(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電力分配/結合回路および電力分配/結合部品
(51)【国際特許分類】
H03H 7/48 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
H03H7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020539592
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2019033951
(87)【国際公開番号】W WO2020045576
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-01-03
(31)【優先権主張番号】P 2018162137
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100158207
【氏名又は名称】河本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】尾形 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
【審査官】小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/027467(WO,A1)
【文献】特開2000-165170(JP,A)
【文献】特開2000-124712(JP,A)
【文献】特開2002-344276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層方向に積層された積層体として形成された、電力分配/結合部品であって、
共通外部端子、第1外部端子、第2外部端子、接続導体と、
前記積層方向に巻回軸を有し、一方の端部が前記接続導体、他方の端部が前記第1外部端子に接続された第1インダクタ導体と、
前記積層方向に巻回軸を有し、一方の端部が前記接続導体、他方の端部が前記第2外部端子に接続された第2インダクタ導体と、
前記積層方向に巻回軸を有し、一方の端部が前記共通外部端子、他方の端部が前記接続導体に接続された第3インダクタ導体と、
前記第1インダクタ導体の他方の端部に接続された第1キャパシタ導体と、
前記第2インダクタ導体の他方の端部に接続された第2キャパシタ導体と、
前記接続導体に接続された第3キャパシタ導体と、
前記第3インダクタ導体の一方の端部に接続された第4キャパシタ導体と、
グランド導体と、を備え、
前記グランド導体は、前記第1キャパシタ導体、前記第2キャパシタ導体、前記第3キャパシタ導体、前記第4キャパシタ導体のそれぞれと容量を形成するように配置され、
前記積層体を前記積層方向から平面視して透視したとき、
前記第1インダクタ導体、前記第2インダクタ導体および前記第3インダクタ導体は、それぞれ、前記巻回軸を内包する空芯部を有し、
前記第3インダクタ導体の前記空芯部の少なくとも一部は、前記第1インダクタ導体の前記空芯部と、前記第2インダクタ導体の前記空芯部に挟まれるように配置され、
前記第1インダクタ導体の一方の端部から他方の端部に向かう巻回方向と、前記第2インダクタ導体の一方の端部から他方の端部に向かう巻回方向とが異なり、
前記第1インダクタ導体の前記空芯部と前記第2インダクタ導体の前記空芯部とが並ぶ方向を、前記第1インダクタ導体と前記第2インダクタ導体との並び方向としたとき、
前記並び方向において、前記第1インダクタ導体の最も外側の第1部分の前記巻回方向と、前記第2インダクタ導体の最も外側の第1部分の前記巻回方向が、同じ方向であり、
前記並び方向と直角に交わる方向において、前記空芯部を介して前記第1インダクタ導体の一方の端部と対向する前記第1インダクタ導体の第2部分の前記巻回方向と、前記空芯部を介して前記第2インダクタ導体の一方の端部と対向する前記第2インダクタ導体の第2部分の前記巻回方向が、前記並び方向において互いに内向きの反対方向である、電力分配/結合部品。
【請求項2】
前記第3インダクタ導体の一方の端部から他方の端部に向かう巻回方向が、前記第1インダクタ導体および前記第2インダクタ導体のいずれか一方の前記巻回方向と同じである、請求項
1に記載された電力分配/結合部品。
【請求項3】
前記第1インダクタ導体の前記空芯部が前記接続導体と重ならず、かつ、前記第2インダクタ導体の前記空芯部が前記接続導体と重ならない、請求項
1または
2に記載された電力分配/結合部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力分配/結合回路に関する。また、本発明は、複数の誘電体層が積層方向に積層された積層体として形成された電力分配/結合部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電力分配/結合部品(ディバイダ)が、携帯電話などの移動体通信の大型の基地局などにおいて使用されている。
【0003】
電力分配/結合部品は、たとえば、LNA(低雑音増幅器)による増幅効率の悪化を抑制するために使用される。すなわち、基地局ではLNAによって電力の増幅をおこなう場合があるが、LNAは、入力される電力が大きくなると出力の線形性が悪化し、増幅効率が悪化することが知られている。そこで、2つの電力分配/結合部品を用意し、電力を1つ目の電力分配/結合部品で2つに分配し、小さくなった2つの電力をそれぞれ別々のLNAで増幅し、増幅された2つの電力を2つ目の電力分配/結合部品で1つの電力に結合させることによって、LNAの増幅効率の悪化を抑制するようにしている。
【0004】
特許文献1(特開2002-280864号公報)に、そのような用途に使用できる電力分配/結合部品(電力2分配部品)が開示されている。
図15に、特許文献1に開示された電力分配/結合部品1000の等価回路図を示す。
【0005】
電力分配/結合部品1000は、共通入出力端子101、入出力端子102、103を備えている。共通入出力端子101に、2つのインダクタL101、L102がそれぞれ接続されている。インダクタL101に、入出力端子102が接続されている。インダクタL102に、入出力端子103が接続されている。インダクタL101と入出力端子102との接続点と、グランドとの間に、コンデンサC101が接続されている。インダクタL102と入出力端子103との接続点と、グランドとの間に、コンデンサC102が接続されている。共通入出力端子101と、グランドとの間に、コンデンサC103が接続されている。入出力端子102と入出力端子103との間に、抵抗R101が接続されている。
【0006】
電力分配/結合部品1000は、共通入出力端子101に入力された電力を2つに分配して入出力端子102および入出力端子103からそれぞれ出力することができる。また、電力分配/結合部品1000は、入出力端子102および入出力端子103にそれぞれ入力された電力を1つに結合して共通入出力端子101から出力することができる。電力分配/結合部品1000が有するこの回路は、ウイルキンソン型電力2分配回路と呼ばれる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電力分配/結合部品1000は、入出力端子102と入出力端子103との間のアイソレーションが十分でないという問題があった。すなわち、入出力端子102と入出力端子103との間のアイソレーションを示すS32特性において、十分に大きな減衰が得られている帯域の幅が狭いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した従来の問題を解決するためになされたものである。その手段として、本発明の一実施態様に係る電力分配/結合回路は、共通端子と、第1端子と、第2端子と、共通端子に接続された第1接続点と、第1接続点と第1端子との間に接続された第1インダクタと、第1接続点と第2端子との間に接続された第2インダクタと、第1インダクタの第1端子側の端部とグランドとの間にシャント接続された第1キャパシタと、第2インダクタの第2端子側の端部とグランドとの間にシャント接続された第2キャパシタと、第1接続点とグランドとの間にシャント接続された第3キャパシタと、第1端子と第2端子との間に接続された抵抗と、を備え、共通端子に入力された電力を第1接続点において分配して第1端子および第2端子からそれぞれ出力するか、または、第1端子および第2端子にそれぞれ入力された電力を第1接続点において結合して共通端子から出力する、電力分配/結合回路であって、共通端子と第1接続点との間に接続された第3インダクタと、第3インダクタの共通端子側の端部とグランドとの間にシャント接続された第4キャパシタと、を更に備えるようにする。
【0010】
また、上述した従来の問題を解決するため、本発明の一実施態様に係る電力分配/結合部品は、複数の誘電体層が積層方向に積層された積層体として形成された、電力分配/結合部品であって、それぞれ積層方向に巻回軸を有する、第1インダクタ導体および第2インダクタ導体と、第1インダクタ導体の一方の端部と第2インダクタ導体の一方の端部とを接続する接続導体と、積層方向に巻回軸を有し、一方の端部が接続導体に接続された第3インダクタ導体と、第1インダクタ導体の他方の端部に接続された第1キャパシタ導体と、第2インダクタ導体の他方の端部に接続された第2キャパシタ導体と、接続導体に接続された第3キャパシタ導体と、第3インダクタ導体の他方の端部に接続された第4キャパシタ導体と、グランド導体と、を備え、グランド導体は、第1キャパシタ導体、第2キャパシタ導体、第3キャパシタ導体、第4キャパシタ導体のそれぞれと容量を形成するように配置され、積層体を積層方向から平面視して透視したとき、第1インダクタ導体および第2インダクタ導体は、それぞれ、巻回軸を内包する空芯部を有し、第1インダクタ導体の空芯部が接続導体と重ならず、かつ、第2インダクタ導体の空芯部が接続導体と重ならないようにする。
【0011】
また、上述した従来の問題を解決するため、本発明の別の実施態様に係る電力分配/結合部品は、複数の誘電体層が積層方向に積層された積層体として形成された、電力分配/結合部品であって、共通外部端子、第1外部端子、第2外部端子、接続導体と、積層方向に巻回軸を有し、一方の端部が接続導体、他方の端部が第1外部端子に接続された第1インダクタ導体と、積層方向に巻回軸を有し、一方の端部が接続導体、他方の端部が第2外部端子に接続された第2インダクタ導体と、積層方向に巻回軸を有し、一方の端部が共通外部端子、他方の端部が接続導体に接続された第3インダクタ導体と、第1インダクタ導体の他方の端部に接続された第1キャパシタ導体と、第2インダクタ導体の他方の端部に接続された第2キャパシタ導体と、接続導体に接続された第3キャパシタ導体と、第3インダクタ導体の一方の端部に接続された第4キャパシタ導体と、グランド導体と、を備え、グランド導体は、第1キャパシタ導体、第2キャパシタ導体、第3キャパシタ導体、第4キャパシタ導体のそれぞれと容量を形成するように配置され、積層体を積層方向から平面視して透視したとき、第1インダクタ導体、第2インダクタ導体および第3インダクタ導体は、それぞれ、巻回軸を内包する空芯部を有し、第3インダクタ導体の空芯部の少なくとも一部は、第1インダクタ導体の空芯部と、第2インダクタ導体の空芯部に挟まれるように配置され、第1インダクタ導体の一方の端部から他方の端部に向かう巻回方向と、第2インダクタ導体の一方の端部から他方の端部に向かう巻回方向とが異なり、積層体を積層方向から平面視して透視し、第1インダクタ導体の空芯部と第2インダクタ導体の空芯部とが並ぶ方向を、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体との並び方向としたとき、並び方向において、第1インダクタ導体の最も外側の第1部分の巻回方向と、第2インダクタ導体の最も外側の第1部分の巻回方向が、同じ方向であり、並び方向と直角に交わる方向において、空芯部を介して第1インダクタ導体の一方の端部と対向する第1インダクタ導体の第2部分の巻回方向と、空芯部を介して第2インダクタ導体の一方の端部と対向する第2インダクタ導体の第2部分の巻回方向が、並び方向において互いに内向きの反対方向であるものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一実施態様にかかる電力分配/結合回路は、第1端子と第2端子との間に良好なアイソレーションが得られている。すなわち、本発明の電力分配/結合回路は、S32特性において、十分に大きな減衰が得られている帯域が広い。
【0013】
また、本発明の一実施態様にかかる電力分配/結合部品によれば、本発明の電力分配/結合回路を容易に実現することができる。また、本発明の一実施態様にかかる電力分配/結合部品は、積層体を積層方向から平面視して透視したとき、第1インダクタ導体の空芯部および第2インダクタ導体の空芯部が、いずれも接続導体と重なっていないため、第1インダクタ導体および第2インダクタ導体は、接続導体によって阻害されることなく磁束を形成することができる。
【0014】
また、本発明の別の実施態様にかかる電力分配/結合部品によれば、本発明の電力分配/結合回路を容易に実現することができる。また、本発明の別の実施態様にかかる電力分配/結合部品によれば、リターンロスが小さい帯域の幅を広くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る電力分配/結合回路100の等価回路図である。
【
図2】第1実施形態に係る電力分配/結合部品200の斜視図である。
【
図3】電力分配/結合部品200の分解斜視図である。
【
図4】電力分配/結合部品200を積層方向から平面視して透視した図である。
【
図6】第2実施形態に係る電力分配/結合回路300の等価回路図である。
【
図7】第2実施形態に係る電力分配/結合部品400の分解斜視図である。
【
図8】電力分配/結合部品400の要部分解斜視図である。
【
図10】実施例3のS32特性を示すグラフである。
【
図11】第3実施形態に係る電力分配/結合回路500の等価回路図である。
【
図12】第4実施形態に係る電力分配/結合部品600の分解要部斜視図である。
【
図13】第5実施形態に係る電力分配/結合部品700の分解要部斜視図である。
【
図14】
図14(A)、(B)は、それぞれ、電力分配/結合部品600、電力分配/結合部品700を使用した電力分配/結合回路の特性を示すグラフである。
【
図15】特許文献1に記載された電力分配/結合部品1000の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0017】
なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0018】
[第1実施形態]
(電力分配/結合回路100)
図1に、第1実施形態に係る電力分配/結合回路100の等価回路図を示す。なお、
図1においては、回路の一部を破線で囲んでいるが、後述するように、本実施形態においては、この部分を電力分配/結合部品200によって構成する。
【0019】
電力分配/結合回路100は、共通端子TCと、第1端子T1と、第2端子T2とを備えている。また、電力分配/結合回路100は、第1接続点P1を備えている。
【0020】
第1接続点P1と第1端子T1との間に、第1インダクタL1が接続されている。また、第1接続点P1と第2端子T2との間に、第2インダクタL2が接続されている。
【0021】
第1インダクタL1の第1端子T1側の端部と、グランドとの間に、第1キャパシタC1がシャント接続されている。また、第2インダクタL2の第2端子T2側の端部と、グランドとの間に、第2キャパシタC2がシャント接続されている。また、第1接続点P1とグランドとの間に、第3キャパシタC3がシャント接続されている。なお、シャント接続とは、回路中の任意の一点と、グランドとの間に対象物を接続することを指す。
【0022】
なお、第3キャパシタC3は、第1インダクタL1の第1接続点P1側の端部とグランドとの間に仮想のキャパシタCX(図示せず)をシャント接続するとともに、第2インダクタL2の第1接続点P1側の端部とグランドとの間に仮想のキャパシタCY(図示せず)をシャント接続し、仮想のキャパシタCXと仮想のキャパシタCYとを足し合わせたキャパシタであると考えることもできる。
【0023】
第1端子T1と第2端子T2との間に、抵抗R1が接続されている。
【0024】
共通端子TCと第1接続点P1との間に、第3インダクタL3が接続されている。また、第3インダクタL3の共通端子TC側の端部とグランドとの間に、第4キャパシタC4がシャント接続されている。電力分配/結合回路100は、第1端子T1と第2端子T2と間において良好なアイソレーションを得るために、第3インダクタL3および第4キャパシタC4を設けている。
【0025】
電力分配/結合回路100は、共通端子TCに入力された電力を2つに分配して、第1端子T1および第2端子T2からそれぞれ出力することができる。また、電力分配/結合回路100は、第1端子T1および第2端子T2にそれぞれ入力された電力を1つに結合して、共通端子TCから出力することができる。
【0026】
(電力分配/結合部品200)
上述したとおり、本実施形態においては、
図1において破線で囲んだ電力分配/結合回路100の回路の一部分を、電力分配/結合部品200によって構成する。
【0027】
図2、
図3、
図4に、電力分配/結合部品200を示す。ただし、
図2は、電力分配/結合部品200の斜視図である。
図3は、電力分配/結合部品200の分解斜視図である。
図4は、積層方向から平面視したときの電力分配/結合部品200の内部に形成されたビア導体、インダクタ導体、接続導体を示した透視図である。
【0028】
電力分配/結合部品200は、複数の誘電体層1a~1iが積層された積層体1を備えている。積層体1の形状は任意であるが、本実施形態においては、下側主面と、上側主面と、下側主面と上側主面とを繋ぐ4つの側面とで構成される直方体形状とした。
【0029】
積層体1(誘電体層1a~1i)の材質は任意であるが、本実施形態においては、LTCC(Low temperature co-fired ceramic;低温同時焼成セラミックス)を使用した。
【0030】
積層体1の外表面に、6つの外部端子2a~2fが形成されている。6つの外部端子2a~2fは、
図2における積層体1の手前側の側面と奥側の側面とに分けて形成されている。具体的には、積層体1の手前側の側面に3つの外部端子2a~2cが形成され、積層体1の奥側の側面に3つの外部端子2d~2fが形成されている。外部端子2a~2fは、それぞれ、主に積層体1の側面に形成されているが、下側の端部が積層体1の下側主面に延出され、上側の端部が上側主面に延出されている。
【0031】
6つの外部端子2a~2fのうち、外部端子2bは共通外部端子であり、外部端子2dは第2外部端子であり、外部端子2fは第3外部端子であり、外部端子2a、2c、2eはグランド外部端子である。
【0032】
積層体1の上側主面に、方向性識別マーク3が形成されている。
【0033】
外部端子2a~2fおよび方向性識別マーク3の構造および材質は任意であるが、本実施形態においては、導電性ペーストを焼付けて形成したCu層と、めっきによって形成したNi層と、めっきによって形成したSn層の3層構造にした。
【0034】
次に、
図3を参照して、積層体1を構成する誘電体層1a~1iに形成された導体について説明する。なお、誘電体層1a~1iには、それぞれ、外部端子2a~2fが形成されているが、図面が見にくくならないように、説明に必要がない場合には、図面への符号の付与を省略している場合がある。また、誘電体層1d~1hには、それぞれ、上下主面間を貫通してビア導体が形成されているが、異なる誘電体層に形成されたビア導体であっても、相互に接続されている場合は同一の符号を付与している。また、異なる誘電体層に形成されたビア導体同士を接続するために、誘電体層の主面に中継電極を形成している場合があるが、中継電極については説明および図面への符号の付与を省略している。なお、以下において、特に断らない限り、キャパシタ導体やインダクタ導体などの形状や配置に関する記述は、積層体1を積層方向から平面視して透視したときの形状や配置である。
【0035】
誘電体層1a上側主面に、キャパシタ導体4a、4b、4cが形成されている。キャパシタ導体4aは、共通外部端子である外部端子2bに接続されている。キャパシタ導体4bは、第1外部端子である外部端子2dに接続されている。キャパシタ導体4cは、第2外部端子である外部端子2fに接続されている。
【0036】
誘電体層1bの上側主面に、グランド導体5が形成されている。グランド導体5は、グランド外部端子である外部端子2a、2c、2eに接続されている。
【0037】
誘電体層1cの上側主面に、キャパシタ導体4dが形成されている。
【0038】
誘電体層1dの上下主面間を貫通して、ビア導体6aが形成されている。誘電体層1dの上側主面に、インダクタ導体7a、7bが形成されている。インダクタ導体7aの一端が、第1外部端子である外部端子2dに接続されている。インダクタ導体7bの一端が、第2外部端子である外部端子2fに接続されている。
【0039】
誘電体層1eの上下主面間を貫通して、ビア導体6a、6b、6cが形成されている。誘電体層1eの上側主面に、インダクタ導体7c、7d、7eが形成されている。インダクタ導体7cの一端が、共通外部端子である外部端子2bに接続されている。インダクタ導体7dの一端がビア導体6bに接続され、ビア導体6bがインダクタ導体7aの他端に接続されている。インダクタ導体7eの一端がビア導体6cに接続され、ビア導体6cがインダクタ導体7bの他端に接続されている。
【0040】
誘電体層1fの上下主面間を貫通して、ビア導体6a、6d、6e、6fが形成されている。誘電体層1fの上側主面に、インダクタ導体7f、7g、7hが形成されている。インダクタ導体7fの一端がビア導体6dに接続され、ビア導体6dがインダクタ導体7cの他端に接続されている。インダクタ導体7gの一端がビア導体6eに接続され、ビア導体6eがインダクタ導体7dの他端に接続されている。インダクタ導体7hの一端がビア導体6fに接続され、ビア導体6fがインダクタ導体7eの他端に接続されている。
【0041】
誘電体層1gの上下主面間を貫通して、ビア導体6a、6j、6k、6lが形成されている。誘電体層1gの上側主面に、インダクタ導体7i、7j、7kが形成されている。インダクタ導体7iの一端がビア導体6jに接続され、ビア導体6jがインダクタ導体7fの他端に接続されている。インダクタ導体7jの一端がビア導体6kに接続され、ビア導体6kがインダクタ導体7gの他端に接続されている。インダクタ導体7kの一端がビア導体6lに接続され、ビア導体6lがインダクタ導体7hの他端に接続されている。
【0042】
誘電体層1hの上下主面間を貫通して、ビア導体6a、6j、6k、6lが形成されている。誘電体層1hの上側主面に、インダクタ導体7l、接続導体8が形成されている。インダクタ導体7lの一端がビア導体6kに接続され、ビア導体6kがインダクタ導体7iの他端に接続されている。接続導体8の一端がビア導体6kに接続され、ビア導体6kがインダクタ導体7jの他端に接続されている。接続導体8の他端がビア導体6lに接続され、ビア導体6lがインダクタ導体7kの他端に接続されている。接続導体8の途中の部分がビア導体6aに接続され、ビア導体6aがキャパシタ導体4dに接続されている。インダクタ導体7lの他端が、接続導体8の途中の部分に接続されている。
【0043】
キャパシタ導体4a~4d、グランド導体5、ビア導体6a~6l、インダクタ導体7a~7l、接続導体8の材質は任意であるが、本実施形態においてはCuを使用した。
【0044】
以上の構造からなる電力分配/結合部品200は、従来から一般的に実施されている電力分配/結合部品200の製造方法によって製造することができる。
【0045】
次に、
図1に示した電力分配/結合回路100と、電力分配/結合部品200の構造との関係について説明する。上述したとおり、上述したとおり、
図1に示す電力分配/結合回路100において、破線で囲んだ部分が電力分配/結合部品200によって構成されている。
【0046】
図1に示すように、電力分配/結合部品200は、共通外部端子である外部端子2bと、第1外部端子である外部端子2dと、第2外部端子である外部端子2fとを備えている。
【0047】
図1に示す第4キャパシタC4は、
図3に示すキャパシタ導体4aとグランド導体5との間に発生する容量によって形成されている。
【0048】
図1に示す第3インダクタL3は、
図3に示す、外部端子2b、インダクタ導体7c、ビア導体6d、インダクタ導体7f、ビア導体6g、インダクタ導体7i、ビア導体6j、インダクタ導体7l、接続導体8を繋ぐ導電経路によって形成されている。起点である外部端子2bは共通外部端子であり、終点である接続導体8は
図1に示す第1接続点P1に該当する。インダクタ導体7c、7f、7i、7lは、第3インダクタ導体に該当する。
【0049】
図1に示す第1インダクタL1は、
図3に示す、接続導体8、ビア導体6k、インダクタ導体7j、ビア導体6h、インダクタ導体7g、ビア導体6e、インダクタ導体7d、ビア導体6b、インダクタ導体7a、外部端子2dを繋ぐ導電経路によって形成されている。起点である接続導体8は第1接続点P1に該当し、終点である外部端子2dは第1外部端子である。インダクタ導体7j、7g、7d、7aは、第1インダクタ導体に該当する。
【0050】
図1に示す第1キャパシタC1は、
図3に示すキャパシタ導体4bとグランド導体5との間に発生する容量によって形成されている。
【0051】
図1に示す第2インダクタL2は、
図3に示す、接続導体8、ビア導体6l、インダクタ導体7k、ビア導体6i、インダクタ導体7h、ビア導体6f、インダクタ導体7e、ビア導体6c、インダクタ導体7b、外部端子2fを繋ぐ導電経路によって形成されている。起点である接続導体8は第1接続点P1に該当し、終点である外部端子2fは第2外部端子である。インダクタ導体7k、7h、7e、7bは、第2インダクタ導体に該当する。
【0052】
図1に示す第2キャパシタC2は、
図3に示すキャパシタ導体4cとグランド導体5との間に発生する容量によって形成されている。
【0053】
図1に示す第3キャパシタC3は、
図3に示すキャパシタ導体4dとグランド導体5との間に発生する容量によって形成されている。
【0054】
図1に示すように、電力分配/結合部品200の外部端子2bが共通端子TCに接続され、外部端子2dが第1端子T1に接続され、外部端子2fが第2端子T2に接続されている。図示していないが、電力分配/結合部品200の外部端子2a、2c、2eが、電力分配/結合部品200の外部のグランドに接続されている。また、第1端子T1と第2端子T2との間に、抵抗R1が接続されている。抵抗R1は、電力分配/結合部品200とは別の部品として用意され、第1端子T1と第2端子T2との間に接続されている。別の部品である抵抗R1とは、たとえば、ディスクリート部品の抵抗である。以上のように、電力分配/結合部品200と抵抗R1とで、電力分配/結合回路100が構成されている。
【0055】
図4に、電力分配/結合部品200の積層体1の内部を誘電体層1a~1iの積層方向から平面視して透視し、ビア導体6a~6l、インダクタ導体7a~7l、接続導体8を示した透視図を示す。
【0056】
上述したとおり、第1インダクタL1が、接続導体8、ビア導体6k、インダクタ導体7j、ビア導体6h、インダクタ導体7g、ビア導体6e、インダクタ導体7d、ビア導体6b、インダクタ導体7a、外部端子2dを繋ぐ導電経路によって形成されている。第1インダクタL1は、誘電体層1a~1iの積層方向に巻回軸を有し、その巻回軸を内包する空芯部を有している。
【0057】
また、上述したとおり、第2インダクタL2が、接続導体8、ビア導体6l、インダクタ導体7k、ビア導体6i、インダクタ導体7h、ビア導体6f、インダクタ導体7e、ビア導体6c、インダクタ導体7b、外部端子2fを繋ぐ導電経路によって形成されている。第2インダクタL2は、誘電体層1a~1iの積層方向に巻回軸を有し、その巻回軸を内包する空芯部を有している。この空芯部とは、ヘリカル状に形成されたインダクタ導体によって囲まれた領域であって、インダクタ導体が形成されていない領域を示す。
【0058】
また、上述したとおり、第3インダクタL3が、外部端子2b、インダクタ導体7c、ビア導体6d、インダクタ導体7f、ビア導体6g、インダクタ導体7i、ビア導体6j、インダクタ導体7l、接続導体8を繋ぐ導電経路によって形成されている。第3インダクタL3は、誘電体層1a~1iの積層方向に巻回軸を有し、その巻回軸を内包する空芯部を有している。
【0059】
電力分配/結合部品200においては、第1インダクタL1の空芯部(第1インダクタ導体であるインダクタ導体7j、7g、7d、7aによって囲まれた領域であって、積層方向から平面視して透視したときに、インダクタ導体が形成されていない領域)が、接続導体8と重なっていない。同様に、第2インダクタL2の空芯部(第2インダクタ導体であるインダクタ導体7k、7h、7e、7bによって囲まれた領域であって、積層方向から平面視して透視したときに、インダクタ導体が形成されていない領域)が、接続導体8と重なっていない。第1インダクタL1や第2インダクタL2の空芯部が接続導体8と重なると、第1インダクタL1や第2インダクタの磁束形成が阻害される。しかしながら、電力分配/結合部品200においては、第1インダクタL1、第2インダクタの空芯部がそれぞれ接続導体8と重なっていないため、第1インダクタL1、第2インダクタL2は、接続導体8に阻害されることなく、良好に磁束を形成することができる。この理由によって、電力分配/結合部品200の第1インダクタL1、第2インダクタL2は、それぞれ良好なQ値を備えている。
【0060】
また、電力分配/結合部品200は、第3インダクタL3の巻回方向と第1インダクタL1の巻回方向とが同一であり、第3インダクタL3から第1インダクタL1にスムースに電流が流れる。一方、第3インダクタL3の巻回方向と第2インダクタL2の巻回方向とは異なっているが、インダクタ導体7lおよび接続導体8においてS字状に巻回方向の転換をはかっているため、第3インダクタL3から第2インダクタL2へもスムースに電流が流れる。この理由によっても、電力分配/結合部品200の第1インダクタL1、第2インダクタL2、第3インダクタL3は、それぞれ良好なQ値を備えている。なお、S字状に巻回方向の転換をはかるとは、丸みを有して左側に曲り、続いて丸みを有して右側に曲がるか、または、丸みを有して右側に曲り、続いて丸みを有して左側に曲がり、巻回方向の転換をはかることをいう。
【0061】
(実施例1)
実施例1として、
図2、
図3、
図4に示す構造の電力分配/結合部品200を作製し、電力分配/結合部品200と抵抗R1とを使用して、
図1に示す電力分配/結合回路100を作製した。各インダクタのインダクタンス値、各キャパシタの容量値、抵抗の抵抗値を表1に示す。なお、第1インダクタL1のインダクタンス値と第2インダクタL2のインダクタンス値は同じ値にされ、第1キャパシタC1の容量値と第2キャパシタC2の容量値は同じ値にされている。
【表1】
【0062】
また、比較のために、比較例1に係る電力分配/結合回路を作製した。比較例は、実施例1から第3インダクタL3および第4キャパシタC4を取り除いたものである。
【0063】
図5に、実施例1に係る電力分配/結合回路のS32特性を実線で示し、比較例1に係る電力分配/結合回路のS32特性を破線で示す。ただし、電力分配/結合部品200の外部端子2bを接続した共通端子TCを第1端子、外部端子2dを接続した第1端子T1を第2端子、外部端子2fを接続した第2端子T2を第3端子とした。なお、S32特性は、第2端子(第1端子T1)と第3端子(第2端子T2)との間のアイソレーションを示す。
【0064】
図5から分かるように、実施例1に係る電力分配/結合回路は、比較例1に係る電力分配/結合回路に比べて、大きな減衰が得られている帯域が広い。また、実施例1に係る電力分配/結合回路は、比較例1に係る電力分配/結合回路に比べて、より大きな減衰が得られている。
【0065】
以上より、第3インダクタL3、第4キャパシタC4を追加した実施例1に係る電力分配/結合回路は、比較例1に係る電力分配/結合回路に比べて、第1端子T1と第2端子T2との間のアイソレーションが良好であることが確認できた。
【0066】
[第2実施形態]
(電力分配/結合回路300)
図6に、第2実施形態に係る電力分配/結合回路300の等価回路図を示す。
図6においては、回路の一部を破線で囲んでいるが、後述するように、本実施形態においては、この部分を電力分配/結合部品400によって構成する。
【0067】
第2実施形態に係る電力分配/結合回路300は、第1実施形態に係る電力分配/結合回路100の構成の一部に変更を加えた。具体的には、電力分配/結合回路300は、電力分配/結合回路100の第1インダクタL1を、第2接続点P2において、2つのインダクタL1AとインダクタL1Bとに分割した。同様に、電力分配/結合回路300は、電力分配/結合回路100の第2インダクタL2を、第3接続点P3において、2つのインダクタL2AとインダクタL2Bとに分割した。なお、インダクタL1A、L1B、L2A、L2Bを、分割インダクタと呼ぶ場合がある。ここでいう分割インダクタとは、第1インダクタL1もしくは第2インダクタL2を構成する複数のインダクタのうち、個別のそれぞれのインダクタのことを指す
【0068】
そして、電力分配/結合回路300は、第2接続点P2とグランドとの間に、第5キャパシタL5をシャント接続した。また、電力分配/結合回路300は、第3接続点P3とグランドとの間に、第6キャパシタL6をシャント接続した。
【0069】
電力分配/結合回路300の他の構成は、電力分配/結合回路100と同じにした。
【0070】
(電力分配/結合部品400)
上述したとおり、本実施形態においては、電力分配/結合回路300の回路の一部分(
図6において破線で囲んだ部分)を、電力分配/結合部品400によって構成する。
【0071】
図7、
図8に、電力分配/結合部品400を示す。ただし、
図7は、電力分配/結合部品400の分解斜視図である。
図8は、電力分配/結合部品400の要部分解斜視図である。
【0072】
第2実施形態に係る電力分配/結合部品400は、第1実施形態に係る電力分配/結合
部品200の構成の一部に変更を加えた。具体的には、
図7に破線で囲んだ誘電体層1c~1hのうち、誘電体層1c~1gにおいて、電力分配/結合部品200から、キャパシタ導体やビア導体やインダクタ導体の数、形状、形成位置、接続関係などを変更した。なお、誘電体層1a、1b、1h、1iについては、電力分配/結合部品200からの変更はない。
【0073】
図8に、
図7に破線で囲んだ誘電体層1c~1hを拡大して示す。以下に、誘電体層1c~1hに形成したキャパシタ導体、ビア導体、インダクタ導体などについて説明する。
【0074】
誘電体層1cの上側主面に、キャパシタ導体34d、34e、34fが形成されている。
【0075】
誘電体層1dの上下主面間を貫通して、ビア導体36a、36b、36cが形成されている。誘電体層1dの上側主面に、インダクタ導体37a、37b、37c、37dが形成されている。インダクタ導体37aの一端とインダクタ導体37bの一端とが、第2接続点P2において接続されている。第2接続点P2がビア導体36bに接続され、ビア導体36bがキャパシタ導体34eに接続されている。また、インダクタ導体37cの一端とインダクタ導体37dの一端とが、第3接続点P3において接続されている。第3接続点P3がビア導体36cに接続され、ビア導体36cがキャパシタ導体34fに接続されている。
【0076】
誘電体層1eの上下主面間を貫通して、ビア導体36a、36d、36e、36f、36gが形成されている。誘電体層1eの上側主面に、インダクタ導体37e、37f、37g、37h、37iが形成されている。インダクタ導体37eの一端が、共通外部端子である外部端子2bに接続されている。インダクタ導体37fの一端がビア導体36dに接続され、ビア導体36dがインダクタ導体37aの他端に接続されている。インダクタ導体37gの一端がビア導体36eに接続され、ビア導体36eがインダクタ導体37bの他端に接続されている。インダクタ導体37hの一端がビア導体36fに接続され、ビア導体36fがインダクタ導体37cの他端に接続されている。インダクタ導体37iの一端がビア導体36gに接続され、ビア導体36gがインダクタ導体37dの他端に接続されている。
【0077】
誘電体層1fの上下主面間を貫通して、ビア導体36a、36h、36i、36j、36k、36lが形成されている。誘電体層1fの上側主面に、インダクタ導体37j、37k、37l、37m、37nが形成されている。インダクタ導体37jの一端がビア導体36hに接続され、ビア導体36hがインダクタ導体37eの他端に接続されている。インダクタ導体37kの一端がビア導体36iに接続され、ビア導体36iがインダクタ導体37fの他端に接続されている。インダクタ導体37lの一端がビア導体36jに接続され、ビア導体36jがインダクタ導体37gの他端に接続されている。インダクタ導体37mの一端がビア導体36kに接続され、ビア導体36kがインダクタ導体37hの他端に接続されている。インダクタ導体37nの一端がビア導体36lに接続され、ビア導体36lがインダクタ導体37iの他端に接続されている。
【0078】
誘電体層1gの上下主面間を貫通して、ビア導体36a、36m、36n、36o、36p、36qが形成されている。誘電体層1gの上側主面に、インダクタ導体37o、37p、37q、37r、37sが形成されている。インダクタ導体37oの一端がビア導体36mに接続され、ビア導体36mがインダクタ導体37jの他端に接続されている。インダクタ導体37pの一端がビア導体36nに接続され、ビア導体36nがインダクタ導体37kの他端に接続されている。インダクタ導体37qの一端がビア導体36oに接続され、ビア導体36oがインダクタ導体37lの他端に接続されている。インダクタ導体37rの一端がビア導体36pに接続され、ビア導体36pがインダクタ導体37mの他端に接続されている。インダクタ導体37sの一端がビア導体36qに接続され、ビア導体36qがインダクタ導体37nの他端に接続されている。インダクタ導体37qの他端が、第1外部端子である外部端子2dに接続されている。インダクタ導体37sの他端が、第2外部端子である外部端子2fに接続されている。
【0079】
誘電体層1hの上下主面間を貫通して、ビア導体36a、36r、36s、36tが形成されている。誘電体層1hの上側主面に、インダクタ導体37t、接続導体38が形成されている。インダクタ導体37tの一端がビア導体36rに接続され、ビア導体36rがインダクタ導体37oの他端に接続されている。接続導体38の一端がビア導体36sに接続され、ビア導体36sがインダクタ導体37pの他端に接続されている。接続導体38の他端がビア導体36tに接続され、ビア導体36tがインダクタ導体37rの他端に接続されている。接続導体38の途中の部分がビア導体36aに接続され、ビア導体36aがキャパシタ導体34dに接続されている。インダクタ導体37tの他端が、接続導体38の途中の部分に接続されている。
【0080】
次に、
図6に示した電力分配/結合回路300と、電力分配/結合部品400の構造との関係について説明する。上述したとおり、上述したとおり、
図6に示す電力分配/結合回路300において、破線で囲んだ部分が電力分配/結合部品400によって構成されている。なお、以下においては、電力分配/結合部品400において、第1実施形態に係る電力分配/結合部品200から変更されていない部分については、説明を省略する場合がある。
【0081】
図6に示す第3インダクタL3は、
図8に示す、外部端子2b、インダクタ導体37e、ビア導体36h、インダクタ導体37j、ビア導体36m、インダクタ導体37o、ビア導体36r、インダクタ導体37t、接続導体38を繋ぐ導電経路によって形成されている。起点である外部端子2bは共通外部端子であり、終点である接続導体38は
図6に示す第1接続点P1に該当する。
【0082】
図6に示す第3キャパシタC3は、
図7、
図8に示すキャパシタ導体34dとグランド導体5との間に発生する容量によって形成されている。キャパシタ導体34dは、ビア導体36aによって、第1接続点P1である接続導体38に接続されている。グランド導体5は、グランド外部端子である外部端子2a、2c、2eに接続されている。
【0083】
図6に示す第1インダクタL1が分割されたインダクタL1Aは、
図8に示す、接続導体38、ビア導体36s、インダクタ導体37p、ビア導体36n、インダクタ導体37k、ビア導体36i、インダクタ導体37f、ビア導体36d、インダクタ導体37a、第2接続点P2を繋ぐ導電経路によって形成されている。起点である接続導体38は第1接続点P1に該当し、終点は第2接続点P2である。
【0084】
図6に示す第1インダクタL1が分割されたインダクタL1Bは、
図8に示す、第2接続点P2、インダクタ導体37b、ビア導体36e、インダクタ導体37g、ビア導体36j、インダクタ導体37l、ビア導体36o、インダクタ導体37q、外部端子2dを繋ぐ導電経路によって形成されている。起点は第2接続点P2であり、終点である外部端子2dは第1外部端子である。
【0085】
図6に示す第2インダクタL2が分割されたインダクタL2Aは、
図8に示す、接続導体38、ビア導体36t、インダクタ導体37r、ビア導体36p、インダクタ導体37m、ビア導体36k、インダクタ導体37h、ビア導体36f、インダクタ導体37c、第3接続点P3を繋ぐ導電経路によって形成されている。起点である接続導体38は第1接続点P1に該当し、終点は第3接続点P3である。
【0086】
図6に示す第2インダクタL2が分割されたインダクタL2Bは、
図8に示す、第3接続点P3、インダクタ導体37d、ビア導体36g、インダクタ導体37i、ビア導体36l、インダクタ導体37n、ビア導体36q、インダクタ導体37s、外部端子2fを繋ぐ導電経路によって形成されている。起点は第3接続点P3であり、終点である外部端子2fは第2外部端子である。
【0087】
図6に示す第5キャパシタC5は、
図8に示すキャパシタ導体34eとグランド導体5との間に発生する容量によって形成されている。キャパシタ導体34eは、ビア導体36bによって第2接続点P2に接続され、グランド導体5はグランド外部端子である外部端子2a、2c、2eに接続されている。
【0088】
図6に示す第6キャパシタC6は、
図8に示すキャパシタ導体34fとグランド導体5との間に発生する容量によって形成されている。キャパシタ導体34fは、ビア導体36cによって第3接続点P3に接続され、グランド導体5はグランド外部端子である外部端子2a、2c、2eに接続されている。
【0089】
図6に示すように、電力分配/結合部品400の外部端子2bが共通端子TCに接続され、外部端子2dが第1端子T1に接続され、外部端子2fが第2端子T2に接続されている。また、第1端子T1と第2端子T2との間に、抵抗R1が接続されている。以上のように、電力分配/結合部品400と抵抗R1とで、電力分配/結合回路300が構成されている。
【0090】
(実施例2)
実施例2として、
図7、
図8に示す構造の電力分配/結合部品400を作製し、電力分配/結合部品400と抵抗R1とを使用して、
図6に示す電力分配/結合回路300を作製した。各インダクタのインダクタンス値、各キャパシタの容量値、抵抗の抵抗値を表2に示す。
【表2】
【0091】
また、比較のために、比較例2に係る電力分配/結合回路を作製した。比較例2は、実施例2から第3インダクタL3および第4キャパシタC4を取り除いたものである。
【0092】
図9に、実施例2に係る電力分配/結合回路のS32特性を実線で示し、比較例2に係る電力分配/結合回路のS32特性を破線で示す。ただし、電力分配/結合部品400の外部端子2bを接続した共通端子TCを第1端子、外部端子2dを接続した第1端子T1を第2端子、外部端子2fを接続した第2端子T2を第3端子とした。
【0093】
図9から分かるように、実施例2に係る電力分配/結合回路は、比較例2に係る電力分配/結合回路に比べて、大きな減衰が得られている帯域が広い。また、実施例2に係る電力分配/結合回路は、比較例2に係る電力分配/結合回路に比べて、より大きな減衰が得られている。具体的には、比較例2において40.0dB程度の減衰量であったものが、実施例2においては59.8dB程度の減衰量を得られており、高減衰化がはかられている。
【0094】
(実施例3)
実施例3として、上述した実施例2と同様に、
図7、
図8に示す構造の電力分配/結合部品400を作製し、電力分配/結合部品400と抵抗R1とを使用して、
図6に示す電力分配/結合回路300を作製した。各インダクタのインダクタンス値、各キャパシタの容量値、抵抗の抵抗値を表3に示す。
【表3】
【0095】
また、比較のために、比較例3に係る電力分配/結合回路を作製した。比較例3は、実施例3から第3インダクタL3および第4キャパシタC4を取り除いたものである。
【0096】
図10に、実施例3に係る電力分配/結合回路のS32特性を実線で示し、比較例3に係る電力分配/結合回路のS32特性を破線で示す。ただし、電力分配/結合部品400の外部端子2bを接続した共通端子TCを第1端子、外部端子2dを接続した第1端子T1を第2端子、外部端子2fを接続した第2端子T2を第3端子とした。
【0097】
図10から分かるように、実施例3に係る電力分配/結合回路は、比較例3に係る電力分配/結合回路に比べて、大きな減衰が得られている帯域が広い。また、実施例3に係る電力分配/結合回路は、比較例3に係る電力分配/結合回路に比べて、より大きな減衰が得られている。
【0098】
[第3実施形態]
(電力分配/結合回路500)
図11に、第3実施形態に係る電力分配/結合回路500の等価回路図を示す。
【0099】
第3実施形態に係る電力分配/結合回路500は、第1実施形態に係る電力分配/結合回路100に新たな構成を追加した。具体的には、電力分配/結合回路500は、第1端子T1と第2端子T2との間に、新たに第7キャパシタC7を追加した。第7キャパシタC7は、第1端子T1と第2端子T2との間に、抵抗R1と並列に接続されている。
【0100】
電力分配/結合回路500は、第7キャパシタC7を追加したことにより、特に図示はしていないが、第1端子T1と第2端子T2との間のアイソレーションを示すS32特性が低周波側にシフトしている。
【0101】
電力分配/結合回路においては、共通端子TCのリターンロスを示すS11特性が良好な周波数と、第1端子T1と第2端子T2との間のアイソレーションを示すS32特性が良好な周波数とを重ね合わせたい場合がある。S11特性が良好な周波数とS32特性が良好な周波数とを重ね合わせたい場合には、電力分配/結合回路500のように第7キャパシタC7を追加し、S32特性を低周波側にシフトさせることによって、S11特性とS32特性とを重ね合わせる方法が有効である。
【0102】
[第4実施形態]
(電力分配/結合部品600)
図12に、第4実施形態に係る電力分配/結合部品600の分解要部斜視図を示す。
【0103】
第4実施形態に係る電力分配/結合部品600は、
図2、
図3、
図4に示した第1実施形態にかかる電力分配/結合部品200と、基本的な構成を同じにしている。したがって、電力分配/結合部品600は、電力分配/結合部品200と、第1インダクタ導体、第2インダクタ導体、第3インダクタ導体のそれぞれの巻回方向が同じである。ただし、第3インダクタ導体の空芯部の大きさを大きくする等の設計変更をしているため、電力分配/結合部品600は、電力分配/結合部品200と、特性が異なっている。
【0104】
電力分配/結合部品600の第1インダクタL1は、
図12に示すように、接続導体68、ビア導体66k、インダクタ導体67j、ビア導体66h、インダクタ導体67g、ビア導体66e、インダクタ導体67d、ビア導体66b、インダクタ導体67a、外部端子2dを繋ぐ導電経路によって形成されている。接続導体68は第1インダクタL1の一方の端部(起点)に該当し、外部端子2dは第1インダクタL1の他方の端部(終点)に該当する。
【0105】
電力分配/結合部品600の第2インダクタL2は、接続導体68、ビア導体66l、インダクタ導体67k、ビア導体66i、インダクタ導体67h、ビア導体66f、インダクタ導体67e、ビア導体66c、インダクタ導体67b、外部端子2fを繋ぐ導電経路によって形成されている。接続導体68は第2インダクタL2の一方の端部(起点)に該当し、外部端子2fは第2インダクタL2の他方の端部(終点)に該当する。
【0106】
電力分配/結合部品600の第3インダクタL3は、外部端子2b、インダクタ導体67c、ビア導体66d、インダクタ導体67f、ビア導体66g、インダクタ導体67i、ビア導体66j、インダクタ導体67l、接続導体8を繋ぐ導電経路によって形成されている。外部端子2bは第3インダクタL3の一方の端部(起点)に該当し、接続導体68は第3インダクタL3の他方の端部(終点)に該当する。
【0107】
第1インダクタ導体の空芯部(第1インダクタ導体であるインダクタ導体67j、67g、67d、67aによって囲まれた領域であって、積層方向から平面視して透視したときに、インダクタ導体が形成されていない領域)と第2インダクタ導体の空芯部(第2インダクタ導体であるインダクタ導体67k、67h、67e、67bによって囲まれた領であって、積層方向から平面視して透視したときに、インダクタ導体が形成されていない領域域)とが並ぶ方向を、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向と定義する。
図12に、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向を、矢印Xで示す。また、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xに対して直角に交わる方向を、矢印Yで示す。
【0108】
なお、第3インダクタ導体の空芯部の少なくとも一部は、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xにおいて、第1インダクタ導体の空芯部と、第2インダクタ導体の空芯部に挟まれるように配置されている。
【0109】
図12に、電力分配/結合部品600の第1インダクタ導体および第2インダクタ導体のそれぞれの巻回方向を矢印で示す。
【0110】
電力分配/結合部品600は、積層体1を積層方向から平面視して透視したとき、第1インダクタ導体の一方の端部(接続導体68)から他方の端部(外部端子2d)に向かう巻回方向と、第2インダクタ導体の一方の端部(接続導体68)から他方の端部(外部端子2f)に向かう巻回方向とが異なっている。すなわち、第1インダクタ導体の巻回方向は時計回りであり、第2インダクタ導体の巻回方向は反時計回りである。
【0111】
また、電力分配/結合部品600は、積層体1を積層方向から平面視して透視したとき、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xにおいて、第1インダクタ導体の最も外側の第1部分の巻回方向と、第2インダクタ導体の最も外側の第1部分の巻回方向が、同じ方向である。たとえば、第1インダクタ導体であるインダクタ導体67jと第2インダクタ導体であるインダクタ導体67kとをみたとき、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xにおいて、インダクタ導体67jの最も外側の第1部分67j-1の巻回方向と、インダクタ導体67kの最も外側の第1部分67k-1の巻回方向が、同じ方向である。なお、インダクタ導体67jとインダクタ導体67kとだけではなく、第1インダクタ導体であるインダクタ導体67j、67g、67d、67aと第2インダクタ導体であるインダクタ導体67k、67h、67e、67bとの全てにおいて、同様の巻き方になっている。
【0112】
また、電力分配/結合部品600は、積層体1を積層方向から平面視して透視したとき、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xと直角に交わる方向Yにおいて、空芯部を介して第1インダクタ導体の一方の端部(接続導体68)と対向する第1インダクタ導体の第2部分の巻回方向と、空芯部を介して第2インダクタ導体の一方の端部(接続導体68)と対向する第2インダクタ導体の第2部分の巻回方向が、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xにおいて互いに内向きの反対方向である。たとえば、第1インダクタ導体であるインダクタ導体67jと第2インダクタ導体であるインダクタ導体67kとをみたとき、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xと直角に交わる方向Yにおいて、空芯部を介して第1インダクタ導体の一方の端部(接続導体68)と対向するインダクタ導体67jの第2部分67j-2の巻回方向と、空芯部を介して第2インダクタ導体の一方の端部(接続導体68)と対向するインダクタ導体67kの第2部分67k-2の巻回方向が、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xにおいて互いに内向きの反対方向である。なお、インダクタ導体67jとインダクタ導体67kとだけではなく、第1インダクタ導体であるインダクタ導体67j、67g、67d、67aと、第2インダクタ導体であるインダクタ導体67k、67h、67e、67bとの全てにおいて、同様の巻き方になっている。
【0113】
第1インダクタ導体および第2インダクタ導体の巻回方向が、以上の関係からなる、第4実施形態にかかる電力分配/結合部品600は、広い帯域でリターンロスが小さくなっている。ただし、電力分配/結合部品600の特性の詳細については、次に説明する第5実施形態にかかる電力分配/結合部品700の特性とともに、後述する。
【0114】
[第5実施形態]
(電力分配/結合部品700)
図13に、第5実施形態に係る電力分配/結合部品700の分解要部斜視図を示す。
【0115】
第5実施形態に係る電力分配/結合部品700は、上述した第4実施形態にかかる電力分配/結合部品600の構成の一部に変更を加えた。具体的には、インダクタ導体の形状を変更したり、ビア導体の位置を変更したりすることによって、第1インダクタ導体の巻回方向、および、第2インダクタ導体の巻回方向を、それぞれ変更した。電力分配/結合部品700のその他の構成は、電力分配/結合部品600と同じにした。
【0116】
電力分配/結合部品700の第1インダクタL1は、
図13に示すように、接続導体78、ビア導体76k、インダクタ導体77j、ビア導体76h、インダクタ導体77g、ビア導体76e、インダクタ導体77d、ビア導体76b、インダクタ導体77a、外部端子2dを繋ぐ導電経路によって形成されている。接続導体78は第1インダクタL1の一方の端部(起点)に該当し、外部端子2dは第1インダクタL1の他方の端部(終点)に該当する。
【0117】
電力分配/結合部品700の第2インダクタL2は、接続導体78、ビア導体76l、インダクタ導体77k、ビア導体76i、インダクタ導体77h、ビア導体76f、インダクタ導体77e、ビア導体76c、インダクタ導体77b、外部端子2fを繋ぐ導電経路によって形成されている。接続導体78は第2インダクタL2の一方の端部(起点)に該当し、外部端子2fは第2インダクタL2の他方の端部(終点)に該当する。
【0118】
電力分配/結合部品700の第3インダクタL3は、外部端子2b、インダクタ導体77c、ビア導体76d、インダクタ導体77f、ビア導体76g、インダクタ導体77i、ビア導体76j、インダクタ導体77l、接続導体8を繋ぐ導電経路によって形成されている。外部端子2bは第3インダクタL3の一方の端部(起点)に該当し、接続導体78は第3インダクタL3の他方の端部(終点)に該当する。
【0119】
図13に、第1インダクタ導体の空芯部と第2インダクタ導体の空芯部とが並ぶ方向Xと、並び方向Xに対して直角に交わる方向Yを示す。
【0120】
また、
図13に、電力分配/結合部品700の第1インダクタ導体および第2インダクタ導体のそれぞれの巻回方向を矢印で示す。
【0121】
電力分配/結合部品700は、積層体1を積層方向から平面視して透視したとき、第1インダクタ導体の一方の端部(接続導体78)から他方の端部(外部端子2d)に向かう巻回方向と、第2インダクタ導体の一方の端部(接続導体78)から他方の端部(外部端子2f)に向かう巻回方向とが異なっている。すなわち、第1インダクタ導体の巻回方向は反時計回りであり、第2インダクタ導体の巻回方向は時計回りである。
【0122】
また、電力分配/結合部品700は、積層体1を積層方向から平面視して透視したとき、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xにおいて、第1インダクタ導体の最も外側の第1部分の巻回方向と、第2インダクタ導体の最も外側の第1部分の巻回方向が、同じ方向である。たとえば、第1インダクタ導体であるインダクタ導体77jと第2インダクタ導体であるインダクタ導体77kとをみたとき、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xにおいて、インダクタ導体77jの最も外側の第1部分77j-1の巻回方向と、インダクタ導体77kの最も外側の第1部分77k-1の巻回方向が、同じ方向である。なお、インダクタ導体77jとインダクタ導体77kとだけではなく、第1インダクタ導体であるインダクタ導体77j、77g、77d、77aと、第2インダクタ導体であるインダクタ導体77k、77h、77e、77bとの全てにおいて、同様の巻き方になっている。
【0123】
また、電力分配/結合部品700は、積層体1を積層方向から平面視して透視したとき、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xと直角に交わる方向Yにおいて、空芯部を介して第1インダクタ導体の一方の端部(接続導体78)と対向する第1インダクタ導体の第2部分の巻回方向と、空芯部を介して第2インダクタ導体の一方の端部(接続導体78)と対向する第2インダクタ導体の第2部分の巻回方向が、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xにおいて互いに外向きの反対方向である。たとえば、第1インダクタ導体であるインダクタ導体77jと第2インダクタ導体であるインダクタ導体77kとをみたとき、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xと直角に交わる方向Yにおいて、空芯部を介して第1インダクタ導体の一方の端部(接続導体78)と対向するインダクタ導体77jの第2部分77j-2の巻回方向と、空芯部を介して第2インダクタ導体の一方の端部(接続導体78)と対向するインダクタ導体77kの第2部分77k-2の巻回方向が、第1インダクタ導体と第2インダクタ導体の並び方向Xにおいて互いに外向きの反対方向である。なお、インダクタ導体77jとインダクタ導体77kとだけではなく、第1インダクタ導体であるインダクタ導体77j、77g、77d、77aと第2インダクタ導体であるインダクタ導体77k、77h、77e、77bとの全てにおいて、同様の巻き方になっている。
【0124】
電力分配/結合部品700の特性については、第4実施形態にかかる電力分配/結合部品600の特性とともに、次に説明する。
【0125】
[電力分配/結合部品600と電力分配/結合部品700の特性の比較]
第4実施形態にかかる電力分配/結合部品600と抵抗R1とを使用して、
図1に示した電力分配/結合回路100と同じ電力分配/結合回路を作製した。また、第5実施形態にかかる電力分配/結合部品700と抵抗R1とを使用して、
図1に示した電力分配/結合回路100と同じ電力分配/結合回路を作製した。そして、それぞれのリターンロスおよびアイソレーションを調べた。
【0126】
図14(A)に、リターンロスについて、電力分配/結合部品600を使用した電力分配/結合回路のS11特性を実線で示し、電力分配/結合部品700を使用した電力分配/結合回路のS11特性を破線で示す。また、
図14(B)に、アイソレーションについて、電力分配/結合部品600を使用した電力分配/結合回路のS32特性を実線で示し、電力分配/結合部品700を使用した電力分配/結合回路のS32特性を破線で示す。ただし、電力分配/結合部品600、700の外部端子2bを接続した共通端子TCを第1端子、外部端子2dを接続した第1端子T1を第2端子、外部端子2fを接続した第2端子T2を第3端子とした。
【0127】
図14(A)から分かるように、リターンロスに関しては、電力分配/結合部品600を使用した電力分配/結合回路の方が、電力分配/結合部品700を使用した電力分配/結合回路よりも、広い帯域でリターンロスが小さくなっている。一方、
図14(B)から分かるように、アイソレーションに関しては、電力分配/結合部品600を使用した電力分配/結合回路も、電力分配/結合部品700を使用した電力分配/結合回路も、共に良好なアイソレーションが得られている。したがって、リターンロスの小さな帯域を広くするためには、第1インダクタと第2インダクタの巻回方向を、第4実施形態にかかる電力分配/結合部品600のようにする方が、第5実施形態にかかる電力分配/結合部品700のようにするよりも、好ましいことが分かった。
【0128】
以上、第1実施形態に係る電力分配/結合回路100および電力分配/結合部品200、第2実施形態に係る電力分配/結合回路300および電力分配/結合部品400、第3実施形態に係る電力分配/結合回路500、第4実施形態に係る電力分配/結合部品600、第5実施形態に係る電力分配/結合部品700について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
【0129】
たとえば、第1実施形態においては、電力分配/結合部品200を使用して電力分配/結合回路100を構成しているが、電力分配/結合回路100を構成するにあたり、必ず電力分配/結合部品200を使用しなければならないわけではない。すなわち、電力分配/結合回路100は、電力分配/結合部品200を使用しなくても、個別のインダクタ、キャパシタ、抵抗を使用して構成することができる。電力分配/結合部品400を使用して電力分配/結合回路300を構成した第2実施形態も同様である。
【0130】
また、電力分配/結合回路100、300、500には、別の回路が付加されてもよい。また、電力分配/結合回路100、300、500は、等価的に等しい回路に変更されてもよい。
【0131】
また、電力分配/結合部品200、400、600、700の説明において示した構成要素の材質、数、形状、形成位置などは一例であり、適宜、変更することができる。
【0132】
本発明の一実施態様にかかる電力分配/結合回路は、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりであるが、その電力分配/結合回路において、第1インダクタおよび第2インダクタが、それぞれ、複数の分割インダクタが接続されたものからなり、第1インダクタの分割インダクタ同士の少なくとも1つの接続点とグランドとの間にシャント接続された第5キャパシタと、第2インダクタの分割インダクタ同士の少なくとも1つの接続点とグランドとの間にシャント接続された第6キャパシタと、を更に備えてもよい。この場合には、第1端子と第2端子との間のアイソレーション特性を、さらに良好にすることができる。
【0133】
また、第1端子と第2端子との間に、抵抗と並列に接続された第7キャパシタを更に備えてもよい。この場合には、S32特性を低周波側にシフトさせることができる。
【0134】
また、本発明の一実施態様にかかる電力分配/結合部品は、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりであるが、その電力分配/結合部品において、第1インダクタ導体の巻回方向と、第2インダクタ導体の巻回方向とが異なり、第3インダクタ導体の巻回方向が、第1インダクタ導体および第2インダクタ導体のいずれか一方の巻回方向と同じとなるようにしてもよい。この場合には、第3インダクタ導体の巻回方向と、第3インダクタ導体と巻回方向が異なる第1インダクタ導体または第2インダクタ導体の巻回方向とを、S字状に転換させることにより、第3インダクタ導体から第1インダクタ導体または第2インダクタ導体への電流の流れをスムースにすることができる。
【0135】
また、本発明の別の実施態様にかかる電力分配/結合部品は、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりであるが、その電力分配/結合部品において、第3インダクタ導体の一方の端部から他方の端部に向かう巻回方向が、第1インダクタ導体および第2インダクタ導体のいずれか一方の巻回方向と同じであるようにしてもよい。この場合には、第3インダクタ導体の巻回方向と、第3インダクタ導体と巻回方向が異なる第1インダクタ導体または第2インダクタ導体の巻回方向とを、S字状に転換させることにより、第3インダクタ導体から第1インダクタ導体または第2インダクタ導体への電流の流れをスムースにすることができる。
【0136】
また、第1インダクタ導体の空芯部が接続導体と重ならず、かつ、第2インダクタ導体の空芯部が接続導体と重ならないようにしてもよい。この場合には、第1インダクタ導体および第2インダクタ導体は、接続導体によって阻害されることなく磁束を形成することができる。
【符号の説明】
【0137】
1・・・積層体
1a~1i・・・誘電体層
2a~2f・・・外部端子
(2b・・・共通外部端子)
(2d・・・第1外部端子)
(2f・・・第2外部端子)
(2a、2c、2e・・・グランド外部端子)
3・・・方向性識別マーク
4a~4d、34d~34f・・・キャパシタ導体
5・・・グランド導体
6a~6l、36a~36t、66a~66l、76a~76l・・・ビア導体
7a~7l、37a~37t、67a~67l、77a~77l・・・インダクタ導体
8、38、68、78・・・接続導体
TC・・・共通端子
T1・・・第1端子
T2・・・第2端子
P1・・・第1接続点
P2・・・第2接続点
P3・・・第3接続点
100、300、500・・・電力分配/結合回路
200、400、600、700・・・電力分配/結合部品