(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20221025BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20221025BHJP
F04B 39/06 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H02K9/19 A
F04D29/58 P
F04B39/06 N
(21)【出願番号】P 2018164540
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 亜吐武
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-138542(JP,A)
【文献】特開2016-156281(JP,A)
【文献】特開2009-081972(JP,A)
【文献】特開平8-251872(JP,A)
【文献】特開2002-191149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
F04D 29/58
F04B 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線を中心に回転するロータと前記ロータを包囲するステータとを含むモータと、
前記ステータの周囲に配置される冷却ジャケットと、
前記冷却ジャケットに冷却媒体を供給する冷却媒体供給部と、を備え、
前記ステータは、前記回転軸線に沿って伸びるステータ本体と、前記ステータ本体に設けられると共に前記ステータ本体の端部から前記回転軸線の方向に突出するコイルエンドを含むステータコイルと、を有し、
前記冷却ジャケットは、前記冷却媒体が流れる流路と、前記ステータと熱的に接続され第1の熱抵抗を有する第1の熱経路を構成する第1の熱接続部と、前記ステータと熱的に接続され前記第1の熱抵抗より大きい第2の熱抵抗を有する第2の熱経路を構成する第2の熱接続部と、を有し、
前記冷却媒体供給部は、前記第2の熱接続部に設けられた前記流路の端部に対して前記冷却媒体を供給
し、
前記コイルエンドと前記冷却ジャケットとの間には、前記コイルエンドに接すると共に前記冷却ジャケットに接する充填部が設けられている、回転機械。
【請求項2】
前記第1の熱接続部は、前記ステータ本体の外周面に接触し、
前記第2の熱接続部は、前記コイルエンドに対面すると共に前記コイルエンドから離間する、請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記冷却ジャケットは、前記流路である第1の流路と、前記第1の流路とは別の第2の流路と、前記ステータと熱的に接続され前記第1の熱抵抗より大きい第3の熱抵抗を有する第3の熱経路を構成する第3の熱接続部と、をさらに有し、
前記ステータコイルは、前記コイルエンドである第1のコイルエンドと、前記第1のコイルエンドとは逆側に突出する第2のコイルエンドと、を含み、
前記第3の熱接続部は、前記第2のコイルエンドに対面すると共に前記第2のコイルエンドから離間し、
前記冷却媒体供給部は、前記第3の熱接続部に設けられた前記第2の流路の端部に対して前記冷却媒体をさらに供給する、請求項2に記載の回転機械。
【請求項4】
前記第1の流路及び前記第2の流路のそれぞれの別の端部は、前記第1の熱接続部において前記ステータ本体の前記回転軸線に沿った中央に互いに隣接して設けられると共に、前記冷却媒体を排出する、請求項3に記載の回転機械。
【請求項5】
前記流路は、前記回転軸線のまわりにらせん状に設けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、高いエネルギ効率を維持しつつ、モータを好適に冷却することが可能な圧縮機を開示する。この圧縮機は、らせん状の流路が設けられたモータケーシングを備えている。当該流路に水などを流通させてモータケーシングに収容された固定子などの部品を冷却する。
【0003】
特許文献2は、回転機器において熱膨張に起因する回転軸の伸長を抑制する技術を開示する。この回転機器も、ケーシングにおけるステータの近傍に、ステータを冷却するための冷却部を有する。冷却部には、冷却水が循環されて、ステータの熱を奪う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-207864号公報
【文献】特開2008-193756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転機械の動作は、熱を発生させる。この熱によって回転機械を構成する各部品の温度が上昇すると、所望の性能を発揮できなくなることが生じ得る。そこで、特許文献1、2に開示された冷却機構が適用される。しかし、回転機械の出力が向上すると、発熱量も増加する。従って、冷却性能のさらなる向上が望まれていた。
【0006】
本開示は、冷却性能の向上が可能な回転機械を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態である回転機械は、回転軸線を中心に回転するロータとロータを包囲するステータとを含むモータと、ステータの周囲に配置される冷却ジャケットと、冷却ジャケットに冷却媒体を供給する冷却媒体供給部と、を備え、冷却ジャケットは、冷却媒体が流れる流路と、ステータと熱的に接続され第1の熱抵抗を有する第1の熱経路を構成する第1の熱接続部と、ステータと熱的に接続され第1の熱抵抗より大きい第2の熱抵抗を有する第2の熱経路を構成する第2の熱接続部と、を有し、冷却媒体供給部は、第2の熱接続部に設けられた流路の端部に対して冷却媒体を供給する。
【0008】
この回転機械は、ステータと冷却ジャケットとが互いに異なる熱抵抗値を有する2つの熱経路を有する。そして、冷却媒体供給部は、熱抵抗値の大きい熱経路を構成する部分に設けられた流路の端部に対して、冷却媒体を供給する。相対的に熱移動し難い部分に新鮮な冷却媒体が供給されることで、ステータから冷却ジャケットへの熱移動を促進させることが可能になる。従って、冷却性能を向上させることができる。
【0009】
一形態の回転機械において、ステータは、回転軸線に沿って伸びるステータ本体と、ステータ本体に設けられると共にステータ本体の端部から回転軸線の方向に突出するコイルエンドを含むステータコイルと、を有し、第1の熱接続部は、ステータ本体の外周面に接触し、第2の熱接続部は、コイルエンドに対面すると共にコイルエンドから離間してもよい。この構成によれば、ステータ本体の外周面に対して接触する第1の熱接続部による第1の熱経路の第1の熱抵抗よりも、コイルエンドから離間する第2の熱接続部による第2の熱経路の第2の熱抵抗が大きくなる。そうすると、熱抵抗の大きい第2の熱接続部が有する流路の端部に新鮮な冷却媒体が提供されることになるので、コイルエンドが効率よく冷却される。
【0010】
一形態の回転機械において、冷却ジャケットは、流路である第1の流路と、第1の流路とは別の第2の流路と、ステータと熱的に接続され第1の熱抵抗より大きい第3の熱抵抗を有する第3の熱経路を構成する第3の熱接続部と、をさらに有し、ステータコイルは、コイルエンドである第1のコイルエンドと、第1のコイルエンドとは逆側に突出する第2のコイルエンドと、を含み、第3の熱接続部は、第2のコイルエンドに対面すると共に第2のコイルエンドから離間し、冷却媒体供給部は、第3の熱接続部に設けられた第2の流路の端部に対して冷却媒体をさらに供給してもよい。この構成によれば、冷却ジャケットは第1のコイルエンドに対応する流路と、第2のコイルエンドに対応する流路と、を有する。その結果、第1及び第2のコイルエンドは、それぞれさらに効率よく冷却される。従って、回転機械の冷却性能をさらに向上させることができる。
【0011】
一形態の回転機械において、第1の流路及び第2の流路のそれぞれの別の端部は、第1の熱接続部においてステータ本体の回転軸線に沿った中央に互いに隣接して設けられると共に、冷却媒体を排出してもよい。この構成によっても、回転機械の冷却性能を好適に向上させることができる。
【0012】
一形態の回転機械において、流路は、回転軸線のまわりにらせん状に設けられてもよい。この構成によっても、回転機械の冷却性能を効率的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、モータの冷却性能の向上が可能な回転機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る回転機械の断面を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された冷却ジャケットの断面を拡大して示す図である。
【
図3】
図3は、モータ及び冷却ジャケットを熱回路としてモデル化した図である。
【
図4】
図4は、変形例に係る冷却ジャケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示す回転機械1は、例えば、モータ2を有する二段式の遠心圧縮機である。具体的には、回転機械1は、モータ2と、冷却ジャケット3と、冷却装置4(冷却媒体供給部)と、モータケーシング5と、一対のコンプレッサ8と、を有する。モータ2には、回転軸21が設けられており、回転軸21の両端にコンプレッサ8のインペラ8aがそれぞれ連結されている。円柱状の回転軸21は、一対の軸受7によって支持され、モータケーシング5に対してその軸線La(回転軸線)を中心に回転する。冷却ジャケット3は、冷却装置4から供給された冷却媒体によって、モータ2の動作に起因して生じた熱を回収する。冷却媒体は、例えば水である。モータケーシング5は、モータ2及び冷却ジャケット3などを収容する。なお、冷却装置4は、
図1に示すようにモータケーシング5の外部に配置されてもよいし、モータケーシング5の内部に収容されてもよい。
【0017】
モータケーシング5は、例えば円筒状を呈している。モータケーシング5の内周面には、一体化されたモータ2及び冷却ジャケット3が固定されている。モータケーシング5の材質は、例えばダクタイル鋳鉄(Ferrum Casting Ductile:FCD)等である。モータケーシング5の内周側であって軸方向Daの両端部には、軸受7を支持する軸受ケーシング63が設けられている。
【0018】
モータ2は、ロータ22と、ステータ23と、を有する。ステータ23に交流電流が提供されると、ロータ22及びステータ23の相互作用によって、ロータ22にトルクが生じるので、ロータ22に固定された回転軸21が回転する。
【0019】
ロータ22は、回転軸21に取り付けられている。ロータ22が固定された位置は、回転軸21の軸方向Da(以下、単に「軸方向Da」と称する)の略中央である。
【0020】
ステータ23は、回転軸21の周方向に沿ってロータ22を包囲している。
図2に示すように、ステータ23は、ステータコア24(ステータ本体)と、ステータコイル25と、を含む。軸線Laに沿って伸びる円筒状のステータコア24は、ロータ22を包囲するように設けられている。ステータコア24は、端面24a、24bを有する。ステータコイル25は、ステータコア24に巻き回された導線により構成されている。ステータコイル25において、ステータコア24から突出した部分は、いわゆるコイルエンド25a(第1のコイルエンド)及びコイルエンド25b(第2のコイルエンド)である。コイルエンド25a、25bは、ステータコア24の両端よりも軸方向Daに沿って突出している。より詳細には、コイルエンド25aは、端面24aから突出する。コイルエンド25bは、端面24bから突出する。
【0021】
冷却ジャケット3は、ステータ23の周囲に設けられている。つまり、冷却ジャケット3は、周方向に沿ってステータ23を包囲する。また、冷却ジャケット3は、ステータ23の端部よりも軸方向Daに沿って突出する回転軸21及びロータ22の一部も包囲する。ここでいう「ステータ23の端部」とは、コイルエンド25a、25bである。つまり、軸方向Daに沿った冷却ジャケット3の長さは、軸方向Daに沿ったステータ23の長さよりも長い。冷却ジャケット3には、冷却媒体が流れる一対の冷却流路11A(第1の流路)及び冷却流路11B(第2の流路)が形成されている。
【0022】
冷却ジャケット3は、ステータ23を包囲する円筒状のインナーハウジング9と、インナーハウジング9に外装される円筒状のアウターハウジング10と、を有する。インナーハウジング9は、端面9a、9bと、内周面9cと、外周面9dと、を有する。同様に、アウターハウジング10は、端面10a、10bと、内周面10cと、外周面10dと、を有する。インナーハウジング9及びアウターハウジング10は例えば鋳物であり、材質の例としては、アルミニウム(Al)又は鋳鉄等である。鋳造により作成された冷却ジャケット3は、鋳肌を有するので表面の粗さが比較的大きい。表面粗さが大きい場合には表面積が増大する傾向にあるので、熱伝達の観点から有利である。なお、冷却ジャケット3は、鋳造に変えて、三次元造形によって作成されてもよい。三次元造形によれば、より複雑な冷却流路11A、11Bを設けることができる。アウターハウジング10は、インナーハウジング9を包囲する。インナーハウジング9は、インナーハウジング9に設けられたフランジ9eを介してボルト(不図示)によりアウターハウジング10に固定されている。
【0023】
インナーハウジング9は、封止溝9fと、流路溝9g、9hと、を有する。封止溝9fは、矩形の断面を有しており、インナーハウジング9の外周面9dに設けられた輪状の溝部である。冷却媒体を循環させるための流路溝9g、9hも、矩形の断面を有している。一方、流路溝9g、9hは、インナーハウジング9の外周面9dに設けられたらせん状の溝部である。換言すると、流路溝9g、9hは、回転軸21の軸線Laを中心として旋回するようにそれぞれ一続きに形成されている。
【0024】
封止溝9fは、流路溝9g、9hよりも、軸方向Daの外側、つまり回転軸21の両端寄りの位置に設けられている。封止溝9fには、Oリング等のパッキン31が配置されている。パッキン31は、流路溝9g、9hを流れる冷却媒体の漏れを防止する。
【0025】
流路溝9g、9hの開口部分は、アウターハウジング10の内周面10cによって閉鎖されている。換言すると、アウターハウジング10の内周面10cは、インナーハウジング9の外周面9dに密接している。従って、インナーハウジング9及びアウターハウジング10が組み合わされることにより、冷却流路11A、11Bが構成される。つまり、冷却ジャケット3は、冷却流路11A、11Bを有する。
【0026】
冷却流路11A、11Bは、回転軸21の軸線Laを中心として旋回するように形成されている。冷却流路11Aは、接続端11a、11bを有する。冷却流路11Aの接続端11aは、供給管12Aに接続され、接続端11bは排出管13Aに接続されている。同様に、冷却流路11Bも、接続端11c、11dを有する。冷却流路11Bの接続端11cは、供給管12Bに接続され、接続端11dは排出管13Bに接続されている。
【0027】
ここで、冷却ジャケット3がステータ23よりも長いことはすでに述べた。換言すると、軸線Laに沿うインナーハウジング9の長さは、軸線Laに沿うコイルエンド25aからコイルエンド25bまでの距離よりも長い。従って、ステータコア24から突出したステータコイル25(つまり、コイルエンド25a、25b)は、インナーハウジング9に包囲されている。コイルエンド25a、25bは、インナーハウジング9の内周面9cから離間しており、コイルエンド25a、25bとインナーハウジング9の内周面9cとの間には樹脂等による充填部26、27が設けられている。
【0028】
さらに、冷却ジャケット3を別の観点から説明する。冷却ジャケット3は、熱接続部S1(第1の熱接続部)と、熱接続部S2(第2の熱接続部)と、熱接続部S3(第3の熱接続部)とに分けて把握される。
【0029】
熱接続部S1は、ステータコア24の外周面24cとインナーハウジング9の内周面9cとの接触面を含む部分である。例えば、ステータコア24とインナーハウジング9とは、しまりばめ等により機械的に互いに固定されている。熱接続部S2は、コイルエンド25a側に形成されている。熱接続部S2は、充填部26とインナーハウジング9の内周面9cとの接触面を含む部分である。つまり、熱接続部S2は、充填部26を介してコイルエンド25aと熱的に接続されている。同様に、熱接続部S3は、他方のコイルエンド25b側に形成されている。熱接続部S3は、充填部27とインナーハウジング9の内周面9cとの接触面を含む部分である。つまり、熱接続部S3は、充填部27を介してコイルエンド25bと熱的に接続されている。
【0030】
ここで、冷却流路11A、11Bと熱接続部S1、S2、S3との関係について述べる。冷却流路11Aの接続端11aは、熱接続部S2に形成されている。つまり、接続端11aは、コイルエンド25aに対応する位置に設けられている。冷却流路11Bの接続端11cは、熱接続部S3に形成されている。つまり、接続端11cは、コイルエンド25bに対応する位置に設けられている。冷却流路11Aの別の接続端11b及び冷却流路11Bの別の接続端11dは、熱接続部S1に形成されている。つまり、接続端11b、11dは、ステータコア24に対応する位置に設けられている。より詳細には、接続端11b、11dは、軸線Laにおけるステータコア24のほぼ中央近傍に設けられている。また、接続端11b、11dは互いに隣接している。
【0031】
このような構成によれば、冷却媒体は、ステータコア24の両端側(つまり、コイルエンド25a、25b側)から冷却ジャケット3に供給されて、ステータコア24の略中央近傍から排出される。
【0032】
冷却装置4は、冷却ジャケット3に冷却媒体を供給する。なお、冷却装置4は、冷却媒体の供給だけでなく、冷却ジャケット3から冷却媒体を回収してもよい。冷却装置4は、ポンプ41と、冷却媒体収容部42と、冷却媒体回収部43と、熱交換部44と、を有する。ポンプ41は、供給管12A、12Bに接続されている。そして、ポンプ41は、冷却媒体収容部42に収容されている冷却媒体(例えば水)を、供給管12A、12Bに供給する。なお、冷却媒体収容部42は、冷却媒体をポンプ41に提供できればよく、具体的な構成は特に制限されない。冷却媒体回収部43は、排出管13A、13Bに接続されている。そして、回収した冷却媒体は、熱交換部44に送られる。熱交換部44は、冷却ジャケット3において取り入れた熱を放出させ、再び冷却ジャケット3に供給可能な状態とする。この場合、熱交換部44は、冷却媒体をポンプ41に提供する。
【0033】
なお、冷却装置4は、冷却ジャケット3に冷却媒体を供給できればよく、上述した冷却媒体の回収や再利用のための構成(冷却媒体収容部42、冷却媒体回収部43、熱交換部44)は、必要に応じて備えることとしてよい。
【0034】
以下、
図3を参照しつつ、実施形態に係る回転機械1の作用効果について説明する。
図3は、モータ2及び冷却ジャケット3を熱回路としてモデル化した図である。高温側端部は、ステータコア24、コイルエンド25a、25bである。低温側端部は、冷却流路11A、11Bである。そして、それら高温側端部及び低温側端部は、3つの熱経路C1、C2、C3によって互いに接続されている。
【0035】
ステータコア24と冷却流路11A、11Bとは、熱経路C1(第1の熱経路)によって互いに接続されている。熱経路C1は、熱抵抗R1(第1の熱抵抗)を含む。この熱抵抗R1は、ステータコア24の外周面24cとインナーハウジング9の内周面9cとの間の接触熱抵抗である。
【0036】
コイルエンド25aと冷却流路11Aとは、熱経路C2(第2の熱経路)によって互いに接続されている。熱経路C2は、熱抵抗R2(第2の熱抵抗)を含む。この熱抵抗R2は、さらに、熱抵抗成分R2a、R2b、R2cを含む。熱抵抗成分R2aは、コイルエンド25aの表面25aaと充填部26の内周面26cとの間の接触熱抵抗である。熱抵抗成分R2bは、充填部26の熱伝導率に基づく成分である。熱抵抗成分R2cは、充填部26の外周面26dとインナーハウジング9の内周面9cとの間の接触熱抵抗である。
【0037】
コイルエンド25bと冷却流路11Bとは、熱経路C3(第3の熱経路)によって互いに接続されている。熱経路C2と同様に熱経路C3は、熱抵抗R3(第3の熱抵抗)を含む。熱抵抗R3は、さらに、熱抵抗成分R3a、R3b、R3cを含む。熱抵抗成分R3aは、コイルエンド25bの表面25baと充填部27の内周面27cとの間の接触熱抵抗である。熱抵抗成分R3bは、充填部27の熱伝導率に基づく成分である。熱抵抗成分R3cは、充填部27の外周面27dとインナーハウジング9の内周面9cとの間の接触熱抵抗である。
【0038】
これら熱抵抗R1、R2、R3を比較したとき、熱抵抗R2、R3は、熱抵抗R1よりも大きい。つまり、熱接続部S2、S3を含む熱経路C2、C3は、熱接続部S1を含む熱経路C1よりも熱が移動し難い。換言すると、コイルエンド25a、25b側は、ステータコア24側よりも冷却し難い。
【0039】
要するに、冷却ジャケット3と直接に接触していないコイルエンド25a、25bの冷却効率が低いので、十分な冷却能力を得るためには、ステータ23と冷却流路11A、11Bを流れる冷却媒体との全体的な熱伝達率を向上させる必要があった。
【0040】
そこで、回転機械1は、コイルエンド25a、25b側に形成された接続端11a、11cから新鮮な冷却媒体を提供する。ここでいう「新鮮な冷却媒体」とは、ステータ23等の熱を充分に受け入れることが可能な状態である冷却媒体をいう。例えば、冷却媒体への熱移動が、熱を奪う対象の温度と冷却媒体の温度との温度差に基づくとすれば、接続端11a、11cに提供される冷却媒体の温度とコイルエンド25a、25bとの温度差は、接続端11b、11dから排出される冷却媒体の温度とステータコア24との温度差よりも大きい、ということもできる。例えば、コイルエンド25a、25bの温度と、ステータコア24の温度とが略一定であるとみなせるならば、接続端11a、11cに提供される冷却媒体の温度は、接続端11b、11dから排出される冷却媒体の温度よりも低いといえる。
【0041】
従って、回転機械1は、熱移動がし難い箇所へ充分に低温の冷却媒体を提供することにより、熱の移動を促進することができる。
【0042】
要するに、この回転機械1は、モータ2と冷却ジャケット3とが互いに異なる熱抵抗を有する複数の熱経路C1、C2、C3を構成する。そして、冷却装置4は、熱抵抗の大きい熱経路C2、C3を構成する部分に設けられた接続端11a、11cに対して、新鮮な冷却媒体を提供する。相対的に熱移動し難い部分に新鮮な冷却媒体が提供されることで、モータ2から冷却ジャケット3への熱移動を促進させることが可能になる。従って、冷却性能を向上させることができる。つまり、コイルエンド25a、25b側から冷却媒体を導入し、ステータコア24の中央部から導出させる。この構成によれば、コイルエンド25a、25bに低温の冷却媒体を供給できるので、冷却能力が向上する。
【0043】
さらに、回転機械1によれば、コイルエンド25a、25bに対応する冷却ジャケット3の位置(熱接続部S2、S3)に接続端11a、11bを設けることにより、冷却能力を高めている。従って、冷却媒体の流量を増加させることなく、必要な冷却能力を確保できる。そのうえ、流路断面積を小さくすることにより流速を上昇させ、レイノルズ数(Re数)及びヌセルト数(Nu数)を増大させることにより熱伝達率を向上させる必要もない。つまり、回転機械1は、流量の増加や高い揚程を得るための高性能ポンプを要することなく、必要な冷却能力を確保することができる。
【0044】
〔変形例〕
上記実施形態に限定されず、請求項の趣旨を逸脱しない範囲で変形してよい。
【0045】
上記実施形態では、冷却流路11A、11Bの出口である接続端11b、11dを熱接続部S1に設けた。しかし、冷却ジャケットは、コイルエンド25a、25b側に新鮮な冷却媒体を提供可能な構成(熱接続部S2、S3に接続端11a、11bを設けた構成)であればよい。従って、出口である接続端11b、11dの位置及び構成は、特に制限されない。例えば、接続端11bは、熱接続部S1に変えて、熱接続部S2に設けてもよい。同様に、接続端11cは、熱接続部S3に変えて、熱接続部S1に設けてもよい。この構成によれば、一方の冷却流路は、コイルエンド25a側から冷却媒体を受け入れ、ステータコア24を経てコイルエンド25b側から冷却媒体を排出する。他方の冷却流路は、コイルエンド25b側から冷却媒体を受け入れ、ステータコア24を経てコイルエンド25a側から冷却媒体を排出する。また、接続端11c、11dを共通の開口としてもよい。さらに、冷却流路の形状は、らせん状に限定されない。例えば、
図4に示すように、アウターハウジング10Aと組み合わされるインナーハウジング9Aは、軸線Laのまわりに180度ごとに流路20A、20Bの伸びる方向が折り返される折り返し部51、52を有するような構成であってもよい。流路20Aは、供給管12Aaから冷却媒体を受け入れて、排出管13Aaから外部へ排出する。流路20Bは、供給管12Baから冷却媒体を受け入れて、排出管13Baから外部へ排出する。これらのような構成によっても、熱が移動し難いコイルエンド25a、25b側から新鮮な冷却媒体が提供されるので、冷却性能を向上させることができる。
【0046】
冷却装置4の構成は、冷却媒体を冷却ジャケット3に供給可能な構成であればよく、その他の構成については適宜省略や追加してよい。例えば、冷却装置は、冷却媒体回収部43及び熱交換部44を備えておらず、接続端11c、11dから排出された冷却媒体を再利用することなく廃棄してもよい。また、冷却装置は、複数台のポンプを備えてもよい。例えば、接続端11aに接続される第1のポンプと、接続端11bに接続される第2のポンプと、を備えてもよい。
【0047】
例えば、上記の実施形態は、回転機械1の具体例として、二段圧縮機を例示した。回転機械1は、二段圧縮機に限定されない。例えば、回転機械は、一段圧縮機であってもよい。また、回転機械は、ブロワーまたはチラーであってもよい。この場合には、回転機械は、コンプレッサを備えない。
【符号の説明】
【0048】
1 回転機械
2 モータ
3 冷却ジャケット
4 冷却装置(冷却媒体供給部)
5 モータケーシング
7 軸受
8 コンプレッサ
8a インペラ
9,9A インナーハウジング
9a 端面
9b 端面
9c 内周面
9d 外周面
9e フランジ
9f 封止溝
9g 流路溝
9h 流路溝
10,10A アウターハウジング
10a 端面
10b 端面
10c 内周面
10d 外周面
11A 冷却流路(第1の流路)
11B 冷却流路(第2の流路)
11a 接続端(流路の端部)
11b 接続端(別の端部)
11c 接続端(流路の端部)
11d 接続端(別の端部)
12A,12Aa 供給管
12B,12Ba 供給管
13A,13Aa 排出管
13B,13Ba 排出管
21 回転軸
22 ロータ
23 ステータ
24 ステータコア(ステータ本体)
25 ステータコイル
24a 端面
24b 端面
24c 外周面
25a コイルエンド(第1のコイルエンド)
25aa 表面
25b コイルエンド(第2のコイルエンド)
25ba 表面
26 充填部
26c 内周面
26d 外周面
27 充填部
27c 内周面
27d 外周面
31 パッキン
41 ポンプ
42 冷却媒体収容部
43 冷却媒体回収部
44 熱交換部
51,52 折り返し部
63 軸受ケーシング
C1 熱経路(第1の熱経路)
C2 熱経路(第2の熱経路)
C3 熱経路(第3の熱経路)
La 軸線(回転軸線)
Da 軸方向
S1 熱接続部(第1の熱接続部)
S2 熱接続部(第2の熱接続部)
S3 熱接続部(第3の熱接続部)
R1 熱抵抗(第1の熱抵抗)
R2 熱抵抗(第2の熱抵抗)
R2a 熱抵抗成分
R2b 熱抵抗成分
R2c 熱抵抗成分
R3 熱抵抗(第3の熱抵抗)
R3a 熱抵抗成分
R3b 熱抵抗成分
R3c 熱抵抗成分