(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
G05F 1/67 20060101AFI20221025BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20221025BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20221025BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G05F1/67 A
H02J3/38 150
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J7/35 B
(21)【出願番号】P 2021529607
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2019026354
(87)【国際公開番号】W WO2021001936
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 海青
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-51083(JP,A)
【文献】特開2014-128164(JP,A)
【文献】特開2018-153011(JP,A)
【文献】特開2006-60983(JP,A)
【文献】国際公開第2015/029138(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/67
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルからの直流電力を交流電力に変換し、前記交流電力を電力系統に出力するように構築された第一電力変換装置と、
蓄電池と、
前記太陽電池パネルと前記第一電力変換装置との間の接続点に第一入出力端が接続され、第二入出力端が前記蓄電池に接続され、前記接続点の直流電圧で前記蓄電池を充電する充電制御と前記蓄電池に蓄えられた電力を前記接続点に放出する放電制御とを含む充放電制御を行うように構築された第二電力変換装置と、
を備え、
前記第一電力変換装置および前記第二電力変換装置は、
前記接続点を介して前記第一電力変換装置と前記第二電力変換装置とが接続した状態で前記第一電力変換装置が前記太陽電池パネルに対するMPPT制御を行うとともに前記第二電力変換装置が前記充放電制御を行う第一モードと、
前記第一電力変換装置が予め定められた出力リミッタ値を上回らないように出力電力を制限する制御であり且つMPPT制御ではない出力リミット制御を行うとともに、前記第二電力変換装置が前記太陽電池パネルに対するMPPT制御を行う第二モードと、
を選択的に実行するように構築された電力システム。
【請求項2】
前記第一電力変換装置および前記第二電力変換装置は、前記第一モードが行われている期間に前記第一電力変換装置の出力電力が前記出力リミッタ値に達したときには前記第一モードを前記第二モードに切り替えるように構築された請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記第一電力変換装置および前記第二電力変換装置は、前記第一電力変換装置が前記出力リミッタ値を上回らない範囲でMPPT制御を行うとともに前記第二電力変換装置が停止される第三モードをさらに選択可能に構築され、
前記第二モードが行われている期間に前記蓄電池が満充電となった場合には、前記第一電力変換装置および前記第二電力変換装置が前記第二モードから前記第三モードへと制御モードを切り替えるように構築された請求項1または
2に記載の電力システム。
【請求項4】
太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルからの直流電力を交流電力に変換し、前記交流電力を電力系統に出力するように構築された第一電力変換装置と、
蓄電池と、
前記太陽電池パネルと前記第一電力変換装置との間の接続点に第一入出力端が接続され、第二入出力端が前記蓄電池に接続され、前記接続点の直流電圧で前記蓄電池を充電する充電制御と前記蓄電池に蓄えられた電力を前記接続点に放出する放電制御とを含む充放電制御を行うように構築された第二電力変換装置と、
前記第一電力変換装置と前記第二電力変換装置とに接続された上位制御装置と、
を備え、
前記上位制御装置は、
前記接続点を介して前記第一電力変換装置と前記第二電力変換装置とが接続した状態で前記第一電力変換装置が前記太陽電池パネルに対するMPPT制御を行うとともに前記第二電力変換装置が前記充放電制御を行う第一モードと、
前記第一電力変換装置が予め定められた出力リミッタ値を上回らないように出力電力を制限する制御であり且つMPPT制御ではない出力リミット制御を行うとともに、前記第二電力変換装置が前記太陽電池パネルに対するMPPT制御を行う第二モードと、
を備え、
前記上位制御装置は、前記第一モードと前記第二モードとを前記第一電力変換装置および前記第二電力変換装置に選択的に実行させるように構築された電力システム。
【請求項5】
前記上位制御装置は、前記第一モードが行われている期間に前記第一電力変換装置の出力電力が前記出力リミッタ値に達したときには、前記第一電力変換装置および前記第二電力変換装置の制御モードを前記第一モードから前記第二モードに切り替えるように構築された請求項
4に記載の電力システム。
【請求項6】
前記上位制御装置は、前記第一電力変換装置が前記出力リミッタ値を上回らない範囲でMPPT制御を行うとともに前記第二電力変換装置が停止される第三モードをさらに備え、
前記上位制御装置は、前記第二モードが行われている期間に前記蓄電池が満充電となった場合には前記第二モードを前記第三モードに切り替えるように構築された請求項
4または5に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば国際公開2015/029138号公報に記載されているように、太陽光発電システムの出力電力を一定範囲に制限する技術が知られている。系統連系を行う太陽光発電システムでは、電力系統との関係で許容される出力電力の範囲が定められている。上記従来の技術によれば、サイト上限設定値が設定され、このサイト上限設定値を超えないように太陽光発電システムの出力電力が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、サイト上限設定値をリミッタ値として、出力電力がこのリミッタ値を超えないように出力電力が制限される。この出力制限は、MPPT制御との関係で弊害を引き起こすことがある。すなわち、一般的には、太陽電池パネルに対するMPPT制御(つまり最大電力点追従制御)が行われることで、太陽電池パネルの発電電力が最大限に取り出される。その一方で、出力リミット制御が行われることで、電力変換装置の入力直流電圧の値が最適動作点電圧よりも小さな値に制限される。
【0005】
MPPT制御が行われているときに、最大出力電力動作点の手前で太陽電池パネルの出力電力が出力リミッタ値に達することがある。この場合には、発電量を増大させないように、出力リミット制御で出力電力が制限されてしまう。このような事態が発生すると、本来であればさらに多くの発電量を得ることができる状況にもかかわらず、太陽電池パネルの発電量が制限されているという問題があった。
【0006】
この出願は、上述のような課題を解決するためになされたもので、より多くの発電量を得ることができるように改良された電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の第一の電力システムは、
太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルからの直流電力を交流電力に変換し、前記交流電力を電力系統に出力するように構築された第一電力変換装置と、
蓄電池と、
前記太陽電池パネルと前記第一電力変換装置との間の接続点に第一入出力端が接続され、第二入出力端が前記蓄電池に接続され、前記接続点の直流電圧で前記蓄電池を充電する充電制御と前記蓄電池に蓄えられた電力を前記接続点に放出する放電制御とを含む充放電制御を行うように構築された第二電力変換装置と、
を備え、
前記第一電力変換装置および前記第二電力変換装置は、
前記接続点を介して前記第一電力変換装置と前記第二電力変換装置とが接続した状態で前記第一電力変換装置が前記太陽電池パネルに対するMPPT制御を行うとともに前記第二電力変換装置が前記充放電制御を行う第一モードと、前記第一電力変換装置が予め定められた出力リミッタ値を上回らないように出力電力を制限する制御であり且つMPPT制御ではない出力リミット制御を行うとともに、前記第二電力変換装置が前記太陽電池パネルに対するMPPT制御を行う第二モードと、を選択的に実行するように構築されたものである。
【0008】
本出願の第二の電力システムは、
太陽電池パネルと、
前記太陽電池パネルからの直流電力を交流電力に変換し、前記交流電力を電力系統に出力するように構築された第一電力変換装置と、
蓄電池と、
前記太陽電池パネルと前記第一電力変換装置との間の接続点に第一入出力端が接続され、第二入出力端が前記蓄電池に接続され、前記接続点の直流電圧で前記蓄電池を充電する充電制御と前記蓄電池に蓄えられた電力を前記接続点に放出する放電制御とを含む充放電制御を行うように構築された第二電力変換装置と、
前記第一電力変換装置と前記第二電力変換装置とに接続された上位制御装置と、
を備え、
前記上位制御装置は、
前記接続点を介して前記第一電力変換装置と前記第二電力変換装置とが接続した状態で前記第一電力変換装置が前記太陽電池パネルに対するMPPT制御を行うとともに前記第二電力変換装置が前記充放電制御を行う第一モードと、前記第一電力変換装置が予め定められた出力リミッタ値を上回らないように出力電力を制限する制御であり且つMPPT制御ではない出力リミット制御を行うとともに、前記第二電力変換装置が前記太陽電池パネルに対するMPPT制御を行う第二モードと、を備え、
前記上位制御装置は、前記第一モードと前記第二モードとを前記第一電力変換装置および前記第二電力変換装置に選択的に実行させるように構築されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本出願によれば、第一電力変換装置と第二電力変換装置とで、MPPT制御を実行する権限を互いに受け渡すことができる。第二電力変換装置でMPPT制御を実行する第二モードによれば、発電電力を太陽電池パネルから最大限に引き出すとともに、この電力を蓄電池に蓄えることができる。これにより、従来は電力系統側に出力しないよう出力リミット制御で制限されていた過剰発電量を、太陽電池パネルから取り出すことができる。その結果、電力システムの発電量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態にかかる電力システムの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態にかかる電力システムの動作を説明するためのタイムチャートである。
【
図3】実施の形態の変形例にかかる電力システムの構成を示す図である。
【
図4】比較例にかかる電力システムの動作を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態にかかる電力システム1の構成を示す図である。電力システム1は、直流リンク発電システム1aと、系統側開閉器2と、連系トランス3と、を備えている。系統側開閉器2の一端は電力系統100に接続され、系統側開閉器2の他端は連系トランス3の一端に接続されている。連系トランス3の他端は、直流リンク発電システム1aにおける交流側開閉器4の一端に接続されている。
【0012】
直流リンク発電システム1aは、交流側開閉器4と、第一電力変換装置5と、直流側開閉器6と、太陽電池パネル7と、第二電力変換装置8と、蓄電用開閉器9と、蓄電池10と、逆流防止ダイオード11とを備えている。第一電力変換装置5および第二電力変換装置8は、パワーコンディショナシステム(PCS)とも称される。
【0013】
直流リンク発電システム1aは、DCリンク方式のシステム構成を有する。DCリンク方式に従って、太陽電池パネル7と第一電力変換装置5とを接続する直流(DC)パスに蓄電池システム(つまり第二電力変換装置8および蓄電池10)が接続されている。
【0014】
交流側開閉器4の他端は、第一電力変換装置5の交流出力端に接続されている。第一電力変換装置5の直流入力端には、直流側開閉器6の一端が接続されている。
【0015】
直流側開閉器6の他端は、接続点Xを介して、逆流防止ダイオード11のカソードに接続されている。逆流防止ダイオード11のアノードは、太陽電池パネル7に接続されている。
【0016】
実施の形態では、簡略化のために一つの直流リンク発電システム1aのみを
図1に示しているが、複数の直流リンク発電システム1aが並列接続されたものが連系トランス3の他端に接続するように電力システム1が構築されてもよい。太陽電池パネル7は、複数の太陽電池モジュールが多数直列及び並列に接続された太陽電池アレイとして提供されてもよい。
【0017】
第一電力変換装置5は、太陽電池パネル7からの直流電力を交流電力に変換し、交流電力を電力系統100へ出力するように構築されている。第一電力変換装置5は、第一電力変換回路と第一電力変換制御回路とを備えている。第一電力変換回路は、一例としてIGBT等の半導体スイッチング素子で構築された電圧型三相交流インバータ回路である。第一電力変換制御回路は、図示しない上位制御装置(例えばメインサイトコントローラ)からの出力上限リミッタP*
1に基づいて、ゲートパルスとしてのPWM制御信号を生成することにより第一電力変換回路の半導体スイッチング素子をオンオフ制御する。
【0018】
図1に示すように、接続点Xには、第二電力変換装置8の第一入出力端も接続されている。第二電力変換装置8の第二入出力端は、蓄電用開閉器9を介して、蓄電池10に接続されている。
【0019】
蓄電池10は、ESS(エナジーストレージシステム)用の各種の蓄電装置を用いることができる。蓄電池10は、電気二重層コンデンサ(EDLC)と、リチウムイオンキャパシタ(LIC)と、リチウムイオン二次電池(LIB)と、ニッケル水素電池と、チタン酸リチウムを用いたSciB(登録商標)と、鉛蓄電池と、ナトリウム硫黄電池と、燃料電池(FC)とからなる群から選択された蓄電池10であってもよい。
【0020】
蓄電池10と第二電力変換装置8は、蓄電用開閉器9を介して接続されている。蓄電池10は、蓄電池本体と、この蓄電池本体のSOC(State of Charge)などを管理するBMU(バッテリマネジメントユニット)を含んでいる。蓄電池10のSOCなどの電池状態情報は、BMUから第二電力変換装置8に伝達されている。なお、変形例として、図示しない上位制御装置を経由して、第二電力変換装置8へと電池状態情報が伝達されてもよい。つまり、BMUと第二電力変換装置8とが直接に交信しなくともよい。
【0021】
第二電力変換装置8は、太陽電池パネル7と直流側開閉器6との間の接続点Xに接続されている。第二電力変換装置8は、第二電力変換回路と、第二電力変換制御回路と、を備えている。第二電力変換回路としては、各種公知のDC-DCコンバータ回路を用いることができる。第二電力変換回路は、例えば、PWMスイッチングコンバータであってもよいし、チョッパ回路を含む昇降圧コンバータであってもよい。第二電力変換制御回路は、図示しない上位制御装置(例えばメインサイトコントローラ)からの上位指令信号に基づいて、第二電力変換回路に含まれるIGBTまたはMOSFETなどの半導体スイッチング素子のオン・オフを制御する。
【0022】
第二電力変換装置8は、充放電制御を実施するように構築されている。充放電制御は、充電制御と放電制御とを含んでいる。充電制御は、接続点Xの直流電圧VDCで蓄電池10を充電する制御モードである。放電制御は、蓄電池10に蓄えられた電力を接続点Xに放出する制御モードである。
【0023】
図示しない上位制御装置からの上位指令信号には、指令値が含まれている。この指令値は、蓄電池10の種類と運用方法とに応じてその内容が決まるものであり、有効電力指令P
*
2であってもよく、電流指令値あるいは電圧指令値であってもよい。第二電力変換装置8は、上位指令信号に含まれる指令値に基づいて接続点Xに対する有効電力の入出力を行うように作動する。また、
図1に記載した実施の形態にかかる電力システム1では、第一電力変換装置5と第二電力変換装置8との間に通信回線が設けられている。この通信回線を介して、モード設定信号S0がやり取りされる。
【0024】
モード設定信号S0は、第一電力変換装置5と第二電力変換装置8との間で、第一モードM1と第二モードM2と第三モードM3との切替を行うための双方向信号である。モード設定信号S0をやり取りすることで、第一電力変換装置5と第二電力変換装置8とが協調して制御を実施する。実施の形態では、このモード設定信号S0との対応関係を定めた下記の表1に定義されたテーブル情報が、予め第一電力変換装置5および第二電力変換装置8に記憶されている。第一電力変換装置5および第二電力変換装置8は、モード設定信号S0の内容に従って、第一モードM1と第二モードM2と第三モードM3とを選択的に実行するように構築されている。
【0025】
【0026】
第一モードM1は、第一電力変換装置5が太陽電池パネル7に対するMPPT制御(つまり最大電力点追従制御)を行うとともに、第二電力変換装置8が充放電制御を行う制御モードである。第一モードM1の充放電制御は、前述したように、図示しない上位制御装置からの上位指令信号に基づいて充電制御と放電制御とを切り替えるものである。
【0027】
第二モードM2は、第一電力変換装置5が出力リミット制御に固定されるとともに、第二電力変換装置8が太陽電池パネル7に対するMPPT制御を行う制御モードである。第二モードM2の出力リミット制御では、図示しない上位制御装置からの出力上限リミッタP*
1と予め定められた出力リミッタ値Ppcsmaxとのうち小さい方の値が、出力リミッタ値Plimitに設定される。第一電力変換装置5は、出力リミッタ値Plimitを上回らないように出力電力を制限する。
【0028】
第三モードM3は、第一電力変換装置5が出力リミッタ値Plimitを上回らない範囲でMPPT制御を行うとともに、第二電力変換装置8が停止される制御モードである。
【0029】
図2は、実施の形態にかかる電力システム1の動作を説明するためのタイムチャートである。
図2において、連系点電力Psiteは、直流リンク発電システム1aが電力系統100の系統連系点へと出力するサイト合成電力である。過剰発電電力P
exは、出力リミッタ値P
limitを超える発電量である。総過剰発電電力量P
extotalは、過剰発電電力P
exを時間で積分した値である。
【0030】
出力電力Pgenは、太陽電池パネル7が発電した発電電力量のうち、直流リンク発電システム1aから電力系統100の側へ出力する出力分である。充電電力量PCRGは、太陽電池パネル7が発電した発電電力量のうち、蓄電池10に充電される充電電力分である。実施の形態では、充電電力量PCRGは総過剰発電電力量Pextotalと一致している。これは、第二モードM2で第二電力変換装置8がMPPT制御を実施することで、太陽電池パネル7の過剰発電分を最大限に引き出すことができるからである。
【0031】
時刻t1、t2、t3、t4は、夜間と朝と昼と夕とを区別するための便宜上の時刻である。時刻t1が日の出に相当しており、時刻t4が日没に相当している。
図2の下段には、制御モードつまりモード設定信号S0の内容が時系列的に示されている。なお、
図2では、一例として、夜間に第一電力変換装置5と第二電力変換装置8の両方が停止されている。
【0032】
図4は、比較例にかかる電力システム1の動作を説明するためのタイムチャートである。比較例では、実施の形態とは異なり、時刻t1から時刻t4までの全期間に渡って比較例モードM0が実行される。比較例モードM0の内容は、下記の表2のとおりである。
【0033】
【0034】
図4の比較例では、過剰出力電力P
exを制限するように出力リミット制御が実施されるだけであり、総過剰発電電力量P
extotalは太陽電池パネル7から引き出されることがない。つまり
図1においては総過剰発電電力量P
extotalが充電電力量P
CRGとして取り出されているが、
図4の比較例では充電電力量P
CRGが発生していない。従って、比較例においては、総過剰発電電力量P
extotalの取得を諦めざるを得ない。
【0035】
実施の形態によれば、上記の表1にも示したように、モード設定信号S0に従って第一モードM1と第二モードM2とが選択的に実行される。このモード切替により、第一電力変換装置5と第二電力変換装置8との間でMPPT制御を実行する権限を互いに受け渡すことができる。第二電力変換装置8でMPPT制御を実行する第二モードM2によれば、発電電力を太陽電池パネル7から最大限に引き出すとともに、この電力を蓄電池10に蓄えることができる。
【0036】
比較例では電力系統100の側に出力しないよう出力リミット制御で総過剰発電電力量P
extotalの出力が制限されていたのに対し、実施の形態では太陽電池パネル7から取り出した総過剰発電電力量P
extotalを充電電力量P
CRGとして蓄電池10へと蓄えることができる。その結果、昼期間における電力システム1の総発電量は、P
genとP
CRGとの合計になるので、
図4の比較例に比べて電力システム1の総発電量を増大させることができる。
【0037】
実施の形態においては、第一電力変換装置5および第二電力変換装置8は、
図2の時刻t2おいて、第一電力変換装置5がモード設定信号S0の内容を第一モードM1から第二モードM2に切り替える。時刻t2は、第一モードM1が行われている期間に第一電力変換装置5の出力電力が出力リミッタ値P
limitに達したタイミングである。これにより第一電力変換装置5における出力リミット制御の開始が必要となったことに応答して、第二モードM2への自動切替を即時かつシームレスに実行することができる。
【0038】
図2に示す実施の形態の一例においては、朝期間(時刻t1~t2)および夕期間(時刻t3~t4)では第一モードM1が選択され、昼期間(時刻t2~時刻t3)には第二モードM2が選択されるように、第一電力変換装置5と第二電力変換装置8とが協調してモード設定信号S0の内容を決定する。朝期間(時刻t1~t2)および夕期間(時刻t3~t4)には、第一電力変換装置5の出力電力が出力リミッタ値P
limitよりも小さい。昼期間(時刻t2~時刻t3)には、第一電力変換装置5の出力電力が出力リミッタ値P
limitに達している。
【0039】
なお、
図2では便宜上、昼期間である時刻t2から時刻t3の全域にわたり過剰発電電力P
exが発生しているが、これは一例である。実施の形態において、昼期間に過剰発電電力P
exが発生しなくなる場合、つまり昼期間に出力電力P
genが出力リミッタ値P
limitを下回る場合もある。このような場合には、時限をもたせ、モード設定信号S0の内容は第二モードM2から第一モードM1に変更されてもよい。すなわち、発電量が少なくなってから所定時間が経過したら、制御モードを第一モードM1へ変更してもよい。この所定時間は、例えばデフォルト値で固定値とされてもよく、あるいは可変設定が可能とされてもよい。
【0040】
実施の形態では、
図2の昼期間において第二モードM2が行われている期間に蓄電池10が満充電となった場合には、第二電力変換装置8がモード設定信号S0の内容を第二モードM2から第三モードM3へと変更する。蓄電池10が満充電(つまりSOC100%)となったことは、蓄電池10のBMUから第二電力変換装置8へと伝達されてもよい。蓄電池10が満充電になると第二電力変換装置8で充電リミッタがかかる。あるいは、図示しない上位制御装置を経由して、第二電力変換装置8が停止され、第一電力変換装置5を第三モードM3へと切り替えるように、制御指令がやりとりされてもよい。なお、この制御動作の変形例として、蓄電池10の満充電に応じて第三モードM3の代わりに第一モードM1を設定するようにしてもよく、この場合には第三モードM3を省略してもよい。
【0041】
第二電力変換装置8は、予め定められた朝期間と予め定められた夕期間と予め定められた夜期間とのうち少なくとも1つの期間に、放電制御を行うように構築されてもよい。朝期間は、
図2の時刻t1から時刻t2までの期間内に予め設定される。夕期間は、
図2の時刻t3から時刻t4までの期間内に予め設定される。朝夕には消費電力が多くなるケースがあるので、消費電力に対する発電電力の不足分を蓄電池10で補うことができる。夜期間は、
図2の時刻t4から翌朝の時刻t1にかけての期間である。
【0042】
図3は、実施の形態の変形例にかかる電力システム1の構成を示す図である。
図3の変形例では、上位制御装置であるメインサイトコントローラ(MSC)12が設けられている。MSC12は、第一電力変換装置5と第二電力変換装置8との双方と通信可能に接続されている。
【0043】
MSC12には、第一電力変換装置5の各種制御パラメータと第二電力変換装置8の各種制御パラメータとが伝達される。第一電力変換装置5の各種制御パラメータは、制御モードと出力交流電流と出力交流電圧と入力直流電流と入力直流電圧と有効電力出力と無効電力出力とを含む。第二電力変換装置8の制御パラメータは、制御モードと出力直流電流と出力直流電圧と入力直流電流と入力直流電圧と有効電力出力とを含む。蓄電池10のSOCなどの電池状態情報も、第二電力変換装置8を介してMSC12に伝達されてもよい。変形例として、直接BMUからMSC12へと電池情報などが送信されてもよい。
【0044】
前述した
図1の構成では、モード設定信号S0が授受されることで、第一電力変換装置5と第二電力変換装置8との協調制御による制御モード切替が実現されている。これとは対照的に、
図3の変形例ではMSC12がモード設定信号S1、S2を送受信することで、上位制御装置としてのMSC12が第一電力変換装置5と第二電力変換装置8との協調制御を実現する。モード設定信号S1、S2は、第一モードM1と第二モードM2と第三モードM3とのいずれのモードで第一電力変換装置5および第二電力変換装置8が作動すべきかを指示する信号である。
【0045】
上記の点を除いては
図3のシステム構成と
図1のシステム構成とは同様であり、
図1のシステム構成について述べた各種変形例もMSC12に搭載することができる。すなわち、
図1の電力システム1と同様に、下記の制御動作が実施されても良い。
【0046】
図2の時刻t2おいて、MSC12がモード設定信号S1、S2の内容を第一モードM1から第二モードM2に切り替えてもよい。朝期間(時刻t1~t2)および夕期間(時刻t3~t4)では第一モードM1が選択され、昼期間(時刻t2~時刻t3)には第二モードM2が選択されるように、MSC12がモード設定信号S1、S2の内容を決定してもよい。
【0047】
昼期間に出力電力P
genが出力リミッタ値P
limitを下回った場合には、MSC12がモード設定信号S1、S2の内容を第二モードM2から第一モードM1に変更してもよい。
図2の昼期間において第二モードM2が行われている期間に蓄電池10が満充電となった場合には、MSC12がモード設定信号S1、S2の内容を第二モードM2から第三モードM3へと変更してもよい。
【0048】
MSC12は、予め定められた朝期間と予め定められた夕期間と予め定められた夜期間とのうち少なくとも1つの期間に、第二電力変換装置8に放電制御を実行させてもよい。
図3のシステム構成においても、
図1のシステム構成と同様の制御動作を実行するようにMSC12を構築することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 電力システム、1a 直流リンク発電システム、2 系統側開閉器、3 連系トランス、4 交流側開閉器、5 第一電力変換装置、6 直流側開閉器、7 太陽電池パネル、8 第二電力変換装置、9 蓄電用開閉器、10 蓄電池、11 逆流防止ダイオード、100 電力系統、M0 比較例モード、M1 第一モード、M2 第二モード、M3 第三モード、PCRG 充電電力量、Pex 過剰発電電力、Pextotal 総過剰発電電力量、Pgen 出力電力、Plimit 出力リミッタ値、S0、S1、S2 モード設定信号、X 接続点