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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電力分配器
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/48 20060101AFI20221025BHJP
   H03H 7/075 20060101ALI20221025BHJP
   H01P 5/19 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H03H7/48 Z
H03H7/075 A
H01P5/19 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020560086
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2019047980
(87)【国際公開番号】W WO2020121985
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2018232073
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾形 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓也
【審査官】馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-532286(JP,A)
【文献】国際公開第2015/022839(WO,A1)
【文献】特開2018-006790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/48
H03H 7/075
H01P 5/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子、第2端子、および、第3端子と、
前記第1端子と前記第2端子との間に接続された第1インダクタと、
前記第1端子と前記第3端子との間に接続された第2インダクタと、
前記第1インダクタの前記第2端子側とグランドとの間に接続された第1コンデンサと、
前記第2インダクタの前記第3端子側と前記グランドとの間に接続された第2コンデンサと、
前記第1端子と前記グランドとの間に接続された第3コンデンサと、
前記第1インダクタの前記第2端子側と、前記第2インダクタの前記第3端子側との間に接続された抵抗と、
前記第1インダクタと前記抵抗との接続部と、前記第2端子との間に接続された第3インダクタと、
前記第2インダクタと前記抵抗との接続部と、前記第3端子との間に接続された第4インダクタと、
前記抵抗に並列接続された第4コンデンサと、
前記第2端子と前記第3端子との間に接続された第5コンデンサと、
を備え
前記第1インダクタ、前記第2インダクタ、前記抵抗、前記第1コンデンサ、前記第2コンデンサ、および、前記第3コンデンサから構成される第1回路と、
前記第3インダクタ、前記第4インダクタ、前記第4コンデンサ、および、前記第5コンデンサから構成される第2回路と、を有し、
前記第1回路の素子値および前記第2回路の素子値は、前記第1回路と前記第2回路とによって1つまたは2つの減衰極を形成する素子値である、
力分配器。
【請求項2】
複数の絶縁体層が積層され、内部に回路導体パターンが形成された積層体と、
前記回路導体パターンを外部に接続する複数の端子導体と、を備え、
前記積層体には、
前記回路導体パターンによって、
前記第1インダクタ、前記第2インダクタ、前記第3インダクタ、前記第4インダクタ、前記第1コンデンサ、前記第2コンデンサ、前記第3コンデンサ、前記第4コンデンサ、および、前記第5コンデンサが形成され、
前記抵抗は、前記積層体とは異なる抵抗素子によって形成され、
前記抵抗素子は、前記複数の端子導体の2つを介して、前記積層体に接続されている、
請求項1に記載の電力分配器。
【請求項3】
前記積層体は、
積層方向に対して直交する面であり、互いに対向する第1主面および第2主面と、
前記積層方向に平行な面であり、互いに対向する第1側面および第2側面と、
前記積層方向に平行な面であり、前記第1側面および前記第2側面に直交し、互いに対向する第3側面および第4側面と、を有し、
前記複数の端子導体は、
前記第1端子を構成する第1端子導体と、
前記第2端子を構成する第2端子導体と、
前記第3端子を構成する第3端子導体と、を有し、
前記第1側面および前記第2側面に平行な方向をx方向とし、前記第3側面および前記第4側面に平行な方向をy方向として、
前記第1端子導体は、前記第1側面における前記x方向の中心を含む位置に配置され、
前記第2端子導体と前記第3端子導体とは、前記x方向の中心を通りy方向に平行な第1基準面を基準にして対称の位置に配置されている、
請求項に記載の電力分配器。
【請求項4】
前記積層体は、
前記第1インダクタを構成する第1インダクタ導体と、
前記第2インダクタを構成する第2インダクタ導体と、
前記第3インダクタを構成する第3インダクタ導体と、
前記第4インダクタを構成する第4インダクタ導体と、
を備え、
前記第1インダクタ導体と前記第2インダクタ導体とは、前記第1基準面を基準にして対称形であり、
前記第3インダクタ導体と前記第4インダクタ導体とは、前記第1基準面を基準にして対称形である、
請求項に記載の電力分配器。
【請求項5】
前記積層方向において、
前記第1インダクタ導体の螺旋の巻き方と、前記第2インダクタ導体の螺旋の巻き方とは、逆であり、
前記第3インダクタ導体の螺旋の巻き方と、前記第4インダクタ導体の螺旋の巻き方とは、逆である、
請求項に記載の電力分配器。
【請求項6】
前記回路導体パターンは、
前記第4コンデンサを構成する第4コンデンサ導体と、
前記第5コンデンサを構成する第5コンデンサ導体と、を有し、
前記第1インダクタ導体、前記第2インダクタ導体、第3インダクタ導体、および、前記第4インダクタ導体は、前記積層方向に視て巻回形であり、
前記第4コンデンサ導体と前記第5コンデンサ導体とは、前記x方向の中心を含み、前記第1インダクタ導体の巻回形の開口部、前記第2インダクタ導体の巻回形の開口部、第3インダクタ導体の巻回形の開口部、および、前記第4インダクタ導体の巻回形の開口部に重ならない位置に配置されている、
請求項または請求項に記載の電力分配器。
【請求項7】
前記第4コンデンサ導体が形成された絶縁体層と、前記第5コンデンサ導体が形成された絶縁体層とは、異なる絶縁体層であり、
前記第4コンデンサ導体が形成された絶縁体層と、前記第5コンデンサ導体が形成された絶縁体層とは、
前記積層方向において、前記第1インダクタ導体、前記第2インダクタ導体、第3インダクタ導体、および、前記第4インダクタ導体が形成された前記絶縁体層を挟む位置に配置されている、
請求項に記載の電力分配器。
【請求項8】
前記第1コンデンサを構成する第1コンデンサ導体が形成された前記絶縁体層、前記第2コンデンサを構成する第2コンデンサ導体が形成された前記絶縁体層、および、前記第3コンデンサを構成する第3コンデンサ導体が形成された前記絶縁体層は、
前記積層方向において、前記第1インダクタ導体、前記第2インダクタ導体、第3インダクタ導体、および、前記第4インダクタ導体が形成された前記絶縁体層に対して、前記第4コンデンサ導体が形成された絶縁体層と同じ側にあり、
前記第1コンデンサ導体が形成された前記絶縁体層、前記第2コンデンサ導体が形成された前記絶縁体層、および、前記第3コンデンサ導体が形成された前記絶縁体層と、前記第4コンデンサ導体が形成された絶縁体層との間には、グランド導体が配置されている、
請求項または請求項に記載の電力分配器。
【請求項9】
前記積層方向において、前記第1インダクタ導体、前記第2インダクタ導体、第3インダクタ導体、および、前記第4インダクタ導体が形成された前記絶縁体層と、前記グランド導体が形成された前記絶縁体層との間には、導体パターンの形成されていない絶縁体層が配置されている、
請求項に記載の電力分配器。
【請求項10】
複数の絶縁体層が積層され、内部に回路導体パターンが形成された積層体と、
前記回路導体パターンを外部に接続し、第1端子、第2端子、第3端子、および、複数の抵抗接続端子をそれぞれに構成する複数の端子導体と、を備え、
前記積層体には、
前記回路導体パターンを用いて、
前記第1端子を構成する端子導体と前記第2端子を構成する端子導体との間に接続された第1インダクタ導体と、
前記第1端子を構成する端子導体と前記第3端子を構成する端子導体との間に接続された第2インダクタ導体と、
前記第2端子を構成する端子導体とグランド導体との間に接続された第1コンデンサ導体と、
前記第3端子を構成する端子導体と前記グランド導体との間に接続された第2コンデンサ導体と、
前記第1端子を構成する端子導体と前記グランド導体との間に接続された第3コンデンサ導体と、
前記第1インダクタ導体と抵抗素子との接続部と、前記第2端子を構成する端子導体との間に接続された第3インダクタ導体と、
前記第2インダクタ導体と前記抵抗素子との接続部と、前記第3端子を構成する端子導体との間に接続された第4インダクタ導体と、
前記抵抗素子に並列接続された第4コンデンサ導体と、
前記第2端子を構成する端子導体と前記第3端子を構成する端子導体との間に接続された第5コンデンサ導体と、
が形成され、
前記抵抗素子は、
前記積層体とは別体からなり、
前記積層体の一方向において、前記第2端子を構成する端子導体と、前記第3端子を構成する端子導体との間に配置されており、
前記複数の抵抗接続端子を構成する端子導体を介して、前記積層体に接続されている、
電力分配器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィルキンソン型分配器を用いた電力分配器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2には、ウィルキンソン型分配器を用いて、高周波信号を分配する回路が記載されている。
【0003】
ウィルキンソン型分配器は、基本構成として、第1端子、第2端子、第3端子、第1インダクタ、第2インダクタ、および、抵抗を備える。第1インダクタは、第1端子と第2端子との間に接続され、第2インダクタは、第1端子と第3端子との間に接続されている。抵抗は、第2端子と第3端子との間に接続されている。
【0004】
特許文献1に記載の回路では、第1インダクタおよび第2インダクタのそれぞれにコンデンサを並列接続している。この構成によって、第2端子と第3端子との間のアイソレーションを向上させている。
【0005】
特許文献2に記載の回路は、抵抗と第2端子との間、および、抵抗と第3端子との間に、インダクタとコンデンサを用いたT型のローパスフィルタを接続している。この構成によって、挿入損失を劣化させることなく、反射特性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-280864号公報
【文献】特開2001-16063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年の通信端末は、通信性能の更なる向上が求められており、特許文献1および特許文献2に記載された回路構成では、第2端子と第3端子との間で良好なアイソレーション特性が得られない場合が生じてしまう。
【0008】
したがって、本発明の目的は、アイソレーション特性をさらに向上させた電力分配器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の電力分配器は、第1端子、第2端子、および、第3端子と、第1インダクタ、第2インダクタ、第3インダクタ、第4インダクタ、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサ、第4コンデンサ、第5コンデンサ、および、抵抗を備える。
【0010】
第1インダクタは、第1端子と第2端子との間に接続されている。第2インダクタは、第1端子と第3端子との間に接続されている。第1コンデンサは、第1インダクタの第2端子側とグランドとの間に接続されている。第2コンデンサは、第2インダクタの第3端子側とグランドとの間に接続されている。第3コンデンサは、第1端子とグランドとの間に接続されている。抵抗は、第1インダクタの第2端子側と、第2インダクタの第3端子側との間に接続されている。第3インダクタは、第1インダクタと抵抗との接続部と、第2端子との間に接続されている。第4インダクタは、第2インダクタと抵抗との接続部と、第3端子との間に接続されている。第4コンデンサは、抵抗に並列接続されている。第5コンデンサは、第2端子と第3端子との間に接続されている。
【0011】
この構成では、第3インダクタ、第4インダクタ、第3コンデンサ、および、第4コンデンサが追加されることによって、第1インダクタ、第2インダクタ、第3インダクタ、第1コンデンサ、第2コンデンサ、第3コンデンサ、および、抵抗からなる回路の減衰極と異なる減衰極が形成される。この減衰極を調整する事によって、減衰量を大きくする、減衰量が比較的大きな周波数帯域を広くする等の特性が実現される。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、アイソレーション特性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の実施形態に係る電力分配器10の回路図である。
図2図2は電力分配器10の第1特性を示すグラフである。
図3図3は電力分配器10の第2特性を示すグラフである。
図4図4は電力分配器10の外観斜視図である。
図5図5(A)は、電力分配器10の平面図であり、図5(B)は、電力分配器10の第1側面を視た側面図であり、図5(C)は、電力分配器10の第4側面を視た側面図である。
図6図6は、電力分配器10における基体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態に係る電力分配器について、図を参照して説明する。
【0015】
(回路構成)
図1は、本発明の実施形態に係る電力分配器10の回路図である。図1に示すように、電力分配器10は、第1端子P1、第2端子P2、第3端子P3を備える。電力分配器10は、第1インダクタ21、第2インダクタ22、第3インダクタ23、および、第4インダクタ24を備える。電力分配器10は、第1コンデンサ31、第2コンデンサ32、第3コンデンサ33、第4コンデンサ34、および、第5コンデンサ35を備える。電力分配器10は、抵抗41を備える。
【0016】
第1インダクタ21は、第1端子P1と第2端子P2との間に接続されている。第2インダクタ22は、第1端子P1と第3端子P3との間に接続されている。
【0017】
第1コンデンサ31は、第1インダクタ21における第2端子P2側とグランド(接地電位)との間に接続されている。第2コンデンサ32は、第2インダクタ22における第3端子P3とグランドとの間に接続されている。第3コンデンサ33は、第1端子P1とグランドとの間に接続されている。
【0018】
抵抗41は、第1インダクタ21の第2端子P2側と、第2インダクタの第3端子P3側との間に接続されている。
【0019】
第3インダクタ23は、第1インダクタ21と抵抗41との接続部PC1と第2端子P2との間に接続されている。第4インダクタ24は、第2インダクタ22と抵抗41との接続部PC2と第3端子P3との間に接続されている。
【0020】
第4コンデンサ34は、抵抗41に対して並列に接続されている。第5コンデンサ35は、第3インダクタ23における第2端子P2側と、第4インダクタ24における第3端子P3側との間に接続されている。
【0021】
第1インダクタ21のインダクタンスと、第2インダクタ22のインダクタンスとは、同じである。第1コンデンサ31のキャパシタンスと、第2コンデンサ32のキャパシタンスとは、同じである。第3インダクタ23のインダクタンスと、第4インダクタ24のインダクタンスとは、同じである。抵抗41の抵抗値は、所定値であり、例えば、100Ωである。
【0022】
このように、電力分配器10は、第1インダクタ21、第2インダクタ22、第1コンデンサ31、第2コンデンサ32、第3コンデンサ33、および、抵抗41からなる一般的な基本のウィルキンソン型分配器(第1回路)に対して、第3インダクタ23、第4インダクタ24、第4コンデンサ34、および、第5コンデンサ35からなる第2回路を追加した構成となる。
【0023】
そして、この構成によって、電力分配器10は、第1端子P1から入力された所望周波数の高周波信号を、第2端子P2および第3端子P3に分配して出力する。電力分配器10は、第2端子P2から入力された所望周波数の高周波信号と、第3端子から入力された所望周波数の高周波信号とを結合し、第1端子P1に出力する。すなわち、電力分配器10は、高周波信号の分配と高周波信号の結合とを実現する。
【0024】
(アイソレーション特性)
このような構成によって、電力分配器10は、図2または図3に示すようなアイソレーション特性を得ることができる。図2は、電力分配器10の第1特性を示すグラフである。図3は、電力分配器10の第2特性を示すグラフである。第1特性と第2特性とでは、電力分配器10を構成する各回路素子の素子値(インダクタンス、キャパシタンス)が異なる。図2および図3において、横軸は周波数を表し、縦軸は第2端子P2と第3端子P3との間の減衰量を表す。この縦軸の減衰量が大きいほど、すなわち、縦軸の数値が小さいほど、第2端子P2と第3端子P3との間のアイソレーション特性が高いことを意味する。また、図2図3に示す比較構成は、一般的な基本のウィルキンソン型分配器の回路構成に基づいている。
【0025】
(第1の特性(減衰極での減衰量が大きい))
図2に示すように、第1インダクタ21のインダクタンス、第2インダクタ22のインダクタンス、第3インダクタ23のインダクタンス、第4インダクタ24のインダクタンス、第1コンデンサ31のキャパシタンス、第2コンデンサ32のキャパシタンス、第3コンデンサ33のキャパシタンス、第4コンデンサ34のキャパシタンス、第5コンデンサ35のキャパシタンスを第1の関係にすることによって、減衰極での減衰量を、比較構成よりも大きくできる。すなわち、アイソレーション特性を高くできる。これは、所定の減衰量を有する複数の減衰極を、近接もしくは一致させるように設定することによって実現される(図2参照)。
【0026】
なお、一例として、図2の特性は、第1インダクタ21のインダクタンスと第2インダクタ22のインダクタンスとは、10.63[nH]であり、第3インダクタ23のインダクタンスと第4インダクタ24のインダクタンスとは、8.12[nH]である。第1コンデンサ31のキャパシタンスと第2コンデンサ32のキャパシタンスとは、1.30[pF]であり、第3コンデンサ33のキャパシタンスは、2.59[pF]である。第4コンデンサ34のキャパシタンスは、0.08[pF]であり、第5コンデンサ35のキャパシタンスは、0.27[pF]である。これらの素子値は、一例であり、これらの関係と同様の関係であれば、図2の特性と類似する特性を得られ、減衰極の周波数も調整は可能である。
【0027】
(第2の特性(所定の減衰量が得られる周波数帯域が広帯域))
図3に示すように、第1インダクタ21のインダクタンス、第2インダクタ22のインダクタンス、第3インダクタ23のインダクタンス、第4インダクタ24のインダクタンス、第1コンデンサ31のキャパシタンス、第2コンデンサ32のキャパシタンス、第3コンデンサ33のキャパシタンス、第4コンデンサ34のキャパシタンス、第5コンデンサ35のキャパシタンスを第2の関係にすることによって、所定の減衰量(例えば、-25[dB])が得られる周波数帯域を、比較構成よりも広くできる。すなわち、広い周波数帯域においてアイソレーション特性を高くできる。これは、所定の減衰量を有する複数の減衰極を、所定の周波数幅で離間して設定することによって実現される(図3参照)。
【0028】
なお、一例として、図3の特性は、第1インダクタ21のインダクタンスと第2インダクタ22のインダクタンスとは、13.68[nH]であり、第3インダクタ23のインダクタンスと第4インダクタ24のインダクタンスとは、7.87[nH]である。第1コンデンサ31のキャパシタンスと第2コンデンサ32のキャパシタンスとは、2.40[pF]であり、第3コンデンサ33のキャパシタンスは、2.69[pF]である。第4コンデンサ34のキャパシタンスは、1.30[pF]であり、第5コンデンサ35のキャパシタンスは、1.28[pF]である。これらの素子値は、一例であり、これらの関係と同様の関係であれば、図3の特性と類似する特性を得られ、減衰極の周波数、および、所定の減衰量を得られる周波数帯域幅の調整は可能である。
【0029】
このように、本実施形態に係る電力分配器10は、従来の回路構成と比較して、アイソレーション特性をさらに向上させることができる。
【0030】
(電力分配器10の構造)
図4は、電力分配器10の外観斜視図である。図5(A)は、電力分配器10の平面図であり、図5(B)は、電力分配器10の第1側面を視た側面図であり、図5(C)は、電力分配器10の第4側面を視た側面図である。図6は、電力分配器10における基体の分解斜視図である。
【0031】
図4図5(A)、図5(B)、および、図5(C)に示すように、電力分配器10は、基体90を備える。基体90は、複数の絶縁体を積層してなる積層体であり、所定の回路導体パターンが形成されている。この構成によって、基体90には、電力分配器10における抵抗41以外の回路構成要素が形成されている。
【0032】
基体90は、直方体であり、第1側面901、第2側面902、第3側面903、第4側面904、第1主面905、および、第2主面906を備える。第1主面905および第2主面906は、基体90の高さ方向(z方向)に直交する面である。第1主面905と第2主面906とは、互いに平行であり、z方向において離間している。第1側面901および第2側面902は、基体90のz方向に直交するx方向に平行な面である。第1側面901と第2側面902とは、互いに平行であり、z方向およびx方向に直交するy方向において離間している。第3側面903および第4側面904は、基体90のy方向に平行な面である。第3側面903と第4側面904とは、互いに平行であり、x方向において離間している。
【0033】
基体90の第1側面901には、第1側面導体911、第2側面導体912、および、第3側面導体913が形成されている。第1側面導体911、第2側面導体912、および、第3側面導体913は、z方向に延びる矩形の平膜である。
【0034】
第1側面導体911は、第1側面901におけるx方向の中心CSxを含む位置に配置されている。第1側面導体911は、回路上の第1端子P1となる。第2側面導体912は、第1側面導体911よりも第3側面903側に配置されている。第3側面導体913は、第1側面導体911よりも第4側面904側に配置されている。第2側面導体912と第1側面導体911との距離(x方向の離間距離)は、第3側面導体913と第1側面導体911との距離(x方向の離間距離)は、同じである。
【0035】
基体90の第2側面902には、第4側面導体914、第5側面導体915、および、第6側面導体916が形成されている。第4側面導体914、第5側面導体915、および、第6側面導体916は、z方向に延びる矩形の平膜である。
【0036】
第4側面導体914は、第2側面902におけるx方向の中心CSxを含む位置に配置されている。第5側面導体915は、第4側面導体914よりも第3側面903側に配置されている。第6側面導体916は、第4側面導体914よりも第4側面904側に配置されている。第5側面導体915と第4側面導体914との距離(x方向の離間距離)は、第6側面導体916と第4側面導体914との距離(x方向の離間距離)は、同じである。
【0037】
基体90をy方向に視て、第4側面導体914は、第1側面導体911と重なっている。第5側面導体915は、第2側面導体912と重なっており、第6側面導体916は、第3側面導体913と重なっている。
【0038】
基体90の第3側面903には、第7側面導体917が形成されている。第7側面導体917は、z方向に延びる矩形の平膜である。第7側面導体917は、第3側面903におけるy方向の中心CSyを含む位置に配置されている。第7側面導体917は、回路上の第2端子P2となる。
【0039】
基体90の第4側面904には、第8側面導体918が形成されている。第8側面導体918は、z方向に延びる矩形の平膜である。第8側面導体918は、第4側面904におけるy方向の中心CSyを含む位置に配置されている。第8側面導体918は、回路上の第3端子P3となる。
【0040】
このような構成によって、回路上の第2端子P2と第3端子P3との距離を離間し、第1端子P1と第2端子P2との距離と、第1端子P1と第3端子P3との距離とを、同じにできる。
【0041】
電力分配器10は、抵抗素子93を備える。抵抗素子93は、チップ型電子部品であってもよく、所定の導体パターンによって形成されていてもよい。抵抗素子93は、回路上の抵抗41となる。
【0042】
抵抗素子93の一方端は、配線導体921を介して、第5側面導体915に接続されている。抵抗素子93の他方端は、配線導体922を介して、第6側面導体916に接続されている。配線導体921と配線導体922との長さは同じであることが好ましい。
【0043】
(基体90の内部構造)
図5(A)、図6に示すように、電力分配器10は、平面視して(z方向に視て)、第1インダクタ21が形成される第1インダクタ領域Re21と、第2インダクタ22が形成される第2インダクタ領域Re22とを有する。第1インダクタ領域Re21と第2インダクタ領域Re22とは、基体90におけるx方向の中心CSx(第1基準面)を基準にして、対象の位置に配置されている。さらに、第1インダクタ21を構成する螺旋形状のインダクタ導体と、第2インダクタ22を構成する螺旋形状のインダクタ導体とは、第1基準面を基準にして、対称の形状である。また、第1インダクタ21の螺旋の巻き方向と、第2インダクタ22の螺旋の巻き方向は逆である。
【0044】
この構成により、第1インダクタ21のインダクタンスと、第2インダクタ22のインダクタンスとを、精度良く同じにできる。また、第1インダクタ21と第2インダクタ22との結合を抑制できる。
【0045】
基体90は、平面視して(z方向に視て)、第3インダクタ23が形成される第3インダクタ領域Re23と、第4インダクタ24が形成される第4インダクタ領域Re24とを有する。第3インダクタ領域Re23と第4インダクタ領域Re24とは、基体90におけるx方向の中心CSx(第1基準面)を基準にして、対象の位置に配置されている。さらに、第3インダクタ23を構成する螺旋形状のインダクタ導体と、第4インダクタ24を構成する螺旋形状のインダクタ導体とは、第1基準面を基準にして、対称の形状である。また、第3インダクタ23の螺旋の巻き方向と、第4インダクタ24の螺旋の巻き方向は逆である。
【0046】
この構成により、第3インダクタ23のインダクタンスと、第4インダクタ24のインダクタンスとを、精度良く同じにできる。また、第3インダクタ23と第4インダクタ24との結合を抑制できる。
【0047】
また、第1インダクタ領域Re21と第3インダクタ領域Re23とは、第1基準面も第3側面903側に配置され、第2基準面を基準にして対象の位置に配置されている。第2インダクタ領域Re22と第4インダクタ領域Re24とは、第1基準面も第4側面904側に配置され、第2基準面を基準にして対象の位置に配置されている。
【0048】
この構成により、第1側面導体911(第1端子P1)と第1インダクタ21との距離と、第1側面導体911と第2インダクタ22との距離を同じにできる。また、第3インダクタ23と第7側面導体917(第2端子P2)との距離と、第4インダクタ24と第8側面導体918(第3端子P3)との距離と、を同じにできる。
【0049】
さらには、第1インダクタ21と第3インダクタ23との距離と、第2インダクタ22と第4インダクタ24との距離を短くでき、且つ、これらの距離を同じにできる。
【0050】
基体90は、平面視して(z方向に視て)、第4コンデンサ34が形成される第4コンデンサ領域Re34と、第5コンデンサ35が形成される第5コンデンサ領域Re35とを有する。第4コンデンサ領域Re34は、基体90におけるx方向の中心に配置されており、第1側面901よりも第2側面902に近い位置に配置されている。第5コンデンサ領域Re35は、基体90におけるx方向の中心に配置されており、第2側面902よりも第1側面901に近い位置に配置されている。
【0051】
この際、第4コンデンサ領域Re34と第5コンデンサ領域Re35とは、第1インダクタ領域Re21、第2インダクタ領域Re22、第3インダクタ領域Re23、および、第4インダクタ領域Re24に重ならない。これにより、第1インダクタ21、第2インダクタ22、第3インダクタ23、および、第4インダクタ24の発生する磁界を、第4コンデンサ34および第5コンデンサ35によって塞ぐことが抑制される。このため、第1インダクタ21、第2インダクタ22、第3インダクタ23、および、第4インダクタ24のそれぞれのインダクタンスを、所望値に実現させやすい。
【0052】
なお、図5(A)、図5(B)、図5(C)では記載していないが、第1コンデンサ31が形成される第1コンデンサ領域、第2コンデンサ32が形成される第2コンデンサ領域、および、第3コンデンサ33が形成される第3コンデンサ領域は、第1インダクタ領域Re21、第2インダクタ領域Re22、第3インダクタ領域Re23、第4インダクタ領域Re24、第4コンデンサ領域Re34、および、第5コンデンサ領域Re35のいずれかに重なっている。しかしながら、図6に示すように、第1インダクタ領域Re21、第2インダクタ領域Re22、第3インダクタ領域Re23、第4インダクタ領域Re24、第4コンデンサ領域Re34、および、第5コンデンサ領域Re35が形成される部分と、第1コンデンサ領域、第2コンデンサ領域、および、第3コンデンサ領域が形成される部分との間には、グランド導体90Gが配置される。これにより、このような構成であっても、各回路素子の特性の劣化は抑制される。
【0053】
また、第5側面導体915と第7側面導体917との距離と、第6側面導体916と第8側面導体918との距離とは、同じである。したがって、回路上において、第2端子P2と抵抗41との距離と、第3端子P3と抵抗41との距離とを同じにできる。
【0054】
以上のような基体90の構造および抵抗素子93の接続構成を用いることによって、上述の電力分配器10の各回路素子の素子値を精度良く実現できる。これにより、電力分配器10の上述の特性を、精度良く実現できる。
【0055】
(基体90の詳細な内部構造)
図6に示すように、基体90は、複数の絶縁体層Ly0、Ly1、・・・、Ly19(以下、Ly0-Ly19と称する。)、LyDによって形成されている。複数の絶縁体層Ly0-Ly19は、それぞれに矩形の平膜である。複数の絶縁体層LyDは、それぞれが矩形の平膜の絶縁体層を重ね合わせたものである。なお、絶縁体層LyDを1層で形成してもよい。
【0056】
複数の絶縁体層Ly0、Ly1、・・・、Ly19、LyDは、次のように積層されている。図6に示すように、基体90の第2主面906側から、第2主面906を形成する絶縁体層Ly0、絶縁体層Ly1、絶縁体層LyD、絶縁体層Ly2の順に、積層され、基体90の第1主面905を形成する絶縁体層Ly19が配置される。
【0057】
(絶縁体層Ly0)
絶縁体層Ly0には、コンデンサ導体311、コンデンサ導体321、および、コンデンサ導体331が形成されている。コンデンサ導体311、コンデンサ導体321、および、コンデンサ導体331は、それぞれに矩形である。コンデンサ導体311が、本発明の「第1コンデンサ導体」に対応し、コンデンサ導体321が、本発明の「第2コンデンサ導体」に対応し、コンデンサ導体331が、本発明の「第3コンデンサ導体」に対応する。
【0058】
コンデンサ導体311は、x方向の中心を含むように配置されている。コンデンサ導体321は、コンデンサ導体311よりも第3側面903側に配置されている。コンデンサ導体331は、コンデンサ導体311よりも第4側面904側に配置されている。コンデンサ導体311は、コンデンサ導体321とコンデンサ導体331よりも、第1側面901側に配置されている。
【0059】
コンデンサ導体311は、第1側面導体911に接続されている。コンデンサ導体321は、第5側面導体915に接続されている。コンデンサ導体331は、第6側面導体916に接続されている。
【0060】
(絶縁体層Ly1)
絶縁体層Ly1には、グランド導体90Gが形成されている。グランド導体90Gは、絶縁体層Ly1の略全面に形成されている。z方向に視て、グランド導体90Gは、コンデンサ導体311、コンデンサ導体321、および、コンデンサ導体331と対向している。
【0061】
グランド導体90Gは、第2側面導体912、第3側面導体913、および、第4側面導体914に接続されている。
【0062】
(絶縁体層LyD)
絶縁体層LyDには、導体パターンは形成されておらず、所定の高さ(厚み)を有する。
【0063】
(絶縁体層Ly2)
絶縁体層Ly2には、コンデンサ導体341が形成されている。コンデンサ導体341は、矩形であり、x方向の中心付近に配置されている。コンデンサ導体341は、y方向において、第1側面901よりも第2側面902に近い位置に配置されている。
【0064】
(絶縁体層Ly3)
絶縁体層Ly3には、コンデンサ導体342およびコンデンサ導体343が形成されている。コンデンサ導体342およびコンデンサ導体343は、矩形であり、x方向の中心付近に配置されている。コンデンサ導体342およびコンデンサ導体343は、y方向において、第1側面901よりも第2側面902に近い位置に配置されている。
【0065】
コンデンサ導体342およびコンデンサ導体343は、x方向に並んで、所定距離離間して配置されている。コンデンサ導体342およびコンデンサ導体343は、それぞれにコンデンサ導体341に対向している。
【0066】
コンデンサ導体342は、第5側面導体915に接続されており、コンデンサ導体343は、第6側面導体916に接続されている。
【0067】
(絶縁体層Ly4)
絶縁体層Ly4には、コンデンサ導体344が形成されている。コンデンサ導体344は、矩形であり、x方向の中心付近に配置されている。コンデンサ導体344は、y方向において、第1側面901よりも第2側面902に近い位置に配置されている。コンデンサ導体344は、コンデンサ導体342およびコンデンサ導体343のそれぞれに対向している。
【0068】
(絶縁体層Ly5)
絶縁体層Ly5には、インダクタ導体211、インダクタ導体221、インダクタ導体231、および、インダクタ導体241が形成されている。インダクタ導体211、インダクタ導体221、インダクタ導体231、および、インダクタ導体241は、巻回形の線状導体である。
【0069】
インダクタ導体211は、第1側面901および第3側面903に近い位置に配置されている。インダクタ導体221は、第1側面901および第4側面904に近い位置に配置されている。インダクタ導体211とインダクタ導体221とは、x方向の中心CSx(第1基準面)を基準に対称の形状であり、対象の位置に配置されている。
【0070】
インダクタ導体231は、第2側面902および第3側面903に近い位置に配置されている。インダクタ導体241は、第2側面902および第4側面904に近い位置に配置されている。インダクタ導体231とインダクタ導体241とは、x方向の中心CSxを基準に対称の形状であり、対象の位置に配置されている。また、インダクタ導体211とインダクタ導体231とは、y方向の中心CSyを基準に、略対称の位置に配置されている。インダクタ導体221とインダクタ導体241とは、y方向の中心CSy(第2基準面)を基準に、略対称の位置に配置されている。
【0071】
インダクタ導体211とインダクタ導体231とは接続されており、インダクタ導体221とインダクタ導体241とは、接続されている。インダクタ導体231は、第5側面導体915に接続されており、インダクタ導体241は、第6側面導体916に接続されている。
【0072】
(絶縁体層Ly6)
絶縁体層Ly6には、導体パターンは形成されていない。
【0073】
(絶縁体層Ly7)
絶縁体層Ly7には、インダクタ導体212、インダクタ導体222、インダクタ導体232、および、インダクタ導体242が形成されている。インダクタ導体212、インダクタ導体222、インダクタ導体232、および、インダクタ導体242は、巻回形の線状導体である。
【0074】
インダクタ導体212は、第1側面901および第3側面903に近い位置に配置されている。インダクタ導体222は、第1側面901および第4側面904に近い位置に配置されている。インダクタ導体212とインダクタ導体222とは、x方向の中心CSxを基準に対称の形状であり、対象の位置に配置されている。
【0075】
インダクタ導体232は、第2側面902および第3側面903に近い位置に配置されている。インダクタ導体242は、第2側面902および第4側面904に近い位置に配置されている。インダクタ導体232とインダクタ導体242とは、x方向の中心CSxを基準に対称の形状であり、対象の位置に配置されている。また、インダクタ導体212とインダクタ導体232とは、y方向の中心CSyを基準に、略対称の位置に配置されている。インダクタ導体222とインダクタ導体242とは、y方向の中心CSyを基準に、略対称の位置に配置されている。
【0076】
(絶縁体層Ly8)
絶縁体層Ly8には、導体パターンは形成されていない。
【0077】
(絶縁体層Ly9)
絶縁体層Ly9には、インダクタ導体213、インダクタ導体223、インダクタ導体233、および、インダクタ導体243が形成されている。インダクタ導体213、インダクタ導体223、インダクタ導体233、および、インダクタ導体243は、巻回形の線状導体である。
【0078】
インダクタ導体213は、第1側面901および第3側面903に近い位置に配置されている。インダクタ導体223は、第1側面901および第4側面904に近い位置に配置されている。インダクタ導体213とインダクタ導体223とは、x方向の中心CSxを基準に対称の形状であり、対象の位置に配置されている。
【0079】
インダクタ導体233は、第2側面902および第3側面903に近い位置に配置されている。インダクタ導体243は、第2側面902および第4側面904に近い位置に配置されている。インダクタ導体233とインダクタ導体243とは、x方向の中心CSxを基準に対称の形状であり、対象の位置に配置されている。また、インダクタ導体213とインダクタ導体233とは、y方向の中心CSyを基準に、略対称の位置に配置されている。インダクタ導体223とインダクタ導体243とは、y方向の中心CSyを基準に、略対称の位置に配置されている。
【0080】
(絶縁体層Ly10)
絶縁体層Ly10には、導体パターンは形成されていない。
【0081】
(絶縁体層Ly11)
絶縁体層Ly11には、インダクタ導体214、インダクタ導体224、インダクタ導体234、および、インダクタ導体244が形成されている。インダクタ導体214、インダクタ導体224、インダクタ導体234、および、インダクタ導体244は、巻回形の線状導体である。
【0082】
インダクタ導体214は、第1側面901および第3側面903に近い位置に配置されている。インダクタ導体224は、第1側面901および第4側面904に近い位置に配置されている。インダクタ導体213とインダクタ導体223とは、x方向の中心CSxを基準に対称の形状であり、対象の位置に配置されている。
【0083】
インダクタ導体234は、第2側面902および第3側面903に近い位置に配置されている。インダクタ導体244は、第2側面902および第4側面904に近い位置に配置されている。インダクタ導体234とインダクタ導体244とは、x方向の中心CSxを基準に対称の形状であり、対象の位置に配置されている。また、インダクタ導体214とインダクタ導体234とは、y方向の中心CSyを基準に、略対称の位置に配置されている。インダクタ導体224とインダクタ導体244とは、y方向の中心CSyを基準に、略対称の位置に配置されている。
【0084】
絶縁体層Ly11には、さらに、配線導体251および配線導体252が形成されている。配線導体251および配線導体252は、主としてx方向に延びる形状である。配線導体251は、インダクタ導体214とインダクタ導体234との間に配置されており、第7側面導体917に接続されている。配線導体252は、インダクタ導体224とインダクタ導体244との間に配置されており、第8側面導体918に接続されている。
【0085】
(絶縁体層Ly12)
絶縁体層Ly12には、配線導体253が形成されている。配線導体253は、主としてx方向に延びる形状であり、第1側面901の近傍に、第1側面901に沿って配置されている。配線導体253の延びる方向の中点は、第1側面導体911に接続されている。
【0086】
(絶縁体層Ly13)
絶縁体層Ly13には、コンデンサ導体351およびコンデンサ導体352が形成されている。コンデンサ導体351およびコンデンサ導体352は、略矩形であり、x方向の中心付近に配置されている。コンデンサ導体351およびコンデンサ導体352は、y方向において、第2側面902よりも第1側面901に近い位置に配置されている。
【0087】
コンデンサ導体351およびコンデンサ導体352は、x方向に並んで、所定距離離間して配置されている。
【0088】
(絶縁体層Ly14)
絶縁体層Ly14には、導体パターンは形成されていない。
【0089】
(絶縁体層Ly15)
絶縁体層Ly15には、コンデンサ導体353が形成されている。コンデンサ導体353は、x方向の中心付近に配置されている。コンデンサ導体353は、y方向において、第2側面902よりも第1側面901に近い位置に配置されている。
【0090】
コンデンサ導体353の一部は、コンデンサ導体351およびコンデンサ導体352に対向している。
【0091】
(絶縁体層Ly16)
絶縁体層Ly16には、導体パターンは形成されていない。
【0092】
(絶縁体層Ly17)
絶縁体層Ly17には、コンデンサ導体354およびコンデンサ導体355が形成されている。コンデンサ導体354およびコンデンサ導体355は、略矩形であり、x方向の中心付近に配置されている。コンデンサ導体354およびコンデンサ導体355は、y方向において、第2側面902よりも第1側面901に近い位置に配置されている。
【0093】
コンデンサ導体354およびコンデンサ導体355は、x方向に並んで、所定距離離間して配置されている。
【0094】
コンデンサ導体354は、コンデンサ導体351に対向しており、コンデンサ導体355は、コンデンサ導体352に対向している。
【0095】
(絶縁体層Ly18)
絶縁体層Ly18には、コンデンサ導体356が形成されている。コンデンサ導体356は、x方向の中心付近に配置されている。コンデンサ導体356は、y方向において、第2側面902よりも第1側面901に近い位置に配置されている。
【0096】
コンデンサ導体356は、コンデンサ導体354およびコンデンサ導体355に対向している。
【0097】
(絶縁体層Ly19)
絶縁体層Ly19には、導体パターンは形成されていない。
【0098】
上述の構成において、コンデンサ導体311とグランド導体90Gとが絶縁体層を介して対向することによって、回路上の第1コンデンサ31が構成される。コンデンサ導体311とグランド導体90Gとが、本発明の「第1コンデンサ導体」に対応する。
【0099】
コンデンサ導体321とグランド導体90Gとが絶縁体層を介して対向することによって、回路上の第2コンデンサ32が構成される。コンデンサ導体321とグランド導体90Gとが、本発明の「第2コンデンサ導体」に対応する。
【0100】
コンデンサ導体331とグランド導体90Gとが絶縁体層を介して対向することによって、回路上の第3コンデンサ33が構成される。コンデンサ導体331とグランド導体90Gとが、本発明の「第3コンデンサ導体」に対応する。
【0101】
コンデンサ導体341およびコンデンサ導体344と、コンデンサ導体342およびコンデンサ導体343とが絶縁体層を介して対向することによって、回路上の第4コンデンサ34が構成される。コンデンサ導体341、コンデンサ導体342、コンデンサ導体343、およびコンデンサ導体344が、本発明の「第4コンデンサ導体」に対応する。
【0102】
コンデンサ導体351、コンデンサ導体353、コンデンサ導体354、およびコンデンサ導体356が絶縁体層を介して対向し、コンデンサ導体352、コンデンサ導体353、コンデンサ導体355、およびコンデンサ導体356が絶縁体層を介して対向することによって、回路上の第5コンデンサ35が構成される。コンデンサ導体351、コンデンサ導体352、コンデンサ導体353、コンデンサ導体354、コンデンサ導体355、および、コンデンサ導体356が、本発明の「第5コンデンサ導体」に対応する。
【0103】
インダクタ導体211の中央の開口、インダクタ導体212の中央の開口、インダクタ導体213の中央の開口、および、インダクタ導体214の開口は、重なっている。さらに、インダクタ導体211、インダクタ導体212、インダクタ導体213、および、インダクタ導体214が順に層間接続導体で接続されている。これにより、螺旋形の第1インダクタ21が構成される。インダクタ導体211、インダクタ導体212、インダクタ導体213、および、インダクタ導体214が本発明の「第1インダクタ導体」に対応する。
【0104】
インダクタ導体221の中央の開口、インダクタ導体222の中央の開口、インダクタ導体223の中央の開口、および、インダクタ導体224の開口は、重なっている。さらに、インダクタ導体221、インダクタ導体222、インダクタ導体223、および、インダクタ導体224が順に層間接続導体で接続されている。これにより、螺旋形の第2インダクタ22が構成される。インダクタ導体221、インダクタ導体222、インダクタ導体223、および、インダクタ導体224が、本発明の「第2インダクタ導体」に対応する。
【0105】
インダクタ導体231の中央の開口、インダクタ導体232の中央の開口、インダクタ導体233の中央の開口、および、インダクタ導体234の開口は、重なっている。さらに、インダクタ導体231、インダクタ導体232、インダクタ導体233、および、インダクタ導体234が順に層間接続導体で接続されている。これにより、螺旋形の第3インダクタ23が構成される。インダクタ導体231、インダクタ導体232、インダクタ導体233、および、インダクタ導体234が、本発明の「第3インダクタ導体」に対応する。
【0106】
インダクタ導体241の中央の開口、インダクタ導体242の中央の開口、インダクタ導体243の中央の開口、および、インダクタ導体244の開口は、重なっている。さらに、インダクタ導体241、インダクタ導体242、インダクタ導体243、および、インダクタ導体244が順に層間接続導体で接続されている。これにより、螺旋形の第4インダクタ24が構成される。インダクタ導体241、インダクタ導体242、インダクタ導体243、および、インダクタ導体244が、本発明の「第4インダクタ導体」に対応する。
【0107】
そして、これらの構成によって、基体90、抵抗素子93、配線導体921、および、配線導体922から、上述の図1に示す回路を容易に実現できる。
【0108】
また、この構成では、図6に示すように、さらに、第5コンデンサ領域Re35が形成される層と、第4コンデンサ領域Re34が形成される層は、第1インダクタ領域Re21、第2インダクタ領域Re22、第3インダクタ領域Re23、および、第4インダクタ領域Re24が形成される層を挟んで配置されている。これにより、第4コンデンサ34と第5コンデンサ35との結合を抑制できる。
【0109】
また、この構成では、図6に示すように、さらに、第4コンデンサ領域Re34が形成される層と、グランド導体90Gとの間に、導体パターンが形成されていない絶縁体層LyDが配置されている。これにより、第4コンデンサ34とグランド導体90Gとの結合を抑制できる。
【0110】
なお、電力分配器10の基体90では、z方向において、第4コンデンサ領域Re34と第5コンデンサ領域Re35とを、第1インダクタ領域Re21、第2インダクタ領域Re22、第3インダクタ領域Re23、および、第4インダクタ領域Re24が形成される層に対して同じ側に配置することも可能である。
【0111】
また、電力分配器10では、基体90の第1主面905上に、抵抗素子93を実装することも可能であり、基体90の内部に抵抗素子93を実装することもできる。
【符号の説明】
【0112】
10:電力分配器
21:第1インダクタ
22:第2インダクタ
23:第3インダクタ
24:第4インダクタ
31:第1コンデンサ
32:第2コンデンサ
33:第3コンデンサ
34:第4コンデンサ
35:第5コンデンサ
41:抵抗
90:基体
90G:グランド導体
93:抵抗素子
211、212、213、214、221、222、223、224、231、232、233、234、241、242、243、244:インダクタ導体
251、252、253:配線導体
311、321、331、341、342、343、344、351、352、353、354、355、356:コンデンサ導体
901:第1側面
902:第2側面
903:第3側面
904:第4側面
905:第1主面
906:第2主面
911:第1側面導体
912:第2側面導体
913:第3側面導体
914:第4側面導体
915:第5側面導体
916:第6側面導体
917:第7側面導体
918:第8側面導体
921、922:配線導体
Ly0-Ly19,LyD:絶縁体層
P1:第1端子
P2:第2端子
P3:第3端子
Re21:第1インダクタ領域
Re22:第2インダクタ領域
Re23:第3インダクタ領域
Re24:第4インダクタ領域
Re34:第4コンデンサ領域
Re35:第5コンデンサ領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6