(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】有機薄膜トランジスタとその製造方法および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20221025BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20221025BHJP
H01L 51/05 20060101ALI20221025BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20221025BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20221025BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20221025BHJP
H01L 29/49 20060101ALI20221025BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20221025BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H01L29/78 617S
H01L29/28 100A
H01L21/28 301B
H01L29/50 M
H01L29/58 G
H01L29/78 618B
H01L29/78 619A
H01L29/78 627C
H01L29/78 612A
G09F9/30 338
G09F9/00 338
(21)【出願番号】P 2018535699
(86)(22)【出願日】2017-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2017029959
(87)【国際公開番号】W WO2018038107
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2016162757
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016227003
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017035112
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 典昭
(72)【発明者】
【氏名】西澤 誠
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-235861(JP,A)
【文献】特開2009-231325(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067590(WO,A1)
【文献】特開2016-066099(JP,A)
【文献】特開2015-197633(JP,A)
【文献】特開2008-065225(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0090205(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0243722(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0012775(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0323889(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0197348(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 51/05
H01L 21/28
H01L 29/417
H01L 29/423
H01L 29/786
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板上に少なくともゲート電極と、キャパシタ電極と、それらを覆うように形成された絶縁層と、その上に形成されたソース電極およびドレイン電極と、当該ソース電極と当該ドレイン電極とで挟まれた範囲に有機半導体材料を含む半導体層と、を有する有機薄膜トランジスタであって、
少なくとも前記キャパシタ電極を覆うように第一絶縁層が、当該第一絶縁層の上に前記ゲート電極が、前記ゲート電極および前記キャパシタ電極を覆うように第二絶縁層が、当該第二絶縁層の上に少なくとも前記ソース電極、ドレイン電極、半導体層が、それぞれ形成されており、
前記キャパシタ電極が前記ドレイン電極と重なり、かつ、前記ゲート電極と重ならない位置に形成される、有機薄膜トランジスタ。
【請求項2】
絶縁性の基板上に少なくともゲート電極と、キャパシタ電極と、それらを覆うように形成された絶縁層と、その上に形成されたソース電極およびドレイン電極と、当該ソース電極と当該ドレイン電極とで挟まれた範囲に有機半導体材料を含む半導体層と、を有する有機薄膜トランジスタであって、
少なくとも前記キャパシタ電極を覆うように第一絶縁層が、当該第一絶縁層の上に前記ゲート電極が、前記ゲート電極を覆いかつ前記キャパシタ電極を覆わないように第二絶縁層が、当該第二絶縁層の上に少なくとも前記ソース電極、ドレイン電極、半導体層が、それぞれ形成されている、有機薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とに異なる材料を用いていることを特徴とする、請求項1または2に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記第一絶縁層の誘電率が前記第二絶縁層の誘電率よりも高いことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記第一絶縁層が絶縁材料を2層以上積層してなる、請求項1ないし4のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記第二絶縁層が絶縁材料を2層以上積層してなる、請求項1ないし5のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項7】
絶縁性の基板と、ゲート電極と、キャパシタ電極と、絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体材料を含む半導体層とを有する有機薄膜トランジスタであって、
前記絶縁層は、
前記基板と、前記基板上に形成された前記ゲート電極とを覆う第一絶縁層と、
前記第一絶縁層の上に形成された前記キャパシタ電極を覆う第二絶縁層とを含み、
前記キャパシタ電極が前記ドレイン電極と重なる位置に形成される、有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記第二絶縁層の上に少なくとも前記ソース電極、前記ドレイン電極および前記半導体層が形成されている、請求項7に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項9】
前記第一絶縁層の上に少なくとも前記ソース電極、前記ドレイン電極の一部および前記半導体層が形成されている、請求項7に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項10】
前記第一絶縁層と前記第二絶縁層とが異なる材料を用いて形成されている、請求項7から9のいずれかに記載の有機薄膜トランジス
タ。
【請求項11】
前記第二絶縁層の誘電率が前記第一絶縁層の誘電率よりも高い、請求項7から10のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項12】
前記第二絶縁層の膜厚が前記第一絶縁層の膜厚よりも薄い、請求項7から11のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項13】
前記第一絶縁層が絶縁材料を2層以上積層してなる、請求項7から12のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項14】
前記第二絶縁層が絶縁材料を2層以上積層してなる、請求項7から13のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項15】
絶縁性の基板上に少なくとも第1のキャパシタ電極と、第一絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体材料を含む半導体層と、第二絶縁層と、ゲート電極とを含む有機薄膜トランジスタであって、
前記基板上に第一キャパシタ電極が形成されており、
少なくとも前記第一キャパシタ電極上に前記第一絶縁層が形成されており、
前記第一絶縁層上に前記ソース電極、前記ドレイン電極、および前記半導体層が形成されており、
前記ドレイン電極は、平面視において前記第一キャパシタ電極の少なくとも一部と重なり、
前記ソース電極、前記ドレイン電極の少なくとも一部、および前記半導体層上に前記第二絶縁層が形成されており、
前記第二絶縁層上に前記ゲート電極が形成されている、有機薄膜トランジスタ。
【請求項16】
前記第二絶縁層上に
、第二キャパシタ電極がさらに形成され、
前記第二キャパシタ電極は、平面視において前記ドレイン電極の少なくとも一部と重なる、請求項15に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項17】
前記第一絶縁層の比誘電率が、前記第二絶縁層の比誘電率よりも大きい、請求項15または請求項16に記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項18】
前記第一絶縁層の膜厚が、前記第二絶縁層の膜厚よりも薄い請求項15ないし請求項17のいずれかに記載の薄膜トランジスタ。
【請求項19】
前記第一絶縁層の比誘電率が、3.0以上である、請求項15ないし18のいずれかに記載の薄膜トランジスタ。
【請求項20】
絶縁性の基板上に第一キャパシタ電極を設ける工程と、
少なくとも前記第一キャパシタ電極上に第一絶縁層を設ける工程と、
前記第一絶縁層上に、ソース電極とドレイン電極とが離間し、かつ、前記ドレイン電極が前記第一キャパシタ電極に重なるように、前記ソース電極および前記ドレイン電極を設ける工程と、
前記ソース電極および前記ドレイン電極の間に有機半導体材料を含む半導体層を設ける工程と、
前記半導体層上に第二絶縁層を設ける工程と、
前記第二絶縁層上にゲート電極を設ける工程とを含む、有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項21】
前記第二絶縁層上に第二キャパシタ電極を設ける工程をさらに含む、請求項20に記載の有機薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項22】
請求項1ないし19のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタを用いた画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜トランジスタとその製造方法および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタは液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子ペーパー表示装置などの、アクティブマトリックス方式の表示装置やセンサーなどに広く使用されている。
【0003】
薄膜トランジスタに用いられる半導体材料としては、非晶質シリコンや多結晶シリコン、あるいは酸化物半導体などを用いたものが主流となっており、これらの半導体材料を用いた薄膜トランジスタは、真空成膜法とフォトリソグラフィなどのドライコーティング法を用いて製造されることが一般的である。
【0004】
一方で近年、半導体材料として有機材料を用いた、有機薄膜トランジスタが注目を集めている(特許文献1参照)。有機薄膜トランジスタにおいては、半導体材料のみならず、導電性材料および絶縁性材料などについて塗布や印刷などのウェットコーティング法を用いることによって製造する試みがなされている。これにより、プラスチック基板を用いたフレキシブルデバイス形成や低コスト化などの可能性が期待されている。
また、印刷法は成膜とパターニングの工程を同時に行うことから、従来のフォトリソグラフィプロセスを用いる真空成膜プロセスと比較して、材料利用効率が高く、現像、エッチング工程を必要としないことから、環境負荷が少ないという点でも期待されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】T. Minari, M. Kano, T. Miyadera, S. D. Wang, Y. Aoyagi, and K. Tsukagoshi, ”Surface selective deposition of molecular semiconductors for solution-based integration of organic field-effect transistors”, Applied Physics Letters, 94, 093307 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機薄膜トランジスタの印刷法による形成においては、薄膜トランジスタの各層の特徴に合わせて様々な印刷方法が用いられる。しかしながら、ウェットコーティング法による成膜は、従来のフォトリソグラフィプロセスと比較するとパターニング精度が劣っており、それによる歩留まり低下などが発生しやすい。歩留まり低下は、コスト上昇を招くため、本来有利であるはずのコスト面においても優位性を発揮しづらくなる。
【0008】
これを避けるために、薄膜トランジスタの各層の寸法に余裕を持たせて設計することも考え得るが、寸法に余裕を持たせて設計すると、薄膜トランジスタ部の面積が大きくなるため、高精細の薄膜トランジスタパターンを作製することが困難となる。また、薄膜トランジスタ部の面積が大きくなることにより、薄膜トランジスタを用いたアクティブマトリクス方式の画像表示装置などの駆動の補助容量として機能するキャパシタ電極の面積が制限される。特に、トップゲート構造の薄膜トランジスタ構造においては、ゲート電極とキャパシタ電極が同層に設ける場合、キャパシタ電極面積を大きく取ることが困難であり、十分な容量を得ることが困難となる。
【0009】
一方、有機薄膜トランジスタはドライコーティング法で作製される薄膜トランジスタに比べて、特性面で劣っていることが多い。特性面の不利をカバーするために、精度の高い構造が必要になる。例えば、電極ではトランジスタ電極と配線それぞれを基板全面に配置する必要があるが、トランジスタ電極については極力大きな、配線については極力微細なパターニングが望まれる。
【0010】
特に、キャパシタ電極については出来るだけ大きな構造が必要になる。アクティブマトリクス方式の画像表示装置において、薄膜トランジスタに設置されるキャパシタは、各画素の書き込み時において、電圧保持を補助する役割を担っており、容量が不足すると選択時間における電圧保持率が低下するため、書き込み電圧を高くする、もしくは書き込み回数を多くするなどの対策が必要となり、結果的に画像表示装置の書き込み時間の増加や消費電力の増加を招く。
【0011】
しかしながら、
図4に示すように、一般的なキャパシタ電極とゲート電極とは同一層上に形成されるため、安易なキャパシタ電極の拡大はゲート電極とキャパシタ電極のショートの増加を招く結果となる。
【0012】
ショートはゲート電極-キャパシタ電極間のみで発生するものではなく、ゲート電極-ソース/ドレイン電極やキャパシタ電極-ドレイン電極でも発生する。一例としては、電極表面の凹凸によって電界集中が起き、絶縁膜を破壊するなどがある。これは特に電極間の電圧差が大きいときに見られる。各電極にかかる電圧を鑑みると、発生のしやすさはゲート電極-ソース/ドレイン電極>キャパシタ電極-ドレイン電極となる。
【0013】
そのため、ゲート電極-ソース/ドレイン電極を分離している絶縁層は耐圧性を得るために十分な厚みが必要となる。一方で、キャパシタ電極-ドレイン電極を分離している絶縁層は比較的薄膜化が可能である。このようにゲート電極-ソース/ドレイン電極間とキャパシタ電極-ドレイン電極間では、その間の絶縁層に求められる特性値や厚み等が異なる。
【0014】
本発明は、以上の点を鑑みなされたものであり、歩留まり良く、十分なキャパシタ電極面積を得ることが可能な、印刷法を用いて形成することができる有機薄膜トランジスタおよびこれを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、トップゲート構造の有機薄膜トランジスタにおいて、高い半導体特性を維持しながらもトランジスタ寸法に余裕を持たせることにより高い歩留まりを実現し、かつ十分なキャパシタ電極面積を有することで、トランジスタ画素電極の高い電圧保持率を維持し、安定的に駆動可能な有機薄膜トランジスタとその製造方法および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、絶縁性の基板上に少なくともゲート電極と、キャパシタ電極と、それらを覆うように形成された絶縁層と、その上に形成されたソース電極およびドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極とで挟まれた範囲に有機半導体材料を含む半導体層と、を有する有機薄膜トランジスタであって、少なくともキャパシタ電極を覆うように第一絶縁層が、第一絶縁層の上にゲート電極が、ゲート電極およびキャパシタ電極を覆うように第二絶縁層が、第二絶縁層の上に少なくともソース電極、ドレイン電極、半導体層が、それぞれ形成されており、キャパシタ電極がドレイン電極と重なり、かつ、ゲート電極と重ならない位置に形成される、有機薄膜トランジスタである。
【0017】
また、本発明の他の局面は、絶縁性の基板上に少なくともゲート電極と、キャパシタ電極と、それらを覆うように形成された絶縁層と、その上に形成されたソース電極およびドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極とで挟まれた範囲に有機半導体材料を含む半導体層と、を有する有機薄膜トランジスタであって、少なくともキャパシタ電極を覆うように第一絶縁層が、第一絶縁層の上にゲート電極が、ゲート電極を覆いかつキャパシタ電極を覆わないように第二絶縁層が、第二絶縁層の上に少なくともソース電極、ドレイン電極、半導体層が、それぞれ形成されている、有機薄膜トランジスタである。
【0018】
また、第一絶縁層と第二絶縁層とに異なる材料を用いていてもよい。
【0019】
また、第一絶縁層の誘電率は、第二絶縁層の誘電率よりも高くしてもよい。
【0020】
また、第一絶縁層は、絶縁材料を2層以上積層して形成してもよい。
【0021】
また、第二絶縁層は、絶縁材料を2層以上積層して形成してもよい。
【0022】
また、本発明の他の局面は、絶縁性の基板と、ゲート電極と、キャパシタ電極と、絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体材料を含む半導体層とを有する有機薄膜トランジスタであって、絶縁層は、基板と、基板上に形成されたゲート電極とを覆う第一絶縁層と、第一絶縁層の上に形成されたキャパシタ電極を覆う第二絶縁層とを含み、キャパシタ電極がドレイン電極と重なる位置に形成される、有機薄膜トランジスタである。
【0023】
また、第二絶縁層の上にソース電極、ドレイン電極および半導体層が形成されてもよい。
【0024】
また、第一絶縁層の上にソース電極、ドレイン電極の一部および半導体層が形成されてもよい。
【0025】
また、第一絶縁層と第二絶縁層とが異なる材料を用いて形成されてもよい。
【0026】
また、第二絶縁層の誘電率が第一絶縁層の誘電率よりも高くてもよい。
【0027】
また、第二絶縁層の膜厚が第一絶縁層の膜厚よりも薄くてもよい。
【0028】
また、第一絶縁層が絶縁材料を2層以上積層して形成されてもよい。
【0029】
また、第二絶縁層が絶縁材料を2層以上積層して形成されてもよい。
【0030】
また、本発明の他の局面は、絶縁性の基板上に少なくとも第一キャパシタ電極と、第一絶縁層と、ソース電極と、ドレイン電極と、有機半導体材料を含む半導体層と、第二絶縁層と、ゲート電極とを含む有機薄膜トランジスタであって、基板上に第一キャパシタ電極が形成されており、少なくとも第一キャパシタ電極上に第一絶縁層が形成されており、第一絶縁層上にソース電極、ドレイン電極、および半導体層が形成されており、ドレイン電極は、平面視において第一キャパシタ電極の少なくとも一部と重なり、ソース電極、ドレイン電極の少なくとも一部、および半導体層上に第二絶縁層が形成されており、第二絶縁層上にゲート電極が形成されている、有機薄膜トランジスタである。
【0031】
また、第二絶縁層上に、第二キャパシタ電極がさらに形成され、第二キャパシタ電極は、平面視においてドレイン電極の少なくとも一部と重なってもよい。
【0032】
また、第一絶縁層の比誘電率が、第二絶縁層の比誘電率よりも大きくてもよい。
【0033】
また、第一絶縁層の膜厚が、第二絶縁層の膜厚よりも薄くてもよい。
【0034】
また、第一絶縁層の比誘電率が、3.0以上であってもよい。
【0035】
また、本発明の他の局面は、絶縁性の基板上に第一キャパシタ電極を設ける工程と、少なくとも第一キャパシタ電極上に第一絶縁層を設ける工程と、第一絶縁層上に、ソース電極とドレイン電極とが離間し、かつ、ドレイン電極が第一キャパシタ電極に重なるように、ソース電極およびドレイン電極を設ける工程と、ソース電極およびドレイン電極の間に有機半導体材料を含む半導体層を設ける工程と、半導体層上に第二絶縁層を設ける工程と、第二絶縁層上にゲート電極を設ける工程とを含む、有機薄膜トランジスタの製造方法である。
【0036】
また、第二絶縁層上に第二キャパシタ電極を設ける工程をさらに含んでもよい。
【0037】
また、本発明の他の局面は、上述の有機薄膜トランジスタを用いた画像表示装置である。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、印刷法によって製造された有機薄膜トランジスタにおいて、歩留まり良く、特にゲート電極とキャパシタ電極とのショート不良無く、十分なキャパシタ電極面積を得ることが可能な有機薄膜トランジスタおよび画像表示装置を提供することが可能となる。
【0039】
また、本発明によれば、トップゲート構造の有機薄膜トランジスタにおいて、高い半導体特性を維持しながらもトランジスタ寸法に余裕を持たせることにより高い歩留まりを実現し、かつ十分なキャパシタ電極面積を有することで、トランジスタ画素電極の高い電圧保持率を維持し、安定的に駆動可能な有機薄膜トランジスタおよび画像表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの変形例の概略断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの変形例の概略断面図である。
【
図4】
図4は、従来技術に係る有機薄膜トランジスタの概略断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの概略断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの変形例の概略断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの変形例の概略断面図である。
【
図8】
図8は、従来技術に係る有機薄膜トランジスタの概略断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの概略断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る有機薄膜トランジスタの変形例の概略断面図である。
【
図11】
図11は、比較例に係る有機薄膜トランジスタの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ、説明する。なお各実施の形態において、同一または対応する構成要素については同一の参照符号を付け、実施の形態の間において重複する説明は省略する場合がある。
【0042】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機薄膜トランジスタ100を示す概略断面図である。また、
図4は、従来技術に係る有機薄膜トランジスタ200を示す概略断面図である。
【0043】
有機薄膜トランジスタ100は、絶縁性の基板1の上に形成されたキャパシタ電極3と、少なくともキャパシタ電極3を覆うように形成された第一絶縁層41と、第一絶縁層41の上に形成されたゲート電極2と、少なくともゲート電極2およびキャパシタ電極3を覆うように形成された第二絶縁層42と、第二絶縁層42の上に形成されたソース電極5と、ドレイン電極6と、有機半導体材料を含む半導体層7とを、少なくとも備えている。また、半導体層7を保護するための保護層8も好適に用いられる。
【0044】
一方、有機薄膜トランジスタ200は、絶縁性の基板1の上に形成されたゲート電極2およびキャパシタ電極3と、少なくともゲート電極2およびキャパシタ電極3を覆うように形成された第一絶縁層41と、第一絶縁層41の上に形成されたソース電極5と、ドレイン電極6と、有機半導体材料を含む半導体層7とを、少なくとも備えている。
【0045】
また、有機薄膜トランジスタ100および有機薄膜トランジスタ200には、層間絶縁膜9と、画素電極10と、図示しない表示要素と、図示しない対向電極と、図示しない第二の基板とを設けることにより、画像表示装置とすることができる。対向電極および第二の基板は、使用する表示要素の種類によりその構造は適宜変更することができる。
【0046】
以下、有機薄膜トランジスタ100の各構成要素について、有機薄膜トランジスタ100の製造工程に沿って説明する。
【0047】
初めに、基板1を準備する。基板1より下層の構造は、どのようなものを用いてもかまわない。基板1の材料としては、ポリカーボネート、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルフルオライドフィルム、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合樹脂、耐候性ポリエチレンテレフタレート、耐候性ポリプロピレン、ガラス繊維強化アクリル樹脂フィルム、ガラス繊維強化ポリカーボネート、ポリイミド、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ガラス、石英ガラスなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で使用してもよいが、2種以上を積層した複合の基板1として使用することもできる。
【0048】
次に、基板1上に、キャパシタ電極3を形成する。ゲート電極2、キャパシタ電極3、ソース電極5、およびドレイン電極6は、電極部分と配線部分とが明確に分かれている必要はなく、各有機薄膜トランジスタの構成要素として電極と呼称している。
【0049】
次に、キャパシタ電極3を覆うように、第一絶縁層41を形成する。さらに、第一絶縁層41上に、ゲート電極2を形成する。さらに、ゲート電極2を覆うように、第二絶縁層42を形成する。その際、第二絶縁層42は、第一絶縁層41を介してキャパシタ電極3を覆うように形成する。
【0050】
ゲート電極2およびキャパシタ電極3には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、マンガン(Mn)などの金属材料や、酸化インジウム(InO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの導電性金属酸化物材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの材料は単層で用いても構わないし、積層および合金として用いても構わない。
【0051】
ゲート電極2およびキャパシタ電極3の形成には、真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法や、導電性材料の前駆体などを使用するゾル-ゲル法やナノ粒子を使用する方法、それらをインク化して、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法などのウェットコーティング法で形成する方法などが使用できるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。パターニングは、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターン形成部分をレジストなどにより保護し、エッチングによって不要部分を除去して行うこともできるし、印刷法などを用いて直接パターニングすることもできるが、これについてもこれらの方法に限定されず、公知一般のパターニング方法を用いることができる。
【0052】
第一絶縁層41および第二絶縁層42には、酸化珪素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化イットリウム(YOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化ハフニウム(HfOx)などの酸化物系絶縁材料や窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiON)や、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)などの有機系絶縁材料や、自己組織化膜等の材料を使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらは単層または2層以上積層してもよいし、無機系-有機系のハイブリッド薄膜としても良いし、成長方向に向けて組成を傾斜したものでも構わない。
【0053】
第一絶縁層41および第二絶縁層42に自己組織化膜を用いる場合は、異なる自己組織化材料を積層する多層膜構造とすることで、絶縁層の誘電率や絶縁性を制御することが可能である。さらに、自己組織化した多層膜を繰り返し構造とすることで、絶縁性を高めることも可能である。また、第二絶縁層42表面に形成される半導体層7の種類に合わせて表面の官能基を選択し、表面エネルギーを制御することで、有機薄膜トランジスタ100の性能を向上することも可能である。
【0054】
第一絶縁層41および第二絶縁層42の形成方法は、真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法や、金属錯体などを前駆体として使用するゾル-ゲル法やナノ粒子を使用する方法、スリットコート法、スピンコート方、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法などのウェットコーティング法で形成する方法などが使用できるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。
【0055】
第一絶縁層41と第二絶縁層42とは、同様の材料および組成を用いても良いが、異なる材料を用いても良い。つまり、本発明においては、それぞれの層に求められる特性によってより適した材料を選択的に用いることが可能になる。また、それぞれ単層であっても多層構造であっても問題なく、これらに限定されることなく、様々な組合せで形成することが可能である。
【0056】
有機薄膜トランジスタ100において、キャパシタ電極3とドレイン電極6とをその間の絶縁層(第一絶縁層41と第二絶縁層42)で絶縁することでキャパシタ構造を形成している。
【0057】
第二絶縁層42は、半導体層7とゲート電極2の間に形成されるため、チャネル形成に直接影響を及ぼす。一方で第一絶縁層41は、ゲート電極2の下層に形成されるため、チャネルに対しての影響は小さい。そのため、キャパシタ容量の観点より第一絶縁層41を、トランジスタ特性の観点より第二絶縁層42を、それぞれ選択することが出来る。
【0058】
第一絶縁層41の材料に第二絶縁層42よりも比誘電率の高い材料を用いることにより、キャパシタの静電容量を増加させることが可能となる。第二絶縁層42の比誘電率は、2以上かつ5以下であることが好ましい。また、第一絶縁層41の比誘電率は、3以上、好ましくは5以上、さらには20以上であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0059】
キャパシタ電極3は、その効果上より面積が大きい方が好ましい。ゲート電極2と同層に形成をした場合、キャパシタ電極面積を大きくするほど、ゲート電極2とキャパシタ電極3でのショート確率は上がることになる。そのため、ゲート電極2とキャパシタ電極3の間には十分なスペースが必要となる。一方、本発明のようにゲート電極2とキャパシタ電極3の間に、絶縁層(第一絶縁層41)を形成し分断することによって、ゲート電極2とキャパシタ電極3でのショートを防ぐことが出来る。
【0060】
従来技術に係る有機薄膜トランジスタ200において、キャパシタ電極3とドレイン電極6との間の絶縁層(第一絶縁層41)は、より薄膜であるほどキャパシタの静電容量を増加することができる。一方で、トランジスタ特性や耐圧性の観点からはある一定以上の絶縁層膜厚を必要とされ、キャパシタの静電容量の観点から考えた適正膜厚に比べるとより厚膜が必要とされることが多い。
【0061】
その場合の対策の一つである、有機薄膜トランジスタ100の変形例に係る有機薄膜トランジスタ110の概略断面図を
図2に示す。
【0062】
有機薄膜トランジスタ110では、第二絶縁層42をキャパシタ電極3の上部には形成しないことで、キャパシタ電極3とドレイン電極6との間には第一絶縁層41のみが形成される。そのため、第一絶縁層41と第二絶縁層42の材料や膜厚を、それぞれトランジスタ特性とキャパシタの静電容量との面から独立に決定することが出来る。
【0063】
一方で、有機薄膜トランジスタ110では、有機薄膜トランジスタ100に比べて、第二絶縁層42の高い位置精度を要求されることになるため、目標とするトランジスタ特性やキャパシタの静電容量などを鑑み、いずれがより適切な構造であるか選択的判断して用いることが望ましい。
【0064】
また、ゲート電極2とキャパシタ電極3との位置精度は、形成プロセスの精度による部分が強い。よりキャパシタ電極面積を大きくしようとした場合に、ウェトコーティング法などのパターニング精度が十分でない方式によって作製を行うと、
図3に示す有機薄膜トランジスタ120のように、基板1から半導体層7に向かう積層方向から見て、ゲート電極2の一部とキャパシタ電極3の一部とが第一絶縁層41を介して重なるような状態になってしまう可能性が高くなる。しかしながら、そのような場合でも、表示性能に必要なトランジスタ特性が十分に得られるのであれば特に問題はない。
【0065】
次に、第二絶縁層42を介したゲート電極2上に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成する。ソース電極5およびドレイン電極6は、先に示したゲート電極2およびキャパシタ電極3と同様の材料および方法によって形成することができる。
【0066】
ソース電極5およびドレイン電極6については、半導体層7よりもソース電極5およびドレイン電極6を先に形成するボトムコンタクト構造としても良いし、半導体層7の形成後に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成するトップコンタクト構造としても良い。
【0067】
また、ボトムコンタクト構造を適用する場合においては、ソース電極5およびドレイン電極6は、半導体層7との電気的接続における接触抵抗を低下させるために、表面処理などを行うことができる。
【0068】
次に、第二絶縁層42、ソース電極5、およびドレイン電極6上に半導体層7を形成する。半導体層7には、ペンタセン、およびそれらの誘導体のような低分子半導体やポリチオフェン、ポリアリルアミン、フルオレンビチオフェン共重合体、およびそれらの誘導体のような高分子有機半導体材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
半導体層7は、有機半導体材料を溶解または分散させた溶液をインクとして用いる凸版印刷、スクリーン印刷、インクジェット法、ノズルプリンティングなどのウェットコーティング法で形成することができるが、これらに限定されるものではなく、公知一般の方法を使用することも可能である。
【0070】
有機薄膜トランジスタ100は、外部の影響から半導体層7を保護するための保護層8を好適に設けることができる。保護層8を設ける場合は、少なくとも半導体層7のチャネル領域を覆うように形成することが好ましい。
【0071】
保護層8の材料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネート、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機材料、または、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のポリアクリレート、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルフェノール)、フッ素系樹脂等の絶縁材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
有機薄膜トランジスタ100を用いた画像表示装置とする際は、層間絶縁膜9、画素電極10、図示しない表示要素、図示しない対向電極、図示しない対向基板が好適に設けられる。
【0073】
層間絶縁膜9は、ソース電極5と画素電極10とを絶縁することで、画素電極10を介したソース-ドレイン間のリークを防止することを主な目的として形成される。
【0074】
層間絶縁膜9の材料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネート、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機材料、または、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のポリアクリレート、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルフェノール)、フッ素系樹脂等の絶縁材料が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
画素電極10は、画像表示装置の開口率を向上させることを目的に形成される。さらに不透明な材料を用いることにより、半導体層7への外部からの光照射を防ぐことも可能となる。
【0076】
画素電極10は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、マンガン(Mn)などの金属材料や、酸化インジウム(InO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの導電性金属酸化物材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの材料は単層で用いても構わないし、積層および合金として用いても構わない。
【0077】
表示要素は、液晶、電気泳動粒子、または電気泳動粒子を含んだマイクロカプセルや有機エレクトロルミネッセンスなどが使用できる。画像表示装置においては、反射型、透過型のどちらに限定されることなく、これら公知一般の表示要素を使用することが可能である。また、使用する表示要素によっては、1画素内に有機薄膜トランジスタ100を複数設置する構成を利用することも可能である。
【0078】
表示要素は、対向電極を形成した対向基板上に形成した後に、画素電極10まで形成された有機薄膜トランジスタ100と合わせて、画像表示装置としても良いし、画素電極10上に形成した後に、対向電極および対向基板を積層して画像表示装置としても良く、使用する表示要素に合わせて、その工程を選択することが可能である。
【0079】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る有機薄膜トランジスタ130を示す概略断面図である。また、
図8は従来技術に係る有機薄膜トランジスタ210を示す概略断面図である。
【0080】
有機薄膜トランジスタ130は、絶縁性の基板1の上に形成されたゲート電極2と、少なくともゲート電極2を覆うように形成された第一絶縁層41と、第一絶縁層41上に形成されたキャパシタ電極3と、平面視において少なくともゲート電極2およびキャパシタ電極3を覆うように形成された第二絶縁層42と、第二絶縁層42上に形成されたソース電極5、ドレイン電極6および有機半導体材料からなる半導体層7とを少なくとも備えている。また、半導体層7を保護するための保護層8も好適に用いられる。
【0081】
一方、有機薄膜トランジスタ210は、絶縁性の基板1の上に形成されたゲート電極2およびキャパシタ電極3と、少なくともゲート電極2およびキャパシタ電極3を覆うように形成された第一絶縁層41と、第一絶縁層41上に形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、有機半導体材料からなる半導体層7とを少なくとも備えている。
【0082】
また、有機薄膜トランジスタ130および有機薄膜トランジスタ210には、層間絶縁膜9と、画素電極10と、図示しない表示要素と、図示しない対向電極と、図示しない第二の基板とを設けることにより、画像表示装置とすることができる。対向電極および第二の基板は、使用する表示要素の種類によりその構造は適宜変更することができる。
【0083】
以下、有機薄膜トランジスタ130の各構成要素について、有機薄膜トランジスタ130の製造工程に沿って説明する。
【0084】
初めに、基板1を準備する。基板1より下層の構造は、どのようなものを用いてもかまわない。基板1の材料としては、ポリカーボネート、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルフルオライドフィルム、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合樹脂、耐候性ポリエチレンテレフタレート、耐候性ポリプロピレン、ガラス繊維強化アクリル樹脂フィルム、ガラス繊維強化ポリカーボネート、ポリイミド、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ガラス、石英ガラスなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で使用してもよいが、2種以上を積層した複合の基板1として使用することもできる。
【0085】
次に、基板1上に、ゲート電極2を形成する。ゲート電極2、キャパシタ電極3、ソース電極5およびドレイン電極6は、電極部分と配線部分とが明確に分かれている必要はなく、各有機薄膜トランジスタの構成要素として電極と呼称している。
【0086】
次に、ゲート電極2を覆うように、第一絶縁層41を形成する。さらに、第一絶縁層41上に、キャパシタ電極3を形成する。さらに、キャパシタ電極3を覆うように、第二絶縁層42を形成する。その際、第二絶縁層42は、第一絶縁層41を介して、平面視においてゲート電極2を覆うように形成する。
【0087】
ゲート電極2およびキャパシタ電極3には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、マンガン(Mn)などの金属材料や、酸化インジウム(InO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの導電性金属酸化物材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの材料は単層で用いても構わないし、積層および合金として用いても構わない。
【0088】
ゲート電極2およびキャパシタ電極3の形成には、真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法や、導電性材料の前駆体などを使用するゾル-ゲル法やナノ粒子を使用する方法、それらをインク化して、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法などのウェットコーティング法で形成する方法などが使用できるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。パターニングは、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターン形成部分をレジストなどにより保護し、エッチングによって不要部分を除去して行うこともできるし、印刷法などを用いて直接パターニングすることもできるが、これについてもこれらの方法に限定されず、公知一般のパターニング方法を用いることができる。
【0089】
第一絶縁層41および第二絶縁層42には、酸化珪素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化イットリウム(YOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化ハフニウム(HfOx)などの酸化物系絶縁材料や窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiON)や、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)などの有機系絶縁材料や、自己組織化膜等の材料を使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらは単層または2層以上積層してもよいし、無機系-有機系のハイブリッド薄膜としても良いし、成長方向に向けて組成を傾斜したものでも構わない。
【0090】
第一絶縁層41および第二絶縁層42に自己組織化膜を用いる場合は、異なる自己組織化材料を積層する多層膜構造とすることで、絶縁層の誘電率や絶縁性を制御することが可能である。さらに、自己組織化した多層膜を繰り返し構造とすることで、絶縁性を高めることも可能である。また、第二絶縁層42表面に形成される半導体層7の種類に合わせて表面の官能基を選択し、表面エネルギーを制御することで、有機薄膜トランジスタ130の性能を向上することも可能である。
【0091】
第一絶縁層41および第二絶縁層42の形成方法は、真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法や、金属錯体などを前駆体として使用するゾル-ゲル法やナノ粒子を使用する方法、スリットコート法、スピンコート方、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法などのウェットコーティング法で形成する方法などが使用できるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。
【0092】
第一絶縁層41と第二絶縁層42とは、同様の材料および組成を用いても良いし、それぞれの層に求められる特性によってより適した材料を適宜用いてもよい。また、それぞれ単層であっても多層構造であっても問題なく、これらに限定されることなく、様々な組合せで形成することが可能である。
【0093】
キャパシタ電極3は、その効果上より面積が大きい方が好ましい。ゲート電極2と同層に形成をした場合、キャパシタ電極面積を大きくするほど、ゲート電極2とキャパシタ電極3でのショート確率は上がることになる。そのため、ゲート電極2とキャパシタ電極3の間には十分なスペースが必要となる。一方、本発明のようにゲート電極2とキャパシタ電極3の間に、絶縁層(第一絶縁層41)を形成し分断することによって、ゲート電極2とキャパシタ電極3でのショートを防ぐことが出来る。
【0094】
有機薄膜トランジスタ130において、キャパシタ電極3とドレイン電極6をその間の絶縁層(第二絶縁層42)で絶縁することでキャパシタ構造が形成されている。そのため、第二絶縁層42の材料に比誘電率の高い材料を用いることにより、キャパシタの静電容量を増加させることが可能となる。そのため、第二絶縁層42の比誘電率は、3以上、好ましくは5以上、さらには20以上であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0095】
一方で、一般的にゲート電極-半導体層間の絶縁層については、比誘電率の高すぎる材料はトランジスタ特性の面から不適当であり、ゲート電極2と半導体層7間の絶縁層の比誘電率は2以上かつ、5以下であることが好ましい。本発明において、ゲート電極2と半導体層7間には、第一絶縁層41と第二絶縁層42との積層された絶縁層4が形成されている。そのため、より高いキャパシタの静電容量を得ることのみを目的に、極端に高い比誘電率材料を第二絶縁層42に用いることは、トランジスタ特性の低下につながってしまう。
【0096】
第二絶縁層42を薄膜化することでキャパシタの静電容量を増加することができる。また、第二絶縁層42を第一絶縁層41に対して薄膜化することで、ゲート電極-半導体層間の絶縁層において第一絶縁層41の効果をより優位にすることができ、トランジスタ特性のコントロールを容易にする。しかしながら、それでも第二絶縁層42のトランジスタ特性への影響を完全に無くすことは難しい。
【0097】
その場合の対策を行った、有機薄膜トランジスタ130の変形例に係る有機薄膜トランジスタ140の概略断面図を
図6に示す。
【0098】
有機薄膜トランジスタ140では、第二絶縁層42をゲート電極2上部には形成しないことで、ゲート電極2と半導体層7との間には第一絶縁層41のみが形成される。そのため、第一絶縁層41と第二絶縁層42とをそれぞれトランジスタ特性とキャパシタの静電容量の面から独立に決定することが出来る。
【0099】
一方で、有機薄膜トランジスタ140では有機薄膜トランジスタ130に比べて、高い第二絶縁層42のパターニング精度を要求されることになるため、目標とするトランジスタ特性とキャパシタの静電容量などを鑑み、いずれがより適切な構造であるかを選択的判断して用いることが望ましい。
【0100】
ゲート電極2とキャパシタ電極3との位置精度は、形成プロセスの精度による部分が強い。よりキャパシタ電極3の面積を大きくしようとした場合に、ウェトコーティング法などのパターニング精度が十分でない方式を用いると、
図7に示す有機薄膜トランジスタ150のように、基板1から半導体層7に向かう積層方向から見て、ゲート電極2の一部とキャパシタ電極3の一部とが第一絶縁層41を介して断面水平方向に対して一部重なるような状態になってしまう可能性が高くなってしまう。しかしながら、そのような場合でも、表示性能に必要なトランジスタ特性が十分に得られるのであれば特に問題はない。
【0101】
次に、第二絶縁層42を介したゲート電極2上に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成する。ソース電極5およびドレイン電極6は、先に示したゲート電極2およびキャパシタ電極3と同様の材料および方法によって形成することができる。
【0102】
ソース電極5およびドレイン電極6については、半導体層7よりもソース電極5およびドレイン電極6を先に形成するボトムコンタクト構造としても良いし、半導体層7の形成後に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成するトップコンタクト構造としても良い。
【0103】
ボトムコンタクト構造を適用する場合においては、ソース電極5およびドレイン電極6に表面処理などを行うことで、半導体層7との電気的接続における接触抵抗を低下させた方が良い特性が得られることがある。
【0104】
次に、第二絶縁層42、ソース電極5およびドレイン電極6上に半導体層7を形成する。半導体層7には、ペンタセン、およびそれらの誘導体のような低分子半導体やポリチオフェン、ポリアリルアミン、フルオレンビチオフェン共重合体、およびそれらの誘導体のような高分子有機半導体材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
半導体層7は、有機半導体材料を溶解または分散させた溶液をインクとして用いる凸版印刷、スクリーン印刷、インクジェット法、ノズルプリンティングなどのウェットコーティング法で形成することができるが、これらに限定されるものではなく、公知一般の方法を使用することも可能である。
【0106】
半導体層7と第二絶縁層42の界面に表面処理などを行うことで、より良いトランジスタ特性が得られることがある。
【0107】
有機薄膜トランジスタ130は、外部の影響から半導体層7を保護するための保護層8を好適に設けることができる。保護層8を設ける場合は、少なくとも半導体層7のチャネル領域を覆うように形成することが好ましい。
【0108】
保護層8の材料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネート、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機材料、または、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のポリアクリレート、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルフェノール)、フッ素系樹脂等の絶縁材料が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0109】
有機薄膜トランジスタ130、140を画像表示装置に用いる際は、層間絶縁膜9、画素電極10、図示しない表示要素、図示しない対向電極、図示しない対向基板が好適に設けられる。
【0110】
層間絶縁膜9は、ソース電極5と画素電極10とを絶縁することで、画素電極10を介したソース-ドレイン間のリークを防止することを主な目的として形成される。
【0111】
層間絶縁膜9の材料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネート、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機材料、または、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のポリアクリレート、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルフェノール)、フッ素系樹脂等の絶縁材料が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0112】
画素電極10は画像表示装置の開口率を向上させることを目的に形成される。さらに画素電極10に、不透明な材料を用いることにより、半導体層7への外部からの光照射を防ぐことも可能となる。
【0113】
画素電極10は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、マンガン(Mn)などの金属材料や、酸化インジウム(InO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの導電性金属酸化物材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの材料は単層で用いても構わないし、積層および合金として用いても構わない。
【0114】
表示要素は、液晶、電気泳動粒子、または電気泳動粒子を含んだマイクロカプセルや有機エレクトロルミネッセンスなどが使用できる。画像表示装置においては、反射型、透過型のどちらに限定されることなく、これら公知一般の表示要素を使用することが可能である。また、使用する表示要素によっては、1画素内に有機薄膜トランジスタ130、140を複数設置する構成を利用することも可能である。
【0115】
表示要素は、対向電極を形成した対向基板上に形成した後に、画素電極10まで形成された有機薄膜トランジスタ130、140と合わせて、画像表示装置としても良いし、画素電極10上に形成した後に、対向電極および対向基板を積層して画像表示装置としても良く、使用する表示要素に合わせて、その工程を選択することが可能である。
【0116】
(第3の実施形態)
図9は、本発明の第3の実施形態に係る有機薄膜トランジスタ160を示す概略断面図であり、
図10は、有機薄膜トランジスタ160の変形例に係る有機薄膜トランジスタ170を示す概略断面図である。
【0117】
有機薄膜トランジスタ160は、絶縁性の基板1の上に形成された第一キャパシタ電極31と、第一絶縁層41と、ソース電極5と、ドレイン電極6と、有機半導体材料を含む半導体層7と、第二絶縁層42と、ゲート電極2とを少なくとも備えている。また、有機薄膜トランジスタ170は有機薄膜トランジスタ160に加え、第二キャパシタ電極32を少なくとも備えている。
【0118】
図9に示すように、有機薄膜トランジスタ160は、基板1上に第一キャパシタ電極31が形成されており、基板1及び第一キャパシタ電極31上に第一絶縁層41が形成されており、第一絶縁層41上にソース電極5、ドレイン電極6、および半導体層7が形成されており、ソース電極5、ドレイン電極6の少なくとも一部、及び半導体層7上に第二絶縁層42が形成されており、第二絶縁層42上にゲート電極2が形成されている。ドレイン電極6は、平面視において第一キャパシタ電極31の少なくとも一部と重なっている。
【0119】
図10に示すように、有機薄膜トランジスタ170は、第二絶縁層42上に、第二キャパシタ電極32がさらに形成され、第二キャパシタ電極32は、平面視においてドレイン電極6の少なくとも一部と重なっている。
【0120】
有機薄膜トランジスタ160と有機薄膜トランジスタ170との相違点は、第二キャパシタ電極32の有無である。
図10に示すように第二キャパシタ電極32を形成することにより、ドレイン電極6に生じる静電容量をさらに大きくすることが可能となる。
【0121】
また、有機薄膜トランジスタ160および有機薄膜トランジスタ170に層間絶縁膜9と、画素電極10と、図示しない表示要素と、図示しない対向電極と、図示しない第2の基板とを設けることにより、画像表示装置とすることができる。対向電極および第2の基板は使用する表示要素の種類によりその構造は適宜変更することができる。
【0122】
以下、有機薄膜トランジスタ160および有機薄膜トランジスタ170の各構成要素について、有機薄膜トランジスタ160および有機薄膜トランジスタ170の製造工程に沿って説明する。
【0123】
初めに、基板1を準備する。基板1の材料としては、ポリカーボネート、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリビニルフルオライドフィルム、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合樹脂、耐候性ポリエチレンテレフタレート、耐候性ポリプロピレン、ガラス繊維強化アクリル樹脂フィルム、ガラス繊維強化ポリカーボネート、ポリイミド、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ガラス、石英ガラスなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で使用してもよいが、2種以上を積層した複合の基板1として使用することもできる。
【0124】
基板1が有機物フィルムである場合は、有機薄膜トランジスタ160、170の耐久性を向上させるために透明のガスバリア層(図示せず)を形成することもできる。ガスバリア層の材料としては酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、酸化窒化珪素(SiON)、炭化珪素(SiC)およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、これらのガスバリア層は2層以上積層して使用することもできる。ガスバリア層は有機物フィルムを用いた基板1の片面だけに形成してもよいし、両面に形成しても構わない。ガスバリア層は真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、ホットワイヤーCVD法およびゾル-ゲル法などを用いて形成することができるが本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0125】
また、基板1上に接して形成される第一キャパシタ電極31および第一絶縁層41の基板1との密着性を向上させるために密着層を設けることもできるし、基板1の表面に表面処理などを施しても良い。
【0126】
次に、基板1上に、第一キャパシタ電極31を形成する。第一キャパシタ電極31、ソース電極5、ドレイン電極6、ゲート電極2、および第二キャパシタ電極32は、電極部分と配線部分とが明確に分かれている必要はなく、以下では特に各有機薄膜トランジスタ160、170の構成要素として電極と呼称している。
【0127】
第一キャパシタ電極31には、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などの金属材料や、酸化インジウム(InO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの導電性金属酸化物材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの材料は単層で用いても構わないし、積層および合金として用いても構わない。
【0128】
第一キャパシタ電極31の形成には、真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法や、導電性材料の前駆体などを使用するゾル-ゲル法やナノ粒子を使用する方法、それらをインク化して、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法などのウェット成膜法で形成する方法などが使用できるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。パターニングは、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターン形成部分をレジストなどにより保護し、エッチングによって不要部分を除去して行うこともできるし、印刷法などを用いて直接パターニングすることもできるが、これについてもこれらの方法に限定されず、公知一般のパターニング方法を用いることができる。
【0129】
次に、第一キャパシタ電極31上に第一絶縁層41を形成する。第一絶縁層41は、第一キャパシタ電極31と、ソース電極5、ドレイン電極6およびゲート電極2などの電極とを電気的に絶縁するために、少なくとも第一キャパシタ電極31上に設けられるが、第一キャパシタ電極31の外部およびその他の電極との接続に使用される配線部を除いて基板1全面に設けても良い。
【0130】
第一絶縁層41には、酸化珪素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化イットリウム(YOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化ハフニウム(HfOx)などの酸化物系絶縁材料や窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiON)や、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)などの有機系絶縁材料などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらは単層または2層以上積層してもよいし、無機系-有機系のハイブリッド薄膜としても良いし、成長方向に向けて組成を傾斜したものでも構わない。
【0131】
第一絶縁層41は、有機薄膜トランジスタ160、170におけるリーク電流を抑えるために、その抵抗率が1011Ωcm以上、より好ましくは1014Ωcm以上であることが望ましい。
【0132】
第一絶縁層41は、第一キャパシタ電極31およびドレイン電極6の間に積層され、第一キャパシタ電極31およびドレイン電極6が、平面視において重なった領域においてキャパシタンスを生じさせる目的で形成されている。したがって、第一絶縁層41の比誘電率は、より大きい方が好ましく、比誘電率は、3.0以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは、20以上であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。さらに、第一絶縁層41は、膜厚は薄い方が好ましいが、第一絶縁層41の絶縁性、有機薄膜トランジスタ160、170としての信頼性および作製工程の難易度などを考慮して、適宜調整することができる。第一絶縁層41の膜厚は、第二絶縁層42の膜厚よりも薄い方が好ましい。
【0133】
次に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成する。ソース電極5およびドレイン電極6は、離間して形成されており、ソース電極5とドレイン電極6とをそれぞれ別の工程および別の材料で形成しても良いが、第一絶縁層41上に同層に形成される場合には、ソース電極5およびドレイン電極6を同時に形成することが好ましい。
【0134】
ソース電極5およびドレイン電極6は、第一キャパシタ電極31と同様の導電性材料を用いることができる。また、それらは積層して用いてもよいし、合金などとして用いることもできる。
【0135】
ソース電極5およびドレイン電極6の形成には、真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法や、導電性材料の前駆体などを使用するゾル-ゲル法やナノ粒子を使用する方法、それらをインク化して、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法などのウェット成膜法で形成する方法などが使用できるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。パターニングは、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターン形成部分をレジストなどにより保護し、エッチングによって不要部分を除去して行うこともできるし、印刷法などを用いて直接パターニングすることもできるが、これについてもこれらの方法に限定されず、公知一般のパターニング方法を用いることができる。
【0136】
ソース電極5およびドレイン電極6については、半導体層7よりもソース電極5およびドレイン電極6を先に形成するボトムコンタクト構造としても良いし、半導体層7の形成後に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成するトップコンタクト構造としても良い。
【0137】
また、ボトムコンタクト構造を適用する場合においては、ソース電極5およびドレイン電極6は、半導体層7との電気的接続における接触抵抗を低下させるために、表面処理などを用いることができる。具体的には、ソース電極5およびドレイン電極6表面に自己組織化単分子膜(SAM:Self-Assembled-Monolayer)のような分子膜を形成することにより、電極表面の仕事関数を変化させることが可能である。
【0138】
次に、ソース電極5およびドレイン電極6を接続するように、ソース電極5とドレイン電極6との間に半導体層7が形成される。ソース電極5およびドレイン電極6を半導体層7で接続し、薄膜トランジスタとして機能する半導体層7の領域をチャンネル領域と呼称することが一般的であり、本発明においてもこのような名称を使用することがある。
【0139】
半導体層7には、ペンタセン、およびそれらの誘導体のような低分子半導体やポリチオフェン、ポリアリルアミン、フルオレンビチオフェン共重合体、およびそれらの誘導体のような高分子有機半導体材料などを用いることがきるが、これらに限定されるものではない。
【0140】
半導体層7は、有機半導体材料を溶解または分散させた溶液をインクとして用いる凸版印刷、スクリーン印刷、インクジェット法、ノズルプリンティングなどのウェット成膜方法で形成することもできるし、有機半導体材料の粉末や結晶を真空状態で蒸着する方法などで形成することもできる。半導体層7は、これらに限定されるものではなく、公知一般の方法を使用することも可能である。
【0141】
次に、少なくとも半導体層7のチャネル領域を覆うように第二絶縁層42を形成する。第二絶縁層42は、有機薄膜トランジスタ160、170における各電極の絶縁性の確保のため、チャネル領域以外にもソース電極5とその配線およびドレイン電極6などの電極上の外部や他の電極との接続部を除く、基板全面に形成することもできるし、適宜形成する領域を調整することができる。
【0142】
第二絶縁層42には、酸化珪素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化タンタル(TaOx)、酸化イットリウム(YOx)、酸化ジルコニウム(ZrOx)、酸化ハフニウム(HfOx)などの酸化物系絶縁材料や窒化珪素(SiNx)、酸化窒化珪素(SiON)や、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)などの有機系絶縁材料などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。これらは単層または2層以上積層してもよいし、無機系-有機系のハイブリッド薄膜としても良いし、成長方向に向けて組成を傾斜したものでも構わない。
【0143】
第二絶縁層42は、有機薄膜トランジスタ160、170におけるリーク電流を抑えるために、その抵抗率が1011Ωcm以上、より好ましくは1014Ωcm以上であることが望ましい。
【0144】
第二絶縁層42の形成方法は、真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法や、金属錯体などを前駆体として使用するゾル-ゲル法やナノ粒子を使用する方法、スリットコート法、スピンコート方、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法などのウェット成膜法で形成する方法などが使用できるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。
【0145】
次に、第二絶縁層42上の、平面視において少なくともチャネル領域と重なる領域にゲート電極2を形成する。ゲート電極2は、先に示したソース電極5およびドレイン電極6と同様の材料および方法によって形成することができる。
【0146】
さらに、有機薄膜トランジスタのキャパシタ容量を大きくする場合は、
図10に示すように、第二キャパシタ電極32を第二絶縁層42上の、平面視においてドレイン電極6と重なる領域に設けることができる。
【0147】
第二キャパシタ電極32は、先に示したソース電極5およびドレイン電極6と同様の材料および方法によって形成することができる。
【0148】
第二キャパシタ電極32は、ゲート電極2と同層で同じ材料、工程で形成しても良いし、別の材料などを用いて形成しても良く、この限りではない。
【0149】
有機薄膜トランジスタ160および有機薄膜トランジスタ170を用いて画像表示装置とする際は、層間絶縁膜9、画素電極10、図示しない表示要素、図示しない対向電極、図示しない対向基板が好適に設けられる。
【0150】
層間絶縁膜9は、ゲート電極6および第二キャパシタ電極32と画素電極10とを絶縁することで、画素電極10を介したソース-ドレイン間のリークを防止することを主な目的として形成される。
【0151】
層間絶縁膜9の材料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネート、酸化ジルコニウム、酸化チタン等の無機材料、または、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のポリアクリレート、PVA(ポリビニルアルコール)、PVP(ポリビニルフェノール)、フッ素系樹脂等の絶縁材料が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0152】
層間絶縁膜9の材料については、有機薄膜トランジスタ160、170のリーク電流を低く抑えるためにその抵抗率が1011Ωcm以上、より好ましくは1014Ωcm以上であることが望ましい。
【0153】
層間絶縁膜9は、保護層材料またはその前駆体を溶解または分散させた溶液を用いて、インクジェット法、凸版印刷法、平版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法のいずれかの方法によって形成される。これらの層間絶縁膜9は単層として用いても構わないし、2層以上積層して用いることもできる。また成長方向に向けて組成を傾斜したものでも構わない。
【0154】
画素電極10は画像表示装置の開口率を向上させることを目的に形成される。
【0155】
画素電極10は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、タングステン(W)、マンガン(Mn)などの金属材料や、酸化インジウム(InO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)などの導電性金属酸化物材料を用いることができるが、これらに限定されるものではない。これらの材料は単層で用いても構わないし、積層および合金として用いても構わない。
【0156】
画素電極10の形成には、真空蒸着法、スパッタ法などの真空成膜法や、導電性材料の前駆体などを使用するゾル-ゲル法やナノ粒子を使用する方法、それらをインク化して、スクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法などのウェット成膜法で形成する方法などが使用できるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。パターニングは、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターン形成部分をレジストなどにより保護し、エッチングによって不要部分を除去して行うこともできるし、印刷法などを用いて直接パターニングすることもできるが、これについてもこれらの方法に限定されず、公知一般のパターニング方法を用いることができる。
【0157】
また、画素電極10に不透明な材料を用いることにより、半導体層7への外部からの光照射を防ぐことも可能となる。
【0158】
表示要素は、液晶、電気泳動粒子、または電気泳動粒子を含んだマイクロカプセルや有機エレクトロルミネッセンスなどが使用できる。画像表示装置においては、反射型、透過型のどちらに限定されることなく、これら公知一般の表示要素を使用することが可能である。また、使用する表示要素によっては、1画素内に有機薄膜トランジスタ160、170を複数設置する構成を利用することも可能である。
【0159】
表示要素は、対向電極を形成した対向基板上に形成した後に、画素電極10を設けた有機薄膜トランジスタ160、170と合わせて、画像表示装置としても良いし、画素電極10上に形成した後に、対向電極および対向基板を積層して画像表示装置としても良く、使用する表示要素に合わせて、その工程を選択することが可能である。
【実施例】
【0160】
(実施例1)
実施例1として、
図1に示す有機薄膜トランジスタ100を作製した。
【0161】
基板1として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。ガラス基板1上に、銀ナノ粒子を分散させた溶液である銀ナノインクを、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、キャパシタ電極3を形成した。キャパシタ電極3の面積は、素子面積に対して75%であった。
【0162】
キャパシタ電極3を形成した基板1に、感光性アクリル樹脂をスリットコート法で塗布し、露光、現像を行い所望の形状にパターニングし、200℃で焼成を行い、第一絶縁層41を形成した。
【0163】
第一絶縁層41を形成した基板1に、銀ナノインクを、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、ゲート電極2を形成した。ゲート電極-キャパシタ電極は断面水平方向において、最小スペースを0μmとした。
【0164】
その後、第一絶縁層41と同様の方法で第二絶縁層42を形成した。第一絶縁層41の膜厚は0.2μm、第二絶縁層42の膜厚は1.0μmとした。感光性アクリル樹脂の比誘電率は3.4であった。
【0165】
銀ナノ粒子を分散させた溶液をインクとして、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0166】
その後、有機半導体材料としてポリ(3-ヘキシルチオフェン)を0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法によりパターニングし、半導体層7を形成した。
【0167】
(比較例1)
比較例1として、
図4に示す有機薄膜トランジスタ200を作製した。
【0168】
基板1として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。ガラス基板1上に、DCマグネトロンスパッタを用いてMoを400nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングを行い、ゲート電極2およびキャパシタ電極3を形成した。ゲート電極-キャパシタ電極は、断面水平方向において、最小スペースを20μmとした。キャパシタ電極の面積は、素子面積に対して60%であった。
【0169】
ゲート電極2およびキャパシタ電極3を形成した基板1に、感光性アクリル樹脂をスリットコート法で塗布し、フォトリソグラフィ法によりパターニングし、200℃で焼成し、ゲート電極2およびキャパシタ電極3上に第一絶縁層41のみを形成した。第一絶縁層41の膜厚は1μm、比誘電率は3.4であった。
【0170】
つづいて、銀ナノ粒子を分散させたインクを、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0171】
その後、有機半導体材料としてポリ(3-ヘキシルチオフェン)を0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法によりパターニングし、半導体層7を形成した。
【0172】
以上の工程により、実施例1および比較例1に係る有機薄膜トランジスタを作製した。それぞれ、30個の素子を作成し、ゲート電極-キャパシタ電極ショート不良が発生した素子数を測定した。
【0173】
その結果、それぞれキャパシタの容量としては大きな差は見られなかった。一方で、ショート不良の発生した素子数は、比較例1による素子では13個に対して、実施例1による素子では0個と大幅な減少が見られた。
【0174】
以上説明したように、本発明によれば、キャパシタ電極3上に複数の絶縁層を形成し、ゲート電極をキャパシタ電極の形成された層に対して別層である下層に形成することによって、歩留まりを良化すると共に、キャパシタ電極のサイズの変更の自由度を向上させた。
【0175】
したがって、本発明によれば、印刷法を用いた有機薄膜トランジスタにおいて、歩留まり良く最大限のキャパシタ電極が形成された有機薄膜トランジスタおよび画像表示装置を提供することが可能となる。
【0176】
(実施例2-1)
実施例2-1として、
図5に示す有機薄膜トランジスタ130を作製した。
【0177】
基板1の材料として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。基板1上に、銀ナノ粒子を分散させた溶液である銀ナノインクを、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、ゲート電極2を形成した。ゲート電極-キャパシタ電極間のスペースは最小区間で5μmとした。
【0178】
ゲート電極2を形成した基板1に、感光性アクリル樹脂をスリットコート法で塗布し、露光、現像を行い所望の形状にパターニングし、200℃で焼成を行い、第一絶縁層41を形成した。
【0179】
第一絶縁層41を形成した基板1に、銀ナノインクを、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、キャパシタ電極3を形成した。キャパシタ電極3の面積は、素子面積に対して75%であった。
【0180】
その後、第一絶縁層41と同様の方法で第二絶縁層42を形成した。第一絶縁層41の膜厚は0.6μm、比誘電率は3.4であった。第二絶縁層42の膜厚は0.4μm、比誘電率は3.4であった。
【0181】
銀ナノ粒子を分散させた溶液をインクとして、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0182】
その後、有機半導体材料としてポリ(3-ヘキシルチオフェン)を0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法によりパターニングし、半導体層7を形成した。
【0183】
(実施例2-2)
実施例2-2として、
図6に示す有機薄膜トランジスタ140を作製した。
【0184】
第二絶縁層42として比誘電率4.6のものを用い、キャパシタ電極3のみを覆うように形成したこと、第一絶縁層41の膜厚を1.0μmとしたこと以外は、実施例2-1と同様に作製した。
【0185】
(比較例2)
比較例2として、
図8に示す有機薄膜トランジスタ210を作製した。
【0186】
基板1の材料として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。基板1上に、DCマグネトロンスパッタを用いてMoを400nmの膜厚で成膜し、フォトリソグラフィ法により所望の形状にパターニングを行い、ゲート電極2およびキャパシタ電極3を形成した。ゲート電極-キャパシタ電極間のスペースは最小区間で20μmとした。キャパシタ電極3の面積は、素子面積に対して65%であった。
【0187】
ゲート電極2およびキャパシタ電極3を形成した基板1上に、感光性アクリル樹脂をスリットコート法で塗布し、フォトリソグラフィ法によりパターニングし、200℃で焼成して第一絶縁層41を形成した。第一絶縁層41の膜厚は1.0μm、比誘電率は3.4であった。
【0188】
つづいて、銀ナノ粒子を分散させたインクを、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0189】
その後、有機半導体材料としてポリ(3-ヘキシルチオフェン)を0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法によりパターニングし、半導体層7を形成した。
【0190】
以上の工程により、実施例2-1、2-2および比較例2に係る有機薄膜トランジスタを作製した。それぞれ、30個の素子を作成し、ゲート電極-キャパシタ電極ショート不良が発生した素子数、トランジスタ特性としてオン電流値、キャパシタ静電容量を測定した。
【0191】
オン電流値については、実施例2-1、2-2と比較例2で大きな差は見られなかった。その他の評価結果を表1に示す。キャパシタ静電容量については比較例2の素子の結果を100パーセントとした場合の相対値を示す。
【0192】
【0193】
以上、説明したように本発明によればキャパシタ電極をゲート電極と別層かつ上層に形成することによって、キャパシタ容量の向上を行うことができ、さらに歩留まりの向上も行うことが可能となった。
【0194】
したがって、本発明によれば、歩留まり良く、高キャパシタ容量を得ることが可能な、印刷法を用いて形成することができる有機薄膜トランジスタおよびこれを用いた画像表示装置を提供することが可能となる。
【0195】
(実施例3-1)
実施例3-1として、
図9に示す有機薄膜トランジスタ160を作製した。
【0196】
基板1として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。基板1上に、銀(Ag)のナノ粒子を分散させた溶液をインクとして、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、第一キャパシタ電極31を形成した。
【0197】
第一キャパシタ電極31を形成した基板に、熱硬化性樹脂を塗布し、焼成して第一絶縁層41を形成した。
【0198】
その後、インクジェット法により、第一キャパシタ電極31と同様の方法により、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0199】
ソース電極5およびドレイン電極6を形成した基板に、有機半導体材料としてポリ(3-ヘキシルチオフェン)を0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法によりパターニングし、半導体層7を形成した。
【0200】
その後、フッ素樹脂をインクジェット法で塗布し、第二絶縁層42を形成した。
【0201】
つづいて、銀ナノ粒子を分散させた溶液をインクとして、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、ゲート電極2を形成し、有機薄膜トランジスタ160を作製した。
【0202】
(実施例3-2)
実施例3-2として、
図10に示す有機薄膜トランジスタ170を作製した。
【0203】
基板1として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。基板1上に、銀(Ag)のナノ粒子を分散させた溶液をインクとして、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、第一キャパシタ電極31を形成した。
【0204】
第一キャパシタ電極31を形成した基板に、熱硬化性樹脂を塗布し、焼成して第一絶縁層41を形成した。
【0205】
その後、インクジェット法により、第一キャパシタ電極31と同様の方法により、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0206】
ソース電極5およびドレイン電極6を形成した基板に、有機半導体材料としてポリ(3-ヘキシルチオフェン)を0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法によりパターニングし、半導体層7を形成した。
【0207】
その後、フッ素樹脂をインクジェット法で塗布し、第二絶縁層42を形成した。
【0208】
つづいて、銀ナノ粒子を分散させたインクを、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、ゲート電極2および第二キャパシタ電極32を形成し、有機薄膜トランジスタ170を作製した。
【0209】
(比較例3)
比較例3として、
図11に示す有機薄膜トランジスタ220を作製した。
【0210】
基板1として厚さ0.7mmの無アルカリガラスを使用した。基板1上に、銀(Ag)のナノ粒子を分散させた溶液をインクとして、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
【0211】
ソース電極5およびドレイン電極6を形成した基板に、有機半導体材料としてポリ(3-ヘキシルチオフェン)を0.1重量%濃度で溶解させたメシチレン溶液をインクジェット法によりパターニングし、半導体層7を形成した。
【0212】
その後、フッ素樹脂をインクジェット法で塗布し、第一絶縁層41(ゲート絶縁層)を形成した。
【0213】
つづいて、銀ナノ粒子を分散させたインクを、インクジェット法を用いて所望の形状にパターニングし、150℃で1時間焼成し、ゲート電極5およびキャパシタ電極6を形成し、比較例に係る有機薄膜トランジスタ220を作製した。
【0214】
以上の工程により、実施例3-1、3-2および比較例3に係る有機薄膜トランジスタを作製した。実施例3-1においては、第一キャパシタ電極31をゲート電極5の形成された第二絶縁層42とは異なる層であるドレイン電極6の下方の第一絶縁層41に配置した。これにより、トップゲート構造の有機薄膜トランジスタ160において、トランジスタ部の設計寸法に余裕を持たせつつ、かつ十分なキャパシタ電極面積を取ることが可能となり、安定的に駆動可能な有機薄膜トランジスタ160を形成することができた。
【0215】
また、実施例3-2においては、さらに、ゲート電極5の形成された第二絶縁層42上に第二キャパシタ電極32を形成することにより、有機薄膜トランジスタ170のキャパシタ容量を比較例の有機薄膜トランジスタ220と比較して大幅増加させることができた。
【0216】
いずれの実施例においても、トップゲート構造の有機薄膜トランジスタにおいて、高い半導体特性を維持しながらもトランジスタ寸法に余裕を持たせることにより高い歩留まりを実現し、かつ十分なキャパシタ電極面積を有することで、トランジスタ画素電極の高い電圧保持率を維持し、安定的に駆動可能な有機薄膜トランジスタ160、170が得られ、有機薄膜トランジスタ160、170を用いた画像表示装置を駆動させることが可能となった。
【0217】
以上説明したように、有機薄膜トランジスタ160、170は、第一キャパシタ電極31をゲート電極5の形成された第二絶縁層42とは異なる層であるドレイン電極6の下方の第一絶縁層41上に形成した。第一キャパシタ電極31をゲート電極2の形成された層とは異なる層に形成することで、第一キャパシタ電極31の面積を大きく保ちつつ、有機薄膜トランジスタ160、170の設計寸法に余裕を持たせることが可能となった。この結果、有機薄膜トランジスタ160、170は、第一キャパシタ電極31の面積を大きく保ち、第一絶縁層41を所望の静電容量に合わせて形成することにより、十分な静電容量を得ることが可能となり、電圧保持率を向上させることが可能となる。
【0218】
したがって、本発明によれば、トップゲート構造の有機薄膜トランジスタにおいて、高い半導体特性を維持しながらもトランジスタ寸法に余裕を持たせることにより高い歩留まりを実現し、かつ十分なキャパシタ電極面積を有することで、トランジスタ画素電極の高い電圧保持率を維持し、安定的に駆動可能な有機薄膜トランジスタおよび画像表示装置を提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0219】
本発明は、画像表示装置、また各種センサーなどに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0220】
1 基板
2 ゲート電極
3 キャパシタ電極
31 第一キャパシタ電極
32 第二キャパシタ電極
4 絶縁層
41 第一絶縁層
42 第二絶縁層
5 ソース電極
6 ドレイン電極
7 半導体層
8 保護層
9 層間絶縁膜
10 画素電極
100~170、200~220 有機薄膜トランジスタ