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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221025BHJP
   B41J 25/20 20060101ALI20221025BHJP
   B41J 21/00 20060101ALI20221025BHJP
   B41J 3/60 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B41J2/01 103
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J25/20
B41J21/00 Z
B41J3/60
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018158403
(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公開番号】P2020032540
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】岸 義尚
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/183396(WO,A1)
【文献】特開2016-137637(JP,A)
【文献】特開2015-166813(JP,A)
【文献】特開2013-026865(JP,A)
【文献】特開平09-214732(JP,A)
【文献】特開2008-135872(JP,A)
【文献】特開平11-315484(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0293750(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 25/20
B41J 21/00
B41J 3/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の用紙を搬送する用紙搬送機構と、
搬送された前記複数の用紙に、画像データに基づいてインクを用いて画像を形成する記録ヘッドと、
前記用紙搬送機構と前記記録ヘッドとの動作を制御する制御部と
を備え、
前記複数の用紙は、第1用紙と、第2用紙とを含み、
前記第1用紙は、第1面と、前記第1面の裏面としての第2面とを有し、
前記第2用紙は、第3面と、前記第3面の裏面としての第4面とを有し、
前記画像データは、第1画像を示す第1画像データと、第2画像を示す第2画像データとを含み、
前記記録ヘッドは、前記第1画像データに基づいて前記第1面に前記第1画像と第1マーク画像とを形成した後に、前記第2画像データに基づいて前記第2面に前記第2画像と第2マーク画像とを形成し、
前記第1マーク画像は、前記第1画像を形成可能な第1矩形領域における第1基準位置を示し、
前記第2マーク画像は、前記第2画像を形成可能な第2矩形領域における第2基準位置を示し、
前記制御部は、前記第4面に形成するための前記第2画像の拡大率を、前記第1基準位置と前記第2基準位置とのずれに基づいて決定し、
読取装置を更に備え、
前記読取装置は、前記第1面から前記第1マーク画像を読み取り、前記第2面から前記第2マーク画像を読み取り、
前記制御部は、前記読取装置の読取り結果に基づいて前記ずれの大きさを算出し、
前記読取装置は、矩形板状のコンタクトガラスを含み、
前記第1用紙は、矩形状であり、
前記読取装置は、前記コンタクトガラス上に配置される前記第1用紙から、前記コンタクトガラスを介して前記第1マーク画像と前記第2マーク画像とを読み取り、
前記制御部は、第1距離と第2距離との差に基づいて前記ずれの大きさを算出し、
前記第1距離は、前記コンタクトガラスの隅部と前記第1基準位置との間の距離を示し、
前記第2距離は、前記隅部と前記第2基準位置との間の距離を示す、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドは、前記第1画像データに基づいて前記第3面に前記第1画像を形成した後に、前記第2画像データと前記拡大率とに基づいて前記第4面に拡大第2画像を形成し、
前記拡大第2画像は、前記拡大率に従い前記第2画像を拡大した画像を示す、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
拡大率指定指示が入力される入力部を更に備え、
前記拡大率指定指示は、前記拡大率を指定する、請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ずれは、第1差と、第2差とを含み、
前記第1差は、前記記録ヘッドの主走査方向に沿った、前記第1基準位置と前記第2基準位置との差を示し、
前記第2差は、前記主走査方向と直交する副走査方向に沿った、前記第1基準位置と前記第2基準位置との差を示し、
前記拡大率は、第1拡大率と、第2拡大率とを含み、
前記第1拡大率は、前記第1差に基づいて前記主走査方向に沿って前記第2画像を拡大する拡大率を示し、
前記第2拡大率は、前記第2差に基づいて前記副走査方向に沿って前記第2画像を拡大する拡大率を示す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記第1マーク画像は、複数の前記第1基準位置を示し、
前記第2マーク画像は、複数の前記第2基準位置を示す、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記複数の前記第1基準位置は、前記第1矩形領域の四隅の位置を含み、
前記複数の前記第2基準位置は、前記第2矩形領域の四隅の位置を含む、請求項5に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
布帛のような伸縮しやすい被記録媒体の両面にインクを用いて印刷するインクジェット記録装置が知られている。このようなインクジェット記録装置として、特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、被記録媒体の表面への画像形成時に、表面の画像全体をタイル状領域に分割する分割線を表面の画像とともに形成する。特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、タイル状領域を構成する単位タイル画像に対応する画像データを分割線の歪みに応じて補正して、裏面に画像を形成する。特許文献1に記載のインクジェット記録装置によれば、被記録媒体の裏面の画像が表面の画像の鏡像となるように、被記録媒体の両面に印刷できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-315484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインクジェット記録装置では、被記録媒体の表面の画像と裏面の画像とが互いに異なる形状である場合であっても、表面の画像全体を構成する単位タイル画像の各々について歪みを解析することを要する。このため、画像データを補正する処理時間を短縮できない。従って、インクによる用紙への両面印刷の際に、表面の画像と裏面の画像との位置ずれを抑制することが煩雑であった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、インクによる用紙への両面印刷の際に、表面の画像と裏面の画像との位置ずれを簡素な構成で抑制できるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット記録装置は、用紙搬送機構と、記録ヘッドと、制御部とを備える。前記用紙搬送機構は、複数の用紙を搬送する。前記記録ヘッドは、搬送された前記複数の用紙に、画像データに基づいてインクを用いて画像を形成する。前記制御部は、前記用紙搬送機構と前記記録ヘッドとの動作を制御する。前記複数の用紙は、第1用紙と、第2用紙とを含む。前記第1用紙は、第1面と、前記第1面の裏面としての第2面とを有する。前記第2用紙は、第3面と、前記第3面の裏面としての第4面とを有する。前記画像データは、第1画像を示す第1画像データと、第2画像を示す第2画像データとを含む。前記記録ヘッドは、前記第1画像データに基づいて前記第1面に前記第1画像と第1マーク画像とを形成した後に、前記第2画像データに基づいて前記第2面に前記第2画像と第2マーク画像とを形成する。前記第1マーク画像は、前記第1画像を形成可能な第1矩形領域における第1基準位置を示す。前記第2マーク画像は、前記第2画像を形成可能な第2矩形領域における第2基準位置を示す。前記制御部は、前記第4面に形成するための前記第2画像の拡大率を、前記第1基準位置と前記第2基準位置とのずれに基づいて決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のインクジェット記録装置によれば、用紙へのインクによる両面印刷の際に、表面の画像と裏面の画像との位置ずれを簡素な構成で抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置を示す構成図であり、(b)及び(c)は、第1用紙を示す図である。
図2】(a)及び(b)は、第2用紙を示す図である。
図3】インクジェット記録装置を示す図である。
図4】第1用紙を示す図である。
図5】(a)及び(b)は、第1用紙を示す図である。
図6】(a)及び(b)は、コンタクトガラスと第1用紙とを示す図である。
図7】入力表示部を示す図である。
図8】両面印刷処理を示すフローチャートである。
図9】両面印刷処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、本実施形態において、X軸及びY軸は水平軸に平行であり、Z軸は鉛直軸に平行である。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。X軸に沿った方向は、本発明の「副走査方向」の一例である。Y軸に沿った方向は、本発明の「主走査方向」の一例である。
【0010】
図1を参照して、本発明に係るインクジェット記録装置1の実施形態を説明する。図1(a)は、インクジェット記録装置1を示す構成図である。図1(b)及び(c)は、第1用紙P1を示す図である。インクジェット記録装置1は、例えば、プリンター、複写機、ファクシミリ、又はこれらの機能を兼ね備えた複合機である。
【0011】
図1(a)に示すように、インクジェット記録装置1は、記憶部40と、制御部10と、画像形成部30とを備える。記憶部40は、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)によって構成される。記憶部40は、各種のデータ、制御プログラム、及びアプリケーションプログラムを記憶する。制御プログラムは、インクジェット記録装置1の各部の動作を制御するためのプログラムであり、制御部10によって実行される。
【0012】
記憶部40には、各種のデータとして、例えば、画像データJが記憶される。画像データJは、画像を示す。画像は、例えば、文字のような記号、図形、又は、記号と図形との組合せを示す。画像データJは、複数の画素の集合である。複数の画素は、行方向及び列方向に沿ってマトリクス状に配列されており、それぞれに画素データが設定されている。画素データは、濃度又は輝度を示すデータを含む。
【0013】
画像データJは、第1画像データJ1と、第2画像データJ2とを含む。第1画像データJ1は、第1画像を示す。第2画像データJ2は、第2画像を示す。第1画像と第2画像とは、同じ画像でもよいし、異なる画像でもよい。
【0014】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーを含むハードウェア回路である。制御部10は、記憶部40に記憶された制御プログラムをプロセッサーが読み出して実行することによって、インクジェット記録装置1の各部の動作を制御する。制御部10は、例えば、記録ヘッド31と用紙搬送機構32との動作を制御する。また、プロセッサーは、記憶部40に記憶されたアプリケーションプログラムを読み出して実行する。
【0015】
画像形成部30は、用紙搬送機構32と、記録ヘッド31とを含む。用紙搬送機構32は、複数の用紙を搬送する。なお、用紙搬送機構32の構成の詳細については、図3を参照して後述する。
【0016】
記録ヘッド31は、搬送された複数の用紙に、画像データJに基づいてインクKを用いて画像を形成する。以下、画像形成部30が画像データJに基づいてインクKを用いて用紙に画像を形成する動作を「印刷」と記載することがある。
【0017】
複数の用紙は、第1用紙と、第2用紙とを含む。用紙は、紙製であり、例えば、普通紙、コート紙、又はマット紙である。用紙は、例えば、矩形状である。第1用紙は、第1面と、第2面とを有する。第2面は、第1面の裏面である。第1用紙は、例えば、A4サイズの普通紙である。第2用紙は、第3面と、第4面とを有する。第4面は、第3面の裏面である。第2用紙は、第1用紙と同一の品質と形状とを有する用紙であることが好ましい。例えば、第1用紙がA4サイズの普通紙である場合、第2用紙も同様にA4サイズの普通紙である。
【0018】
インクKは、水性インクのような液体である。例えば、水性インクには、溶剤として主に水が使用される。記録ヘッド31が用紙に対して付与するインクKの量は、例えば、用紙に形成される画像の大きさ、複雑さ、及び色彩の付与される面積に比例して増加する。
【0019】
一般に、水性インクを使用する場合、用紙を構成する繊維の間に水が浸透して繊維が膨潤するため、用紙が膨張しやすい。例えば、用紙の表面と裏面とのうち一方の面に画像を形成した直後に、用紙は膨張しやすい。このように膨張する度合いは、例えば、画像データの印字率、又は用紙の種類に依存する。続いて他方の面に画像を形成した場合、用紙はそれ以上膨張しにくい。膨張した用紙は、時間の経過に応じて元のサイズに徐々に戻り得る。例えば、膨張した用紙は、一方の面に画像が印刷されてから24時間が経過すると、元のサイズに戻る。
【0020】
図1(b)に示すように、記録ヘッド31は、例えば、第1画像データJ1に基づいて、第1用紙P1の第1面P1Aに第1画像H1と第1マーク画像M1とを形成する。第1画像H1は、例えば、円を示す図形画像である。
【0021】
第1マーク画像M1は、例えば、十字型、L字型、T字型、又はドット型の図形画像である。第1マーク画像M1は、第1画像H1と重ならないことが好ましい。第1マーク画像M1は、第1基準位置Q1を示す。第1マーク画像M1が十字型の図形画像である場合、第1基準位置Q1は、例えば、十字の交差する位置である。第1基準位置Q1は、第1矩形領域R1における基準の位置を示す。
【0022】
第1矩形領域R1は、第1画像H1を形成可能な矩形状の領域を示す。詳細には、第1矩形領域R1は、第1画像データJ1の複数の画素が配列されている領域に対応する。第1基準位置Q1は、第1矩形領域R1内の位置であればよく、第1矩形領域R1における、例えば、頂点の位置、矩形枠線上の位置、又は、中央の位置である。図1(b)において、第1基準位置Q1は、第1矩形領域R1の左上の頂点の位置である。
【0023】
記録ヘッド31が第1用紙P1の第1面P1Aに第1画像H1と第1マーク画像M1とを形成すると、第1用紙P1は、主面に沿った方向に膨張することがある。ここで、第1用紙P11、第1画像H11、第1矩形領域R11、第1マーク画像M11、及び第1基準位置Q11の各々は、第1用紙P1が膨張していない状態における、第1用紙P1、第1画像H1、第1矩形領域R1、第1マーク画像M1、及び第1基準位置Q1をそれぞれ示す。また、第1用紙P12、第1画像H12、第1矩形領域R12、第1マーク画像M12、及び第1基準位置Q12の各々は、第1用紙P1が膨張した状態における、第1用紙P1、第1画像H1、第1矩形領域R1、第1マーク画像M1、及び第1基準位置Q1をそれぞれ示す。なお、以下の各図では、図を見易くするために、便宜上、膨張の度合いを誇張して記載することがある。
【0024】
図1(c)は、第1用紙P1が膨張した状態を示す。図1(c)に示すように、記録ヘッド31は、第1面P1Aに第1画像H1と第1マーク画像M1とを形成した後に、第2画像データJ2に基づいて第2面P1Bに第2画像H2と第2マーク画像M2とを形成する。第2画像H2は、例えば、三角形を示す図形画像である。以下、画像形成部30が用紙Pの両面に印刷する動作を「両面印刷」と記載することがある。
【0025】
第2マーク画像M2は、第1マーク画像M1と同様に構成されており、例えば、十字型、L字型、T字型、又はドット型の図形画像である。第2マーク画像M2は、第2画像H2と重ならないことが好ましい。第2マーク画像M2は、第2基準位置Q2を示す。第2マーク画像M2が十字型の図形画像である場合、第2基準位置Q2は、例えば、十字の交差する位置である。第2基準位置Q2は、第2矩形領域R2における基準の位置を示す。
【0026】
第2矩形領域R2は、第1矩形領域R1と同様に構成されており、第2画像H2を形成可能な矩形状の領域を示す。詳細には、第2矩形領域R2は、第2画像データJ2の複数の画素が配列されている領域に対応する。第2基準位置Q2は、第2矩形領域R2内の位置であればよく、第2矩形領域R2における、例えば、頂点の位置、矩形枠線上の位置、又は、中央の位置である。図1(c)において、第2基準位置Q2は、第2矩形領域R2の右上の頂点の位置である。
【0027】
第2矩形領域R2の形状は、第1矩形領域R1の形状と同一であることが好ましい。記録ヘッド31が第1面P1Aと第2面P1Bとに画像Hを形成する際、例えば、第1用紙P1に対する上側余白の設定値と下側余白の設定値とを同じ値に、左側余白の設定値と右側余白の設定値とを同じ値に、それぞれデフォルトで設定する。これにより、第1用紙P1が膨張していない状態において、第1面P1Aに対応する第1矩形領域R1と、第2面P1Bに対応する第2矩形領域R2とは、第1用紙P1の表裏を透かすようにして目視した場合に重なり合う。すなわち、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とは、第1用紙P1の主面と直交する方向に重なり合う。
【0028】
制御部10は、第2用紙の第4面に形成するための第2画像H2の拡大率を、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれに基づいて決定する。例えば、ユーザーは、第1用紙P1の表裏を透かすようにして目視し、第1基準位置Q12と第2基準位置Q2とのずれの間隔を視認する。図1(c)において、第2基準位置Q2は、第1基準位置Q12に対して左下方向にずれている。ユーザーは、第2用紙に第1画像H1と第2画像H2とを両面印刷する指示をインクジェット記録装置1に入力する際に、視認したずれの間隔に応じて拡大率指定指示を入力する。拡大率指定指示は、第2画像H2を拡大して第2用紙に形成するための第2画像データJ2の拡大率を指定する指示である。制御部10は、拡大率指定指示に従い拡大率を決定する。なお、拡大率の詳細については、図4図7を参照して後述する。
【0029】
以上、図1を参照して説明したように、本実施形態によれば、記録ヘッド31は、搬送された複数の用紙Pに、画像データJに基づいてインクKを用いて画像Hを形成する。複数の用紙Pは、第1用紙P1と、第2用紙とを含む。記録ヘッド31は、第1用紙P1の第1面P1Aに第1画像データJ1に基づいて第1画像H1と第1マーク画像M1とを形成した後に、第1用紙P1の第2面P1Bに第2画像データJ2に基づいて第2画像H2と第2マーク画像M2とを形成する。制御部10は、第2用紙の第4面に形成するための第2画像H2の拡大率を、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれに基づいて決定する。これにより、用紙Pの一方の面に印刷した第1画像H1が用紙Pの膨張に起因して伸びる場合であっても、他方の面に第2画像H2を拡大して形成し得る。従って、両面印刷による出力用紙において、先に一方の面に印刷した画像Hよりも後に他方の面に印刷した画像Hが縮小されることを抑制できる。その結果、用紙PへのインクKによる両面印刷の際に、表面の画像Hと裏面の画像Hとの位置ずれを簡素な構成で抑制できる。
【0030】
引き続き、図1を参照しつつ、図2を更に参照して、第2用紙P2への両面印刷処理について説明する。図2(a)及び(b)は、第2用紙P2を示す図である。
【0031】
図2(a)に示すように、記録ヘッド31は、第1画像データJ1に基づいて第2用紙P2の第3面P2Aに第1画像H1を形成する。これにより、第2用紙P2は、膨張し得る。その後、記録ヘッド31は、第2画像データJ2と拡大率とに基づいて第2用紙P2の第4面P2Bに拡大第2画像HSを形成する。拡大第2画像HSは、拡大率に従い第2画像H2を拡大した画像を示す。具体的には、拡大第2画像HS1は、第1用紙P1の第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれに基づいて決定した拡大率に従い、第2画像データJ2を拡大して第4面P2Bに形成した画像を示す。
【0032】
ここで、第2用紙P22、及び拡大第2画像HS1は、第2用紙P2が膨張した状態における、第2用紙P2、及び拡大第2画像HSをそれぞれ示す。
【0033】
また、図2(b)に示すように、第2用紙P21、及び拡大第2画像HS2の各々は、第2用紙P2が膨張していない状態における、第2用紙P2、及び拡大第2画像HSをそれぞれ示す。第2用紙P2が膨張していない状態は、例えば、第2用紙P2が膨張した後に元のサイズに遷移した状態を含む。
【0034】
以上、図2を参照して説明したように、記録ヘッド31は、第1画像データJ1に基づいて第2用紙P2の第3面P2Aに第1画像H1を形成した後に、第2画像データJ2と拡大率とに基づいて第4面P2Bに拡大第2画像HSを形成する。従って、第2用紙P2への両面印刷において表面の画像Hと裏面の画像Hとがずれることを、第1用紙P1に対するテスト印刷の結果に応じて低減できる。その結果、ユーザーが意図せずに印刷品質の低下した印刷物を出力することを抑制できる。
【0035】
続いて、図1図2とを参照しつつ、図3を更に参照して、インクジェット記録装置1の構成と動作との詳細を説明する。図3は、インクジェット記録装置1を示す図である。インクジェット記録装置1は、ネットワークを介して外部端末装置との間で有線又は無線通信可能に接続され得る。
【0036】
図3に示すように、インクジェット記録装置1は、図1(a)を参照して説明した記憶部40と、制御部10と、画像形成部30とに加えて、入力表示部80と、読取装置20と、装置筐体100と、給紙部90と、搬入搬送部50と、排出搬送部60と、反転搬送部70とを備える。制御部10は、画像データJの示す画像Hを用紙Pの片面又は両面に形成するように、各部の動作を制御する。制御部10は、読取装置20の読取り結果に基づいて、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれの大きさを算出する。なお、ずれの大きさの算出については、図6を参照して後述する。
【0037】
入力表示部80は、入力部81と、表示部82とを含む。入力表示部80は、例えば、操作パネルである。入力部81には、ユーザーの操作に応じて各種の指示が入力される。詳細には、入力部81は、例えば、タッチパネル機能と種々のハードウェアボタンとを有する。各種の指示は、例えば、拡大率指定指示、両面印刷指示、原稿読取り指示、又は各種の設定指示である。両面印刷指示は、画像Hを示す画像データJに基づいて、両面印刷を行う指示である。原稿読取り指示は、原稿Gの画像Hを読み取る指示である。各種の設定指示は、インクジェット記録装置1の各種の設定を変更する指示である。なお、拡大率指定指示の詳細については、図7を参照して後述する。
【0038】
表示部82は、例えば、タッチパネル機能を有するディスプレーであり、操作パネルに配置される。ディスプレーは、例えば、液晶ディスプレー、又は有機ELディスプレー(Organic ElectroLuminescence display)である。このような表示部82は、入力部81を兼ね得る。詳細には、表示部82は、画面とタッチセンサーとを含み、各種の画像を画面に表示する。各種の画像は、例えば、ソフトウェアボタン、又は、拡大率選択画像である。なお、拡大率選択画像の詳細については、図7を参照して後述する。
【0039】
読取装置20は、原稿搬送装置21と、コンタクトガラス22と、スキャナー23(光学系)とを含む。原稿搬送装置21のトレイ又はコンタクトガラス22には、原稿Gが載置され得る。コンタクトガラス22は、例えば、矩形板状のガラスである。原稿Gは、例えば、第1画像H1と第2画像H2とが形成された第1用紙P1である。読取装置20は、原稿読取り指示に応じて原稿Gの画像を読み取る。読取装置20は、読み取った画像から画像データを生成する。例えば、読取装置20は、第1用紙P1の第1面P1Aから第1マーク画像M1を読み取り、第2面P1Bから第2マーク画像M2を読み取る。
【0040】
給紙部90は、カセット91と、給紙ローラー92とを備える。カセット91は、用紙Pを給紙する。カセット91は、装置筐体100に対して着脱自在に、装置筐体100の内部の下方に配置されている。カセット91内には、複数の用紙Pが積み重ねられた状態で収容される。給紙ローラー92は、カセット91の一端側の上方に配置されている。給紙ローラー92は、カセット91内の用紙Pを搬入搬送部50に搬送する。
【0041】
搬入搬送部50は、画像形成部30の一方側に配置されている。搬入搬送部50は、用紙Pの搬入経路53を構成する複数の搬送ローラー対51を有する。カセット91から搬送される用紙Pは、搬送ローラー対51により、搬入経路53に沿って画像形成部30に搬送される。本実施形態において、搬入搬送部50は、搬送ローラー対51として機能するレジストローラー対52を有する。レジストローラー対52は、搬入経路53の出口側に配置されている。レジストローラー対52は、用紙Pを一時待機させた後、用紙Pを印刷タイミングに合わせて画像形成部30に搬送する。
【0042】
画像形成部30は、用紙Pに画像Hを形成する。画像形成部30が用紙Pに画像Hを形成する方式はインクジェット記録方式である。画像形成部30は、給紙部90の上方に配置されている。画像形成部30は、図1(a)を参照して既に説明したように、記録ヘッド31と、用紙搬送機構32とを備える。
【0043】
記録ヘッド31は、ヘッド部311を含む。詳細には、ヘッド部311は、用紙搬送機構32によって搬送された用紙Pに、インクKを吐出して画像Hを形成する。本実施形態において、画像形成部30は、用紙搬送方向の上流側から下流側に向けて並設された4個のヘッド部311Y、311M、311C、及び311Kを有している。ヘッド部311Y、311M、311C、及び311Kの各々は、用紙搬送機構32の幅方向(Y方向)に配列された複数のノズル(図示せず)を備える。インクKは、複数のノズルから、例えば、第1用紙P1の第1面P1Aへ吐出される。ヘッド部311はライン型と称される。例えば、ライン型のヘッド部311は、装置筐体100に固定されている。
【0044】
両面印刷指示が入力部81に入力されると、制御部10は、第1面P1Aに第1画像H1と第1マーク画像M1とを形成した後に第2面P1Bに第2画像H2と第2マーク画像M2とを形成するように、画像形成部30を制御する。さらに、制御部10は、第2用紙P2の第3面P2Aに第1画像H1を形成した後に第4面P2Bに拡大第2画像HSを形成するように、画像形成部30を制御する。
【0045】
例えば、制御部10は、第1面P1Aがヘッド部311の吐出面に対向する状態で、第1用紙P1が用紙搬送機構32に吸着されている間に、インクKを第1面P1Aへ吐出するようにヘッド部311を制御する。また、制御部10は、第2面P1Bがヘッド部311の吐出面に対向する状態で、第1用紙P1が用紙搬送機構32に吸着されている間に、インクKを第2面P1Bへ吐出するようにヘッド部311を制御する。
【0046】
用紙搬送機構32は、支持ローラー321と、駆動ローラー322と、テンションローラー323と、搬送ベルト324と、吸引部325とを備える。
【0047】
搬送ベルト324は無端状で、支持ローラー321、駆動ローラー322及びテンションローラー323を囲むように張設されている。搬送ベルト324は、搬入搬送部50から用紙Pを受け取って、用紙Pを排出搬送部60へ搬送する。搬送ベルト324には厚さ方向に貫通する複数の貫通孔(図示せず)が穿孔されている。
【0048】
吸引部325は、ファン又は真空ポンプのような吸引手段として機能する。吸引部325を駆動すると負圧が発生する。負圧は搬送ベルト324の複数の貫通孔を介して搬送ベルト324の一方の面に支持された用紙Pに作用し、用紙Pが搬送ベルト324上に吸引される。
【0049】
駆動ローラー322は、支持ローラー321に対して用紙搬送方向に間隔をおいて配置されている。駆動ローラー322は、駆動部によって回転駆動される。駆動部は、例えば、モーターである。駆動ローラー322は、搬送ベルト324を用紙Pの搬送方向である第1方向(矢印D1方向)、及び第1方向D1の反対方向である第2方向(矢印D2方向)に回転させる。テンションローラー323は支持ローラー321と駆動ローラー322との間の下方に配置され、搬送ベルト324にテンションを付与する。
【0050】
排出搬送部60は、画像形成部30の他方側に配置されている。排出搬送部60は、搬出経路63を構成する複数の搬送ローラー対61と、排出トレイ62とを有する。排出トレイ62は、装置筐体100の外部の他方側に配置されている。用紙搬送機構32から搬送される片面印刷済みの用紙Pは、搬送ローラー対61により、搬出経路63に沿って排出トレイ62へ搬送される。
【0051】
反転搬送部70は、両面印刷を行うための搬送部である。反転搬送部70は、画像形成部30の上方に配置されている。反転搬送部70は、反転経路72を構成する複数の搬送ローラー対71を有する。両面印刷を行う場合、例えば、第1面P1Aに画像Hが形成された第1用紙P1は、排出搬送部60を介して反転搬送部70へ搬送される。反転搬送部70へ搬送された第1用紙P1は、反転経路72において搬送方向が切り替えられ、未印刷の面(第2面P1B)がヘッド部311に向いた状態で、第1用紙P1は再び用紙搬送機構32へ搬送される。記録ヘッド31は、再び用紙搬送機構32へ搬送された第1用紙P1の第2面P1BにインクKを供給する。
【0052】
以上、図1図3を参照して説明したように、本実施形態によれば、インクジェット記録装置1は、読取装置20を更に備えることが好ましい。読取装置20は、第1用紙P1の第1面P1Aから第1マーク画像M1を読み取り、第2面P1Bから第2マーク画像M2を読み取る。制御部10は、読取装置20の読取り結果に基づいて、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれの大きさを算出する。これにより、第1用紙P1に対して、ユーザーが第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれを目視する手間を軽減できる。従って、両面印刷の際の利便性を向上させることができる。
【0053】
続いて、図1図3を参照しつつ、図4図7を更に参照して、拡大率の詳細について説明する。図4及び図5は、第1用紙P1を示す図である。図4に示すように、拡大率は、第1拡大率と、第2拡大率とを含むことが好ましい。詳細には、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれは、第1差N1と、第2差N2とを含む。第1差N1は、記録ヘッド31の主走査方向D3に沿った、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2との差を示す。第2差N2は、副走査方向D4に沿った、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2との差を示す。副走査方向D4は、主走査方向D3と直交する。
【0054】
拡大率は、第1拡大率と、第2拡大率とを含む。第1拡大率は、第1差N1に基づいて主走査方向D3に沿って第2画像H2を拡大する拡大率を示す。第2拡大率は、第2差N2に基づいて副走査方向D4に沿って第2画像H2を拡大する拡大率を示す。これにより、制御部10は、主走査方向D3に沿った用紙Pの伸びと、副走査方向D4に沿った用紙Pの伸びとの各々に対応する拡大率を決定できる。従って、両面印刷の際に、印刷位置のずれを低減する精度を向上させることができる。
【0055】
なお、図5(a)及び(b)に示すように、第1マーク画像M1は、複数の第1基準位置Q1を示し得る。複数の第1基準位置Q1は、第1矩形領域R1の四隅の位置を含むことが好ましい。また、第2マーク画像M2は、複数の第2基準位置Q2を示し得る。複数の第2基準位置Q2は、第2矩形領域R2の四隅の位置を含むことが好ましい。
【0056】
具体的には、図5(a)に示すように、記録ヘッド31は、第1画像データJ1に基づいて第1用紙P1の第1面P1Aに第1画像H1と複数の第1マーク画像M1とを形成した後に、第2画像データJ2に基づいて第2面P1Bに第2画像H2と複数の第2マーク画像M2とを形成し得る。
【0057】
複数の第1マーク画像M1は、第1マーク画像M12A、M12B、M12C、及びM12Dである。第1マーク画像M12A、M12B、M12C、及びM12Dの各々は、第1基準位置Q12A、Q12B、Q12C、及びQ12Dをそれぞれ示す。第1基準位置Q12A、Q12B、Q12C、及びQ12Dの各々は、第1矩形領域R12(図1(b)参照)の4つの頂点にそれぞれ対応する。
【0058】
複数の第2マーク画像M2は、例えば、第2マーク画像M2A、M2B、M2C、及びM2Dである。第2マーク画像M2A、M2B、M2C、及びM2Dの各々は、第2基準位置Q2A、Q2B、Q2C、及びQ2Dをそれぞれ示す。第2基準位置Q2A、Q2B、Q2C、及びQ2Dの各々は、第2矩形領域R2の4つの頂点にそれぞれ対応する。
【0059】
両面印刷された第1用紙P1において、第1基準位置Q12A、Q12B、Q12C、及びQ12Dの各々は、第2基準位置Q2A、Q2B、Q2C、及びQ2Dにそれぞれ対応する。制御部10は、第1基準位置Q12A、Q12B、Q12C、及びQ12Dの各々と、第2基準位置Q2A、Q2B、Q2C、及びQ2Dの各々とのずれに基づいて、第2画像H2の拡大率を決定し得る。このようにして、ユーザーは、第1用紙P1の四隅と近い位置で、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれを比べることができる。従って、第1用紙P1の伸びが不均等に生じた場合であっても、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれを容易に認識できる。その結果、両面印刷の際に、印刷位置のずれを低減する精度を更に向上させることができる。
【0060】
さらに、図5(b)に示すように、複数の第1マーク画像M1は、第1矩形領域R12の四辺の各々の中点に配置されてもよいし、第1矩形領域R12の中央に配置されてもよい。同様に、複数の第2マーク画像M2は、第2矩形領域R2の四辺の各々の中点に配置されてもよいし、第2矩形領域R2の中央に配置されてもよい。このようにして、ユーザーは、第1マーク画像M1と、第2マーク画像M2とのずれを複数の位置で比べることができる。従って、両面印刷の際に、印刷位置のずれを低減する精度を更に向上させることができる。
【0061】
さらに、図6に示すように、読取装置20(図3参照)は、コンタクトガラス22上に配置される第1用紙P1から、コンタクトガラス22を介して第1マーク画像M1と第2マーク画像M2とを読み取ることが好ましい。図6は、コンタクトガラス22と第1用紙P1とを示す図である。具体的には、図6(a)は、コンタクトガラス22上に第1面P1Aを当接させて鉛直上方から第1用紙P1を平面視した状態を示す。スキャナー23は、ユーザーの原稿読取り指示に従い、例えば、コンタクトガラス22上に配置される第1用紙P1の第1面P1Aから、コンタクトガラス22を介して第1マーク画像M12Dを読み取る。
【0062】
図6(b)は、コンタクトガラス22上に第2面P1Bを当接させて鉛直上方から第1用紙P1を平面視した状態を示す。スキャナー23は、ユーザーの原稿読取り指示に従い、例えば、コンタクトガラス22上に配置される第1用紙P1の第2面P1Bから、コンタクトガラス22を介して第2マーク画像M2Aを読み取る。
【0063】
制御部10は、第1距離と第2距離との差に基づいて、第1基準位置Q12Dと第2基準位置Q2Aとのずれの大きさを算出する。第1距離は、コンタクトガラス22の隅部22Aと第1基準位置Q12Dとの間の距離を示す。詳細には、第1距離は、図6(a)に示すように、第3距離X1と第4距離Y1とを含む。第3距離X1は、副走査方向D4に沿った、隅部22Aと第1基準位置Q12Dとの間の距離を示す。第4距離Y1は、主走査方向D3に沿った、隅部22Aと第1基準位置Q12Dとの間の距離を示す。
【0064】
一方、第2距離は、コンタクトガラス22の隅部22Aと第2基準位置Q2Aとの間の距離を示す。詳細には、第2距離は、図6(b)に示すように、第5距離X2と第6距離Y2とを含む。第5距離X2は、副走査方向D4に沿った、隅部22Aと第2基準位置Q2Aとの間の距離を示す。第6距離Y2は、主走査方向D3に沿った、隅部22Aと第2基準位置Q2Aとの間の距離を示す。
【0065】
第3距離X1と、第5距離X2との差は、図4を参照して説明した第1差N1の一例に相当する。第4距離Y1と、第6距離Y2との差は、図4を参照して説明した第2差N2の一例に相当する。制御部10は、例えば、下記の表のような読取り結果に基づいて拡大率を決定する。
【0066】
【表1】
【0067】
上記の表は、第1用紙P1が第1定型用紙である場合の読取り結果である。第1定型用紙は、最小サイズの用紙Pの一例である。上記の表において、デフォルト値は、第1定型用紙が膨張していない状態における各値を示す。デフォルト値以外の主走査方向D3の用紙幅は、デフォルト値の用紙幅に第1差N1を加えた値である。副走査方向D4の用紙幅は、デフォルト値の用紙幅に第2差N2を加えた値である。制御部10は、デフォルト値以外の用紙幅をデフォルト値の用紙幅で除して拡大率を算出する。このようにして、制御部10は、主走査方向D3について、例えば、第2画像データJ2に対する7種類の第1拡大率を決定する。同様に、制御部10は、副走査方向D4について、例えば、第2画像データJ2に対する7種類の第2拡大率を決定する。7種類の第1拡大率と第2拡大率との各々は、例えば、それぞれ100.00%、100.05%、100.10%、100.15%、100.20%、100.25%、及び100.30%である。第1拡大率と第2拡大率とを示す情報は、記憶部40に記憶される。
【0068】
【表2】
【0069】
上記の表は、第1用紙P1が第2定型用紙である場合の読取り結果である。第2定型用紙は、最大サイズの用紙Pの一例である。第1用紙P1が第1定型用紙である場合と同様に、制御部10は、第1拡大率と第2拡大率とを決定する。
【0070】
以上、図6を参照して説明したように、本実施形態によれば、読取装置20は、コンタクトガラス22上に配置される第1用紙P1から、コンタクトガラス22を介して第1マーク画像M1と第2マーク画像M2とを読み取る。制御部10は、第1距離と第2距離との差に基づいて、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれの大きさを算出する。これにより、制御部10は、主走査方向D3と副走査方向D4との各々について、第2画像データJ2に対する拡大率を決定できる。従って、両面印刷の際に、印刷位置のずれを低減する精度を簡素な構成で向上させることができる。
【0071】
なお、図7に示すように、入力部81には、拡大率指定指示が入力され得る。図7は、入力表示部80を示す図である。具体的には、制御部10は、拡大率選択画像83を表示するように、表示部82を制御する。拡大率選択画像83は、拡大率指定指示を入力するために拡大率を選択する画像である。拡大率選択画像83は、第1拡大率選択画像83Aと第2拡大率選択画像83Bとを含む。ユーザーは、第1拡大率選択画像83Aと第2拡大率選択画像83Bとを介して、例えば、それぞれ7種類の第1拡大率と第2拡大率とを選択可能である。第1拡大率と第2拡大率とが選択されることにより、入力部81には、拡大率指定指示が入力される。このようにして、ユーザーは、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれに基づいて、拡大率を指定したり変更できる。従って、両面印刷の際の利便性に応じて所望の拡大率に調整できる。
【0072】
続いて、図1図8を参照して、インクジェット記録装置1の動作について説明する。図8は、両面印刷処理を示すフローチャートである。ステップS101~ステップS109が実行されることによって、インクジェット記録装置1は、第1用紙P1と第2用紙P2とにそれぞれ両面印刷処理を実行する。具体的には、以下の通りである。
【0073】
ステップS101において、記録ヘッド31は、第1用紙P1の第1面P1Aに第1画像H1と第1マーク画像M1とを形成する。処理は、ステップS103に進む。
【0074】
次に、ステップS103において、記録ヘッド31は、第1用紙P1の第2面P1Bに第2画像H2と第2マーク画像M2とを形成する。処理は、ステップS105に進む。
【0075】
次に、ステップS105において、制御部10は、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれに基づいて、第2用紙P2の第4面P2Bに形成するための第2画像H2の拡大率を決定する。処理は、ステップS107に進む。
【0076】
次に、ステップS107において、記録ヘッド31は、第2用紙P2の第3面P2Aに第1画像H1を形成する。処理は、ステップS109に進む。
【0077】
次に、ステップS109において、記録ヘッド31は、第2用紙P2の第4面P2Bに拡大第2画像HSを形成する。そして、処理は終了する。
【0078】
続いて、図1図9を参照して、インクジェット記録装置1の動作について更に説明する。図9は、両面印刷処理を示すフローチャートである。ステップS201~ステップS209が実行されることによって、インクジェット記録装置1は、第1用紙P1と第2用紙P2とにそれぞれ両面印刷処理を実行する。なお、図9に示すステップS2051~ステップS2057の各々は、図8を参照して説明したステップS105の処理の一例である。具体的には、以下の通りである。
【0079】
図9に示すステップS201及びステップS203の各々は、図8を参照して説明したステップS101及びステップS103の各々に対応しており、同様の処理を実行する。処理はステップS2051に進む。
【0080】
次に、ステップS2051において、読取装置20は、第1用紙P1の第1面P1Aから第1マーク画像M1を読み取り、第2面P1Bから第2マーク画像M2を読み取る。処理はステップS2053に進む。
【0081】
次に、ステップS2053において、制御部10は、第1基準位置Q1と第2基準位置Q2とのずれの大きさを算出する。処理はステップS2055に進む。
【0082】
次に、ステップS2055において、制御部10は、入力部81に拡大率指定指示が入力されたか否かを判定する。拡大率指定指示が入力された場合(ステップS2055でYes)に、処理はステップS2057に進む。一方、拡大率指定指示が入力されていない場合(ステップS2055でNo)に、処理はステップS2059に進む。
【0083】
ステップS2055でYesの場合に、ステップS2057において、第2画像H2の拡大率が指定される。処理は、ステップS2059に進む。
【0084】
ステップS2055でNoの場合に、又はステップS2057の次に、ステップS2059において、制御部10は、第2画像H2の拡大率を決定する。処理は、ステップS207に進む。
【0085】
図9に示すステップS207及びステップS209の各々は、図8を参照して説明したステップS107及びステップS109の各々に対応しており、同様の処理を実行する。そして、処理は終了する。
【0086】
なお、ユーザーによる設定に応じて、図9に示すステップS2051とステップS2053との処理を省略してもよいし、又は、ステップS2055とステップS2057との処理を省略してもよい。
【0087】
以上、図面(図1図9)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。また、上記の各実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明の形成が可能である。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質、形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の構成から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0088】
(1)図5(b)を参照して説明したように、第1マーク画像M1は、第1矩形領域R12の中央に配置される場合、第1画像H1と重なることがある。さらに、第2マーク画像M2は、第2矩形領域R2の中央に配置される場合、第2画像H2と重なることがある。しかしながら、本発明はこれに限られない。例えば、第1用紙P1の第1面P1Aに第1画像H1と第1マーク画像M1とを形成する際に、第1画像H1の全体領域のうち第1マーク画像M1と重なる部分の周辺を白抜きで形成するとともに、第1マーク画像M1を形成してもよい。同様に、第1用紙P1の第2面P1Bに第2画像H2と第2マーク画像M2とを形成する際に、第2画像H2の全体領域のうち第2マーク画像M2と重なる部分の周辺を白抜きで形成するとともに、第2マーク画像M2を形成してもよい。これにより、ユーザーは、第1基準位置Q12と第2基準位置Q2とのずれを容易に視認できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、インクジェット記録装置の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 インクジェット記録装置
10 制御部
31 記録ヘッド
32 用紙搬送機構
H 画像
H1、H11、H12 第1画像
H2 第2画像
J 画像データ
J1 第1画像データ
J2 第2画像データ
K インク
M1、M11、M12、M12A、M12B、M12C、M12D 第1マーク画像
M2、M2A、M2B、M2C、M2D 第2マーク画像
P 用紙
P1、P11、P12 第1用紙
P1A 第1面
P1B 第2面
P2、P21、P22 第2用紙
P2A 第3面
P2B 第4面
Q1、Q11、Q12、Q12A、Q12B、Q12C、Q12D 第1基準位置
Q2、Q2A、Q2B、Q2C、Q2D 第2基準位置
R1、R11、R12 第1矩形領域
R2 第2矩形領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9