(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】基板保持装置およびイオン注入装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20221025BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20221025BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20221025BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20221025BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/265 603D
H01J37/20 B
H01J37/20 A
H01J37/317 B
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2020154970
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】302054866
【氏名又は名称】日新イオン機器株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 亮介
(72)【発明者】
【氏名】小野田 正敏
(72)【発明者】
【氏名】中澤 喜之
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063166(JP,A)
【文献】特開2017-074786(JP,A)
【文献】特開2010-093022(JP,A)
【文献】特開2005-330106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/265
H01J 37/20
H01J 37/317
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入装置に使用され、
基板を保持するホルダと、
前記ホルダに接合され、前記ホルダの回転軸を規定する軸部材と、
前記ホルダの前記回転軸方向の両端より外方で前記軸部材を回転可能に支持しつつ、前記軸部材の前記回転軸方向の移動を規制する一対の支持板を有するホルダ支持部材と、を備え、
前記ホルダが前記回転軸を中心とする回転動作により倒伏位置と起立位置との間を移動できるよう構成され、
前記起立位置において前記ホルダに保持された基板にイオンビームが照射される基板保持装置であって、
前記ホルダは、
前記回転軸上で互いに離間して配置され、前記基板を支持する複数の基板支持部材と、
各前記基板支持部材の前記起立位置における下方側または上方側の端部に接合され、前記複数の基板支持部材を連結する第一の連結部材と、を有し、
前記軸部材は、前記回転軸に沿って各基板支持部材に接合されて
おり、
前記ホルダの前記回転動作を駆動させる駆動装置をさらに備え、
前記駆動装置は、前記軸部材の前記ホルダの前記両端より外方の両方に、前記軸部材を同一方向に回転させる回転力を与えるよう構成されている基板保持装置。
【請求項2】
前記複数の基板支持部材のうち少なくとも一つは、
前記基板が支持される側の支持面を有する長尺状の板材から成り、
前記軸部材が接合される接合位置と前記起立位置における上方側または下方側の端部との間の少なくとも一部の領域において、前記支持面からの厚さ寸法が前記接合位置側から前記端部側にかけて次第に小さくなるよう構成されている請求項1に記載の基板保持装置。
【請求項3】
前記ホルダは、各前記基板支持部材の前記起立位置における下方側または上方側の端部のうち、前記第一の連結部材により連結される側と異なる側の端部を連結する第二の連結部材をさらに備える請求項1または2に記載の基板保持装置。
【請求項4】
基板にイオン注入処理が施される処理室と、前記処理室内に配置された基板保持装置と、を備えるイオン注入装置であって、
前記基板保持装置は、
基板を保持するホルダと、
前記ホルダに接合され、前記ホルダの回転軸を規定する軸部材と、
前記ホルダの前記回転軸方向の両端より外方で前記軸部材を回転可能に支持しつつ、前記軸部材の前記回転軸方向の移動を規制する一対の支持板を有するホルダ支持部材と、を備え、
前記ホルダが前記回転軸を中心とする回転動作により、倒伏位置と起立位置との間を移動できるよう構成されており、
前記ホルダは、
前記回転軸上で互いに離間して配置され、前記基板を支持する複数の基板支持部材と、
各前記基板支持部材の前記起立位置における下方側または上方側の端部に接合され、前記複数の基板支持部材を連結する第一の連結部材と、を有し、
前記軸部材は、前記回転軸に沿って前記複数の基板支持部材に接合されて
おり、
前記基板保持装置は、前記ホルダの前記回転動作を駆動させる駆動装置をさらに備え、
前記駆動装置は、前記軸部材の前記ホルダの前記両端より外方の両方に、前記軸部材を同一方向に回転させる回転力を与えるよう構成されているイオン注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板保持装置および当該基板保持装置を備えるイオン注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板にイオン注入等の各種処理を施す基板処理装置として、特許文献1に開示された基板処理装置が知られている。特許文献1の基板処理装置は、フラットパネルディスプレイの製造工程で使用される装置であり、基板に対して所定の処理が施される間、基板を保持する基板保持装置が処理室内に配置されている。また、この基板保持装置は、基板を保持するホルダと、ホルダを支持する支持枠と、ホルダを回転させて、ホルダを倒伏位置と起立位置との間で移動させる回転機構を備えている。
ホルダは、四つの長尺状の板材が一端部で連結されることで全体が櫛状を成す形状に構成されており、両端に位置する板材には一対の回転軸が接合されている。また、回転機構は、一対の回転軸の一方にのみ回転力を与えることでホルダを回転動作させる構成とされている。
【0003】
特許文献1に開示された基板処理装置においては、ホルダを回転動作させる場合には、回転軸の一方側にのみ回転力が与えられており、ホルダにねじりによる変形が発生する。したがって、ホルダを構成する四つの長尺状の板材のうち、回転力が与えられる側とは反対側に位置する板材は、他の板材と比較して大きく変形する。また、内側の二つの板材も自重によって反るように変形する。さらに、ホルダの回転軸を支持する支持枠が、回転軸の方向に開くように変形すると、回転軸が支持枠の変形に追従する。その結果、ホルダは、回転軸が接合されたホルダ両端の板材が開くように変形する。すなわち、四つの長尺状の板材が変形する向きおよび量に差異が生じ、ホルダの各板材における変形にばらつきが生じる。特に、基板の大型化に伴ってホルダも大型化させた場合、各板材の変形量の差異が大きくなり、基板を規定の位置または姿勢に保持することが難しくなる。
また、基板が規定の位置または姿勢でホルダに保持されていない場合には、基板に対して所定の処理を適正に施すことができないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するものであり、基板を保持するホルダの変形を抑制できる基板保持装置およびイオン注入装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における基板処理装置は、
基板を保持するホルダと、
前記ホルダに接合され、前記ホルダの回転軸を規定する軸部材と、
前記ホルダの前記回転軸方向の両端より外方で前記軸部材を回転可能に支持しつつ、前記軸部材の前記回転軸方向の移動を規制する一対の支持板を有するホルダ支持部材と、を備え、
前記ホルダが前記回転軸を中心とする回転動作により倒伏位置と起立位置との間を移動できるよう構成された基板保持装置であって、
前記ホルダは、
前記回転軸上で互いに離間して配置され、前記基板を支持する複数の基板支持部材と、
各前記基板支持部材の前記起立位置における下方側または上方側の端部に接合され、前記複数の基板支持部材を連結する第一の連結部材と、を有し、
前記軸部材は、前記回転軸に沿って各基板支持部材に接合されている構成とされている。
【0007】
この構成によれば、互いに離間して配置された各基板支持部材が、第一の連結部材によって連結されるのに加えて、回転軸に沿って軸部材によって連結されることになる。したがって、各基板支持部材は、第一の連結部材に加えて軸部材によっても支持されるため、自重による変形が抑制される。また、各基板支持部材の変形量に差異が発生することも抑制され、各基板支持部材の変形にばらつきが生じるこが抑制される。さらに、回転軸に回転力が与えられた場合においても、ねじりによる各基板支持部材の変形が抑制される。
また、一対の支持板が変形しようとする場合であっても、一対の支持板と各基板支持部材が軸部材を介して支え合うため、一対の支持板および各基板支持部材の変形が抑制され、その結果、ホルダの変形が抑制される。
したがって、本発明の基板保持装置によれば、基板を保持するホルダの変形を抑制できる。さらに、各基板支持部材の変形量にばらつきが発生することを抑制でき、基板を規定の位置および姿勢で保持することができる。
【0008】
また、本発明における基板処理装置においては、
前記複数の基板支持部材のうち少なくとも一つは、
前記基板が支持される側の支持面を有する長尺状の板材から成り、
前記軸部材が接合される接合位置と前記起立位置における上方側または下方側の端部との間の少なくとも一部の領域において、前記支持面からの厚さ寸法が前記接合位置側から前記端部側にかけて次第に小さくなる構成としてもよい。
【0009】
この構成によれば、基板支持部材の軸部材が接合される接合位置と起立位置における上方側または下方側の端部との間の少なくとも一部の領域において、支持面からの厚さ寸法が、軸部材との接合位置から起立位置における上方側の端部に向かって次第に小さくなることから、基板支持部材の剛性を確保しつつ、基板支持部材を軽量化することができる。
【0010】
また、本発明における基板処理装置においては、
前記ホルダは、各前記基板支持部材の前記起立位置における下方側または上方側の端部のうち、前記第一の連結部材により連結される側と異なる側の端部を連結する第二の連結部材をさらに備える構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、各基板支持部材の第一の連結部材に連結される側の端部に加え、第一の連結部材に連結される側と異なる側の端部も連結されることから、各基板支持部材の上方側および下方側の端部における変形量に差異が生じ難くなり、ホルダの変形にばらつきが発生することをさらに抑制することができる。
【0012】
また、本発明における基板処理装置においては、
前記ホルダの前記回転動作を駆動させる駆動装置をさらに備え、
前記駆動装置は、前記軸部材の前記ホルダの前記両端より外方の両側に、前記軸部材を同一方向に回転させる回転力を与えるよう構成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、軸部材のホルダの両端より外方の両側に回転力が与えられることから、ホルダにねじりが生じ難くなり、ホルダの変形が抑制される。
【0014】
本発明のイオン注入装置は、
基板にイオン注入処理が施される処理室と、前記処理室内に配置された基板保持装置と、を備えるイオン注入装置であって、
前記基板保持装置は、
基板を保持するホルダと、
前記ホルダに接合され、前記ホルダの回転軸を規定する軸部材と、
前記ホルダの前記回転軸方向の両端より外方で前記軸部材を回転可能に支持しつつ、前記軸部材の前記回転軸方向の移動を規制する一対の支持板を有するホルダ支持部材と、を備え、
前記ホルダが前記回転軸を中心とする回転動作により、倒伏位置と起立位置との間を移動できるよう構成されており、
前記ホルダは、
前記回転軸上で互いに離間して配置され、前記基板を支持する複数の基板支持部材と、
各前記基板支持部材の前記起立位置における下方側または下方側の端部に接合され、前記複数の基板支持部材を連結する第一の連結部材と、を有し、
前記軸部材は、前記回転軸に沿って前記複数の基板支持部材に接合されている構成とされている。
【0015】
この構成によれば、互いに離間して配置された各基板支持部材が、第一の連結部材によって連結されるのに加えて、回転軸に沿って軸部材によって連結されることになる。したがって、各基板支持部材は、第一の連結部材に加えて軸部材によっても支持されるため、自重による変形が抑制される。また、各基板支持部材の変形量に差異が発生することも抑制され、各基板支持部材の変形にばらつきが生じるこが抑制される。さらに、回転軸に回転力が与えられた場合においても、ねじりによる各基板支持部材の変形が抑制される。
また、一対の支持板が変形しようとする場合であっても、一対の支持板と各基板支持部材が軸部材を介して支え合うため、一対の支持板および各基板支持部材の変形が抑制され、その結果、ホルダの変形が抑制される。
したがって、本発明の基板保持装置によれば、基板を保持するホルダの変形を抑制できる。さらに、各基板支持部材の変形量にばらつきが発生することを抑制でき、基板を規定の位置および姿勢で保持することができる。その結果、基板に対して適正にイオン注入処理を施すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の基板保持装置によれば、基板を保持するホルダの変形を抑制できる。さらに、各基板支持部材の変形量にばらつきが発生することを抑制でき、規定された位置および姿勢で基板を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態におけるイオン注入装置を示す平面図。
【
図2】同実施形態における基板保持装置を示す正面図。
【
図3】同実施形態におけるホルダが倒伏位置にある基板保持装置を示す模式的側面図。
【
図4】同実施形態におけるホルダが起立位置にある基板保持装置を示す模式的側面図。
【
図6】同実施形態における基板支持部材を示す側面図。
【
図8】同実施形態における上側連結部材を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明における一実施形態である基板保持装置10、および基板保持装置10を使用するイオン注入装置100について説明する。尚、基板保持装置10は、イオン注入装置100において使用されることに限定されるものではない。
本実施形態におけるイオン注入装置100は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイの製造工程において使用され、基板Sに対してイオン注入処理を施す装置であり、本実施形態における基板Sは矩形状のガラス基板である。
【0019】
図1に示すように、イオン注入装置100は、内部が高真空状態とされており、イオンビームIBが導かれる処理室101、処理室101に連結された搬送室102、および、搬送室102に連結された二つのロードロック室103、103を備えている。搬送室102には、搬送室102と各ロードロック室103および処理室101との間で基板Sの受け渡しを行う搬送装置104が配置されている。搬送装置104は、基板Sが載置された状態で基板Sを搬送するアーム104aを備えている。アーム104aは複数の長尺状のフィンガー104bを備えており、複数のフィンガー104bは、長手方向を平行とした状態で互いに離間するように位置付けられている。本実施形態においては、アーム104aはフィンガー104bを五つ備えているが、フィンガー104bの数はこれに限定されるものではなく、対象とする基板Sのサイズ等に応じて適宜変更される。
【0020】
また、処理室101の内部には基板保持装置10と、基板保持装置10に連結された移送装置105が配置されている。移送装置105は、基板Sを保持した基板保持装置10が処理室101内に導入されたイオンビームIBを横切るよう、基板保持装置10を一方向Dに沿って往復させる構成とされている。
【0021】
図1および
図2に示すように、本実施形態における基板保持装置10は、基板Sを保持するホルダ20、ホルダ20に接合された軸部材30、軸部材30を回転可能に支持するホルダ支持部材40を備えている。また、
図2に示すように、基板保持装置10は、軸部材30に回転力を与え、ホルダ20を回転動作させる駆動装置50を備えている。
【0022】
図2に示すように、ホルダ支持部材40は、ホルダ支持部材40の下方に配置された移送装置105と連結されている。移送装置105は、ホルダ支持部材40に固定されたスライダ106と処理室101内で一方向Dに沿って敷設されたガイドレール107を備えている。スライダ106がガイドレール107上を移動することにより、基板保持装置10は処理室101内で一方向Dに移動する。
【0023】
ホルダ20は、基板Sを支持する六つの基板支持部材21a~21fと、基板支持部材21a~21fに連結された第一の連結部材である下側連結部材23と、基板支持部材21a~21fおよび下側連結部材23との間で基板Sの端縁を挟持する複数のクランプ27を備えている。本実施形態のおいては、クランプ27は、4箇所に配置されているが、クランプ27の数および設置位置は基板Sのサイズ等に応じて適宜変更すればよい。また、クランプ27は、図示されていない機械的構造によりホルダ20の回転動作に連動して基板Sの挟持または挟持の解除を行う構成とされている。尚、
図5では、クランプ27は示されていない。
【0024】
図7に示すように、軸部材30は、長さ方向の両端部に形成された一対
のシャフト31、31と、一対のシャフト31、31間に形成され、後述する基板支持部材21a~21fに接合される接合面32を備えている。
図2に示すように、軸部材30は、ホルダ
支持部材40に回転可能に支持されることにより、後述するホルダ20の回転軸Aを規定するものである。より詳細には、一対のシャフト31、31は同一直線状に配置されており、一対のシャフト31、31がホルダ
支持部材40に回転可能に支持されることにより回転軸Aを規定している。換言すれば、一対のシャフト31、31は回転軸A上に位置している。
【0025】
図2に示すように、ホルダ支持部材40は、一対の支持板41、41と、一対の支持板41、41の下端に接合された底板42とを備える。一対の支持板
41、
41と底板42は、正面視において上方が開口したコ字状(U字状)を成すよう連結されており、底板42に移送装置105のスライダ106が連結されている。底板42上には、後述する駆動装置50の動力源51が配置されている。
また、ホルダ支持部材40は、駆動装置50および駆動装置50に連結されたリンク機構52の一部をイオンビームIBから保護するための保護板43をさらに備えている。
【0026】
一対の支持板41、41は、ホルダ20の回転軸A方向の両端より外方で軸部材30の一対のシャフト31、31を回転可能に支持しつつ、軸部材30の回転軸A方向の移動を規制した状態で固定している。
【0027】
また、駆動装置50は、モーター等の動力源51と、動力源51からの動力を各シャフト31、31に伝達し、各シャフト31、31を回転させる一対のリンク機構52、52を備えている。すなわち、駆動装置50は動力源51の回転運動を、リンク機構52、52を介して各シャフト31、31の両方に伝える構成である。
【0028】
本実施形態におけるホルダ20は、駆動装置50から軸部材30に回転力が与えられることにより、回転軸Aを中心に回転動作を行い、後述する倒伏位置P1と起立位置P2との間を移動する構成とされている。
図3および
図4は、それぞれホルダ20の倒伏位置P1と起立位置P2を示しているが、基板保持装置10は模式的に示されており、ホルダ20およびホルダ支持部材40は一部の構成のみが表されている。
図3に示すように、本実施形態におけるホルダ20の倒伏位置P1は、基板Sを水平面上に置く位置である。つまり、倒伏位置P1は、処理室101と搬送室102との間で基板Sの受け渡しを行う場合に使用されるホルダ20の位置である。
【0029】
また、
図4に示すように、本実施形態におけるホルダ20の起立位置P2は、基板Sを鉛直面上に置く位置である。つまり、起立位置P2は、基板Sにイオンビームが照射され、イオン注入が行われる場合に使用されるホルダ20の位置である。
尚、倒伏位置P1および起立位置P2は、ホルダ2
0の回転動作における相対的位置関係を単に表しているものであり、前述の位置は一例であって倒伏位置P1および起立位置P2を限定するものではない。
【0030】
図2および
図5に示すように、ホルダ20は、回転軸A方向に互いに離間して配置された6つの基板支持部材21a~21fと、基板支持部材21a~21fを連結する下側連結部材23を備えている。基板支持部材21a~21fは、長さ寸法が同一の長尺状の板材から成り、いずれも基板Sを支持する側の面である支持面22a~22fを有する。また、下側連結部材23も板材により形成されており、基板Sを支持する側の面である支持面23aを有している。
【0031】
下側連結部材23は、各基板支持部材21a~21fの起立位置P2における下方側の端部に接合されることで基板支持部材21a~21fに連結されている。より詳細には、基板支持部材21a~21fは長手方向が平行とされ、かつ、回転軸A方向に互いに離間した状態で配置されている。さらに、基板支持部材21a~21fの支持面22a~22fおよび下側連結部材23の支持面23aは同一平面上に位置している。
したがって、ホルダ20は、基板支持部材21a~21fの支持面22a~22fおよび下側連結部材23の支持面23aによって基板Sを支持することができ、各基板支持部材21a~21fの間に形成される間隙から、基板Sに所定の処理を施すことで発生する熱を放出することができる。
尚、本実施形態においては、基板支持部材21a~21fの支持面22a~22f上、および、下側連結部材23の支持面23a上には、基板Sを支持するためのピン(不図示)が配置されており、基板支持部材21a~21fと下側連結部材23は、前述のピン(不図示)を介して基板Sを支持する構成とされている。
【0032】
また、
図2および
図5に示すように、各基板支持部材21a~21fと軸部材30とが軸部材30の一対のシャフト31、31の間の領域で接合されることにより、軸部材30はホルダ20に接合されている。一対のシャフト31、31はホルダ20の回転軸Aを規定しており、軸部材30は一対のシャフト31、31の間の領域で回転軸Aに沿って各基板支持部材21a~21fに接合されることになる。
尚、本実施形態においては、各基板支持部材21a~21fと軸部材30は、ボルト(不図示)により接合されているが、これに接合方法はこれに限定されるものではない。
【0033】
図7に示すように、軸部材30は、一対のシャフト31、31の間に位置し、各基板支持部材21a~21fと接合される側の面である接合面32を有している。接合面32には、各基板支持部材21a~21fが接合された状態において、各基板支持部材21a~21fを回転軸A方向の両側で挟むように位置する複数の壁部33を備えている。壁部33は、各基板支持部材21a~21fと軸部材30とを接合する場合には、軸部材30に対する基板支持部材21a~21fの位置決めに利用される。また、壁部33は、各基板支持部材21a~21fと軸部材30に接合された後は、各基板支持部材21a~21fの回転軸A方向の変形を規制する。
【0034】
図5に示すように、基板支持部材21a~21fはいずれも軸部材30が接合される接合位置から起立位置P2における上方側の端部の間の一部の領域に上側テーパ領域25a~25fをそれぞれ有している。上側テーパ領域25a~25fは、基板支持部材21a~21fの各支持面22a~22fからの厚さ寸法が、軸部材30との接合位置側から起立位置P2における上方側の端部に向かって次第に小さくなる形状である。
基板支持部材21a~21fは、上側テーパ領域25a~25fを有することによって、
剛性が確保され、基板支持部材21a~21fが軽量化される。
【0035】
同様に、基板支持部材21a~21fはいずれも軸部材30が接合される接合位置から起立位置P2における下方側の端部の間の一部の領域に下側テーパ領域26a~26fをそれぞれ有している。下側テーパ領域26a~26fは、基板支持部材21a~21fの各支持面22a~22fからの厚さ寸法が、軸部材30との接合位置側から起立位置P2における下方側の端部に向かって次第に小さくなる形状である。
基板支持部材21a~21fは、下側テーパ領域26a~26fを有することによっても、剛性が確保され、基板支持部材21a~21fが軽量化される。
尚、本実施形態においては、基板支持部材21a~21fは側面視においては同一の形状を成しており、すべての基板支持部材21a~21fに上側テーパ領域25a~25fと下側テーパ領域26a~26fがそれぞれ形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、基板支持部材21a~21fが、上側テーパ領域25a~25fと下側テーパ領域26a~26fのいずれか一方のみを備える構成でもよく、基板支持部材21a~21fごとに、上側テーパ領域25a~25fと下側テーパ領域26a~26fの形成の有無をそれぞれ変えてもよい。
【0036】
図6は基板支持部材21aの側面を示している。前述の通り、基板支持部材21aは、軸部材30との接合位置側から両端部側に向かって支持面23aからの厚さ寸法を小さくするよう形成された上側テーパ領域25aと下側テーパ領域26aを備えている。
図6に斜線で示すように、基板支持部材24aの内部には、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により形成された補強部材2
9が埋設されており、基板支持部材21aの剛性を確保しつつ軽量化されている。また、他の基板支持部材21b~21fにおいても同様に補強部材2
9が埋設されている。
尚、補強部材2
9は必ずしも必要となるものではない。また、基板支持部材21b~21fの一部にのみ補強部材2
9を埋設する構成であってもよく、各基板支持部材21b~21fの剛性や重量によって補強部材2
9の使用の有無を決定すればよい。
【0037】
図2および
図5に示すように、本実施形態におけるホルダ20は、各基板支持部材21a~21fの起立位置P2おける上方側の端部を連結する第二の連結部材である上側連結部材28をさらに備える。上側連結部材28は、各基板支持部材21a~21fの支持面22a~22fと反対側の面でボルト(不図示)により接合されている。
図8に示すように、上側連結部材28は長尺状の板材を折り曲げるように形成されており、各基板支持部材21a~21fとの接合領域28aと、各接合領域28a間に形成された連結領域28bを有する。上側連結部材28は、ホルダが倒伏位置P1にある状態について、連結領域28bが接合領域28aより下方に位置するよう形成されており、後述するように基板Sを載置するためのフィンガー104bとの干渉を避ける構成とされている。
尚、本実施形態においては、第一の連結部材を下側連結部材23、第二の連結部材を上側連結部材28としたが、反対に、第一の連結部材が各基板支持部材21a~21fの起立位置P2おける上方側の端部を連結し、第二の連結部材が各基板支持部材21a~21fの起立位置P2おける下方側の端部を連結する構成としても良い。
【0038】
本実施形態の基板保持装置10においては、ホルダ20を構成し、互いに離間して配置された各基板支持部材21a~21fが、下側連結部材23によって連結されるのに加えて、回転軸Aに沿って軸部材30によって連結されている。したがって、各基板支持部材21a~21fの自重による変形が抑制されている。さらに、各基板支持部材21a~21fの変形量に差異が生じ難く、各基板支持部材21a~21fの変形にばらつきが生じることが抑制されている。
【0039】
また、回転軸Aに回転力が与えられた場合においても、ねじりによる各基板支持部材21a~21fの変形が抑制される。さらに、ホルダ20を支持する一対の支持板41,41が変形しようとする場合であっても、軸部材30が各基板支持部材21a~21fに連結されていることから、軸部材30と一対の支持板41、41とが支え合うことで、一対の支持板41、41および各基板支持部材21a~21fの変形が抑制されている
したがって、本実施形態における基板保持装置10は、ホルダ20の変形を抑制でき、さらに、各基板支持部材21a~21fの変形にばらつきが生じることを抑制できる。
【0040】
より詳細には、
図2に示すように、ホルダ20および一対の支持板41、41は、底板42の回転軸A方向の両端部で支えられている。したがって、底板42の両端部に応力が集中し、底板42が両端部を下方に反るように変形することが想定される。このように底板42が反ると、底板42の変形に伴って一対の支持板41、41が回転軸A方向外方に互いに開くように変形することになる。また、一対の支持板41、41が前述のように変形すると、シャフト31、31を介して基板支持部材21a~21fのうち特に外方に位置する基板支持部材21a、21fにも応力が伝わり、基板支持部材21a、21fも回転軸A方向外方に互いに開くように変形することが想定される。
これに対し、本実施形態のホルダ20においては、軸部材30が各基板支持部材21a~21fに連結された状態で一対の支持板41、41に回転軸A方向の移動が規制された状態で支持されているため、一対の支持板41、41と基板支持部材21a~21fが軸部材30を介して支え合い、ホルダ20およびホルダ支持部材40の一対の支持板41、41および底板42の変形を抑制できる。
【0041】
また、基板支持部材21a~21fは、上側連結部材28により連結されていることから、各基板支持部材21a~21fの起立位置P2における上方側の端部の変形量に差異が生じ難くなり、各基板支持部材21a~21fの変形量にばらつきが発生することを抑制ができる。
【0042】
本実施形態の基板保持装置10においては、駆動装置50、一対のシャフト31,31に、すなわち、回転軸Aについてのホルダ20の両端より外方の両側において軸部材30を同一方向に回転させる回転力を与えている。したがって、ホルダ20にねじりが生じ難くなり、ホルダ20の変形がさらに抑制されている。
また、仮にホルダ20に大きなねじりが生じると、一対のシャフト31、31が回転軸Aからわずかにずれることが想定される。この場合、軸部材30が回転し難くなることで動力源51に負荷がかかる。これに対し、本実施形態においては、一対のシャフト31,31の双方に回転力を与えることで、ホルダ20および軸部材30のねじりによる変形が抑制され、動力源51へ負荷がかかることも抑制されている。
【0043】
基板保持装置10のホルダ20を構成する基板支持部材21a~21fは、それぞれ上側テーパ領域25a~25fおよび26a~26fを備えていることから、基板支持部材21a~21fは剛性を確保しつつ、軽量化されている。すなわち、ホルダ20が軽量化され、ホルダ20変形も抑制されている。
【0044】
前述の通り、本実施形態におけるホルダ20は、ホルダ20を構成する基板支持部材21a~21fが、下側連結部材23に加えて軸部材30および上側連結部材28を備えることから、基板支持部材21a~21fの変形量にばらつきが生じることが抑制されている。
また、軸部材30は回転軸Aに沿って各基板支持部材21a~21fに接合され、ホルダ支持部材40の一対の支持板41,41に回転軸A方向の移動が規制された状態で支持されている。したがって、一対の支持板41,41と軸部材30が互いに支持し合う状態となり、その結果、軸部材30によって、一対の支持板41,41と基板支持部材21a~21fが互いに支え合う状態となることにより、ホルダ20の変形が抑制される。
つまり、本実施形態における基板保持装置10は、基板Sを保持するホルダ20の変形を抑制できる。さらに、各基板支持部材21a~21fの変形量にばらつきが発生することを抑制でき、規定された位置および姿勢で基板Sを保持することができる。その結果、規定された位置および姿勢で基板Sを保持することができ、基板Sに対して適正に所定の処理を施すことができる。
【0045】
次に、
図1を参照し、本実施形態のイオン注入装置100の動作を説明する。
イオン注入装置100においては、基板Sは、まず外部から一方の内部を大気圧下に置かれたロードロック室103に搬入される。その後、ロードロック室103の内部が真空排気され、基板Sは搬送装置104により搬送室102を経由して処理室101に搬入される。処理室101では、基板Sは基板保持装置10のホルダ20に保持される。このとき、ホルダ20は倒伏位置P1にあり、基板SのイオンビームIBが照射される被処理面Saを上方に向けた状態で基板Sはホルダ20に載置される。
より詳細には、アーム104aが駆動することにより、基板Sはフィンガー104bに載置された状態で処理室101に搬入される。
その後、基板Sが載置されたフィンガー104bをホルダ20の上方から徐々に下降させ、基板支持部材21a~21fの間の間隙に各フィンガー104bが位置付けられるよう動作させることで、基板Sが基板支持部材21a~21fの支持面22a~22f側に載置される。
そして、ホルダ20は、駆動装置50から回転力が与えられて回転動作することにより、起立位置P2に移動する。起立位置P2においては、基板Sの被処理面Saは処理室101に導入されるイオンビームIBに向けられた状態となっている。
【0046】
その後、ホルダ20が起立位置P2にある状態で、すなわち基板保持装置10が基板Sの被処理面SaをイオンビームIBに向けた状態で、基板保持装置10は、移送装置105によって駆動され、イオンビームIBを横切るように一方向Dに移動する。この間に、基板Sの被処理面SaにイオンビームIBを横切ることになり、基板Sにイオン注入が施されることになる。
尚、本実施形態におけるイオン注入装置100においては、基板保持装置10に保持された基板SがイオンビームIBを一度横切る間にイオン注入される構成としたが、基板保持装置10を一方向Dに沿って往復移動させ、基板SがイオンビームIBを複数回横切る構成としてもよい。
【0047】
基板Sにイオン注入処理が行われた後、ホルダ20は戻る回転動作して起立位置P2から倒伏位置P1に移動する。その後、搬送装置104のよって搬送室102およびロードロック室103を経由して外部に搬出される。
【0048】
本実施形態におけるオン注入装置100は、基板保持装置10を備えることから、基板Sがホルダ20に規定された位置および姿勢で保持された状態で、基板Sに対してイオンビームIBを照射することができ、基板Sに対して適正にイオン注入処理を施すことができる。
【0049】
また、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
S 基板
IB イオンビーム
A 回転軸
D 一方向
P1 倒伏位置
P2 起立位置
100 イオン注入装置
101 処理室
102 搬送室
103 ロードロック室
104 搬送装置
105 移送装置
10 基板保持装置
20 ホルダ
21a~21f 基板支持部材
23 下側連結部材
25a~25f 上側テーパ領域
26a~26f 下側テーパ領域
28 上側連結部材
30 軸部材
31、31 シャフト
40 ホルダ支持部材
41、41 支持板
50 駆動装置