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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】撮像素子及び固体撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20221025BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20221025BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20221025BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H01L27/146 E
H04N5/369
H01L31/10 H
H01L31/08 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020073892
(22)【出願日】2020-04-17
(62)【分割の表示】P 2016544209の分割
【原出願日】2015-08-18
(65)【公開番号】P2020127033
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2014168283
(32)【優先日】2014-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015142580
(32)【優先日】2015-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森脇 俊貴
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/047309(WO,A1)
【文献】特開2010-098266(JP,A)
【文献】特開2005-064273(JP,A)
【文献】特開2013-201001(JP,A)
【文献】特表2009-530812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0327387(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0043218(KR,A)
【文献】特開2008-227091(JP,A)
【文献】特開2013-062185(JP,A)
【文献】特開2008-172258(JP,A)
【文献】特開2011-233752(JP,A)
【文献】特開2002-305297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0138470(US,A1)
【文献】特開2013-110066(JP,A)
【文献】特開2004-266079(JP,A)
【文献】特開2009-212389(JP,A)
【文献】特開2012-177623(JP,A)
【文献】特開2010-258438(JP,A)
【文献】特開2008-288253(JP,A)
【文献】特開2007-067194(JP,A)
【文献】特開2014-120616(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073278(WO,A1)
【文献】特開2010-161269(JP,A)
【文献】特開2007-311647(JP,A)
【文献】特開2011-199152(JP,A)
【文献】特開2004-119525(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0270600(US,A1)
【文献】特表2015-522707(JP,A)
【文献】特開2003-243052(JP,A)
【文献】特開2012-129298(JP,A)
【文献】特開2012-227112(JP,A)
【文献】特開平10-044286(JP,A)
【文献】特開2008-148090(JP,A)
【文献】特開2005-268243(JP,A)
【文献】特開2010-003901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H04N 5/369
H01L 31/10
H01L 51/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極、前記第1電極上に形成された受光層、及び、前記受光層上に形成された第2電極から成る積層構造体を備えており、
前記第2電極は、透明で導電性を有する非晶質酸化物であるインジウム-亜鉛酸化物(IZO)あるいはインジウム・ドープのガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)からなり、4.1eV乃至4.3eVの仕事関数を有し、
前記受光層の電子親和力が前記第2電極の仕事関数よりも小さく、
前記受光層のイオン化エネルギが前記第2電極の仕事関数よりも大きい
撮像素子。
【請求項2】
前記第2電極の仕事関数の値と前記第1電極の仕事関数の値との差は0.4eV以上0.9eV以下である
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記第2電極は、前記受光層側から、第1層及び第2層の積層構造を有し、
前記第1層及び前記第2層は、いずれもIn a (Ga,Al) b Zn c d からなり、
前記第2電極の前記第2層の仕事関数の値は、前記第2電極の前記第1層の仕事関数の値よりも低い
請求項1または請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
撮像素子を、複数、備えた固体撮像装置であって、
各々の前記撮像素子は、第1電極、前記第1電極上に形成された受光層、及び、前記受光層上に形成された第2電極から成る積層構造体を備えており、
前記第2電極は、透明で導電性を有する非晶質酸化物であるインジウム-亜鉛酸化物(IZO)あるいはインジウム・ドープのガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)からなり、4.1eV乃至4.3eVの仕事関数を有し、
前記受光層の電子親和力が前記第2電極の仕事関数よりも小さく、
前記受光層のイオン化エネルギが前記第2電極の仕事関数よりも大きい
固体撮像装置。
【請求項5】
前記第2電極の仕事関数の値と前記第1電極の仕事関数の値との差は0.4eV以上0.9eV以下である
請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記第2電極は、前記受光層側から、第1層及び第2層の積層構造を有し、
前記第1層及び前記第2層は、いずれもIn a (Ga,Al) b Zn c d からなり、
前記第2電極の前記第2層の仕事関数の値は、前記第2電極の前記第1層の仕事関数の値よりも低い
請求項4または請求項5に記載の固体撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像素子及び固体撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサー等を構成する撮像素子は、例えば、受光層(光電変換層)を2つの電極で挟み込んだ構造を有する。このような撮像素子にあっては、光が入射する透明電極は、通常、結晶性を有するITOから構成されている。しかしながら、このような透明電極は内部応力が大きく、受光層に応力ダメージを発生させ、屡々、撮像素子の特性低下を招く。このような透明電極の内部応力に起因した問題点を解決するための撮像素子(光電変換素子)が、例えば、特開2010-003901から周知である。即ち、この特許公開公報に開示された撮像素子(光電変換素子)は、
一対の電極の間に配置された光電変換層、及び、
一対の電極のうち一方と光電変換層とに挟まれた少なくとも1つの応力緩衝層、
を備えており、
応力緩衝層は、結晶層を含む積層構造、具体的には、結晶層とアモルファス層とを交互に2層ずつ(合計4層)、積層した構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-003901
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許公開公報に開示された技術では、応力緩衝層は、最低、4層構成であり、構造が複雑であるが故に、形成工程が複雑であるし、応力緩衝層の形成に長時間を要するといった問題を有する。
【0005】
従って、本開示の目的は、簡素な構造を有するにも拘わらず、受光層等に応力ダメージが発生し難い撮像素子、及び、係る撮像素子を備えた固体撮像装置、並びに、電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の撮像素子は、第1電極、第1電極上に形成された受光層、及び、受光層上に形成された第2電極から成る積層構造体を備えており、
第2電極は、透明で導電性を有する非晶質酸化物から成る。
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の固体撮像装置は、撮像素子を、複数、備えており、
各撮像素子は、第1電極、第1電極上に形成された受光層、及び、受光層上に形成された第2電極から成る積層構造体を備えており、
第2電極は、透明で導電性を有する非晶質酸化物から成る。
【0008】
上記の目的を達成するための本開示の電子デバイスは、第1電極、第1電極上に形成された発光・受光層、及び、発光・受光層上に形成された第2電極から成る積層構造体を備えており、
第2電極は、透明で導電性を有する非晶質酸化物から成る。
【発明の効果】
【0009】
本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置を構成する撮像素子、電子デバイスにあっては、第2電極が透明で導電性を有するので、入射した光を確実に受光層あるいは発光・受光層に到達させることができる。しかも、第2電極が非晶質酸化物から構成されているので、第2電極における内部応力が低減し、複雑な構成、構造を有する応力緩衝層を形成しなくとも、第2電極の形成時、受光層あるいは発光・受光層に応力ダメージが発生し難く、撮像素子や電子デバイスの特性低下を招く虞が無い。更には、第2電極が非晶質酸化物から構成されているので、封止性が向上する結果、従来の結晶性を有する透明電極から第2電極を構成する場合と比較して、撮像素子や電子デバイスにおける感度ムラを抑制することができる。尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A及び図1Bは、実施例1の撮像素子等の製造方法を説明するための基板等の模式的な一部断面図であり、図1Cは、実施例2の撮像素子等の模式的な一部断面図である。
図2図2は、実施例1において、スパッタリング法に基づき第2電極を形成する際の酸素ガス導入量(酸素ガス分圧)と第2電極の仕事関数の値の関係を求めた結果の一例を示すグラフである。
図3図3A及び図3Bは、それぞれ、実施例1及び比較例1の撮像素子等において得られたI-V曲線のグラフであり、図3Aは明電流の測定結果を示し、図3Bは暗電流の測定結果を示す。
図4図4A及び図4Bは、それぞれ、実施例1及び比較例1の撮像素子等におけるエネルギーダイヤグラムの概念図であり、図4C及び図4Dは、それぞれ、実施例1及び比較例1の撮像素子等における仕事関数の値の差とエネルギーダイヤグラムとの相関を示す概念図である。
図5図5は、実施例1において、第2電極成膜時の酸素ガス分圧と積層構造体の内部応力との関係を調べた結果を示すグラフである。
図6図6A及び図6Bは、それぞれ、比較例1及び実施例1における第2電極のX線回折分析結果を示すチャートである。
図7図7は、実施例3の固体撮像装置の概念図である。
図8図8は、実施例3の固体撮像装置の構成を示す図である。
図9図9Aは、シリコン半導体基板、LTO膜及び透明導電性材料から成る積層構造体の反り量測定結果を示すグラフであり、図9Bは、第2電極をIZO膜及びITO膜から構成した撮像素子における、撮像結果及び第2電極表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の撮像素子及び電子デバイス、全般に関する説明
2.実施例1(撮像素子及び電子デバイス)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(本開示の固体撮像装置)
5.その他
【0012】
〈本開示の撮像素子及び電子デバイス、全般に関する説明〉
本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置における撮像素子あるいは本開示の電子デバイスにあっては、第1電極と第2電極との間に0ボルトを印加したときに第1電極と第2電極との間を流れる暗電流の値をJd-0(アンペア)、第1電極と第2電極との間に5ボルトを印加したときに第1電極と第2電極との間を流れる暗電流の値をJd-5(アンペア)としたとき、
0.8≦Jd-5/Jd-0≦1.2
を満足する形態とすることができる。また、第1電極と第2電極との間に0ボルトを超え、5ボルト以下の電圧を印加したときに第1電極と第2電極との間を流れる暗電流の値をJd(アンペア)としたとき、
0.8≦Jd/Jd-0≦1.2
を満足する。ここで、暗電流は、光が照射されていない状態で、具体的には、暗所状態下、第1電極と第2電極との間に逆バイアス電圧を印加したとき、第1電極と第2電極との間を流れる電流を計測することで求めることができる。
【0013】
上記の好ましい形態を含む本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置における撮像素子あるいは本開示の電子デバイスにおいて、積層構造体は、10MPa乃至50MPaの圧縮応力の内部応力を有する形態であることが好ましく、これによって、第2電極の形成時、受光層あるいは発光・受光層に応力ダメージが発生することを、一層確実に抑制することができる。
【0014】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置における撮像素子あるいは本開示の電子デバイスにおいて、第2電極の表面粗さRaは1.5nm以下であり、Rqは2.5nm以下である形態であることが好ましい。尚、表面粗さRa,Rqは、JIS B0601:2013の規定に基づく。このような第2電極の平滑性は、第2電極における表面散乱反射を抑制し、第2電極へと入射する光の表面反射を低減することができ、第2電極を介して受光層あるいは発光・受光層に入射する光の光量ロスを抑制し、光電変換における明電流特性向上を図ることができる。
【0015】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置における撮像素子あるいは本開示の電子デバイスにおいて、第2電極の仕事関数は4.5eV以下である形態であることが好ましい。そして、この場合、第2電極の仕事関数の値は、4.1eV乃至4.5eVであることが一層好ましい。
【0016】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置における撮像素子あるいは本開示の電子デバイスにおいて、波長400nm乃至660nmの光に対する第2電極の光透過率は75%以上であることが望ましい。また、第1電極の、波長400nm乃至660nmの光に対する光透過率も75%以上であることが望ましい。
【0017】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置における撮像素子あるいは本開示の電子デバイスにおいて、第2電極の電気抵抗値は1×10-6Ω・cm以下であることが望ましい。あるいは又、第2電極のシート抵抗値は3×10Ω/□乃至1×103Ω/□であることが望ましい。
【0018】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置における撮像素子あるいは本開示の電子デバイスにおいて、第2電極の厚さは1×10-8m乃至1.5×10-7m、好ましくは2×10-8m乃至1×10-7mであることが望ましい。
【0019】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置における撮像素子あるいは本開示の電子デバイスにおいて、第2電極は、酸化インジウム、酸化錫及び酸化亜鉛から成る群から選択された1種類の材料に、アルミニウム、ガリウム、錫及びインジウムから成る群から選択された少なくとも1種類の材料を添加又はドーピングした材料から成る構成とすることができる。
【0020】
あるいは又、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置における撮像素子あるいは本開示の電子デバイスにおいて、第2電極は、Ina(Ga,Al)bZncdから成る構成、即ち、インジウム(In)と、ガリウム(Ga)及び/又はアルミニウム(Al)と、亜鉛(Zn)と、酸素(O)との少なくとも四元系化合物から構成された非晶質酸化物から成る構成とすることができる。そして、この場合、第2電極の仕事関数の値と第1電極の仕事関数の値との差は0.4eV以上であることが好ましく、更には、第2電極の仕事関数の値と第1電極の仕事関数の値との差を0.4eV以上とすることで、第2電極と第1電極との間にバイアス電圧を印加したとき、仕事関数の値の差に基づき受光層あるいは発光・受光層(以下、これらを総称して、『受光層等』と呼ぶ場合がある)において内部電界を発生させ、内部量子効率の向上を図る構成とすることができるし、暗電流の発生をより一層抑制することが可能となる。ここで、このような第2電極の仕事関数の値の制御は、スパッタリング法に基づき形成する際の酸素ガス導入量(酸素ガス分圧)を制御することによって達成することができる。
【0021】
また、第2電極をIna(Ga,Al)bZncdから成る構成とする場合、
第2電極は、受光層等の側から、第2B層及び第2A層の積層構造を有し、
第2電極の第2A層の仕事関数の値は、第2電極の第2B層の仕事関数の値よりも低い構成とすることもできる。そして、この場合、第2電極の第2A層の仕事関数の値と第2電極の第2B層の仕事関数の値との差は、0.1eV乃至0.2eVである構成とすることができ、更には、第1電極の仕事関数の値と第2電極の第2A層の仕事関数の値との差は0.4eV以上である構成とすることができる。あるいは又、第1電極の仕事関数の値と第2電極の第2A層の仕事関数の値との差を0.4eV以上とすることで、仕事関数の値の差に基づき受光層等において内部電界を発生させ、内部量子効率の向上を図る構成とすることができる。ここで、このような第2電極の第2A層及び第2B層の仕事関数の値の制御は、スパッタリング法に基づき形成する際の酸素ガス導入量(酸素ガス分圧)を制御することで達成することができる。また、第2電極の厚さは1×10-8m乃至1.5×10-7mであり、第2電極の第2A層の厚さと第2電極の第2B層の厚さの割合は9/1乃至1/9である構成とすることができる。尚、受光層等に対する酸素原子や酸素分子の影響を少なくするために、第2電極の第2A層の厚さよりも第2B層の厚さは薄いことが、より好ましい。このように、第2電極が第2A層及び第2B層の2層構造を有し、しかも、第2B層と第2A層の仕事関数の差を規定することによって、第2電極における仕事関数の最適化を図ることができ、キャリアの授受(移動)が一層容易になる。
【0022】
本開示の電子デバイスによって、光センサーやイメージセンサーを構成することができる。そして、この場合、発光・受光層を、例えば、有機光電変換材料から構成することができる。
【0023】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の撮像素子、本開示の固体撮像装置における撮像素子あるいは本開示の電子デバイス(以下、これらを総称して、『本開示の撮像素子等』と呼ぶ)において、受光層等における光(広くは電磁波であり、可視光、紫外線、赤外線を含む)の受光あるいは発光・受光は、第2電極を介して行われる。
【0024】
本開示の撮像素子等において、第2電極は、具体的には、インジウム-ガリウム酸化物(IGO)、インジウム・ドープのガリウム-亜鉛酸化物(IGZO,In-GaZnO4)、酸化アルミニウム・ドープの酸化亜鉛(AZO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、又は、ガリウム・ドープの酸化亜鉛(GZO)といった、透明導電性材料から構成されている形態とすることができる。これらの透明導電性材料から構成された第2電極の仕事関数の値は、例えば、4.1eV乃至4.5eVである。更には、これらの形態を含む本開示の撮像素子等において、第1電極は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、又は、酸化錫(SnO2)といった、透明導電性材料から構成されている形態とすることができる。これらの透明導電性材料から構成された第1電極の仕事関数の値は、例えば、4.8eV乃至5.0eVである。
【0025】
上述したように、本開示の撮像素子等において、第2電極をスパッタリング法に基づき形成する際の酸素ガス導入量(酸素ガス分圧)を制御することで、第2電極の仕事関数の値を制御することができる。また、第2電極をスパッタリング法に基づき形成する際の酸素ガス導入量(酸素ガス分圧)を制御することで、第2電極の第2A層及び第2B層の仕事関数の値を制御することができる。更には、本開示の撮像素子等にあっては、第2電極において、酸素の含有率が化学量論組成の酸素含有率よりも少ない形態とすることができる。ここで、酸素の含有率に基づいて第2電極の仕事関数の値を制御することができ、酸素の含有率が化学量論組成の酸素含有率よりも少なくなる程、即ち、酸素欠損が多くなる程、仕事関数の値は小さくなる。尚、第2電極の第2A層の酸素の含有率は、第2電極の第2B層の酸素の含有率よりも低い。
【0026】
第2電極をスパッタリング法に基づき形成するが、具体的には、マグネトロンスパッタリング法や平行平板スパッタリング法を挙げることができ、DC放電方式あるいはRF放電方式を用いたプラズマ発生形成方式を用いるものを挙げることができる。尚、本開示にあっては、酸素流量(酸素ガス導入量、酸素ガス分圧)によって仕事関数を制御することができるという大きな特徴を有する。
【0027】
第1電極を形成する方法として、第1電極を構成する材料にも依るが、真空蒸着法や反応性蒸着法、各種のスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、イオンプレーティング法といったPVD法、パイロゾル法、有機金属化合物を熱分解する方法、スプレー法、ディップ法、MOCVD法を含む各種のCVD法、無電解メッキ法、電解メッキ法を挙げることができる。
【0028】
以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示の電子デバイスにおいて、具体的には、例えば、第1電極が基板上に形成されており、受光層等が第1電極上に形成されており、第2電極が受光層等上に形成されている構成とすることができる。即ち、本開示の電子デバイスは、第1電極及び第2電極を備えた2端子型電子デバイス構造を有する。但し、これに限定するものではなく、更に制御電極を備えた3端子型電子デバイス構造としてもよく、制御電極への電圧の印加によって、流れる電流の変調を行うことが可能となる。3端子型電子デバイス構造として、具体的には、所謂ボトムゲート/ボトムコンタクト型、ボトムゲート/トップコンタクト型、トップゲート/ボトムコンタクト型、トップゲート/トップコンタクト型の電界効果型トランジスタ(FET)と同じ構成、構造を挙げることができる。尚、第2電極をカソード電極(陰極)として機能させる(即ち、電子を取り出す電極として機能させる)ことができる一方、第1電極をアノード電極(陽極)として機能させる(即ち、正孔を取り出す電極として機能させる)ことができる。受光層等が異なる光吸収スペクトルを有する撮像素子や電子デバイスを複数、積層した構造を採用することもできる。また、例えば、基板をシリコン半導体基板から構成し、このシリコン半導体基板に撮像素子や電子デバイスの駆動回路や、受光層等を設けておき、このシリコン半導体基板に撮像素子や電子デバイスを積層した構造を採用することもできる。
【0029】
受光層等は、アモルファス状態であってもよいし、結晶状態であってもよい。受光層等を構成する有機材料(有機光電変換材料)として、有機半導体材料、有機金属化合物、有機半導体微粒子を挙げることができるし、あるいは又、受光層等を構成する材料として、金属酸化物半導体、無機半導体微粒子、コア部材がシェル部材で被覆された材料、有機-無機ハイブリッド化合物を挙げることもできる。
【0030】
ここで、有機半導体材料として、具体的には、キナクリドン及びその誘導体に代表される有機色素、Alq3[tris(8-quinolinolato)aluminum(III)]に代表される前周期(周期表の左側の金属を指す)イオンを有機材料でキレート化した色素、フタロシアニン亜鉛(II)に代表される遷移金属イオンと有機材料によって錯形成された有機金属色素、ジナフトチエノチオフェン(DNTT)等を挙げることができる。
【0031】
また、有機金属化合物として、具体的には、上述した前周期イオンを有機材料でキレート化した色素、遷移金属イオンと有機材料によって錯形成された有機金属色素を挙げることができる。有機半導体微粒子として、具体的には、前述したキナクリドン及びその誘導体に代表される有機色素の会合体、前周期イオンを有機材料でキレート化した色素の会合体、遷移金属イオンと有機材料によって錯形成された有機金属色素の会合体、あるいは又、金属イオンをシアノ基で架橋したプルシアンブルー及びその誘導体、あるいは又、これらの複合会合体を挙げることができる。
【0032】
金属酸化物半導体あるいは無機半導体微粒子として、具体的には、ITO、IGZO、ZnO、IZO、IrO2、TiO2、SnO2、SiOX、カルゴゲン[例えば、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)]を含む金属カルゴゲン半導体(具体的には、CdS、CdSe、ZnS、CdSe/CdS、CdSe/ZnS、PbSe)、ZnO、CdTe、GaAs、及び、Siを挙げることができる。
【0033】
コア部材がシェル部材で被覆された材料、即ち、(コア部材,シェル部材)の組合せとして、具体的には、(ポリスチレン,ポリアニリン)といった有機材料や、(イオン化し難い金属材料,イオン化し易い金属材料)といった金属材料を挙げることができる。有機-無機ハイブリッド化合物として、具体的には、金属イオンをシアノ基で架橋したプルシアンブルー及びその誘導体を挙げることができるし、その他、ビピリジン類で金属イオンを無限架橋したもの、シュウ酸、ルベアン酸に代表される多価イオン酸で金属イオンを架橋したものの総称である配位高分子(Coordination Polymer)を挙げることができる。
【0034】
受光層等の形成方法として、使用する材料にも依るが、塗布法、物理的気相成長法(PVD法);MOCVD法を含む各種の化学的気相成長法(CVD法)を挙げることができる。ここで、塗布法として、具体的には、スピンコート法;浸漬法;キャスト法;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法といった各種印刷法;スタンプ法;スプレー法;エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、ナイフコーター法、スクイズコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、グラビアコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、スリットオリフィスコーター法、カレンダーコーター法といった各種コーティング法を例示することができる。尚、塗布法においては、溶媒として、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、エタノールといった無極性又は極性の低い有機溶媒を例示することができる。また、PVD法として、電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着等の各種真空蒸着法;プラズマ蒸着法;2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、バイアススパッタリング法等の各種スパッタリング法;DC(direct current)法、RF法、多陰極法、活性化反応法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法を挙げることができる。
【0035】
受光層等の厚さは、限定するものではないが、例えば、1×10-10m乃至5×10-7mを例示することができる。
【0036】
基板として、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。このような可撓性を有する高分子材料から構成された基板を使用すれば、例えば曲面形状を有する電子機器への電子デバイスの組込みあるいは一体化が可能となる。あるいは又、基板として、各種ガラス基板や、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、シリコン半導体基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン半導体基板、ステンレス鋼等の各種合金や各種金属から成る金属基板を挙げることができる。尚、絶縁膜として、酸化ケイ素系材料(例えば、SiOXやスピンオンガラス(SOG));窒化ケイ素(SiNY);酸窒化ケイ素(SiON);酸化アルミニウム(Al23);金属酸化物や金属塩を挙げることができる。また、表面にこれらの絶縁膜が形成された導電性基板(金やアルミニウム等の金属から成る基板、高配向性グラファイトから成る基板)を用いることもできる。基板の表面は、平滑であることが望ましいが、受光層等の特性に悪影響を及ぼさない程度のラフネスがあっても構わない。基板の表面にシランカップリング法によるシラノール誘導体を形成したり、SAM法等によりチオール誘導体、カルボン酸誘導体、リン酸誘導体等から成る薄膜を形成したり、CVD法等により絶縁性の金属塩や金属錯体から成る薄膜を形成することで、第1電極と基板との間の密着性を向上させてもよい。
【0037】
場合によっては、第2電極や第1電極を被覆層で被覆してもよい。被覆層を構成する材料として、酸化ケイ素系材料;窒化ケイ素(SiNY);酸化アルミニウム(Al23)等の金属酸化物高誘電絶縁膜にて例示される無機系絶縁材料だけでなく、ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリビニルフェノール(PVP);ポリビニルアルコール(PVA);ポリイミド;ポリカーボネート(PC);ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリスチレン;N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)等のシラノール誘導体(シランカップリング剤);オクタデカンチオール、ドデシルイソシアネイト等の一端に制御電極と結合可能な官能基を有する直鎖炭化水素類にて例示される有機系絶縁材料(有機ポリマー)を挙げることができるし、これらの組み合わせを用いることもできる。尚、酸化ケイ素系材料として、酸化シリコン(SiOX)、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、酸化窒化シリコン(SiON)、SOG(スピンオングラス)、低誘電率材料(例えば、ポリアリールエーテル、シクロパーフルオロカーボンポリマー及びベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG)を例示することができる。絶縁層の形成方法として、上述の各種PVD法;各種CVD法;スピンコート法;上述した各種の塗布法;ゾル-ゲル法;電着法;シャドウマスク法;及び、スプレー法の内のいずれかを挙げることができる。
【実施例1】
【0038】
実施例1は、本開示の撮像素子及び本開示の電子デバイスに関する。実施例1の撮像素子あるいは電子デバイスの模式的な一部断面図を図1Bに示す。
【0039】
実施例1あるいは後述する実施例2の撮像素子、電子デバイスは、第1電極21、第1電極21上に形成された受光層あるいは発光・受光層(受光層等23)、及び、受光層等23の上に形成された第2電極22から成る積層構造体を備えている。そして、第2電極22は、透明で導電性を有する非晶質酸化物から成る。ここで、第2電極22は、酸化インジウム、酸化錫及び酸化亜鉛から成る群から選択された1種類の材料に、アルミニウム、ガリウム、錫及びインジウムから成る群から選択された少なくとも1種類の材料を添加又はドーピングした材料から成る。あるいは又、第2電極22は、Ina(Ga,Al)bZncdから成る。即ち、第2電極22は、インジウム(In)と、ガリウム(Ga)及び/又はアルミニウム(Al)と、亜鉛(Zn)と、酸素(O)との少なくとも四元系化合物[Ina(Ga,Al)bZncd]から構成された非晶質酸化物から成る。尚、「a」、「b」、「c」、「d」は種々の値を取り得る。尚、「a」の値として0.5乃至1、「b」の値として0.5乃至1、「c」の値として0.5乃至1、「d」の値として4乃至7を例示することができるが、これらの値に限定するものではない。
【0040】
ここで、実施例1の撮像素子、電子デバイスにあっては、より具体的には、第1電極21がシリコン半導体基板から成る基板10上に形成されており、受光層等23が第1電極21上に形成されており、第2電極22が受光層等23の上に形成されている。即ち、実施例1あるいは後述する実施例2の電子デバイスは、第1電極21及び第2電極22を備えた2端子型電子デバイス構造を有する。受光層等23においては、具体的には、光電変換が行われる。そして、実施例1あるいは後述する実施例2の電子デバイスにあっては、第2電極22の仕事関数の値と第1電極21の仕事関数の値との差は0.4eV以上である。ここで、第2電極22の仕事関数の値と第1電極21の仕事関数の値との差を0.4eV以上とすることで、仕事関数の値の差に基づき受光層等23において内部電界を発生させ、内部量子効率の向上を図る。第2電極22はカソード電極(陰極)として機能する。即ち、電子を取り出す電極として機能する。一方、第1電極21はアノード電極(陽極)として機能する。即ち、正孔を取り出す電極として機能する。受光層等23は、有機光電変換材料、具体的には、例えば、厚さ0.1μmのキナクリドンから成る。
【0041】
また、第2電極22の仕事関数は4.5eV以下、具体的には、4.1eV乃至4.5eVである。より具体的には、実施例1において、第2電極22は、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)あるいはインジウム・ドープのガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)といった透明導電性材料から成る。また、第1電極21は、インジウム-スズ酸化物(ITO)といった透明導電性材料から成る。ここで、IZOあるいはIGZOの仕事関数は、成膜条件にも依るが、4.1eV乃至4.3eVである。また、ITOの仕事関数は、成膜条件にも依るが、4.8eV乃至5.0eVである。尚、第2電極22を構成する材料として、その他、酸化アルミニウム・ドープの酸化亜鉛(AZO)、インジウム-ガリウム酸化物(IGO)、又は、ガリウム・ドープの酸化亜鉛(GZO)といった透明導電性材料を挙げることができるし、第1電極21を構成する材料として、その他、第2電極22とは異なる成膜条件で形成したインジウム-亜鉛酸化物(IZO)や、酸化錫(SnO2)といった透明導電性材料を挙げることができる。尚、以上の説明は、後述する実施例2においても、概ね同様である。
【0042】
そして、実施例1あるいは後述する実施例2の撮像素子、電子デバイスにあっては、第2電極22の、波長400nm乃至660nmの光に対する光透過率は75%以上であり、第1電極21の、波長400nm乃至660nmの光に対する光透過率も75%以上である。第2電極22、第1電極21の光透過率は、透明なガラス板の上に第2電極22、第1電極21を成膜することで、測定することができる。また、第2電極22の電気抵抗値は1×10-6Ω・cm以下であり、第2電極22のシート抵抗値は3×10Ω/□乃至1×103Ω/□である。第2電極22の厚さは1×10-8m乃至1.5×10-7m、好ましくは2×10-8m乃至1×10-7mである。更には、第2電極22の表面粗さRaは1.5nm以下であり、Rqは2.5nm以下である。より具体的には、厚さ100μmのIZOから成る第2電極22の電気抵抗値は6×10-6Ω・cmであり、シート抵抗値は60Ω/□である。また、厚さ100μmのIGZOから成る第2電極22の電気抵抗値は2×10-5Ω・cmであり、シート抵抗値は2×102Ω/□である。
【0043】
以下、実施例1の撮像素子、電子デバイスの製造方法を、図1A及び図1Bを参照して、説明する。
【0044】
[工程-100]
シリコン半導体基板から成る基板10を準備する。ここで、基板10には、例えば、撮像素子や電子デバイスの駆動回路や受光層等(これらは図示せず)、配線11が設けられており、表面には絶縁層12が形成されている。絶縁層12には、底部に配線11が露出した開口部13が設けられている。そして、開口部13内を含む絶縁層12上に、スパッタリング法に基づき、ITOから成る第1電極21を形成(成膜)する(図1A参照)。
【0045】
[工程-110]
次いで、第1電極21のパターニングを行った後、全面に、真空蒸着法にて、キナクリドンから成る受光層等23を形成(成膜)し、更に、受光層等23上に、スパッタリング法に基づき、IZOあるいはIGZOから成る第2電極22を形成(成膜)する。こうして、図1Bに示す構造を有する実施例1の電子デバイスを得ることができる。
【0046】
ここで、スパッタリング法に基づき第2電極22を形成する際の酸素ガス導入量(酸素ガス分圧)を制御することで、第2電極22の仕事関数の値を制御する。酸素ガス分圧と、IGZOから成る第2電極22の仕事関数の値の関係を求めた結果の一例を図2のグラフに示すが、酸素ガス分圧の値が高くなるに従い、即ち、酸素欠損が少なくなる程、第2電極22の仕事関数の値は高くなり、酸素ガス分圧の値が低くなるに従い、即ち、酸素欠損が多くなる程、第2電極22の仕事関数の値は低くなっている。尚、スパッタリング装置として、平行平板スパッタリング装置あるいはDCマグネトロンスパッタリング装置を用い、プロセスガスとしてアルゴン(Ar)ガスを使用し、ターゲットとしてInGaZnO4焼結体を用いた。尚、酸素ガス分圧とIZOから成る第2電極22の仕事関数の値の関係も、酸素ガス分圧とIGZOから成る第2電極22の仕事関数の値の関係と同様の関係であった。
【0047】
このように、実施例1の電子デバイスにあっては、第2電極22をスパッタリング法に基づき形成する際の酸素ガス導入量(酸素ガス分圧)を制御することで、第2電極22の仕事関数の値が制御される。尚、第2電極22において、酸素の含有率は化学量論組成の酸素含有率よりも少ない。
【0048】
IZOから成る第2電極22を備えた実施例1の撮像素子、電子デバイス(光電変換素子)、及び、比較例1の撮像素子、電子デバイス(光電変換素子)において得られたI-V曲線を図3A及び図3Bに示す。尚、図3Aには明電流を示し、図3Bには暗電流を示す。また、図3A図3B中、「A」は、実施例1の撮像素子、電子デバイスの測定結果であり、「B」は、比較例1の撮像素子、電子デバイスの測定結果である。ここで、比較例1の電子デバイスは、実施例1の電子デバイスの第2電極22を、IZOの代わりにITOから構成したものである。また、以下に説明する実施例1の撮像素子、電子デバイスは、IZOから成る第2電極22を備えている。
【0049】
図3Bから、実施例1の撮像素子、電子デバイスにあっては、逆バイアス電圧が-5ボルトまで(図3Bには-3ボルトまで示している)、殆ど変化がなかった。即ち、第1電極21と第2電極22との間に0ボルトを印加したときに第1電極21と第2電極22との間を流れる暗電流の値をJd-0(アンペア)、第1電極21と第2電極22との間に5ボルトを印加したとき(-5ボルトの逆バイアス電圧を印加したとき)に第1電極21と第2電極22との間を流れる暗電流の値をJd-5(アンペア)としたとき、
0.8≦Jd-5/Jd-0≦1.2
を満足している。また、第1電極21と第2電極22との間に0ボルトを超え、5ボルト以下の電圧(逆バイアス電圧)を印加したときに第1電極21と第2電極22との間を流れる暗電流の値をJd(アンペア)としたとき、
0.8≦Jd/Jd-0≦1.2
を満足している。
【0050】
また、実施例1及び比較例1の電子デバイスの内部量子効率の値、オン/オフ比の値は、以下の表1のとおりであった。尚、内部量子効率ηは、入射フォトン数に対する生成された電子数の比であり、以下の式で表すことができる。
【0051】
η={(h・c)/(q・λ)}(I/P)=(1.24/λ)(I/P)
ここで、
h:プランク定数
c:光速
q:電子の電荷
λ:入射光の波長(μm)
I:明電流であり、実施例1の測定にあっては、逆バイアス電圧1ボルトにおいて得られる電流値(アンペア/cm2
P:入射光のパワー(アンペア/cm2
である。
【0052】
また、実施例1及び比較例1における第2電極22の表面粗さRa、Rqの測定結果、光透過率の測定結果を表2に示す。
【0053】
[表1]
内部量子効率(%) オン/オフ比
実施例1 63 3.4
比較例1 45 1.6
【0054】
[表2]
実施例1 比較例1
Ra 0.36nm 2.5nm
Rq 0.46nm 3.6nm
波長450nmにおける光透過率 93% 78%
波長550nmにおける光透過率 88% 84%
【0055】
比較例1の電子デバイスにあっては、第2電極及び第1電極を共にITOから構成しているので、エネルギーダイヤグラムの概念図を図4Bに示すように、第1電極の仕事関数の値と第2電極の仕事関数の値との差は無い。従って、第1電極からの正孔が第2電極に流入し易く、その結果、暗電流が増加する。また、第1電極の仕事関数の値と第2電極の仕事関数の値との差が無いので、電子及び正孔の取り出し時、電位勾配が存在せず(即ち、受光層等において内部電界が発生せず)、電子及び正孔の円滑な取り出しが困難となる(図4Dの概念図を参照)。一方、実施例1の電子デバイスにあっては、第2電極をIZOから構成し、第1電極をITOから構成しており、第1電極の仕事関数の値と第2電極の仕事関数の値との差は、0.4eV以上である。エネルギーダイヤグラムの概念図を図4Aに示す。従って、第1電極からの正孔が第2電極に流入することを防ぐことができる結果、暗電流の発生を抑制することができる。また、第1電極の仕事関数の値と第2電極の仕事関数の値との差が0.4eV以上あるので、電子及び正孔の取り出し時、電位勾配が発生し(即ち、受光層等において内部電界が発生し)、この電位勾配を応用して電子及び正孔の円滑な取り出しを行うことができる(図4Cの概念図を参照)。
【0056】
また、第2電極22の成膜時の酸素ガス分圧と、積層構造体の内部応力との関係を調べた。スパッタリング装置として、平行平板スパッタリング装置あるいはDCマグネトロンスパッタリング装置を用い、プロセスガスとしてアルゴン(Ar)ガスを使用し、ターゲットとしてInZnO焼結体を用いた。その結果を図5に示す。ここで、図5の横軸は、酸素ガス分圧〈=(O2ガス圧力)/(ArガスとO2ガスの圧力合計)〉を示し、縦軸は、積層構造体の内部応力(単位:MPa)を示す。また、図5に示すデータは、
厚さ100nmのITOから成る第1電極
厚さ100nmのキナクリドンから成る受光層等
厚さ100nmの非晶質酸化物であるIZOから成る第2電極(実施例1)、あるいは、厚さ100nmの結晶酸化物であるITOとから成る第2電極(比較例1)
を、この順に、ガラス基板上に成膜して得られた積層構造体のデータである。尚、室温(具体的には、22゜C乃至28゜C)において、スパッタリング法に基づきIZO膜あるいはITO膜を成膜した。また、シリコンウェハ上に積層構造体を成膜した。内部応力は、市販の薄膜ストレス測定装置を用いて、周知の方法に基づき測定した。
【0057】
更には、得られた第2電極をX線回折試験に供した。その結果を、図6A及び図6Bに示す。尚、図6Aは、比較例1における第2電極のX線回折分析結果を示すチャートであり、図6Bは、実施例1における第2電極のX線回折分析結果を示すチャートである。図6Bから、成膜条件に依ること無く、実施例1の第2電極は非晶質であることが判る。また、図6Aから、比較例1の第2電極は高い結晶性を有することが判る。尚、図6Bにおけるチャート「a」、「b」、「c」、「d」は成膜条件の違いを示しており、チャート「a」は、スパッタ投入電力200ワットのときのデータ、チャート「b」は、スパッタ投入電力150ワットのときのデータ、チャート「c」は、スパッタ投入電力100ワットのときのデータ、チャート「d」は、スパッタ投入電力50ワットのときのデータである。
【0058】
また、図5から、実施例1の撮像素子、電子デバイスにおいて、積層構造体は、10MPa乃至50MPaの圧縮応力の内部応力を有することが判る。一方、比較例1の撮像素子、電子デバイスにおいて、積層構造体は、150MPa乃至180MPaといった非常に高い圧縮応力の内部応力を有することが判る。シリコンウェハ上に成膜して応力測定した積層構造体の各試料を30秒間アセトンに浸漬した後、光学顕微鏡(倍率5倍)を用いて絶縁層の状態を観察した。その結果、実施例1にあっては、浸漬前後で変化が無かったが、比較例1にあっては、受光層等と第2電極との間の一部分に剥離が認められた。こうして、第2電極22を非晶質酸化物から構成することで、第2電極22の形成時、受光層等に応力ダメージが発生することを、確実に抑制することができることが判った。
【0059】
次に、実施例1の第2電極の封止性を検討した。具体的には、第2電極の透水性の評価を行った。透水性の評価にあっては、具体的には、シリコン半導体基板上に厚さ0.1μmのLTO(Low Temperature Oxide、低温CVD-SiO2)膜を成膜し、このLTO膜上に第2電極を構成する透明導電性材料を成膜した。そして、大気放置下、透明導電性材料を介してLTO膜が大気中の水分を吸湿することによって経時的に発生、変化する、シリコン半導体基板、LTO膜及び透明導電性材料から成る積層構造体の反り量を測定した。
【0060】
ITO膜、及び、内部応力の異なるIZO膜における反り量測定結果を、図9Aに示す。ここで、図9A中、「A」は内部応力-10MPa(圧縮応力10MPa)のIZO膜の測定結果であり、「B」は内部応力-50MPa(圧縮応力50MPa)のIZO膜の測定結果であり、「C」は内部応力-250MPa(圧縮応力250MPa)のITO膜の測定結果である。ITO膜に比較して、IZO膜は、高い封止性(低い透水性)を有していることが判る。
【0061】
内部応力-250MPaのIZO膜、及び、内部応力-50MPaのITO膜のそれぞれから、第2電極を構成した撮像素子(実施例1の撮像素子及び比較例1の撮像素子)を試作し、これらの撮像素子から構成した撮像装置によって撮像した撮像結果を図9Bに示す。併せて、IZO膜及びITO膜の表面の走査型電子顕微鏡写真を図9Bに示す。図9Bから、第2電極をIZO膜から構成した実施例1の撮像素子による撮像結果は、第2電極をITO膜から構成した比較例1の撮像素子による撮像結果と比較して、感度ムラが大きく改善されていることが明らかである。IZO膜が非晶質であるが故の封止性の向上(透水性の低下)が、感度ムラの低減に大きく寄与していると考えられる。また、表面の走査型電子顕微鏡写真から、ITO膜は結晶性を有しているので水分の浸入が容易に起こり易くなっているのに対し、IZO膜は非晶質であるため一様であり、その結果、水分の侵入を抑制していると考えられる。
【0062】
第2電極22をIZOの代わりにIGZOから構成した場合も、以上に説明したと同様の結果が得られた。
【0063】
以上のとおり、実施例1の撮像素子、電子デバイスにあっては、第2電極が透明で導電性を有するので、入射した光を確実に受光層等に到達させることができ、しかも、第2電極が非晶質酸化物から構成されているので、第2電極における内部応力が低減し、複雑な構成、構造を有する応力緩衝層を形成しなくとも、第2電極の形成時、受光層等に応力ダメージが発生し難い。しかも、実施例1の撮像素子、電子デバイスにあっては、第1電極の仕事関数の値と第2電極の仕事関数の値との差が規定されているので、第2電極と第1電極との間にバイアス電圧(より具体的には、逆バイアス電圧)を印加したとき、仕事関数の値の差に基づき受光層等において大きな内部電界を発生させることができる結果、内部量子効率の向上を図ることができるし、即ち、光電流の増加を図ることができるし、また、暗電流の発生を抑制することが可能である。また、第2電極の表面が非常に平滑なので、第2電極における表面散乱反射を抑制することができる結果、第2電極へと入射する光の表面反射が低減され、第2電極を介して受光層等に入射する光の光量ロスを抑制することができ、光電変換における明電流特性の一層の向上を図ることができる。更には、実施例1の第2電極は、高い封止性、低い透水性を有しており、実施例1の撮像素子、電子デバイスにあっては感度ムラが大きく改善される。
【実施例2】
【0064】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2の電子デバイスの模式的な一部断面図を図1Cに示す。
【0065】
実施例2の電子デバイスにおいて、第2電極22は、受光層等側から、第2B層22B及び第2A層22Aの積層構造を有し、第2電極22の第2A層22Aの仕事関数の値は、第2電極22の第2B層22Bの仕事関数の値よりも低い。具体的には、第2電極22の第2A層22Aの仕事関数の値と第2電極22の第2B層22Bの仕事関数の値との差は、0.1eV乃至0.2eV、より具体的には、0.15eVであり、第1電極21の仕事関数の値と第2電極22の第2A層22Aの仕事関数の値との差は0.4eV以上である。また、第2電極22の厚さは、1×10-8m乃至1.5×10-7m、具体的には、50nmであり、第2電極22の第2A層22Aの厚さと第2電極22の第2B層22Bの厚さの割合は9/1乃至1/9、具体的には、9/1である。実施例2にあっても、第1電極21の仕事関数の値と第2電極22の第2A層22Aの仕事関数の値との差を0.4eV以上とすることで、仕事関数の値の差に基づき受光層等において内部電界を発生させ、内部量子効率の向上を図る。ここで、第2A層22Aの組成をIna(Ga,Al)bZncdとし、第2B層22Bの組成をIna'(Ga,Al)b'Znc'd'としたとき、a=a’,b=b’,c=c’であり、更には、d<d’である。
【0066】
実施例2の電子デバイスにおける電極形成方法にあっては、実施例1の[工程-110]と同様の工程において、例えば、図2のグラフに示したように、スパッタリング法に基づき形成する際の酸素ガス導入量を制御することで、第2電極22の第2A層22A及び第2B層22Bの仕事関数の値を制御する。
【0067】
実施例2の電子デバイスにあっては、第2電極が第2A層と第2B層から構成され、しかも、第2A層と第2B層の仕事関数の差が規定されているので、第2電極における仕事関数の最適化を図ることができ、キャリアの授受(移動)が一層容易になる。
【実施例3】
【0068】
実施例3は、本開示の固体撮像装置に関する。実施例3の固体撮像装置は、実施例1~実施例2の撮像素子(光電変換素子)を、複数、備えている。
【0069】
図7に実施例3の固体撮像装置の概念図を示し、図8に実施例3の固体撮像装置の構成を示す。実施例3の撮像装置100は、固体撮像装置40、並びに、周知の、レンズ群101、デジタルシグナルプロセッサ(DSP,Digital Signal Pocessor)102、フレームメモリ103、表示装置104、記録装置105、操作系106,電源系107から構成されており、これらはバスライン108で電気的に接続されている。そして、実施例3における固体撮像装置40は、半導体基板(例えばシリコン半導体基板)上に、実施例1~実施例2において説明した撮像素子30が2次元アレイ状に配列された撮像領域41、並びに、その周辺回路としての垂直駆動回路42、カラム信号処理回路43、水平駆動回路44、出力回路45及び制御回路46等から構成されている。尚、これらの回路は周知の回路から構成することができるし、また、他の回路構成(例えば、従来のCCD撮像装置やCMOS撮像装置にて用いられる各種の回路)を用いて構成することができることは云うまでもない。
【0070】
制御回路46は、垂直同期信号、水平同期信号及びマスタクロックに基づいて、垂直駆動回路42、カラム信号処理回路43及び水平駆動回路44の動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成する。そして、生成されたクロック信号や制御信号は、垂直駆動回路42、カラム信号処理回路43及び水平駆動回路44に入力される。
【0071】
垂直駆動回路42は、例えば、シフトレジスタによって構成され、撮像領域41の各撮像素子30を行単位で順次垂直方向に選択走査する。そして、各撮像素子30における受光量に応じて生成した電流(信号)に基づく画素信号は、垂直信号線47を介してカラム信号処理回路43に送られる。
【0072】
カラム信号処理回路43は、例えば、撮像素子30の列毎に配置されており、1行分の撮像素子30から出力される信号を撮像素子毎に黒基準画素(図示しないが、有効画素領域の周囲に形成される)からの信号によって、ノイズ除去や信号増幅の信号処理を行う。カラム信号処理回路43の出力段には、水平選択スイッチ(図示せず)が水平信号線48との間に接続されて設けられる。
【0073】
水平駆動回路44は、例えばシフトレジスタによって構成され、水平走査パルスを順次出力することによって、カラム信号処理回路43の各々を順次選択し、カラム信号処理回路43の各々から信号を水平信号線48に出力する。
【0074】
出力回路45は、カラム信号処理回路43の各々から水平信号線48を介して順次供給される信号に対し、信号処理を行って出力する。
【0075】
受光層等を構成する材料にも依るが、受光層等それ自体がカラーフィルターとしても機能する構成とすることができるので、カラーフィルターを配設しなくとも色分離が可能である。但し、場合によっては、撮像素子30の光入射側の上方には、例えば、赤色、緑色、青色、シアン色、マゼンダ色、黄色等の特定波長を透過させる周知のカラーフィルターを配設してもよい。また、固体撮像装置は、表面照射型とすることもできるし、裏面照射型とすることもできる。また、必要に応じて、撮像素子30への光の入射を制御するためのシャッターを配設してもよい。
【0076】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明した撮像素子、電子デバイスや固体撮像装置の構造や構成、製造条件、製造方法、使用した材料は例示であり、適宜変更することができる。本開示の電子デバイスを太陽電池として機能させる場合には、第2電極と第1電極との間に電圧を印加しない状態で受光層等に光を照射すればよい。また、本開示の電子デバイスによって、光センサーやイメージセンサーを構成することができる。
【0077】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《撮像素子》
第1電極、第1電極上に形成された受光層、及び、受光層上に形成された第2電極から成る積層構造体を備えており、
第2電極は、透明で導電性を有する非晶質酸化物から成る撮像素子。
[A02]第1電極と第2電極との間に0ボルトを印加したときに第1電極と第2電極との間を流れる暗電流の値をJd-0(アンペア)、第1電極と第2電極との間に5ボルトを印加したときに第1電極と第2電極との間を流れる暗電流の値をJd-5(アンペア)としたとき、
0.8≦Jd-5/Jd-0≦1.2
を満足する[A01]に記載の撮像素子。
[A03]積層構造体は、10MPa乃至50MPaの圧縮応力の内部応力を有する[A01]又は[A02]に記載の撮像素子。
[A04]第2電極の表面粗さRaは1.5nm以下であり、Rqは2.5nm以下である[A01]乃至[A03]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A05]第2電極の仕事関数は4.5eV以下である[A01]乃至[A04]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A06]第2電極の仕事関数の値は、4.1eV乃至4.5eVである[A05]に記載の撮像素子。
[A07]波長400nm乃至660nmの光に対する第2電極の光透過率は75%以上である[A01]乃至[A06]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A08]第2電極の電気抵抗値は1×10-6Ω・cm以下である[A01]乃至[A07]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A09]第2電極のシート抵抗値は、3×10Ω/□乃至1×103Ω/□である[A01]乃至[A08]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A10]第2電極の厚さは1×10-8m乃至1.5×10-7mである[A01]乃至[A09]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A11]第2電極の厚さは2×10-8m乃至1×10-7mである[A10]に記載の撮像素子。
[A12]第2電極は、酸化インジウム、酸化錫及び酸化亜鉛から成る群から選択された1種類の材料に、アルミニウム、ガリウム、錫及びインジウムから成る群から選択された少なくとも1種類の材料を添加又はドーピングした材料から成る[A01]乃至[A11]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A13]第2電極は、Ina(Ga,Al)bZncdから成る[A01]乃至[A11]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A14]第2電極の仕事関数の値と第1電極の仕事関数の値との差は0.4eV以上である[A12]又は[A13]に記載の撮像素子。
[A15]第2電極の仕事関数の値と第1電極の仕事関数の値との差を0.4eV以上とすることで、仕事関数の値の差に基づき受光層において内部電界を発生させ、内部量子効率の向上を図る[A14]に記載の撮像素子。
[A16]第2電極は、受光層側から、第2B層及び第2A層の積層構造を有し、
第2電極の第2A層の仕事関数の値は、第2電極の第2B層の仕事関数の値よりも低い[A13]に記載の撮像素子。
[A17]第2電極の第2A層の仕事関数の値と第2電極の第2B層の仕事関数の値との差は、0.1eV乃至0.2eVである[A16]に記載の撮像素子。
[A18]第1電極の仕事関数の値と第2電極の第2A層の仕事関数の値との差は0.4eV以上である[A16]又は[A17]に記載の撮像素子。
[A19]第1電極の仕事関数の値と第2電極の第2A層の仕事関数の値との差を0.4eV以上とすることで、仕事関数の値の差に基づき受光層において内部電界を発生させ、内部量子効率の向上を図る[A18]に記載の撮像素子。
[A20]第2電極の厚さは1×10-8m乃至1.5×10-7mであり、
第2電極の第2A層の厚さと第2電極の第2B層の厚さの割合は9/1乃至1/9である[A16]乃至[A19]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A21]第2電極は、インジウム-ガリウム酸化物、インジウム・ドープのガリウム-亜鉛酸化物、酸化アルミニウム・ドープの酸化亜鉛、インジウム-亜鉛酸化物、又は、ガリウム・ドープの酸化亜鉛から構成されている[A01]乃至[A20]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A22]第1電極は、インジウム-スズ酸化物、インジウム-亜鉛酸化物、又は、酸化錫から構成されている[A01]乃至[A21]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A23]第2電極をスパッタリング法に基づき形成する際の酸素ガス導入量を制御することで、第2電極の仕事関数の値が制御される[A01]乃至[A22]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[A24]第2電極において、酸素の含有率が化学量論組成の酸素含有率よりも少ない[A01]乃至[A23]のいずれか1項に記載の撮像素子。
[B01]《固体撮像装置》
撮像素子を、複数、備えた固体撮像装置であって、
各撮像素子は、第1電極、第1電極上に形成された受光層、及び、受光層上に形成された第2電極から成る積層構造体を備えており、
第2電極は、透明で導電性を有する非晶質酸化物から成る固体撮像装置。
[B02][A01]乃至[A24]のいずれか1項に記載の撮像素子を、複数、備えた固体撮像装置。
[C01]第1電極、第1電極上に形成された発光・受光層、及び、発光・受光層上に形成された第2電極から成る積層構造体を備えており、
第2電極は、透明で導電性を有する非晶質酸化物から成る電子デバイス。
[C02]第1電極と第2電極との間に0ボルトを印加したときに第1電極と第2電極との間を流れる暗電流の値をJd-0(アンペア)、第1電極と第2電極との間に5ボルトを印加したときに第1電極と第2電極との間を流れる暗電流の値をJd-5(アンペア)としたとき、
0.8≦Jd-5/Jd-0≦1.2
を満足する[C01]に記載の電子デバイス。
[C03]積層構造体は、10MPa乃至50MPaの圧縮応力の内部応力を有する[C01]又は[C02]に記載の電子デバイス。
[C04]第2電極の表面粗さRaは1.5nm以下であり、Rqは2.5nm以下である[C01]乃至[C03]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C05]第2電極の仕事関数は4.5eV以下である[C01]乃至[C04]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C06]第2電極の仕事関数の値は、4.1eV乃至4.5eVである[C05]に記載の電子デバイス。
[C07]波長400nm乃至660nmの光に対する第2電極の光透過率は75%以上である[C01]乃至[C06]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C08]第2電極の電気抵抗値は1×10-6Ω・cm以下である[C01]乃至[C07]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C09]第2電極のシート抵抗値は、3×10Ω/□乃至1×103Ω/□である[C01]乃至[C08]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C10]第2電極の厚さは1×10-8m乃至1.5×10-7mである[C01]乃至[C09]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C11]第2電極の厚さは2×10-8m乃至1×10-7mである[C10]に記載の電子デバイス。
[C12]第2電極は、酸化インジウム、酸化錫及び酸化亜鉛から成る群から選択された1種類の材料に、アルミニウム、ガリウム、錫及びインジウムから成る群から選択された少なくとも1種類の材料を添加又はドーピングした材料から成る[C01]乃至[C11]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C13]第2電極は、Ina(Ga,Al)bZncdから成る[C01]乃至[C11]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C14]第2電極の仕事関数の値と第1電極の仕事関数の値との差は0.4eV以上である[C12]又は[C13]に記載の電子デバイス。
[C15]第2電極の仕事関数の値と第1電極の仕事関数の値との差を0.4eV以上とすることで、仕事関数の値の差に基づき発光・受光層において内部電界を発生させ、内部量子効率の向上を図る[C14]に記載の電子デバイス。
[C16]第2電極は、発光・受光層側から、第2B層及び第2A層の積層構造を有し、
第2電極の第2A層の仕事関数の値は、第2電極の第2B層の仕事関数の値よりも低い[C13]に記載の電子デバイス。
[C17]第2電極の第2A層の仕事関数の値と第2電極の第2B層の仕事関数の値との差は、0.1eV乃至0.2eVである[C16]に記載の電子デバイス。
[C18]第1電極の仕事関数の値と第2電極の第2A層の仕事関数の値との差は0.4eV以上である[C16]又は[C17]に記載の電子デバイス。
[C19]第1電極の仕事関数の値と第2電極の第2A層の仕事関数の値との差を0.4eV以上とすることで、仕事関数の値の差に基づき発光・受光層において内部電界を発生させ、内部量子効率の向上を図る[C18]に記載の電子デバイス。
[C20]第2電極の厚さは1×10-8m乃至1.5×10-7mであり、
第2電極の第2A層の厚さと第2電極の第2B層の厚さの割合は9/1乃至1/9である[C16]乃至[C19]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C21]第2電極は、インジウム-ガリウム酸化物、インジウム・ドープのガリウム-亜鉛酸化物、酸化アルミニウム・ドープの酸化亜鉛、インジウム-亜鉛酸化物、又は、ガリウム・ドープの酸化亜鉛から構成されている[C01]乃至[C20]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C22]第1電極は、インジウム-スズ酸化物、インジウム-亜鉛酸化物、又は、酸化錫から構成されている[C01]乃至[C21]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C23]第2電極をスパッタリング法に基づき形成する際の酸素ガス導入量を制御することで、第2電極の仕事関数の値が制御される[C01]乃至[C22]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
[C24]第2電極において、酸素の含有率が化学量論組成の酸素含有率よりも少ない[C01]乃至[C23]のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【符号の説明】
【0078】
10・・・基板、11・・・配線、12・・・絶縁層、13・・・開口部、21・・・第1電極、22・・・第2電極、22A・・・第2電極の第2A層、22B・・・第2電極の第2B層、23・・・受光層あるいは発光・受光層(受光層等)、30・・・撮像素子、40・・・固体撮像装置、41・・・撮像領域、42・・・垂直駆動回路、43・・・カラム信号処理回路、44・・・水平駆動回路、45・・・出力回路、46・・・制御回路、47・・・垂直信号線、48・・・水平信号線、101・・・レンズ群、102・・・デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、103・・・フレームメモリ、104・・・表示装置、105・・・記録装置、106・・・操作系、107・・・電源系、108・・・バスライン
図1
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図4
図5
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