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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】融雪車
(51)【国際特許分類】
   E01H 5/10 20060101AFI20221025BHJP
   E01H 5/00 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
E01H5/10 A
E01H5/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021075598
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022034512
(43)【公開日】2022-03-03
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2020137783
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520312692
【氏名又は名称】日本特殊車輌サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀夫
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-308418(JP,A)
【文献】特開2006-336303(JP,A)
【文献】特開平05-247914(JP,A)
【文献】特許第4939314(JP,B2)
【文献】実開昭63-181615(JP,U)
【文献】特開2006-125137(JP,A)
【文献】実開平05-088658(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 5/10
E01H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走する車両と、
前記車輌に搭載されている水槽と、
前記車輌に搭載され前記水槽の水を加熱して60℃以上の熱水にして10MPa以上の高圧で供給する1台または複数台の高圧熱水供給装置と、
前記車両の前方寄りの下面に設けられている前方噴射ユニットと、を備え、
前記前方噴射ユニットは前記車両の車幅方向に50cm以下の間隔で並んで配置されている複数個の噴射ノズルからなり、
前記車両を走行させながら、前記高圧熱水供給装置から複数個の前記噴射ノズルに熱水を供給すると、それぞれの前記噴射ノズルから噴射される熱水が車幅方向における幅が8cm以下の帯状を維持して舗装路面上の雪に到達し、それによって前記雪に複数本の帯状の溝が形成されるようになっている、融雪車。
【請求項2】
請求項1に記載の融雪車において、前記車両の後方寄りの下面には回転噴射ユニットが設けられ、前記回転噴射ユニットは舗装路面に対して平行に回転する複数個の円盤と、前記円盤ごとに設けられている2個以上の噴射ノズルとから構成され、前記高圧熱水供給装置から前記回転噴射ユニットに熱水を供給すると前記円盤によって回転する前記噴射ノズルから噴射されるようになっている、融雪車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の融雪車において、前記車両の中央寄りの下面には中央噴射ユニットが設けられ、前記中央噴射ユニットは前記車両の車幅方向に50cm以下の間隔で並んで配置されている複数個の噴射ノズルからなり、前記高圧熱水供給装置から熱水が供給されるようになっている、融雪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装路面を走行しながら舗装路面に積もった雪を融雪する融雪車に関するものであり、限定するものではないが、比較的降雪量の少ない都会部の高架道路の積雪を融雪するのに好適な融雪車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
舗装路面の積雪は安全走行の妨げになり、スタッドレスタイヤの装着率が低い都会部において特に問題が大きく、交通渋滞だけでなく通行止めが発生する。舗装路面に積もった雪は適切に除去する必要があり、舗装路面上の雪を路肩に掃き出したり側方に飛ばす除雪車が比較的多く利用されている。ところで除雪車による除雪を実施すると、雪を積み上げるスペースが必要であり、あるいはダンプトラックによって外部に搬出して廃棄する必要がある。しかしながら都会部では雪を積み上げるスペースを確保できないことが多いし、廃棄場所の確保が困難である。例えば首都高速道路等の高架道路の場合、除雪した雪を狭い路肩に積み上げたとしたら、路肩からはみ出た雪によって走行車線が狭くなる虞があるし、路肩上の雪が徐々に融けて走行路面を濡らし続ける問題もある。つまり安全走行上問題がある。従って、特に都会部においては、除雪ではなく舗装路面に積もった雪を融かすことが好ましい。特許文献1、2には舗装路面の雪を融かす融雪車が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-300406号公報
【文献】実用新案登録第3224407号公報
【0004】
特許文献1に記載の融雪車は、自走する車両と、この車両に積載されている水タンクと、水タンクの水を加熱するボイラと、ボイラ内で空気を加熱するエアーバイブと、加熱された空気を車両の下方に噴出させる温風噴射口と、加熱された水タンク内の水を噴出して雪に散布する温水噴射ノズルとから概略構成されている。特許文献1によると、この融雪車は車両の前方に向けて温水を温水噴射ノズルから噴出して路面上の雪を溶融しながら走行し、雪が融けて濡れた状態の路面を、温風噴射口から噴出させる温風によって乾かすようになっている。
【0005】
特許文献2に記載の融雪車は、移動可能な台車と、この台車に搭載されて雪投入口から雪が投入されるようになっている貯水タンクと、水を加熱する瞬間湯沸かし器と、熱水を加圧するポンプと調節バルブと、熱水を散布する散水口とから構成されている。散水口から噴出された熱水によって路面上の雪を融雪することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載の融雪車は舗装路面上に積雪した雪を融かすことができ、特に都会部において有用である。しかしながら解決すべき課題も見受けられる。特許文献1、2に記載の融雪車は、いずれも加熱した温水、あるいは熱水を路面上の雪に散布、あるいは噴射して雪を融解するようになっているが、雪の状態によっては適切に融雪できない場合がある。例えば地熱がない高架道路において積雪するとき、舗装路面に密着した雪が一部融けて凍ることがあり、そうすると氷状になった雪が強固に舗装路面と密着する。このような状態の雪に、上方から温水または熱水を散布しても、その表面の雪を融解することはできるが、舗装路面に密着した氷状態の雪の表面を流れるだけで側方に流出してしまう。例えば0℃の氷を融解するのに必要な熱量は80cal/ccであり、理論的には80℃の同じ重量の熱水によって融解することができるはずであるが、凍った状態の雪を融解する前に温水が側方に流れて消失するので、路面上に雪が残ってしまう。あるいは雪が残らないようにするには、必要な量より多い大量の熱水を散布しなければならない。つまり、特許文献1、2の記載の融雪車には、雪の状態によって適切に融雪できない場合がある。
【0007】
本発明は、上記したような問題を解決した融雪車を提供することを目的とし、具体的には、舗装路面に密着して凍った状態の雪であっても、あるいは他の状態の雪であっても、必要な量の熱水を供給するだけで適切にかつ効率よく舗装路面上の雪を融雪することができる融雪車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、自走する車両からなる融雪車として構成する。車両には水槽と、この水槽の水を加熱して60℃以上の熱水にして10MPa以上の高圧で供給する1台または複数台の高圧熱水供給装置とを設ける。そして車両の前方寄りの下面に前方噴射ユニットを設け、前方噴射ユニットは車両の車幅方向に50cm以下の間隔で並んで配置されている複数個の噴射ノズルから構成する。車両を走行させながら、高圧熱水供給装置から複数個の噴射ノズルに熱水を供給すると、それぞれの噴射ノズルから噴射される熱水が車幅方向における幅が8cm以下の帯状を維持して舗装路面上の雪に到達し、それによって雪に複数本の帯状の溝が形成されるように構成する。
【0009】
すなわち請求項1に記載の発明は、自走する車両と、前記車輌に搭載されている水槽と、前記車輌に搭載され前記水槽の水を加熱して60℃以上の熱水にして10MPa以上の高圧で供給する1台または複数台の高圧熱水供給装置と、前記車両の前方寄りの下面に設けられている前方噴射ユニットと、を備え、前記前方噴射ユニットは前記車両の車幅方向に50cm以下の間隔で並んで配置されている複数個の噴射ノズルからなり、前記車両を走行させながら、前記高圧熱水供給装置から複数個の前記噴射ノズルに熱水を供給すると、それぞれの前記噴射ノズルから噴射される熱水が車幅方向における幅が8cm以下の帯状を維持して舗装路面上の雪に到達し、それによって前記雪に複数本の帯状の溝が形成されるようになっている、融雪車として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の融雪車において、前記車両の後方寄りの下面には回転噴射ユニットが設けられ、前記回転噴射ユニットは舗装路面に対して平行に回転する複数個の円盤と、前記円盤ごとに設けられている2個以上の噴射ノズルとから構成され、前記高圧熱水供給装置から前記回転噴射ユニットに熱水を供給すると前記円盤によって回転する前記噴射ノズルから噴射されるようになっている、融雪車として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の融雪車において、前記車両の中央寄りの下面には中央噴射ユニットが設けられ、前記中央噴射ユニットは前記車両の車幅方向に50cm以下の間隔で並んで配置されている複数個の噴射ノズルからなり、前記高圧熱水供給装置から熱水が供給されるようになっている、融雪車として構成される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によると、自走する車両において、水槽と、水槽の水を加熱して60℃以上の熱水にして10MPa以上の高圧で供給する1台または複数台の高圧熱水供給装置とを備えた融雪車として構成されている。そして車両の前方寄りの下面に設けられている噴射ユニットを備え、前方噴射ユニットは車両の車幅方向に50cm以下の間隔で並んで配置されている複数個の噴射ノズルからなる。車両を走行させながら、高圧熱水供給装置から複数個の噴射ノズルに熱水を供給すると、それぞれの噴射ノズルから噴射される熱水が車幅方向における幅が8cm以下の帯状を維持して舗装路面上の雪に到達し、それによって雪に複数本の帯状の溝が形成されるようになっている。つまり、高温であるだけでなく非常に高い高圧の熱水が舗装路面上の雪に噴射されることになる。そうすると、仮に舗装路面と接している雪が氷状になって舗装路面と強固に密着した状態になっていても、高圧の熱水によって雪に穴があくので、熱水は舗装路面と雪の間に注入される。走行しながら熱水を噴射するとき、前方寄りにおいて走行方向と直交して配置されている噴射ノズルによって、雪面に50cm以下の間隔で細い縦溝が形成される。さらに熱水は実質的にほとんど拡大せずに8cm以下の幅で雪に到達する。そうすると雪面に細い溝が形成されて、この溝から雪の内部に熱水が注入されることになる。これによって熱水を舗装路面と雪の間に確実に閉じ込めることができる。舗装路面と雪の間に浸透した熱水は流れて流出しないので、その場に留まって効率よく雪を融解することになる。すなわち、熱水が無駄になること無く効率よく雪を融解することができる。他の発明によると、車両の後方寄りの下面には回転噴射ユニットが設けられ、回転噴射ユニットは舗装路面に対して平行に回転する複数個の円盤と、円盤ごとに設けられている2個以上の噴射ノズルとから構成され、高圧熱水供給装置から回転噴射ユニットに熱水を供給すると円盤によって回転する噴射ノズルから噴射されるようになっている。そうすると、前方噴射ユニットにより帯状に分割され、舗装路面から浮いた状態になった雪は、後方寄りの車両の下面に設けられている、回転噴射ユニットの噴射ノズルによって全体に一様に熱水が噴射されるので、雪は効率よく融解することになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の第1の形態に係る融雪車を示す図で、その(A)、(B)はそれぞれ融雪車の側面図と上面図である。
図2】その(A)は、本実施の第1の形態に係る融雪車において前方寄りに設けられている複数個の噴射ノズルからなる前方噴射ユニットの上面図であり、その(B)は本実施の形態に係る融雪車において後方寄りにおいて回転盤に設けられている複数個の噴射ノズルからなる回転噴射ユニットの上面図である。
図3】その(A)、(B)は噴射ユニットに設けられている噴射ノズルを示す斜視図である。
図4】舗装路面の積雪を本実施の第1の形態に係る融雪車によって融雪する様子を模式的に示す図で、その(A)は舗装路面と融雪車に設けられている複数の噴射ユニットとを示す上面図、その(B)は舗装路面と前方噴射ユニットとを、その(C)は舗装路面と回転噴射ユニットとを、それぞれ示す側面断面図である。
図5】本実施の第2の形態に係る融雪車を示す図で、その(A)、(B)はそれぞれ融雪車の側面図と上面図である。
図6】舗装路面の積雪を本実施の第2の形態に係る融雪車によって融雪する様子を模式的に示す図で、その(A)は舗装路面と融雪車に設けられている複数の噴射ユニットとを示す上面図、その(B)は舗装路面と前方噴射ユニットとを、その(C)は舗装路面と中央噴射ユニットとを、その(D)は舗装路面と回転噴射ユニットとを、それぞれ示す側面断面図である。
図7】本実施の第1の形態に係る融雪車により実施した、冠雪した舗装路面の融雪実験の様子を示す写真である。
図8】本実施の第1の形態に係る融雪車により実施した、冠雪した舗装路面の融雪実験の様子を示す写真である。
図9】本実施の第1の形態に係る融雪車により実施した、冠雪した舗装路面の融雪実験の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の第1の実施の形態に係る融雪車1は、図1の(A)、(B)に示されているように、自走する車両2からなる。車両2の荷台には1個の水タンク4と、7台の高圧熱水供給装置5、5、…と、1台のエアコンプレッサ7が固定されている。高圧熱水供給装置5、5、…は、水タンク4から供給される水を加熱し、次に説明する噴射ユニットに対して高圧の熱水を供給する装置であり、それぞれ燃料タンク5aと、エンジン駆動のポンプ5bと、加熱装置5cとから構成されている。高圧熱水供給装置5、5、…は、供給する熱水を、その温度が60℃以上、好ましくは80~95℃になるように加熱して、その水圧が10MPa以上、好ましくは15~20MPaになるように加熱して毎分15L供給することができるようになっている。本実施の形態においては高圧熱水供給装置5、5、…としてケルヒャー(登録商標)の高圧洗浄機(型番:HDS1000De)が採用されている。車両2の荷台の側方には、予備燃料タンク9、9が設けられており、高圧熱水供給装置5、5、…のそれぞれの燃料タンク5aに燃料を補給することができるようになっている。なお、水タンク4と高圧熱水供給装置5、5、…とを接続する管路、および予備燃料タンク9、9と高圧熱水供給装置5、5、…のそれぞれの燃料タンク5aとを接続する管路は、図1には示されていない。
【0013】
車両2の下面には、高圧熱水供給装置5、5、…から供給される高圧熱水を噴射する複数の噴射ユニットが設けられている。すなわち、車両2の前方寄りにおいて前方噴射ユニット11、11、…が、そして後方寄りにおいて回転噴射ユニット13、13、…が、それぞれ設けられている。前方噴射ユニット11、11、…は、図2の(A)に示されているように、所定長さのバー15と、このバー15に等間隔で設けられている3個の噴射ノズル16、16、…とからなり、高圧熱水供給装置5と管路18によって接続されている。これら3個の噴射ノズル16、16、…については後で説明する。前方噴射ユニット11、11、…は図1の(A)、(B)に示されているように、車両の前方寄りにおいて4組が設けられ、これらが同一線上なるように配置されている。そして、それぞれの噴射ノズル16、16、…は車両2の進行方向に対して直交する方向に、20~25cmの間隔で配置されている。なお、前方噴射ユニット11、11は、高さを調整することができるようになっており、舗装路面Hに積もった雪Sに対して5~30cmの所望の距離から熱水を噴射できるようになっている。
【0014】
回転噴射ユニット13は、図2の(B)に示されているように、支持バー20と、この支持バー20に設けられている2個の円盤21、21と、これら円盤21、21にそれぞれ設けられている複数個の射出ノズル16、16、…とから構成されている。図において射出ノズル16、16は円盤21に対して2個ずつ設けられているが、3個以上であってもよい。図には示されていないが、回転噴射ユニット13には回転駆動機構が設けられ、円盤21、21は支持バー20に対して一定速度で回転するようになっている。回転噴射ユニット13、13、…は、図1の(A)、(B)に示されているに、車両2の後方寄りにおいて3組設けられており、前方噴射ユニット11と同様に高さを調整できるようになっている。従って、高圧熱水供給装置5、5、…から管路18によって高圧の熱水が供給されると、舗装路面H上の雪Sに対して10~30cmの所望の距離から熱水を噴射することができる。
【0015】
各噴射ユニット11、13に設けられている噴射ノズル16を説明する。噴射ノズル16は、図3の(A)、(B)に示されているが、噴出口が所定幅のスリット23からなる。スリット23から噴出される高圧の熱水は、所定の角度で広がるが、その厚さtは、噴射ノズル16から20cmの距離で3~5cm程度にしか広がらない。つまり熱水は厚さが薄い、あるいは幅が狭い帯状を維持して雪Sに到達し、幅の狭い帯状の穴があけられることになる。噴射ノズル16は図3の(B)に示されているように軸周りに回転させることができ、これによって噴射する帯状の熱水を垂直方向にしたり、水平方向にすることができるようになっている。また、噴射ノズル16は噴射角度も調整でき、雪Sに対して所望の噴射角度で熱水を噴射できるようになっている。本実施の形態においては、前方噴射ユニット11においては噴射ノズル16、16は図3の(A)に示されているように帯状の熱水が垂直方向に噴射されるように調整され、これによって雪Sに細く、深い溝を形成するようになっている。これら噴射ノズル16、16の噴射角度は雪Sの状態に応じて適宜調整すればよい。
【0016】
本実施の第1の形態に係る融雪車1において、噴射ユニット11、13を昇降させたり、回転噴射ユニット13を回転させるアクチュエータはエアコンプレッサ7から供給される圧縮空気によって駆動されるようになっている。説明はしなかったが管路18、18、…に適宜設けられているバルブ、予備燃料タンク9から各高圧熱水供給装置5、5、…に燃料を補給するポンプ等も圧縮空気で駆動されるようになっている。融雪車1は各装置が圧縮空気で制御されるよう計装されており、防水等を考慮しないで済む設計になっている。
【0017】
本実施の第1の形態に係る融雪車1の作用を説明する。雪Sが積もった舗装路面Hを1~10km/hで走行する。高圧熱水供給装置5、5、…を駆動して水タンク4からの水を加熱し高圧にして各噴射ユニット11、13に供給し、これらから熱水を噴射する。前方噴射ユニット11、11から噴射される高圧の熱水によって、図4の(A)に示されているように、雪Sが縦方向に細く融けて細い溝25、25、…が形成される。すなわち雪Sは、20~25cm幅の複数の帯に分割される。熱水は高圧で噴射されるので、溝25、25内に深く侵入し舗装路面Hに到達する。そうすると、図4の(B)に示されているように舗装路面Hと雪Sの間に熱水の層26が形成される。熱水の層26は徐々に雪Sを融かして雪Sを舗装路面Hから浮かせる。このような雪Sに対して回転噴射ユニット13、13を回転させながら熱水を高圧で噴射すると、図4の(C)に示されているように、舗装路面Hから浮いた雪Sは粉砕されながら効率よく融解する。舗装路面Hから雪Sが実質的に完全に消失する。
【0018】
本実施の形態に係る融雪車1は変形が可能である。図5の(A)、(B)には、本実施の第2の形態に係る融雪車1’が示されている。第1の実施の形態に係る融雪車1と同様の部材、同様の部品については同じ符号を付して説明を省略する。この第2の実施の形態に係る融雪車1’は、2点の変更点がある。第1の変更点は、車両2の中央寄りにおいて中央噴射ユニット12、12が設けられている点である。中央噴射ユニット12、12は、前方噴射ユニット11、11と同様の構造になっており、噴射ノズル16、16が設けられている。これら噴射ノズル16、16、…の間隔は車幅方向に、40~50cmになっている。ところで中央噴射ユニット12、12における噴射ノズル16、16は、その回転角度が前方噴射ユニット11、11と相違している。つまり図3の(B)に示されているような回転角度に調整されている。従って噴射される熱水は横方向に広がることになる。第2の実施の形態に係る融雪車1’の第2の変更点は、前方噴射ユニット11、11が2組になっている点と、これらに設けられている噴射ノズル16、16、…の間隔が40~50cmになっている点である。つまり第1の実施の形態に係る融雪車1に比して、前方噴射ユニット11、11における噴射ノズル16、16、…の間隔は広い。
【0019】
第2の実施の形態に係る融雪車1’により、雪Sが積もった舗装路面Hを融雪する様子が図6に示されている。まず、前方噴射ユニット11、11から噴射される高圧の熱水によって、図6の(A)に示されているように、雪Sが縦方向に細く融けて細い溝25、25、…が形成される。すなわち雪Sは、40~50cm幅の複数の帯に分割され、熱水が図6の(B)に示されているように、溝25、25内に深く侵入し舗装路面Hに到達する。つまり、舗装路面Hと雪Sの間に熱水の層26が形成される。次いで、中央噴射ユニット12、12から噴射される高圧の熱水は、図6の(A)、(C)に示されているように雪Sに形成された溝25、25、…をさらに幅広に広げる。熱水の層26は熱水の層27と融合して徐々に雪Sを融かして雪Sを舗装路面Hから浮かせる。このような雪Sに対して回転噴射ユニット13、13を回転させながら熱水を高圧で噴射すると、図6の(D)に示されているように、舗装路面Hから浮いた雪Sは粉砕されながら効率よく融解する。舗装路面Hから雪Sが実質的に完全に消失する。
【実施例1】
【0020】
本実施の形態に係る融雪車1によって、積雪した舗装路面について、特に雪の一部が凍結した舗装路面について、効率よく融雪できることを確認するため実験を行った。
実験内容:
融雪実験の対象とした舗装路面は、5~8cmの積雪があり、雪の一部が融解した後に凍結した舗装路面とした。
このような舗装路面を本実施の第1の形態に係る融雪車1を時速2~3kmで走行させ、前方噴射ユニット11、11、…と、回転噴射ユニット13、13、…とから熱水を噴射した。それぞれの噴射ユニット11、13に設けられている噴射ノズル16、16、…から80℃の熱水を15MPaの水圧で、約毎分5L噴射した。
【0021】
実験結果:
舗装路面上の凍結した雪は完全に融雪された。また噴射した熱水は、ほとんどが車両2が走行した範囲の雪を融雪することに消費され、雪の上を流れて車両2の側方から流出して無駄になる熱水はなかった。
なお、図7の写真は前方噴射ユニット11、11、…から熱水を噴射する様子を示している。また、図8の写真は前方噴射ユニット11の射出ノズル16からの熱水によって凍結した雪が切断されて溝が形成される様子を示しており、図9の写真は、熱水が舗装路面と雪の間に注入されて熱水の層が形成され、雪が浮き上がっている様子が示されている。
考察:
本実施の形態に係る融雪車1によって、舗装路面に密着して凍った状態の雪に対して、必要な最小量の熱水を供給するだけで適切にかつ効率よく舗装路面上の雪を融雪することができることが確認できた。
【符号の説明】
【0022】
1 融雪車 2 車両
4 水タンク 5 高圧熱水供給装置
7 エアコンプレッサ 9 予備燃料タンク
11 前方噴射ユニット 12 中央噴射ユニット
13 回転噴射ユニット 15 バー
16 噴射ノズル 18 管路
20 支持バー 21 円盤
23 スリット 25 溝
26 熱水の層 27 熱水の層
H 舗装路面 S 雪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9