である。
【
図2】
図1に示すサクション基礎構造体を水底地盤の所定深度まで沈設した状態を示す側断面図である。
【
図3】
図1に示すサクション基礎構造体の構成を示す下面図である。
【
図4】
図1に示す撤去用注水管の構成を示す図である。
【
図5】
図4に示す目詰まり防止部材の構成例を示す図である。
【
図6】
図1に示すサクション基礎構造体の設置工法を説明する説明図である。
【
図7】
図1に示すサクション基礎構造体の設置工法を説明する説明図である。
【
図8】
図1に示すサクション基礎構造体の撤去工法を説明する説明図である。
【
図9】
図1に示す設置用排水管と撤去用注水管とをまとめた2重管の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態のサクション基礎構造体1は、
図1及び
図2を参照すると、洋上風車等の上部構造物2と接続される頂版部3と、頂版部3から下方に向けて一体に延設されたスカート部4を備えたコップ状の凾体である。なお、頂版部3は、上部構造物2の底版であっても良い。また、
図2は、サクション基礎構造体1を水底地盤の所定深度まで沈設した状態(以下、設置状態と称す)である。なお、設置状態において、頂版部3の下部に充填材G(例えば、コンクリート、グラウト、モルタル)が間詰め注入される。そして、硬化した充填材Gがサクション基礎構造体1の一部として機能することになる。
【0012】
スカート部4は、頂版部3の下端外周縁から下方に向けて一体に延設された筒状の外周部41と、外周部41の内側に架け渡された隔壁部42とを備えている。
【0013】
本実施形態において、
図3に示すように、頂版部3は円板状であり、外周部41は円筒状である。これにより、頂版部3及び外周部41によって上方及び外周が画成され、下方が解放された円柱状の画成領域Aが形成されている。なお、頂版部3は矩形等の多角形であっても良い。この場合、外周部41は、頂版部3の形状に応じた多角形筒状に構成される。
【0014】
また、本実施形態において、
図3に示すように、隔壁部42は、下方から見て十字状に構成されている。従って、画成領域Aは、隔壁部42によって4つの画成小領域aに区画される。なお、隔壁部42は、サクション基礎構造体1の強度を確保するために設けたものであり、外周部41のみで強度が確保される場合には、省略しても良い。また、隔壁部42によって、3以下もしくは5以上の画成小領域aに区画するようにしても良い。
【0015】
頂版部3には、4つの画成小領域a(画成領域A)とそれぞれ連通する設置用排水管5、撤去用注水管6、充填管7及び水抜き管8が配管されている。
【0016】
設置用排水管5は、4つの画成小領域a(画成領域A)内の水を強制排水するための配管である。設置用排水管5は、
図2に示す設置状態においても4つの画成小領域a(画成領域A)とそれぞれ連通するように、頂版部3の下面側から4つの画成小領域a(画成領域A)にそれぞれ開口している。
【0017】
撤去用注水管6は、頂版部3の下面から突出し、
図2に示す設置状態において、突出した先端が水底地盤に貫入される。
【0018】
撤去用注水管6は、
図4を参照すると、先端が尖鋭型で閉塞構造となっており、設置状態において、先端から所定長L
1が水底地盤に貫入される長さに設定されている。そして、撤去用注水管6において、先端から所定長L
1以内には、撤去用注水管6の軸方向を長手とするスリット状の注水孔61が複数形成されていると共に、先端から所定長L
1の周面には、鍔部63が設けられている。従って、設置状態において、撤去用注水管6の注水孔61は、水底地盤中に位置し、鍔部63は、水底に当接する。
【0019】
注水孔61には、目詰まりを防止する目詰まり防止部材62が設けられている。目詰まり防止部材62は、管内から管外への通水性を確保した状態で、管内への土砂の侵入を防止する機能を有する。
【0020】
目詰まり防止部材62として、例えば、
図5(a)に示すように、ドレーン材62aを用いることができる。
図5(a)では、目詰まり防止部材62を、2枚のドレーン材62aをそれぞれ金網Xで挟んだ二重サンドイッチ構造で構成し、注水孔61を内側から覆うように設けた例が示されている。
【0021】
また、ドレーン材62aは、
図5(b)に示すように、注水孔61が形成されている箇所の管内全域に詰めるようにしても良い。
【0022】
目詰まり防止部材62として、例えば、
図5(c)に示すように、注水孔61を外側から覆うように取り付けられた弁部材62bを用いることができる。弁部材62bは、撤去用注水管6の先端側に位置する下端部が固定され、
図5(c)に点線で示すように、上端側が開くように取り付けられている。
【0023】
充填管7は、
図2に示す設置状態において、4つの画成小領域a(画成領域A)内に充填材Gを間詰め注入するための配管である。充填管7は、
図2に示す設置状態においても4つの画成小領域a(画成領域A)とそれぞれ連通するように、頂版部3の下面側から4つの画成小領域a(画成領域A)にそれぞれ開口している。
【0024】
水抜き管8は、充填材Gを間詰め注入に際し、4つの画成小領域a(画成領域A)内に満たされている水を凾体の外側に排出するための配管である。水抜き管8は、頂版部3を貫通して4つの画成小領域a(画成領域A)を凾体の外側と連通する。なお、水抜き管8は、外周部41に配管しても良い。
【0025】
また、頂版部3の下面には、4つの画成小領域a(画成領域A)に向けて突出する差筋9が設置されている。差筋9の本数は、画成領域Aの大きさに応じて適宜設定される。
【0026】
次に、サクション基礎構造体1の設置工法について
図6乃至
図7を参照して詳細に説明する。
ドック等で製作したサクション基礎構造体1を設置地点まで曳航船などにより運搬する。そして、設置用排水管5に設けられたバルブ50と、撤去用注水管6に設けられたバルブ60と、充填管7に設けられたバルブ70と、水抜き管8に設けられたバルブ80とを開けた状態で、スカート部4の下端部を水底に接地させる。なお、バルブ80は、水中で開閉することになるため、リモート操作可能な電磁弁で構成すると良い。
【0027】
これにより、
図6(a)に示すように、サクション基礎構造体1の自重によって、スカート部4の下端部が水底地盤に貫入され、4つの画成小領域a(画成領域A)は、内部に水が満たされた状態で下方が水底地盤によって塞がれる。なお、カウンターウエイトの載置等によってバラスト荷重を作用させ、スカート部4の下端部を水底地盤に貫入させても良い。また、上部構造物2の全部もしくは一部を接続した状態で、スカート部4の下端部を水底地盤に貫入させても良い。
【0028】
次に、
図6(b)に示すように、撤去用注水管6に設けられたバルブ60と、充填管7に設けられたバルブ70と、水抜き管8に設けられたバルブ80とを閉じ(設置用排水管5に設けられたバルブ50は開)、図示しないポンプによって設置用排水管5を介して4つの画成小領域a(画成領域A)内の水を強制排水する。すると、強制排水によりサクション基礎構造体1の内外に圧力差が発生する。この圧力差に伴うサクション荷重を作用させて、
図7(a)に示すように、サクション基礎構造体1を水底地盤中の所定深度まで沈設する。
【0029】
サクション基礎構造体1が水底地盤中の所定深度まで沈設された設置状態では、撤去用注水管6の先端が水底地盤に貫入され、撤去用注水管6の注水孔61が水底地盤中に位置し、鍔部63が水底に当接した状態になる。
【0030】
なお、強制排水による圧力差で、サクション基礎構造体1内の水底地盤にも負圧が作用し、上向きの浸透流が発生する。従って、サクション基礎構造体1の先端抵抗及び周面抵抗より大きな押込力を確保しつつ、浸透流によって水底地盤が破壊しないようにサクション荷重を管理しながら、サクション基礎構造体1を沈設する。
【0031】
次に、設置用排水管5に設けられたバルブ50を閉じると共に、充填管7に設けられたバルブ70と、水抜き管8に設けられたバルブ80とを開け(撤去用注水管6に設けられたバルブ60は閉)、充填管7から4つの画成小領域a(画成領域A)に充填材Gを間詰め注入する。
【0032】
撤去用注水管6の外周には設置状態で水底に当接する鍔部63が取付けられている。従って、充填材Gの間詰め注入に際し、鍔部63は、撤去用注水管6の外周と水底地盤との間に充填材Gが浸入することを防止する。これにより、充填材Gが撤去用注水管6の外周に沿って注水孔61に至り、注水孔61を閉塞してしまうことを防止できる。
【0033】
充填材Gの硬化後は、
図7(b)に示すように、波力や風力によって水平方向に大きな繰返し荷重が作用しても、サクション基礎構造体1の先端支持による抵抗及び受働抵抗に加えて、硬化した充填材Gが面的に支持して抵抗する。従って、繰返し荷重による累積変位を大幅に低減できる。さらに、大規模地震等による傾斜・転倒の抑制に大きく貢献する。
【0034】
また、充填材Gの硬化により、頂版部3直下に、差筋9等によりサクション基礎構造体1と一体化された固化体がサクション基礎構造体1の一部として構築され、サクション基礎構造体1が補強される。これにより、頂版部3の外周部41に作用する応力度も低減するため、サクション基礎構造体1の規模縮小・軽量化(頂版部3の厚さのスリム化等)により、製作費の低減だけでなく起重機船の小型化により、経済的となる。
【0035】
次に、サクション基礎構造体1の撤去工法について
図8を参照して詳細に説明する。
供用期間が経過すると、
図8に示すように、撤去用注水管6に設けられたバルブ60を開け、図示しないポンプによって撤去用注水管6を介して充填材Gが間詰め注入された4つの画成小領域a(画成領域A)の下部に注水する。
【0036】
撤去用注水管6の注水孔61から放出された水は、頂版部3直下でサクション基礎構造体1と一体化された充填材Gと水底との間に侵入する。これにより、サクション基礎構造体1の内側断面積で注水圧を作用することができ、サクション基礎構造体1の撤去を容易に行うことができる。従って、注水設備は従来と同等のものを使用しても、サクション基礎構造体1の無振動・無騒音で撤去することができる。なお、硬化した充填材Gは、差筋9によりサクション基礎構造体1と一体化されているため、サクション基礎構造体1と共に撤去される。
【0037】
なお、本実施の形態では、設置用排水管5と撤去用注水管6とを別々に設けたが、
図9に示すように、設置用排水管5の中に撤去用注水管6を配した2重管10として1つにまとめるようにしても良い。なお、
図9は、設置状態を示している。
【0038】
2重管10は、設置用排水管5と、設置用排水管5の内部に配置された撤去用注水管6とを備えている。2重管10は、頂版部3の下面から突出し、設置状態において、突出した先端が水底地盤に貫入され、撤去用注水管6の注水孔61は、水底地盤中に位置し、鍔部63は、水底に当接する。また、設置状態において、4つの画成小領域a(画成領域A)に位置する2重管10の外周には、設置用排水管5の排水孔51が複数形成されている。
【0039】
また、本実施の形態では、設置用排水管5と充填管7と別々に設けたが、設置用排水管5と充填管7とを兼用しても良い。
【0040】
以上説明したように、本実施形態は、上部構造物2と接続される頂版部3と、頂版部3から下方に向けて延設されたスカート部4とを備えたサクション基礎構造体1であって、頂版部3、スカート部4及び水底地盤によって画成された画成領域Aに連通された設置用排水管5と、スカート部4を水底地盤の所定深度まで沈設した設置状態において、画成領域Aに充填材Gを間詰め注入する充填管7と、頂版部3の下面から下方に向け、設置状態において先端が水底地盤に貫入される長さで突出した撤去用注水管6とを備え、設置状態において水底地盤に貫入される撤去用注水管6の周面には、複数の注水孔61が形成され、注水孔61には、管内から管外への通水性を確保した状態で、管内への土砂の侵入を防止する機能を有する目詰まり防止部材62が設けられている。
この構成により、設置時に充填材Gを間詰め注入しても、撤去用注水管6から注水することで、充填材Gと水底との間に注水圧を作用させることができ、簡単にサクション基礎構造体1を撤去することができる。また、注水孔61の目詰まりを防止することができる。
【0041】
さらに、本実施形態において、目詰まり防止部材62は、注水孔61を内側から覆うドレーン材62aである。
この構成により、簡単な構成で、管内から管外への通水性を確保した状態で、管内への土砂の侵入を防止することができる。
【0042】
さらに、本実施形態において、目詰まり防止部材62は、注水孔61を外側から覆い、撤去用注水管6の先端側に位置する下端部が固定され、上端側が開くように取り付けられている弁部材62bであっても良い。
この構成により、簡単な構成で、管内から管外への通水性を確保した状態で、管内への土砂の侵入を防止することができる。また、注水孔61から放出された水は、弁部材62bによって充填材Gの下面に向かう方向に導かれる。従って、比較的小さい注水圧で充填材Gと水底との間に水を侵入させることができる。
【0043】
さらに、本実施形態において、撤去用注水管6の周面には、設置状態において水底に当接する鍔部63が設けられている。
この構成により、充填材Gが撤去用注水管6の外周に沿って注水孔61に至り、注水孔61を閉塞してしまうことを防止できる。なお、鍔部63は、粘性土地盤等、透水性が低い地盤では用いなくても良い。
【0044】
さらに、本実施形態において、撤去用注水管6は、先端が尖鋭型の閉塞構造である。
この構成により、撤去用注水管6の水底地盤への貫入が容易になり、注水孔61が形成されてい先端箇所を水底地盤中に確実に位置させることができる。
【0045】
さらに、本実施形態において、頂版部3の下面には、下方に向けて突出する差筋9が設置されている。
この構成により、硬化した充填材Gがサクション基礎構造体1と一体化されるため、硬化した充填材Gをサクション基礎構造体1と共に撤去することができる。
【0046】
さらに、本実施形態において、設置用排水管5と撤去用注水管6とは、2重管10として一体化されている。
この構成により、頂版部3への設置用排水管5及び撤去用注水管6の配管を容易に行うことができる。
【0047】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0048】
1 サクション基礎構造体
2 上部構造物
3 頂版部
4 スカート部
5 設置用排水管
6 撤去用注水
7 充填管
8 水抜き管
9 差筋
10 2重管
41 外周部
42 隔壁部
50 バルブ
51 排水孔
60 バルブ
61 注水孔
62 目詰まり防止部材
62a ドレーン材
62b 弁部材
63 鍔部
70 バルブ
80 バルブ
A 画成領域
G 充填材
X 金網
a 画成小領域