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特許7164044前後輪駆動車両の駆動力配分方法および駆動力配分装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】前後輪駆動車両の駆動力配分方法および駆動力配分装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/348 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
B60K17/348 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021529652
(86)(22)【出願日】2019-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2019026626
(87)【国際公開番号】W WO2021001988
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣井 大祐
(72)【発明者】
【氏名】西田 博志
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-159952(JP,A)
【文献】特開昭63-215430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源の発生する駆動力の主駆動輪及び副駆動輪への配分を制御する駆動力配分装置を備えた前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法において、
車両の旋回走行を判定し、
車両の旋回走行が判定される場合において、車両のアンダーステアを判定し、
車両のアンダーステアが判定された場合において、前記主駆動輪の回転速度と前記副駆動輪の回転速度との回転速度差が所定回転速度差より小さいか否かを判定し、
前記主駆動輪の回転速度と前記副駆動輪の回転速度との回転速度差が所定回転速度差より小さくないと判定された場合には、前記駆動力配分装置における副駆動輪側への現状の駆動力配分を第1所定量増加し、
前記主駆動輪の回転速度と前記副駆動輪の回転速度との回転速度差が所定回転速度差より小さいと判定された場合には、前記駆動力配分装置における前記副駆動輪側への現状の駆動力配分を第2所定量減少する、
ことを特徴とする前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法において、
前記主駆動輪の回転速度と前記副駆動輪の回転速度との回転速度差が所定回転速度差より小さいと判定された場合には、前記駆動力配分装置における前記副駆動輪側への現状の駆動力配分を維持し、所定時間経過後に前記主駆動輪の回転速度と前記副駆動輪の回転速度との回転速度差が所定回転速度差より小さいと判定された場合には、前記副駆動輪側への現状の駆動力配分を第2所定量減少する、
ことを特徴とする前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法において、
前記所定回転速度差は、第1所定回転速度差と前記第1所定回転速度差より小さい第2所定回転速度差であり、
前記主駆動輪の回転速度と前記副駆動輪の回転速度との回転速度差が第1所定回転速度差より小さいと判定された場合には、前記駆動力配分装置における前記副駆動輪側への現状の駆動力配分を維持し、前記主駆動輪の回転速度と前記副駆動輪の回転速度との回転速度差が第2所定回転速度差より小さいと判定された場合には、前記駆動力配分装置における前記副駆動輪側への現状の駆動力配分を第2所定量減少する、
ことを特徴とする前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法において、
前記所定回転速度差は、車速および/またはヨーレートに基づき設定する、
ことを特徴とする前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法において、
前記所定回転速度差は、車速および/またはヨーレートが高いほど大きく設定する、
ことを特徴とする前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法において、
前記主駆動輪は前輪であり、前記副駆動輪は後輪である、
ことを特徴とする前後輪駆動車両の駆動力配分制御方法。
【請求項7】
駆動力源の発生する駆動力の主駆動輪及び副駆動輪への配分を制御する駆動力配分装置を備えた前後輪駆動車両の駆動力配分制御装置において、
車両の旋回走行を判定する旋回判定部と、
前記旋回判定部により車両の旋回走行が判定される場合において、車両のアンダーステアを判定するステア判定部と、
前記ステア判定部により車両のアンダーステアが判定された場合において、前記主駆動輪の回転速度と前記副駆動輪の回転速度との回転速度差が所定回転速度差より小さいか否かを判定する回転速度差判定部と、
前記回転速度差判定部により前記主駆動輪の回転速度と前記副駆動輪の回転速度との回転速度差が所定回転速度差より小さくないと判定された場合には、前記駆動力配分装置における副駆動輪側への現状の駆動力配分を第1所定量増加し、
前記回転速度差判定部により前記主駆動輪の回転速度と前記副駆動輪の回転速度との回転速度差が所定回転速度差より小さいと判定された場合には、前記駆動力配分装置における前記副駆動輪側への現状の駆動力配分を第2所定量減少する駆動力配分制御部と、
を備えた、
ことを特徴とする前後輪駆動車両の駆動力配分制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前後輪駆動車両の駆動力配分方法および駆動力配分装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、主駆動輪である前輪の駆動力を、電子制御カップリングを介して副駆動輪である後輪へ分配する前後輪駆動車両において、旋回中の車両がアンダーステアの場合に、副駆動輪である後輪へ分配する駆動力を増加する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-23734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術にあっては、主駆動輪である前輪と副駆動輪である後輪の回転速度差が小さい場合に、副駆動輪である後輪へ分配する駆動力を増加すると、差動制限力過大により旋回方向に対して逆モーメントが発生して、車両のアンダーステアを助長する恐れがあった。
本発明は上記課題に着目されたもので、車両のアンダーステアが助長することを抑制した前後輪駆動車両の駆動力配分方法および駆動力配分装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の前後輪駆動車両の駆動力配分方法および駆動力配分装置では、主駆動輪の回転速度と副駆動輪の回転速度との回転速度差が所定回転速度差より小さいと判定された場合には、駆動力配分装置における副駆動輪側への現状の駆動力配分を第2所定量減少するようにした。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、車両のアンダーステアが助長することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明が適用される前後輪駆動車両の駆動力伝達装置の構成図である。
図2】実施形態1のコントロールユニットC/Uにおける制御のブロック図である。
図3】実施形態1のコントロールユニットC/Uにおける制御処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施形態1の所定回転速度差ΔNoの特性図である。
図5】実施形態2のコントロールユニットC/Uにおける制御処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施形態3のコントロールユニットC/Uにおける制御処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0008】
1 エンジン(駆動力源)
6 左前輪(主駆動輪)
7 右前輪(主駆動輪)
16 電子制御カップリング(駆動力配分装置)
19 左後輪(副駆動輪)
20 右後輪(副駆動輪)
40 旋回判定部
41 ステア判定装置
42 回転速度差判定部
43 駆動力配分制御部
100 前後輪駆動車両
C/U コントロールユニット(駆動力配分制御装置)
ΔN 主駆動輪と副駆動輪の回転速度差
ΔNo 所定回転速度差
ΔT1 第1所定量
ΔT2 第2所定量
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
図1は、本発明が適用される前後輪駆動車両の駆動力伝達装置の構成図である。
【0010】
図1に基づいて、駆動力伝達装置200の構成を説明する。
【0011】
前後輪駆動車両100の駆動力伝達装置200の前輪駆動系は、図1に示すように、横置きエンジン1(駆動力源)と、自動変速機2と、フロントデファレンシャル3と、左前輪ドライブシャフト4と、右前輪ドライブシャフト5と、左前輪6(主駆動輪)と、右前輪7(主駆動輪)と、を備えている。
すなわち、横置きエンジン1が発生した駆動力は、自動変速機2、フロントデファレンシャル3を介して左右前輪ドライブシャフト4,5に伝達され、差動を許容しながら左右前輪6,7を常時駆動する。
なお、駆動力源としては、電動モータを使用してもよい。
【0012】
前後輪駆動車両の駆動力伝達装置200の後輪駆動系は、図1に示すように、ドグクラッチ8と、ベベルギア9と、出力ピニオン10と、後輪出力軸11と、プロペラシャフト12と、を備えている。
そして、電子制御カップリング16(駆動力配分装置)と、ドライブピニオン13と、リングギア14と、リアデファレンシャル15と、左後輪ドライブシャフト17と、右後輪ドライブシャフト18と、左後輪19(副駆動輪)と、右後輪20(副駆動輪)と、を備えている。
すなわち、ドグクラッチ8と、電子制御カップリング16を共に解放する2輪駆動モードを選択することが可能な駆動系構成としている。
これにより、ドグクラッチ8と電子制御カップリング16を解放することにより、ドグクラッチ8より下流側の駆動系回転(プロペラシャフト12等の回転)が停止することで、フリクション損失やオイル攪拌損失などが抑えられ、燃費向上が達成される。
なお、図1中、21は自在継手である。
【0013】
ドグクラッチ8は、左右前輪6,7から左右後輪19,20への駆動分岐位置に設けられ、クラッチ解放により左右後輪19,20への駆動力伝達系を、左右前輪6,7への駆動力伝達系から切り離す噛み合いクラッチである。
ドグクラッチ8の入力側噛み合い部材は、フロントデファレンシャル3のデフケースに連結され、ドグクラッチ8の出力側噛み合い部材は、ベベルギア9に連結されている。
ドグクラッチ8とベベルギア9と出力ピニオン10と後輪出力軸11の一部は、フロントデフハウジング22の隣接位置に固定されたトランスファケース23に内蔵されている。
ドグクラッチ8としては、例えば、図示はしないが、一対の噛み合い部材のうち一方を固定部材とし他方を可動部材とし、固定部材と可動部材との間に締結方向に付勢するバネを設け、可動部材の外周にソレノイドピンと嵌合可能なネジ溝が形成されたものを用いる。
ドグクラッチ8の解放時は、ネジ溝に対しソレノイドピンを突出させて嵌合すると、可動部材が回転しながら解放方向にストロークし、ストローク量が所定量を超えると噛み合い締結を解放する。
一方、ドグクラッチ8の締結時は、ネジ溝に対するソレノイドピンの嵌合を解除すると、バネ付勢力により固定部材に向かって可動部材が締結方向にストロークし、両者の歯部が噛み合って締結する。
【0014】
電子制御カップリング16は、ドグクラッチ8が設けられた駆動分岐位置よりも下流位置に設けられ、クラッチ締結容量に応じて横置きエンジン1からの駆動力の一部を左右後輪19,20へ配分する駆動力配分装置である。
電子制御カップリング16の入力側クラッチプレートは、プロペラシャフト12に連結され、出力側クラッチプレートは、ドライブピニオン13に連結されている。
電子制御カップリング16は、リアデフハウジング24に内蔵されている。
電子制御カップリング16としては、例えば、図示はしないが、入力側と出力側のプレートを交互に複数配置した多板摩擦クラッチと、対向するカム面を有する固定カムピストン及び可動カムピストンと、対向するカム面間に介装されたカム部材と、を有するものを用いる。
電子制御カップリング16の締結時は、可動カムピストンを電動モータにより回転させると、ピストン間隔を拡大するカム作用により可動カムピストンが回転角に応じてクラッチ締結方向にストロークし、多板摩擦クラッチの摩擦締結力を増すことで行う。
電子制御カップリング16の解放時は、可動カムピストンを電動モータにより締結方向とは逆方向に回転させると、ピストン間隔を縮小するカム作用により可動カムピストンが回転角に応じてクラッチ解放方向にストロークし、多板摩擦クラッチの摩擦締結力を減じることで行う。
【0015】
また、電子制御カップリング16の締結力を制御するコントロールユニットC/U(駆動力配分制御装置)は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェイス等を含んで構成され、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を実行する所謂マイクロコンピュータである。
【0016】
例えば、コントロールユニットC/Uが、電子制御カップリング16に備えられた電動モータに供給される電流の指令値を制御することによる電子制御カップリング16の伝達可能な駆動力の制御等、すなわち駆動力伝達装置200による前後輪駆動に関する駆動力配分制御を実行する。
このため、駆動力配分制御を実行するために、駆動力伝達装置200には、左右前輪6,7及び左右後輪19、20それぞれの実際の回転速度を検出する車輪速センサ31、図示しないステアリングホイールの操舵角を検出する舵角センサ32、図示しないアクセルペダルの踏込量に対応するアクセル開度を検出するアクセル開度センサ33、及び前後輪駆動車両100の実際の横方向G(加速度)を検出するヨーレートセンサ34、及びその前後輪駆動車両100の実際の前後方向G(加速度)を検出する前後Gセンサ35等の各種センサが設けられており、それぞれのセンサから各車輪すなわち左右前輪6、7及び左右後輪19、20の回転速度を表す信号、ステアリングの操舵角を表す信号、アクセル開度を表す信号、車両の横Gを表す信号、及び車両の前後Gを表す信号等がコントロールユニットC/Uへ供給されるようになっている。
【0017】
図2は、実施形態1のコントロールユニットC/Uにおける制御のブロック図である。
コントロールユニットC/Uは、旋回判定部40、ステア判定部41、回転速度差判定部42、駆動力配分制御部43を備えている。
【0018】
旋回判定部40は、前後輪駆動車両100の旋回走行を判定する。
例えば、予め定められた関係から、車輪速センサ31により検出される各車輪すなわち左右前輪6、7及び左右後輪19、20のそれぞれの回転速度、舵角センサ32により検出されるステアリングホイールの操舵角、及びヨーレートセンサ33により検出される前後輪駆動車両100の横方向G等に基づいて、前後輪駆動車両100が旋回走行を行っているか否かを判定する。
また、より簡単には、舵角センサ32により検出されるステアリングホイールの操舵角およびその操舵角に対応するパワーステアリングの出力信号等の直進方向に対する角度が所定値以上であることをもって前後輪駆動車両100の旋回走行を判定するものであってもよい。
また、ヨーレートセンサ34により検出される前後輪駆動車両100の横方向Gが所定値以上であることをもって前後輪駆動車両100の旋回走行を判定するものであってもよい。
【0019】
ステア判定部41は、旋回判定部40により前後輪駆動車両100の旋回走行が判定される場合において、前後輪駆動車両100のニュートラルステア、オーバーステアまたはアンダーステアを判定する。
例えば、予め定められた関係から、舵角センサ32により検出されるステアリングホイールの操舵角、ヨーレートセンサ34により検出される前後輪駆動車両100の横方向G、車輪速センサ31により検出される各車輪の回転速度から算出される車速V等に基づいて、前後輪駆動車両100の目標ヨーレートを算出すると共に、目標ヨーレートとヨーレートセンサ34により検出される実際のヨーレートとの偏差を算出し、その偏差に応じて前後輪駆動車両100のニュートラルステア、オーバーステアまたはアンダーステアを判定する。
なお、上述のようにして算出される前後輪駆動車両100の目標ヨーレートとヨーレートセンサ34により検出される実際のヨーレートとの偏差が零ないし誤差の範囲内である場合には、前後輪駆動車両100はニュートラルステアと判定される。
【0020】
回転速度差判定部42は、ステア判定部41によりアンダーステアと判定される場合において、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNを算出し、所定回転速度差ΔNoと比較して、実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さいか否かを判定する。
【0021】
駆動力配分制御部43は、ドグクラッチ8が締結状態のときに、旋回判定部40、ステア判定部41、回転速度差判定部42の判定結果に基づき、電子制御カップリング16の電動モータへ指令信号を送り、前後輪駆動に関する駆動力配分制御を実行する。
すなわち、前後輪駆動車両100が直進走行中の場合には、直進走行用の駆動力配分を実行する。
また、前後輪駆動車両100が旋回走行中でニュートラルステアであれば、現状の駆動力配分を継続実行する。
また、前後輪駆動車両100が旋回走行中でオーバーステアであれば、左右後輪19、20への駆動力配分を目標ヨーレートとヨーレートセンサ34により検出される実際のヨーレートとの偏差に対応した所定量ΔTを減少させる。
さらに、前後輪駆動車両100が旋回走行中でアンダーステアであり、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さくない場合には、左右後輪19、20への駆動力配分を左右後輪19、20への駆動力配分を目標ヨーレートとヨーレートセンサ34により検出される実際のヨーレートとの偏差に対応した第1所定量ΔT1を増加させる。
また、逆に、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さい場合には、目標ヨーレートとヨーレートセンサ34により検出される実際のヨーレートとの偏差に対応した増加する第1所定量ΔT1を抑制して、左右後輪19、20への駆動力配分を実回転速度差ΔNと所定回転速度差ΔNoの偏差に対応した第2所定量ΔT2を減少させる。
例えば、実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さい場合の実回転速度差ΔNと所定回転速度差ΔNoの偏差が大きいほど、第2所定量ΔT2を大きくし、減少させる。
【0022】
図3は、実施形態1のコントロールユニットC/Uにおける制御処理の流れを示すフローチャートである。
このフローチャートは、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0023】
ステップS1では、前後輪駆動車両100が旋回走行中か否かを判定する。
旋回走行中であれば、ステップS2へ進み、旋回走行中でない、すなわち直進走行中であれば、制御を終了し、直進走行用の駆動力配分制御を実行する。
なお、直進走行用の駆動力配分は、具体的には、発進時には左右前輪と左右後輪の駆動力配分が50:50であり、車速Vが上昇するほど左右前輪の駆動力配分を増加させる。
ステップS2では、前後輪駆動車両100がニュートラルステアで旋回走行中か否かを判定する。
ニュートラルステアで旋回走行中でないときには、ステップS3へ進み、ニュートラルステアで旋回走行中のときには、制御を終了し、現状の駆動力配分制御を継続実行する。
【0024】
ステップS3では、前後輪駆動車両100がアンダーステアで旋回走行中か否かを判定する。
アンダーステアで旋回走行中でないとき、すなわち、オーバーステアで旋回走行中のときには、ステップS4へ進み、アンダーステアで旋回走行中のときには、ステップS5へ進む。
ステップS4では、前後輪駆動車両100がオーバーステアで旋回走行中なので、左右後輪19、20への駆動力配分を目標ヨーレートとヨーレートセンサ34により検出される実際のヨーレートとの偏差に対応した所定量ΔTを減少させる。
【0025】
ステップS5では、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さいか否かを判定する。
左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さくないときには、ステップS6へ進み、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さいときには、ステップS7へ進む。
なお、所定回転速度差ΔNoは、後述するステップ7にて左右後輪19、20への駆動力配分を減少させた状態の場合と左右後輪19、20への駆動力配分を減少させていない状態の場合とでヒステリシスを設けており、ハンチングを防止するようにしている。
【0026】
ステップS6では、左右後輪19、20への駆動力配分を左右後輪19、20への駆動力配分を目標ヨーレートとヨーレートセンサ34により検出される実際のヨーレートとの偏差に対応した第1所定量ΔT1を現状の駆動力配分である直進走行用の駆動力配分に対し、増加させる。
ステップS7では、左右後輪19、20への駆動力配分を実回転速度差ΔNと所定回転速度差ΔNoの偏差に対応した第2所定量ΔT2を現状の駆動力配分である直進走行用の駆動力配分に対し、減少させる。
例えば、実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さい場合の実回転速度差ΔNと所定回転速度差ΔNoの偏差が大きいほど、大きくした第2所定量ΔT2にて、左右後輪19、20への駆動力配分を減少させる。
これにより、前後輪駆動車両100が旋回走行中でアンダーステアであり、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さい場合には、左右後輪19、20への駆動力配分を実回転速度差ΔNと所定回転速度差ΔNoの偏差に対応した第2所定量ΔT2を減少させるようにしたので、前後輪駆動車両100のアンダーステアが助長することを抑制できる。
【0027】
図4は、実施形態1の所定回転速度差ΔNoの特性図である。
【0028】
横軸は、車速Vであり、縦軸は、所定回転速度差ΔNoである。
また、ヨーレートγ(γ1<γ2<γ3)の大きさに対応して、3種類の所定回転速度差ΔNoの特性を示している。
【0029】
ヨーレートγを固定してヨーレートγ1の特性だと、所定回転速度差ΔNoは車速Vが大きくなるほど、大きく設定している。
また、車速Vを固定して車速V1の特性だと、所定回転速度差ΔNoはヨーレートγ(γ1<γ2<γ3)が大きくなるほど、大きく設定している。
すなわち、所定回転速度差ΔNoは、車速V、ヨーレートγの一方が大きいほど大きく設定してもよいし、車速Vおよびヨーレートγの両方が大きいほど、大きく設定してもよい。
これにより、前後輪駆動車両100の旋回特性に対応して所定回転速度差ΔNoを設定しているので、より前後輪駆動車両100のアンダーステアが助長することを抑制できる。
なお、上述したように、所定回転速度差ΔNoは、ヒステリシスを設けており、ハンチングを防止するようにしている。
また、ヨーレートγの代わりに、舵角センサ32により検出されるステアリングホイールの操舵角を用いてもよい。
【0030】
以上説明したように、実施形態1にあっては以下に列挙する効果を奏する。
(1)前後輪駆動車両100が旋回走行中でアンダーステアであり、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さい場合には、左右後輪19、20への駆動力配分を実回転速度差ΔNと所定回転速度差ΔNoの偏差に対応した第2所定量ΔT2を減少させるようにした。
よって、前後輪駆動車両100のアンダーステアが助長することを抑制できる。
【0031】
(2)所定回転速度差ΔNoは、車速Vおよび/またはヨーレートγが大きいほど、大きく設定するようにした。
よって、前後輪駆動車両100の旋回特性に対応して所定回転速度差ΔNoを設定するようにしたので、より前後輪駆動車両100のアンダーステアが助長することを抑制できる。
【0032】
〔実施形態2〕
図5は、実施形態2のコントロールユニットC/Uにおける制御処理の流れを示すフローチャートである。
このフローチャートは、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0033】
実施形態2の基本的な構成は実施形態1と同じであるため、実施形態1と相違する部分のみ説明する。
すなわち、ステップS5とステップS7間に、ステップS11~ステップS14を追加している。
【0034】
ステップS11では、ステップS5で左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さいと判定された後、タイマのカウントを開始する。
ステップS12では、タイマカウント値t1が所定時間t0以上か否かを判定する。
タイマカウント値t1が所定時間t0以上のときには、ステップS13へ進み、タイマカウント値t1が所定時間t0以上でないときには、ステップS12へ戻る。
ステップS13では、再度、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さいか否かを判定する。
左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さくないときには、ステップS6へ進み、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さいときには、ステップS14へ進む。
ステップS14では、タイマをリセットし、ステップS7へ進む。
すなわち、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さいと判定したときに、すぐに左右後輪19、20への駆動力配分を実回転速度差ΔNと所定回転速度差ΔNoの偏差に対応した第2所定量ΔT2を減少させるのではなく、所定時間t0の間、現状の駆動力配分を維持し、所定時間t0経過後に、再度、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さいか否かを判定するようにした。
これにより、路面の状況等の外乱による誤判断を抑制することができる。
【0035】
以上説明したように、実施形態2にあっては、実施形態1の効果に加え、以下の効果を奏する。
(1)左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さいと判定したときに、すぐに左右後輪19、20への駆動力配分を実回転速度差ΔNと所定回転速度差ΔNoの偏差に対応した第2所定量ΔT2を減少させるのではなく、所定時間t0の間、現状の駆動力配分を維持し、所定時間t0経過後に、再度、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが所定回転速度差ΔNoより小さいか否かを判定するようにした。
よって、路面の状況等の外乱による誤判断を抑制することができる。
【0036】
〔実施形態3〕
図6は、実施形態3のコントロールユニットC/Uにおける制御処理の流れを示すフローチャートである。
このフローチャートは、所定の演算周期で繰り返し実行される。
【0037】
実施形態3の基本的な構成は実施形態1と同じであるため、実施形態1と相違する部分のみ説明する。
すなわち、所定回転速度差ΔNoを第1所定回転速度差ΔNo1と第1所定回転速度差ΔNo1より小さい第2所定回転速度差ΔNo2として設定している。
【0038】
ステップS21では、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが第1所定回転速度差ΔNo1より小さいか否かを判定する。
左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが第1所定回転速度差ΔNo1より小さくないときには、ステップS6へ進み、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが第1所定回転速度差ΔNo1より小さいときには、ステップS22へ進む。
ステップS22では、現状の駆動力配分による後輪駆動力を維持する。
ステップS23では、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが第2所定回転速度差ΔNo2より小さいか否かを判定する。
左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが第2所定回転速度差ΔNo2より小さくないときには、ステップS21へ戻り、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが第2所定回転速度差ΔNo2より小さいときには、ステップS7へ進む。
すなわち、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが第1所定回転速度差ΔNo1より小さいと判定したときに、すぐに左右後輪19、20への駆動力配分を実回転速度差ΔNと所定回転速度差ΔNo1の偏差に対応した第2所定量ΔT2を減少させるのではなく、左右前輪6、7の平均の回転速度と左右後輪19、20の平均の回転速度の実回転速度差ΔNが第2所定回転速度差ΔNo2より小さいか否かを判定するようにした。
これにより、路面の状況等の外乱による誤判断を抑制することができる。
【0039】
以上説明したように、実施形態3にあっては、実施形態2と同様の効果を奏する。
【0040】
(他の実施形態)
以上、本発明を実施するための形態を、実施形態に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施形態では、駆動力源をエンジンとして説明したが、駆動力源は電動モータとしてもよい。
また、実施形態では、主駆動輪を左右前輪、副駆動輪を左右後輪として説明したが、主駆動輪を左右後輪、副駆動輪を左右前輪としてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6