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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】中空容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
B23K20/12 310
B23K20/12 344
B23K20/12 360
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019093484
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020185606
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 伸城
(72)【発明者】
【氏名】及川 恵太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 諒
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0075584(US,A1)
【文献】特開2006-061983(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132768(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先細りの攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて中空容器を製造する製造方法であって、
底部と該底部の周縁部から立ち上がる周壁部を備えた凹部を有する第一金属部材と、板状の第二金属部材と、枠状の補助部材と、を準備する準備工程と、
前記第一金属部材の周壁部の端面と前記第二金属部材の裏面の周縁部とを向き合せて、前記端面と前記周縁部との隙間に前記補助部材を挟みこみ、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記補助部材の一方の側面とを突合せて第一突合せ部を形成し、前記第二金属部材の裏面の周縁部と前記補助部材の他方の側面とを突合せて第二突合せ部を形成する突合せ工程と、
回転する前記回転ツールを前記補助部材の表面のみから挿入するとともに、前記攪拌ピンのみを前記補助部材に接触させつつ、前記攪拌ピンの外周面を前記第一金属部材及び前記第二金属部材に僅かに接触させた状態で、前記第一突合せ部及び前記第二突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材と前記第二金属部材とを補助部材を介して接合する接合工程と、を含み、
前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、前記第一金属部材及び前記第二金属部材は前記補助部材よりも硬度が高く、
前記第一金属部材の周壁部の端面及び前記第二金属部材の裏面の周縁部のうち少なくとも一方は、外側に向けて傾斜する傾斜面を備え、前記補助部材は、少なくとも一方の側面に表面側から裏面側に向けて先細りとなる傾斜面を備えることを特徴とする中空容器の製造方法。
【請求項2】
先細りの攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて中空容器を製造する製造方法であって、
底部と該底部の周縁部から立ち上がる周壁部を備えた凹部を有する第一金属部材と、板状の第二金属部材と、枠状の補助部材と、を準備する準備工程と、
前記第一金属部材の周壁部の端面と前記第二金属部材の裏面の周縁部とを向き合せて、前記端面と前記周縁部との隙間に前記補助部材を挟みこみ、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記補助部材の一方の側面とを突合せて第一突合せ部を形成し、前記第二金属部材の裏面の周縁部と前記補助部材の他方の側面とを突合せて第二突合せ部を形成する突合せ工程と、
回転する前記回転ツールを前記補助部材の表面のみから挿入するとともに、前記攪拌ピンのみを前記補助部材に接触させつつ、前記攪拌ピンの外周面を前記第一金属部材及び前記第二金属部材に僅かに接触させた状態で、前記第一突合せ部及び前記第二突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材と前記第二金属部材とを補助部材を介して接合する接合工程と、を含み、
前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、前記第一金属部材及び前記第二金属部材は前記補助部材よりも硬度が高く、
前記第一金属部材の周壁部の端面及び前記第二金属部材の裏面の周縁部は、外側に向けて傾斜する傾斜面を備え、前記補助部材は、両方の側面に表面側から裏面側に向けて先細りとなる傾斜面を備えることを特徴とする中空容器の製造方法。
【請求項3】
先細りの攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて中空容器を製造する製造方法であって、
底部と該底部の周縁部から立ち上がる周壁部を備えた凹部を有する第一金属部材と、板状の第二金属部材と、枠状の補助部材と、を準備する準備工程と、
前記第一金属部材の周壁部の端面と前記第二金属部材の裏面の周縁部とを向き合せて、前記端面と前記周縁部との隙間に前記補助部材を挟みこみ、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記補助部材の一方の側面とを突合せて第一突合せ部を形成し、前記第二金属部材の裏面の周縁部と前記補助部材の他方の側面とを突合せて第二突合せ部を形成する突合せ工程と、
回転する前記回転ツールを前記補助部材の表面のみから挿入するとともに、前記攪拌ピンのみを前記補助部材に接触させつつ、前記攪拌ピンの外周面を前記第一金属部材及び前記第二金属部材に僅かに接触させた状態で、前記第一突合せ部及び前記第二突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材と前記第二金属部材とを補助部材を介して接合する接合工程と、を含み、
前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、前記第一金属部材及び前記第二金属部材は前記補助部材よりも硬度が高く、
前記第一金属部材の周壁部の端面及び前記第二金属部材の裏面の周縁部のうち少なくとも一方は、外側に向けて傾斜する傾斜面を備え、前記補助部材は、少なくとも一方の側面に表面側から裏面側に向けて先細りとなる傾斜面を備えるとともに、裏面側に少なくとも一方の側面側に向けて広がる突起部を備えることを特徴とする中空容器の製造方法。
【請求項4】
先細りの攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて中空容器を製造する製造方法であって、
底部と該底部の周縁部から立ち上がる周壁部を備えた凹部を有する第一金属部材と、板状の第二金属部材と、枠状の補助部材と、を準備する準備工程と、
前記第一金属部材の周壁部の端面と前記第二金属部材の裏面の周縁部とを向き合せて、前記端面と前記周縁部との隙間に前記補助部材を挟みこみ、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記補助部材の一方の側面とを突合せて第一突合せ部を形成し、前記第二金属部材の裏面の周縁部と前記補助部材の他方の側面とを突合せて第二突合せ部を形成する突合せ工程と、
回転する前記回転ツールを前記補助部材の表面のみから挿入するとともに、前記攪拌ピンのみを前記補助部材に接触させつつ、前記攪拌ピンの外周面を前記第一金属部材及び前記第二金属部材に僅かに接触させた状態で、前記第一突合せ部及び前記第二突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材と前記第二金属部材とを補助部材を介して接合する接合工程と、を含み、
前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、前記第一金属部材及び前記第二金属部材は前記補助部材よりも硬度が高く、
前記第一金属部材の周壁部の端面及び前記第二金属部材の裏面の周縁部は、外側に向けて傾斜する傾斜面を備え、前記補助部材は、両方の側面に表面側から裏面側に向けて先細りとなる傾斜面を備えるとともに、裏面側に少なくとも一方の側面側に向けて広がる突起部を備えることを特徴とする中空容器の製造方法。
【請求項5】
前記接合工程では、前記回転ツールを前記第一金属部材及び前記第二金属部材の周りに一周させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の中空容器の製造方法。
【請求項6】
前記第一金属部材及び前記第二金属部材は鋳造材であり、前記補助部材は展伸材であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の中空容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、一対の板状の金属部材を回転ツールを用いて摩擦攪拌接合する発明が開示されている。当該発明では、一対の金属部材の間に金属部材よりも軟質の補助部材を介設し、当該補助部材に回転ツールを挿入して摩擦攪拌を行うというものである。硬度の高い金属部材同士を摩擦攪拌接合すると、回転ツールの損傷が激しく、工具コストが増加するという問題がある。しかし、当該発明によれば、軟質の補助部材に回転ツールを挿入して摩擦攪拌を行うため、硬度の高い金属部材同士を好適に接合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-83242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の接合方法では、回転ツールの攪拌ピンが円柱状を呈するため、補助部材への挿入が困難となるという問題があった。また、回転ツールのショルダ部を金属部材に接触させた状態で摩擦攪拌を行うため、摩擦攪拌装置に作用する負荷が大きくなるという問題があった。
【0005】
このような観点から、本発明は、硬度が高い金属部材同士を好適に接合することができる接合方法を用いた中空容器の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、先細りの攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて中空容器を製造する製造方法であって、底部と該底部の周縁部から立ち上がる周壁部を備えた凹部を有する第一金属部材と、板状の第二金属部材と、枠状の補助部材と、を準備する準備工程と、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記第二金属部材の裏面の周縁部とを向き合せて、前記端面と前記周縁部との隙間に前記補助部材を挟みこみ、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記補助部材の一方の側面とを突合せて第一突合せ部を形成し、前記第二金属部材の裏面の周縁部と前記補助部材の他方の側面とを突合せて第二突合せ部を形成する突合せ工程と、回転する前記回転ツールを前記補助部材の表面のみから挿入するとともに、前記攪拌ピンのみを前記補助部材に接触させつつ、前記攪拌ピンの外周面を前記第一金属部材及び前記第二金属部材に僅かに接触させた状態で、前記第一突合せ部及び前記第二突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材と前記第二金属部材とを補助部材を介して接合する接合工程と、を含み、前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、前記第一金属部材及び前記第二金属部材は前記補助部材よりも硬度が高く、前記第一金属部材の周壁部の端面及び前記第二金属部材の裏面の周縁部のうち少なくとも一方は、外側に向けて傾斜する傾斜面を備え、前記補助部材は、少なくとも一方の側面に表面側から裏面側に向けて先細りとなる傾斜面を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、先細りの攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて中空容器を製造する製造方法であって、底部と該底部の周縁部から立ち上がる周壁部を備えた凹部を有する第一金属部材と、板状の第二金属部材と、枠状の補助部材と、を準備する準備工程と、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記第二金属部材の裏面の周縁部とを向き合せて、前記端面と前記周縁部との隙間に前記補助部材を挟みこみ、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記補助部材の一方の側面とを突合せて第一突合せ部を形成し、前記第二金属部材の裏面の周縁部と前記補助部材の他方の側面とを突合せて第二突合せ部を形成する突合せ工程と、回転する前記回転ツールを前記補助部材の表面のみから挿入するとともに、前記攪拌ピンのみを前記補助部材に接触させつつ、前記攪拌ピンの外周面を前記第一金属部材及び前記第二金属部材に僅かに接触させた状態で、前記第一突合せ部及び前記第二突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材と前記第二金属部材とを補助部材を介して接合する接合工程と、を含み、前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、前記第一金属部材及び前記第二金属部材は前記補助部材よりも硬度が高く、前記第一金属部材の周壁部の端面及び前記第二金属部材の裏面の周縁部は、外側に向けて傾斜する傾斜面を備え、前記補助部材は、両方の側面に表面側から裏面側に向けて先細りとなる傾斜面を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、先細りの攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて中空容器を製造する製造方法であって、底部と該底部の周縁部から立ち上がる周壁部を備えた凹部を有する第一金属部材と、板状の第二金属部材と、枠状の補助部材と、を準備する準備工程と、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記第二金属部材の裏面の周縁部とを向き合せて、前記端面と前記周縁部との隙間に前記補助部材を挟みこみ、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記補助部材の一方の側面とを突合せて第一突合せ部を形成し、前記第二金属部材の裏面の周縁部と前記補助部材の他方の側面とを突合せて第二突合せ部を形成する突合せ工程と、回転する前記回転ツールを前記補助部材の表面のみから挿入するとともに、前記攪拌ピンのみを前記補助部材に接触させつつ、前記攪拌ピンの外周面を前記第一金属部材及び前記第二金属部材に僅かに接触させた状態で、前記第一突合せ部及び前記第二突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材と前記第二金属部材とを補助部材を介して接合する接合工程と、を含み、前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、前記第一金属部材及び前記第二金属部材は前記補助部材よりも硬度が高く、前記第一金属部材の周壁部の端面及び前記第二金属部材の裏面の周縁部のうち少なくとも一方は、外側に向けて傾斜する傾斜面を備え、前記補助部材は、少なくとも一方の側面に表面側から裏面側に向けて先細りとなる傾斜面を備えるとともに、裏面側に少なくとも一方の側面側に向けて広がる突起部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、先細りの攪拌ピンを備えた回転ツールを用いて中空容器を製造する製造方法であって、底部と該底部の周縁部から立ち上がる周壁部を備えた凹部を有する第一金属部材と、板状の第二金属部材と、枠状の補助部材と、を準備する準備工程と、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記第二金属部材の裏面の周縁部とを向き合せて、前記端面と前記周縁部との隙間に前記補助部材を挟みこみ、前記第一金属部材の周壁部の端面と前記補助部材の一方の側面とを突合せて第一突合せ部を形成し、前記第二金属部材の裏面の周縁部と前記補助部材の他方の側面とを突合せて第二突合せ部を形成する突合せ工程と、回転する前記回転ツールを前記補助部材の表面のみから挿入するとともに、前記攪拌ピンのみを前記補助部材に接触させつつ、前記攪拌ピンの外周面を前記第一金属部材及び前記第二金属部材に僅かに接触させた状態で、前記第一突合せ部及び前記第二突合せ部に沿って前記回転ツールを相対移動させて前記第一金属部材と前記第二金属部材とを補助部材を介して接合する接合工程と、を含み、前記第一金属部材、前記第二金属部材及び前記補助部材は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、前記第一金属部材及び前記第二金属部材は前記補助部材よりも硬度が高く、前記第一金属部材の周壁部の端面及び前記第二金属部材の裏面の周縁部は、外側に向けて傾斜する傾斜面を備え、前記補助部材は、両方の側面に表面側から裏面側に向けて先細りとなる傾斜面を備えるとともに、裏面側に少なくとも一方の側面側に向けて広がる突起部を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる中空容器の製造方法によれば、先細りの攪拌ピンを備えた回転ツールを用いるため、補助部材に容易に挿入することができる。また、攪拌ピンのみを補助部材に挿入するため、摩擦攪拌装置に作用する負荷を軽減することができる。また、第一金属部材及び第二金属部材よりも軟質の補助部材に回転ツールを挿入するため、回転ツールの寿命を長くすることができる。また、攪拌ピンと第一金属部材及び第二金属部材とを僅かに接触させることにより接合強度を高めることができる。
【0011】
また、前記補助部材の裏面側に少なくとも一方の側面側に向けて広がる突起部を設けた場合には、擦攪拌接合したときに補助部材の浮き上がりを防ぐことができる。これにより、第一金属部材及び第二金属部材に対する補助部材の位置ずれを防ぐことができるため、より好適に摩擦攪拌接合することができる。
【0012】
また、前記接合工程では、前記回転ツールを前記第一金属部材及び前記第二金属部材の周りに一周させることが望ましい。この構成では、中空容器の密閉性を高めることができる。
【0013】
また、前記第一金属部材及び前記第二金属部材は鋳造材であり、前記補助部材は展伸材である場合には、鋳造材同士を好適に接合することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る中空容器の製造方法によれば、硬度が高い金属部材同士を好適に接合して中空容器を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態に係る中空容器の製造方法の準備工程を示す斜視図である。
図2】第一実施形態に係る補助部材の加工前を示す斜視図である。
図3】第一実施形態に係る中空容器の製造方法の突合せ工程を示す断面図である。
図4】第一実施形態に係る中空容器の製造方法の接合工程を示す断面図である。
図5】第一実施形態に係る中空容器の製造方法の接合工程を示す斜視図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る中空容器の製造方法の突合せ工程を示す断面図である。
図7】本発明の第三実施形態に係る中空容器の製造方法の突合せ工程を示す断面図である。
図8】第三実施形態に係る中空容器の製造方法の接合工程を示す断面図である。
図9】本発明の第四実施形態に係る中空容器の製造方法の準備工程を示す斜視図である。
図10】第四実施形態に係る中空容器の製造方法の接合工程を示す断面図である。
図11】第四実施形態に係る中空容器の製造方法の接合工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。第一実施形態に係る中空容器の製造方法は、準備工程と、突合せ工程と、接合工程とを行う。図5に示すように、本実施形態では、第一金属部材1と第二金属部材20とを摩擦攪拌接合して中空容器300を製造する。
以下の説明における「外面」とは、「内面」の反対側の面を言う。また、以下の説明における「外周面」とは、「内周面」の反対側の面を言う。また、以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面を言う。
【0017】
図1に示すように、準備工程は、第一金属部材1、第二金属部材20及び補助部材30を用意する工程である。
第一金属部材1及び第二金属部材20は、四角形の金属部材である。第一金属部材1及び第二金属部材20は、摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いる。第一金属部材1及び第二金属部材20は、本実施形態では、JISH5302 ADC12(Al-Si-Cu系)等のアルミニウム合金鋳造材を用いている。
【0018】
第一金属部材1の内面1cの中央部には、四角形の底部1dと、底部1dの周縁部から立ち上がる角筒状の周壁部1eと、を備えた凹部1fが形成されている。
【0019】
第二金属部材20は、矩形板状を呈する。第二金属部材20の裏面20bの周縁部20dは、外周面20cに向かうにつれて板薄となるように傾斜している。周縁部20dの傾斜面は、全周に亘って形成されている。
【0020】
図3に示すように、第一金属部材1では、周壁部1eの端面1aが外周面1gに向かうにつれて第二金属部材20から離間する方向に傾斜している。つまり、第一金属部材1の端面1a及び第二金属部材20の周縁部20dは、内周面1hから外周面1gに向かうにつれて互いに離間するように傾斜している。周壁部1eの外周面1gに直交する仮想直交面に対して、端面1a及び周縁部20dの傾斜角度は同一になっている。
【0021】
図1に示すように、補助部材30は、第一金属部材1と第二金属部材20との間に介設される四角形の枠状の部材である。補助部材30は、第一金属部材1よりも硬度の低い金属で形成されている。補助部材30は、例えば、JIS A1050,A1100,A6063等のアルミニウム合金展伸材で形成されている。
【0022】
補助部材30は、図2に示すように、断面略台形を呈する押出材である長尺部材15から形成されている。長尺部材15において補助部材30(図3参照)の内周側となる面には、四つの切り欠き15aが長手方向に間隔を空けて形成されている。そして、各切り欠き15aにおいて長尺部材15を直角に折り曲げるとともに、長尺部材15の両端部を突き合わせることで、図1に示すように、四角形の枠状の補助部材30が形成されている。なお、枠状の補助部材30は、例えば、ダイキャストで形成してもよい。
【0023】
図3に示すように、補助部材30は、断面台形状の本体部31と、本体部31の内周面(裏面)30dから内側に突出した突起部32と、を備えている。
本体部31は、外周面(表面)30aと、側面30b,30cと、内周面30dを備えている。側面30b,30cは、外周面30aから離間するにつれて(内周面30dに向かうにつれて)互いに近接する傾斜面になっている。つまり、補助部材30の側面30b,30cは、外周面30a側から内周面30d側に向けて先細りとなる傾斜面になっている。側面30b,30cの傾斜角度は、それぞれ対向する端面1a、周縁部20dの傾斜角度と同一になっている。
突起部32は、本体部31の内周面(裏面)30dよりも幅広となる断面矩形状を呈する。突起部32は、補助部材30の周方向に一定の形状で形成されている。
【0024】
突合せ工程は、図3に示すように、第一金属部材1、第二金属部材20及び補助部材30を突き合わせる工程である。突合せ工程では、第一金属部材1の端面1aと、第二金属部材20の周縁部20dとを向き合せて配置する。さらに、端面1a、周縁部20d同士の隙間に補助部材30を挟み込む。
第一金属部材1の端面1aと、補助部材30の側面30bとが概ね面接触するように突き合わされて突合せ部J11が形成される。第二金属部材20の周縁部20dと、補助部材30の側面30cとが概ね面接触するように突き合わされて突合せ部J12が形成される。補助部材30の外周面(表面)30aは、第一金属部材1の外周面1g及び第二金属部材20の外周面20cと面一になる。補助部材30の内周面30dは、第一金属部材1の内周面1hと面一になる。また、突起部32は、第一金属部材1の内周面1hに係止される。
【0025】
ここで、図4に示すように回転ツールFは、基部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。回転ツールFは、例えば、工具鋼で形成されている。基部F1は、摩擦攪拌装置の回転軸に接続される部位である。攪拌ピンF2は、基部F1から垂下し、先細りとなっている。攪拌ピンF2の先端には、回転中心軸に対して垂直な平坦面F3が形成されている。平坦面F3は、補助部材30の内周面30dよりもやや大きな寸法で形成されている。
【0026】
攪拌ピンF2の外周面のテーパー角度は、第一金属部材1の端面1a及び第二金属部材20の周縁部20dの各傾斜角度と同一になっている。つまり、攪拌ピンF2を側面から見た断面形状は、補助部材30の本体部31の断面形状と概ね同一になっている。
【0027】
攪拌ピンF2の外周面には、螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、回転ツールFを右回転させるため、基端側から先端側に向かうにつれて螺旋溝が左回りで形成されている。なお、回転ツールFを左回転させる場合は、基端側から先端側に向かうにつれて螺旋溝が右回りで形成されている。このようにすると、塑性流動化した金属が螺旋溝に導かれて先端側に移動するため、バリの発生を抑制することができる。回転ツールFは、例えば、先端に回転駆動手段を備えたアームロボットに取り付けて使用することができる。
【0028】
接合工程は、図4に示すように、回転ツールFを用いて第一金属部材1と第二金属部材20とを摩擦攪拌接合する工程である。接合工程では、右回転させた回転ツールFの攪拌ピンF2を補助部材30の外周面(表面)30aの幅方向中央に挿入する。
接合工程では、攪拌ピンF2の外周面を第一金属部材1の端面1a及び第二金属部材20の周縁部20dに接触させなくてもよいが、本実施形態では攪拌ピンF2の外周面を端面1a及び周縁部20dに僅かに接触させた状態で、補助部材30に沿って相対移動させる。攪拌ピンF2の外周面と、端面1a及び周縁部20dとの接触代は、例えば、1.0mm未満で適宜設定すればよい。
【0029】
接合工程では、攪拌ピンF2のみを第一金属部材1、第二金属部材20及び補助部材30に接触させ、攪拌ピンF2の基端側は、第一金属部材1及び第二金属部材20から露出した状態で摩擦攪拌を行う。攪拌ピンF2の平坦面F3は、第一金属部材1の内周面1hから突出しない範囲で深い位置まで挿入する。
【0030】
図5に示すように、回転ツールFを補助部材30に沿って相対移動させ、回転ツールFを第一金属部材1の周壁部1e及び第二金属部材20の外周面20cを一周させ、始端と終端とをオーバーラップさせる。終了位置に達したら回転ツールFを補助部材30から離脱させる。以上により、突合せ部J11,J12が一つの工程で同時に摩擦攪拌接合される。回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域Wが形成される。
第一金属部材1の周壁部1eと第二金属部材20とを摩擦攪拌接合することで、凹部1fによって形成された内部空間を有する中空容器300が形成される。
【0031】
以上説明した本実施形態に係る中空容器300の製造方法によれば、図4に示すように、先細りの攪拌ピンF2を備えた回転ツールFを用いるため、補助部材30の外周面(表面)30aに容易に挿入することができる。また、攪拌ピンF2のみを補助部材30に挿入し、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で摩擦攪拌するため、摩擦攪拌装置に作用する負荷を軽減することができる。
【0032】
また、第一金属部材1及び第二金属部材20よりも軟質の補助部材30に回転ツールFを挿入するため、回転ツールFの寿命を長くすることができる。また、攪拌ピンF2と第一金属部材1及び第二金属部材20を僅かに接触させるに留めるため、第一金属部材1及び第二金属部材20の硬質の金属が補助部材30側に多く混入するのを防ぐことができるため、より接合強度を高めることができる。
【0033】
また、第一金属部材1の端面1aと第二金属部材20の周縁部20dに傾斜面を設けているため、攪拌ピンF2と第一金属部材1及び第二金属部材20とが大きく接触するのを防ぐことができる。また、本実施形態では、攪拌ピンF2のテーパー角度と、端面1a及び周縁部20dの傾斜角度とを同一(概ね平行)にしているため、高さ方向に亘ってバランス良く摩擦攪拌することができる。
【0034】
また、摩擦攪拌接合の接合長が長くなると、それに伴って補助部材30も長く形成する。このような場合に摩擦攪拌接合を行うと、補助部材30が浮き上がってしまうという問題がある。しかし、本実施形態によれば、補助部材30に突起部32を設けているため、突起部32が周壁部1eの内周面1hに係止され補助部材30の浮き上がりを防ぐことができる。これにより、第一金属部材1及び第二金属部材20に対する補助部材30の位置ずれを防ぐことができるため、より好適に摩擦攪拌接合することができる。
【0035】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る中空容器の製造方法について説明する。図6は、本発明の第二実施形態に係る中空容器の製造方法の突合せ工程を示す断面図である。
第二実施形態に係る中空容器の製造方法は、準備工程と、突合せ工程と、接合工程とを行う。第二実施形態では、補助部材30Aの形状が第一実施形態と主に相違する。本実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0036】
図6に示すように、第一金属部材1及び第二金属部材20は第一実施形態と同一である。補助部材30Aは、断面台形状の本体部31からなる。つまり、第二実施形態の補助部材30Aは、第一実施形態の補助部材30(図3参照)の突起部32がない構成である。
【0037】
突合せ工程では、第一実施形態と同様に、第一金属部材1及び第二金属部材20を補助部材30Aの両側から突き合わせる。第一金属部材1の端面1aと、補助部材30の側面30bとが突き合わされて突合せ部J11が形成される。第二金属部材20の周縁部20dと、補助部材30の側面30cとが突き合わされて突合せ部J12が形成される。
接合工程では、第一実施形態と同様に、回転ツールFを用いて突合せ部J11,J12に対して摩擦攪拌接合を行う。
【0038】
以上説明した第二実施形態によっても第一実施形態と略同等の効果を奏することができる。また、第二実施形態の補助部材30Aは、断面台形状であるため、補助部材30Aを押出成形によって製造し易い。
【0039】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る中空容器の製造方法について説明する。図7は、本発明の第三実施形態に係る中空容器の製造方法の突合せ工程を示す断面図である。図8は、本発明の第三実施形態に係る中空容器の製造方法の接合工程を示す断面図である。
第三実施形態に係る中空容器の製造方法では、準備工程と、突合せ工程と、接合工程とを行う。第三実施形態では、補助部材30Bの形状が第一実施形態と主に相違する。本実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0040】
準備工程では、第一金属部材1と、第二金属部材20Bと、補助部材30Bとを用意する。第一金属部材1は第一実施形態と概ね同一である。第二金属部材20Bは、裏面20bの周縁部20dに傾斜面を設けていない。
【0041】
第三実施形態の補助部材30Bは、断面台形状の本体部31Bと、本体部31Bの内周面30dから突出する突起部32とを備えている。
本体部31Bは、外周面(表面)30aと、側面30b,30cと、内周面(裏面)30dを備えている。側面30cは、外周面30aに対して垂直になっている。側面30bは、外周面30aから離間するにつれて先細りとなるように傾斜している。側面30cの傾斜角度は、第一金属部材1の端面1aの傾斜角度と同一である。突起部32は、第一実施形態と概ね同一である。
【0042】
突合せ工程では、第一金属部材1と、第二金属部材20Bと、補助部材30Bとを突き合わせる。第一金属部材1Bの端面1aと、補助部材30Bの側面30bとが突き合わされて突合せ部J11が形成される。第二金属部材20Bの周縁部20dと、補助部材30Bの側面30cとが突き合わされて突合せ部J12が形成される。補助部材30の外周面(表面)30aは、第一金属部材1の外周面1g及び第二金属部材20Bの外周面20cとそれぞれ面一になる。補助部材30Bの内周面(裏面)30dは、第一金属部材1の内周面1hと面一になる。
【0043】
接合工程では、図8に示すように、回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う。第三実施形態では、回転ツールFの攪拌ピンF2のみを補助部材30Bに挿入し、攪拌ピンF2の基端側を露出させた状態で補助部材30Bに沿って相対移動させて突合せ部J11,J12に対して摩擦攪拌接合を行う。
また、第三実施形態では、攪拌ピンF2の回転中心軸Zを第一金属部材1の底部1d側に傾斜させつつ、攪拌ピンF2の外周面を、第一金属部材1の端面1aと、第二金属部材20Bの周縁部20dとに僅かに接触させた状態で摩擦攪拌を行う。
なお、回転ツールFの傾斜角度は、適宜設定すればよいが、攪拌ピンF2の外周面と第一金属部材1の端面1aとが平行となるとともに、攪拌ピンF2の外周面と第二金属部材20Bの周縁部20dとが平行となるように設定することが好ましい。
【0044】
以上説明した第三実施形態に係る中空容器の製造方法によっても、第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。また、第三実施形態では、第二金属部材20Bの周縁部20dを傾斜面とする必要がないため、作業手間を省くことができる。なお、突起部32は省略してもよい。
【0045】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る中空容器の製造方法について説明する。図9は、本発明の第四実施形態に係る中空容器の製造方法の準備工程を示す斜視図である。図10は、第四実施形態に係る中空容器の製造方法の突合せ工程を示す断面図である。図11は、第四実施形態に係る中空容器の製造方法の突合せ工程を示す斜視図である。
第四実施形態に係る中空容器の製造方法では、準備工程と、突合せ工程と、接合工程とを行う。第四実施形態では、第一金属部材1C、第二金属部材20C及び補助部材30Cの形状が第一実施形態と主に相違する。本実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0046】
図9に示すように、第四実施形態の第一金属部材1Cの内面1cの中央部には、円形の底部1dと、底部1dの周縁部から立ち上がる円筒状の周壁部1eと、を備えた凹部1fが形成されている。
第四実施形態の第二金属部材20Cは、円板状を呈する。第二金属部材20Cの裏面20bの周縁部20dは、外周面20cに向かうにつれて板薄となるように傾斜している。周縁部20dの傾斜面は全周に亘って形成されている。
第四実施形態の補助部材30Cは、第一金属部材1Cと第二金属部材20Cとの間に介設される円形の枠状の部材である。補助部材30Cは、内側に向けて先細りとなる断面台形状を呈する。
【0047】
突合せ工程では、図10に示すように、第一金属部材1Cの端面1aと第二金属部材20Cの周縁部20dとの間に補助部材30Cを挟み込むことで、突合せ部J11,J12が形成される。突合せ部J11は、第一金属部材1Cの端面1aと、補助部材30Cの側面30bが突き合わされる部位である。突合せ部J12は、第二金属部材20Cの周縁部20dと、補助部材30Cの側面30cが突き合わされる部位である。
【0048】
接合工程では、図10に示すように、第一実施形態と概ね同じ要領で攪拌ピンF2のみを第一金属部材1C、第二金属部材20C及び補助部材30Cに接触させ、攪拌ピンF2の基端側は、第一金属部材1C及び第二金属部材20Cから露出した状態で摩擦攪拌を行う。そして、図11に示すように、回転ツールFを補助部材30Cに沿って相対移動させ、回転ツールFを第一金属部材1C及び第二金属部材20Cの周りで一周させる。回転ツールFの移動軌跡には塑性化領域Wが形成される。
【0049】
第一金属部材1Cの周壁部1eと第二金属部材20Cの周縁部20dとを摩擦攪拌接合することで、凹部1fによって形成された内部空間を有する円柱状の中空容器400が形成される。
【0050】
以上説明した第四実施形態に係る中空容器の製造方法によっても、第一実施形態と略同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 第一金属部材
1B 第一金属部材(第三実施形態)
1C 第一金属部材(第四実施形態)
1a 端面(傾斜面)
20 第二金属部材
20b 裏面
20d 周縁部
30 補助部材
30A 補助部材(第二実施形態)
30B 補助部材(第三実施形態)
30C 補助部材(第四実施形態)
32 突起部
J11 突合せ部
J12 突合せ部
F 回転ツール
F2 攪拌ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11