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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
B25F5/00 G
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020527226
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2019015940
(87)【国際公開番号】W WO2020003696
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2018124317
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018124333
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 諒
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150030(WO,A1)
【文献】特表2012-528013(JP,A)
【文献】特開2015-123515(JP,A)
【文献】特開2013-031901(JP,A)
【文献】中国実用新案第205237765(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0170538(US,A1)
【文献】特開2009-171717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F 5/00
B24B 23/00
B25B 21/00
B23B 45/00
B23D 45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記ステータの内部に位置するロータと、側から側に延びて前記ロータと一体的に回転する回転軸と、を有するモータと、
前記モータを収容及び支持する筒形のモータハウジングと、
前記回転軸に取りつけられ前記モータと同期して回転するとともに、前記ステータの前側に位置する冷却ファンと、
前記モータの回転力を先端工具に伝達する動力伝達機構と、を有し、前記モータハウジングの内部に前記冷却ファンによって生成される空気を流すことにより前記モータを冷却する電動工具であって、
前記モータの側には非磁性体のインシュレータが設けられ、
前記冷却ファンによって生成される吸気口から排気口に至る冷却風をガイドするファンガイドを設け、
前記ファンガイドは、第一円筒部と、前記第一円筒部から径方向内側に延在するガイド面と、前記ガイド面に接続されて後側へ延びる円筒状の第二円筒部を有するとともに、前記第二円筒部の側端部が前記インシュレータの側開口面より側に位置し、前記冷却風を前記ステータの内部に集中するようガイドすることを特徴とする電動工具。
【請求項2】
前記モータハウジングの方に接続され把持部が形成されるハンドルハウジングと、
前記モータハウジングの方に接続されるギヤケースと、
スイッチング素子を搭載して前記モータを駆動する駆動回路と、を有し、
前記ハンドルハウジングには前記吸気口が設けられ、
前記ギヤケースには前記排気口が設けられ、
前記冷却ファンが回転すると、前記吸気口から前記ハンドルハウジング内に空気が吸引され、前記空気は、前記モータハウジングの内部を通って前記駆動回路を冷却した後に前記モータを冷却して前記排気口から外部へ排出されることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
前記ファンガイドは前記インシュレータと軸方向に凹凸係合することで、前記冷却風をガイドすることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動工具。
【請求項4】
前記凹凸係合は、前記ファンガイドの側において周方向に連続する前記第二円筒部と、前記インシュレータの側に形成される周方向に連続する周方向溝を含み、
前記第二円筒部と前記周方向溝は前記モータの軸方向に非接触状態にてオーバーラップするように配置されることを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
前記ファンガイドは、前記ステータのステータコアの端面に当接する当接部を有し、前記当接部は前記ステータが軸方向に移動することを抑制することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項6】
前記当接部は前記ファンガイドの周方向の複数箇所から軸方向に延びる凸部であって、
前記凸部が前記ステータコアに当接することを特徴とする請求項5に記載の電動工具。
【請求項7】
前記吸気口と、前記排気口と、前記モータは、前記モータの軸方向でそれぞれ離間しており、前記モータは前記吸気口と前記排気口との間に位置することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項8】
前記ロータは、回転軸に取り付けられる積層鉄心からなるロータコアに、回転軸方向に連続する複数のスロットを設けて永久磁石を収容したものであり、
前記ロータコアの外周面には、軸方向に連続するようにして内側に窪む凹部が形成されており、前記凹部内を前記冷却風が通ることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電動工具。
【請求項9】
モータハウジング10は、合成樹脂の一体成形にて筒状に形成され、分割面が存在しないことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクグラインダ等の電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな作業形態を持つ電動工具においては、それに応じた操作性を持たせることが重要である。ディスクグラインダ等の携帯用電動工具では、モータを保持するモータハウジングから後方側に突出するように連結されたハンドルを設けて、作業者は一方の手でハンドルを把持して、他方の手でモータハウジング自体を又はモータハウジングの取り付けられるサイドハンドルを押さえながら研削・研磨・切断といった作業を行う。このようなグラインダの構成は、特許文献1にて知られている。ディスクグラインダのハウジングは金属製又は合成樹脂製のハウジングを有するが、中型以上の大きなディスクグラインダは、モータのサイズや出力が大きくなるために、特許文献1ではモータハウジングとして円筒状の一体成形品を用いるようにして、剛性の高いハウジング形状とする。モータハウジングの後方側には、長手方向軸線を含む断面で分割される左右分割式のハンドルハウジングを接続する。ディスクグラインダを用いて研磨するためには、砥石を取り付けて、円盤状の砥石の環状面を被研磨面に押し当てるようにして作業する。一方、ディスクグラインダを用いて切断するためには、回転刃を取り付けて、円盤状の回転刃の面が被研磨材の表面に直交するように押し当てながら作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-61552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような従来の電動工具は、モータハウジングの内部において、モータの回転軸に取りつけられる冷却ファンを設け、外気を吸引してモータに冷却風を送ることにより発熱部位の冷却を行っていた。冷却風はステータの外周側と、ロータとステータの間の空間に軸方向に流れるように構成されている。このため、ステータ外周面の冷却を効率良く行うことが可能となるが、その代わりステータの内側部分、特にコイルの直接冷却性能が不足する恐れがあった。また、ブラシレスモータを用いる場合は、ロータコアに永久磁石を用いるため、ロータコアに金属粉等が付着する恐れがあり、冷却風の風量や風速が小さい場合はロータコアに吸着された金属分等が取り除かれにくいという問題があった。
【0005】
近年、電動工具はブラシレスDCモータを採用することで、小型軽量化を図る傾向にある。また、さらなる高出力化を図る傾向にもある。ブラシレスDCモータは、半導体スイッチング素子を用いたインバータ回路を用いて駆動される。インバータ回路に用いられる半導体スイッチング素子は、FET(電界効果トランジスタ)やIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等が用いられるが、それらの電子素子は発熱が大きめであるため、十分に冷却する必要がある。特許文献1の電動工具では、冷却風はステータの外周側と、ロータとステータの間の空間に風を流れるため、ステータ外周面の冷却を行うことが可能となるが、その代わりステータ内部、特にコイルへの冷却性能が不足する恐れがある。また、グラインダなどの研磨装置においては、研磨された金属粉が飛び散る環境下で使用されるため、冷却風と共に金属粉が吸引され、ハウジングの内部に入り込む虞がある。その場合、ステータのコアの内側部分を通る冷却風の風量が少ない場合は、永久磁石を有したロータに粉塵等が吸着されてとれなくなってしまう恐れがある。この問題を解決するために、冷却風の風量を増加させることが考えられるが、使用できる冷却ファンの大きさはモータハウジングの大きさに制限されてしまう。また、冷却ファンはモータの回転軸に取りつけられ、モータと同期して回転するため、冷却ファンの回転速度を上げることはできない。ハウジングの吸気口部分に、粉塵の侵入を抑制するフィルタを設けることも考えられる。しかしながら、作業形態によっては短時間でフィルタに大量の粉塵が付着するため、フィルタに付着した粉塵を取り除きやすいように工夫する必要がある。例えば、フィルタをネジ止めにせずに、着脱のための工具が不要の構造にすることが考えられるが、ツールレスの着脱構造によっては、外部からの衝撃等によってフィルタが容易に外れてしまったり、フィルタと着脱機構の一部が本体内部に入り込んで内部構成の配置や絶縁距離等に影響してしまったりする可能性がある。
【0006】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、モータの冷却性能を向上させた、特に、ステータより内周側の冷却性能を向上させた電動工具の提供を目的とする。本発明の他の目的は、既存のモータのインシュレータとファンガイドの形状を変更することによって、モータの特定箇所の冷却性能を向上させることにある。本発明の更に他の目的は、モータの内部に入り込んだ鉄粉等の粉塵が、ロータコアに付着することを防止できるようにした電動工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。
本発明の一つの特徴によれば、ステータと、ステータの内部に位置するロータと、側から側に延びてロータと一体的に回転する回転軸と、を有するモータと、モータを収容及び支持する筒形のモータハウジングと、回転軸に取りつけられモータと同期して回転するとともに、ステータの前側に位置する冷却ファンと、モータの回転力を先端工具に伝達する動力伝達機構と、を有し、モータハウジングの内部に冷却ファンによって生成される空気を流すことによりモータを冷却する電動工具において、モータの側には非磁性体のインシュレータが設けられ、冷却ファンによって生成される吸気口から排気口に至る冷却風をガイドするファンガイドを設けた。ファンガイドは、第一円筒部と、第一円筒部から径方向内側に延在するガイド面と、ガイド面に接続されて後側へ延びる円筒状の第二円筒部を有するとともに、第二円筒部の後側端部がインシュレータの前側開口面より後側に位置する。また、電動工具は、モータハウジングの一方に接続され把持部が形成されるハンドルハウジングと、モータハウジングの他方に接続されるギヤケースと、スイッチング素子を搭載してモータを駆動する駆動回路を有し、ハンドルハウジングには吸気口が設けられ、ギヤケースには排気口が設けられ、冷却ファンが回転すると、吸気口からハンドルハウジング内に空気が吸引され、空気は、モータハウジングの内部を通って駆動回路を冷却した後にモータを冷却して排気口から外部へ排出されるように構成した。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、ステータはステータコアの両端部に非磁性体のインシュレータを有し、ファンガイドはインシュレータ前側と軸方向に凹凸係合することで、冷却風をガイドする。また、凹凸係合は、ファンガイドの側において周方向に連続する第二円筒部と、インシュレータの側に形成される周方向に連続する周方向溝を含み、第二円筒部と周方向溝はモータの軸方向に非接触状態にてオーバーラップするように配置される。さらに、ファンガイドは、ステータのステータコアの端面に当接する当接部を有し、当接部はステータが軸方向に移動することを抑制するように構成した。
【0009】
本発明のさらに他の特徴によれば、当接部はファンガイドの周方向の複数箇所から軸方向に延びる凸部であって、凸部がステータコアに当接する。また、吸気口と、排気口と、モータは、モータの軸方向でそれぞれ離間しており、モータは吸気口と排気口との間に位置するように配置される。さらに、ロータは、回転軸に取り付けられる積層鉄心からなるロータコアに、回転軸方向に連続する複数のスロットを設けて永久磁石を収容したものであり、ロータコアの外周面には、軸方向に連続するようにして内側に窪む凹部が形成されており、この凹部内にも冷却風が通るように構成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ステータの内側空間に冷却風を集中的に流すことができ、発熱源たるコイルの冷却性能を十分確保することができる。また、モータの一方側のインシュレータの形状をわずかに変更し、ファンガイドの形状をわずかに変更することによって本発明の特徴的な構成であるラビリンス構造を実現したので、電動工具の製造コストの上昇がほとんどない上に、従来の電動工具の構成を変更すること無く容易に本発明を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る電動工具であるディスクグラインダ1の側面図(一部縦面図)である。
図2】本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の上面図である。
図3】本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の縦断面図である。
図4図1のモータ5の駆動制御系の回路構成図である。
図5図1のディスクグラインダ1のハンドルハウジング45付近の部分斜視図である(フィルタ部材150の装着時)。
図6図1のディスクグラインダ1のハンドルハウジング45付近の部分斜視図である(フィルタ部材150の取り外し時)。
図7図5のフィルタ部材150を示す図であり、(A)は側面図、(B)は上面図であり、(C)は正面図であり、(D)は背面図である。
図8図7(A)と反対側からみた側面図であり、(B)はD-D部の断面図であり、(C)はE-E部の断面図である。
図9図1のハンドルハウジング45の左側面図である
図10図9のハンドルハウジング45を内側から見た側面図である。
図11図10のF-F部の断面図である。
図12図1のディスクグラインダ1のモータ5付近の拡大断面図である。
図13図12のモータ5とファンガイド50の拡大断面図である。
図14図12のステータ30の前方側から見た斜視図である。
図15図12のファンガイド50単体の前方側から見た斜視図である。
図16図12のファンガイド50単体の後方側から見た斜視図である。
図17】モータハウジング10からギヤケース6とロータ70を取り外した状態の正面図である。
図18】(A)はモータ5のロータ70及び冷却ファン13の側面図であり、(B)は(A)のG-G部の断面図(ロータコア71の側面図)である。
図19】(A)は図3のA-A部の断面図であり、(B)は図3のB-B部の断面図であり、(C)は図3のC-C部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例に係る電動工具であるディスクグラインダ1の側面図(一部縦面図)である。ディスクグラインダ1は、円筒形のモータハウジング10の内部に駆動源たるモータ5やインバータ回路等の制御部が収容される本体部2と、モータ5によって駆動される作業機器(ここでは先端工具として砥石98を用いるグラインダ)を作動させる動力伝達部3と、本体部2の後方側に設けられ作業者が把持するためのハンドル部4を有して構成される。ハンドル部4は、筒状の本体部2の後方側において、本体部2と同軸上に延びるようにして設けられるもので、作業者が一方の手で把持する部分である。
【0014】
ディスクグラインダ1のハウジングは、円筒状のモータハウジング10とその前方側に設けられるギヤケース6と、後方側に設けられるハンドルハウジング45の3つの部位によって構成される。モータハウジング10の内部には、ブラシレス方式のモータ5が収容される。モータ5は、永久磁石を有するロータ70が内周側に配置され、外周側にコイルを有するステータ30を有する。モータ5の回転軸60は、モータハウジング10の中央部付近に設けられる軸受15bと、モータハウジング10の前方側開口を覆うギヤケース6によって保持される前方側の軸受15aにより回動可能に保持される。動力伝達部3は、ギヤケース6に軸受9a、9bによって軸支されるスピンドル8に取付けられたディスク状の砥石98と、ホイルガード29を備える。ギヤケース6内には、一対の傘歯車7a、7bが配置され、モータ5の回転軸60の回転力を方向変換してスピンドル8に伝達する。スピンドル8の下端には、受け金具14aを介して押さえ金具14bによって先端工具保持部が形成され、砥石98が固定される。ギヤケース6の上部にはサイドハンドル取付孔6bが設けられ、ギヤケース6右側面及び左側面にも同様のサイドハンドル取付孔6a、6c(図2にて後述)が設けられる。
【0015】
モータ5の前方側であって軸受15aとの間には冷却ファン13が設けられる。冷却ファン13は遠心ファンであってモータ5側の空気を吸引して径方向外側に排出する。冷却ファン13の後方には、回転軸60の周囲に所定の大きさの貫通穴を形成し冷却ファンへの空気の流入口を形成するファンガイド50が設けられる。冷却ファン13の回転によって起こされる空気流によって、ハンドルハウジング45の側面に設けられたフィルタ装着部46に設けられる吸気口(図9にて後述)から取り込まれた空気を、ハウジングの内部に吸引して、モータ5の後方側から前方側への空気の流れ(空気流)を生成する。ハンドルハウジング45の左右側面の2箇所に設けられるフィルタ装着部46には、網部158を用いたフィルタ部材150が装着され、外気を取り込む際に粉塵等が、吸気口を介してハウジングの内部に入り込まないように構成される。フィルタ部材150は、フィルタ装着部46に設けられ、フィルタ装着部46の内側に隣接して配置される制御回路等の発熱部材を冷却し、後述するインバータ回路部を経由してからモータハウジング10側に流入する。
【0016】
モータ5側に到達した空気流は、矢印78aにて示すようにロータ70とステータ30の間を通過するように流れる。図1では見えないが、ステータ30のコアには、円筒形の外周部から径方向内側に突出する複数のティースが形成され、ティースの周囲にコイルが巻かれている。冷却風はそれらコイルの間の空間を軸方向に流れるため、図1の矢印78aにて示したロータ70の外周面に沿う部分だけでなくステータコアの内側においても空気が流れる。モータ5の内部を軸方向後方から前方側に通過した冷却風は、矢印78bのように冷却ファン13の軸心付近から吸引されて、冷却ファン13の回転によって径方向外側に排出され、軸受保持板12の外周側に形成された空気孔を通過する。軸受保持板12から排出される冷却風の一部は、ギヤケース6に形成された排気口(図2にて後述)を介して矢印79aのように外部に排出され、残りは軸受保持板12の下側付近の排気口(図示せず)を介して矢印79bのように外部に排出される。以上のように本実施例では、筒型のモータハウジング10の後方側開口から軸方向前方に向けて冷却風を導入し、前方側の開口からギヤケース6側に排出することで、回転軸線A1に沿った方向の冷却風の流れを生成するようにし、モータ5やインバータ回路(後述)等の発熱部位を効率良く冷却する。
【0017】
ハンドルハウジング45は、作業時に作業者が把持する部分となるハンドル部4を形成するもので、その筐体はプラスチックの成型によって左右二分割式にて構成され、4本の図示しないネジによって固定される。ハンドル部4の後端側には商用交流電源供給用の電源コード99が接続される。ハンドルハウジング45の下方には、モータ5のオンオフを制御するためのトリガレバー17が設けられる。
【0018】
図2は本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の上面図である。モータハウジング10の形状は、図1の側面視とほぼ同じとなる円筒状である。ハンドルハウジング45のハンドル部は、モータ5の回転軸線A1とほぼ一致するようにモータハウジング10の長手方向に一列に並べて配置される。ギヤケース6の上部には、2つの排気口21a、21bが設けられる。ギヤケース6の右側側面と上面と左側面には、サイドハンドル23を取りつけるためのサイドハンドル取付孔6a~6cが形成される。図2では左側のサイドハンドル取付孔6cにサイドハンドル23を取りつけた状態を示している。排気口21aの前方側には、砥石98等の先端工具を装着又は取り外しする際にスピンドル8が回転しないようにロックするスピンドルロックの操作部(スピンドルロックボタン22)が設けられる。ハンドルハウジング45の上面であって、作業者が把持する部分の前夫側には、LED28が設けられる。LED28は、ディスクグラインダ1の電源のオンオフを示し、また動作の異常発生を示すための点灯手段であり、何らかの異常が発生した際に、LEDの点滅灯によって異常発生を知らせる。
【0019】
図3が本発明の実施例に係るディスクグラインダ1の縦断面図である。モータハウジング10は合成樹脂製の一体構成であって、前方側と後方側に開口部を有し、中央付近には軸受15bを固定するための、軸受ホルダ16が設けられる。軸受ホルダ16は、格子状であって軸方向に空気を貫通させるリブ状部分の中央に、軸受15bを保持するための円筒面を掲載したものである。モータハウジング10の後端側開口からは、インバータ回路部20が挿入され、その後に開口部分は開口保持部125によって覆われる。ハンドルハウジング45は左右方向に分割可能に構成して、左右の分割片の間に開口保持部125を挟み込むようにして固定される。開口保持部125の外周面には2本の径方向に突出するフランジ部126が形成され、フランジ部126に沿ってハンドルハウジング45の内周面には円周方向に連続する周方向溝部127が形成される。
【0020】
インバータ回路部20が搭載される回路基板27は、円環形の多層基板であり、その面がモータ5の回転軸線A1と直交する向きになるように配置される。回路基板27上にはインバータ回路を構成する6つの絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT26)等のスイッチング素子(後述)が搭載される。回転軸線A1方向にみて軸受15bとステータ30の間には、円環状の小さなセンサ基板122が搭載される。センサ基板122には、ロータ70により発生する磁界を直接検出するための3つのホールIC121(図4で後述)が60度間隔にて搭載される。ホールIC121はセンサ基板122のロータ70側に面する前側面に搭載されるが、センサ基板122のロータ70とは反対側の面(反モータ面)に搭載しても良い。
【0021】
開口保持部125の後方には、制御回路部19が収容される。制御回路部19は、回転軸線A1と直交する方向に延びるように配置され、2分割して構成されるハンドルハウジング45により挟持されることにより固定される。制御回路部19は、浅い容器状のケースの内部に第2の回路基板たる制御回路基板(図示せず)を収容したものである。図示しない制御回路基板には、モータ5の回転制御を行う演算部110(図4にて後述)が搭載される。このようにインバータ回路部20と制御回路部19を別々の回路基板(回路基板27と制御回路部19内の図示しない回路基板)に分けることでハウジングの内部に回路基板を効率良く配置でき、電動工具の筐体の大型化を抑制できる。
【0022】
ハンドルハウジング45の中央部分には、モータ5のオンオフを制御するためのトリガスイッチ18(図3で後述)が配置される。トリガスイッチ18は、トリガレバー17を操作させることでオン又はオフに切り換えるスイッチである。トリガスイッチ18には電源コード99からの配線に一方が接続される。回転軸線A1方向にみてトリガスイッチ18と制御回路部19の間であって、ハンドルハウジング45の上部にはLED28が設けられる。
【0023】
動力伝達部3を取りつける前に、モータ5は、モータハウジング10の前方側から回転軸線A1方向後方側に向けて、ステータ30の一部がモータハウジング10に突き当たる所定位置までモータハウジング10の内部に挿入される。この際、ステータ30の後端部に位置する合成樹脂製のインシュレータ40(図12にて後述)の位置決めも行われる。回転軸60の後端部分を軸支する軸受15bはボールベアリングであり、その外輪側が軸受ホルダ16の軸受保持部16aによって保持される。軸受ホルダ16はモータハウジング10と一体成形にて製造されるもので、軸受保持部16aを支えるためにモータハウジング10の内壁と軸受15bを保持する円筒部の間に複数のリブが格子状に形成される。
【0024】
次に図4を用いてモータ5の駆動制御系の主な回路構成を説明する。外部から商用交流電源100が電源コード99によって供給されて、直流に整流される。ブリッジダイオード112は商用交流電源100から入力される交流を全波整流し、平滑回路113へ出力する。平滑回路113は、ブリッジダイオード112によって整流された電流の中に含まれている脈流を、直流に近い状態に平滑化してインバータ回路118へ出力する。平滑回路113は、電解コンデンサ114とコンデンサ115と放電用の抵抗116を含んで構成される。インバータ回路118は6つのスイッチング素子Q1~Q6を含んで構成され、演算部110から供給されるゲート信号H1~H6によってスイッチング動作が制御される。スイッチング素子Q1~Q6は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いているが、電界効果トランジスタ(FET)を用いるようにしても良い。インバータ回路118の出力は、モータ5のコイルのU相、V相、W相に接続される。ブリッジダイオード112の出力側には低電圧電源回路119が接続される。低電圧電源回路119は演算部110が稼働するための安定した基準電圧(低電圧)の直流を供給する公知の電源回路である。
【0025】
モータ5のステータ30の内側では、永久磁石を有するロータ70が回転する。ロータ70の近傍には3つのホールIC121による回転位置検出素子が設けられ、演算部110はロータ70の出力を監視することによりロータ70の回転位置を検出する。ホールIC121を搭載するセンサ基板122(図3参照)は、ロータ70の片側端面に対面する位置に配置される。
【0026】
演算部110は、モータ5のオンオフ及び回転制御を行うための制御部であって、図示しないマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と称する)を用いて主に構成される。演算部110は制御回路部19(図1参照)の回路基板に搭載され、トリガスイッチ18の操作に伴い入力される起動信号に基づき、モータ5を回転させるためにコイルU、V、Wへの通電時間と駆動電圧を制御する。尚、ここでは図示していないが、モータ5の回転速度を設定する変速ダイヤルを設けて、変速ダイヤルによって設定された速度に合わせるように演算部110がモータ5の速度調整をしても良い。
【0027】
演算部110の出力は、インバータ回路118の6個のスイッチング素子Q1~Q6の各ゲートに接続される。インバータ回路118の6個のスイッチング素子Q1~Q6の各エミッタ又は各コレクタは、デルタ結線されたコイルのU相、V相、W相に接続される。スイッチング素子Q1~Q6は、演算部110から入力されるゲート信号H1~H6に基づきスイッチング動作を行い、商用交流電源100から整流回路111を介して供給された直流電圧を、3相(U相、V相、W相)電圧Vu、Vv、Vwとして、モータ5の各相に供給する。モータ5に供給される電流の大きさは、平滑回路113とインバータ回路118との間に接続されたシャント抵抗117の両端の電圧値を検出することにより演算部110によって検出される。
【0028】
図5はディスクグラインダ1のハンドルハウジング45付近の部分斜視図であって、フィルタ部材150の装着時の状態を示す。ハンドルハウジング45の左側側面と右側側面であって、モータハウジング10とほぼ同じ径の部分にフィルタ装着部46が設けられる。フィルタ装着部46には、通過する空気中に含まれる塵埃等を取り除くためのフィルタ部材150が装着される。フィルタ部材150は、作業者が手動でフィルタ装着部46に装着が可能であり、また作業者が手動でフィルタ装着部46から取り外しが可能である。尚、ハンドルハウジング45の右側に取りつけられるフィルタ部材(図では見えない)と、左側に取りつけられるフィルタ部材150は共通の部品であって、フィルタ部材150は左右のどちら側にも取り付け可能である。
【0029】
図6はディスクグラインダ1のハンドルハウジング45付近の部分斜視図であって、フィルタ部材150を取り外した時の状態を示す。ハンドルハウジング45の左側に装着されるフィルタ部材150は、作業者が指でつまんで左方向に水平移動させることで取り外すことができる。また、装着する時は図6にて示す位置から右方向に水平移動させて、外枠として形成されるフィルタ装着部46の内部に、枠部151を押し込むことで装着できる。フィルタ部材150は、網部158の外縁位置を所定の厚さを有する弾性体による枠部151によって保持されるものである。枠部151は、左側側面から見た際に略五角形の形状であって、上辺部と下辺部がほぼ平行に形成され、前辺が垂直に形成され、後辺に三角形に突出する部分が形成される。枠部151の上側には2つの爪部157a、157bが形成され、下側には2つの爪部157c、157dが形成される。フィルタ部材150のフィルタ装着部46の内部に押し込む際には、爪部157a~157dの塑性変形によって爪部157a~157dが、フィルタ装着部46の内側に形成される凹部49a~49d(図9にて後述)に位置づけられる。塑性変形状態で凹部49a~49d内に入り込んだ爪部157a~157dは、元の形状に戻って凸状となり、凹部49a~49dに嵌め込まれた状態となるので、フィルタ部材150のハンドルハウジング45からの脱落が防止される。本実施例では、ディスクグラインダ1のハウジングの内部に外気を取り込むための吸気口は、ハンドルハウジング45の左右両側面に設けられた2箇所のフィルタ装着部46だけに設けられる。
【0030】
図7図5のフィルタ部材150を示す図であり、(A)は側面図、(B)は上面図であり、(C)は正面図であり、(D)は背面図である。枠部151は樹脂製又はゴム製であって射出成形によって製造されたものであり、内側に金属製(本実施例ではステンレス)の網部158が設けられる。網部158は外縁部が枠部151に鋳込まれたものである。網部158は吸入口の入口から内部に粉塵などが入らないようにするために設けられる網状部材であって、細かい網目とすることにより小さい金属粉がハウジングの内部に吸引されることを防止できる。尚、フィルタ部材150の網部を金属製でなくて不織布や紙製のフィルタとしても良いが、金属製の網で構成すれば網目を十分小さく形成でき、ゴム等の弾性部材で鋳込んで固定することも容易である上に耐久性も高い。枠部151と網部158はどちらも可撓であり、枠部151を撓ませて変形させるとき、網部158もその動きに合わせて変形することができる。ゴム製の枠部151は容易に弾性変形するので、その弾性力を用いてフィルタ部材150をフィルタ装着部46に保持させるための爪部157a~157dが、枠部151の上辺部と下辺部に一体に成形されている。爪部157a~157dは薄板状であって、左右方向に容易に弾性変形可能なので、フィルタ装着部46に形成された凹部49a~49dに掛止させることでフィルタ部材150をフィルタ装着部46に保持できる。また、凸状の爪部157a~157dと凹部49a~49dは単なる掛止程度でありながら、枠部151の上下方向への復元力によって枠部151の上辺と下辺がフィルタ装着部46の型枠部46a(図11参照)に押しつけられることにより、稼働時の振動等によってもフィルタ部材150が外れること無く安定して保持される。さらには、モータ5の回転中は冷却風による吸引力が働くため、フィルタ部材150は一層安定してフィルタ装着部46に保持できる。
【0031】
フィルタ部材150の上辺と下辺の前後方向中央付近には上下方向に窪ませて、上下方向の幅を狭く形成した下段部分が設けられ、この下段部分と枠部151の上面との高さ違いによって段差状の取っ手部(段差部)156a、156bが形成される。この取っ手部156a、156bを形成するのは、作業者がフィルタ部材150を取り外す際に、矢印165a、165bのように指でつまんで枠部151を把持し易くするためである。また、取っ手部156a、156bを形成した上に、爪部157aと157bの間を分離することにより、枠部151のうち特定の箇所、即ち、取っ手部156a、156bの形成された細枠部分151a、151bが矢印165a、165bの方向に撓みやすくなる。例えば、矢印165a、165bの方向に枠部151を変形させると、爪部157a、157bと爪部157cと157dの高さHを、フィルタ装着部46の高さH(後述する図9参照)よりも小さくすることができるので、フィルタ部材150のフィルタ装着部46への取り付け及び取り外しを容易に行うことができる。一方、枠部151の上辺と下辺が撓みやすくなると、装着時においてフィルタ部材150が外れやすくなってしまうおそれがある。そこで、枠部151の前辺の上下中央付近に幅(前後長)を大きく確保した太枠部153を形成して、枠部151の前辺部分の復元力を増大させて、上辺が矢印165aと反対方向に戻り、下辺が矢印165bと反対方向に戻るように付勢する。これらの付勢力は網部158によって付勢範囲が限定されるので、網部158が理想的に張った状態にて保たれる。
【0032】
フィルタ部材150の後辺側は、上下中央付近が後方側に三角状に突出するような角部152が設けられた形状である。この形状は図1図6で示したようにハンドルハウジング45の絞り込まれた形状に沿った形状としたためである。後方側に向けて突出する角部152の内角側は、厚さを薄くした略三角形状のリブ152aにて連結され、撓ませた枠部151が特定の方向に戻りやすいように、即ち、上辺が矢印165aと反対方向に戻り、下辺が矢印165bと反対方向に戻るように付勢するように、枠部151の特定箇所の強度を調整している。枠部151の内角部分154a~154dは、わずかな曲率半径を有するように緩やかな曲面で形成し、角部に金属粉等が滞留し難いように構成している。
【0033】
図7(C)はフィルタ部材150正面図であり、(D)は背面図である。これらの図からわかるように、爪部157a~157dは、ハウジングの内側近くに配置される。つまり、爪部157a~157dはハンドルハウジング45に近い側に偏らせた位置において、フィルタ部材150の枠部151より上方向に延びるように爪部157a、157bが設けられ、下方向に延びるように爪部157c、157dが設けられる。
【0034】
図8はフィルタ部材150の裏側、即ち図7(A)の反対側からみた側面図である。枠部151の角部の4箇所には、網部158を鋳込む際に網部158を所定の鋳込み高さ位置に保持するために4つの穴部159a~159dが形成される。これはフィルタ部材150の面方向を水平として成形される際に、網部158を金型の底面から所定の距離だけ浮いた状態で維持した際にできた成形痕である。一方、穴部160a、160bは、フィルタ部材150をハンドルハウジング45に保持させるための補助的な保持手段として活用するために形成したものである。
【0035】
図8(B)は、(A)のD-D部の断面図である。穴部160a、160bは、他の穴部159a~159dよりも直径をやや大きくすると共に、装着方向(ハンドルハウジング45の外面の法線方向)に対して長さが長めになるような円柱状の非貫通穴とした。このため、図6で示した状態からフィルタ部材150をハンドルハウジング45に装着して上下の爪部157a~157dをフィルタ装着部46(図6参照)の凹部49a~49d(後述する図9参照)に係止させた後に、穴部160aの反対面側を指で矢印161aのように押し込むことによって、穴部160aがハンドルハウジング45側に形成された凸状の円柱突起48a(後述の図9参照)に係合するようにした。同様にして、作業者は穴部160bの反対面側を指で矢印161bのように押し込むことによって、穴部160bがハンドルハウジング45側に形成された円柱突起48b(後述の図9参照)に係合するようにした。穴部160a、160bは弾性力を有する枠部151にて形成されるため、塑性変形することによって円柱突起48a、48b(図9参照)に嵌め込まれ、摩擦力によって嵌め込まれた状態が維持される。尚、穴部160a、160bによる摩擦力は強すぎるほどでは無いので、フィルタ部材150を取り外す際は、容易に穴部160a、160bと円柱突起48a、48bの嵌合状態を容易に解消できる。
【0036】
図8(C)は、(A)のE-E部の断面図である。この図から穴部159c、159dの長手方向の中心方向がフィルタ部材150の面に対する法線方向(吸気方向と一致)に対してわずかに斜めになっている。しかしながら、これは射出成形の金型との関係上でそうなっているだけに過ぎない。また、枠部151の一部にくさび状にくぼませた窪み部151dが形成される。くさび状の窪み部151dを形成することにより枠部151の部分的な強度を弱めることができ、爪部157c、157dが矢印165bの方向に撓ませやすくした。このため作業者が手でフィルタ部材150の枠部151を把持することで、フィルタ部材150がわずかながら内側に撓み、爪部157a~157dとフィルタ装着部46との係合状態を容易に解消することができる。尚、枠部151を内側に撓ませたとしてもステンレス網等による網部158も弾性変形が可能であるので、撓ませた状態を解消させると網部158の復元力も加わりフィルタ部材150は元の形状に容易に復元する。尚、フィルタ部材150を長年使用すると弾性変形状態が悪くなる虞がある。しかしながら、フィルタ部材150は安価に製造できるので、ディスクグラインダ1の補修部品として別途販売すれば作業者自ら容易に交換可能となる。
【0037】
図9図1のハンドルハウジング45の左側面図である。ハンドルハウジング45の軸方向前方側は、モータハウジング10とほぼ同径の円筒状の太径部とされ、太径部の左側側面にフィルタ装着部46が形成される。フィルタ装着部46はモータハウジング10の外周側円筒面から左方向に凸状に突出させたものであって、凸状の型枠部46aが略五角形の輪郭を有することにより外周縁を形成する。型枠部46aの内側領域は、円筒面で無くてほぼ平面状に形成され、そこには複数のスリット状の吸気口47が形成される。ここでは合計10個のスリット状の貫通穴が形成され、空気取入口として機能する。吸気口47は、それ自体で十分開口の小さなスリットとなっているため、大きな塵埃がハウジングの内部に入り込むことを抑制できる。しかしながら、本実施例では吸気口47の外側を完全に覆うようにフィルタ部材150を設け、フィルタ部材150の網部158の網目を通過させた空気を吸引するようにしたので、小さな粉塵までも捕集できるようになった。図では見えないが、型枠部46aの上側辺部の内側側面(径方向とほぼ平行な下面)には、上向きに窪むような2つの凹状の凹部49a、49bが形成される。同様にして、型枠部46aの下側辺部の内側側面(径方向とほぼ平行な上面)には、下向きに窪むような2つの凹状の凹部49c、49dが形成される。凹部49a~49dによる窪み空間は、前後側にだけでなく、左右方向にも内壁面を有するため、爪部157a~157dとの嵌合状態では、爪部157a~157dが左右方向に移動することを特に抑制する。型枠部46aの上側辺部と下側辺部の間の距離(高さH)は、フィルタ部150の枠部151の爪部157a~157dを除いた部分の高さよりもわずかに大きくする。
【0038】
型枠部46aの鉛直に延びる前辺部の中央付近の内側領域には、ハンドルハウジング45の中心軸線A1に対して法線方向に延在する円柱突起48aが形成される。同様にして、型枠部46aの後方の角状に形成される部分の内側領域に、ハンドルハウジング45の中心軸線A1に対して法線方向に延在する円筒突起48bが形成される。円柱突起48a、48bは、図8で説明した穴部160a、160bに嵌合するものであって、円柱突起48a、48bの外周面と、穴部160a、160bの内周円筒面が、摩擦力によって保持され、フィルタ部材150が取り外し方向に移動しないように保持するのを補助する。また、取り外し方向と交差する方向への移動力には、強く阻止することができるので、フィルタ部材150に加わる前後、上下方向への振動に対しては効果的に対抗できる。フィルタ部材150の左右方向に対する振動に対しては、4つの爪部157a~157dが効果的に対抗できるので、結果的に全方向(前後・左右・上下方向)に対してフィルタ部材150をハウジングに保持させることができる。
【0039】
図10図1のハンドルハウジング45の内側から見た側面図である。ハンドルハウジング45は左右分割式であって、図10では左側の部材を示している。ハンドルハウジング45には4つのネジボス128a~128dが形成され、図示しないネジによって右側のハンドルハウジング45部材とネジ止めされる。ハンドルハウジング45の作業者によって把持される部分には、トリガスイッチ18(図3参照)を収容する収容空間129が形成され、収容空間129の下側にはトリガレバー17(図3参照)が突出するための開口45bが形成される。ハンドル部4との接続をするために、ハンドルハウジング45の前方側の開口45aの近傍には、周方向に連続する凹状の周方向溝部127が形成されるが、そのすぐ後方側にスリット状の吸気口47が形成される。尚、図10図3とを比べると理解できるように、軸方向にみて制御回路部19と吸気口47は回転軸線A1方向に見てオーバーラップする位置にある。従って、吸気口47を介して吸引された外気は、最初に制御回路部19に搭載されるマイコン等の制御回路素子を冷却した後に、開口45aを通過して回転軸線A1方向の前方側に流れて、モータハウジング2に流入することになる。
【0040】
図11図10のF-F部の断面図である。但し図10の状態に、フィルタ部材150を取りつけた状態を示している。フィルタ部材150は外周面に枠部151が形成され、枠部151に鋳込まれるようにして金属製の網部158が保持される。この図で理解できるように、フィルタ部材150はフィルタ装着部46の型枠部46aの外縁位置(最左側位置)よりも内側に位置するような位置関係となる。従って、網部158も型枠部46aより外側に突出しないため、粉塵が網部158に捕捉されたとしても、型枠部46aから大きく外側まで堆積する虞は少ない。また、枠部151の前後中央付近には、取っ手部156a、156bが形成されるので、枠部151と型枠部46aの間に所定の凹部が確保されるので、作業者が指を凹部に入れて取っ手部156a、156b付近を親指と人差し指で把持することにより枠部151を撓ませることができ、爪部157a~157dと凹部49a~49dとの係合状態を解消させることができる。図11ではハンドルハウジング45のうち図10に示した左側部分だけの断面図を示したが、右側部分のフィルタ装着部46の断面形状は図11と左右対称で同形である。
【0041】
図12図1のモータ5付近の拡大断面図である。ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ35、40と、ステータコア31のティース部に巻かれるコイル(図示せず)によって構成される。ステータ30は、円筒形の一体成形のモータハウジング10の前方側の開口部10aから後方側に挿入されることにより組み立てられる。図12ではステータ30部分の組み込み構造を説明するために、ロータ70と回転軸60の図示をしていないが、ロータ70と回転軸60も同様にモータハウジング10の前方側の開口部10aから挿入される。モータハウジング10は前後方向の略中央に軸受ホルダ16が形成されて、モータ5が収容される収容室10bと、制御回路部19を収容する収容室10dに前後に分割される。円筒形のモータハウジング10と、モータハウジング10の中央付近で内部を径方向に接続する軸受ホルダ16の部分は、合成樹脂の一体成形で製造されるため、モータハウジング10の強度をきわめて高くすることが可能である。軸受ホルダ16はモータ5の後方側の軸受15b(図3参照)を保持するための部分であって、後方側が閉鎖された円筒状の軸受保持部16aが形成される。軸受ホルダ16の軸受保持部16aよりも外周側では、回転軸線A1と平行方向に複数の風穴が形成されるように格子状に形成され、冷却風を後方側の収容室10dから前方側の収容室10bに通過させることが可能にしている。
【0042】
ステータコア31の後方側のインシュレータ40と軸受ホルダ16の前側部分との間には、センサ基板122が設けられる。センサ基板122は、3つのホールIC121を搭載するための円環状の基板であって、ここではセンサ基板122をインシュレータ40側にネジ止めするのでは無くて、軸受ホルダ16側にネジ止めする。ステータコア31は、コイルを巻いた後にモータハウジング10の内部に組み立てられるため、その際にはステータコア31に対してインシュレータ35、40は合体された組み状態にある。従って、組み状態のステータ30をモータハウジング10内に収容した後に、前方側からファンガイド50を組み込むことになる(実際には、回転軸60に組み込まれたロータ70等の組み込みがあるので、組み立て手順は種々考えられる)。
【0043】
ファンガイド50は、ステータ30が軸方向に動かないように保持する役目を果たすと共に、ステータ30の後方側から前方側に流れる冷却風を径方向内側に導いて冷却ファン13に流入させる整流機能を果たすものである。本実施例では特に、ファンガイド50がインシュレータ40との間にラビリンス空間39を形成することを特徴とする。ラビリンス空間39とは、ステータコア31の外周部からインシュレータ35の前端を通って内周部に至る空間(通路)をできるだけ狭くして、その通路がつづら折れ(連続した折返し)になるようにしてその抵抗で外周側から内周側への空気の流入を防止する構成である。具体的にはインシュレータ35の前端面に軸方向に窪む周方向に連続した凹部を形成し、対応するファンガイド50に軸方向に突出するもので周方向に連続した凸部を形成し、凸部が凹部の内部に入り込むものの、それらを非接触状態にて保つようにして、空気の流れをきわめて抑制するようにしたものである。ラビリンス空間39を形成することによって、ステータコア31の外周部を軸方向の後方から前方に流れて、インシュレータ35の径方向外側から内側に向けて流れ込む空気の流れを、ほとんど無くすことができる。その結果、モータ5を冷却する冷却風の流れを、実質的に、ステータコア31の内周側を流れる空気だけに制限できるので、ステータコア31の内周側の流速を高めることができる。特に、動作時に発熱するコイルの周囲に空気を多く流すことができるので、モータ5の冷却効率を高めることが可能となる。
【0044】
図13図12のモータ5とファンガイド50の拡大断面図である。ステータコイル(図示せず)は、前方のインシュレータ35の巻付部38a~38f(図では38c~38eは見えない)と、後方のインシュレータ40の巻付部43a~43f(図では43c~43eは見えない)に渡るようにして銅製のエナメル線を複数回巻き付ける。巻き付けて形成された6組のコイル(図示せず)はデルタ結線となるように配線される。インシュレータ40の円環部41の後方側には、軸方向に突出する6つの引出し部44a~44f(図では44a、44b、44fは見えない)が形成される。引出し部44a~44fはデルタ結線されるコイルの巻き付けをガイドする役割を果たすと共に、デルタ結線の中間点となるため駆動電力供給用の引き出し線を保持・接続される接続箇所となる。インシュレータ40の外周面には周方向溝42が形成され、複数のコイル間の図示しない渡り線を周方向溝42の内部に配線することによって、渡り線がステータコア31やインシュレータ40の外縁よりも径方向外側に突出しないように配線される。
【0045】
前方側のインシュレータ35は、外周側に円筒部36を有し、回転軸線A1と直角に形成される前端面において、軸方向前方側から後方側に窪むように凹状に形成された円環溝37が形成される。ファンガイド50には、前方側に径の太い第一円筒部51が形成され、第一円筒部51の後端付近から径方向内側に絞り込むように延在するガイド面53が形成される。ガイド面53の内周端よりも内側が、モータ5の回転軸60を貫通させると共に空気の通過させる空間である開口53aとなる。第一円筒部51の周方向の2箇所、即ち右側側面と左側側面部分には、回転軸線A1方向後方に延びる当接リブ56a、56bが形成される。当接リブ56a、56bはステータコア31に当接することによって、ステータコア31をモータハウジング10の軸受ホルダ16(図12参照)との間で挟持させて固定するものである。図13の断面位置(水平断面)でみると、ファンガイド50の外周部に当接リブ56a、56bが存在するが、後述する図15図16で明らかなようにファンガイド50の水平断面位置をずれると外周部には当接リブ56a、56bが設けられていない。
【0046】
本実施例のファンガイド50では、従来のファンガイドでは設けられてなかった新たな部材、即ち第二円筒部55が形成される。第二円筒部55はガイド面53の後面側に接続されるもので、軸方向の位置で径が変わらない一定の直径の円筒状に形成される。第二円筒部55は、第一円筒部51等の他の構成要素と共に合成樹脂の一体成形によって製造される。第二円筒部55の後端55aは、円環溝37の開口面よりも後方側に達する位置まで延在するが、後端55aはインシュレータ35には接触しない。もちろん、第二円筒部55とインシュレータ35が、全部分において完全に非接触である必要はないが、少なくともラビリンス効果を得るために十分な程度に実質的に非接触状態とする。完全に接触状態としないのは、第二円筒部55とインシュレータ35を強く当接してしまうと、ガイド面53が撓むことによりガイド面53と冷却ファン13の接触や風路抵抗の変化により風量の低下の虞があるからである。このように形成することにより、ステータコア31の外周側とモータハウジング10の間の空間を軸方向に流れる空気が、第二円筒部55の後端55aと円環溝37によって形成されるラビリンス空間を通って、冷却ファン13(図1参照)側に流れることを抑制できる。
【0047】
図14図12のステータ30を前方側から見た斜視図である。インシュレータ35は、ステータコア31のティース部にコイルを巻くためのガイド部材であって、電気を流さない不導体の材料、例えば合成樹脂の一体成形にて製造される。インシュレータ35は円筒部36から内側に向けて延在する複数の巻付部38a~38fが形成される。巻付部38a~38fは、図示しないコイルの前方側の保持部材であって、回転軸線A1の前方側からの透視形状がステータコア31に形成されるティース部と同じ形状とされる。円筒部36の前方側の側面には、円周方向に連続して形成される円環溝37が形成される。図14にて明らかなように、円環溝37は回転軸線A1方向の前面から後ろ方向に凹状に窪むような溝である。ステータコア31は、複数の鋼板を積層した積層鉄心にて構成され、外周の対向する2箇所には、軸方向に突出する凸部であって軸方向に連続するキー32aとキー32b(図では見えない)が形成される。図からわかるようにキー32bはインシュレータ35の外周面よりも径方向外側に突出するような形状とされる。キー32bの突出している前端面がファンガイド50の当接リブ56bと当接する面となる。
【0048】
図15図12のファンガイド50単体の前方側から見た斜視図である。ファンガイド50は、冷却ファン13が回転する空間の外周部を覆う第一円筒部51と、第一円筒部51の後方側において内側の開口53aに向けて絞り込まれた壁面を形成するガイド面53を含んで構成される。第一円筒部51の上側と下側の2箇所には、モータハウジング10の内周側の突起と嵌合することによって、ファンガイド50が回転しないように回り止めをするための凹部57a、57bが形成される。第一円筒部51とガイド面53との接続部分51bは、直角の段差状で無くて、滑らかな曲面を描くような曲面として強度を高めると共に冷却風の流れをスムーズにしている。ファンガイド50の第一円筒部51の開口51aは、軸受15a(図1参照)の後方側を押さえる軸受保持板12(図1参照)と良好に当接することで、軸受保持板12との間に冷却ファン13の回転空間を形成する。
【0049】
図16図12のファンガイド50単体の後方側から見た斜視図である。同軸上にあって直径の異なるように形成された第一円筒部51と第二円筒部55は、合成樹脂の一体成形によって製造され、強度を上げるために第一円筒部51と第二円筒部55の間には回転軸線A1と平行方向に延在する複数の補強リブ52a~52j(但し、52b~52d、52hは図では見えない)が形成される。ガイド面53は第二円筒部55の直径よりも十分小さい開口53aを有する絞り部材であり、開口53aを介して後方側から空気が冷却ファン13の回転空間内に到達する。
【0050】
図17は、モータハウジング10からギヤケース6とロータ70を取り外した状態の正面図である。ガイド面53の開口53aの大きさは、ステータコア31のティース部(インシュレータの最も内径Dと等しい)よりも十分大きい直径Dとされる。従って、ステータコア31の内周側を軸方向に流れる冷却風がほぼそのまま開口53aから冷却ファン13側の空間に効率良く流れる。また、ステータコア31の外周側からインシュレータ35の前面を通って開口53aに至る空気流が、第二円筒部55(図13参照)と円環溝37(図13参照)によって形成されるラビリンス空間39に阻害されるため、ステータコア31側を流れる冷却風の流れを乱すことがない。
【0051】
以上、本実施例によればファンガイド50の形状と、隣接するインシュレータ35の形状の一部を変更してラビリンス空間39(図12参照)を形成するようにしたので、ステータ30の内側空間に冷却風を集中的に流すことができるようになり、発熱源たるコイルの冷却性能を十分確保することができた。
【0052】
次に図18及び図19を用いてロータ70側の構造を説明する。図18(A)は、ロータ70及び冷却ファン13の側面図であり、(B)は(A)のG-G部の断面図(ロータコア71の側面図に相当)である。ロータ70及び冷却ファン13の組立体は、中心軸となる回転軸60と、回転軸60の周囲に配置される略円筒状のロータコア71と、ロータコア71の前方側において回転軸60と同心上に固定される冷却ファン13を含んで構成される。回転軸60は、前後の2箇所にて軸受15a、15b(図1参照)にて軸支されるものであり、軸受15a、15bの取り付け部には軸受が圧入されるために外周面を研磨して同軸度を向上させた軸受保持部60b、60eが形成される。軸受保持部60bの前方側は、傘歯車7a(図1参照)を保持するための細径部60aが形成され、軸受保持部60bの後方側には、軸方向の一部の外周面に、周方向に連続する凹凸部60fを形成した冷却ファン取付部60cが形成される。冷却ファン取付部60cに固定される冷却ファン13は遠心ファンであり、冷却ファン13が回転することにより回転軸60の軸方向の後方側から取り込んだ空気を半径方向外側に排出する。冷却ファン13は合成樹脂の一体成形で製造され、内周側には凹凸部60fに対応する形状の凹凸部たる取付部13aが形成され、凹凸部60fに取付部13aが圧入されることによって空転しないように冷却ファン13が回転軸60に固定される。
【0053】
ロータコア71は複数の鋼板を積層した積層鉄心にて構成される。回転軸60のロータコア71を保持する部分は、外周面を絶縁材によるモールド部材65によって覆われたシャフトモールド部60dである。モールド部材65としては樹脂が用いられる。シャフトモールド部60dにロータコア71が固定されることにより、回転軸60とロータコア71の金属部分はモールド部材65を介した接続となるため、電気的に非導通状態となる。ロータコア71の前側端部及び後側端部には、回転バランスを取るためにバランサ部材85、95が同軸に設けられる。バランサ部材85、95は回転軸方向に所定の厚さを持った非磁性金属製の円環状の質量体であって、外周面の周方向の1カ所又は複数箇所に、径方向に所定のドリル穴、溝、面取り等を形成して局所的な質量を削減することによって、図18(A)にて示す回転体の回転バランスの精度を高める。図18(A)では矢印85a、95aで示す位置にて周方向に連続する小さい溝部を形成しているが、これはドリル加工をする際に、ドリルの先端の位置を軸方向に決定し易くするために設けられるものである。従って、周方向溝85a、95aは設けなくても良い。
【0054】
本実施例ではバランサ部材85とロータコア71の前端面71aの間に円板状の樹脂スペーサ80を介在させ、バランサ部材95とロータコア71の後端面71bの間に円板状の樹脂スペーサ90を介在させた。樹脂スペーサ80、90の外径はロータコア71の外径とほぼ同じであって、軸方向の厚さは、バランサ部材85、95に比べて薄い。本実施例では、スペーサ部材(樹脂スペーサ80、90)の外径をロータコア71の外径Dよりtだけわずかに小さくしており、ロータコア71の外径Dが39.8mmに対してt=0.5mm程度である。一方、ロータコア71に対するバランサ部材85の径D80は15%程度小さく構成され、ロータコア71に対するバランサ部材95の径D90は30%程度小さく構成される。
【0055】
図18(B)はロータコア71の端面を前方側から見た正面図に相当する。ロータコア71には、周方向に等間隔で積層鉄心を切り抜いたスロット73a~73dが形成される。スロット73a~73dは、ロータコア71の横断面で回転軸60を中心とした正方形の四辺にそれぞれ位置するように配置される。それらスロット73a~73dの内部には回転軸線A1方向に4つの板状のマグネット76a~76dが回転軸線A1方向に挿入され、接着剤にて固定される。軸方向に連続する小径部75a~75dは、ロータコア71を構成する多数の鋼板を固定する際の位置決め用のカシメである。 ここで、ロータコア71の外周面71cにおいて、各マグネット76a~76dの短辺が接近する付近には、ロータコア71の外周面を略V状または、谷状に径方向内側に向けて窪むようなV字溝74a~74dが形成される。
【0056】
V字溝74a~74dは、ロータコア71の軸方向の全長に亘って前端面71aから後端面71bまで連続して形成される軸方向溝である。軸方向溝の断面形状が略V字といっても、底部分が平面になる又は湾曲するような形状であるので、略U字状ともいえる形状であるが、このような谷状の溝部をロータコア71の軸方向の全長分に形成することによって、ロータコア71の外周側に冷却風が通りやすくなる上に、マグネット76a~76dによる磁気特性を改善してロータコア71から発生する磁束の乱れを改善できる。回転軸60の外周側であって、ロータコア71の中心穴72との間にはモールド部材65が介在する。モールド部材65は、回転軸60の外周側の特定部分、即ちシャフトモールド部60d(図18(A)参照)にだけ形成されるもので、径方向に所定の厚さを有する。このようにモールド部材65を介在させることによってロータコア71と回転軸60が電気的に絶縁されることになる。
【0057】
図19(A)は図3のA-A部の断面図であり、(B)は図3のB-B部の断面図であり、(C)は図3のC-C部の断面図である。ここで(A)(B)は回転軸線A1方向の前方から見た図であり、(C)は回転軸線A1方向の後方側から見た図であるので、左右方向の向きが異なることに注意されたい。図19(B)の断面図にて示すように、ステータコア31は内向きに6つの磁極片を有し、それら磁極片の内側空間には、ロータコア71が配置される。ロータコア71は、その外周面がステータコア31の磁極片に対してわずかな隙間を有するように隣接する。ステータコア31を保持するモータハウジング10は、合成樹脂の一体成形にて筒状に形成され、回転軸60の軸方向を通る分割面が存在しない。ステータコア31はモータハウジング10の軸方向前方側から後方側に挿入されることによって組み立てられる。モータハウジング10の内側には軸方向に連続する多数のリブ(凸部)が形成され、ステータコア31の外側に所定の軸方向通路が形成されるようにしているが、本実施例ではラビリンス空間39(図12参照)が形成されるため、モータ5の外周側の軸方向後方から前方側に流れる冷却風は抑制される。また、モータハウジング10に形成される凹部(キー溝)に、ステータコア31のキー32a、32bが位置するので、モータ5がモータハウジング10内で回転方向に移動しないように保持される。
【0058】
図19(A)のA-A部は、ロータ70の前方側から見た側面図に相当する。ロータコア71の前端面(風下側端部)には、V字断面形状を有するロータコア71(図18参照)と同じ断面外縁形状の樹脂スペーサ80を設けられ、その前方側にはロータコア71のV字溝74a~74dの底部の直径とほぼ同径とされるバランサ部材85が設けられる。このように、V字断面形状を有するロータコア71と同形状の樹脂スペーサ80をバランサ部材85とロータコア71の間に配置することによってロータコア71の前端面71a(図18参照)の金属面が露出しない状態とすることができる。また、樹脂スペーサ80の前側に小径のバランサ部材85を配置することにより、回転バランス調整を従来と同様に行うことが可能である。バランサ部材85の外径は、ロータコア71のV字溝74a~74dの底部(回転軸心と一番近い点)と同じ又はそれよりも小さい径となるようにし、さらに、回転軸60を通る永久磁石の法線方向でみた際に、永久磁石の外側面の位置よりも小さくなるように形成される。このように形成することによって、V字溝74a~74d部分を通って軸方向後方から前方側に流れる冷却風が、樹脂スペーサ80によって流れが阻害されることなくスムーズに流れるようになった。特に、バランサ部材85はロータコア71の風下側にあるので、バランサ部材85の外径がV字溝74a~74dの底部よりも大きい場合には、バランサ部材85とロータコア71とで囲われる空間に粉塵が溜まってしまい、冷却ファン13による空気流でも除去が困難となってしまうが、本発明によれば、ロータコア71の風下側に粉塵が溜まってしまうことを抑制できる。ロータコア71の前端側にはインシュレータ35が設けられ、インシュレータ35の径方向に延びる巻付部にはコイル58a~58fが形成される。図19ではエナメル線によるコイル部分の詳細図示を省略し、コイルの占める部分を長方形にて図示している。また、ステータコア31の各磁極部分には第3のインシュレータを介して、磁極部分と非接触状態を保ってコイルを巻くが、図19では第3のインシュレータの図示も省略している。
【0059】
図19(C)はロータ70の後方側から見た背面図に相当する図である。本図で明白なように、バランサ部材95の大きさはロータコア71や樹脂スペーサ90に比べて十分小さい径とされる。このようにバランサ部材95を小さくすれば、バランサ部材95の外周側に、ロータコア71の回転位置を検出するホールICを搭載するセンサ基板122(図3参照)を配置することができ、バランサ部材95の外周側の空間を有効利用できる。一方で、樹脂スペーサ90の外縁形状をロータコア71の外縁形状と同じようにV字溝91a~91dを形成したので、ロータコア71の後端面71b(図18参照)の金属面が露出しない状態とすることができ、冷却風と共にハンドルハウジング45内からモータハウジング10の内部空間に到達した金属粉塵が、ロータコア71の軸方向の後端面71bに直接付着することを防止できる。また、樹脂スペーサ90にもV字溝が同じように形成されるので、冷却風の軸方向の流れを阻害することなく、ロータコア71の端面に付着した異物によってモータロックを引き起こす虞を大幅に回避できる。
【0060】
このように、本実施例では、フィルタ部材150によって金属粉塵の侵入を抑制できる。また、万が一金属粉塵がモータハウジングに侵入しても、バランサ部材95あるいは樹脂スペーサ90の形状を工夫することでロータコア71に金属粉塵が付着することを抑制できる。また、ファンガイド50とインシュレータ35の形状によってステータ30の内側空間、すなわちロータコア71の周囲に冷却風を集中的に流すようにしたので、ロータコア71に金属粉塵が付着したとしても、その金属粉塵を風で吹き飛ばして外部へ排出することができる。すなわち、金属粉塵による作業への影響を、好適に抑制できる。
【0061】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、電動工具は上述したグラインダだけに限定されるものではなく、モータを用いたその他の種々な動力工具での適用が可能である。また、モータの他端側に延びる回転軸に動力伝達部が接続されるモータ機器であれば、その他の動力機械や、動力機械用のモータに適用できる。
【符号の説明】
【0062】
1…ディスクグラインダ、2…本体部、3…動力伝達部、4…ハンドル部5、…モータ、6…ギヤケース、6a~6c…サイドハンドル取付孔、7a,7b…傘歯車、8…スピンドル(出力軸)、9a,9b…軸受、10…モータハウジング、10a,10c…開口部、10b,10d…収容室、11a~11d…ネジボス、12…軸受保持板、13…冷却ファン、13a…取付部、14a…受け金具、14b…押さえ金具、15a,15b…軸受、16…軸受ホルダ、16a…軸受保持部、17…トリガレバー、18…トリガスイッチ、19…制御回路部、20…インバータ回路部、21a,21b…排気口、22…スピンドルロックボタン、23…サイドハンドル、26…IGBT、27…回路基板、28…LED、29…ホイルガード、30…ステータ、31…ステータコア、32a,32b…キー、35…インシュレータ、36…円筒部、37…円環溝、38a~38f…巻付部、39…ラビリンス空間、40…インシュレータ、41…円環部、42…周方向溝、43a~43f…巻付部、44a~44f…引出し部、45…ハンドルハウジング、45a,45b…開口、46…フィルタ装着部、46a…型枠部、47…吸気口、48a,48b…円柱突起(凸部)、49a~49d…凹部、50…ファンガイド、51…第一円筒部、51a…開口、51b…接続部分、52a~52j…補強リブ、53…ガイド面、53a…開口、55…第二円筒部、55a…(第二円筒部の)後端、56a,56b…当接リブ、57a,57b…凹部、58a~58f…コイル、60…回転軸、60a…(回転軸の)細径部、60b,60e…(回転軸の)軸受保持部、60c…(回転軸の)冷却ファン取付部、60d…(回転軸の)シャフトモールド部、60f…(回転軸の)凹凸部65…モールド部材、70…ロータ、71…ロータコア、71a…前端面、71b…後端面、71c…外周面、72…中心穴、73a~73d…スロット、74a~74d…V字溝、75a~75d…小径部、76a~76d…マグネット、80…樹脂スペーサ、85…バランサ部材、85a…周方向溝、90…樹脂スペーサ、91a~91d…(樹脂スペーサの)V字溝、95…バランサ部材、95a…周方向溝、98…砥石、99…電源コード、100…商用交流電源、110…演算部、111…整流回路、112…ブリッジダイオード、113…平滑回路、114,115…コンデンサ、116…抵抗、117…シャント抵抗、118…インバータ回路、119…低電圧電源回路、121…ホールIC、122…センサ基板、125…開口保持部、126…フランジ部、127…周方向溝部、128a~128d…ネジボス、129…収容空間、150…フィルタ部材、151…枠部、151a,151b…(枠部)の細枠部分、152…角部、152a…リブ、153…太枠部、154a~154d…内角部分、156a,156b…取っ手部、157a~157d…爪部、158…網部、160a,160b…穴部 …t…外周面41aとリブ41bの外縁位置との差A1…回転軸線
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