(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20221025BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20221025BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20221025BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
A01B69/00 301
A01C11/02 331D
G05D1/02 N
(21)【出願番号】P 2019219331
(22)【出願日】2019-12-04
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 修平
(72)【発明者】
【氏名】三宅 浩喜
(72)【発明者】
【氏名】野村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太
(72)【発明者】
【氏名】飛田 秀平
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳則
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-148533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0185138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01C 11/02
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降自在に連結された作業装置を備える走行車体と、
前記走行車体が備える走行装置に動力源からの動力を伝達する動力伝達装置と、
自車両の位置を測位する測位装置と、
前記走行装置を操舵する操舵装置と、
自車両の移動先となる目標地点の登録を受け付ける目標地点登録部を有するとともに、前記操舵装置および前記作業装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
オペレータによるマニュアル操作により前記走行車体を走行させる手動走行モードおよび前記動力伝達装置および前記操舵装置を制御して前記走行車体を走行させる自動走行モードのいずれかを選択可能であり、
前記作業装置が上昇しており、かつ非作業状態であることを条件に、前記目標地点登録部に登録された目標地点まで前記走行車体を前記自動走行モードで走行させ
、
前記動力伝達装置は、
低速から高速まで変速可能な複数の変速段に切替可能な変速装置を備え、
前記制御装置は、
前記変速装置が、路上走行に適する高速段に切り替えられていること条件に、前記自動走行モードを選択する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記目標地点が圃場外であることを条件に、当該目標地点の前記目標地点登録部への登録を許可し、
前記目標地点登録部は、複数の目標地点を登録可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記作業装置が上昇しており、かつ非作業状態であるとともに、前記変速装置が高速段に切り替えられていることを条件として、前記自動走行モードで前記走行車体の走行を開始させる
ことを特徴とする請求項
1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
圃場を含む所定のエリアの地図情報に、前記測位装置から取得した自車両の位置情報が重畳表示されるとともに、所望する目標地点を入力可能な入力表示装置と、
前記入力表示装置に入力された前記目標地点に向けて前記走行車体を走行させるスタートスイッチと、
を備え、
前記制御装置は、
前記スタートスイッチがオンになると前記目標地点に向けて前記走行車体を前記自動走行モードで走行させ、前記目標地点に到達すると当該走行車体を停止する
ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記入力表示装置に表示される前記地図情報中に、走行禁止区域を設定可能である
ことを特徴とする請求項
4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記入力表示装置は、前記自動走行モードで走行可能な走行経路と、複数の経路同士が交わる交差点とを表示可能であって、
前記交差点は、一般車両が進入する可能性のある第1の交差点と、一般車両は進入しない第2の交差点とに区別して表示される
ことを特徴とする請求項
4または
5に記載の作業車両。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記走行車体を前記自動走行モードで走行させている場合、前記交差点の手前では徐行させる
ことを特徴とする請求項
6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記制御装置は、
少なくとも前記第1の交差点の手前では前記走行車体を一旦停止させ、その後、前記交差点へ進入させる
ことを特徴とする請求項
7に記載の作業車両。
【請求項9】
前記走行車体の周囲の状況を検知するセンサを備え、
前記センサは、
前記自動走行モードが選択されている場合に起動し、
前記制御装置は、
前記センサが検知した物体が所定の障害物であると認識した場合、前記走行車体を停止させるとともに、前記障害物が認識されなくなると自動走行を再開する
ことを特徴とする請求項1から
8のいずれか一項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測位装置と、操舵装置を制御する制御装置とを備え、設定された経路に沿って圃場内を自動走行する作業車両が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術に係る自動走行は、あくまでも圃場内作業のアシスト機能に過ぎず、圃場外では機能しない。そのため、たとえば複数の圃場にまたが作業を行う場合、圃場間を移動する場合は、手動により走行するしかなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、圃場間の移動であっても安全に自動走行可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の作業車両(1)は、昇降自在に連結された作業装置(60)を備える走行車体(2)と、前記走行車体(2)が備える走行装置(5,6)に動力源(4)からの動力を伝達する動力伝達装置(7)と、自車両の位置を測位する測位装置(310)と、前記走行装置(5,6)を操舵する操舵装置(51)と、自車両の移動先となる目標地点の登録を受け付ける目標地点登録部(44)を有するとともに、前記操舵装置(51)および前記作業装置(60)を制御する制御装置(40)と、を備え、前記制御装置(40)は、オペレータによるマニュアル操作により前記走行車体(2)を走行させる手動走行モードおよび前記動力伝達装置(7)および前記操舵装置(51)を制御して前記走行車体(2)を走行させる自動走行モードのいずれかを選択可能であり、前記作業装置(60)が上昇しており、かつ非作業状態であることを条件に、前記目標地点登録部(44)に登録された目標地点まで前記走行車体(2)を前記自動走行モードで走行させ、前記動力伝達装置(7)は、低速から高速まで変速可能な複数の変速段に切替可能な変速装置(52)を備え、前記制御装置(40)は、前記変速装置(52)が、路上走行に適する高速段に切り替えられていること条件に、前記自動走行モードを選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の一態様に係る作業車両によれば、圃場間の移動であっても安全に自動走行することができるとともに、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る作業車両である苗移植機の側面図である。
【
図2】
図2は、圃場および農道の位置を示す地図情報の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、同上の苗移植機の制御装置を中心とするブロック図である。
【
図4】
図4は、同上の苗移植機の自動走行モード時における走行制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、同上の苗移植機が備える入力表示装置に表示される地図情報の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、同上の入力表示装置に表示される農道となる経路の種類を示す説明図である。
【
図7】
図7は、同上の入力表示装置に表示される地図情報の一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、同上の入力表示装置に表示される地図情報の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本願の開示する作業車両の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、
図1を参照して実施形態に係る作業車両である苗移植機1の全体構成について説明する。
図1は、苗移植機1の側面図である。
【0011】
なお、以下において、苗移植機1の前後方向とは、苗移植機1の直進方向を指す。そして、苗移植機1の前進方向とは、苗移植機1の直進方向において、操縦席80からステアリングホイール81へ向かう方向へ進むことであり、その反対を後進(後退)方向とする。また、苗移植機1の前後は、前進方向を基準とする。
【0012】
また、左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。ここでは、前後方向の「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、オペレータが操縦席に着いて前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。さらに、上下方向とは、前後方向および左右方向に対して直交する方向である。したがって、前後方向、左右方向および上下方向は、互いに3次元で直交する。
【0013】
走行しながら圃場に苗移植作業を行うことができる本実施形態における苗移植機1は、操縦者(オペレータまたは作業者ともいう)が搭乗するマニュアル操作により、圃場内を走行しながら作業を実行することができる他、後述する制御装置40(
図3参照)を中心とする制御系による各部の制御により、圃場内を自動走行しながら所定の作業を実行することができる。
【0014】
そして、本実施形態に係る苗移植機1は、さらに、所定の条件を満たせば、圃場外であっても、自動走行により所望する目標地点まで移動することが可能となっている。
【0015】
すなわち、本実施形態に係る苗移植機1は、作業者がマニュアル操作で走行する「手動走行モード」と、後述する動力伝達装置7および操舵装置51を制御して走行させる「自動走行モード」とのいずれかを選択して走行することができる。
【0016】
図1に示すように、苗移植機1は、走行車体2と、作業装置60とを備える。走行車体2は、車体フレーム3と、エンジン4と、走行装置である前輪5および後輪6と、動力伝達装置7と、操縦部8とを備える。車体フレーム3は、走行車体2のメインフレームである。
【0017】
前輪5は、左右一対であり、前車軸に回転自在に連結されて主に操舵用の車輪(操舵輪)となる。後輪6は、左右一対であり、後車軸に回転自在に連結されて主に駆動用の車輪(駆動輪)となる。なお、苗移植機1としては、後輪6が駆動する二輪駆動(2WD)と、前輪5および後輪6が共に駆動する四輪駆動(4WD)とを切り替え可能に構成されたものもある。この場合、駆動輪は、前輪5および後輪6の両方である。なお、走行車体2の走行装置としては、車輪(前輪5および後輪6)に代えてクローラ装置を備えていてもよい。この場合、走行クローラが駆動輪である。
【0018】
動力伝達装置7は、ミッションケース10を含んで構成される。ミッションケース10は、動力源となるエンジン4から伝達される動力(回転動力)を適宜減速して駆動輪(ここでは後輪6)や、後述するPTO(Power Take-off)軸11へ伝達するトランスミッション(変速装置52)を収容している。
【0019】
操縦部8は、走行車体2の上部に設けられ、操縦席80やステアリングホイール81などを備える。本実施形態に係る苗移植機1の操縦部8は、走行車体2に立設されたサンバイザ9によって覆われている。かかるサンバイザ9の縦フレーム90の基端部は、機体前部に設けられたバンパ71から立設されている。したがって、従来のような図示しない補助苗枠のステーとメインフレームとの間に挟持された構成と比べ、様々な機種に対しても設置することが可能になるなど、利用幅を広げることができる。また、従来のような特殊なステーを設ける必要もなく、コストダウンを図ることができるとともに、操縦部8への乗降の邪魔になることがない。
【0020】
ところで、苗移植機1としては、サンバイザ9を備えない構成であっても構わない。また、サンバイザ9に代えてキャビンを設け、このキャビン内部に操縦部8を設けた構成であってもよい。
【0021】
また、サンバイザ9は、片持ち支持の構造で扱いやすく、なおかつバイザ部分の回動支点91がオペレータの顔位置と必要以上に接近していないため、軋み音などが聞こえにくく、操縦部8の居住性を損なうことがない。
【0022】
操縦席80は、後部を回動中心として上下方向に回動(開閉)可能に設けられたボンネット82の上に設けられている。かかるボンネット82は、閉じた状態では車体フレーム3上に搭載されたエンジン4を覆っている。エンジン4は、苗移植機1の駆動源であり、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。
【0023】
操縦席80は、操縦者(オペレータ)の座席である。ステアリングホイール81は、操縦者により操作されることで、操舵輪である前輪5を操舵することができる。また、ステアリングホイール81の前方に、各種情報を表示することができる表示パネルが設けられる。この表示パネルは、圃場を含む所定のエリアの地図情報に、後述する測位装置310(
図3参照)から取得した自車両の位置情報が重畳表示されるとともに、所望する目標地点を入力可能な入力表示装置56として機能する。すなわち、入力表示装置56は、農地に特化したナビゲーションシステムとして機能するデバイスの一例である。
【0024】
また、操縦部8は、ブレーキペダル、アクセルペダル、クラッチペダル、停車ペダルなどの各種操作ペダル83や、前後進レバー、アクセルレバー、主変速レバー、副変速レバーなどの各種操作レバー84を備える。たとえば、ブレーキペダルが操縦者により踏み込まれると、制動装置53(
図3参照)が作動して、前輪5および後輪6の回転を停止する。このブレーキペダルは、後述する自動運転モードにおいても制御装置40の制御により作動する。すなわち、制御装置40は、所定の条件を検出すると制動装置53を制御して前輪5および後輪6の回転を停止する。
【0025】
走行車体2の後部には、圃場内で作業を行う作業装置60が昇降自在に連結され、作業装置60を駆動する動力を伝達するPTO軸(不図示)がミッションケース10に連動連結されている。PTO軸は、トランスミッションによって適宜減速された回転動力を、走行車体2の後部に装着された作業装置60へ伝達する。本実施形態における作業装置60は、対地作業装置の一例である苗移植装置600であり、植付装置62によって圃場に苗を植え付けることができる。
【0026】
また、走行車体2の後部には、苗移植装置600を昇降させる昇降装置61が設けられる。昇降装置61は、作業装置60を上昇させることで、作業装置60が非作業状態となる位置まで移動させることができる。また、昇降装置61は、作業装置60を下降させることで、作業装置60を対地作業(苗移植作業)位置に移動させる。昇降装置61は、油圧式の昇降シリンダ63を備えている。
【0027】
また、苗移植機1は、作業装置60の一つとして、苗移植装置600と操縦席80との間に施肥装置70が設けられている。符号73は肥料を収納するホッパを示し、符号72は肥料をホッパ73から圃場へ供給するためのブロワ装置を示す。
【0028】
さらに、苗移植機1は、自車位置を測定し、自車位置情報を取得可能な測位装置310(
図3参照)を備えている。測位装置310は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、
図1に示すように、走行車体2のサンバイザ9の前部に、アンテナなどを備える受信機320が設けられている。
【0029】
この受信機320のアンテナが、上空を周回している航法衛星300から電波を受信して自車位置情報を取得し、制御装置40と協働して測位および計時を行う。また、制御装置40は、取得した自車位置情報に基づいて、後述する自動走行モードにおいては走行車体2を自動走行させる処理を実行することができる。
【0030】
前述したように、本実施形態に係る苗移植機1は、オペレータがマニュアル操作で走行する「手動走行モード」と、制御装置40により動力伝達装置7および操舵装置51を制御して走行させる「自動走行モード」とのいずれかを選択可能である。
【0031】
本実施形態では、操縦部8に設けられた入力表示装置56に設けられたスイッチを操作して、「手動走行モード」と「自動走行モード」とのいずれかを選択可能としている。たとえば、自動走行モードを選択して走行車体2を走行させるスタートスイッチが操作されると「自動走行モード」が選択され、所望する目標地点が圃場外であっても、その目標地点まで自動走行して移動することが可能となっている。
【0032】
すなわち、苗移植機1は、作業装置60が上昇しており、かつ非作業状態であることを条件に、
図2に示すように、所定の目標地点まで自動走行モードで走行させることができる。
図2は、圃場および農道の位置を示す地図情報の一例を示す説明図である。なお、
図2に示す地図情報における位置関係は、上側を北、下側を南、右側を東、左側を西とする方位を基準とする。
【0033】
図2に示す地図情報は、入力表示装置56に画像表示されるもので、図示するように、所定の縮尺によって、複数の圃場が一定のエリア内に農道と共に表示されている。ここでは、複数の圃場を、便宜上、第1圃場101、第2圃場102および第3圃場103としており、第1圃場101には第1出入口201が、第2圃場102には第2出入口202が、第3圃場103には第3出入口203が設けられている。
【0034】
また、農道としては、南北に走る第1農道401および第2農道402と、東西に走る第3農道403と、第2農道402と第3農道403との交差点である第1交差点501から北東へ走る第4農道404とがある。なお、南北に走る第1農道401と東西に走る第3農道403とは、第2交差点502において交差している。また、
図2の地図情報に示されているように、第1交差点501から第2農道402に沿って北側に向かう中途には、苗移植機1などが格納される納屋301が存在している。
【0035】
図2に示された苗移植機1の走行経路601は、自動走行モードによって納屋301から目標地点である第2圃場102まで移動する経路を示している。すなわち、納屋301から苗移植機1に搭乗して第2農道402に移動したオペレータが、その地点において、入力表示装置56を用いて目標地点として第2圃場102を入力したとする。
【0036】
制御装置40は、目標地点が入力されたとき、作業装置60が上昇しており、かつ非作業状態であって、さらに各種操作レバー84のうち、副変速レバーの位置が、路上走行に適した高速段が選択されていることを条件として、自動走行モードに切替え、走行経路601に沿って第2圃場102の第2出入口202の直近位置まで自動走行する。
【0037】
ところで、副変速レバーは、動力伝達装置7に含まれるミッションケース10に収納されたトランスミッションに含まれる副変速装置の一部を構成し、副変速装置において噛合するギヤの組合せを変更する操作を行うレバーである。副変速装置は、噛合するギヤの組合せにより、低速から高速まで変速可能な複数の変速段に切替えることができる。
【0038】
ところで、目標地点の登録は、制御装置40が備える目標地点登録部として機能する登録部44(
図3参照)により受付けられ、設定される。すなわち、登録部44は、自車両の移動先となる目標地点(たとえば第2圃場102など)の登録を受け付ける。
【0039】
このとき、制御装置40は、目標地点が圃場外であることを条件に、当該目標地点の登録を許可するようにしている。すなわち、作業装置60が作業することのない、農道などの圃場外である地点が目標地点とされることを条件に目標地点の登録は許可される。
【0040】
ここで、
図3を参照して制御装置40を中心とする苗移植機1の制御系について説明する。
図3は、苗移植機1の制御装置40を中心とするブロック図である。本実施形態における制御装置40は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、CPU(Central Processing Unit)などを有し、エンジンECU(Electronic Control Unit)41、走行系ECU42、作業機系ECU43などの処理部をはじめ、登録部44および記憶部45を備える。
【0041】
エンジンECU41は、エンジン4の回転数などを制御する。走行系ECU42は、操舵装置51、変速装置52、制動装置53を制御することで、走行車体2(
図1参照)の走行全般を制御する。作業機系ECU43は、昇降装置61を制御して作業装置60の昇降制御を行う他、PTOクラッチ55を入り切りするソレノイドバルブ54を制御して、作業装置60の駆動全般を制御する。
【0042】
登録部44は、受付部、設定部および表示部を有し、受付部によって自車両の移動先となる目標地点の登録が受け付けられる。ここでは、複数の登録地点を受け付け可能としている。そして、受付部で受け付けられた目標地点は、設定部により登録設定される。ただし、登録設定されるのは、いずれの目標地点も圃場外であることが条件となる。そして、登録設定された目標地点が、表示部によって操縦部8に設けられた入力表示装置56の表示パネル上の地図情報内に表示される。なお、登録部44は、記憶部45に格納された地図情報に基づいて、目標地点に至るまでの走行経路601(
図2参照)を生成することができ、目標地点はかかる走行経路601とともに表示される。
【0043】
また、たとえば、登録部44に第1~第3の目標地点が登録された時点で、制御装置40は、現在地から第1の目標地点までの走行経路、第1の目標地点から第2の目標地点までの走行経路、そして、第2の目標地点から第3の目標地点までの走行経路をそれぞれ生成を生成しておくこともできる。
【0044】
記憶部45は、地図情報と、測位装置310から入力される自車位置情報などの位置情報と、オペレータによるマニュアル操作により走行車体2を走行させる手動走行モードや走行経路に沿って走行車体2を走行させる自動走行モードが登録された走行モードテーブルと、登録部44により生成された、登録された目標地点までの走行経路が記憶される。また、記憶部45には、自動走行モードを実行するための自動運転プログラムをはじめとする各種プログラムや、その他、走行制御および作業装置60の動作制御に必要な各種データ類が記憶される。
【0045】
図3に示すように、制御装置40には、前輪5の回転数を検出する前輪センサ210、後輪6の回転数を検出する後輪センサ220、エンジン4の回転数を検知するエンジン回転センサ230が接続される。
【0046】
さらに、制御装置40には、車速センサ240、切れ角センサ250、PTOセンサ260、リフトアームセンサ270、前方センサ280、後方センサ281、側方センサ282の他、各種センサ290が接続される。
【0047】
車速センサ240は、機体の走行速度(車速)を算出するためのもので、ここでは、前輪センサ210および後輪センサ220の検出結果から車速の実測値を算出するようにしている。切れ角センサ250は、操舵輪である前輪5の切れ角を検知する。すなわち、切れ角センサ250は走行車体の旋回状態を検知することができる。また、PTOセンサ260は、PTO軸の回転を検出することができる。
【0048】
こうして、制御装置40には、測位装置310から走行車体2の位置情報、エンジン回転センサ230からエンジン4の回転数、車速センサ240から走行車体2の走行速度、切れ角センサ250から前輪5の切れ角がそれぞれ入力される。
【0049】
制御装置40は、苗移植機1を自動走行モードでさせる場合、切れ角センサ250の検知結果を用いて、前輪5の切れ角をフィードバックしながら、ステアリングホイール81に連結されたステアリングシリンダを制御することで、ステアリングホイール81を自動操舵する。ステアリングホイール81やステアリングシリンダなどは操舵装置51を構成する。すなわち、「自動走行モード」が選択された場合、制御装置40は、作業装置60が上昇して非作業状態にあり、副変速レバーが高速段に位置している場合、登録された目標地点までの走行経路601(
図2参照)を導出し、この走行経路601に沿って走行するように、エンジン4、操舵装置51、変速装置52、制動装置53および昇降装置61(
図1参照)などの各部を制御する。なお、現在地点と目標地点とを結ぶ経路が複数ある場合、本実施形態では、現在地点と目標地点とを最短距離で結ぶ経路を優先する走行経路601に設定するようにしているが、農道幅や障害物の有無などを基準にして走行経路601を設定することもできる。
【0050】
また、前方センサ280、後方センサ281、および側方センサ282は、走行車体2の周囲の状況を検知する障害物センサとして機能し、ここでは、自動走行モードが選択されている場合に起動するようにしているが、常時起動していても構わない。
【0051】
図1に示すように、前方センサ280および側方センサ282は、たとえば、走行車体2の前部のバンパ71に取り付けられ、後方センサ281は、操縦席80の後部に取付けられる。なお、各センサ281~283の取付位置は、何ら限定されることはなく、適宜設定することができる。
【0052】
かかる前方センサ280、後方センサ281、および側方センサ282により、制御装置40は、走行車体2の前方、側方および後方に存在する物体(障害物)を認識することができる。特に、圃場マーカ(不図示)を張り出した状態で走行していた場合、畦などが検知されると、制御装置40は、圃場マーカを即座に格納することにより、マーカが畔などに衝突することを未然に防止することができる。なお、誤動作を防止するために、障害物センサの起動は、たとえば植付装置62(
図1参照)の植付クラッチが「入り」になっており、かつ圃場マーカが張り出されている場合のみに限定することもできる。
【0053】
ところで、本実施形態における前方センサ280、後方センサ281、および側方センサ282は、超音波センサで構成され、障害物からの反射波を検知する。すなわち、超音波を放射した後、障害物からの反射波を検知するまでの時間を測定することで、障害物までの距離を検知することができる。なお、障害物センサとしては、超音波センサにかえて赤外線センサを用いたり、カメラなどのイメージセンサを用いることもできる。
【0054】
また、リフトアームセンサ270は、走行車体2と作業装置60とを連結するアームの昇降状態を検出する。
【0055】
また、制御装置40には、エンジンECU41がエンジン4に接続されるが、走行系ECU42が、操舵装置51、変速装置52および制動装置53に接続され、作業機系ECU43が作業装置60への動力伝達を入り切りするPTOクラッチ55を駆動するソレノイドバルブ54に接続される。また、省略されているが、作業機系ECU43は、作業装置60を昇降させる昇降装置にも接続している。
【0056】
上述してきた構成において、前述したように、作業装置60が上昇して非作業状態であって、副変速レバーが高速位置にあるときに、たとえばオペレータにより、入力表示装置56を介して圃場外の走行を伴う目標地点が入力されると、自動走行モードに切り替え、目標地点まで自動走行して移動する。
【0057】
図4は、苗移植機1の自動走行モード時における走行制御処理の一例を示すフローチャートである。なお、この走行制御処理は、エンジン4が起動している間は所定の間隔で繰り返し実行される。
【0058】
図示するように、本実施形態に係る苗移植機1の走行制御処理では、制御装置40は、先ず、目標地点を受け付けたか否かを判定する(ステップS11)。すなわち、入力表示装置56が操作されて、目標地点(たとえば、
図2における第2圃場102)が入力されたか否かを判定する。目標地点の入力がない場合は(ステップS11:No)、走行制御処理を終了する。
【0059】
目標地点が入力されたと判定すると(ステップS11:Yes)、制御装置40は、自動走行モードスイッチがONされているか否かを判定する(ステップS12)。そして、自動走行モードスイッチがONされていない場合は(ステップS12:No)、走行制御処理を終了し、自動走行モードスイッチがONされたと判定すると(ステップS12:Yes)、制御装置40は、作業装置60が上昇状態にあるか否かを判定する(ステップS13)。
【0060】
なお、ステップS11とステップS12の処理は、いずれが先であっても構わない。制御装置40は、自動走行モードスイッチがONされているか否かを先に判定しても構わない。
【0061】
作業装置60が上昇状態にあるか否かの判定で、作業装置60が上昇状態にない場合は(ステップS13:No)、走行制御処理を終了し、作業装置60が上昇状態にある場合は(ステップS13:Yes)、制御装置40は、作業装置60が非作動状態にあるか否かを判定する(ステップS14)。なお、ステップS13とステップS14の処理は、いずれが先であっても構わない。
【0062】
そして、作業装置60が非作動状態にない場合(ステップS14:No)、制御装置40は、走行制御処理を終了し、作業装置60が非作動状態にある場合(ステップS14:Yes)、制御装置40は、登録されている目標地点まで、自動走行により移動する移動走行処理を実行し(ステップS15)、目標地点に到達すると、本走行制御処理を終了する。
【0063】
かかる走行制御処理において、制御装置40は、入力表示装置56に設けられたスイッチがオンになると目標地点に向けて走行車体2を自動走行モードで走行させるが、目標地点に到達すると、走行車体2を停止するようにしている。
【0064】
したがって、苗移植機1は、圃場外の農道を自動走行によって通行し、目標地点において自動停止するため、圃場間の移動がきわめて楽に行え、作業効率を向上することができる。
【0065】
たとえば、
図2において、納屋301の近くで苗移植機1に搭乗したオペレータが、入力表示装置56を用いて、第2圃場102を目標地点として入力する。そのとき、作業装置60が上昇しており、かつ非作業状態であって、さらに副変速レバーの位置が高速段になっていれば、制御装置40は、走行経路601を生成するとともに、操舵装置51、変速装置52および制動装置53を制御して、走行経路601に沿って自動走行させることができる。すなわち、第2農道402を南下して第1交差点501を右折し、第3農道403を西に進んで第2交差点502を左折し、第1農道401を南下して第2圃場102の第2出入口202の手前で停止する。オペレータは、その後、手動走行モードに切替え、マニュアル操作により走行車体2を操縦して第2出入口202から第2圃場102内に侵入する。なお、目標地点で停止すると、制御装置40が、自動的に自動走行モードから手動走行モードに切り替えるようにすることもできる。
【0066】
苗移植機1は、制御装置40は、前方センサ280、後方センサ281、および側方センサ282を備えているため、各センサ280~282が検知した物体が、走行に支障したり安全性を脅かす障害物であると認識した場合、走行車体2を停止させるようにしている。そして、かかる障害物が認識されなくなると自動走行を再開する。たとえば、走行中に、走行車体2の近傍に人がいることを検知すると停止し、人が遠ざかると走行を再開するのである。このように、自動走行であっても、安全性を損なうことがない。なお、障害物と認識した場合、急ブレーキをかけて停止するのではなく、一旦速度を大きく減速して停止することが好ましい。また、減速中には、入力表示装置56に確認ボタンを表示して、確認ボタンが操作されるまでは減速状態を維持することもできる。
【0067】
また、自動走行中、上述したように、交差点(たとえば第1交差点501や第2交差点502)に侵入する場合がある。この場合、制御装置40は、交差点の手前では走行速度を落として徐行させるようにしている。
【0068】
しかも、本実施形態においては、制御装置40は、交差点の手前では走行車体2を一旦停止させ、その後、交差点へ進入させるようにしている。こうして、危険な場合が多い交差点においても自動走行の安全性が損なわれないようにしている。
【0069】
また、制御装置40は、上述したように、作業装置60が上昇しており、かつ非作業状態であるとともに、変速レバーが高速位置にあって、副変速装置が高速段に切り替えられていることを条件として、自動走行モードで走行車体2の走行を開始させるようにしている。通常、苗移植機1が圃場内にいる場合、変速レバーは低速に位置しているため、通常では自動走行モードには切り替わらない。したがって、作業装置60の作動・非作動や、作業装置60が上昇状態か下降状態かを誤検知した場合でも、意に反して自動走行モードになるおそれはない。
【0070】
ここで、
図5~
図8を参照しながら、入力表示装置56に表示される地図情報についてより具体的に説明する。
図5、7および8は、苗移植機1が備える入力表示装置56に表示される地図情報の一例を示す説明図、
図6は、入力表示装置56に表示される農道となる経路の種類を示す説明図である。
【0071】
図5に示すように、入力表示装置56の表示パネルには、
図6(a)に示す経路パターン410が組み合わされて農道405~408が表示される。また、圃場入口205,206や交差点503,504、そして納屋などの建造物302なども表示される。
【0072】
経路パターン410の両端部は、認識しやすいようにボタン状に表示されている。また、
図6(a)において、複数の農道の端部が突き合わされた位置が交差点503(たとえば
図2における第1交差点501および第2交差点502)となって表示される。
【0073】
経路パターン410は、
図6(b)、
図6(c)および図(d)に示されるように、その端部が封鎖状態にあるか否かに区分されている。ここで、封鎖状態とは、当該経路に相当する農道部分に、一般道からの一般車両の侵入可能性がない状態を指す。たとえば、当該経路の一端部が行き止まりになっている場合、当該経路の一端部が他の圃場にしかつながっていない場合などである。したがって、交差点に位置する端部は、同じ交差点に端部を有する経路のすべての一端部が封鎖状態にある場合を除き、自動走行モードで走行することは許されない。そのため、制御装置40は、走行経路601(
図2参照)を生成する際には、経路パターンの端部が封鎖状態にあるか否かの情報を参照するようにしている。
【0074】
このように、入力表示装置56は、経路パターン410を用いて、農道と交差点とを表示することができ、しかも、同じ交差点であっても、一般車両が進入する可能性のある交差点と、一般車両は進入しない交差点とを区分して表示することができる。たとえば、
図2においては、第1交差点501も第2交差点502も一般車両は進入しない交差点として走行経路601が表示されているが、第1交差点501は一般車両が進入する可能性のある交差点、第2交差点502は一般車両は進入しない交差点として表示することもできる。
【0075】
図6(b)では、経路パターン410の前端(紙面左方向の端)は封鎖状態にあるが、後端(紙面右方向の端)は、封鎖状態にないことを示す。よって、自由な通行は不可である。また、
図6(c)では、経路パターン410の後端は封鎖状態にあるが、前端は、封鎖状態にないことを示す。よって、この場合も自由な通行は不可である。他方、
図6(d)では、経路パターン410の前端および後端のいずれも封鎖状態になっている。したがって、この場合は、自動走行モードで自由な通行が可能である。
【0076】
図7に示す、入力表示装置56に表示される地図情報では、苗移植機1の作業装置60の横幅寸法と、農道の道幅が記されている。道幅は農道に沿って表示される。他方、作業装置60の横幅寸法は、寸法表示領域710に表示される。ここでは、入力表示装置56には、
図2同様に第1農道401~第4農道404が表示されており、第1農道401の第2交差点502の北側は道幅2mであり、作業装置60の横幅寸法よりも小さいため、通行できないことが分かる。
【0077】
図7において、通行不可の農道についてはハッチング領域700として示しているが、実際の入力表示装置56における表示パネル上では、たとえば赤色で表示するなど、適宜、視認しやすい表示形態に設定することができる。すなわち、通行不可の道であることを警告可能な表示とすることが好ましい。
【0078】
このように、本実施形態における制御装置40は、入力表示装置56に表示される地図情報中に、走行禁止区域を設定することができる。
【0079】
また、
図8に示す、入力表示装置56に表示される地図情報では、通行可能な農道が含まれる領域と、通行不可の農道とを、容易に識別可能な表示形態となっている。たとえば、入力表示装置56に表示される地図情報に圃場A~圃場Cが表示されており、苗移植機1が、第1の農道4100または第2の農道4200における、交差点5100や交差点5200の北側にいる場合とする。
【0080】
たとえばオペレータが、圃場A~圃場Cのうちのいずれかに自動走行モードで移動したいと思って入力表示装置56を用いて目標地点を入力しようとしたとすると、制御装置30は、自車位置情報や、農道における経路パターンの端部が封鎖状態にあるか否かの情報などを参照して走行経路601(
図2参照)を生成する際に、移動先として設定できない圃場については、他と異なる形態で表示するのである。
【0081】
図8においては、圃場Cが暗転表示(ハッチング)され、オペレータに対し、圃場Cが走行禁止区域であり、当該圃場Cへは自動走行モードでの移動が不可であることが示される。なお、暗転表示に限らず、通行可能な農道が含まれる走行可能区域と、通行不可の農道が含まれる走行禁止区域とを、容易に識別可能な表示形態であればよい。なお、表示形態としては、必ずしも目標地点として選択される圃場が含まれる必要はなく、たとえば、現在地点から自動走行モードでの移動が可能な農道と、自動走行モードでの移動が不可の農道とを識別可能な表示とするだけでもよい。
【0082】
このように、従来、自動走行が許されない農道においても、所定条件を満たせば自動走行可能とすることで、圃場間移動が効率化され、作業効率も向上する。また、自動走行する際に、入力表示装置56の表示パネルに、自車位置を中心とした所定エリアを表示して、かかるエリア内に様々な情報を表示可能とすることで、圃場外の農道であっても安全な自動走行を実現させることができる。
【0083】
上述してきた本実施形態に係る苗移植機1のその他の構成について、以下に説明する。苗移植機1は、変速機構として、制御装置40による制御が可能な図示しない油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)を備えている。かかるHSTに対し、制御装置40は、中立状態になるとトラニオンを前後方向に複数回(5回程度)揺動させて圧抜きをしているが、各種操作ペダル83のうちの停車ペダルを踏み込み、HSTを中立に維持させた状態の後、停車ペダルの踏み込みを解除した場合、制御装置40は、トラニオンを中立位置から先ず後進側に振って圧抜きを行うようにしている。
【0084】
また、各種センサ290の一例として、走行車体2の前後の傾きを検出する傾きセンサを備えている場合があり、走行車体2が前上がりの状態である場合は、前述したようにトラニオンを後進側に振って圧抜きするが、前上がりの状態であることを検知した場合は、トラニオンを後進側に振って圧抜きすることを禁じている。そして、この場合、制御装置40は、トラニオンを前進側に振って圧抜きする。
【0085】
また、各種センサ290として、HSTのモータ側のアームセンサと、トラニオン軸側のアームセンサとを備えている場合、停車ペダルを踏んでいる間は、HSTの中立近傍で圧抜きを行う際に、圧抜き1回目として前進から中立に動作させる場合、1回目のみは、ガタ寄せのためにオリフィスがある後進側に大きく振る制御は禁じ、通常の振り幅で圧抜き制御を行うとよい。停車ペダルを踏んでいる状態では、トラニオンアームがケーブルで拘束されているからである。
【0086】
また、本実施形態に係る入力表示装置56は、所謂ナビゲーションシステムとして機能するばかりではなく、様々な装置のオンスイッチ、オフスイッチとして機能する操作入力部を備えている。しかも、この操作入力部は、装置に応じて複数個設けられているのではなく、たとえば、所定のスイッチボタンを設けておき、これを長押し操作することで対応装置を選択し、選択した装置に対してオン、オフ操作を行えるようにしている。かかる構成により、表示サイズに制限のある入力表示装置56であっても多機能性を付与することができる。また、部品点数などの削減も図ることができる。
【0087】
また、入力表示装置56の表示パネルは、たとえば液晶パネルを用い、燃料計やアワメータなどもデフォルトで表示可能な構成とするとよい。また、これらの他にも、たとえば設定入力した数値などが表示されるインジケータ部を設けることもできる。さらに、作業内容は装置などをアイコンで視覚的に分かり易く表示することもできる。
【0088】
上述してきた実施形態により、以下の苗移植機1が実現する。
【0089】
(1)昇降自在に連結された作業装置60を備える走行車体2と、走行車体2が備える走行装置としての前輪5および後輪6のいずれか一方又は両方に動力源であるエンジン4からの動力を伝達する動力伝達装置7と、自車両の位置を測位する測位装置310と、前輪5を操舵する操舵装置51と、自車両の移動先となる目標地点の登録を受け付ける登録部44を有するとともに、操舵装置51および作業装置60を制御する制御装置40と、を備え、制御装置40は、オペレータによるマニュアル操作により走行車体2を走行させる手動走行モードおよび動力伝達装置7および操舵装置51を制御して走行車体2を走行させる自動走行モードのいずれかを選択可能であり、作業装置60が上昇しており、かつ非作業状態であることを条件に、登録部44に登録された目標地点まで走行車体2を自動走行モードで走行させる苗移植機1。
【0090】
かかる苗移植機1によれば、圃場間の移動であっても安全に自動走行することができるとともに、作業効率の向上を図ることができる。
【0091】
(2)上記(1)において、制御装置40は、目標地点が圃場外であることを条件に、当該目標地点の登録部44への登録を許可し、登録部44は、複数の目標地点を登録可能である苗移植機1。
【0092】
かかる苗移植機1によれば、たとえば圃場の出入口を目標地点に登録することで、圃場間の移動を自動で行うことができ、上記(1)の効果をより高めることができる。
【0093】
(3)上記(1)または(2)において、動力伝達装置7は、低速から高速まで変速可能な複数の変速段に切替可能な副変速装置を含む変速装置52を備え、制御装置40は、副変速装置の変速レバーが、路上走行に適する高速段に切り替えられていること条件に、自動走行モードを選択する苗移植機1。
【0094】
かかる苗移植機1によれば、圃場内で自動走行モードに切り替えられることを可及的に防止でき、安全性が向上する。
【0095】
(4)上記(3)において、制御装置40は、作業装置60が上昇しており、かつ非作業状態であるとともに、変速装置52の副変速装置が高速段に切り替えられていることを条件として、自動走行モードで走行車体2の走行を開始させる苗移植機1。
【0096】
かかる苗移植機1によれば、上記(3)の効果をより高めることができる。
【0097】
(5)上記(1)~(4)のいずれかにおいて、圃場を含む所定のエリアの地図情報に、測位装置310から取得した自車両の位置情報が重畳表示されるとともに、所望する目標地点を入力可能な入力表示装置56と、入力表示装置56に入力された目標地点に向けて走行車体2を走行させるスタートスイッチと、を備え、制御装置40は、スタートスイッチがオンになると目標地点に向けて走行車体2を自動走行モードで走行させ、目標地点に到達すると当該走行車体2を停止する苗移植機1。
【0098】
かかる苗移植機1によれば、上記(1)~(4)の効果をより高めることができる。
【0099】
(6)上記(5)において、制御装置40は、入力表示装置56に表示される地図情報中に、走行禁止区域を設定可能である苗移植機1。
【0100】
かかる苗移植機1によれば、走行できない領域をオペレータが容易に認識でき、上記(5)の効果をより高めることができる。
【0101】
(7)上記(5)または(6)において、入力表示装置56は、自動走行モードで走行可能な走行経路601と、複数の農道同士が交わる交差点とを表示可能であって、交差点は、一般車両が進入する可能性のある第1交差点501と、一般車両は進入しない第2交差点502とに区別して表示される苗移植機1。
【0102】
かかる苗移植機1によれば、安全性がより向上し、上記(5または(6)の効果をより高めることができる。
【0103】
(8)上記(7)において、制御装置40は、走行車体2を自動走行モードで走行させている場合、交差点の手前では徐行させる苗移植機1。
【0104】
かかる苗移植機1によれば、安全性がさらに向上し、上記(7)の効果をより高めることができる。
【0105】
(9)上記(8)において、制御装置40は、少なくとも第1交差点501の手前では走行車体2を一旦停止させ、その後、交差点へ進入させる苗移植機1。
【0106】
かかる苗移植機1によれば、記(8)の効果をより高めることができる。
【0107】
(10)上記(1)~(9)のいずれかにおいて、走行車体2の周囲の状況を検知する障害物センサ(前方センサ280、後方センサ281、および側方センサ282)を備え、障害物センサは、自動走行モードが選択されている場合に起動し、制御装置40は、所外物センサが検知した物体が所定の障害物であると認識した場合、走行車体2を停止させるとともに、障害物が認識されなくなると自動走行を再開する苗移植機1。
【0108】
かかる苗移植機1によれば、危機回避能力が向上するため、上記(1)~(6)の効果に加え、安全性をより高めることができる。
【0109】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0110】
1 苗移植機(作業車両)
2 走行車体
4 エンジン
5 前輪(走行装置)
6 後輪(走行装置)
7 動力伝達装置
40 制御装置
44 登録部(目標地点登録部)
51 操舵装置
52 変速装置
56 入力表示装置
60 作業装置
280 前方センサ
281 後方センサ
282 側方センサ
310 測位装置
501 第1交差点
502 第2交差点
601 走行経路