(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学素子、光学系、光学装置、カメラ用交換レンズ、音響光学素子、照明装置、顕微鏡
(51)【国際特許分類】
C03C 3/12 20060101AFI20221025BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20221025BHJP
G02F 1/11 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C03C3/12
G02B1/00
G02F1/11 501
(21)【出願番号】P 2019549106
(86)(22)【出願日】2018-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2018015681
(87)【国際公開番号】W WO2019077786
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2017203759
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 幸平
(72)【発明者】
【氏名】野村 達士
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-105869(JP,A)
【文献】特開2010-105906(JP,A)
【文献】特開2002-141586(JP,A)
【文献】G. Senthil Murugan et al.,Raman characteristics and nonlinear optical properties of tellurite and phosphotellurite glasses containing heavy metal oxides with ultrabroad Raman bands,Journal of Applied Physics,2006年,Vol.100, 023107,pp.1-6
【文献】Alexander P. Savikin et al.,Luminescence of erbium ions in tellurite glasses,Journal of Solid State Chemistry,2013年,Vol.207,pp.80-86
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
TeO
2含有率:70~80%、
Bi
2O
3含有率:18~25%、
Li
2O含有率:2~5%、
ZnO含有率:0~3.49%、
である、光学ガラス。
【請求項2】
質量%で、
MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの総含有率:0~3%である、
請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
質量%で、
TeO
2含有率:70~80%、
Bi
2O
3含有率:18~25%、
Li
2O含有率:2~5%、
MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの総含有率:0~3%、
である、光学ガラス。
【請求項4】
質量%で、
La
2O
3、Y
2O
3及びGd
2O
3の総含有率:0~3%である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項5】
質量%で、
TeO
2含有率:70~8
2.84%、
Bi
2O
3含有率:14~25%、
Li
2O含有率:2~5%、
ZnO含有率:0~3.49%、
La
2O
3、Y
2O
3及びGd
2O
3の総含有率:1.03~3%、
である、光学ガラス。
【請求項6】
質量%で、
MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの総含有率:0~3%である、
請求項5に記載の光学ガラス。
【請求項7】
質量%で、
TeO
2含有率:70~8
2.84%、
Bi
2O
3含有率:14~25%、
Li
2O含有率:2~5%、
MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの総含有率:0~3%、
La
2O
3、Y
2O
3及びGd
2O
3の総含有率:1.03~3%、
である、光学ガラス。
【請求項8】
B
2O
3を実質的に含有しない、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項9】
d線に対する屈折率(n
d)が2.0~2.2である、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項10】
アッベ数(ν
d)が16~20である、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項11】
厚さ7mmの試料に対して、0.84mW/mm
2の波長405nmの光を20時間照射した時、波長405nmにおける透過率変化の割合が、前記光の照射開始時を基準として20%以下である、
請求項1~10のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項12】
厚さ10mmあたりの内部透過率が80%となる波長が、420nm以下である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いた光学素子。
【請求項14】
請求項13に記載の光学素子を含む光学系。
【請求項15】
請求項14に記載の光学系を備える光学装置。
【請求項16】
請求項14に記載の光学系を備えるカメラ用交換レンズ。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか一項に記載の光学ガラスを用いた音響光学素子。
【請求項18】
請求項17に記載の音響光学素子を備える照明装置。
【請求項19】
請求項18に記載の照明装置を備える顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、光学素子、光学系、光学装置、カメラ用交換レンズ、音響光学素子、照明装置、顕微鏡に関する。本発明は2017年10月20日に出願された日本国特許の出願番号2017-203759の優先権を主張し、文献の参照による織り込みが認められる指定国については、その出願に記載された内容は参照により本出願に織り込まれる。
【背景技術】
【0002】
光学ガラスは、様々な光学素子や光学装置に用いられており、例えば、特許文献1には、TeO2を20モル%以上含有し、波長405nmの光に対する厚み2mmにおける内部透過率が80%以上かつ同光に対する屈折率が1.85以上である光学ガラスであって、アルカリ金属酸化物を含有しない、またはアルカリ金属酸化物を合計で15モル%以下の範囲で含有する光学ガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の第一の態様は、質量%で、TeO2含有率:70~80%、Bi2O3含有率:18~25%、Li2O含有率:2~5%、ZnO含有率:0~3.49%、である光学ガラスである。また質量%で、TeO2含有率:70~80%、Bi2O3含有率:18~25%、Li2O含有率:2~5%、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの総含有率:0~3%である、光学ガラスである。また質量%で、TeO2含有率:70~82.84%、Bi2O3含有率:14~25%、Li2O含有率:2~5%、ZnO含有率:0~3.49%、La2O3、Y2O3及びGd2O3の総含有率:1.03~3%、である、光学ガラスである。また質量%で、TeO2含有率:70~82.84%、Bi2O3含有率:14~25%、Li2O含有率:2~5%、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOの総含有率:0~3%、La2O3、Y2O3及びGd2O3の総含有率:1.03~3%である、光学ガラスである。
【0005】
本発明の第二の態様は、上述した光学ガラスを用いた光学素子である。
【0006】
本発明の第三の態様は、上述した光学素子を含む光学系である。
【0007】
本発明の第四の態様は、上述した光学系を備える光学装置である。
【0008】
本発明の第五の態様は、上述した光学系を備えるカメラ用交換レンズである。
【0009】
本発明の第六の態様は、上述した光学ガラスを用いた音響光学素子である。
【0010】
本発明の第七の態様は、上述した音響光学素子を備える照明装置である。
【0011】
本発明の第八の態様は、上述した照明装置を備える顕微鏡である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした場合の一例の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした場合の他の例の概略図である。
【
図3】本実施形態に係る多光子顕微鏡の構成の例を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る構造化照明顕微鏡装置の概略を示す説明図である。
【
図5】本実施形態に係る音響光学素子の構成図である。
【
図6】本実施形態に係る音響光学素子の別の態様を示す構成図である。
【
図7】実施例で用いた光照射実験装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。
【0014】
本実施形態における光学ガラスの成分組成及び物性等について、以下に説明する。なお、本明細書中において、特に断らない場合は、各成分の含有量は全て酸化物換算組成のガラス全質量に対する質量%であるものとする。なお、ここでいう酸化物換算組成とは、ガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩等が溶融時に全て分解されて酸化物に変化すると仮定し、当該酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0015】
<光学ガラス>
本実施形態に係る光学ガラスは、質量%で、TeO2成分が70~83%、Bi2O3成分が10~25%、Li2O成分が2~5%、である。本実施形態に係る光学ガラスは、屈折率が高く、可視短波長域の透過率が良好であり、かつ、405nm光照射時における透過率変化の割合を低減できるテルライト系ガラスとして好適に用いることができる。
【0016】
従来、テルライト系ガラスは、例えば、音響光学素子(AOM)等の材料として用いられている。しかし、可視短波長のレーザ光を照射されると、ガラスの透過率の劣化(ソラリゼーション)が生じてしまうといった問題がある。この点、本実施形態に係る光学ガラスは、耐ソラリゼーションに優れるテルライト系ガラスである。
【0017】
TeO2の含有量は、70~83%であり、好ましくは71~80%であり、より好ましくは72~78%であり、更に好ましくは73~75%である。含有量をかかる範囲とすることで、可視短波長域の透過率を良好に維持したまま、屈折率を高めることができる。しかしながら、その導入量が多すぎるとソラリゼーションが生じやすくなる。
【0018】
Bi2O3の含有量は、10~25%であり、好ましくは14~24%であり、より好ましくは18~23%であり、更に好ましくは20~23%である。含有量をかかる範囲とすることで、屈折率を高めるとともに、可視短波長域の透過率の低下を抑制できる。
【0019】
Li2Oの含有量は、2~5%であり、好ましくは2~4.5%であり、より好ましくは2.5~4%であり、更に好ましくは2.5~3.5%である。含有量をかかる範囲とすることで、屈折率を低下させることなく、ガラスの熔融温度を下げるとともに、ソラリゼーション耐性を高めることができる。
【0020】
本実施形態に係る光学ガラスは、La2O3成分、Y2O3成分及びGd2O3成分からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分を含有することが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を用いてもよい。その場合、本実施形態に係る光学ガラスは、La2O3成分、Y2O3成分及びGd2O3成分の総量が0~3%であることが好ましく、0~2%であることがより好ましく、0~1%であることが更にこのましい。これらの成分の総量を上記範囲とすることで、屈折率を一層向上させるとともに、ソラリゼーション耐性を一層向上させることができ、さらにはガラスの失透を抑制することができる。
【0021】
本実施形態に係る光学ガラスは、MgO成分、CaO成分、SrO成分、BaO成分及びZnO成分からなる群より選ばれる少なくとも1つの成分を含有することが好ましい。これらは1種のみならず2種以上を用いてもよい。その場合、本実施形態に係る光学ガラスは、MgO成分、CaO成分、SrO成分、BaO成分及びZnO成分の総量が0~3%であることが好ましく、0~2%であることがより好ましく、0~1%であることが更にこのましい。これらの成分の総量を上記範囲とすることで、屈折率を低下させずに、ガラスの安定性を一層向上させることができる。
【0022】
本実施形態に係る光学ガラスは、B2O3の含有量は、耐ソラリゼーションや屈折率の観点から、4%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、実質的に含有しないことが更に好ましい。なお、本明細書中において「実質的に含有しない」とは、当該成分が、不純物として不可避的に含有される濃度を越えて、ガラス組成物の特性に影響する構成成分として含有されないこと、を意味する。例えば、製造過程における100ppm以下程度のコンタミネーションについては、実質的に含有されていないものとする。
【0023】
本実施形態に係る光学ガラスは、その目的達成に支障のない範囲であれば、その他の任意成分を更に含有してもよい。
【0024】
次に、本実施形態の光学ガラスの物性値について説明する。
【0025】
本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率領域に関するものとして好適に使用できる。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、d線(波長:587.562nm)に対する屈折率(nd)が2.0~2.2であることが好ましく、2.0~2.1であることがより好ましい。
【0026】
本実施形態に係る光学ガラスは、アッベ数(νd)が16~20であることが好ましく、16~19であることがより好ましく、17~18であることが更に好ましい。
【0027】
本実施形態に係る光学ガラスは、高いソラリゼーション耐性を有するものとできる。その好適な態様として、厚さ7mmの試料に対して、0.84mW/mm2の波長405nmの光を20時間照射した時、波長405nmにおける透過率変化の割合が、光の照射開始時を基準として20%以下である光学ガラスとすることが可能である。この透過率変化の割合は、後述する方法によって測定することができる。
【0028】
本実施形態に係る光学ガラスの好適な態様として、厚さ10mmにおける内部透過率が80%となる波長が、420nm以下である光学ガラスとすることが可能である。
【0029】
<光学素子、光学系、光学装置等>
本実施形態に係る光学ガラスは、光学装置の部材として用いることができる光学素子として好適である。このような光学素子には、ミラー、レンズ、プリズム、フィルタ等が含まれ、光学系として幅広く使用可能である。かかる好適例として、例えば、光学レンズ、カメラ用交換レンズ、音響光学素子等が挙げられる。そして、これらは、レンズ交換式カメラ、レンズ非交換式カメラ等の撮像装置、音響光学素子を備える照明装置、照明装置を備える顕微鏡、構造化照明顕微鏡装置等の各種装置として好適に使用できる。以下に、これらの一例を説明する。
【0030】
(撮像装置)
図1は、本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした場合の一例の斜視図である。撮像装置1はいわゆるデジタル一眼レフカメラ(レンズ交換式カメラ)であり、撮影レンズ103(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。カメラボディ101のレンズマウント(不図示)にレンズ鏡筒102が着脱自在に取り付けられる。そして該レンズ鏡筒102の撮影レンズ103を通した光がカメラボディ101の背面側に配置されたマルチチップモジュール106のセンサチップ(固体撮像素子)104上に結像される。このセンサチップ104は、いわゆるCMOSイメージセンサー等のベアチップであり、マルチチップモジュール106は、例えばセンサチップ104がガラス基板105上にベアチップ実装されたCOG(Chip On Glass)タイプのモジュールである。
【0031】
図2は、本実施形態に係る光学装置を撮像装置とした場合の他の例の概略図である。
図2(a)は撮像装置CAMの正面図を、
図2(b)は撮像装置CAMの背面図を示す。撮像装置CAMはいわゆるデジタルスチルカメラ(レンズ非交換式カメラ)であり、撮影レンズWL(光学系)は本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。
【0032】
撮像装置CAMは、不図示の電源ボタンを押すと、撮影レンズWLの不図示のシャッタが開放されて、撮影レンズWLで被写体(物体)からの光が集光され、像面に配置された撮像素子に結像される。撮像素子に結像された被写体像は、撮像装置CAMの背後に配置された液晶モニターMに表示される。撮影者は、液晶モニターMを見ながら被写体像の構図を決めた後、レリーズボタンB1を押し下げて被写体像を撮像素子で撮像し、不図示のメモリーに記録保存する。
【0033】
撮像装置CAMには、被写体が暗い場合に補助光を発光する補助光発光部EF、撮像装置CAMの種々の条件設定等に使用するファンクションボタンB2等が配置されている。
【0034】
このようなデジタルカメラ等に用いられる光学系には、より高い解像度、軽量化、小型化が求められる。これらを実現するには光学系に高屈折率な光学ガラスを用いることが有効である。かかる観点から、本実施形態に係る光学ガラスは、かかる光学機器の部材として好適である。なお、本実施形態において適用可能な光学機器としては、上述した撮像装置に限らず、例えばプロジェクタ等も挙げられる。光学素子についても、レンズに限らず、例えばプリズム等も挙げられる。
【0035】
(多光子顕微鏡)
図3は、本実施形態に係る多光子顕微鏡の構成の例を示すブロック図である。多光子顕微鏡2は、対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210を備える。対物レンズ206、集光レンズ208、結像レンズ210のうち少なくとも1つは、本実施形態に係る光学ガラスを母材とする光学素子を備えたものである。以下、多光子顕微鏡2の光学系を中心に説明する。
【0036】
パルスレーザ装置201は、例えば、近赤外波長(約1000nm)であって、パルス幅がフェムト秒単位の(例えば、100フェムト秒の)超短パルス光を射出する。パルスレーザ装置201から射出された直後の超短パルス光は、一般に所定の方向に偏光された直線偏光となっている。
【0037】
パルス分割装置202は、超短パルス光を分割し、超短パルス光の繰り返し周波数を高くして射出する。
【0038】
ビーム調整部203は、パルス分割装置202から入射される超短パルス光のビーム径を、対物レンズ206の瞳径に合わせて調整する機能、試料Sから発せられる多光子励起光の波長と超短パルス光の波長との軸上の色収差(ピント差)を補正するために超短パルス光の集光及び発散角度を調整する機能、超短パルス光のパルス幅が光学系を通過する間に群速度分散により広がってしまうのを補正するために、逆の群速度分散を超短パルス光に与えるプリチャープ機能(群速度分散補償機能)等を有する。
【0039】
パルスレーザ装置201から射出された超短パルス光は、パルス分割装置202によりその繰り返し周波数が大きくされ、ビーム調整部203により上述した調整が行われる。そして、ビーム調整部203から射出された超短パルス光は、ダイクロイックミラー204によりダイクロイックミラー205の方向に反射され、ダイクロイックミラー205を通過し、対物レンズ206により集光されて試料Sに照射される。このとき、走査手段(不図示)を用いることにより、超短パルス光を試料Sの観察面上に走査させてもよい。
【0040】
例えば、試料Sを蛍光観察する場合には、試料Sの超短パルス光の被照射領域及びその近傍では、試料Sが染色されている蛍光色素が多光子励起され、赤外波長である超短パルス光より波長が短い蛍光(以下、「観察光」という。)が発せられる。
【0041】
試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた観察光は、対物レンズ206によりコリメートされ、その波長に応じて、ダイクロイックミラー205により反射されたり、あるいは、ダイクロイックミラー205を透過したりする。
【0042】
ダイクロイックミラー205により反射された観察光は、蛍光検出部207に入射する。蛍光検出部207は、例えば、バリアフィルタ、PMT(photo multiplier tube:光電子増倍管)等により構成され、ダイクロイックミラー205により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部207は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0043】
一方、ダイクロイックミラー205を透過した観察光は、走査手段(不図示)によりデスキャンされ、ダイクロイックミラー204を透過し、集光レンズ208により集光され、対物レンズ206の焦点位置とほぼ共役な位置に設けられているピンホール209を通過し、結像レンズ210を透過して、蛍光検出部211に入射する。
【0044】
蛍光検出部211は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、結像レンズ210により蛍光検出部211の受光面において結像した観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部211は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0045】
なお、ダイクロイックミラー205を光路から外すことにより、試料Sから対物レンズ206の方向に発せられた全ての観察光を蛍光検出部211で検出するようにしてもよい。
【0046】
また、試料Sから対物レンズ206と逆の方向に発せられた観察光は、ダイクロイックミラー212により反射され、蛍光検出部213に入射する。蛍光検出部213は、例えば、バリアフィルタ、PMT等により構成され、ダイクロイックミラー212により反射された観察光を受光し、その光量に応じた電気信号を出力する。また、蛍光検出部213は、超短パルス光が試料Sの観察面において走査されるのに合わせて、試料Sの観察面にわたる観察光を検出する。
【0047】
蛍光検出部207、211、213からそれぞれ出力された電気信号は、例えば、コンピュータ(不図示)に入力され、そのコンピュータは、入力された電気信号に基づいて、観察画像を生成し、生成した観察画像を表示したり、観察画像のデータを記憶したりすることができる。
【0048】
(構造化照明顕微鏡装置)
図4は、本実施形態に係る構造化照明顕微鏡装置の概略構成図である。構造化照明顕微鏡装置3は、照明光学系311、結像光学系312、光検出器313、及び画像処理手段314から構成されている。
【0049】
照明光学系311は、光源(不図示)からの照明光を標本316に導くものであり、光ファイバー317、コレクタレンズ318、音響光学素子(光変調器)319、コンデンサレンズ320、0次光カットマスク321、リレーレンズ322、視野絞り323、照明レンズ324、ダイクロイックミラー325、対物レンズ326、及び制御部327等から構成される。音響光学素子319は、本実施形態の光学ガラスを用いたものである。標本316は、例えば蛍光染色された生体標本であり、ステージ(不図示)上に載置されている。なお、符号316aは、標本316の観察対象面(標本面)である。
【0050】
結像光学系312は、対物レンズ326、ダイクロイックミラー325、及び結像レンズ328等から構成されている。光検出器は、撮像部(CCDカメラ等)329になっている。結像光学系312は、対物レンズ326で集光され、ダイクロイックミラー325を透過した標本316からの光を結像レンズ328により撮像部329の撮像面329aに結像する。また、画像処理手段は、制御部327、画像記憶・演算部(コンピュータ等)330、及び画像表示部331等から構成される。
【0051】
光ファイバー317は、可干渉光源(不図示)からの光を導光し、その出射端に二次点光源(過干渉な二次点光源)を形成する。なお、可干渉光源の波長は、標本316の励起波長と同じ波長に設定されている。その二次点光源から射出した光は、コレクタレンズ318によって平行光に変換され、音響光学素子319へ入射する。
【0052】
音響光学素子319は、照明光学系311の光軸上で、かつ標本316と共役な位置に配置されている。音響光学素子319で入射光を回折し、その回折光を用いて標本面316a上に干渉縞を形成する。詳しく説明すると、音響光学素子319は、圧電素子等のトランスデューサを音響光学媒体に貼り付けたものであり、トランスデューサに高周波の交流電圧が印加されると厚み方向に振動し、トランスデューサの形成面から音響光学媒体中に超音波を伝搬する。
【0053】
音響光学素子319は、超音波を音響光学媒体の中に伝搬する超音波伝搬路Rを、光源からの所定の波長を有する射出光束を横切る方向に有しており、その超音波伝搬路Rに超音波の平面定在波(以下、「超音波定在波」という。)を生起させることにより、超音波伝搬路Rに正弦波状の屈折率分布を付与する。このような音響光学素子319は、入射光に対して位相型回折格子の働きをし、その光を各次数の回折光に分岐する。
図4において実線で示したのは0次回折光であり、点線で示したのは±1次回折光である。
【0054】
音響光学素子319から出射した各次数の回折光は、コンデンサレンズ320を通過した後に、0次光カットマスク321に入射する。0次光カットマスク321は、対物レンズ326の瞳面Pの共役位置、又はその近傍に配置されており、共役位置へ入射した各次数の回折光のうち、0次回折光、及び2次以降の高次回折光をカットし、かつ±1次回折光のみ(2光速のみ)を通過させる機能を有する。0次光カットマスク321は、基板に複数の開口部、又は透過部を形成したものである。光路挿入時における開口部、又は透過部の位置は、共役な位置において±1次回折光が通過する領域に対応する。
【0055】
0次光カットマスク321を通過した±1次回折光は、リレーレンズ322を通過した後に標本面316aの共役位置、又はその近傍に配置された視野絞り323に入射する。視野絞り323は、標本面316a上の照明領域(観察領域)のサイズを制御する機能を有している。
【0056】
ここで、共役位置とは、コンデンサレンズ320の焦点距離(後ろ側焦点位置)であって、後述する対物レンズ326の瞳P(±1次回析光が集光する位置)に対して照明レンズ324、及びリレーレンズ322を介して共役な位置(瞳共役面)をいう(なお、「共役な位置」の概念には、当業者が対物レンズ326、リレーレンズ322、及び照明レンズ324の収差、ビネッティング等、設計上必要な事項を考慮して決定した位置も含まれる。)。
【0057】
視野絞り323を通過した±1次回折光は、照明レンズ324を通過した後にダイクロイックミラー325へ入射し、そのダイクロイックミラー325を反射する。ダイクロイックミラー325を反射した±1次回折光は、対物レンズ326の瞳面P上の互いに異なる位置にそれぞれスポットを形成する。なお、瞳面Pにおける2つのスポットの形成位置は、瞳面Pの概ね最外周部であって、対物レンズ326の光軸に関して互いに対称な位置である。
【0058】
したがって、対物レンズ326の先端から射出する±1次回折光は、対物レンズ326のNA(開口数)に相当する角度で互いに反対の方向から標本面316aを照射する。なお、後述するように印加電圧の周波数を微少に変更させた結果、回折格子ピッチ(1周期)が微少に変化した場合には、2つのスポットの形成位置が極めて微少に変化する。ここで、標本面316aに照射されるこれらの±1次回折光は、可干渉光源から射出した互いに可干渉な光である。このため、標本面316aには、縞ピッチが一様なストライプ状の干渉縞(以下、「縞」と称する。)が投影される。よって、これらの±1次回折光により標本面316aの照明パターンは、縞構造を持った照明パターンとなる。このように縞構造を持った照明パターンによる照明が、構造化照明である。構造化照明された標本面316aの蛍光領域(前述した蛍光染色された領域)では蛍光物質が励起され、蛍光を発する。
【0059】
なお、この構造化照明は、±1次回折光の2光束のみからなるので、標本316の面内方向にかけては構造化されているが、標本316の深さ方向(光軸方向)にかけては構造化されていない。このような構造化照明を光束構造化照明と称す。
【0060】
ここで、光束構造化照明によると、構造化照明の空間周波数と蛍光領域の構造を持つ空間周波数との差を空間周波数として持つモアレ縞が標本面316aに現れる。このモアレ縞上では、蛍光領域の構造の空間周波数が変調されており、実際よりも低い空間周波数にシフトしている。したがって、構造化照明によると、蛍光領域の構造のうち空間周波数の高い成分を示す蛍光、すなわち対物レンズ326の解像限界を超える大角度で射出した蛍光までもが対物レンズ326へ入射することができる。
【0061】
標本面316aから出射して対物レンズ326へ入射した蛍光は、対物レンズ326により平行光に変換された後にダイクロイックミラー325へ入射する。その蛍光は、ダイクロイックミラー325を透過した後、結像レンズ328を通過することにより撮像部329の撮像面329a上に標本面316aの蛍光像を形成する。この蛍光像には、標本面316aの蛍光領域の構造情報と構造化照明の構造情報とが含まれている。
【0062】
制御部327は、光源の波長に応じて標本面316aに投影される干渉縞が所望の縞ピッチを持つように音響光学素子319を制御する。具体的には、±1次回折光の分岐角が、光源の波長を変えても同じ角度になるように、制御部327は、音響光学素子319に印加する電圧(高周波電圧)の周波数を、光源の波長に応じて調整することで、音響光学素子319が発生する音波の波長を調整する。
【0063】
制御部327は、音響光学素子319に電圧を印加すると、音響光学媒質内をその振動が音波として進行し、音響光学媒質の反対面で反射して戻り、それらが重なり合う。音響光学媒質内に発生する音波の周期は、印加電圧の周波数によってほぼ決まるが、音響光学媒質内において半周期の音波が整数個存在する場合に定在波となる。定在波は、超音波の疎密波により音響光学媒質中に周期的な屈折率の変化が生じて、回折格子として作用し、光を分岐する。
【0064】
定在波は、完全なものである必要はなく、印加電圧(高周波電圧)の周波数が音響光学媒質内で定在波の立つ条件から多少ずれがあってもよい。定在波の波長は、高周波電圧の周波数で制御することができる。すなわち、0次光と1次光との間の角度(分岐角)を制御することができる。
【0065】
蛍光色素に最適な励起波長帯を選択した光源の光、つまり励起光は、音響光学素子319を通ると複数の光に分岐されるが、その後、コンデンサレンズ320を通り光の向きを平行にし、ダイクロイックミラー325により顕微鏡観察光学経路(結像光学系312を含む)内に入射され、対物レンズ326により光の向きを内側に曲げ、標本面316aにセットされた標本316上で光が重なり(干渉して)一次元格子模様(縞模様)の励起照明光となる。その際、対物レンズ326から標本316への最大入射角度θで照明光を照射すると最大分解能が得られることが知られている。これを利用し、対物レンズ326を透過した後の光の進む角度は、0次光と+1次光がそれぞれ、対物レンズ326から標本316への最大入射角度θとなるように構成されている。
【0066】
制御部327は、構造化照明の位相をシフトする際にも音響光学素子319に印加される電圧の周波数を変える。なお、この周波数の変化量は十分少ないため、最大分解能を維持するのに大きな影響はない。
【0067】
具体的には、制御部327は、音響光学素子319への印加電圧の周波数を変えて、音響光学素子319の超音波伝搬路Rに生起する超音波定在波を制御することにより、構造化照明の位相シフト量を2π/3ずつステップ状に変化させる。そして、制御部327は、構造化照明の位相が各状態にあるときに撮像部329を駆動して3種類の画像データI-1、I0、I+1を取得し、それらの画像データI-1、I0、I+1を順次に画像記憶・演算部330へ送出する。
【0068】
画像記憶・演算部330は、取り込まれた画像データI-1、I0、I+1に対して復調演算を施すことにより、蛍光領域の構造情報の空間周波数が実際の空間周波数に戻された画像データI’を取得し、その画像データI’を画像表示部331へ送出する。これによって、画像表示部331には、対物レンズ326の解像限界を超えた解像画像(超解像画像)が表示される。
【0069】
続いて、上述した音響光学素子319について詳しく説明する。
図5は、本実施形態に係る音響光学素子の構成図であり、上述した音響光学素子319に該当するものである。
図5(A)は、音響光学素子319を正面(光軸方向)から見た図であり、
図5(B)は、音響光学素子319を側面(光軸に垂直な方向)から見た図である。
【0070】
音響光学素子319は、リブ構造をもつ超音波伝搬路を3個もっている。具体的には、
図5に示すように、単一の音響光学媒体335を備え、音響光学媒体335は、互いに平行をなす一対の側面(側面対)335a-335f,335b-335g,335c-335eを3対備えた正面視八角形のブロック状に形成されている。一方の側面315a~315cには、トランスデューサ336~338がリブ状に突出して設けられており、これによって他方の側面335f,335g,335eとの間の音響光学媒体335内に3つの超音波伝搬路Ra,Rb,Rcがそれぞれ形成される。
【0071】
超音波伝搬路Raは、トランスデューサ336をもつ側面335aとそれに対向する側面335fとの間に形成される伝搬路であり、また、超音波伝搬路Rbは、トランスデューサ337をもつ側面335bとそれに対向する側面335gとの間に形成される伝搬路であり、さらに、超音波伝搬路Rcは、トランスデューサ338をもつ側面335cとそれに対向する側面335eとの間に形成される伝搬路である。
【0072】
音響光学媒体335の材質は、本実施形態に係る光学ガラスを用いるものであり、3つの側面対335a-335f,335b-335g,335c-335e、及び2つの底面335d,335hは、それぞれ十分な精度で研磨されている。
【0073】
トランスデューサ336は、圧電体339と、圧電体339の上下面に個別に形成された2つの電極340とを有した超音波トランスデューサであり、そのうち下面の電極340を介して側面335aに接合されている。制御部327から上下面の電極340の間に高周波の交流電圧を印加すると、圧電体339が厚み方向に振動し、超音波伝搬路Ra内を平面超音波が往復する。上下面の電極340の間に印加される交流電圧の周波数が特定の周波数(適正周波数)に設定された場合、その超音波は定在波となるので、超音波伝搬路Raの屈折率には、超音波の伝搬方向にかけて正弦波状の分布が付与される。これによって、超音波伝搬路Raは、超音波の伝搬方向と垂直な位相格子を持った位相型回折格子となる。以下、この超音波伝搬路Raの伝搬方向を、「第1方向」と称す。
【0074】
トランスデューサ337も、トランスデューサ336と同じ構成をしており、圧電体341と、圧電体341の上下面に個別に形成された2つの電極342とを有し、そのうち下面の電極342を介して側面335bに接合されている。
【0075】
したがって、トランスデューサ337の2つの電極342の間に適正周波数の交流電圧が印加されると、超音波伝搬路Rb内を平面超音波が伝搬するので、超音波伝搬路Rbは、超音波の伝搬方向と垂直な位相格子を持った位相型回折格子となる。以下、この超音波伝搬路Rbの伝搬方向を、「第2方向」と称す。この第2方向は、第1方向に対して60°の角度を成す。
【0076】
トランスデューサ338も、トランスデューサ336と同じ構成をしており、圧電体343と、圧電体343の上下面に個別に形成された2つの電極344とを有し、そのうち下面の電極344を介して側面335cに接合されている。
【0077】
したがって、トランスデューサ338の2つの電極344の間に適正周波数の交流電圧が印加されると、超音波伝搬路Rc内を平面超音波が伝搬するので、超音波伝搬路Rcは、超音波の伝搬方向と垂直な位相格子を持った位相型回折格子となる。以下、この超音波伝搬路Rcの伝搬方向を、「第3方向」と称す。この第3方向は、第1方向に対して-60°の角度を成す。
【0078】
そして、画像記憶・演算部330は、第1方向Raによる対物レンズ326の解像限界を超えた解像画像(超解像画像)Ia’、第2方向Rbによる対物レンズ326の解像限界を超えた解像画像(超解像画像)Ib’、第3方向Rcによる対物レンズ326の解像限界を超えた解像画像(超解像画像)Ic’の3つの復調画像データを波数空間上で合成してから再び実空間に戻すことにより、第1方向、第2方向、第3方向に亘る超解像画像の画像データIを取得し、その画像データIを画像表示部331へ送出する。したがって、画像表示部331には、標本面16aの蛍光領域の構造を詳細に示す超解像画像が表示される。
【0079】
図6は、本実施形態に係る音響光学素子の別の態様を示す構成図である。音響光学媒体335は、3つの超音波伝搬路Ra,Rb,Rcをスポットの中心に関して非対称な関係で配置していたが(
図5参照)、例えば
図6に示すとおり対称な関係で配置してもよい。
図5に示す例の利点は、音響光学媒体335の外形の凹凸が少ないところにある。このように、本実施形態に係る光学ガラスを用いた音響光学素子は、適宜好適な構成を選択することができる。
【実施例】
【0080】
次に、以下の実施例及び比較例の説明をするが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0081】
<光学ガラスの作製>
光学ガラスは、以下の手順に準拠して作製した。まず、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等から選ばれる原料を所定の化学組成となるよう秤量した。次に、秤量した原料を混合して金ルツボに投入し、700~850℃の温度で1時間程度熔融し、攪拌均質化した。その後、適当な温度に下げてから金型等に鋳込み、徐冷することにより、各サンプルを得た。
【0082】
<屈折率(nd)とアッベ数(νd)>
各サンプルの屈折率(nd)及びアッベ数(νd)は、プリズムカプラ(Metricon製、モデル「2010/M」)を用いて測定した。ガラス試料を研磨し、研磨面を単結晶ルチルプリズムに密着させ、測定波長の光を入射させた際の全反射角を測定して屈折率を求めた。473nm、594.1nm、656nmの3波長で各5回測定し、平均値を測定値とした。さらに、得られた実測値に対し、以下のDrude-Voigtの分散式を用いて最小二乗法によるフィッティングを行い、d線(587.562nm)、F線(486.133nm)、C線(656.273nm)における屈折率と、アッベ数(νd)を算出した。なお、屈折率の値は、小数点以下第4位までとした。
【0083】
【0084】
(n:屈折率、m:電子質量、c:光速度、e:電荷素量、N:単位体積当たりの分子数、f:振動子強度、λ0:固有共鳴波長、λ:波長)
【0085】
また、アッベ数(νd)は以下の式で定義される。
【0086】
【0087】
<内部透過率が80%となる波長(λ80)>
12mm厚と2mm厚の光学研磨された互いに平行な光学ガラス試料を用意し、厚み方向と平行に光が入射した際の波長200~700nmの範囲における内部透過率を測定した。そして、光路長10mmにおける内部透過率が80%となる波長をλ80とした。
【0088】
<405nm光照射による透過率低下量>
405nm光照射による透過率低下量については、
図7に示す光照射実験装置を用いて測定した。具体的には、405nmレーザ光を広げて平行光にし、直径2.5mmアパーチャで光束中央部のみを透過させてガラスに照射したときの透過光量を、透過光量測定用パーメーターを用いて測定する装置である。直径2.5mm、0.84mW/mm
2の波長405nmの光を、厚さ7mmの試料に対して20時間照射し、その透過光量を、透過光量測定用光パワーメーター(
図7参照)を用いて測定した。そして、光照射開始時の波長405nmにおける透過率が20時間後にどの程度減少したかを計測した。
【0089】
以下の各表に、各実施例及び各比較例の結果を示す。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
以上より、本実施例係る光学ガラスは、屈折率が高く、可視短波長域の透過率が良好であり、かつ、405nm光照射時における透過率変化の割合を低減できることが確認された。
【符号の説明】
【0098】
1…撮像装置、101…カメラボディ、102…レンズ鏡筒、103…撮影レンズ、104…センサチップ、105…ガラス基板、106…マルチチップモジュール、CAM…撮像装置(レンズ非交換式カメラ)、WL…撮影レンズ、M…液晶モニター、EF…補助光発光部、B1…レリーズボタン、B2…ファンクションボタン、2…多光子顕微鏡、201…パルスレーザ装置、202…パルス分割装置、203…ビーム調整部、204,205,212…ダイクロイックミラー、206…対物レンズ、207,211,213…蛍光検出部、208…集光レンズ、209…ピンホール、210…結像レンズ、S…試料、3…構造化照明顕微鏡装置、311…照明光学系、312…結像光学系、313…光検出器、314…画像処理手段、316…標本、316a…標本面、317…光ファイバー、318…コレクタレンズ、319…音響光学素子(光変調器)、320…コンデンサレンズ、321…0次光カットマスク、322…リレーレンズ、323…視野絞り、324…照明レンズ、325…ダイクロイックミラー、326…対物レンズ、327…制御部、328…結像レンズ、329…撮像部、329a…撮像面、330…画像記憶・演算部、331…画像表示部、335…音響光学媒体、335a,b,c,d,e,f,g…側面、335d,h…底面、336,337,338…トランスデューサ、339,341,343…圧電体、340,342,344…電極、R,Ra,Rb,Rc…超音波伝搬路