(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】アンカー筋打設状態確認装置
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20221025BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
E04G23/02 D
E04G21/12 105Z
E04G23/02 A
(21)【出願番号】P 2018164093
(22)【出願日】2018-09-01
【審査請求日】2021-08-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年3月2日株式会社トラスト本社工場において、あと施工アンカー(注入方式)施工技量確認試験を実施
(73)【特許権者】
【識別番号】508284850
【氏名又は名称】株式会社トラスト
(74)【代理人】
【識別番号】100129986
【氏名又は名称】森田 拓生
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博司
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003503(JP,A)
【文献】特開2018-035510(JP,A)
【文献】特開2013-029002(JP,A)
【文献】特開平04-327624(JP,A)
【文献】特公平02-017503(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04G 21/12
E04B 1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口した内部透過性の充填管と、
複数本の充填管を同方向に整列させて連持すると共に各充填管の開口に合わせた複数の充填口を特定方向に連設した連ホルダーと、
連ホルダーの周側面の一面以上をまとめて覆う遮蔽板と、
連ホルダーを中空位置に支持するスタンドと、を備えた
アンカー筋打設状態確認装置であって、
連ホルダーの前記特定方向の先側であって、各充填口から離間した位置に、各充填管内に設置したアンカー筋をまとめて保持するアンカー筋保持具を備えたことを特徴とする、
アンカー筋打設状態確認装置。
【請求項2】
アンカー筋保持具は、連ホルダーから特定方向を向いて延出した、一又は複数の保持アームと、保持アームによって連ホルダーと並行に取り外し可能に固定された連保持プレートと、を具備してなり、
連保持プレートには、各充填口と対向する位置に合わせた係止凹部が、プレートの側辺に沿って離間形成される、請求項1に記載のアンカー筋打設状態確認装置。
【請求項3】
連保持プレートにおいて各充填口と対向するプレート面、或いは、連ホルダーにおいて各充填口が連設された前記特定方向のホルダー面には、充填管に注入する充填剤の付着汚染を防ぐ防汚処理層が表面形成されてなる、請求項2に記載のアンカー筋打設状態確認装置。
【請求項4】
前記防汚処理層は、表面が離型処理された各層一枚ずつを剥離可能な、重畳貼り付けされた複数層の離型紙からなる、請求項3に記載のアンカー筋打設状態確認装置。
【請求項5】
スタンドの上部であって連ホルダー又は遮蔽板の両側部との間に、
連ホルダーの角度を調整し得ると共に所定の調整角度を保持し得る角度調整器を介設したことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のアンカー筋打設状態確認装置。
【請求項6】
前記連ホルダーは、整列させた各充填管の上半部を跨ぐ上枠板とその両側部から屈曲して連接された側枠とからなる略コの字型断面の上枠ホルダーと、整列させた各充填管の下半部を連ねて跨ぐ下枠板とその両側部から屈曲して連接された側枠とからなる下枠ホルダーと、が上下に組み合されて構成され、
前記角度調整器は、上枠ホルダーの側枠又は下枠ホルダーの側枠のいずれかに等間隔形成されたピン孔群と、ピン孔群のいずれかのピン孔に退避位置から突入可能な固定ピンと、を具備してなり、
前記固定ピンが、スタンドの上部に固定されたラッチフレームによって退避位置ないし突入位置に移動可能に保持される、請求項5に記載のアンカー筋打設状態確認装置。
【請求項7】
前記連ホルダーは、整列させた各充填管の上半部を跨ぐ上枠板とその両側部から屈曲して連接された側枠とからなる略コの字型断面の上枠ホルダーと、整列させた各充填管の下半部を連ねて跨ぐ下枠板とその両側部から屈曲して連接された側枠とからなる下枠ホルダーと、が上下に組み合されて構成され、
また、前記スタンドの上端部が、上枠ホルダーの側枠又は下枠ホルダーの側枠のいずれかに外接してなり、
前記角度調整器は、前記スタンドの上端部と、これに外接するいずれかの側枠とをまとめて貫通する貫通バーを具備し、また、当該貫通バーの一端を保持すると共に、貫通バーの長さを調節する調節レバーを具備してなり、
調節レバーによって貫通バーの長さを短く設定することで、スタンドの上端部と側枠とを圧接させて、スタンドに対する連ホルダーの保持角度を任意の角度に保持する、請求項5又は6に記載のアンカー筋打設状態確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木工事、建築工事におけるあと施工アンカーの品質管理、施工管理において用いることのできる、あと施工アンカーのアンカー筋打設状態確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
あと施工アンカーの施工においては、ドリル穿穴したアンカー下地穴に充填剤(グラウト)を空気溜まりが生じないように注入し、注入した充填剤(グラウト)入りの穴内に、アンカー筋を回転させながら真直ぐ打設する必要がある。これらの充填剤の充填やアンカー筋の設置挿入が不適切な場合には、施工後のアンカー抜けや破損といった事故が生じ得るため、これらのグラウト注入やアンカー打設には一定の技量が求められる。充填剤の充填・アンカー筋の挿入を含む総合的なアンカー設置技能を訓練し、或いは、技能審査によって技能の成熟度を確認することは、アンカー工事の品質管理や施工管理において重要となる。しかしながら、従来、アンカー筋設置技能の向上や技能の成熟度を確認する基準やそのための装置は存在しなかった。
【0003】
このようなグラウト注入状況を確認する方法として、従来、ブリーディング率の測定、グラウト硬化体のひび割れの目視確認を行うPCグラウト組成物の発明が開示される(特許文献1参照)。このPCグラウト組成物の発明の要求性能として、PC鋼材を腐食から保護することと、PC鋼材と部材コンクリートの間の一体化を図ることが挙げられる。同発明において、これらの機能は、PVC製透明シース管に注入された後、ブリーディング率の測定、グラウト硬化体のひび割れの目視確認を行うことにより確認されている(特許文献1参照)。
【0004】
また従来、ブリージングテスト装置、及びブリージングテスト方法として、下端部にグラウトを注入する注入口を有する透明な鉛直管を備えたテスト装置が開示される(特許文献2参照)。これは、PC構造物のケーブルシース内への真空引き工程を含むグラウト注入工法におけるブリージングテスト装置である。
【0005】
またほかに従来、ロックボルト等の定着材において、注入式ロックボルト3を挿入した透明なパイプ2を、注入パイプ7につなぎ、定着材5をモルタル圧入ポンプ8で圧送し、排出孔4から注入して注入具合を観察する方法が開示される(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-51741号公報
【文献】特開2005-232867号公報
【文献】特公平02-017503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら上記はいずれも、注入材の充填状況を外側から視認可能にした構成を開示するものに過ぎず、アンカー鉄筋の打設の技能や技量を確認するものではなかった。特に、アンカー下地穴へのグラウトの注入にとどまらず、アンカー筋の打設挿入の状態を確認するものは存在しなかった。また、あと施工アンカーは必ずしも床面に打設するだけでなく、壁面、或いは天井面に打設する場合があり、特に、アンカー下地穴が壁面或いは天井面などに形成されている場合は、より高度な打設技能が必要となる。ところが、アンカー下地穴の角度の可変に対応した状態確認装置や技能検査用装置は存在しなかった。
【0008】
そこで本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、アンカー打設者のグラウト注入の技量を確認するための審査や技能訓練で使用することのできる、アンカー打設状況の充填確認用の装置を提供することを目的とする。特に、アンカー下地穴へのグラウトの注入にとどまらず、アンカー筋の打設挿入の状態を確認し得る装置を提供すること、また、アンカー下地穴の角度の可変に対応した状態確認装置や技能検査用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決すべく、本発明に係るアンカー筋打設状態確認装置は以下[1]~[7]の手段を講じている。
[1]本発明のアンカー筋打設状態確認装置は、
一端が開口した内部透過性の充填管1と、
複数本の充填管1を同方向に整列させて連持すると共に各充填管1の開口に合わせた複数の充填口21Hを特定方向に連設した連ホルダー2と、
連ホルダー2の周側面の一面以上をまとめて覆う遮蔽板3と、
連ホルダー2を中空位置に支持するスタンド5と、を備えたアンカー筋打設状態確認装置であって、
連ホルダー2の前記特定方向の先側であって、各充填口21Hから離間した位置に、各充填管1内に設置したアンカー筋Aをまとめて保持するアンカー筋保持具6を備えたことを特徴とする。
上記手段を講じることで、各充填管1内に充填剤Gを充填してさらにアンカー筋Aを充填剤G内に挿入設置するまでという、実際のアンカー筋Aの打設状態を再現することができる。充填管1の内部透過性部分、及び充填口21Hの表面状態によって、充填剤Gの充填状態に加えてアンカー筋Aの挿入(設置)状態を内部視認することができ、これによって設置技能の度合いを確認することができる。
【0010】
[2]本発明の前記アンカー筋打設状態確認装置においては、
アンカー筋保持具6は、連ホルダー2から特定方向を向いて延出した、一又は複数の保持アーム62と、保持アーム62によって連ホルダー2の各充填口21の形成面と並行に取り外し可能に固定された連保持プレート61と、を具備してなり、
連保持プレート61には、各充填口21Hと対向する位置に合わせた係止凹部61Cが、プレート61の側辺に沿って離間形成され、
各充填管1内に設置したアンカー筋Aの露出先部を、各係止凹部61Cに係止して固定し得ることが好ましい。
上記手段を講じることで、各充填管1内に充填剤Gを充填してさらにアンカー筋Aを充填剤G内に挿入設置した状態を維持することができる。また、連保持プレート61が連ホルダー2から離間形成されるため、充填剤Gの充填やアンカー筋Aの設置作業の際にの内部透過性部分、及び充填口21Hの表面状態によって、充填剤Gの充填状態に加えてアンカー筋Aの挿入(設置)状態を内部視認することができ、これによって設置技能の度合いを確認することができる。
さらには連保持プレート61のプレート面上に配置されるクリップCを、係止凹部61Cの形成数だけ備えることが好ましい。クリップCの片側面は、連保持プレート61のプレート面に沿って平らに形成される。
【0011】
[3]本発明の前記いずれかのアンカー筋打設状態確認装置においては、
アンカー筋保持具6は、連ホルダー2の各充填口21の形成面と並行に固定された連保持プレート61を具備してなり、
連保持プレート61において各充填口21Hと対向するプレート面、或いは、連ホルダー2において各充填口21Hが連設された前記特定方向のホルダー面には、充填管1に注入する充填剤Gの付着汚染を防ぐ防汚処理層61S/21Cが表面形成されてなることが好ましい。
【0012】
[4]本発明の前記いずれかのアンカー筋打設状態確認装置においては、
各充填口21Hと対向する連保持プレート61のプレート面部分、或いは、各充填口21Hが連設された連ホルダー2の前記特定方向のホルダー面部分には、充填管1に注入する充填剤Gの付着汚染を防ぐ防汚処理層61S/21Cが表面形成されてなり、
前記防汚処理層61Sは、表面が離型処理された各層一枚ずつを剥離可能な、重畳貼り付けされた複数層の離型紙からなることが好ましい。
【0013】
[5]本発明の前記いずれかのアンカー筋打設状態確認装置において、
スタンド5の上部であって連ホルダー2又は遮蔽板3の両側部との間には、連ホルダー2の角度を調整し得ると共に所定の調整角度を保持し得る角度調整器4を介設したことを特徴とする。
角度調整器4によって、アンカー下地穴の角度の可変に対応して充填状況を確認し得る装置を提供することも可能となる。これにより、アンカー下地穴の角度によってアンカー筋の打設技能の度合いが変化するのにも対応することができ、角度に応じた技能確認が可能となる。
【0014】
[6]本発明の前記いずれかのアンカー筋打設状態確認装置において、
前記連ホルダー2は、整列させた各充填管1の上半部を跨ぐ上枠板とその両側部から屈曲して連接された側枠22Sとからなる略コの字型断面の上枠ホルダー22と、整列させた各充填管1の下半部を連ねて跨ぐ下枠板とその両側部から屈曲して連接された側枠21Sとからなる下枠ホルダー21と、が上下に組み合されて構成され、
前記角度調整器4は、上枠ホルダー22の側枠22S又は下枠ホルダー21の側枠21Sのいずれかに等間隔形成されたピン孔4H群と、ピン孔4H群のいずれかのピン孔4Hに退避位置から突入可能な固定ピン4Pと、を具備してなり、
前記固定ピン4Pが、スタンド5の上部に固定されたラッチフレーム4PFによって退避位置ないし突入位置に移動可能に保持されることが好ましい。
【0015】
[7]本発明の前記いずれかのアンカー筋打設状態確認装置において、
前記連ホルダー2は、整列させた各充填管1の上半部を跨ぐ上枠板とその両側部から屈曲して連接された側枠22Sとからなる略コの字型断面の上枠ホルダー22と、整列させた各充填管1の下半部を連ねて跨ぐ下枠板とその両側部から屈曲して連接された側枠21Sとからなる下枠ホルダー21と、が上下に組み合されて構成され、
また、前記スタンド5の上端部が、上枠ホルダー22の側枠22S又は下枠ホルダー21の側枠21Sのいずれかに外接してなり、
前記角度調整器4は、前記スタンド5の上端部と、これに外接する側枠22S又は21Sのいずれかとをまとめて貫通する貫通バー4Bを具備し、また、当該貫通バー4Bの一端を保持すると共に、貫通バー4Bの長さを調節する調節レバー4Lを具備してなり、
調節レバー4Lによって貫通バー4Bの長さを短く設定することで、スタンド5の上端部と側枠22Sとを圧接させて、スタンド5に対する連ホルダー2の保持角度を任意の角度に保持することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アンカー打設者の充填剤注入の技量を確認するための審査や技能訓練で使用することのできる、アンカー打設状況の充填確認用の装置を提供することができる。特に、アンカー下地穴への充填剤の注入にとどまらず、アンカー筋の打設挿入の状態を確認し得る装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態1に係るアンカー筋打設状態確認装置のうち保持具を除いた構成の分解斜視図である。
【
図2】実施形態1に係るアンカー筋打設状態確認装置のうち充填管及び遮蔽板を除いた構成の斜視図である。
【
図4】実施形態1に係るアンカー筋打設状態確認装置のうち保持具を除いた構成の斜視図である。
【
図5】実施形態1に係るアンカー筋打設状態確認装置であって保持具を含む構成の、1本充填状態例の斜視図である。
【
図7】
図6の構成において、保持角度を変更した各状態(a)(b)(c)(d)の側面図である。
【
図12】実施形態2に係るアンカー筋打設状態確認装置であって保持具を含む構成の、全本充填状態例の斜視図である。
【
図13】実施形態2に係るアンカー筋打設状態確認装置の、通常状態(a)、土台変形状態(b)、ストック状態(c)の各状態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施例に係るアンカー筋打設状態確認装置について説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。また、各構成名称に続けて記載する数字列乃至アルファベット列は、各実施形態の構成の理解のために便宜的に付された符号であり、これによって構成の概念や形状を限定する趣旨ではない。以下に説明する各実施形態に基づき、本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0019】
(実施形態1のアンカー筋打設状態確認装置の構成)
始めに、実施形態1のアンカー筋打設状態確認装置の構成について
図1~
図11を参照して説明する。本発明の実施形態1のアンカー筋打設状態確認装置は、
接地して上方に伸びる左右一対の各スタンド5と、
左右のスタンド5によってこれらの間に水平支持され、水平支持された幅方向に亘って複数のホルダーバンド23Bを有する連ホルダー2と、
連ホルダー2の各ホルダーバンド23Bのそれぞれに整列して取り付け可能な、下端が開口した管容器からなる複数の充填管1と、
スタンド5に対する連ホルダー2の水平支持の角度を回転調整可能な角度調整器4と、
連ホルダー2の下方に枠形成され、各充填管の開口に挿入されたアンカー筋Aをまとめて係止するアンカー筋保持具6と、
全てのパイプ容器の表面側を隠す遮蔽板3で構成された遮蔽具と、を備える。
【0020】
(実施形態1)
本発明の実施形態1アンカー筋打設状態確認装置は、
一端が開口した内部透過性の充填管1と、
複数本の充填管1を同方向に整列させて連持すると共に各充填管1の開口に合わせた複数の充填口21Hを特定方向に連設した連ホルダー2と、
連ホルダー2の周側面の一面以上をまとめて覆う遮蔽板3と、
スタンド5の上部であって連ホルダー2又は遮蔽板3の両側部との間に介設した、連ホルダー2の角度を調整し得ると共に所定の調整角度を保持し得る角度調整器4と、
連ホルダー2を中空位置に角度可変可能に支持するスタンド5と、
連ホルダー2の前記特定方向の先側であって、各充填口21Hから離間した位置に、各充填管1内に設置したアンカー筋Aをまとめて保持するアンカー筋保持具6と、を備えてなる。
【0021】
上記構成のうちの特徴のひとつとして、アンカー筋保持具6は、連ホルダー2から特定方向を向いて延出した、一又は複数の保持アーム62と、保持アーム62によって連ホルダー2の各充填口21の形成面と並行に取り外し可能に固定された連保持プレート61と、を具備してなる。
連保持プレート61には、各充填口21Hと対向する位置に合わせた係止凹部61Cが、プレート61の側辺に沿って離間形成され、各充填管1内に設置したアンカー筋Aの露出先部を、各係止凹部61Cに係止して固定し得る。
【0022】
また上記構成のうちの特徴のひとつとして、連保持プレート61のプレート面上に配置されるクリップCを、係止凹部61Cの形成数だけ備えることが好ましい。クリップCの片側面は、連保持プレート61のプレート面に沿って平らに形成される。また連保持プレート61において各充填口21Hと対向するプレート面、或いは、連ホルダー2において各充填口21Hが連設された前記特定方向のホルダー面には、充填管1に注入する充填剤Gの付着汚染を防ぐ防汚処理層61S/21Cが表面形成されてなる。
【0023】
また上記構成のうちの特徴のひとつとして、各充填口21Hと対向する連保持プレート61のプレート面部分、或いは、各充填口21Hが連設された連ホルダー2の前記特定方向のホルダー面部分には、充填管1に注入する充填剤Gの付着汚染を防ぐ防汚処理層61S/21Cが表面形成されてなり、
前記防汚処理層61S/21Cのそれぞれは、表面が離型処理された各層一枚ずつを剥離可能な、重畳貼り付けされた複数層の離型紙、或いは、表面静摩擦の小さい液体又はゲル状滑剤等を塗布した滑面塗付層のいずれか又はこれらの組合せからなる。
【0024】
また上記構成のうちの特徴のひとつとして、前記連ホルダー2は、整列させた各充填管1の上半部を跨ぐ上枠板とその両側部から屈曲して連接された側枠22Sとからなる略コの字型断面の上枠ホルダー22と、整列させた各充填管1の下半部を連ねて跨ぐ下枠板とその両側部から屈曲して連接された側枠21Sとからなる下枠ホルダー21と、が上下に組み合されて構成され、
前記角度調整器4は、上枠ホルダー22の側枠22S又は下枠ホルダー21の側枠21Sのいずれかに等間隔形成されたピン孔4H群と、ピン孔4H群のいずれかのピン孔4Hに退避位置から突入可能な固定ピン4Pと、を具備してなり、前記固定ピン4Pが、スタンド5の上部に固定されたラッチフレーム4PFによって退避位置ないし突入位置に移動可能に保持される(
図3)。
【0025】
また上記構成のうちの特徴のひとつとして、前記スタンド5の上端部が、上枠ホルダー22の側枠22S又は下枠ホルダー21の側枠21Sのいずれかに外接してなり、
前記角度調整器4は、前記スタンド5の上端部と、これに外接する側枠22S又は21Sのいずれかとをまとめて貫通する貫通バー4Bを具備し、また、当該貫通バー4Bの一端を保持すると共に、貫通バー4Bの長さを調節する調節レバー4Lを具備してなり、
調節レバー4Lによって貫通バー4Bの長さを短く設定することで、スタンド5の上端部と側枠22Sとを圧接させて、スタンド5に対する連ホルダー2の保持角度を任意の角度に保持する。
【0026】
以下、実施形態の各構成について詳述する。
(充填管1)
充填管1は内部透過性の円筒体(例えば、光透過性材料で構成されたクリアパイプ)で構成され、下端が開口している。具体的には
図1に示す状態で、上部がパイプ底板、下部がパイプ開口となっており、この開口からアンカー鉄筋Aを挿入可能となっている。実施例では側面全体が光透過性材料で構成されているが、周方向のうち部分的な方向のみが光透過性材料で構成されており、他の方向が内部視認できないよう遮蔽されたものでもよい。
【0027】
(連ホルダー2)
連ホルダー2は、縦向きにした複数の充填管1を並べて保持するホルダーを備えたものであればよく、その両側部がスタンド5によって支えられる。実施例の連ホルダー2は、正面視略コの字枠状の下枠ホルダー21と、同じく正面視略コの字枠状の上枠ホルダー22とを上下に組み合わせることで、正面視横長方形枠状に構成される。そして、この方形枠状の内部にて複数の充填管1を幅方向に連持するホルダーを備える。実施例のホルダーは幅方向に亘る板状の背枠23と背枠23の前面に等間隔に取り付けられた複数のホルダーバンド23Bとから構成される(
図2等)。
【0028】
下枠ホルダー21は下枠板21Pの下面が滑面層であるコーティング21Cとなっており、防汚層を構成している。また下面には充填管1の本数に合わせた充填口21Hが形成される下側枠21Sは下枠板21Pの両側部から屈曲して立設形成される。
【0029】
上枠ホルダー22はL字断面の上枠板22Pとその両側部から屈曲して立設形成された上側枠22Sとから構成される。但し上枠板22Pは正面側に立設板片を有したL字断面板からなることで、アンカー筋を打設したときに変形しないだけの剛性を有している。また側枠22Sには調整溝22SLが形成されており、この調整溝22SLを固定具で挿通固定させて組み合わせることで、上枠と下枠の組合せ位置を上下に調節可能としている(
図2等)。
【0030】
(遮蔽板3)
実施例の遮蔽具は、連ホルダー2の四方側周を囲う遮蔽板3からなる。この遮蔽板3は、2枚ずつの正背面板31と側板32とからなり、四方枠板によって平面視矩形の遮蔽部を構成する。但し、側板32の下半部は凹状に切断された側凹部32Hとなっており、下枠ホルダー21と取り外し可能に組み合わせられる。側凹部32Hの凹部形状は側板21Sの板形状に対応しており、下枠ホルダー21の側板21Sの上方から嵌合させることで、均等高さの四方枠板を構成する(
図1、
図4等)。正背面板31には横型のグリップ3Gが固定される。本実施例の側板32、正背面板31は共に、全面が光透過性のない不透明板で構成される。
【0031】
遮蔽具の他の形態として、対向する正背面板31のうち片側の一枚を透明のものにしてもよく、或いは、正背面板31の片側の一枚の一部分に、充填管1の固定箇所に対応した複数の縦型の覗き窓を形成したものとしてもよい。また、対向する正背面板31に表示板の差し込み部を形成し、表示板によってアンカー打設作業の対象となる充填管1の特定を行うものとしてもよい。その他の遮蔽具の形態として、板体ではなく遮蔽シートや遮蔽カーテンを張設してもよく、側周部を覆う袋状、或いは倒立容器状の遮蔽材を上方から被せてもよい。
【0032】
(角度調整器4)
角度調整器4は、連ホルダー2の側部とスタンド5の上部との間に介設された、連ホルダーの保持角度を水平軸周りに回転調整する機構である。具体的には
図3に示すように、
スタンド5の上部にて、連ホルダー2の下枠ホルダー21の側枠21Sに固定された貫通バー4Aと、貫通バー4Aの先(外側端)に螺合して取り付けられたレバー4Nとを具備する圧接構造と、下枠ホルダー21の側枠21Sの水平軸周りを円状方向に離間形成されたピン孔4H群とこれに挿入される角度固定ピン4Pとを具備する角度固定構造と、からなる。
【0033】
圧接構造は、側枠21Sの内面から固定された固定ナット4ANによって貫通バー4Aが形成されており、この貫通バー4Aが、側枠21S及びこれに近接するスタンド5の上端支部54を貫通し、その外側方の先部に、棒状の
調節レバー4L及び円柱状の圧接具4LHを有した圧接ネジ4LBが螺入してなる。
調節レバー4Lを回転操作して圧接螺子4LBの螺入量を調整することで、貫通バー4Aから圧接具4LHまでの構成材の長さが可変調整され、これによって、スタンド5の外側部から短円柱体からなる圧接具4LHが圧接して、連ホルダー2とスタンド5とが圧接固定される。但し実施例では、側枠21Sの外面と上端支部54の内面との間に、貫通バー4A周りを囲うワッシャ4AWが介設され、また、四方枠状の上端支部54の内側枠板の内面であって貫通バー4Aの貫通部分には、貫通バー4Aを非回転保持する保持リング4AVが介設される(
図3)。
【0034】
角度固定構造は、貫通バー4Aの軸周りの同一円上を中心とした多数のピン孔4Hが下枠21Sの側面に貫通形成されており、連ホルダー2を軸周りに回転させることで、このうちのいずれかのピン孔4Hが上端支部54の背面側に位置するようにしている。また、この上端支部54の背面側には、角度固定ピン4Pが、ラッチフレーム4PFによってスライド可能に設けられる。角度固定ピン4Pはピン操作片4PLが分枝形成されており、ラッチフレーム4PFには、このピン操作片4PLの移動位置を屈曲線の奇跡上にガイドするガイド溝4PDが形成される。ピン操作片4PLの操作によって角度固定ピン4Pの先部が、ピン孔4H内に突入ないし退避する。
【0035】
(スタンド5)
スタンド5は、キャスター付きの水平脚部51と、水平脚部51から立設した枠状の支柱52と、支柱52の上方へ延長可能に突出した延長支柱53と、延長支柱53の上端に取り付けられた四方短枠状の上端支部54とから構成される。延長支柱53には一側面の長さ方向に沿って調整溝53Dが形成され、支柱52の枠状の内部の図示しないガイド板と嵌合しながら延長または短縮する。延長支柱の延長長さは、調整穴56Hへ挿入されるボルト56B、ボルト56Bに螺合するナット56Nによって規定される。
【0036】
(アンカー筋保持具6)
アンカー筋保持具6は、連ホルダー2の下部に離間して取り外し可能に設けられる、打設したアンカー筋Aの連保持具である。アンカー筋保持具6を取り外した状態で技能試験を行い、アンカー打設直後にアンカー筋保持具6を取り付けてもよいし、或いは、アンカー筋保持具6を取り付けた状態で技能試験を行ってもよい。アンカー筋保持具6は少なくとも、連ホルダー2の下方へ、連ホルダー2の保持軸と並行に設置した連保持プレート61を離間配置してなる。実施例では、下枠ホルダー21の下枠板21Pの両端に設けた取付け穴62Hに、下方へ伸びる保持アーム62を貫通固定し、左右の保持アーム62によって連保持プレート61を水平保持している。連保持プレート61は、複数の充填口21Hの形成位置に対応して、アンカー筋Aを係止するための係止凹部61Cが形成される。係止凹部61Cの内面はアンカー筋Aの表面段差が係止しやすいよう多数の横溝が形成されることが好ましい。また、固定クリップCによって各本のアンカー筋A係止凹部61C周りに載置可能としてもよい(
図12)。実施例の連保持プレート61の上面には、こぼれた充填剤の付着時の汚染を防ぐべく、表面を離型処理した粘着シートからなる防汚シート61Sを多数層状に貼り付けておき、施工試験後に一枚ずつ剥して使用するものとしている。
【0037】
[使用方法](技能試験方法例)
次に、実施例に係るアンカー筋打設状態確認装置の動作確認試験について説明する。
充填管1たる試験用クリアパイプ容器は、上部がパイプ底板、下部がパイプ開口となっており、この開口からアンカー鉄筋が中空挿入可能となっている。
受験者は、遮蔽具によって充填管1が側面遮蔽された本装置の表側(
図1にて遮蔽板3のグリップ9が見える側)から充填剤作業を行う。具体的には、指定された試験用パイプ開口からパイプ容器の開口となる充填口内に充填剤Gたるグラウト(アンカー定着剤)を注入し、その後、アンカー筋Aを挿入設置する。
但し、受験者側からは、ブラインドシートによって、試験用クリアパイプ容器の内部の充填状況は確認できない。試験官(審査官)は、本器具の裏側から、受験者の注入作業をチェックして採点する。
【0038】
(実施形態2)
図12、13に実施形態2のアンカー筋打設状態確認装置を示す。実施形態2のアンカー筋打設状態確認装置は支柱52下部と水平脚部51との間にベアリング52Bを介設させており、連結棒55の連結長さの調整によって、左右並行の通常状態(S1)の水平脚部51が、スタンド5の軸周りに略45度水平回転した変形状態(S2)へと状態遷移可能となっている(
図12破線及び
図13(b)参照)。水平回転した変形状態(S2)では平面視ハの字状態に片側開脚しており、この変形状態(S2)のアンカー筋打設状態確認装置を多数重ねわせることで、
図13(c)に示すようにコンパクトなスタック形態となる。
【0039】
(産業上の利用可能性)
本発明の試験装置は簡便に移動設置でき、かつ、一定の精度をもってアンカー筋の打設試験又は打設試行訓練を行うことができることから、アンカー打設技能の確認試験又は技能訓練に用いることで、打設技能の管理を行うことが可能である。また特に角度可変調整機能と打設後のアンカー筋の保持機能とを合わせて有することで、実際の設置現場に近い状況を再現することが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
充填管1
連ホルダー2
下枠ホルダー21
コーティング21C
充填口21H
下枠板21P
下側枠21S
上枠ホルダー22
上枠板22P
上側枠22S
背枠23
ホルダーバンド23B
遮蔽板3
側板32
正面板31
側凹部32H
グリップ3G
角度調整器4
貫通バー4A
固定ナット4AN
ワッシャ4AW
保持リング4AV
角度固定ピン4P
調節レバー4L
圧接ネジ4LB
圧接具4LH
ピン孔4H
ラッチフレーム4PF
ガイド溝4PD
ピン操作片4PL
スタンド5
水平脚部51
支柱52
ベアリング52B
延長支柱53
調整溝53D
上端支部54
連結棒55
ボルト56B
調整穴56H
ナット56N
アンカー筋保持具6
連保持プレート61
防汚シート61S
係止凹部61C
保持アーム62
取付け穴62H
固定クリップC
アンカー筋A
充填剤G