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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】光学特性測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/57 20060101AFI20221025BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20221025BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G01N21/57
G01N21/27 F
G01J3/02 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018203769
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020071084
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】青松 大貴
(72)【発明者】
【氏名】長井 広治
(72)【発明者】
【氏名】米川 諒
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-166401(JP,A)
【文献】実開昭63-175846(JP,U)
【文献】特開平01-180431(JP,A)
【文献】特開2002-267600(JP,A)
【文献】特開2001-264173(JP,A)
【文献】特開2011-141253(JP,A)
【文献】特開2002-094820(JP,A)
【文献】特開2001-221686(JP,A)
【文献】特開平04-223236(JP,A)
【文献】特開2006-227012(JP,A)
【文献】米国特許第06226085(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
G01J 3/00-3/52
G01J 1/00-1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ユニットと、校正台とを備え、測定対象の光学特性を測定する光学特性測定装置であって、
前記校正台は、
前記測定対象として用いられてゼロ校正を実行するためのゼロ校正部と、
前記測定対象として用いられて白色校正を実行するための白色校正部とを備え、
前記ゼロ校正を実行する場合には、前記ゼロ校正部に前記測定ユニットが取り付けられ、前記白色校正を実行する場合には、前記白色校正部に前記測定ユニットが取り付けられ、
前記測定ユニットは
測定開口を介して照明光で照明された前記測定対象からの反射光を受光して受光光量を表す試料受光信号を出力し、前記照明光の一部を参照光として受光して受光光量を表す参照受光信号を出力し、前記試料受光信号と前記参照受光信号とに基づき前記測定対象の光学特性を測定する光学特性測定部と、
前記ゼロ校正部が前記測定対象として用いられて前記ゼロ校正が正常に実行されたか否かを判定するためのゼロ判定閾値を予め記憶する記憶部と、
前記ゼロ校正がユーザにより実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商であるゼロ校正値と前記ゼロ判定閾値とに基づき、前記ゼロ校正が正常に実行されたか否かを判定する校正判定部と、
前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定されると、前記ゼロ校正部を前記測定対象として用いて、前記ゼロ校正を再実行するように前記ユーザに報知する報知部と、
を備える光学特性測定装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記ゼロ判定閾値として、
前記光学特性測定装置の出荷前に、前記ゼロ校正部を前記測定対象として前記ゼロ校正が実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商である初期ゼロ校正値と、
前記初期ゼロ校正値からの予め定められた差分を表すゼロ差分閾値と、を予め記憶し、
前記校正判定部は、前記ゼロ校正値と前記初期ゼロ校正値との差が前記ゼロ差分閾値を超えると、前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定する、
請求項1に記載の光学特性測定装置。
【請求項3】
測定開口を介して照明光で照明された測定対象からの反射光を受光して受光光量を表す試料受光信号を出力し、前記照明光の一部を参照光として受光して受光光量を表す参照受光信号を出力し、前記試料受光信号と前記参照受光信号とに基づき前記測定対象の光学特性を測定する光学特性測定部と、
前記測定対象として用いられてゼロ校正を実行するためのゼロ校正部と、
前記ゼロ校正部が前記測定対象として用いられて前記ゼロ校正が正常に実行されたか否かを判定するためのゼロ判定閾値を予め記憶する記憶部と、
前記ゼロ校正がユーザにより実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商であるゼロ校正値と前記ゼロ判定閾値とに基づき、前記ゼロ校正が正常に実行されたか否かを判定する校正判定部と、
前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定されると、前記ゼロ校正部を前記測定対象として用いて、前記ゼロ校正を再実行するように前記ユーザに報知する報知部と
所定開口径の開口を有するマスク部材と、
前記測定開口の周辺に設けられ、前記マスク部材が着脱可能に取り付けられるマスク部材装着部と、
前記マスク部材を収納するマスク部材収納部が設けられた校正台と、をえ、
前記ゼロ校正部は、前記校正台に設けられ、
前記光学特性測定部は、前記測定対象からの反射光に正反射成分を含ませるSCI反射特性と、前記測定対象からの反射光から正反射成分を除去するSCE反射特性と、を測定する機能を有し、
前記記憶部は、前記ゼロ判定閾値として、第1閾値と、前記第1閾値より大きい第2閾値と、前記第2閾値より大きい第3閾値と、を予め記憶し、
前記校正判定部は、前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値以上であって、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第2閾値以上かつ前記第3閾値未満のときは、前記マスク部材収納部を前記測定対象として前記ゼロ校正が実行されたために、前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定する、
学特性測定装置。
【請求項4】
前記ユーザによって操作され、前記反射光を受光する受光径を切り替えるための受光径切替部を更に備え、
前記マスク部材は、互いに異なる複数の開口径の開口を有し、
前記受光径切替部は、前記反射光を受光する受光径を、前記開口径に対応する受光径に切り替え、
前記校正判定部は、前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値以上であって、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第3閾値以上のときは、前記マスク部材装着部に取り付けられた前記マスク部材の開口径が、前記受光径切替部により切り替えられた前記受光径に対応していないために、前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定し、
前記報知部は、前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定されると、前記受光径切替部により切り替えられている前記受光径に対応する前記マスク部材を前記マスク部材装着部に取り付けて、前記ゼロ校正を再実行するように前記ユーザに報知する、
請求項3に記載の光学特性測定装置。
【請求項5】
前記マスク部材は、第1開口径の開口と、前記第1開口径より大きい第2開口径の開口と、を有し、
前記受光径切替部は、前記反射光を受光する受光径を、前記第1開口径に対応する第1受光径と、前記第2開口径に対応する第2受光径と、に切り替え、
前記第2受光径は、前記第1開口径より大きく、
前記校正判定部は、前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値以上であって、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第3閾値以上のときは、前記マスク部材装着部に前記第1開口径の開口を有する前記マスク部材が取り付けられ、前記受光径切替部により前記受光径が前記第2受光径に切り替えられた状態で、前記ゼロ校正が実行されたと判定する、
請求項4に記載の光学特性測定装置。
【請求項6】
前記測定対象として用いられて白色校正を実行するための白色校正部を更に備え、
前記マスク部材は、前記照明光及び前記反射光の波長に対して透明なカバー部材が前記開口に取り付けられたカバー付きマスク部材と、前記カバー部材が前記開口に取り付けられていないカバー無しマスク部材と、を含み、
前記校正判定部は、
前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値未満のときは、前記マスク部材装着部に前記カバー無しマスク部材が取り付けられていると判定し、
前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値以上であって、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第2閾値未満のときは、前記マスク部材装着部に前記カバー付きマスク部材が取り付けられていると判定する、
請求項3~5のいずれか1項に記載の光学特性測定装置。
【請求項7】
前記光学特性測定装置の出荷前に、前記カバー付きマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられた状態で、前記白色校正部を前記測定対象として前記SCE反射特性による前記白色校正が実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商が、第1初期白色校正値と定義され、
前記光学特性測定装置の出荷前に、前記カバー無しマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられた状態で、前記白色校正部を前記測定対象として前記SCE反射特性による前記白色校正が実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商が、第2初期白色校正値と定義され、
前記記憶部は、更に、
前記第1初期白色校正値及び前記第2初期白色校正値の一方であるカバー初期値と、
前記第1初期白色校正値と前記第2初期白色校正値との差のほぼ半分である白色差分閾値と、を予め記憶し、
前記校正判定部は、
前記SCE反射特性による前記白色校正が前記ユーザにより実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商である白色校正値と、前記カバー初期値との差が前記白色差分閾値未満である場合、
前記カバー初期値が前記第1初期白色校正値のときは、前記カバー付きマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられていると判定し、
前記カバー初期値が前記第2初期白色校正値のときは、前記カバー無しマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられていると判定する、
請求項6に記載の光学特性測定装置。
【請求項8】
前記校正判定部は、
前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値未満であって、前記SCE反射特性による前記白色校正が前記ユーザにより実行されたときに前記カバー付きマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられていると判定したときは、前記マスク部材装着部に取り付けられている前記マスク部材が、前記カバー無しマスク部材から前記カバー付きマスク部材に取り替えられたと判定し、
前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値以上、かつ、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第2閾値未満であって、前記SCE反射特性による前記白色校正が前記ユーザにより実行されたときに前記カバー無しマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられていると判定したときは、前記マスク部材装着部に取り付けられている前記マスク部材が、前記カバー付きマスク部材から前記カバー無しマスク部材に取り替えられたと判定し、
前記報知部は、前記マスク部材装着部に取り付けられている前記マスク部材が取り替えられたと判定されると、前記ゼロ校正部を前記測定対象として前記ゼロ校正を再実行するように前記ユーザに報知する、
請求項7に記載の光学特性測定装置。
【請求項9】
前記測定対象の光沢度を測定する光沢測定部と、
前記校正台に設けられ、前記測定対象として用いられて光沢校正を実行するための光沢校正部と、を更に備え、
前記記憶部は、前記ゼロ判定閾値として、更に、第4閾値と、前記第4閾値より大きい第5閾値と、を予め記憶し、
前記校正判定部は、前記SCI反射特による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第4閾値以上のときは、前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定する、
請求項3~8のいずれか1項に記載の光学特性測定装置。
【請求項10】
前記校正判定部は、前記SCI反射特による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第4閾値以上であって、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第5閾値未満のときは、前記光沢校正部を前記測定対象として前記ゼロ校正が実行されたと判定し、
前記報知部は、前記光沢校正部を前記測定対象として前記ゼロ校正が実行されたと判定されると、前記光沢校正部を前記測定対象として前記ゼロ校正が実行されたことを前記ユーザに報知する、
請求項9に記載の光学特性測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の光学特性を測定する光学特性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象の色彩、色差、輝度などの光学特性を測定する分光測色計、色彩色差計、輝度計等の光学特性測定装置が知られている。このような光学特性測定装置では、非特許文献1に説明されているように、ゼロ校正を正しく行うことが必要となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】コニカミノルタ株式会社、計測機器、お客様サポート、よくあるご質問、分光測色計・色彩色差計、分光測色計・色彩色差計のFAQ、エラー・トラブルについて、[online]、コニカミノルタ株式会社、[平成30年10月10日検索]、インターネット、<URL:https://www.konicaminolta.jp/instruments/support/faq/color/common/common_128.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載の光学特性測定装置では、単に、「校正を正しい手順で行ってください」というメッセージが出力されるだけである。そこで、ユーザに対して、ゼロ校正をどのように実行するべきかを報知することにより、使い勝手を向上した光学特性測定装置を実現することが望まれる。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、ゼロ校正が正常に実行されなかったときに、ゼロ校正をどのように実行するべきかをユーザに報知することにより、使い勝手を向上した光学特性測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る光学特性測定装置は、
測定ユニットと、校正台とを備え、測定対象の光学特性を測定する光学特性測定装置であって
前記校正台は
前記測定対象として用いられてゼロ校正を実行するためのゼロ校正部と
前記測定対象として用いられて白色校正を実行するための白色校正部とを備え
前記ゼロ校正を実行する場合には、前記ゼロ校正部に前記測定ユニットが取り付けられ、前記白色校正を実行する場合には、前記白色校正部に前記測定ユニットが取り付けられ
前記測定ユニットは
測定開口を介して照明光で照明された前記測定対象からの反射光を受光して受光光量を表す試料受光信号を出力し、前記照明光の一部を参照光として受光して受光光量を表す参照受光信号を出力し、前記試料受光信号と前記参照受光信号とに基づき前記測定対象の光学特性を測定する光学特性測定部と、
前記ゼロ校正部が前記測定対象として用いられて前記ゼロ校正が正常に実行されたか否かを判定するためのゼロ判定閾値を予め記憶する記憶部と、
前記ゼロ校正がユーザにより実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商であるゼロ校正値と前記ゼロ判定閾値とに基づき、前記ゼロ校正が正常に実行されたか否かを判定する校正判定部と、
前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定されると、前記ゼロ校正部を前記測定対象として用いて、前記ゼロ校正を再実行するように前記ユーザに報知する報知部と、
を備えるものである。
【0007】
この態様によれば、ゼロ校正部が測定対象として用いられてゼロ校正が正常に実行されたか否かを判定するためのゼロ判定閾値と、ゼロ校正がユーザにより実行されたときに得られた試料受光信号を参照受光信号で除算した商であるゼロ校正値とに基づき、ゼロ校正が正常に実行されたか否かが判定される。ゼロ校正が正常に実行されていないと判定されると、ゼロ校正部を測定対象として用いて、ゼロ校正を再実行するようにユーザに報知される。したがって、ユーザは、測定対象を誤ってゼロ校正を実行していたことを知ることができる。よって、光学特性測定装置の使い勝手を向上することができる。
【0008】
上記一態様において、例えば、
前記記憶部は、前記ゼロ判定閾値として、
前記光学特性測定装置の出荷前に、前記ゼロ校正部を前記測定対象として前記ゼロ校正が実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商である初期ゼロ校正値と、
前記初期ゼロ校正値からの予め定められた差分を表すゼロ差分閾値と、
を予め記憶し、
前記校正判定部は、前記ゼロ校正値と前記初期ゼロ校正値との差が前記ゼロ差分閾値を超えると、前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定してもよい。
【0009】
器差又は環境誤差に起因して、ゼロ校正値と初期ゼロ校正値とが変動しても、これらは同じように変動するため、ゼロ差分閾値は共通に用いることができる。したがって、この態様によれば、ゼロ差分閾値を用いることにより、ゼロ校正が正常に実行されていないと精度良く判定することができる。
【0010】
本発明の他の一態様に係る光学特性測定装置は
測定開口を介して照明光で照明された測定対象からの反射光を受光して受光光量を表す試料受光信号を出力し、前記照明光の一部を参照光として受光して受光光量を表す参照受光信号を出力し、前記試料受光信号と前記参照受光信号とに基づき前記測定対象の光学特性を測定する光学特性測定部と
前記測定対象として用いられてゼロ校正を実行するためのゼロ校正部と
前記ゼロ校正部が前記測定対象として用いられて前記ゼロ校正が正常に実行されたか否かを判定するためのゼロ判定閾値を予め記憶する記憶部と
前記ゼロ校正がユーザにより実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商であるゼロ校正値と前記ゼロ判定閾値とに基づき、前記ゼロ校正が正常に実行されたか否かを判定する校正判定部と
前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定されると、前記ゼロ校正部を前記測定対象として用いて、前記ゼロ校正を再実行するように前記ユーザに報知する報知部と
所定開口径の開口を有するマスク部材と、
前記測定開口の周辺に設けられ、前記マスク部材が着脱可能に取り付けられるマスク部材装着部と、
前記マスク部材を収納するマスク部材収納部が設けられた校正台と、をえ、
前記ゼロ校正部は、前記校正台に設けられ、
前記光学特性測定部は、前記測定対象からの反射光に正反射成分を含ませるSCI反射特性と、前記測定対象からの反射光から正反射成分を除去するSCE反射特性と、を測定する機能を有し、
前記記憶部は、前記ゼロ判定閾値として、第1閾値と、前記第1閾値より大きい第2閾値と、前記第2閾値より大きい第3閾値と、を予め記憶し、
前記校正判定部は、前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値以上であって、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第2閾値以上かつ前記第3閾値未満のときは、前記マスク部材収納部を前記測定対象として前記ゼロ校正が実行されたために、前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定するものである
【0011】
この態様によれば、マスク部材収納部とゼロ校正部とが校正台に設けられているため、ユーザは、誤って、ゼロ校正部ではなくて、マスク部材収納部を測定対象として、ゼロ校正を実行する可能性がある。この態様では、SCI反射特性によるゼロ校正が実行されたときのゼロ校正値が第1閾値以上であって、SCE反射特性によるゼロ校正が実行されたときのゼロ校正値が第2閾値以上かつ第3閾値未満のときは、マスク部材収納部を測定対象としてゼロ校正が実行されたために、ゼロ校正が正常に実行されていないと判定される。したがって、ゼロ校正部を測定対象として用いて、ゼロ校正を再実行するようにユーザに報知されることとなる。その結果、ユーザは、測定対象を誤ってゼロ校正を実行していたことを知ることができる。よって、光学特性測定装置の使い勝手を向上することができる。
【0012】
上記一態様において、例えば、
前記ユーザによって操作され、前記反射光を受光する受光径を切り替えるための受光径切替部を更に備え、
前記マスク部材は、互いに異なる複数の開口径の開口を有し、
前記受光径切替部は、前記反射光を受光する受光径を、前記開口径に対応する受光径に切り替え、
前記校正判定部は、前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値以上であって、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第3閾値以上のときは、前記マスク部材装着部に取り付けられた前記マスク部材の開口径が、前記受光径切替部により切り替えられた前記受光径に対応していないために、前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定し、
前記報知部は、前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定されると、前記受光径切替部により切り替えられている前記受光径に対応する前記マスク部材を前記マスク部材装着部に取り付けて、前記ゼロ校正を再実行するように前記ユーザに報知してもよい。
【0013】
この態様によれば、ゼロ校正が正常に実行されていないと判定されると、受光径切替部により切り替えられている受光径に対応するマスク部材をマスク部材装着部に取り付けて、ゼロ校正を再実行するようにユーザに報知される。したがって、ユーザは、誤って異なるマスク部材をマスク部材装着部に取り付けて、ゼロ校正を実行していたことを知ることができる。よって、光学特性測定装置の使い勝手を向上することができる。
【0014】
上記一態様において、例えば、
前記マスク部材は、第1開口径の開口と、前記第1開口径より大きい第2開口径の開口と、を有し、
前記受光径切替部は、前記反射光を受光する受光径を、前記第1開口径に対応する第1受光径と、前記第2開口径に対応する第2受光径と、に切り替え、
前記第2受光径は、前記第1開口径より大きく、
前記校正判定部は、前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値以上であって、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第3閾値以上のときは、前記マスク部材装着部に前記第1開口径の開口を有する前記マスク部材が取り付けられ、前記受光径切替部により前記受光径が前記第2受光径に切り替えられた状態で、前記ゼロ校正が実行されたと判定してもよい。
【0015】
この態様によれば、第2受光径は、第1開口径より大きいため、マスク部材装着部に第1開口径の開口を有するマスク部材が取り付けられ、受光径切替部により受光径が第2受光径に切り替えられた状態では、マスク部材が有する第1開口径の開口の周囲における開口以外の部分の反射光が受光されてしまう。このため、ゼロ校正が実行されたときのゼロ校正値は、正常に実行された場合に比べて大きい値となる。その結果、マスク部材装着部に取り付けられたマスク部材の開口径と、受光径切替部により切り替えられた受光径とが対応していないことを正確に判定することが可能となる。
【0016】
上記一態様において、例えば、
前記測定対象として用いられて白色校正を実行するための白色校正部を更に備え、
前記マスク部材は、前記照明光及び前記反射光の波長に対して透明なカバー部材が前記開口に取り付けられたカバー付きマスク部材と、前記カバー部材が前記開口に取り付けられていないカバー無しマスク部材と、を含み、
前記校正判定部は、
前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値未満のときは、前記マスク部材装着部に前記カバー無しマスク部材が取り付けられていると判定し、
前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値以上であって、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第2閾値未満のときは、前記マスク部材装着部に前記カバー付きマスク部材が取り付けられていると判定してもよい。
【0017】
この態様によれば、カバー付きマスク部材に比べて、カバー無しマスク部材の方が、反射率が低いため、マスク部材装着部に取り付けられているマスク部材がカバー付きマスク部材であるかカバー無しマスク部材であるかを確実に判定することができる。
【0018】
上記一態様において、例えば、
前記光学特性測定装置の出荷前に、前記カバー付きマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられた状態で、前記白色校正部を前記測定対象として前記SCE反射特性による前記白色校正が実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商が、第1初期白色校正値と定義され、
前記光学特性測定装置の出荷前に、前記カバー無しマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられた状態で、前記白色校正部を前記測定対象として前記SCE反射特性による前記白色校正が実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商が、第2初期白色校正値と定義され、
前記記憶部は、更に、
前記第1初期白色校正値及び前記第2初期白色校正値の一方であるカバー初期値と、
前記第1初期白色校正値と前記第2初期白色校正値との差のほぼ半分である白色差分閾値と、を予め記憶し、
前記校正判定部は、
前記SCE反射特性による前記白色校正が前記ユーザにより実行されたときに得られた前記試料受光信号を前記参照受光信号で除算した商である白色校正値と、前記カバー初期値との差が前記白色差分閾値未満である場合、
前記カバー初期値が前記第1初期白色校正値のときは、前記カバー付きマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられていると判定し、
前記カバー初期値が前記第2初期白色校正値のときは、前記カバー無しマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられていると判定してもよい。
【0019】
白色校正部のような高反射率の部材が測定対象とされると、器差又は環境誤差に起因して、測定値が大きく変動する。これに対して、この態様では、第1初期白色校正値と第2初期白色校正値とが変動しても、これらは同じように変動するため、白色差分閾値は共通に用いることができる。したがって、この態様によれば、白色差分閾値を用いることにより、マスク部材装着部に取り付けられているマスク部材が、カバー付きマスク部材であるかカバー無しマスク部材であるかを、精度良く判定することができる。
【0020】
上記一態様において、例えば、
前記校正判定部は、
前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値未満であって、前記SCE反射特性による前記白色校正が前記ユーザにより実行されたときに前記カバー付きマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられていると判定したときは、前記マスク部材装着部に取り付けられている前記マスク部材が、前記カバー無しマスク部材から前記カバー付きマスク部材に取り替えられたと判定し、
前記SCI反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第1閾値以上、かつ、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第2閾値未満であって、前記SCE反射特性による前記白色校正が前記ユーザにより実行されたときに前記カバー無しマスク部材が前記マスク部材装着部に取り付けられていると判定したときは、前記マスク部材装着部に取り付けられている前記マスク部材が、前記カバー付きマスク部材から前記カバー無しマスク部材に取り替えられたと判定し、
前記報知部は、前記マスク部材装着部に取り付けられている前記マスク部材が取り替えられたと判定されると、前記ゼロ校正部を前記測定対象として前記ゼロ校正を再実行するように前記ユーザに報知してもよい。
【0021】
この態様によれば、マスク部材装着部に取り付けられているマスク部材の判定結果が、ゼロ校正のときと白色校正のときとで異なると、マスク部材装着部に取り付けられているマスク部材が取り替えられたと判定されて、ゼロ校正部を測定対象としてゼロ校正を再実行するようにユーザが報知される。したがって、誤った校正が実行された状態で、光学特性の測定が行われるのを未然に防止することができる。
【0022】
上記一態様において、例えば、
前記測定対象の光沢度を測定する光沢測定部と、
前記校正台に設けられ、前記測定対象として用いられて光沢校正を実行するための光沢校正部と、を更に備え、
前記記憶部は、前記ゼロ判定閾値として、更に、第4閾値と、前記第4閾値より大きい第5閾値と、を予め記憶し、
前記校正判定部は、前記SCI反射特による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第4閾値以上のときは、前記ゼロ校正が正常に実行されていないと判定してもよい。
【0023】
SCI反射特定によるゼロ校正がユーザにより実行されたときのゼロ校正値が第4閾値以上のときは、ゼロ校正部を測定対象として用いたときのゼロ校正値に比べて、大き過ぎる。このため、ゼロ校正部を測定対象として用いて、ゼロ校正を再実行するようにユーザに報知されることとなる。したがって、この態様によれば、誤ってゼロ校正が実行された状態で、光学特性の測定が行われることを未然に防止することができる。
【0024】
上記一態様において、例えば、
前記校正判定部は、前記SCI反射特による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第4閾値以上であって、前記SCE反射特性による前記ゼロ校正が前記ユーザにより実行されたときの前記ゼロ校正値が前記第5閾値未満のときは、前記光沢校正部を前記測定対象として前記ゼロ校正が実行されたと判定し、
前記報知部は、前記光沢校正部を前記測定対象として前記ゼロ校正が実行されたと判定されると、前記光沢校正部を前記測定対象として前記ゼロ校正が実行されたことを前記ユーザに報知してもよい。
【0025】
この態様によれば、ユーザは、ゼロ校正を実行した際に、光沢校正部を測定対象としたという誤りを知ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様に係る光学特性測定装置によれば、ユーザは、測定対象を誤ってゼロ校正を実行していたことを知ることができ、使い勝手を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態における光学特性測定装置が備える測定ユニットの電気的構成例を概略的に示すブロック図である。
図2】第1実施形態の測定ユニットの光学的構成例を概略的に示す図である。
図3】第1実施形態における光学特性測定装置の外観を概略的に示す斜視図である。
図4】測定ユニットの側面を概略的に示す図である。
図5】測定ユニットの底面を概略的に示す図である。
図6】光学特性測定装置に付属するマスク板を概略的に示す斜視図である。
図7】光学特性測定装置に付属するマスク板を概略的に示す斜視図である。
図8】光学特性測定装置に付属するマスク板を概略的に示す斜視図である。
図9】光学特性測定装置に付属するマスク板を概略的に示す斜視図である。
図10】各マスク板の照明径及び受光径を概略的に示す図である。
図11】光学特性測定装置の出荷前に、SCI反射特性によるゼロ校正が実行されたときの測定値を概略的に示す図である。
図12】光学特性測定装置の出荷前に、SCE反射特性によるゼロ校正が実行されたときの測定値を概略的に示す図である。
図13】光学特性測定装置の出荷前に、SCE反射特性による白色校正が実行されたときの測定値を概略的に示す図である。
図14】第1実施形態の光学特性測定装置におけるゼロ校正の動作を概略的に示すフローチャートである。
図15】第1実施形態の光学特性測定装置における白色校正の動作を概略的に示すフローチャートである。
図16】第2実施形態における光学特性測定装置が備える測定ユニットの電気的構成例を概略的に示すブロック図である。
図17】第2実施形態の測定ユニットの光学的構成例を概略的に示す図である。
図18】第2実施形態における光学特性測定装置の外観を概略的に示す斜視図である。
図19】光学特性測定装置の出荷前に、径切替レバーがマスク板に一致するように切り替えられた状態で、SCI反射特性によりゼロ校正が実行されたときの測定値を概略的に示す図である。
図20】光学特性測定装置の出荷前に、径切替レバーがマスク板に一致するように切り替えられた状態で、SCE反射特性によりゼロ校正が実行されたときの測定値を概略的に示す図である。
図21】第2実施形態の光学特性測定装置におけるゼロ校正及び白色校正の動作を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。なお、各図面において、同じ構成要素には同じ符号が用いられ、詳細な説明は、適宜、省略される。
【0029】
(第1実施形態の構成)
図1は、第1実施形態における光学特性測定装置が備える測定ユニット100の電気的構成例を概略的に示すブロック図である。図2は、測定ユニット100の光学的構成例を概略的に示す図である。
【0030】
図1に示されるように、測定ユニット100は、測色用の光源102、試料用の受光センサ104、移動機構106、参照用の受光センサ108、径切替レバー110、電源ボタン112、測定ボタン114、スクロールボタン116A~116D、決定ボタン118、ディスプレイ120、電子ブザー122、及び、これらと電気的に接続された制御回路140を備える。制御回路140は、中央演算処理装置(CPU)150、メモリ160、周辺回路(図示省略)を含む。
【0031】
メモリ160(記憶部の一例に相当)は、例えば半導体メモリ又はハードディスク等により構成される。メモリ160は、例えばリードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的に消去書き換え可能なROM(EEPROM)などを含む。メモリ160の例えばROMは、CPU150を動作させる第1実施形態の制御プログラムを記憶する。メモリ160の例えばROMは、上記制御プログラムの一部として、ゼロ判定閾値161、白色判定閾値162を予め記憶する。CPU150は、メモリ160に記憶された第1実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、測色制御部151、校正判定部152、報知制御部153として機能する。図1に示される各部は、後に詳述される。
【0032】
図2に示されるように、測定ユニット100は、積分球1を備える。積分球1は、その内壁1aに高拡散、高反射率の例えば酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛等の白色拡散反射塗料が塗布された中空の球である。積分球1は、底部に形成され、測定対象3を照明するための測定開口5と、積分球1の中心より少し高い位置に形成され、光源102からの照明光を入射させるための光源用開口7と、測定開口5の開口面の法線(測定対象3が平滑な場合には測定対象3の法線に一致する)に対して8°傾斜した方向に形成され、測定対象3からの反射光を受光光学系9に入射させるための受光用開口11と、受光光学系9の光軸と対称な方向(つまり測定開口5の開口面の法線に対して-8°傾斜した方向)に形成されたトラップ用開口15と、トラップ用開口15を閉塞するための閉塞部材17と、を備える。
【0033】
移動機構106(図1)は、測色制御部151(図1)により制御されて、閉塞部材17を、トラップ用開口15が閉塞される閉塞位置(図2中、実線)とトラップ用開口15が開放される退避位置(図2中、二点鎖線)とに移動させる。閉塞位置(図2中、実線)に配置された閉塞部材17は、測定対象3が平滑なときに、受光光学系9に対する測定対象3の正反射光の光源となる。一方、閉塞部材17が退避位置(図2中、二点鎖線)に配置されると、トラップ用開口15が開放されるため、受光光学系9に対する測定対象3の正反射光の光源が無くなる。よって、図2において、閉塞位置(図2中、実線)に配置された閉塞部材17によりトラップ用開口15が閉塞された状態で、測定対象3のSCI反射特性が測定され、閉塞部材17が退避位置(図2中、二点鎖線)に配置されてトラップ用開口15が開放された状態で、測定対象3のSCE反射特性が測定される。
【0034】
光源102は、例えばキセノンフラッシュランプ等で構成される。光源102からの光は、積分球1の内壁1aで多重反射されて、拡散照明光として測定対象3を照明する。
【0035】
受光光学系9は、レンズ等からなり、受光光学系9の光軸が測定開口5の開口面の法線に対して8°傾斜するように配置されている。受光光学系9は、測定対象3からの反射光のうち8°傾斜した方向の成分を集光して試料用分光部13に導く。これによって、測定ユニット100では、拡散照明、8°受光のd/8ジオメトリが形成されている。
【0036】
試料用分光部13は、受光センサ104、光学系及び反射型回折格子(図示省略)等を備える公知の構成を有する。受光センサ104は、ライン状に並べられた複数の光電変換素子(例えばフォトダイオード)を含む。受光光学系9からの光は、例えば平行光にされて、反射型回折格子に導かれる。反射型回折格子は、その平行光を回折して反射する。反射型回折格子により回折された光は、波長の順に受光センサ104の異なる位置に導かれる。受光センサ104の各光電変換素子は、それぞれ異なる波長の光を受光し、受光光量を表す試料カウント値を出力する。受光センサ104は、受光センサ104の各光電変換素子が受光した波長ごとの光量を表す試料カウント値は、制御回路140(図1)へ出力される。
【0037】
積分球1には、更に、参照用光ファイバ21が取り付けられている。光源102からの照明光が、積分球1の内壁1aで多重反射されて得られた拡散照明光の一部は、参照用光ファイバ21によって、参照用分光部23に導かれる。参照用分光部23は、試料用分光部13と同様の構成を有する。すなわち、参照用分光部23は、受光センサ108、光学系及び反射型回折格子(図示省略)等を備える公知の構成を有する。受光センサ108は、ライン状に並べられた複数の光電変換素子(例えばフォトダイオード)を含む。参照用光ファイバ21に導かれた光は、例えば平行光にされて、反射型回折格子に導かれる。反射型回折格子は、その平行光を回折して反射する。反射型回折格子により回折された光は、波長の順に受光センサ108の異なる位置に導かれる。受光センサ108の各光電変換素子は、それぞれ異なる波長の光を受光し、受光光量を表す参照カウント値を出力する。受光センサ108は、受光センサ108の各光電変換素子が受光した波長ごとの光量を表す参照カウント値は、制御回路140(図1)へ出力される。
【0038】
測定ユニット100は、積分球1、光源102、受光光学系9、試料用分光部13、参照用光ファイバ21、参照用分光部23、及び測色制御部151によって構成される分光測色計(光学特性測定部の一例に相当)を含む。
【0039】
図3は、第1実施形態における光学特性測定装置10の外観を概略的に示す斜視図である。図4及び図5は、それぞれ、測定ユニット100の側面及び底面を概略的に示す図である。図6図9は、それぞれ、光学特性測定装置10に付属するマスク板M1~M4を概略的に示す斜視図である。
【0040】
図3に示されるように、第1実施形態における光学特性測定装置10は、測定ユニット100と、校正台200とを備える。測定ユニット100は、積分球1(図2)等を収容する箱形状の筐体25を備える。図4図5に示されるように、筐体25の底壁の測定開口5の周辺には、マスク板装着部37が設けられている。マスク板装着部37(マスク部材装着部の一例に相当)は、磁力によって、マスク板M1~M4が着脱可能に取り付けられるように構成されている。
【0041】
マスク板M1~M4(マスク部材の一例に相当)は、それぞれ、図6図9に示されるように、薄い円板形状を有し、中心に円形の開口が形成されている。マスク板M1(図6)及びマスク板M3(図8)には、大径の開口ALが形成され、マスク板M2(図7)及びマスク板M4(図9)には、小径の開口ASが形成されている。また、マスク板M3,M4(カバー付きマスク部材の一例に相当)は、それぞれ、開口AL,ASに薄いガラス板GLが取り付けられたガラス付きマスク板である。一方、マスク板M1,M2(カバー無しマスク部材の一例に相当)は、それぞれ、開口AL,ASにガラス板が取り付けられていないガラス無しマスク板である。図2図4図5の例では、マスク板装着部37には、マスク板M1が取り付けられている。
【0042】
図3に示されるように、校正台200の上面には、ゼロ校正部31と、白色校正部33と、マスク板収納部35と、が設けられている。ゼロ校正部31は、測定対象として用いられて、ゼロ校正を実行するためのものである。ゼロ校正部31には、ゼロ校正用孔31Aが設けられている。ゼロ校正部31に測定ユニット100を取り付けてゼロ校正を実行すると、積分球1から出射された照明光の反射光が積分球1に戻ってこないように構成されている。
【0043】
白色校正部33は、測定対象として用いられて、白色校正を実行するためのものである。白色校正部33には、白色校正板33Aが設けられている。白色校正部33に測定ユニット100を取り付けて白色校正を実行すると、積分球1から出射された照明光が、高反射率の白色校正板33Aで反射された反射光が、積分球1に戻ってくるように構成されている。マスク板収納部35は、マスク板M1~M4を収納するためのものである。マスク板収納部35には、薄板形状のマグネット35Aが設けられている。マスク板M1~M4は、マグネット35Aの磁力によって、マスク板収納部35に収納されるように構成されている。
【0044】
図3に示されるように、筐体25の上壁には、電源ボタン112、スクロールボタン116A~116D、決定ボタン118、ディスプレイ120が設けられている。図3図4に示されるように、筐体25の側壁には、径切替レバー110、測定ボタン114が設けられている。電源ボタン112は、ユーザによって操作されると、内蔵する電池(図示省略)から図1の各部(例えば制御回路140等)への電力供給をオンオフする。
【0045】
ディスプレイ120は、例えば液晶パネル等を含む。測色制御部151(図1)は、ディスプレイ120に、測定ユニット100で実行される作業を選択するための作業メニューを表示し、測定結果を表示するなど、測色に関するディスプレイ120の表示を制御する。測色制御部151は、例えば、ディスプレイ120に作業メニューを表示しているときは、選択されていることを表すメニューバーを作業メニューに重ねて表示する。測色制御部151は、例えば、スクロールボタン116Aが押されると、メニューバーを上にスクロールし、スクロールボタン116Bが押されると、メニューバーを下にスクロールし、スクロールボタン116Cが押されると、メニューバーを左にスクロールし、スクロールボタン116Dが押されると、メニューバーを右にスクロールする。
【0046】
測色制御部151は、決定ボタン118が押されると、メニューバーが重ねて表示されている作業メニューに決定する。例えば、「ゼロ校正」メニューに決定された状態で、測定ボタン114が押されると、測色制御部151は、ゼロ校正を実行する。例えば、「測定」メニューに決定され、測定ボタン114が押されると、測色制御部151は、測色を実行する。
【0047】
径切替レバー110(受光径切替部の一例に相当)は、マスク板装着部37に取り付けられるマスク板M1~M4の開口径に一致するように、ユーザによって操作される。例えば、マスク板M1,M3がマスク板装着部37に取り付けられるときは、径切替レバー110は、ユーザによってLV側に操作される。例えば、マスク板M2,M4がマスク板装着部37に取り付けられるときは、径切替レバー110は、ユーザによってSV側に操作される。図3図4の例では、径切替レバー110は、LV側に操作されている。
【0048】
図10は、各マスク板の照明径及び受光径を概略的に示す図である。外径DMは、マスク板M1~M4に共通の外径を表す。照明径LV1は、マスク板M1,M3がマスク板装着部37に取り付けられたときに測定対象3(図2)を照明する照明径を表し、開口AL(図6図8)の直径に等しい。受光径LV2は、径切替レバー110がLV側に操作されたときに、試料用分光部13が受光する受光径を表し、照明径LV1より多少小さい値に設定されている。照明径SV1は、マスク板M2,M4がマスク板装着部37に取り付けられたときに測定対象3(図2)を照明する照明径を表し、開口AS(図7図9)の直径に等しい。受光径SV2は、径切替レバー110がSV側に操作されたときに、試料用分光部13が受光する受光径を表し、照明径SV1より多少小さい値に設定されている。受光径LV2,SV2は、例えば、受光光学系9(図2)に近接して配置された絞り(図示省略)によって決定される。
【0049】
図1に戻って、校正判定部152は、ゼロ校正が実行されたときに、メモリ160に予め記憶されているゼロ判定閾値161に基づいて、ゼロ校正が正常に実行されたか否かと、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板がガラス無しマスク板であるかガラス付きマスク板であるかと、を判定する。校正判定部152は、白色校正が実行されたときに、メモリ160に予め記憶されている白色判定閾値162に基づいて、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板が、ガラス無しマスク板であるかガラス付きマスク板であるかを判定する。
【0050】
測色制御部151は、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板が、ガラス付きマスク板であると校正判定部152によって判定されると、ガラス付きマスク板であることを表すガラスマークを、ディスプレイ120に表示する。測色制御部151は、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板が、ガラス無しマスク板であると校正判定部152によって判定されると、上記ガラスマークをディスプレイ120から消去する。
【0051】
報知制御部153は、ゼロ校正又は白色校正が正常に実行されていないと校正判定部152によって判定されると、ゼロ校正又は白色校正が正常に実行されていないことを、ディスプレイ120及び電子ブザー122を用いて、ユーザに報知する。この第1実施形態において、報知制御部153、ディスプレイ120及び電子ブザー122は、報知部の一例に相当する。
【0052】
図11は、光学特性測定装置10の出荷前に、SCI反射特性によるゼロ校正が実行されたときの測定値を概略的に示す図である。図11において、横軸は、波長を表し、縦軸は、測定値を表す。この第1実施形態及び後述の第2実施形態では、測定値として、受光センサ104から出力される試料カウント値Sが受光センサ108から出力される参照カウント値Rで除算された商であるS/R値が用いられている。以下では、測定値は、S/R値とも称される。図11を用いて、ゼロ判定閾値161としてメモリ160に記憶される第1閾値TH1の決定手法が説明される。
【0053】
測定値ZC1は、マスク板M1がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100がゼロ校正部31に取り付けられた状態での測定値である。測定値ZC2は、マスク板M3がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100がゼロ校正部31に取り付けられた状態での測定値である。測定値ZC1は、ガラス無しマスク板が用いられ、測定値ZC2は、ガラス付きマスク板が用いられている点で相違するが、両方とも、ゼロ校正が正しく実行されたときの測定値である。SCI反射特性によるゼロ校正の場合、ガラス付きマスク板では、ガラスからの正反射光によって、ガラス無しマスク板に比べて受光光量が大きくなる。このため、ZC2>ZC1になっている。
【0054】
一方、測定値ZC3は、マスク板M1がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100がマスク板収納部35に取り付けられた状態での測定値である。測定値ZC4は、マスク板M3がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100がマスク板収納部35に取り付けられた状態での測定値である。すなわち、ガラス無しマスク板が用いられた測定値ZC3と、ガラス付きマスク板が用いられた測定値ZC4とは、いずれも、径切替レバー110が正しく切り替えられているが、測定ユニット100が、ゼロ校正部31ではなく、誤ってマスク板収納部35に取り付けられた状態で、ゼロ校正が実行されている。このため、マスク板収納部35からの反射光によって受光光量が大きくなるので、ZC3>ZC1、ZC4>ZC2になっている。また、上述のように、ガラスからの正反射光によって、ZC4>ZC3になっている。
【0055】
マスク板収納部35に設けられているマグネット35Aは、黒色である場合が多い。このため、ユーザが、測定ユニット100を、誤ってマスク板収納部35に取り付けた状態で、ゼロ校正を実行することがあり得る。そこで、第1閾値TH1は、測定値ZC1と、測定値ZC2,ZC3,ZC4とを区別できるように設定されている。この第1実施形態及び後述の第2実施形態では、各測定値は、波長WLにおいて、比較されている。
【0056】
図12は、光学特性測定装置10の出荷前に、SCE反射特性によるゼロ校正が実行されたときの測定値を概略的に示す図である。図12において、横軸は、波長を表し、縦軸は、測定値(S/R値)を表す。図12を用いて、ゼロ判定閾値161としてメモリ160に記憶される第2閾値TH2、第3閾値TH3の決定手法が説明される。
【0057】
測定値ZC11は、マスク板M1がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100がゼロ校正部31に取り付けられた状態での測定値である。測定値ZC12は、マスク板M3がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100がゼロ校正部31に取り付けられた状態での測定値である。測定値ZC11は、ガラス無しマスク板が用いられ、測定値ZC12は、ガラス付きマスク板が用いられている点で相違するが、両方とも、ゼロ校正が正しく実行されている。SCE反射特性によるゼロ校正の場合、マスク板からの正反射光が除去されているので、ガラス付きマスク板とガラス無しマスク板とで有意差が無い。このため、ZC11=ZC12になっている。
【0058】
一方、測定値ZC13は、マスク板M1がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100がマスク板収納部35に取り付けられた状態での測定値である。測定値ZC14は、マスク板M3がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100がマスク板収納部35に取り付けられた状態での測定値である。すなわち、ガラス無しマスク板が用いられた測定値ZC13と、ガラス付きマスク板が用いられた測定値ZC14とは、いずれも、径切替レバー110が正しく切り替えられているが、測定ユニット100が、ゼロ校正部31ではなく、誤ってマスク板収納部35に取り付けられた状態で、ゼロ校正が実行されている。そこで、第2閾値TH2は、測定値ZC11,ZC12と、測定値ZC13,ZC14とを区別できるように設定されている。
【0059】
測定値ZC15は、マスク板M2がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100がゼロ校正部31に取り付けられた状態での測定値である。つまり、測定値ZC15は、測定ユニット100がゼロ校正部31に正しく取り付けられているが、径切替レバー110がLV側に切り替えられた状態であるにも拘わらず、誤って、開口AS(図7)を有するマスク板M2がマスク板装着部37に取り付けられたときの測定値である。言い換えると、ユーザは、誤ったマスク板をマスク板装着部37に取り付けている。
【0060】
径切替レバー110がLV側に切り替えられているので、図10に示されるように、試料用分光部13の受光径LV2は、照明径SV1より大きくなっている。このため、受光センサ104は、マスク板M2の開口AS(図7)の周囲のマスク部分からの反射光も受光してしまう。その結果、測定値ZC15は、他の測定値ZC11~ZC14より大きい値になっている。そこで、第3閾値TH3は、測定値ZC11~ZC14と、測定値ZC15とを区別できるように設定されている。図11図12に示されるように、第1閾値TH1~第3閾値TH3の大きさは、TH1<TH2<TH3に設定されている。
【0061】
図13は、光学特性測定装置10の出荷前に、SCE反射特性による白色校正が実行されたときの測定値を概略的に示す図である。図13において、横軸は、波長を表し、縦軸は、測定値(S/R値)を表す。図13を用いて、白色判定閾値162としてメモリ160に記憶される白色差分閾値ΔTHの決定手法が説明される。
【0062】
測定値WC1は、マスク板M1がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100が白色校正部33に取り付けられた状態での測定値である。測定値WC2は、マスク板M3がマスク板装着部37に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100が白色校正部33に取り付けられた状態での測定値である。測定値WC1は、ガラス無しマスク板が用いられ、測定値WC2は、ガラス付きマスク板が用いられている点で相違するが、両方とも、白色校正が正しく実行されている。ガラス付きマスク板では、白色校正板33Aを照明する照明光のうち、ガラスの表面で反射する分とガラスの裏面で反射する分とを合わせて数%が除去される。このため、ガラス無しマスク板に比べて照明光の光量が減少し、それに応じて反射光の光量が減少する。その結果、WC1>WC2になっている。
【0063】
白色差分閾値ΔTHは、波長WLにおける測定値WC1(WL)と測定値WC2(WL)との差{WC1(WL)-WC2(WL)}の半分に設定されている。また、メモリ160(図1)には、白色判定閾値162として、波長WLにおける測定値WC1(WL)が予め記憶されている。校正判定部152(図1)は、SCE反射特性による白色校正がユーザによって実行されたときに得られた測定値(S/R値)と、測定値WC1(WL)との差の絶対値ΔS/Rを算出する。校正判定部152は、算出した差の絶対値ΔS/Rが白色差分閾値ΔTH以下のときは、ガラス無しマスク板がマスク板装着部37に取り付けられていると判定する。一方、校正判定部152は、上記差の絶対値ΔS/Rが白色差分閾値ΔTHを超えるときは、ガラス付きマスク板がマスク板装着部37に取り付けられていると判定する。
【0064】
代替的に、メモリ160には、白色判定閾値162として、波長WLにおける測定値WC2(WL)が予め記憶されていてもよい。この場合には、校正判定部152は、SCE反射特性による白色校正がユーザによって実行されたときに得られた測定値(S/R値)と、測定値WC2(WL)との差の絶対値ΔS/Rが、白色差分閾値ΔTH以下のときは、ガラス付きマスク板がマスク板装着部37に取り付けられていると判定し、上記差の絶対値ΔS/Rが、白色差分閾値ΔTHを超えるときは、ガラス無しマスク板がマスク板装着部37に取り付けられていると判定する。
【0065】
(第1実施形態の動作)
図14は、第1実施形態の光学特性測定装置10におけるゼロ校正の動作を概略的に示すフローチャートである。ディスプレイ120に表示された作業メニューのうちゼロ校正が決定ボタン118により決定されると、図14の動作が開始される。ステップS1400において、測色制御部151は、ユーザによって、測定ボタン114が操作されたか否かを判定する。測定ボタン114が操作されると(ステップS1400でYES)、処理はステップS1405に進む。測定ボタン114が操作されない間は(ステップS1400でNO)、処理はステップS1400で待機する。すなわち、測定ボタン114が操作されると、測色制御部151は、ユーザによって、測定ユニット100がゼロ校正部31に取り付けられたと判断して、ゼロ校正を開始する。
【0066】
ステップS1405において、測色制御部151は、移動機構106を動作させて閉塞部材17を閉塞位置に配置した状態で、SCI反射特性によるゼロ校正を実行して、S/R値を取得する。ステップS1410において、校正判定部152は、S/R値が第1閾値TH1未満であるか否かを判定する。S/R値が第1閾値TH1未満であれば(ステップS1410でYES)、処理はステップS1415に進む。一方、S/R値が第1閾値TH1以上であれば(ステップS1410でNO)、処理はステップS1430に進む。
【0067】
ステップS1415において、校正判定部152は、ガラス無しマスク板がマスク板装着部37に取り付けられていると判定する。ステップS1420において、測色制御部151は、ディスプレイ120にガラスマークが表示されていれば、これを消去する。ステップS1425において、測色制御部151は、移動機構106を動作させて閉塞部材17を退避位置に配置した状態で、SCE反射特性によるゼロ校正を実行する。その後、図14の動作は終了する。報知制御部153は、例えば電子ブザー122を1秒間オンさせて、ゼロ校正が正常に実行されたことをユーザに報知してもよい。
【0068】
ステップS1430において、測色制御部151は、移動機構106を動作させて閉塞部材17を退避位置に配置した状態で、SCE反射特性によるゼロ校正を実行して、S/R値を取得する。ステップS1435において、校正判定部152は、S/R値と、第2閾値TH2及び第3閾値TH3とを比較して、大小関係を判定する。S/R値が、第2閾値TH2未満であれば、処理はステップS1440に進む。S/R値が、第2閾値TH2以上かつ第3閾値TH3未満であれば、処理はステップS1450に進む。S/R値が、第3閾値TH3以上であれば、処理はステップS1460に進む。
【0069】
ステップS1440において、校正判定部152は、ガラス付きマスク板がマスク板装着部37に取り付けられていると判定する。ステップS1445において、測色制御部151は、ディスプレイ120にガラスマークを表示する。その後、図14の動作は終了する。報知制御部153は、例えば電子ブザー122を1秒間オンさせて、ゼロ校正が正常に実行されたことをユーザに報知してもよい。
【0070】
ステップS1450において、校正判定部152は、測定ユニット100がゼロ校正部31ではなくてマスク板収納部35に取り付けられてゼロ校正が実行されたと判定する。ステップS1455において、報知制御部153は、測定ユニット100がマスク板収納部35に取り付けられているので、ゼロ校正部31に取り付けてゼロ校正を再実行するように促す警告をディスプレイ120に表示する。報知制御部153は、更に、0.5秒間オン及び0.5秒間オフを電子ブザー122に複数回繰り返させて、ゼロ校正が正常に実行されなかったことをユーザに報知してもよい。その後、図14の動作は終了する。
【0071】
ステップS1460において、校正判定部152は、径切替レバー110の状態と、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板とが一致していないと判定する。具体的には、校正判定部152は、径切替レバー110がLV側に切り替えられているにも拘らず、開口ASを有するマスク板M2又はマスク板M4がマスク板装着部37に取り付けられていると判定する。ステップS1465において、報知制御部153は、正しいマスク板をマスク板装着部37に取り付けて、ゼロ校正を再実行するように促す警告をディスプレイ120に表示する。報知制御部153は、更に、0.5秒間オン及び0.5秒間オフを電子ブザー122に複数回繰り返させて、ゼロ校正が正常に実行されなかったことをユーザに報知してもよい。その後、図14の動作は終了する。
【0072】
図15は、第1実施形態の光学特性測定装置10における白色校正の動作を概略的に示すフローチャートである。図14の動作でゼロ校正が正常に終了すると、図15の動作が開始される。言い換えると、図14の動作でゼロ校正が正常に実行されなかった場合には、図15の動作は開始されない。
【0073】
ステップS1500において、測色制御部151は、ユーザによって、測定ボタン114が操作されたか否かを判定する。測定ボタン114が操作されると(ステップS1500でYES)、処理はステップS1505に進む。測定ボタン114が操作されない間は(ステップS1500でNO)、処理はステップS1500で待機する。すなわち、測定ボタン114が操作されると、測色制御部151は、ユーザによって、測定ユニット100が白色校正部33に取り付けられたと判断して、白色校正を開始する。
【0074】
ステップS1505において、測色制御部151は、移動機構106を動作させて閉塞部材17を閉塞位置に配置した状態で、SCI反射特性による白色校正を実行する。ステップS1510において、測色制御部151は、移動機構106を動作させて閉塞部材17を退避位置に配置した状態で、SCE反射特性による白色校正を実行して、S/R値を取得する。ステップS1515において、校正判定部152は、白色判定閾値162としてメモリ160に予め記憶されている、波長WLにおける測定値WC1(WL)をメモリ160から読み出して、取得したS/R値との差の絶対値ΔS/Rを算出する。
【0075】
ステップS1520において、校正判定部152は、差の絶対値ΔS/Rが白色差分閾値ΔTH未満であるか否かを判定する。差の絶対値ΔS/Rが白色差分閾値ΔTH以上であれば(ステップS1520でNO)、処理はステップS1535に進む。一方、差の絶対値ΔS/Rが白色差分閾値ΔTH未満であれば(ステップS1520でYES)、処理はステップS1525に進む。
【0076】
ステップS1525において、校正判定部152は、ガラス無しマスク板がマスク板装着部37に取り付けられていると判定する。ステップS1530において、校正判定部152は、ガラスマークが表示されているか否かを判定する。ガラスマークが表示されていれば(ステップS1530でYES)、処理はステップS1545に進む。一方、ガラスマークが表示されていなければ(ステップS1530でNO)、図15の動作を終了する。報知制御部153は、例えば電子ブザー122を1秒間オンさせて、白色校正が正常に実行されたことをユーザに報知してもよい。
【0077】
ステップS1535において、校正判定部152は、ガラス付きマスク板がマスク板装着部37に取り付けられていると判定する。ステップS1540において、校正判定部152は、ガラスマークが表示されているか否かを判定する。ガラスマークが表示されていなければ(ステップS1540でNO)、処理はステップS1545に進む。一方、ガラスマークが表示されていれば(ステップS1540でYES)、図15の動作を終了する。報知制御部153は、例えば電子ブザー122を1秒間オンさせて、白色校正が正常に実行されたことをユーザに報知してもよい。
【0078】
ステップS1545において、校正判定部152は、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板のガラスの有無が、ゼロ校正のときと白色校正のときとで不一致と判定する。ステップS1550において、報知制御部153は、ゼロ校正を再実行するように促す警告をディスプレイ120に表示する。報知制御部153は、更に、0.5秒間オン及び0.5秒間オフを電子ブザー122に複数回繰り返させて、白色校正が正常に実行されなかったことをユーザに報知してもよい。その後、図15の動作は終了する。
【0079】
(第1実施形態の効果)
一般に、光学特性測定装置10の測定値として、受光センサ104から出力される試料カウント値Sを用いると、装置毎の測定値のばらつきである器差が大きくなる。このため、試料カウント値Sに基づく閾値を共通に用いて、校正が正常に実行されたか否かを判定すると、器差が大きいため、誤判定する装置が発生する。これに対して、第1実施形態では、測定値として、受光センサ104から出力される試料カウント値Sが受光センサ108から出力される参照カウント値Rで除算されたS/R値が用いられ、S/R値に基づく閾値が用いられている。試料カウント値S及び参照カウント値Rには、器差が同じように反映されるので、S/R値に基づく閾値には、器差が相殺されている。その結果、第1実施形態によれば、校正が正常に実行されたか否かを誤判定する可能性を低減することができる。
【0080】
また、温湿度環境が変化したときにも、測定値は変動するが、試料カウント値S及び参照カウント値Rには、温湿度環境の変化が同じように影響するので、温湿度環境が変化したときの変動度合いは、試料カウント値Sに比べて、S/R値の方が大幅に小さくなっている。このため、第1実施形態によれば、温湿度環境が変化しても、校正が正常に実行されたか否かを安定して精度良く判定することができる。
【0081】
また、測定値としてS/R値を用いた場合でも、白色校正板33Aのような高反射率の部材で測定を行うと、器差及び環境誤差が大きくなってしまうという問題がある。しかしながら、図13に示される測定値WC1(WL)と測定値WC2(WL)とが大きく変動したとしても、これらは同じように変動するので、白色差分閾値ΔTHでは、器差及び環境誤差が相殺される。したがって、第1実施形態によれば、判定の閾値として白色差分閾値ΔTHを用いることにより、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板が、ガラス付きマスク板であるかガラス無しマスク板であるかを、精度良く判定することができる。
【0082】
また、第1実施形態では、光学特性測定装置10の出荷前に、ゼロ校正部31及びマスク板収納部35を測定対象として、SCI反射特性及びSCE反射特性によるゼロ校正が実行され、得られたS/R値に基づき、第1閾値TH1、第2閾値TH2、第3閾値TH3が決定されて、メモリ160に予め記憶されている。したがって、第1実施形態によれば、ゼロ校正が正しく実行されたか否かを精度良く判定することができる。また、ゼロ校正が正しく実行されていない場合に、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板がガラス付きマスク板であるかガラス無しマスク板であるか、測定ユニット100がマスク板収納部35に取り付けられてゼロ校正が実行されたか否か、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板の開口径が径切替レバー110の状態に一致しているか否か、等を精度良く判定することができる。
【0083】
また、第1実施形態では、測定ユニット100がマスク板収納部35に取り付けられてゼロ校正が実行されたと判定されると、ディスプレイ120に、測定ユニット100がマスク板収納部35に取り付けられていたので、ゼロ校正部31に取り付けてゼロ校正を再実行するように促す警告が表示される。また、径切替レバー110の状態と、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板とが一致していないと判定されると、ディスプレイ120に、正しいマスク板をマスク板装着部37に取り付けて、ゼロ校正を再実行するように促す警告が表示される。このため、ユーザは、ゼロ校正が正しく実行されなかったということだけでなく、正しく実行されなかった原因を知ることができる。その結果、第1実施形態によれば、光学特性測定装置10の使い勝手を向上することができる。
【0084】
(第2実施形態の構成)
図16は、第2実施形態における光学特性測定装置が備える測定ユニット100Aの電気的構成例を概略的に示すブロック図である。図17は、測定ユニット100Aの光学的構成例を概略的に示す図である。
【0085】
図16に示されるように、測定ユニット100Aは、測色用の光源102、試料用の受光センサ104、移動機構106、参照用の受光センサ108、径切替レバー110、電源ボタン112、測定ボタン114、スクロールボタン116A~116D、決定ボタン118、ディスプレイ120、電子ブザー122、光沢測定用の光源124、光沢測定用の受光センサ126、及び、これらと電気的に接続された制御回路140Aを備える。制御回路140Aは、CPU150A、メモリ160A、周辺回路(図示省略)を含む。
【0086】
メモリ160A(記憶部の一例に相当)は、例えば半導体メモリ又はハードディスク等により構成される。メモリ160Aは、例えばROM、RAM、EEPROMなどを含む。メモリ160Aの例えばROMは、CPU150Aを動作させる第2実施形態の制御プログラムを記憶する。メモリ160Aの例えばROMは、上記制御プログラムの一部として、ゼロ判定閾値161Aを予め記憶する。CPU150Aは、メモリ160Aに記憶された第2実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、測色制御部151、校正判定部152A、報知制御部153、光沢制御部154として機能する。
【0087】
図17に示されるように、測定ユニット100Aは、積分球1Aを備える。積分球1Aは、第1実施形態の積分球1と同様に、その内壁1aに高拡散、高反射率の白色拡散反射塗料が塗布された中空の球である。積分球1Aは、測定開口5、光源用開口7、受光用開口11、トラップ用開口15、閉塞部材17に加えて、光沢測定用の光源124からの照明光を入射させるための光源用開口41と、測定対象3からの反射光を光沢測定用の受光光学系43に入射させるための受光用開口45と、を備える。積分球1Aには、第1実施形態の積分球1と同様に、更に、参照用光ファイバ21が取り付けられており、光源102からの照明光が、積分球1Aの内壁1aで多重反射されて得られた拡散照明光の一部が、参照用光ファイバ21によって、参照用分光部23に導かれる。
【0088】
光源124は、例えば白色のLED等で構成される。光源124と光源用開口41との間に、照明光学系47が配置されている。照明光学系47は、レンズ等からなり、照明光学系47の光軸が測定開口5の開口面の法線に対して60°傾斜するように配置されている。照明光学系47は、光源124からの照明光を平行光にして、測定開口5の開口面の法線に対して60°傾斜する方向から、測定対象3を照明する。
【0089】
受光光学系43は、レンズ等からなり、受光光学系43の光軸が測定開口5の開口面の法線に対して照明光学系47の反対側に60°傾斜するように配置されている。受光光学系43は、測定対象3からの反射光のうち60°傾斜した方向の成分を集光して受光センサ126に結像する。これによって、測定ユニット100Aでは、拡散照明、8°受光のd/8ジオメトリと、60°照明、60°受光のジオメトリとが形成されている。
【0090】
受光光学系43と受光センサ126との間に、光学フィルタ49が配置されている。光学フィルタ49は、受光光学系43から受光センサ126に導かれる光のうち、予め定められた分光分布の光を通過させるバンドパスフィルタである。光学フィルタ49の分光透過率と、光源124の分光スペクトルとを乗算することにより光沢計の分光感度が決められる。
【0091】
受光センサ126は、光電変換素子(例えばフォトダイオード)を含む。受光センサ126の光電変換素子は、光学フィルタ49を通過した光を受光し、受光した受光光量を表す受光信号を出力する。受光センサ126は、制御回路140Aに電気的に接続されており、受光センサ126の光電変換素子が受光した受光光量を表す受光信号は、制御回路140Aへ出力される。
【0092】
測定ユニット100Aは、積分球1A、光源102、受光光学系9、試料用分光部13、測色制御部151により構成される分光測色計(光学特性測定部の一例に相当)と、光源124、照明光学系47、受光光学系43、光学フィルタ49、光沢制御部154により構成される光沢計(光学特性測定部の一例に相当)と、を含む。
【0093】
図18は、第2実施形態における光学特性測定装置10Aの外観を概略的に示す斜視図である。図18に示されるように、第2実施形態における光学特性測定装置10Aは、測定ユニット100Aと、校正台200Aとを備える。測定ユニット100Aは、積分球1A(図17)等を収容する箱形状の筐体25を備える。また、筐体25の底壁の測定開口5(図17)の周辺には、第1実施形態と同様に、マスク板M1~M4(図6図9)が着脱可能に取り付けられるマスク板装着部37(図4図5)が設けられている。
【0094】
図18に示されるように、校正台200Aの上面には、ゼロ校正部31と、白色校正部33と、光沢校正部51と、が設けられている。光沢校正部51は、光沢校正を実行するためのものである。光沢校正部51には、光沢校正板51Aが設けられている。光沢校正部51に測定ユニット100Aを取り付けて光沢校正を実行すると、積分球1Aから出射された照明光が光沢校正板51Aで反射された反射光が、積分球1Aに戻ってくるように構成されている。
【0095】
図18に示されるように、筐体25の上壁には、第1実施形態と同様に、電源ボタン112、スクロールボタン116A~116D、決定ボタン118、ディスプレイ120が設けられている。図18に示されるように、筐体25の側壁には、第1実施形態と同様に、径切替レバー110、測定ボタン114が設けられている。
【0096】
図16に戻って、光沢制御部154は、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられた状態で、光源124を発光させて、受光センサ126から出力される受光信号を光沢校正の測定値として取得し、メモリ160に保存する。また、光沢制御部154は、測定ユニット100Aが測定対象3に対して配置された状態で、光源124を発光させて、受光センサ126から出力される受光信号を光沢計の測定値として取得し、メモリ160Aに保存する。
【0097】
校正判定部152Aは、ゼロ校正が実行されたときに、メモリ160Aに予め記憶されているゼロ判定閾値161Aに基づいて、ゼロ校正が正常に実行されたか否かを判定する。報知制御部153は、ゼロ校正が正常に実行されていないと校正判定部152Aによって判定されると、ゼロ校正が正常に実行されていないことを、ディスプレイ120及び電子ブザー122を用いて、ユーザに報知する。この第2実施形態において、報知制御部153、ディスプレイ120及び電子ブザー122は、報知部の一例に相当する。
【0098】
図19は、光学特性測定装置10Aの出荷前に、径切替レバー110がマスク板に一致するように切り替えられた状態で、SCI反射特性によりゼロ校正が実行されたときの測定値を概略的に示す図である。図19において、横軸は、波長を表し、縦軸は、測定値を表す。第2実施形態では、第1実施形態と同様に、測定値として、受光センサ104から出力される試料カウント値Sが受光センサ108から出力される参照カウント値Rで除算されたS/R値が用いられている。以下では、測定値は、S/R値とも称される。図19を用いて、ゼロ判定閾値161Aとしてメモリ160Aに記憶される第4閾値TH4の決定手法が説明される。
【0099】
測定値ZC21は、大きい開口ALを有するマスク板M1(図6)がマスク板装着部37(図4)に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100Aがゼロ校正部31に取り付けられた状態での測定値である。測定値ZC22は、小さい開口ASを有するマスク板M2(図7)がマスク板装着部37(図4)に取り付けられ、径切替レバー110がSV側に切り替えられ、測定ユニット100Aがゼロ校正部31に取り付けられた状態での測定値である。すなわち、測定値ZC21,ZC22は、ゼロ校正が正しく実行されたときの測定値である。
【0100】
測定値ZC23は、大きい開口ALを有するマスク板M1(図6)がマスク板装着部37(図4)に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられた状態での測定値である。測定値ZC24は、小さい開口ASを有するマスク板M2(図7)がマスク板装着部37(図4)に取り付けられ、径切替レバー110がSV側に切り替えられ、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられた状態での測定値である。すなわち、測定値ZC23,ZC24は、ゼロ校正が誤って実行されたときの測定値である。
【0101】
光沢校正部51に設けられる光沢校正板51Aとして、黒色ガラスが用いられる等、光沢校正板51Aは、黒色である場合が多い。このため、ユーザは、測定ユニット100Aを、誤って光沢校正部51に取り付けた状態で、ゼロ校正を実行することがあり得る。そこで、第4閾値TH4は、測定値ZC21,ZC22と、測定値ZC23,ZC24とを区別できるように設定されている。
【0102】
図20は、光学特性測定装置10Aの出荷前に、径切替レバー110がマスク板に一致するように切り替えられた状態で、SCE反射特性によりゼロ校正が実行されたときの測定値を概略的に示す図である。図20において、横軸は、波長を表し、縦軸は、測定値(S/R値)を表す。図20を用いて、ゼロ判定閾値161Aとしてメモリ160Aに記憶される第5閾値TH5の決定手法が説明される。
【0103】
測定値ZC31は、大きい開口ALを有するマスク板M1(図6)がマスク板装着部37(図4)に取り付けられ、径切替レバー110がLV側に切り替えられ、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられた状態での測定値である。測定値ZC32は、小さい開口ASを有するマスク板M2(図7)がマスク板装着部37(図4)に取り付けられ、径切替レバー110がSV側に切り替えられ、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられた状態での測定値である。すなわち、測定値ZC31,ZC32は、測定ユニット100Aがゼロ校正部31ではなくて光沢校正部51に取り付けられた状態で、ゼロ校正が誤って実行されたときの測定値である。そこで、第5閾値TH5は、測定値ZC31,ZC32を多少超える値に設定されている。この第5閾値TH5によって、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられたことによる、誤ったゼロ校正を判定することができる。
【0104】
(第2実施形態の動作)
図21は、第2実施形態の光学特性測定装置10Aにおけるゼロ校正及び白色校正の動作を概略的に示すフローチャートである。ディスプレイ120に表示された作業メニューのうちゼロ校正が決定ボタン118により決定されると、図21の動作が開始される。ステップS2100において、測色制御部151は、ユーザによって、測定ボタン114が操作されたか否かを判定する。測定ボタン114が操作されると(ステップS2100でYES)、処理はステップS2105に進む。測定ボタン114が操作されない間は(ステップS2100でNO)、処理はステップS2100で待機する。すなわち、測定ボタン114が操作されると、測色制御部151は、ユーザによって、測定ユニット100Aがゼロ校正部31に取り付けられたと判断する。
【0105】
ステップS2105において、測色制御部151は、移動機構106を動作させて閉塞部材17を閉塞位置に配置した状態で、SCI反射特性によるゼロ校正を実行して、S/R値を取得する。ステップS2110において、校正判定部152Aは、取得したS/R値が第4閾値TH4未満であるか否かを判定する。S/R値が第4閾値TH4未満であれば(ステップS2110でYES)、処理はステップS2115に進む。一方、S/R値が第4閾値TH4以上であれば(ステップS2110でNO)、処理はステップS2140に進む。ステップS2115において、校正判定部152Aは、SCI反射特性によるゼロ校正が正常に実行されたと判定する。ステップS2120において、測色制御部151は、移動機構106を動作させて閉塞部材17を退避位置に配置した状態で、SCE反射特性によるゼロ校正を実行する。
【0106】
ステップS2125において、測色制御部151は、ユーザによって、測定ボタン114が操作されたか否かを判定する。測定ボタン114が操作されると(ステップS2125でYES)、処理はステップS2130に進む。測定ボタン114が操作されない間は(ステップS2125でNO)、処理はステップS2125で待機する。すなわち、測定ボタン114が操作されると、測色制御部151は、ユーザによって、測定ユニット100Aが白色校正部33に取り付けられたと判断する。
【0107】
ステップS2130において、測色制御部151は、移動機構106を動作させて閉塞部材17を閉塞位置に配置した状態で、SCI反射特性による白色校正を実行する。ステップS2135において、測色制御部151は、移動機構106を動作させて閉塞部材17を退避位置に配置した状態で、SCE反射特性による白色校正を実行する。その後、図21の動作は終了する。報知制御部153は、例えば電子ブザー122を1秒間オンさせて、ゼロ校正及び白色校正が正常に実行されたことをユーザに報知してもよい。
【0108】
ステップS2140において、校正判定部152Aは、SCI反射特性によるゼロ校正が異常であったと判定する。ステップS2145において、測色制御部151は、移動機構106を動作させて閉塞部材17を退避位置に配置した状態で、SCE反射特性によるゼロ校正を実行して、S/R値を取得する。ステップS2150において、校正判定部152Aは、取得したS/R値が、第5閾値TH5未満であるか否かを判定する。S/R値が第5閾値TH5未満であれば(ステップS2150でYES)、処理はステップS2155に進む。一方、S/R値が第5閾値TH5以上であれば(ステップS2150でNO)、処理はステップS2165に進む。
【0109】
ステップS2155において、校正判定部152Aは、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられてゼロ校正が実行されたと判定する。ステップS2160において、報知制御部153は、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられているので、ゼロ校正部31に取り付けてゼロ校正を再実行するように促す警告をディスプレイ120に表示する。報知制御部153は、更に、0.5秒間オン及び0.5秒間オフを電子ブザー122に複数回繰り返させて、ゼロ校正が正常に実行されなかったことをユーザに報知してもよい。その後、図21の動作は終了する。
【0110】
ステップS2165において、校正判定部152Aは、ゼロ校正が誤っていると判定する。ステップS2170において、報知制御部153は、ゼロ校正を再実行するように促す警告をディスプレイ120に表示する。報知制御部153は、更に、0.5秒間オン及び0.5秒間オフを電子ブザー122に複数回繰り返させて、ゼロ校正が正常に実行されなかったことをユーザに報知してもよい。その後、図21の動作は終了する。
【0111】
(第2実施形態の効果)
以上説明されたように、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、S/R値に基づく閾値を用いているので、校正が正常に実行されたか否かを誤判定する可能性を低減することができ、温湿度環境が変化しても、校正が正常に実行されたか否かを安定して精度良く判定することができる。
【0112】
また、第2実施形態では、光学特性測定装置10Aの出荷前に、ゼロ校正部31及び光沢校正部51を測定対象として、SCI反射特性によるゼロ校正が実行され、得られたS/R値に基づき、第4閾値TH4が決定されてメモリ160Aに予め記憶されている。したがって、第2実施形態によれば、測定ユニット100Aがゼロ校正部31に取り付けられてゼロ校正が実行されたか否かを精度良く判定することができる。
【0113】
また、第2実施形態では、光学特性測定装置10Aの出荷前に、更に、ゼロ校正部31及び光沢校正部51を測定対象として、SCE反射特性によるゼロ校正が実行され、得られたS/R値に基づき、第5閾値TH5が決定されて、メモリ160Aに予め記憶されている。したがって、第2実施形態によれば、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられてゼロ校正が実行されたか否かを精度良く判定することができる。
【0114】
また、第2実施形態では、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられてゼロ校正が実行されたと判定されると、ディスプレイ120に、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられていたので、ゼロ校正部31に取り付けてゼロ校正を再実行するように促す警告が表示される。このため、ユーザは、ゼロ校正が正しく実行されなかったということだけでなく、正しく実行されなかった原因を知ることができる。その結果、第2実施形態によれば、光学特性測定装置10Aの使い勝手を向上することができる。
【0115】
(その他)
(1)上記第1実施形態では、ゼロ判定閾値161として、S/R値に基づき、第1閾値TH1、第2閾値TH2、第3閾値TH3が決定されて、メモリ160に予め記憶されているが、白色差分閾値ΔTHと同様に、ゼロ判定閾値161として、ゼロ差分閾値がメモリ160に予め記憶されてもよい。
【0116】
(1-1)例えば、図11において、測定値ZC1(WL)と第1閾値TH1との差であるゼロ差分閾値ΔTH1と、測定値ZC1(WL)とが、ゼロ判定閾値161として、メモリ160に予め記憶されていてもよい。校正判定部152は、SCI反射特性によるゼロ校正がユーザによって実行されたときに得られたS/R値と、測定値ZC1(WL)との差が、ゼロ差分閾値ΔTH1未満であれば、ガラス無しマスク板と判定してもよい。
【0117】
(1-2)例えば、図12において、測定値ZC11(WL)と第2閾値TH2との差であるゼロ差分閾値ΔTH2と、測定値ZC11(WL)と、測定値ZC13(WL)と第3閾値TH3との差であるゼロ差分閾値ΔTH3と、測定値ZC13(WL)と、がゼロ判定閾値161として、メモリ160に予め記憶されていてもよい。校正判定部152は、SCE反射特性によるゼロ校正がユーザによって実行されたときに得られたS/R値が、測定値ZC11(WL)とゼロ差分閾値ΔTH2との和より小さければ、ガラス付きマスク板と判定してもよい。
【0118】
校正判定部152は、SCE反射特性によるゼロ校正がユーザによって実行されたときに得られたS/R値が、測定値ZC11(WL)とゼロ差分閾値ΔTH2との和以上であって、測定値ZC13(WL)とゼロ差分閾値ΔTH3との和より小さければ、測定ユニット100がマスク板収納部35に取り付けられて、ゼロ校正が実行されたと判定してもよい。校正判定部152は、SCE反射特性によるゼロ校正がユーザによって実行されたときに得られたS/R値が、測定値ZC13(WL)とゼロ差分閾値ΔTH3との和以上であれば、校正判定部152は、径切替レバー110の状態と、マスク板装着部37に取り付けられているマスク板とが一致していないと判定してもよい。
【0119】
(1-3)例えば、図19において、測定値ZC21(WL)と第4閾値TH4との差であるゼロ差分閾値ΔTH4と、測定値ZC21(WL)とが、ゼロ判定閾値161Aとして、メモリ160Aに予め記憶されていてもよい。更に、例えば、図20において、測定値ZC31(WL)と第5閾値TH5との差であるゼロ差分閾値ΔTH5と、測定値ZC31(WL)とが、ゼロ判定閾値161Aとして、メモリ160Aに予め記憶されていてもよい。
【0120】
校正判定部152Aは、SCI反射特性によるゼロ校正がユーザによって実行されたときに得られたS/R値が、測定値ZC21(WL)とゼロ差分閾値ΔTH4との和より小さければ、ゼロ校正が正常に実行されたと判定してもよい。校正判定部152Aは、SCI反射特性によるゼロ校正がユーザによって実行されたときに得られたS/R値が、測定値ZC21(WL)とゼロ差分閾値ΔTH4との和以上であって、SCE反射特性によるゼロ校正がユーザによって実行されたときに得られたS/R値が、測定値ZC31(WL)とゼロ差分閾値ΔTH5との和より小さければ、測定ユニット100が光沢校正部51に取り付けられて、ゼロ校正が実行されたと判定してもよい。
【0121】
(1-4)このように、ゼロ判定閾値161として、ゼロ差分閾値を用いることによって、器差又は環境変化による誤差があっても、ゼロ校正が正しく実行されたか否かを精度良く判定することができる。
【0122】
(2)上記第1実施形態では、ステップS1455(図14)において、報知制御部153は、測定ユニット100がマスク板収納部35に取り付けられているので、ゼロ校正部31に取り付けてゼロ校正を再実行するように促す警告をディスプレイ120に表示しているが、これに限られない。例えば、報知制御部153は、単に、測定ユニット100をゼロ校正部31に取り付けてゼロ校正を再実行するように促す警告をディスプレイ120に表示してもよい。
【0123】
また、上記第2実施形態では、ステップS2160(図21)において、報知制御部153は、測定ユニット100Aが光沢校正部51に取り付けられているので、ゼロ校正部31に取り付けてゼロ校正を再実行するように促す警告をディスプレイ120に表示しているが、これに限られない。例えば、報知制御部153は、単に、測定ユニット100Aをゼロ校正部31に取り付けてゼロ校正を再実行するように促す警告をディスプレイ120に表示してもよい。
【0124】
これらの場合でも、上記第1、第2実施形態と同様に、ユーザは、ゼロ校正が正しく実行されなかったのは、測定ユニット100,100Aがゼロ校正部31に取り付けられていなかったことが原因であると知ることができる。
【0125】
(3)上記第1、第2実施形態では、測定ユニット100,100Aは、電子ブザー122を備えているが、これに限られず、電子ブザー122を備えずに、ディスプレイ120による警告表示のみが行われるようにしてもよい。
【0126】
(4)上記第1、第2実施形態では、1種類の開口径の開口を有するマスク板M1~M4が用いられているが、これに限られない。例えば、開口径が変更可能な開口を有するマスク板が用いられてもよい。
【0127】
(5)上記第1、第2実施形態は、測定ユニット100,100Aは、光学特性測定部の一例として、分光測色計を備えているが、これに限られず、例えば、3刺激値型測色計を備えてもよい。測定ユニット100,100Aは、ゼロ校正が実行される測定部を備えていればよい。
【符号の説明】
【0128】
1,1A 積分球
1a 内壁
3 測定対象
5 測定開口
9,43 受光光学系
10,10A 光学特性測定装置
13 試料用分光部
21 参照用光ファイバ
23 参照用分光部
31 ゼロ校正部
33 白色校正部
35 マスク板収納部
37 マスク板装着部
47 照明光学系
49 光学フィルタ
51 光沢校正部
100,100A 測定ユニット
102,124 光源
104,108,126 受光センサ
110 径切替レバー
120 ディスプレイ
122 電子ブザー
151 測色制御部
152,152A 校正判定部
153 報知制御部
154 光沢制御部
160,160A メモリ
161,161A ゼロ判定閾値
162 白色判定閾値
200,200A 校正台
M1~M4 マスク板
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