(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6594 20110101AFI20221025BHJP
H01R 13/6581 20110101ALI20221025BHJP
H01R 12/79 20110101ALI20221025BHJP
【FI】
H01R13/6594
H01R13/6581
H01R12/79
(21)【出願番号】P 2018222796
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】I-PEX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康司
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05478259(US,A)
【文献】特許第6179564(JP,B2)
【文献】特開2008-027707(JP,A)
【文献】特開平10-172685(JP,A)
【文献】特開2018-186056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6581-13/6594
H01R 12/71 -12/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の信号伝送媒体と配線基板とを電気的に接続する電気コネクタであって、
当該電気コネクタの第1の方向に沿って配列され、且つ前記信号伝送媒体に設けられた複数の信号導電路のうち対応する信号導電路を前記配線基板に設けられた複数の信号導電路のうち対応する信号導電路に各々電気的に接続する導電性の複数の信号コンタクトと、
前記複数の信号コンタクトを保持する絶縁性のハウジングと、
前記配線基板の主面に交差する方向から前記信号伝送媒体が挿入される開口部を有し、且つ前記信号伝送媒体に設けられたグランド導電路を前記配線基板に設けられたグランド導電路に電気的に接続する導電性のシェルと、を備え、
前記シェルは、
前記ハウジングのうち前記主面に対向する面を除く複数の外表面の各々を覆い、且つ、前記主面に沿った方向であって前記第1の方向と直交する第2の方向において、前記ハウジングの外表面および前記複数の信号コンタクトにおいて前記配線基板と接続される接続部に対して隙間を空けて対向し、
前記シェルは、
前記複数の外表面のうち前記第1の方向に沿って延在し前記第2の方向に間隔を空けて位置する一対の外表面を覆う一対のカバー部に連続し且つ前記開口部を介して対向する一対の折り返し部を有し、
前記一対の折り返し部は、間隔を空けて互いに対向する第1の接触部と第2の接触部とを有し、前記信号伝送媒体の一方の面に設けられたグランド導電路に前記第1の接触部が接触し、前記信号伝送媒体の他方の面に設けられたグランド導電路に前記第2の接触部が接触する
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
板状の信号伝送媒体と配線基板とを電気的に接続する電気コネクタであって、
当該電気コネクタの第1の方向に沿って配列され、且つ前記信号伝送媒体に設けられた複数の信号導電路のうち対応する信号導電路を前記配線基板に設けられた複数の信号導電路のうち対応する信号導電路に各々電気的に接続する導電性の複数の信号コンタクトと、
前記複数の信号コンタクトを保持する絶縁性のハウジングと、
前記配線基板の主面に交差する方向から前記信号伝送媒体が挿入される開口部を有し、且つ前記信号伝送媒体に設けられたグランド導電路を前記配線基板に設けられたグランド導電路に電気的に接続する導電性のシェルと、を備え、
前記シェルは、
前記ハウジングのうち前記主面に対向する面を除く複数の外表面の各々を覆い、且つ、前記主面に沿った方向であって前記第1の方向と直交する第2の方向において、前記ハウジングの外表面および前記複数の信号コンタクトにおいて前記配線基板と接続される接続部に対して隙間を空けて対向し、
前記シェルは、
前記ハウジングに一端が固定され且つ前記第2の方向に弾性を有する固定部を有し、前記固定部の前記一端が前記ハウジングに固定されている状態で、前記ハウジングのうち前記第1の方向に延伸する外表面と前記第2の方向において隙間を空けて対向する
ことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項3】
前記シェルは、
前記ハウジングのうち前記第1の方向に延伸する外表面の一部を覆う主面部と、
前記主面部から前記第2の方向であって前記ハウジングから離れる方向に延出し、前記第2の方向において前記接続部と隙間を空けて対向する延出部と、を有する
ことを特徴とする請求項
1または2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記延出部は、
前記配線基板に設けられた前記グランド導電路に接続されるグランド接続部を有する
ことを特徴とする請求項
3に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記グランド接続部は、
前記第1の方向において間隔を空けて配列される複数の切欠部を有し、
前記第2の方向で対向する位置から、前記複数の信号コンタクトの前記接続部が前記複数の切欠部を介して目視可能である
ことを特徴とする請求項
4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記シェルは、
前記第1の方向において前記ハウジングを介して対向する一対の部材を有し、前記一対の部材が、前記複数の信号コンタクトにおいて前記複数の信号導電路と接触する接触部よりも高い部分を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フレキシブルプリンテッドサーキット(FPC)またはフレキシブルフラットケーブル(FFC)などの板状の信号伝送媒体を配線基板に対して電気的に接続する電気コネクタが知られている。かかる電気コネクタは、例えば、配線基板の主面上に半田付けなどによって実装された状態で使用され、電気コネクタに設けられた開口部から、信号伝送媒体が電気コネクタの内方に向かって挿入される。これにより、信号伝送媒体の信号導電路が、電気コネクタの信号コンタクトを通して、配線基板の信号導電路に電気的に接続される。
【0003】
この種の電気コネクタが用いられる電子機器では、伝送信号の高周波化や動作頻度の増大などに伴って、電磁波の放射による電磁干渉が問題になる場合がある。例えば、電磁干渉によって、電子機器が正常に動作できなくなったり電子機器の動作が不安定になったりする場合がある。そこで、信号コンタクトが配置されたハウジングの外表面を覆うように導電性のシェルをハウジングに装着し、かかるシェルを介して、信号伝送媒体のグランド導電路を、配線基板のグランド導電路に電気的に接続することができる電気コネクタが開発されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、信号伝送媒体を電気コネクタに挿入した後、シールド部材を有するアクチュエータを操作することによって、信号コンタクトが配置されたハウジングを全体的に導電性部材で覆う電気コネクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電気コネクタでは、シールド部材を有するアクチュエータの可動部分の周辺に隙間ができ、かかる隙間から電磁波が漏れる可能性がある。そのため、電気コネクタにおける信号伝送経路の電磁遮蔽を良好に行うことができない可能性がある。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、信号伝送経路の電磁遮蔽を良好に行うことができる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る電気コネクタは、板状の信号伝送媒体と配線基板とを電気的に接続する電気コネクタであって、導電性の複数の信号コンタクトと、絶縁性のハウジングと、導電性のシェルとを備える。前記複数の信号コンタクトは、当該電気コネクタの第1の方向に沿って配列され、且つ前記信号伝送媒体に設けられた複数の信号導電路のうち対応する信号導電路を前記配線基板に設けられた複数の信号導電路のうち対応する信号導電路に各々電気的に接続する。前記ハウジングは、前記複数の信号コンタクトを保持する。前記シェルは、前記配線基板の主面に交差する方向から前記信号伝送媒体が挿入される開口部を有し、且つ前記信号伝送媒体に設けられたグランド導電路を前記配線基板に設けられたグランド導電路に電気的に接続する。前記シェルは、前記ハウジングのうち前記配線基板の主面に対向する面を除く複数の外表面の各々を覆い、且つ、前記主面に沿った方向であって前記第1の方向と直交する第2の方向において、前記ハウジングの外表面および前記複数の信号コンタクトにおいて前記配線基板と接続される接続部に対して隙間を空けて対向する。前記シェルは、前記複数の外表面のうち前記第1の方向に沿って延在し前記第2の方向に間隔を空けて位置する一対の外表面を覆う一対のカバー部に連続し且つ前記開口部を介して対向する一対の折り返し部を有する。前記一対の折り返し部は、間隔を空けて互いに対向する第1の接触部と第2の接触部とを有し、前記信号伝送媒体の一方の面に設けられたグランド導電路に前記第1の接触部が接触し、前記信号伝送媒体の他方の面に設けられたグランド導電路に前記第2の接触部が接触する。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、信号伝送経路の電磁遮蔽を良好に行うことができる電気コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電気コネクタと配線基板と信号伝送媒体を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電気コネクタに信号伝送媒体が接続された状態を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電気コネクタの斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るハウジングの斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るハウジングの斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るシェルの斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るシェルの斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る固定金具の斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る固定金具の斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る配線基板に実装された状態の電気コネクタの正面図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る信号伝送媒体が接続された状態の電気コネクタの背面図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る電気コネクタに接続された状態の信号伝送媒体が煽られた状態を説明するための図である。
【
図16】
図16は、実施形態に係る電気コネクタにおける信号コンタクトとシェルとの関係を説明するための図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係る信号伝送媒体が接続された状態の電気コネクタの平面図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る信号伝送媒体が接続された状態の電気コネクタの背面図である。
【
図21】
図21は、操作部が操作された場合における
図17に示すXIX-XIX線に沿った矢視断面相当図である。
【
図22】
図22は、操作部が操作された場合における
図18に示すXX-XX線に沿った矢視断面相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電気コネクタの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
<1.電気コネクタの概略>
実施形態に係る電気コネクタの概要について、
図1~
図3を参照して説明する。実施形態に係る電気コネクタ1は、
図1および
図2に示すように、電気機器などに搭載される配線基板2の主面Mに半田付けなどによって実装され、配線基板2と信号伝送媒体3とを電気的に接続する。
【0013】
信号伝送媒体3は、板状に形成された平型の配線部材であり、例えば、フレキシブルプリンテッドサーキット(FPC)またはフレキシブルフラットケーブル(FFC)などである。信号伝送媒体3には、複数の信号導電路91とグランド導電路92とが設けられる。また、信号伝送媒体3の先端部3aには、複数の信号導電路91の配列方向における一端と他端とに切欠部94が形成される。
【0014】
図3に示すように、電気コネクタ1は、絶縁性のハウジング10と、ハウジング10に配列された導電性の複数の信号コンタクト20と、導電性のシェル30と、一対の固定金具40,50とを備える。
図1に示す状態において、複数の信号コンタクト20は、配線基板2に形成された複数の信号導電路(図示せず)のうち対応する信号導電路に各々電気的に接続される。
【0015】
図1に示すように、シェル30の上部には、信号伝送媒体3が挿入される開口部39が形成される。かかる開口部39を介して信号伝送媒体3の先端部3aが電気コネクタ1の内部へ挿入されることで、
図2に示す状態になり、電気コネクタ1によって、配線基板2と信号伝送媒体3とが電気的に接続される。
【0016】
具体的には、電気コネクタ1の複数の信号コンタクト20は、複数の信号導電路91のうち対応する信号導電路91と、配線基板2に形成された複数の信号導電路(図示せず)のうち対応する信号導電路とを各々接続した状態になる。また、シェル30は、グランド導電路92(
図1参照)と、配線基板2に形成されたグランド導電路(図示せず)とを接続した状態になる。
【0017】
図2に示す状態では、信号伝送媒体3の先端に設けられた一対の切欠部94(
図1参照)が固定金具40,50に係止されている。これにより、信号伝送媒体3に意図しない力が働いた場合であっても、電気コネクタ1から信号伝送媒体3が抜去されることを抑制することができる。
【0018】
また、電気コネクタ1のハウジング10には、一対の操作部13b,14bが設けられている。かかる一対の操作部13b,14bがX軸方向において、信号伝送媒体3に向かう方向へ移動操作された場合に、固定金具40,50と信号伝送媒体3の切欠部94との係止が解除され、信号伝送媒体3を電気コネクタ1から抜去することができる。
【0019】
電気コネクタ1のシェル30は、ハウジング10のうち配線基板2と対向する外表面を除く複数の外表面の各々を覆った状態でハウジング10に取り付けられる。これにより、電気コネクタ1は、例えば、シールド部材を有すアクチュエータを備える電気コネクタに比べ、信号伝送経路の電磁遮蔽を良好に行うことができる。
【0020】
<2.電気コネクタ1の構成の詳細>
次に、
図4~
図16を参照して電気コネクタ1の構成を具体的に説明する。なお、以下において、説明の便宜上、複数の信号コンタクト20の配列方向を「左右方向」(X軸方向)とし、信号伝送媒体3を電気コネクタ1に挿入する方向を「下方向」(Z軸負方向)とし、信号伝送媒体3を電気コネクタ1から抜去する方向を「上方向」(Z軸正方向)とし、「左右方向」と「上下方向」の各々に直交する方向(Y軸方向)を「前後方向」とする。
【0021】
実施形態に係る電気コネクタ1は、上述したように、複数の信号コンタクト20が配列されたハウジング10と、シェル30と、一対の固定金具40,50とを備える。複数の信号コンタクト20、シェル30、および固定金具40,50は、例えば、金属板材に打抜き折曲げ加工を施すことによって形成される。
【0022】
まず、ハウジング10について説明する。
図4および
図5に示すように、ハウジング10の上部には、シェル30の開口部39(
図1参照)と上下方向で対向し且つ信号伝送媒体3の先端部3a(
図1参照)が挿入される開口部16が形成される。なお、ハウジング10に保持された複数の信号コンタクト20は、信号伝送媒体3が開口部16を介して挿入された場合に信号伝送媒体3の先端部3aに形成された複数の信号導電路91に対向する位置にある。
【0023】
ハウジング10は、左右方向に延伸する前壁部11と、前壁部11の後方に位置し、左右方向に延伸する後壁部12と、前後方向に延伸し、左右方向における前壁部11の一端と後壁部12の一端とを連結する側壁部13と、前後方向に延伸し、左右方向における前壁部11の他端と後壁部12の他端とを連結する側壁部14とを備える。なお、上述した開口部16は、前壁部11、後壁部12、側壁部13、および側壁部14の各々に囲まれた位置に形成される。
【0024】
前壁部11には、複数の信号コンタクト20が圧入される複数の溝部11bが形成される。また、前壁部11には、シェル30を固定するための複数の凹部11aが左右方向に間隔を空けて形成される。同様に、後壁部12には、シェル30を固定するための複数の凹部12aが左右方向に間隔を空けて形成される。
【0025】
側壁部13は、固定金具40の一部を収容する収容部13aと、上述した操作部13bとを有する。同様に、側壁部14は、固定金具50の一部を収容する収容部14aと、上述した操作部14bとを有する。
【0026】
ハウジング10は、配線基板2と対向する外表面15fを除く複数の外表面15a,15b,15c,15d,15eがシェル30に覆われる。外表面15fは、前壁部11の下面、後壁部12の下面、側壁部13の下面、および側壁部14の下面を含む面である。
【0027】
外表面15aは、ハウジング10の前面であり、前壁部11の前面と、側壁部13,14の前面とを含む。外表面15bは、ハウジング10の後面であり、後壁部12の後面と、側壁部13,14の後面とを含む。外表面15cは、側壁部13の側面であり、外表面15dは、側壁部14の側面である。外表面15eは、前壁部11の上面、後壁部12の上面、側壁部13の上面、および側壁部14の上面を含む。
【0028】
次に、シェル30について説明する。
図6および
図7に示すように、シェル30は、左右方向に延伸する前方カバー部31と、左右方向に延伸する後方カバー部32と、前後方向に延伸し、左右方向における前方カバー部31の一端部と後方カバー部32の一端部との間に形成された側方カバー部33と、左右方向における前方カバー部31の他端部と後方カバー部32の他端部との間に形成された側方カバー部34とを備える。
【0029】
また、シェル30は、前方カバー部31の上端に連続し、後方へ延伸した後に下方に折り返す折り返し部35と、後方カバー部32の上端に連続し、前方に延伸した後に下方に折り返す折り返し部36とを備える。折り返し部35と折り返し部36とは開口部39を介して対向する。
【0030】
前方カバー部31は、ハウジング10の外表面15aを覆い、後方カバー部32は、ハウジング10の外表面15bを覆い、側方カバー部33は、外表面15cを覆い、側方カバー部34は、外表面15dを覆う。また、折り返し部35および折り返し部36は、外表面15eを覆う。このように、シェル30は、ハウジング10の外表面15fを除く複数の外表面15a,15b,15c,15d,15eを覆う。そのため、シェル30によって信号伝送経路の電磁遮蔽を良好に行うことができる。
【0031】
前方カバー部31は、
図6および
図11に示すように、ハウジング10のうち左右方向に延伸する外表面15aの一部を覆う主面部31aと、主面部31aから前方斜め下方に向けて延出する延出部31bとを有する。主面部31aには、上端部から片持ち状で後方斜め下方に向けて延伸した後、下方へ延伸する複数の固定部60が形成される。
【0032】
複数の固定部60は、左右方向に間隔を空けて配置される。各固定部60は、弾性を有しており、一端部がハウジング10に固定される。具体的には、固定部60の一端部は、前壁部11の上端部に形成された凹部11a(
図5参照)に挿入されることで、前方カバー部31がハウジング10に固定される。
【0033】
また、延出部31bの下端部には、グランド接続部61が形成される。かかるグランド接続部61は、配線基板2に形成される不図示のグランド導電路に接続される複数の接続端子部61aと、左右方向に間隔を空けて配置される複数の切欠部61bを有する。左右方向において接続端子部61aと切欠部61bとは交互に配置される。左右方向における切欠部61bの長さは、例えば、信号コンタクト20によって伝搬される信号の周波数と同一周波数を有する電磁波を通過させない間隔に設定される。
【0034】
後方カバー部32は、上端部から片持ち状で前方斜め下方に向けて延伸した後、下方へ延伸する複数の固定部32aを有する。かかる複数の固定部32aは、左右方向に間隔を空けて配置される。各固定部32aは、弾性を有しており、一端部がハウジング10に固定される。具体的には、固定部32aの一端部は、後方カバー部32の上端部に形成された凹部12a(
図5参照)に挿入されることで、後方カバー部32がハウジング10に固定される。
【0035】
また、
図7に示すように、後方カバー部32の下端部には、グランド接続部32bが形成される。かかるグランド接続部32bは、配線基板2に形成される不図示のグランド導電路に接続される複数の接続端子部71と、左右方向に間隔を空けて配置される複数の切欠部72を有する。左右方向において接続端子部71と切欠部72とは交互に配置される。左右方向における切欠部72の長さは、例えば、信号コンタクト20によって伝搬される信号の周波数と同一周波数を有する電磁波を通過させない間隔に設定される。
【0036】
側方カバー部33は、
図6に示すように、上部カバー部33aと、下部カバー部33bとを有する。上部カバー部33aは、左右方向における前方カバー部31の一端の上部と後方カバー部32の一端の上部とを連結する。下部カバー部33bは、左右方向における前方カバー部31の一端の下部と後方カバー部32の一端の下部とから前後方向に延伸して形成され、ハウジング10における外表面15cの下部を覆う。
【0037】
側方カバー部34は、
図7に示すように、上部カバー部34aと、下部カバー部34bとを有する。上部カバー部34aは、左右方向における前方カバー部31の他端の上部と後方カバー部32の他端の上部とを連結する。下部カバー部34bは、左右方向における前方カバー部31の他端の下部と後方カバー部32の他端の下部とから前後方向に延伸して形成され、ハウジング10における外表面15dの下部を覆う。
【0038】
折り返し部35は、
図7および
図13に示すように、前方カバー部31の上端に一端が連続し後方に延伸する基部35aと、基部35aの他端に連続し下方に延伸する複数の垂下部35bと、互いに異なる組み合わせの隣接する垂下部35b間に各々配置され、後方斜め下方に向けて延伸する複数の接触部35cとを有する。複数の垂下部35bは、左右方向に間隔を空けて配置される。同様に、複数の接触部35cは、左右方向に間隔を空けて配置される。折り返し部36は、後方カバー部32の上端に一端が連続し、前方に延伸する基部36aと、基部36aの他端に連続し下方に延伸する接触部36bとを有する。
【0039】
次に、固定金具40,50について説明する。
図8および
図9に示すように、固定金具40は、平面視でU字状に形成された基部41と、基部41の下端から前方および後方に各々延伸し配線基板2に形成された不図示のグランド導電路に接続されるグランド接続部42,43とを有する。
【0040】
また、固定金具40は、基部41の上端に基端が連続する折り返し部44と、前後方向において折り返し部44と対向しハウジング10に固定される固定部45と、基部41の上端に連続し上方に延伸する延伸部46とを有する。
【0041】
折り返し部44の先端部には、固定部45へ向かって突出する凸状の係止部44aが形成される。かかる係止部44aは、信号伝送媒体3が電気コネクタ1に接続された場合に、信号伝送媒体3の切欠部94に挿入され、電気コネクタ1と信号伝送媒体3との接続状態をロックする機能を有している。
【0042】
また、折り返し部44の中途部には、固定部45から離れる方向に傾斜して突出する突出部44bが形成される。かかる突出部44bが操作部13bによって押圧された場合に、折り返し部44の先端部は、固定部45から離れる方向に移動する。これにより、係止部44aが切欠部94から抜去され、電気コネクタ1と信号伝送媒体3とのロック状態が解除される。
【0043】
延伸部46は、左右方向に弾性を有しており、操作部13bの取付孔に挿入される。これにより、作業者によって操作部13bが突出部44bを押圧する方向に操作された後、操作部13bを非操作位置に戻すことができる。
【0044】
固定金具50は、固定金具40と互いに鏡映対称(ZY面で面対称)の形状を有している。かかる固定金具50は、後述するように、固定金具40の折り返し部44、固定部45、および延伸部46に対応する折り返し部54、固定部55、および延伸部56を有している。
【0045】
次に、ハウジング10と信号コンタクト20とシェル30との関係について説明する。
図11に示すように、ハウジング10の外表面15aは、前方カバー部31に覆われている。前方カバー部31は、外表面15aの一部を覆う主面部31aから外表面15aから離れる方向である前方に延出し且つ下方に向けて傾斜する延出部31bを有している。
【0046】
そのため、
図11に示すように、シェル30は、信号コンタクト20のうち配線基板2に形成された不図示の信号導電路と接続される接続部20aに対して距離D1の隙間85を空けて対向する。これにより、配線基板2における隙間85と対向する領域、すなわち、距離D1で示される範囲の領域に配線を行うことができる。また、距離D1で示される範囲の領域に形成された配線に流れる信号によって発生する電磁波をシェル30によって遮蔽することができる。したがって、信号伝送経路の電磁遮蔽を良好に行うことができる。
【0047】
また、
図11に示すように、ハウジング10における前壁部11と後壁部12は、シェル30の前方カバー部31における主面部31aと間隔を空けて配置される。具体的には、前壁部11は、距離D2の隙間を介して主面部31aと対向し、後壁部12は、距離D3の隙間を介して後方カバー部32と対向する。そして、前壁部11の上端部は、弾性を有する固定部60によって前壁部11に支持され、後壁部12の上端部は、弾性を有する固定部32aによって後壁部12に支持される。そのため、前壁部11の上端部および後壁部12の上端部は前後方向に移動可能である。
【0048】
図13に示すように、電気コネクタ1に信号伝送媒体3が接続された状態において、信号伝送媒体3の先端部3aは、シェル30の折り返し部36における接触部36bとシェル30の折り返し部35における接触部35cとに挟持される。
図13に示す状態では、信号伝送媒体3のグランド導電路92は、シェル30の折り返し部35における接触部35cに接触し、信号伝送媒体3のグランド導電路93は、折り返し部36における接触部36bに接触する。また、
図13に示す状態では、信号伝送媒体3の信号導電路91は、信号コンタクト20の接触部20bに接触する。
【0049】
図13に示す状態から、
図14に示すように前後方向のうちの一方向(Y軸正方向)に信号伝送媒体3が煽られると、弾性を有する固定部60および固定部32aによって前壁部11の上端部および後壁部12の上端部が一方向(Y軸正方向)に移動し、折り返し部35,36が一方向(Y軸正方向)に移動する。また、
図13に示す状態から、
図14に示すように前後方向のうちの他方向(Y軸負方向)に信号伝送媒体3が煽られると、弾性を有する固定部60および固定部32aによって前壁部11の上端部および後壁部12の上端部が他方向(Y軸負方向)に移動し、折り返し部35,36が他方向(Y軸負方向)に移動する。
【0050】
そのため、電気コネクタ1に接続された信号伝送媒体3が煽られた場合であっても、折り返し部35の接触部35cとグランド導電路92との接触が維持され、折り返し部36の接触部36bとグランド導電路93との接触が維持される。これにより、グランド導電路92,93に対するシェル30の接触状態を安定させることができる。
【0051】
また、シェル30のグランド接続部61には、複数の切欠部61b(
図6参照)が形成されている。そのため、
図15に示すように、前後方向において、複数の信号コンタクト20の接続部20aが複数の切欠部61bを介して露出する。そのため、配線基板2に電気コネクタ1を取り付けた後に、配線基板2に形成された不図示のグランド導電路と接続部20aとの接続を容易に確認することができる。
【0052】
なお、配線基板2のグランド導電路と信号コンタクト20の接続部20aとの接続は、例えば、前後方向においてシェル30の前方カバー部31に対向する位置から電気コネクタ1を撮像し、かかる撮像結果を画像解析することで、配線基板2のグランド導電路と信号コンタクト20の接続部20aとの接続を自動的に判定することができる。
【0053】
また、
図16に示すように、シェル30における側方カバー部34の下部カバー部34bの配線基板2からの高さH1は、開口部39に挿入された不図示の信号伝送媒体3の信号導電路91と接触する信号コンタクト20の接触部20bの高さH2よりも高い。また、図示しないが、シェル30における側方カバー部33の下部カバー部33bの配線基板2からの高さも、信号コンタクト20の接触部20bの高さH2よりも高い。信号コンタクト20の接触部20bよりも上方の部分には電流が流れないため、信号コンタクト20に流れる信号によって発生する電磁波を側方カバー部33,34によって良好に遮蔽することができる。なお、
図16では、説明の便宜上、ハウジング10は図示していない。
【0054】
<3.電気コネクタ1と信号伝送媒体3との接続状態のロックおよびロックの解除>
次に、電気コネクタ1と信号伝送媒体3との接続状態をロックし、且つ、ハウジング10に設けられた操作部13b,14bへの操作によって、電気コネクタ1と信号伝送媒体3とのロックを解除するための構成について、
図17~
図22を参照して具体的に説明する。
【0055】
操作部13b,14bが左右方向(X軸方向)において、信号伝送媒体3に向かう方向へ移動操作されていない状態では、
図20に示すように、係止部44aが信号伝送媒体3の一方の切欠部94に挿入され、且つ係止部54aが信号伝送媒体3の他方の切欠部94に挿入されている。そのため、信号伝送媒体3は、ハウジング10に固定された固定金具40,50に係止され、信号伝送媒体3は、電気コネクタ1と接続された状態で、電気コネクタ1にロックされる。
【0056】
電気コネクタ1は、
図19および
図20に示す状態から作業者などによって操作部13b,14bが左右方向(X軸方向)において、信号伝送媒体3に向かう方向へ移動操作された場合、
図21および
図22の状態になる。操作部13bが操作されると、操作部13bが突出部44bを押圧するため、係止部44aが信号伝送媒体3の一方の切欠部94から離れる。また、操作部14bが左右方向(X軸方向)において、信号伝送媒体3に向かう方向へ移動操作されると、操作部14bが突出部54bを押圧するため、係止部54aが信号伝送媒体3の他方の切欠部94から離れる。これにより、信号伝送媒体3の電気コネクタ1に対するロック状態が解除される。
【0057】
なお、操作部13b,14bの取付孔81,82には、
図22に示すように延伸部46,56が挿入されている。そのため、操作部13b,14bは、
図21および
図22の状態から操作部13b,14bが操作されなくなった場合、
図19および
図20に示す位置に戻る。
【0058】
なお、係止部44aは、
図9に示すように、下方に傾斜する形状を有している。また、係止部54aも同様に、下方に傾斜する形状を有している。そのため、係止部44a,54aは、信号伝送媒体3が電気コネクタ1に挿入される際に押され、信号伝送媒体3の切欠部94が係止部44a,54aと向かい合う位置になった場合に、係止部44a,54aに挿入される。
【0059】
また、上述した電気コネクタ1は、信号伝送媒体3が挿入される方向が下方である構成であるが、かかる構成に限定されない。電気コネクタ1は、配線基板2の主面Mに交差する方向から信号伝送媒体3が挿入される構成であればよく、例えば、信号伝送媒体3が挿入される方向は前方斜め下方または後方斜め下方である構成であってもよい。
【0060】
以上のように、実施形態に係る電気コネクタ1は、板状の信号伝送媒体3と配線基板2とを電気的に接続する電気コネクタであって、導電性の複数の信号コンタクト20と、絶縁性のハウジング10と、導電性のシェル30とを備える。複数の信号コンタクト20は、電気コネクタ1の左右方向(第1の方向の一例)に沿って配列され、且つ信号伝送媒体3に設けられた複数の信号導電路91のうち対応する信号導電路91を配線基板2に設けられた複数の信号導電路(図示せず)のうち対応する信号導電路に各々電気的に接続する。ハウジング10は、複数の信号コンタクト20を保持する。シェル30は、配線基板2の主面Mに交差する方向から信号伝送媒体3が挿入される開口部39を有し、且つ信号伝送媒体3に設けられたグランド導電路92,93を配線基板2に設けられたグランド導電路(図示せず)に電気的に接続する。シェル30は、ハウジング10のうち配線基板2の主面Mに対向する外表面15fを除く複数の外表面15a,15b,15c,15d,15eの各々を覆う。そのため、シェル30によって信号伝送経路の電磁遮蔽を良好に行うことができる。また、シェル30は、配線基板2の主面Mに沿った方向であって左右方向と直交する前後方向(第2の方向の一例)において、ハウジング10の外表面15aおよび複数の信号コンタクト20における配線基板2と接続される接続部20aに対して隙間85を空けて対向する。そのため、例えば、
図11に示す距離D1で示される範囲の領域に配線を行うことができる。また、距離D1で示される範囲の領域に形成された配線に流れる信号によって発生する電磁波をシェル30によって遮蔽することができる。したがって、信号伝送経路の電磁遮蔽をさらに良好に行うことができる。
【0061】
また、シェル30は、ハウジング10のうち左右方向に延伸する外表面15aの一部を覆う主面部31aと、主面部31aから前方(第1の方向の一例)であってハウジング10から離れる方向に延出し、前方において接続部20aと隙間85を空けて対向する延出部31bとを有する。これにより、外表面15aに対して延出部31bに加え主面部31aがハウジング10から離れる方向に延出する構成である場合に比べ、電気コネクタ1が全体的に大きくなることを防止することができる。
【0062】
また、延出部31bは、配線基板2に設けられたグランド導電路(図示せず)に接続されるグランド接続部61を有する。これにより、延出部31bのシールド効果を向上させることができる。
【0063】
また、グランド接続部61は、左右方向において間隔を空けて配列される複数の切欠部61bを有し、前後方向で対向する位置から、複数の信号コンタクト20の接続部20aが複数の切欠部61bを介して目視可能である。これにより、電気コネクタ1に配線基板2を取り付けた後に、配線基板2に形成された不図示のグランド導電路と接続部20aとの接続を容易に確認することができる。
【0064】
シェル30は、ハウジング10に一端が固定される固定部32a,60を有し、固定部32a,60は弾性を有する。これにより、電気コネクタ1に接続された信号伝送媒体3が煽られた場合であっても、シェル30を追従して移動させることができる。そのため、例えば、グランド導電路92,93に対するシェル30の接触状態を安定させることができる。
【0065】
また、固定部32a,60は、前後方向に弾性を有し、シェル30は、固定部32a,60の一端がハウジング10に固定されている状態で、ハウジング10のうち左右方向に延伸する外表面15a,15bと前後方向において隙間を空けて対向する。これにより、信号伝送媒体3が前後方向に煽られた場合であっても、シェル30を追従して移動させることができる。
【0066】
また、シェル30は、左右方向においてハウジング10を介して対向する一対の側方カバー部33,34を有し、かかる一対の側方カバー部33,34が、複数の信号コンタクト20において複数の信号導電路91と接触する接触部20bの高さH2よりも高い部分を有する。これにより、信号コンタクト20に流れる信号によって発生する電磁波を側方カバー部33,34によって良好に遮蔽することができる。一対の側方カバー部33,34は、一対の部材の一例である。
【0067】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 電気コネクタ
2 配線基板
3 信号伝送媒体
10 ハウジング
15a,15b,15c,15d,15e,15f 外表面
16,39 開口部
20 信号コンタクト
20a 接続部
20b 接触部
30 シェル
31 前方カバー部
31a 主面部
31b 延出部
32 後方カバー部
32a,60 固定部
32b,61 グランド接続部
33,34 側方カバー部
35,36 折り返し部
40,50 固定金具
92,93 グランド導電路
72,94 切欠部
85 隙間
91 信号導電路
M 主面