(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】化合物半導体装置、化合物半導体装置の製造方法及び増幅器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20221025BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20221025BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20221025BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20221025BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20221025BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/78 301B
H01L21/316 Y
(21)【出願番号】P 2019019110
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2021-09-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、防衛装備庁、安全保障技術研究推進制度、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】牧山 剛三
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-091406(JP,A)
【文献】特開2007-173426(JP,A)
【文献】特開2009-267155(JP,A)
【文献】特開2015-079800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造と、
前記半導体積層構造の上方に設けられ、第1の方向に並ぶソース電極、ゲート電極及びドレイン電極と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に形成され、第1の内部応力を備えた第1の絶縁膜と、
を有し、
前記第1の絶縁膜には、前記第1の方向に延びるスリットが形成されており、
前記スリット内に形成され、前記第1の内部応力とは逆方向の第2の内部応力を備えた第2の絶縁膜を有することを特徴とす
る化合物半導体装置。
【請求項2】
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造と、
前記半導体積層構造の上方に設けられ、第1の方向に並ぶソース電極、ゲート電極及びドレイン電極と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に形成され、第1の内部応力を備えた第1の絶縁膜と、
を有し、
前記第1の絶縁膜には、前記第1の方向に延びるスリットが形成されており、
前記第1の内部応力は引張応力であることを特徴とす
る化合物半導体装置。
【請求項3】
前記スリット内に形成され、前記第1の内部応力とは逆方向の第2の内部応力を備えた第2の絶縁膜を有することを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
前記電子供給層は金属窒化物を含み、
前記金属窒化物中の金属原子のうち32%以上がAlであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項5】
前記電子供給層の厚さは10nm以下であることを特徴とする請求項4に記載の化合物半導体装置。
【請求項6】
前記第1の方向で、前記スリットが前記ゲート電極から離間していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項7】
前記半導体積層構造と前記第1の絶縁膜との間に形成された保護膜を有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【請求項8】
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造を形成する工程と、
前記半導体積層構造の上方に、第1の方向に並ぶソース電極、ゲート電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に、第1の内部応力を備え、前記第1の方向に延びるスリットが形成された第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記スリット内に、前記第1の内部応力とは逆方向の第2の内部応力を備えた第2の絶縁膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【請求項9】
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造を形成する工程と、
前記半導体積層構造の上方に、第1の方向に並ぶソース電極、ゲート電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に、第1の内部応力を備え、前記第1の方向に延びるスリットが形成された第1の絶縁膜を形成する工程と、
を有し、
前記第1の内部応力は引張応力であることを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体装置、化合物半導体装置の製造方法及び増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、高い飽和電子速度及びワイドバンドギャップ等の特徴を有している。このため、これらの特性を利用して窒化物半導体を高耐圧及び高出力の化合物半導体装置に適用することについて種々の検討が行われている。例えば、窒化物半導体の一種であるGaNのバンドギャップは3.4eVであり、Siのバンドギャップ(1.1eV)及びGaAsのバンドギャップ(1.4eV)よりも大きい。このため、GaNは、高い破壊電界強度を有しており、高電圧動作及び高出力を得る電源用の化合物半導体装置の材料として極めて有望である。
【0003】
窒化物半導体を用いた化合物半導体装置は、電界効果トランジスタ、特に高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)についての報告が数多くなされている。例えば、GaN系HEMTでは、GaNを電子走行層(チャネル層)、AlGaNを電子供給層として用いたAlGaN/GaN-HEMTが注目されている。AlGaN/GaN-HEMTでは、GaNとAlGaNとの格子定数差に起因した歪みがAlGaNに生じる。そして、この歪みにより発生したピエゾ分極及びAlGaNの自発分極により、高濃度の2次元電子ガス(2DEG)が得られる。そのため、AlGaN/GaN-HEMTは、通信用高出力デバイス、高効率のスイッチ素子、電気自動車用等の高耐圧電力デバイス等として期待されている。
【0004】
近年、更なる電流密度の向上が望まれているが、従来の化合物半導体装置では、電流密度の向上が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-205095号公報
【文献】特開2010-182829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、電流密度を向上することができる化合物半導体装置、化合物半導体装置の製造方法及び増幅器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造と、前記半導体積層構造の上方に設けられ、第1の方向に並ぶソース電極、ゲート電極及びドレイ電極と、前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に形成され、第1の内部応力を備えた第1の絶縁膜と、を有し、前記第1の絶縁膜には、前記第1の方向に延びるスリットが形成されており、前記スリット内に形成され、前記第1の内部応力とは逆方向の第2の内部応力を備えた第2の絶縁膜を有する化合物半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電流密度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図(その1)である。
【
図3】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図(その2)である。
【
図4】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図(その3)である。
【
図5】第1の実施形態に係る化合物半導体装置における伝導帯の分布を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る化合物半導体装置における電子濃度の分布を示す図である。
【
図7】参考例の化合物半導体装置における電子濃度の分布を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
【
図9】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図(その1)である。
【
図10】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図(その2)である。
【
図11】第3の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
【
図12】第3の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図13】第4の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
【
図14】第4の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図(その1)である。
【
図15】第4の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図(その2)である。
【
図16】第5の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
【
図17】第5の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図(その1)である。
【
図18】第5の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図(その2)である。
【
図19】第6の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
【
図20】第6の実施形態に係る化合物半導体装置における伝導帯の分布を示す図である。
【
図21A】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図21B】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図21C】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図21D】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図21E】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図21F】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図21G】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図21H】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図21I】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図21J】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図21K】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その11)である。
【
図21L】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その12)である。
【
図21M】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その13)である。
【
図21N】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その14)である。
【
図22A】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その15)である。
【
図22B】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その16)である。
【
図23A】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法の変形例を示す断面図(その1)である。
【
図23B】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法の変形例を示す断面図(その2)である。
【
図23C】第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法の変形例を示す断面図(その3)である。
【
図24A】ドレイン電圧とドレイン電流との関係を示す図(その1)である。
【
図24B】ドレイン電圧とドレイン電流との関係を示す図(その2)である。
【
図25】第8の実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
【
図26】第9の実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【
図27】第10の実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【
図28】第11の実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。この結果、チャネル内での電荷の直進性を向上することが有効であることが判明した。
【0011】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を含む化合物半導体装置に関する。
図1は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
図2~
図4は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図である。
図2は、
図1中のI-I線に沿った断面図に相当し、
図3は、
図1中のII-II線に沿った断面図に相当し、
図4は、
図1中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
【0013】
第1の実施形態に係る化合物半導体装置100は、
図1~
図4に示すように、化合物半導体の電子走行層102c及び電子供給層102eを含む半導体積層構造102を有する。化合物半導体装置100は、半導体積層構造102の上方に設けられ、X方向に並ぶソース電極111s、ゲート電極112g及びドレイン電極111dを有する。化合物半導体装置100は、ゲート電極112gとドレイン電極111dとの間で半導体積層構造102上に形成された引張応力膜105を有する。引張応力膜105の内部には、半導体積層構造102の表面に平行な面(XY平面)内で引張応力が作用している。引張応力膜105には、X方向に延びるスリット110が形成されている。第1の実施形態において、スリット110は、X方向でゲート電極112g及びドレイン電極111dに接するように形成されている。引張応力膜105は第1の絶縁膜の一例である。
【0014】
例えば、半導体積層構造102は基板101上に形成され、ソース電極111s、ゲート電極112g及びドレイン電極111dは、半導体積層構造102に形成された素子分離領域103により画定された素子領域内に設けられている。
【0015】
図5は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置における伝導帯の分布を示す図である。
図6は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置における電子濃度の分布を示す図である。
図7は、参考例の化合物半導体装置における電子濃度の分布を示す図である。
図5には、半導体積層構造102の表面に平行でX方向に直交するY方向における、伝導帯のエネルギが0.6eVとなる半導体積層構造102の表面からの深さの分布を示してある。
図6及び
図7には、Y方向における、電子濃度が10
15cm
-3、10
16cm
-3、10
17cm
-3となる半導体積層構造102の表面からの深さの分布を示してある。
【0016】
図5に示すように、ゲート電極112gとドレイン電極111dとの間では、スリット110と重なる領域の伝導帯のエネルギが、引張応力膜105により覆われた領域の伝導帯のエネルギよりも低い。従って、スリット110と重なる領域には、伝導帯エネルギの量子井戸が存在する。このため、
図6に示すように、電子がY方向に閉じ込められ量子化される。この量子化により、チャネル内での電子の直進性を向上し、電子のY方向への散乱を抑制し、Y方向での運動量の変化を抑制することができる。この結果、ドレイン電流の飽和を抑制し、電流密度を向上することができる。
【0017】
一方、引張応力膜105にスリット110が形成されていない参考例では、量子井戸が存在しない。このため、
図7に示すように、電子はY方向に閉じ込められず、電界によってソースとドレインとの間で移動するものの、第1の実施形態と比べると、Y方向に散乱しやすい。
【0018】
このように、化合物半導体装置100によれば、電流密度を向上することができる。また、この化合物半導体装置100を増幅器に用いることで出力を向上することができる。
【0019】
引張応力膜105の材料は限定されない。例えば、引張応力膜105には、窒化ケイ素(SiN)、酸化マグネシウム(MgO)等を用いることができる。スリット110の形成に伴う伝導帯の量子井戸の深さは、概ね引張応力膜105の引張応力に比例する。引張応力膜105の引張応力の大きさは限定されないが、例えば1GPa~20GPaである。
【0020】
スリット110の幅は限定されないが、Y方向での電子の閉じ込めの観点から、100nm以下であることが好ましい。幅が大きすぎると、優れた閉じ込め効果が得られないことがある。また、加工精度の観点からスリット110の幅は10nm以上であることが好ましい。幅が小さすぎると、高精度でスリット110を形成することが困難になり得る。
【0021】
複数のスリット110はY方向に等間隔で配置されている必要はない。例えば、ゲート幅方向の中央ほどスリット110が疎で、両端ほど密であってもよい。この場合、ゲート幅方向の中央よりも両端近傍で電流が流れやすく、化合物半導体装置100の動作に伴う発熱が外部に放出されやすくなる。
【0022】
シリコン基板上に内部応力を備えた内部応力膜が形成された場合、内部応力膜からの内部応力に応じてシリコン基板が変形し、曲率を呈する。シリコン基板の厚さをh(m)、シリコン基板の曲率半径をr(m)、内部応力膜の厚さをt(m)とすると、内部応力膜の内部応力s(Pa)は次の式(1)で表すことができる。sが正であれば、内部応力膜は引っ張りの内部応力を持つ引張応力膜であり、sが負であれば、内部応力膜は圧縮の応力を持つ圧縮応力膜である。
s=1.805×1011×h2/6rt ・・・(1)
【0023】
半導体積層構造102の材料は限定されない。例えば、電子走行層102cには、GaNを用いることができ、電子供給層102eには、AlxGa1-xN(0<x≦1)を用いることができる。また、電子走行層102c及び電子供給層102eの厚さは限定されない。但し、電子供給層102eが厚いほど、引張応力膜105の引張応力がチャネルに及びにくくなり、電子の閉じ込め効果が弱くなる。引張応力の影響の観点から電子供給層102eの厚さは10nm以下であることが好ましい。更に、十分な濃度の2次元電子ガス(2DEG)を生じさせるために、AlxGa1-xNのAl組成xは0.32以上であることが好ましく、0.50以上であることがより好ましく、1.00であることが更に好ましい。つまり、窒化物(AlxGa1-xN)中の金属原子のうち32%以上がAlであることが好ましく、50%以上がAlであることがより好ましく、100%がAlであることが更に好ましい。2DEGの濃度は限定されないが、2×1013cm-2以上であることが好ましい。Al組成xを高めることで、Z方向にも量子井戸を形成して電子を閉じ込めやすくなる。電子供給層102eにInAlN又はInAlGaNを用いてもよい。
【0024】
電子供給層102eにAlNを用いる場合、半導体積層構造102にソース用のリセス及びドレイン用のリセスを形成し、リセス内にn+GaN等の低抵抗の再成長層を形成し、再成長層上にソース電極111s及びドレイン電極111dを形成することが好ましい。
【0025】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、HEMTを含む化合物半導体装置に関する。
図8は、第2の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
図9~
図10は、第2の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図である。
図9は、
図8中のI-I線に沿った断面図に相当し、
図10は、
図8中のIII-III線に沿った断面図に相当する。
【0026】
第2の実施形態に係る化合物半導体装置200は、
図8~
図10に示すように、スリット110内に形成された圧縮応力膜201を有する。圧縮応力膜201の内部には、半導体積層構造102の表面に平行な面(XY平面)内で圧縮応力が作用している。圧縮応力膜201は第2の絶縁膜の一例である。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0027】
化合物半導体装置200では、スリット110と重なる領域に存在する量子井戸がより深くなる。このため、化合物半導体装置200によれば、チャネル内での電子の直進性をより向上し、電流密度をより向上することができる。
【0028】
別の見方をすると、引張応力が5GPaの引張応力膜105と圧縮応力が5GPaの圧縮応力膜201との組み合わせにより、第1の実施形態において引張応力が10GPaの引張応力膜105が用いられる場合と同程度の量子井戸を得ることができる。内部応力が大きい膜ほど成膜条件が厳しくなるところ、第2の実施形態によれば、成膜条件の自由度を高めることができる。
【0029】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、HEMTを含む化合物半導体装置に関する。
図11は、第3の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
図12は、第3の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図である。
図12は、
図11中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0030】
第3の実施形態に係る化合物半導体装置300では、
図11~
図12に示すように、引張応力膜105に、スリット110に代えてスリット310が形成されている。スリット310は、X方向で、ドレイン電極111dに接する一方で、ゲート電極112gから離間するように形成されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0031】
上記のように、スリット110と重なる領域には量子井戸が存在し、そこに電子が蓄積される。そして、第1の実施形態に係る化合物半導体装置100では、X方向でゲート電極112gに接するようにスリット110が形成されている。これに対し、第3の実施形態に係る化合物半導体装置300では、スリット310のゲート電極112g側の端部が、X方向でゲート電極112gから離間している。このため、化合物半導体装置300によれば、スリット310と重なる領域での電子の蓄積に伴うゲートリーク電流を、化合物半導体装置100におけるスリット110と重なる領域での電子の蓄積に伴うゲートリーク電流よりも低減することができる。
【0032】
X方向でのスリット310のゲート電極112g側の端部のゲート電極112gからの距離は限定されないが、ゲートリーク電流を効果的に低減する観点から、0.2μm以上であることが好ましい。
【0033】
第2の実施形態のように、スリット310内に圧縮応力膜201が形成されていてもよい。この場合も、ゲートリーク電流の低減の効果を得ることができる。
【0034】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、HEMTを含む化合物半導体装置に関する。
図13は、第4の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
図14~
図15は、第4の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図である。
図14は、
図13中のI-I線に沿った断面図に相当し、
図15は、
図13中のII-II線に沿った断面図に相当する。
【0035】
第4の実施形態に係る化合物半導体装置400は、
図13~
図15に示すように、半導体積層構造102上に形成された保護膜404を有し、引張応力膜105が保護膜404上に形成されている。保護膜404は、例えば、内部応力を含まない窒化ケイ素膜である。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0036】
引張応力膜105の形成方法は限定されないが、下地へのダメージが生じやすい条件で引張応力膜105が形成されることがある。第1の実施形態に係る化合物半導体装置100では、ダメージが生じる対象は主に半導体積層構造102であるのに対し、第4の実施形態に係る化合物半導体装置400では、ダメージが生じる対象は主に保護膜404である。このため、チャネルへのダメージの影響を緩和することができる。
【0037】
別の見方をすると、引張応力の観点では好ましいが、第1の実施形態ではダメージの観点で好ましくない膜であっても、引張応力膜105として用いることができる。つまり、引張応力膜105に好適に用いることができる膜の種類を広げることができる。
【0038】
保護膜404の材料は限定されない。保護膜404には、例えば、窒化ケイ素及びポリイミド等を用いることができる。保護膜404のヤング率が高すぎる場合、引張応力膜105の引張応力がチャネルに及びにくくなる。引張応力の影響の観点から保護膜404のヤング率は220GPa以下であることが好ましく、200GPa以下であることがより好ましく、100GPa以下であることが更に好ましい。窒化ケイ素のヤング率は200GPa程度であり、ポリイミドのヤング率は10GPa~100GPa程度である。保護膜404自体の内部応力は小さいほど好ましく、例えば、引張応力又は圧縮応力のいずれであっても、内部応力の絶対値が300MPa以下であることが好ましい。
【0039】
本発明者が行った実験により、次のような保護膜の効果が確認されている。GaN層及びAlGaN層の積層体を形成し、2次元電子ガスの移動度を測定したところ、2200cm2/V・s程度の移動度が得られた。そして、保護膜を形成せずに、AlGaN層上に引張応力膜を形成したところ、移動度が1000m2/V・s~1050m2/V・s程度まで低下した。一方、保護膜をAlGaN層上に形成し、保護膜上に引張応力膜を形成したところ、2110m2/V・s程度の移動度が得られた。
【0040】
保護膜404がゲート電極112gと半導体積層構造102との間にも形成されていてもよい。この構成では、保護膜404の一部をゲート絶縁膜として用いることができる。この構成によれば、保護膜404とは別にゲート絶縁膜が形成された構成と比較して、ゲート電極112gの近傍での異種膜同士の界面が少ないため、界面トラップによる過渡応答を低減することができる。
【0041】
第2の実施形態及び第3の実施形態に保護膜404が含まれていてもよい。
【0042】
(第5の実施形態)
第5の実施形態は、HEMTを含む化合物半導体装置に関する。
図16は、第5の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
図17~
図18は、第5の実施形態に係る化合物半導体装置の構造を示す断面図である。
図17は、
図16中のI-I線に沿った断面図に相当し、
図18は、
図16中のII-II線に沿った断面図に相当する。
【0043】
第5の実施形態に係る化合物半導体装置500では、
図16~
図18に示すように、引張応力膜105がゲート電極112gとドレイン電極111dとの間だけでなく、ゲート電極112gとソース電極111sとの間等にも形成されている。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0044】
第5の実施形態に係る化合物半導体装置500によっても、化合物半導体装置100と同様に、電流密度を向上することができる。
【0045】
第2~第4の実施形態において、引張応力膜105がゲート電極112gとドレイン電極111dとの間だけでなく、ゲート電極112gとソース電極111sとの間等にも形成されていてもよい。
【0046】
(第6の実施形態)
第6の実施形態は、HEMTを含む化合物半導体装置に関する。
図19は、第6の実施形態に係る化合物半導体装置のレイアウトを示す図である。
【0047】
第6の実施形態に係る化合物半導体装置600は、
図19に示すように、引張応力膜105に代えて圧縮応力膜605を有する。圧縮応力膜605には、X方向に延びるスリット610が形成されている。第6の実施形態において、スリット610は、X方向でゲート電極112g及びドレイン電極111dに接するように形成されている。圧縮応力膜605は第1の絶縁膜の一例である。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0048】
図20は、第6の実施形態に係る化合物半導体装置における伝導帯の分布を示す図である。
図20には、半導体積層構造102の表面に平行でX方向に直交するY方向における、伝導帯のエネルギが0.8eVとなる半導体積層構造102の表面からの深さの分布を示してある。
【0049】
図20に示すように、ゲート電極112gとドレイン電極111dとの間では、圧縮応力膜605により覆われた領域の伝導帯のエネルギが、スリット610と重なる領域の伝導帯のエネルギよりも低い。従って、圧縮応力膜605により覆われた領域には、量子井戸が存在する。このため、電子がY方向に閉じ込められ量子化される。この量子化により、チャネル内での電子の直進性を向上し、電子のY方向への散乱を抑制し、Y方向での運動量の変化を抑制することができる。この結果、ドレイン電流の飽和を抑制し、電流密度を向上することができる。
【0050】
第2~第5の実施形態において、引張応力膜105に代えて圧縮応力膜605が形成されていてもよい。
【0051】
【0052】
先ず、
図21Aに示すように、例えば半絶縁性のSiC基板等の基板1上に、例えば有機金属気相成長(metal organic vapor phase epitaxy:MOVPE)法により、核形成層2a、バッファ層2b、電子走行層2c、中間層2d、電子供給層(障壁層)2e及びキャップ層2fをエピタキシャル成長させる。核形成層2a、バッファ層2b、電子走行層2c、中間層2d、電子供給層2e及びキャップ層2fが半導体積層構造2に含まれる。
【0053】
核形成層2aとしては、例えばAlN層を形成する。バッファ層2bとしては、例えばAlGaN層を形成する。電子走行層2cとしては、例えば不純物の意図的なドーピングが行われていないGaN層(i-GaN層)を形成する。中間層2dとしては、例えばAlN層を形成する。電子供給層2eとしては、例えばAlGaN層を形成する。キャップ層2fとしては、例えばGaN層を形成する。
【0054】
半導体積層構造2の形成に際しては、例えば、Al源であるトリメチルアルミニウム(TMA)ガス、Ga源であるトリメチルガリウム(TMG)ガス、及びN源であるアンモニア(NH3)ガスの混合ガスを用いる。このとき、成長させる化合物半導体層の組成に応じて、トリメチルアルミニウムガス及びトリメチルガリウムガスの供給の有無及び流量を適宜設定する。なお、電子走行層2cと電子供給層2eとの間の中間層2dは必要に応じて形成することができる。また、キャップ層2fも必要に応じて形成することができる。
【0055】
次いで、
図21Bに示すように、半導体積層構造2に素子領域を画定する素子分離領域3を形成する。素子分離領域3の形成では、例えば、素子分離領域3を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを半導体積層構造2上に形成し、このパターンをマスクとしてAr等のイオン注入を行う。このパターンをエッチングマスクとして塩素系ガスを用いたドライエッチングを行ってもよい。素子分離領域3は、基板1に入り込むように形成してもよい。
【0056】
その後、
図21Cに示すように、半導体積層構造2上に保護膜4を形成する。保護膜4としては、例えば、厚さが10nm~30nmの窒化ケイ素(SiN)膜を形成する。保護膜4は、例えば、SiH
4及びNH
3を原料ガスとして用いるプラズマ化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)法により形成することができる。
【0057】
続いて、
図21Dに示すように、ゲート電極を形成する予定の領域とドレイン電極を形成する予定の領域との間に開口部51aを有するレジストパターン51を保護膜4上に形成する。このとき、開口部51aのゲート電極を形成する予定の領域側の端部を、ゲート電極を形成する予定の領域からば0.2μm以上離間させることが好ましい。次いで、開口部51aの内側にて保護膜4上に引張応力膜5を形成する。引張応力膜5の形成では、例えば、厚さ50nm~200nmの酸化マグネシウム(MgO)膜をスパッタリング法により形成し、この酸化マグネシウムを加熱することでその内部に引張応力を発生させる。加熱では、例えば750℃~900℃の温度に30秒間~2分間保持する。引張応力膜5はレジストパターン51上にも形成される。
【0058】
その後、
図21E及び
図22Aに示すように、レジストパターン51を、その上の引張応力膜5と共に除去する。
【0059】
続いて、
図21Fに示すように、ソース電極を形成する予定の領域に開口部52sを有し、ドレイン電極を形成する予定の領域に開口部52dを有するレジストパターン52を保護膜4及び引張応力膜5上に形成する。次いで、レジストパターン52をマスクとして用い、保護膜4のドライエッチングを行うことにより、保護膜4に、開口部52sに倣う開口部6s及び開口部52dに倣う開口部6dを形成する。保護膜4のドライエッチングでは、例えばSF
6をエッチングガスとして用いる。
【0060】
その後、
図21Gに示すように、例えば、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン52を除去する。続いて、ソース電極を形成する予定の領域に開口部53sを有し、ドレイン電極を形成する予定の領域に開口部53dを有するレジストパターン53を保護膜4及び引張応力膜5上に形成する。次いで、レジストパターン53をマスクとして用い、半導体積層構造2のドライエッチングを行うことにより、半導体積層構造2に、開口部53sに倣うリセス7s及び開口部53dに倣うリセス7dを形成する。半導体積層構造2のドライエッチングでは、例えば不活性ガス及びCl
2ガス等の塩素系ガスをエッチングガスとして用いる。半導体積層構造2のドライエッチングでは、例えば、キャップ層2fをエッチングする。なお、リセス7s及び7dの深さに関し、キャップ層2fの一部を残してもよく、電子供給層2eの一部を除去してもよい。つまり、リセス7s及び7dの深さはキャップ層2fの厚さと一致している必要はない。例えば、リセス7s及び7dの深さはキャップ層2fと電子供給層2eの合計膜厚の2倍以内とする。
【0061】
その後、
図21Hに示すように、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン53を除去する。続いて、ソース電極を形成する予定の領域に開口部54sを有し、ドレイン電極を形成する予定の領域に開口部54dを有するレジストパターン54を保護膜4及び引張応力膜5上に形成する。次いで、リセス7s及び開口部6sの内側と、リセス7d及び開口部6dの内側とに金属膜11を形成する。金属膜11の形成に当たっては、例えば、高真空蒸着法によりTi層を形成し、その上に高真空蒸着法によりAl層を形成する。例えば、Ti層の厚さは10nm~30nmとし、Al層の厚さは100nm~300nmとする。金属膜11はレジストパターン54上にも形成される。
【0062】
次いで、
図21Iに示すように、レジストパターン54を、その上の金属膜11と共に除去する。この結果、リセス7s及び開口部6sの内側にソース電極11sが形成され、リセス7d及び開口部6dの内側にドレイン電極11dが形成される。このように、ソース電極11s及びドレイン電極11dの形成では、例えば蒸着及びリフトオフの技術を用いることができる。その後、550℃~650℃での熱処理(合金化処理)を行うことにより、ソース電極11s及びドレイン電極11dと半導体積層構造2の表面との間をオーミックコンタクトさせる。
【0063】
続いて、
図22Bに示すように、引張応力膜5にスリット10を形成する。スリット10の形成では、例えば、スリット10を形成する領域に開口部を有するレジストパターンを保護膜4、引張応力膜5、ソース電極11s及びドレイン電極11d上に形成する。次いで、このレジストパターンをマスクとして用い、引張応力膜5のドライエッチングを行うことにより、引張応力膜5にスリット10を形成する。引張応力膜5のドライエッチングでは、例えばSF
6等のエッチングガスを用いる。
【0064】
なお、レジストパターン51に、スリット10を形成する予定の領域を覆う部分を設けておき、引張応力膜5を形成する際に、スリット10を形成してもよい。
【0065】
続いて、
図21Jに示すように、ゲート電極を形成する予定の領域に開口部55gを有するレジストパターン55を保護膜4、引張応力膜5、ソース電極11s及びドレイン電極11d上に形成する。レジストパターン55の材料としては、例えば日本ゼオン社製のZEP520を用いることができる。このレジスト材料はスピンコート法により塗布することができる。レジストパターン55の厚さは、例えば200nm~400nmとする。開口部55gは、電子線描画法による露光及び現像により形成することができる。開口部55gを形成する際の露光では、例えばX方向に300nm~500nmの長さで電子線描画を行う。
【0066】
次いで、
図21Kに示すように、レジストパターン55をマスクとして用い、保護膜4のドライエッチングを行うことにより、保護膜4に、開口部55gに倣う開口部6gを形成する。保護膜4のドライエッチングでは、例えばSF
6をエッチングガスとして用いる。その後、加温した有機溶剤を用いてレジストパターン55を除去する。
【0067】
続いて、
図21Lに示すように、ゲート電極を形成する予定の領域に開口部56gを有するレジストパターン56を保護膜4、引張応力膜5、ソース電極11s及びドレイン電極11d上に形成する。同時に、ゲート電極を形成する予定の領域に開口部57gを有するレジストパターン57をレジストパターン56上に形成する。レジストパターン56及び57の形成では、先ず、2層のレジスト層を形成し、上方のレジスト層に開口部57gを形成してレジストパターン57を形成する。次いで、レジストパターン57をマスクとして下方のレジスト層に開口部56gを形成することにより、X方向の寸法が0.3μm~0.7μmのセットバック構造を備えたレジストパターン56を形成する。レジストパターン56の材料としては、例えばポリメチルグルタルイミド(PMGI)(例えば、米国マイクロケム社製)を用いることができ、レジストパターン57の材料としては、例えば日本ゼオン社製のZEP520を用いることができる。これらのレジスト材料はスピンコート法により塗布することができ、塗布後にプリベークを行う。開口部57gを形成する際の露光では、例えばX方向に1.0μm~1.5μmの長さで電子線描画を行い、現像液としては、例えば日本ゼオン社製のZEP-SDを用いることができる。開口部56gの形成では、現像液として、例えば東京応化工業株式会社製のNMD-Wを用いることができる。このようにして、庇構造(セットバック構造)のレジストパターンが得られる。
【0068】
その後、
図21Mに示すように、開口部56g及び57gの内側にて、保護膜4上に開口部6gを通じて半導体積層構造2に接触する金属膜12を形成する。金属膜12の形成に当たっては、例えば、高真空蒸着法によりNi層を形成し、その上に高真空蒸着法によりAu層を形成する。例えば、Ni層の厚さは10nm~30nmとし、Au層の厚さは200nm~400nmとする。金属膜12はレジストパターン57上にも形成される。
【0069】
続いて、
図21Nに示すように、レジストパターン57及び56を、その上の金属膜12と共に除去する。この結果、保護膜4上に開口部6gを通じて半導体積層構造2に接触するゲート電極12gが形成される。このように、ゲート電極12gの形成では、例えば蒸着及びリフトオフの技術を用いることができる。
【0070】
そして、必要に応じて保護膜及び配線等を形成して、化合物半導体装置を完成させる。
【0071】
なお、保護膜4の形成を省略してもよい。スリット10をX方向でゲート電極12gと接するように形成してもよい。スリット10内に圧縮応力膜を形成してもよい。引張応力膜5をソース電極11sとゲート電極12gとの間にも形成することができる。引張応力膜5に代えて圧縮応力膜を形成してもよい。この場合、圧縮応力膜のスリット内に引張応力を形成してもよい。開口部6gの形成を省略し、ゲート電極112gを保護膜4に接するように形成してもよい。
【0072】
(第7の実施形態の変形例)
第7の実施形態の変形例は、ゲート電極12gの形成方法の点で第7の実施形態と相違する。
図23A~
図23Cは、第7の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法の変形例を示す断面図である。
【0073】
この変形例では、先ず、
図23Aに示すように、第7の実施形態と同様にして、開口部6gの形成までの処理を行う。次いで、ゲート電極を形成する予定の領域に開口部66gを有するレジストパターン66を保護膜4、引張応力膜5、ソース電極11s及びドレイン電極11d上に形成する。同時に、ゲート電極を形成する予定の領域に開口部67gを有するレジストパターン67をレジストパターン66上に形成し、ゲート電極を形成する予定の領域に開口部68gを有するレジストパターン68をレジストパターン67上に形成する。レジストパターン66~68の形成では、先ず、3層のレジスト層を形成し、上方のレジスト層に開口部68gを形成してレジストパターン68を形成する。次いで、レジストパターン68をマスクとして中間のレジスト層に開口部67gを形成することにより、X方向の寸法が0.3μm~0.7μmのセットバック構造を備えたレジストパターン67を形成する。その後、下方のレジスト層に開口部66gを形成してレジストパターン66を形成する。レジストパターン66の材料としては、例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)(例えば、米国マイクロケム社製)を用いることができる。レジストパターン67の材料としては、例えばポリメチルグルタルイミド(PMGI)(例えば、米国マイクロケム社製)を用いることができる。レジストパターン68の材料としては、例えば日本ゼオン社製のZEP520を用いることができる。これらのレジスト材料はスピンコート法により塗布することができ、塗布後にプリベークを行う。開口部68gを形成する際の露光では、例えばX方向に1.0μm~1.5μmの長さで電子線描画を行い、現像液としては、例えば日本ゼオン社製のZEP-SDを用いることができる。開口部67gの形成では、現像液として、例えば東京応化工業株式会社製のNMD-Wを用いることができる。開口部66gを形成する際の露光では、例えばX方向に0.3μm~0.5μmの長さで電子線描画を行い、現像液としては、例えば日本ゼオン社製のZMD-Bを用いることができる。
【0074】
その後、
図23Bに示すように、開口部67g及び68gの内側にて、レジストパターン66上に、開口部66g及び6gを通じて半導体積層構造2に接触する金属膜12を形成する。金属膜12はレジストパターン68上にも形成される。
【0075】
続いて、
図23Cに示すように、レジストパターン68、67及び66を、その上の金属膜12と共に除去する。この結果、開口部6gを通じて半導体積層構造2に接触するゲート電極12gが形成される。このように、ゲート電極12gの形成では、例えば蒸着及びリフトオフの技術を用いることができる。この変形例によれば、断面形状がT字型のゲート電極12gが形成される。
【0076】
そして、必要に応じて保護膜及び配線等を形成して、化合物半導体装置を完成させる。
【0077】
図24A及び
図24Bに、第7の実施形態に倣った製造した化合物半導体装置の3端子特性を示す。
図24Aには、ドレイン電圧が0V~20Vの場合に、ゲート電圧Vgを-2V、-1V、0V、+1V、+2Vとしたときのドレイン電圧とドレイン電流との関係を示す。
図24Bには、ドレイン電圧が0V~200Vの場合に、ゲート電圧Vgを-5Vとしたときのドレイン電圧とドレイン電流との関係を示す。
図24A及び
図24Bには、引張応力膜5の形成を省略した参考例の3端子特性も示す。
【0078】
図24A及び
図24Bに示すように、第7の実施形態に倣った製造した化合物半導体装置によれば、オン抵抗を低減することができ、ドレイン電流を増大させ、ドレイン耐圧を向上することができる。このことは、この化合物半導体装置を適用した増幅器の高出力化及び高効率化を実現できることを示している。
【0079】
(第8の実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。第8の実施形態は、HEMTのディスクリートパッケージに関する。
図25は、第8の実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
【0080】
第8の実施形態では、
図25に示すように、第1~第6の実施形態のいずれかと同様の構造を備えた化合物半導体装置1210の裏面がはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてランド(ダイパッド)1233に固定されている。また、ドレイン電極11dが接続されたドレインパッド1226dに、Alワイヤ等のワイヤ1235dが接続され、ワイヤ1235dの他端が、ランド1233と一体化しているドレインリード1232dに接続されている。ソース電極11sに接続されたソースパッド1226sにAlワイヤ等のワイヤ1235sが接続され、ワイヤ1235sの他端がランド1233から独立したソースリード1232sに接続されている。ゲート電極12gに接続されたゲートパッド1226gにAlワイヤ等のワイヤ1235gが接続され、ワイヤ1235gの他端がランド1233から独立したゲートリード1232gに接続されている。そして、ゲートリード1232gの一部、ドレインリード1232dの一部及びソースリード1232sの一部が突出するようにして、ランド1233及び化合物半導体装置1210等がモールド樹脂1231によりパッケージングされている。
【0081】
このようなディスクリートパッケージは、例えば、次のようにして製造することができる。先ず、化合物半導体装置1210をはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてリードフレームのランド1233に固定する。次いで、ワイヤ1235g、1235d及び1235sを用いたボンディングにより、ゲートパッド1226gをリードフレームのゲートリード1232gに接続し、ドレインパッド1226dをリードフレームのドレインリード1232dに接続し、ソースパッド1226sをリードフレームのソースリード1232sに接続する。その後、トランスファーモールド法にてモールド樹脂1231を用いた封止を行う。続いて、リードフレームを切り離す。
【0082】
(第9の実施形態)
次に、第9の実施形態について説明する。第9の実施形態は、HEMTを備えたPFC(Power Factor Correction)回路に関する。
図26は、第9の実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【0083】
PFC回路1250には、スイッチ素子(トランジスタ)1251、ダイオード1252、チョークコイル1253、コンデンサ1254及び1255、ダイオードブリッジ1256、並びに交流電源(AC)1257が設けられている。そして、スイッチ素子1251のドレイン電極と、ダイオード1252のアノード端子及びチョークコイル1253の一端子とが接続されている。スイッチ素子1251のソース電極と、コンデンサ1254の一端子及びコンデンサ1255の一端子とが接続されている。コンデンサ1254の他端子とチョークコイル1253の他端子とが接続されている。コンデンサ1255の他端子とダイオード1252のカソード端子とが接続されている。また、スイッチ素子1251のゲート電極にはゲートドライバが接続されている。コンデンサ1254の両端子間には、ダイオードブリッジ1256を介してAC1257が接続される。コンデンサ1255の両端子間には、直流電源(DC)が接続される。そして、本実施形態では、スイッチ素子1251に、第1~第6の実施形態のいずれかと同様の構造を備えた化合物半導体装置が用いられている。
【0084】
PFC回路1250の製造に際しては、例えば、はんだ等を用いて、スイッチ素子1251をダイオード1252及びチョークコイル1253等に接続する。
【0085】
(第10の実施形態)
次に、第10の実施形態について説明する。第10の実施形態は、サーバ電源に好適な、HEMTを備えた電源装置に関する。
図27は、第10の実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【0086】
電源装置には、高圧の一次側回路1261及び低圧の二次側回路1262、並びに一次側回路1261と二次側回路1262との間に配設されるトランス1263が設けられている。
【0087】
一次側回路1261には、第9の実施形態に係るPFC回路1250、及びPFC回路1250のコンデンサ1255の両端子間に接続されたインバータ回路、例えばフルブリッジインバータ回路1260が設けられている。フルブリッジインバータ回路1260には、複数(ここでは4つ)のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dが設けられている。
【0088】
二次側回路1262には、複数(ここでは3つ)のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cが設けられている。
【0089】
本実施形態では、一次側回路1261を構成するPFC回路1250のスイッチ素子1251、並びにフルブリッジインバータ回路1260のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dに、第1~第6の実施形態のいずれかと同様の構造を備えた化合物半導体装置が用いられている。一方、二次側回路1262のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cには、シリコンを用いた通常のMIS型FET(電界効果トランジスタ)が用いられている。
【0090】
(第11の実施形態)
次に、第11の実施形態について説明する。第11の実施形態は、HEMTを備えた増幅器に関する。
図28は、第11の実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【0091】
増幅器には、ディジタル・プレディストーション回路1271、ミキサー1272a及び1272b、並びにパワーアンプ1273が設けられている。
【0092】
ディジタル・プレディストーション回路1271は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー1272aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号とをミキシングする。パワーアンプ1273は、第1~第6の実施形態のいずれかと同様の構造を備えた化合物半導体装置を備えており、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅する。なお、本実施形態では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー1272bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路1271に送出できる。この増幅器は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。高周波増幅器は、例えば、携帯電話基地局用送受信装置、レーダー装置及びマイクロ波発生装置に用いることができる。
【0093】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0094】
(付記1)
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造と、
前記半導体積層構造の上方に設けられ、第1の方向に並ぶソース電極、ゲート電極及びドレイン電極と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に形成され、第1の内部応力を備えた第1の絶縁膜と、
を有し、
前記第1の絶縁膜には、前記第1の方向に延びるスリットが形成されていることを特徴とする化合物半導体装置。
(付記2)
前記スリット内に形成され、前記第1の内部応力とは逆方向の第2の内部応力を備えた第2の絶縁膜を有することを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
(付記3)
前記第1の内部応力は引張応力であることを特徴とする付記1又は2に記載の化合物半導体装置。
(付記4)
前記電子供給層は金属窒化物を含み、
前記金属窒化物中の金属原子のうち32%以上がAlであることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
(付記5)
前記金属窒化物中の金属原子のうち50%以上がAlであることを特徴とする付記4に記載の化合物半導体装置。
(付記6)
前記電子供給層の厚さは10nm以下であることを特徴とする付記4又は5に記載の化合物半導体装置。
(付記7)
前記第1の方向で、前記スリットが前記ゲート電極から離間していることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
(付記8)
前記第1の方向で、前記スリットが前記ゲート電極から0.2μm以上離間していることを特徴とする付記7に記載の化合物半導体装置。
(付記9)
前記半導体積層構造と前記第1の絶縁膜との間に形成された保護膜を有することを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
(付記10)
前記保護膜は前記スリットの下方にも形成されていることを特徴とする付記9に記載の化合物半導体装置。
(付記11)
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造を形成する工程と、
前記半導体積層構造の上方に、第1の方向に並ぶソース電極、ゲート電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記ゲート電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に、第1の内部応力を備え、前記第1の方向に延びるスリットが形成された第1の絶縁膜を形成する工程と、
を有することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
(付記12)
付記1乃至10のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする増幅器。
【符号の説明】
【0095】
1、101:基板
2、102:半導体積層構造
2c、102c:電子走行層
2e、102e:電子供給層
4、404:保護膜
5、105:引張応力膜
10、110、310、610:スリット
11s、111s:ソース電極
11d、111d:ドレイン電極
12g、112g:ゲート電極
100、200、300、400、500、600:化合物半導体装置
201、605:圧縮応力膜