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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/30 20200101AFI20221025BHJP
【FI】
D06F33/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017249878
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019115389
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間宮 春夫
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116269(JP,A)
【文献】特開平04-035683(JP,A)
【文献】特開2017-012208(JP,A)
【文献】特開2006-191965(JP,A)
【文献】特開平06-091087(JP,A)
【文献】特開平07-116378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容する洗濯槽と、
前記洗濯槽内に給水する給水部と、
前記洗濯槽内に配置された回転部材と、
前記給水部によって前記洗濯槽内に設定水位まで給水された後に、洗濯のために前記回転部材を間欠回転させ、前記回転部材の回転によって水流を前記洗濯槽内に発生させる水流発生部と、
前記洗濯槽内の水位を検知する水位検知部と、
洗濯中において前記回転部材の回転が中断した間に前記水位検知部が検知した水位および前記設定水位の差に基いて前記洗濯槽内の水位低下量を取得する取得部と、
前記取得部が取得した水位低下量が予め定める第1の閾値未満の水位低下量が少ない場合は、前記水位検知部によって検知された現在の洗濯槽内の水位を確認し、現在の洗濯槽内の水位が所定の高水位である場合は「水飛び」現象が発生するおそれがあると判断して、洗濯槽内の水流を弱めるように前記水流発生部を制御する制御部と、を含む洗濯機。
【請求項2】
前記制御部は、前記取得部が取得した水位低下量が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値よりも多い場合は、現状の洗濯槽内の水量に対して洗濯物の量が多く、布回りが悪いおそれがあると判断して、洗濯槽内の水流を強めるように前記水流発生部を制御する、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記取得部は、洗濯中において所定期間が経過した後に前記水位検知部が検知した水位と、前記設定水位との差に基いて前記水位低下量を取得する、請求項1または2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の洗濯機は、水が貯められる外槽と、外槽内に収容された内槽と、内槽内に配置された撹拌翼と、撹拌翼を回転させる駆動モータと、外槽内の水位を検知する水位センサと、駆動モータの回転パルスを取り出すパルスエンコーダとを含む。決定された水位まで外槽内に給水された後に、駆動モータによって撹拌翼が回転する。これにより、内槽内に水流が発生し、この水流によって内槽内の洗濯物が洗濯される。洗い工程中では、この水流によって内槽内の水が外部に飛散する「水飛び」という現象などを考慮して、布回り状態の検知が行われる。具体的には、駆動モータのオフ時の惰性回転パルス数がパルスエンコーダによって取り出され、この惰性回転パルス数が予め定める値よりも多ければ、布回りが良すぎる、つまり、水飛びが発生しやすいと判別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3015638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の洗濯機のように、比較的高価なパルスエンコーダを用いて布回り状態を検知する場合には、コストの低減が困難である。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、低コストで布回り状態を検知できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、洗濯物を収容する洗濯槽と、前記洗濯槽内に給水する給水部と、前記洗濯槽内に配置された回転部材と、前記給水部によって前記洗濯槽内に設定水位まで給水された後に、洗濯のために前記回転部材を間欠回転させ、前記回転部材の回転によって水流を前記洗濯槽内に発生させる水流発生部と、前記洗濯槽内の水位を検知する水位検知部と、洗濯中において前記回転部材の回転が中断した間に前記水位検知部が検知した水位および前記設定水位の差に基いて前記洗濯槽内の水位低下量を取得する取得部と、前記取得部が取得した水位低下量が予め定める第1の閾値未満の水位低下量が少ない場合は、前記水位検知部によって検知された現在の洗濯槽内の水位を確認し、現在の洗濯槽内の水位が所定の高水位である場合は「水飛び」現象が発生するおそれがあると判断して、洗濯槽内の水流を弱めるように前記水流発生部を制御する制御部と、を含む洗濯機である。
【0007】
また、本発明は、前記制御部は、前記取得部が取得した水位低下量が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値よりも多い場合は、現状の洗濯槽内の水量に対して洗濯物の量が多く、布回りが悪いおそれがあると判断して、洗濯槽内の水流を強めるように前記水流発生部を制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前記取得部が、洗濯中において所定期間が経過した後に前記水位検知部が検知した水位と、前記設定水位との差に基いて前記水位低下量を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗濯機では、洗濯槽内に設定水位まで給水された後に、洗濯槽内の回転部材が間欠回転する。回転部材の回転に応じて発生した水流によって、洗濯槽内の洗濯物が洗濯される。洗濯中において回転部材の回転が中断した間に水位検知部が検知した洗濯槽内の水位と、前記設定水位との差に基いた水位低下量は、布回り状態の指標である。水位低下量が第1の閾値よりも少ない場合には、現在の水量に対して洗濯物が少ないことによって布回りが良すぎる、つまり、洗濯物の動きが活発すぎるので、水飛びが発生しやすい。そのため、水流の勢いが弱められる。このように既存の水位検知部を用いることによって、低コストで布回り状態を検知して、水飛びの発生を抑制できる。
【0010】
また、本発明によれば、水位低下量が、第1の閾値よりも大きい第2の閾値よりも多い場合には、現在の水量に対して洗濯物が多いことによって布回りが悪い、つまり、洗濯物の動きが鈍いので、洗濯物を水流によって効果的に洗濯することが困難である。この場合には、布回りが良くなるように、水流の勢いが強められるので、勢いが強くなった水流によって洗濯物を効果的に洗濯することができる。
【0011】
また、本発明によれば、洗濯中において所定期間が経過することによって安定した水位と、前記設定水位との差に基くことによって、ばらつきの小さな水位低下量を求めることができるので、布回り状態を正確に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機の模式的な縦断面図である。
図2図2は、洗濯機の電気的構成を示すブロック図である。
図3図3は、洗濯機において実行される洗い工程における一部の処理を示すフローチャートである。
図4図4は、洗い工程における残りの処理を示すフローチャートである。
図5図5は、洗い工程の途中の処理の詳細を示すフローチャートである。
図6図6は、洗い工程中におけるモータの状態と洗濯槽内の水位とを示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機1の模式的な縦断面図である。図1における上下方向を洗濯機1の上下方向Zといい、上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。洗濯機1は、筐体2と、外槽3と、洗濯槽4と、回転部材の一例としてのパルセータ5と、モータ6と、伝達機構7とを含む。
【0014】
筐体2は、例えば金属製であり、ボックス状に形成される。筐体2の上面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口部2Bが形成される。上面2Aには、開口部2Bを開閉する扉10が設けられる。上面2Aにおける開口部2Bの周囲には、液晶操作パネルなどで構成された表示操作部11が設けられる。洗濯機1の使用者は、表示操作部11を操作することによって、洗濯機1で実行される洗濯運転についての運転条件を選択したり、洗濯機1に対して洗濯運転の開始や停止などを指示したりすることができる。表示操作部11には、使用者向けの情報が表示される。
【0015】
外槽3は、例えば樹脂製であり、有底円筒状に形成される。外槽3は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を下側Z2から塞いだ底壁3Bと、円周壁3Aの上側Z1側の端縁を縁取りつつ円周壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Cとを有する。環状壁3Cの内側には、円周壁3Aの中空部分に上側Z1から連通する出入口3Dが形成される。出入口3Dは、筐体2の開口部2Bに対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。環状壁3Cには、出入口3Dを開閉する扉12が設けられる。底壁3Bは、略水平に延びる円板状に形成され、底壁3Bの円中心位置には、底壁3Bを貫通した貫通孔3Eが形成される。
【0016】
外槽3の環状壁3Cには、水道水の蛇口につながった給水路13が上側Z1から接続される。給水路13の途中には、給水部の一例としての給水弁14が設けられる。外槽3の底壁3Bには、排水路15が下側Z2から接続される。排水路15の途中には、排水弁16が設けられる。排水弁16が閉じた状態で給水弁14が開くと、給水路13から外槽3内に給水されることによって、外槽3内に水が溜められる。給水弁14が閉じると、給水が停止する。排水弁16が開くと、外槽3内の水が排水路15から機外に排出される。
【0017】
洗濯槽4は、例えば金属製であり、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物Qを収容することができる。洗濯槽4は、外槽3内に同軸状で収容される。外槽3内に収容された状態の洗濯槽4は、その中心軸をなして上下方向Zに延びる軸線Jを中心として回転可能である。洗濯槽4は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁4Aと、円周壁4Aの中空部分を下側Z2から塞いだ底壁4Bとを有する。
【0018】
円周壁4Aの内周面は、洗濯槽4の内周面である。円周壁4Aの内周面の上端部は、円周壁4Aの中空部分を上側Z1に露出させる出入口4Cである。出入口4Cは、外槽3の出入口3Dに対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。使用者は、開放された開口部2B、出入口3Dおよび出入口4Cを介して、洗濯槽4に対して上側Z1から洗濯物Qを出し入れする。
【0019】
洗濯槽4の円周壁4Aおよび底壁4Bには、貫通孔4Dが複数形成され、外槽3内の水は、貫通孔4Dを介して外槽3と洗濯槽4との間で行き来して、洗濯槽4内にも溜められる。そのため、外槽3内の水位と洗濯槽4内の水位とは、一致する。
【0020】
洗濯槽4の底壁4Bは、外槽3の底壁3Bに対して上側Z1に間隔を隔てて略平行に延びる円板状に形成され、底壁4Bにおいて軸線Jと一致する円中心位置には、底壁4Bを貫通した貫通孔4Eが形成される。底壁4Bには、貫通孔4Eを取り囲みつつ軸線Jに沿って下側Z2へ延び出た管状の支持軸17が設けられる。支持軸17は、外槽3の底壁3Bの貫通孔3Eに挿通されて、支持軸17の下端部は、底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0021】
パルセータ5は、軸線Jを円中心とする円盤状に形成され、洗濯槽4内において底壁4Bに沿って洗濯槽4と同心状に配置される。パルセータ5において洗濯槽4の出入口4Cを臨む上面には、放射状に配置される複数の羽根5Aが設けられる。パルセータ5には、その円中心から軸線Jに沿って下側Z2へ延びる回転軸18が設けられる。回転軸18は、支持軸17の中空部分に挿通されて、回転軸18の下端部は、外槽3の底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0022】
モータ6は、インバータモータなどの電動モータである。モータ6は、筐体2内において、外槽3の下側Z2に配置される。モータ6は、軸線Jを中心として回転する出力軸19を有し、発生した駆動力を出力軸19から出力する。伝達機構7は、支持軸17および回転軸18のそれぞれの下端部と、モータ6から上側Z1に突出した出力軸19の上端部との間に介在される。伝達機構7は、モータ6が出力軸19から出力する駆動力を、支持軸17および回転軸18の一方または両方に対して選択的に伝達する。伝達機構7として、公知のものが用いられる。モータ6からの駆動力が支持軸17および回転軸18に伝達されると、洗濯槽4およびパルセータ5は、モータ6の駆動力を受けて軸線Jまわりに回転する。
【0023】
図2は、洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。洗濯機1は、給水部、水流発生部および取得部の一例としてのマイクロコンピュータ21を含む。マイクロコンピュータ21は、例えば、CPU22と、ROMやRAMなどのメモリ23と、計時用のタイマ24とを含み、筐体2内に内蔵される(図1参照)。
【0024】
前述したモータ6、伝達機構7、給水弁14および排水弁16のそれぞれは、例えば駆動回路25を介してマイクロコンピュータ21に対して電気的に接続され、前述した表示操作部11もマイクロコンピュータ21に対して電気的に接続される。マイクロコンピュータ21は、モータ6をONにして駆動させたり、OFFにして停止させたりする。マイクロコンピュータ21は、モータ6の回転方向を制御することもできる。そのため、モータ6は、正転したり、逆回したりすることができる。マイクロコンピュータ21は、伝達機構7を制御することによって、モータ6の駆動力の伝達先を支持軸17および回転軸18の一方または両方へと切り替える。マイクロコンピュータ21は、給水弁14および排水弁16の開閉を制御する。使用者が表示操作部11を操作して運転条件などについて選択すると、マイクロコンピュータ21は、その選択を受け付ける。マイクロコンピュータ21は、表示操作部11の表示内容を制御する。
【0025】
洗濯機1は、マイクロコンピュータ21に対して電気的に接続されたブザー26、回転数読取装置27および水位検知部28をさらに含む。マイクロコンピュータ21は、所定の音をブザー26で発生させることによって、洗濯運転の開始や終了などを使用者に知らせる。
【0026】
回転数読取装置27は、モータ6の回転数、厳密には、モータ6における出力軸19の回転数を読み取る装置であり、例えばホールICで構成される。回転数読取装置27が読み取った回転数は、リアルタイムでマイクロコンピュータ21に入力される。マイクロコンピュータ21は、入力された回転数に基いて、モータ6に印加する電圧のデューティ比を制御することによって、所望の回転数で回転するようにモータ6を制御する。なお、洗濯槽4およびパルセータ5のそれぞれの回転数は、モータ6の回転数と同じであってもよいし、伝達機構7での減速比などの所定の定数をモータ6の回転数に乗じて得られる値であってもよい。
【0027】
水位検知部28は、外槽3内の水位つまり洗濯槽4内の水位を検知する水位センサであって、この実施形態では、外槽3内の圧力に基いて洗濯槽4内の水位を検知する圧力式水位センサである。具体的には、水位検知部28は、外槽3の内部空間の下部に連通した空間であるエアトラップ29に、エアホース30を介して接続される(図1参照)。エアトラップ29には、洗濯槽4内の水位に応じた圧力が生じ、この圧力は、エアホース30を介して水位検知部28に伝達され、水位検知部28のダイアフラム(図示せず)を振動させる。振動するダイアフラムの周波数、または、このダイアフラムに連動する発振回路(図示せず)の周波数が、洗濯槽4内の水位をあらわす。つまり、水位検知部28は、洗濯槽4内の水位を周波数に変換して出力する。洗濯槽4内の水位が上昇すると、水位検知部28が出力する周波数は低下し、洗濯槽4内の水位が低下すると、水位検知部28が出力する周波数は上昇する。なお、水位検知部28として、他の公知の構成を用いることができる。
【0028】
マイクロコンピュータ21は、モータ6、伝達機構7、給水弁14および排水弁16の動作を制御することによって、洗濯運転を実行する。洗濯運転は、洗濯物Qを洗う洗い工程と、洗い工程の後に洗濯物Qをすすぐすすぎ工程と、すすぎ工程の後に洗濯槽4を回転させて洗濯物Qを脱水する脱水工程とを有する。なお、洗濯機1は、脱水工程の後に洗濯物Qを乾燥させる乾燥工程も実行する洗濯乾燥機であってもよい。
【0029】
使用者が洗濯物Qを洗濯槽4内に投入して洗濯運転の開始を指示すると、マイクロコンピュータ21は、洗い工程を開始する。なお、使用者は、洗濯物Qの投入に前後して、洗剤を洗濯槽4内に投入してもよい。図3のフローチャートを参照して、まず、マイクロコンピュータ21は、表示操作部11に対する使用者の操作によって洗い工程における洗濯槽4内の水位が手動設定されたか否かを確認する(ステップS1)。水位の手動設定がなければ(ステップS1でNO)、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4内の洗濯物Qの量、つまり負荷量を検知する(ステップS2)。負荷量検知の一例として、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4を低速で定常回転させたときのモータ6の回転数のばらつきによって負荷量を検知する。次に、マイクロコンピュータ21は、これから給水して洗濯槽4内に溜める水の水位を、先ほど検知した負荷量に基いて決定する(ステップS3)。水位と負荷量との関係は、実験などで予め求められてメモリ23に記憶される。
【0030】
使用者によって手動設定された水位、または、ステップS3で決定した水位を、設定水位fという。マイクロコンピュータ21は、今回の洗い工程においてパルセータ5の回転によって洗濯槽4内で発生させる水流の勢いの設定値についての初期値を、設定水位fに基いて決定する(ステップS4)。この設定値には、下限値および上限値を含む複数のランクが設定され、いずれかのランクの値が初期値として採用される。設定値と設定水位fとの関係は、実験などで予め求められてメモリ23に記憶される。設定値は、具体的にはモータ6の回転数つまりモータ6への通電時間に対応し、設定値が上限値側へ引き上げられる度に、当該通電時間が長くなって当該回転数つまりパルセータ5の回転数が増加するので、水流の勢いが段階的に強くなる。
【0031】
次に、マイクロコンピュータ21は、給水弁14を開いて洗濯槽4内への給水を開始する(ステップS5)。排水弁16が閉じた状態にあるので、洗濯槽4内の水位が上昇する。洗濯槽4内の水位が設定水位fに到達すると、マイクロコンピュータ21は、給水弁14を閉じて洗濯槽4への給水を停止し、洗濯物Qの洗いを開始する(ステップS6)。具体的には、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4が静止した状態で、モータ6によってパルセータ5を回転させる。これにより、洗濯槽4内では、前述した初期値に応じた勢いの水流が発生する。洗濯槽4内の洗濯物Qは、回転するパルセータ5や水流によって撹拌される。そのため、洗濯物Qから汚れが除去される。つまり、洗濯物Qが洗われる。なお、洗剤が洗濯槽4内に投入された場合には、洗濯物Qの汚れが洗剤によって分解される。
【0032】
マイクロコンピュータ21は、ステップS6での撹拌開始からの経過時間を、タイマ24によって計測する。今回の洗い工程として設定された洗い時間が経過すると(ステップS7でYES)、マイクロコンピュータ21は、モータ6によるパルセータ5の回転を停止させて排水弁16を開き、洗濯槽4の排水を行う(ステップS8)。これにより、洗い工程が終了する。
【0033】
洗い時間が経過するまでの間(ステップS7でNO)、マイクロコンピュータ21は、図4に示す水位低下量決定処理を行う(ステップS11)。図5のフローチャートと図6のタイムチャートとを参照して、水位低下量決定処理について説明する。なお、図6のタイムチャートでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が、モータ6のON・OFF状態と、洗濯槽4内の水位として水位検知部28が出力する周波数とを示す。経過時間の単位は、例えば秒であり、周波数の単位は、例えばKHzである。なお、前述したように、洗濯槽4内の実際の水位が低下すると、この水位に対応する周波数は増加する。
【0034】
洗い時間中において、マイクロコンピュータ21は、モータ6の正転および逆転を交互に複数回繰り返した撹拌サイクルを、何度も繰り返す。1回の撹拌サイクルは、例えば20秒間継続される。各撹拌サイクルでは、モータ6の正転に応じて、パルセータ5は、モータ6の出力軸19と同じ方向に正転し、モータ6の逆転に応じて、パルセータ5は、出力軸19と同じ方向に逆転する。なお、各撹拌サイクルにおいて、モータ6が正転だけするまたは逆転だけすることによって、パルセータ5が一方向に連続回転してもよい。マイクロコンピュータ21は、各撹拌サイクルの間の休止サイクルでは、モータ6をOFFにするので、パルセータ5の回転が停止する。そのため、マイクロコンピュータ21は、洗い時間中において、撹拌サイクルと休止サイクルとを交互に繰り返すことによってパルセータ5を間欠回転させる。撹拌サイクルにおけるパルセータ5の回転によって、前述した水流が洗濯槽4内に発生し、洗濯物Qを撹拌する。
【0035】
洗い中において、マイクロコンピュータ21は、撹拌サイクルの開始、つまり洗濯物Qの撹拌の開始から20秒が経過すると(ステップS111でYES)、パルセータ5の回転つまり洗濯物Qの撹拌を停止することによって、撹拌サイクルを終了する(ステップS112)。これにより、休止サイクルが始まる。マイクロコンピュータ21は、メモリ23に予め設定された検知回数Nを、インクリメント(+1)する(ステップS113)。洗い開始前における検知回数Nは、0であるので、洗い開始直後の1回目の撹拌サイクルが終了したときの検知回数Nは、1である。この場合には(ステップS114でYES)、マイクロコンピュータ21は、ステップS111からの処理を繰り返す。
【0036】
2回目以降の撹拌サイクルが終了したときの検知回数Nは、1よりも大きいので、この場合には(ステップS114でNO)、マイクロコンピュータ21は、ステップS112での撹拌停止つまり休止サイクルの開始から例えば4秒の所定時間が経過したか否かを確認する(ステップS115)。当該所定時間が経過すると(ステップS115でYES)、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4内の現在の水位frを水位検知部28によって測定する(ステップS116)。厳密には、水位検知部28が洗濯槽4内の水位を常に検知するので、マイクロコンピュータ21は、当該所定時間が経過した時点における水位検知部28の検知結果を水位frとして取得する。洗濯物Qの吸水によって洗濯槽4内の水位が低下するので、水位frは、当初の設定水位fよりも低い。マイクロコンピュータ21は、設定水位fと水位frとの差の絶対値を算出し、この絶対値を洗濯槽4内の水位低下量Δfとする(ステップS117)。
【0037】
マイクロコンピュータ21は、検知回数Nが例えば4回といった所定回数になるまで、ステップS111からS117までの処理を繰り返す。これにより、マイクロコンピュータ21は、ここでは2回目~4回目の休止サイクルのそれぞれにおいて水位低下量Δfを1回ずつ、合計で3回算出する(ステップS117)。検知回数Nが当該所定回数に達すると(ステップS118でNO)、マイクロコンピュータ21は、水位低下量Δfの最終値を決定する(ステップS119)。この最終値を水位低下量ΔFという。水位低下量ΔFは、2回目~4回目のいずれかに算出した水位低下量Δfそのものであってもよい。または、水位低下量ΔFは、算出した複数の水位低下量Δfを合計して得られる積算値水位低下量Δfの算出回数で割って得られる平均値であってもよい。検知回数Nが4回である場合には、4回目の休止サイクルにおいて、水位低下量ΔFが決定する(図6参照)。水位低下量ΔFが決定すると、水位低下量決定処理が終了する。また、水位低下量ΔFの決定に応じて、マイクロコンピュータ21は、検知回数Nを0にリセットする。
【0038】
図4に戻り、マイクロコンピュータ21は、決定した水位低下量ΔFが第1の閾値αを下回るか否かを確認する(ステップS12)。第1の閾値αは、洗濯物Qの吸水による水位低下量ΔFが想定よりも少ないか否かを判定するために実験などで予め求められた値であって、メモリ23に記憶される。水位低下量ΔFが第1の閾値α未満である位に少ない場合には(ステップS12でYES)、マイクロコンピュータ21は、水位検知部28によって測定した現在の水位frを確認する(ステップS13)。
【0039】
水位frが、水が洗濯槽4内に目一杯溜まったときの上限水位に近い高水位、または、水が洗濯槽4内に半分程度溜まったときの中水位である場合には(ステップS13でYES)、今の水流のままでは、洗濯槽4内の水が出入口4Cから外部に飛散する「水飛び」という現象が発生する可能性が高い。そこで、マイクロコンピュータ21は、現在の水流の勢いについての設定値が下限値でなければ(ステップS14でNO)、この設定値を1ランクダウンする(ステップS15)。これにより、次の撹拌サイクルが始まると、勢いが一段階弱くなった水流によって洗濯物Qの撹拌が再開される。
【0040】
一方、水位frが中水位よりも低い場合には(ステップS13でNO)、水飛びが発生する可能性が低いので、マイクロコンピュータ21は、水流の設定値を現状に維持する。また、水位が高水位または中水位であるものの(ステップS13でYES)、現在の水流の設定値が下限値であれば(ステップS14でYES)、設定値をこれ以上ランクダウンできないので、マイクロコンピュータ21は、水流の設定値を現状に維持する。水流の設定値が現状のままである場合に次の撹拌サイクルが始まると、直前の撹拌サイクルと同じ勢いの水流によって洗濯物Qの撹拌が再開される。
【0041】
水位低下量ΔFが第1の閾値α以上である場合には(ステップS12でNO)、マイクロコンピュータ21は、この水位低下量ΔFが第2の閾値βを上回るか否かを確認する(ステップS16)。第2の閾値βは、洗濯物Qの吸水による水位低下量ΔFが想定よりも多いか否かを判定するために実験などで予め求められた値であって、メモリ23に記憶される。第2の閾値βは、第1の閾値αよりも大きい。水位低下量ΔFが第2の閾値βを上回る位に多い場合には(ステップS16でYES)、現状の水量に対して洗濯物Qの量が多いことによって洗濯物Qの動きが鈍い、つまり、布回りが悪いおそれがある。この場合、マイクロコンピュータ21は、現在の水流の設定値を確認する(ステップS17)。現在の水流が上限値でなければ(ステップS17でNO)、この設定値を1ランクアップする(ステップS18)。これにより、次の撹拌サイクルが始まると、勢いが一段階強くなった水流によって洗濯物Qの撹拌が再開される。
【0042】
一方、水位低下量ΔFが第2の閾値β以下である場合には(ステップS16でNO)、布回り状態は適性なので(図6における太い実線で示した水位を参照)、マイクロコンピュータ21は、水流の設定値を現状に維持する。また、水位低下量ΔFが第2の閾値βを上回るものの(ステップS16でYES)、現在の水流の設定値が上限値であれば(ステップS17でYES)、設定値をこれ以上ランクアップできないので、マイクロコンピュータ21は、水流の設定値を現状に維持する。水流の設定値が現状のままである場合に次の撹拌サイクルが始まると、直前の撹拌サイクルと同じ勢いの水流によって洗濯物Qの撹拌が再開される。
【0043】
洗い工程後のすすぎ工程が始まると、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4内に設定水位まで給水してから、洗濯槽4が静止した状態で、モータ6によってパルセータ5を回転させる。これにより、洗濯槽4内では水流が発生し、洗濯槽4内の洗濯物Qは、回転するパルセータ5や水流に撹拌されることによって、すすがれる。今回のすすぎ工程として設定されたすすぎ時間が経過すると、マイクロコンピュータ21は、モータ6によるパルセータ5の回転を停止させて洗濯槽4の排水を行う。これにより、すすぎ工程が終了する。すすぎ工程における設定水位は、洗い工程における設定水位fと同じであってもよい。また、すすぎ工程でも、洗い工程におけるステップS11~S18の水流調整処理が、すすぎ時間が経過するまでの間において行われてもよい。すすぎ工程は、複数回実施されてもよい。
【0044】
すすぎ工程後の脱水工程では、マイクロコンピュータ21は、排水弁16を開いた状態で、洗濯槽4を高速回転させる。この高速回転により生じた遠心力によって、洗濯槽4内の洗濯物が脱水される。脱水により洗濯物から染み出た水は、排水路15から機外に排出される。なお、脱水工程は、洗濯運転の最後の実行される最終脱水工程とは別の中間脱水工程として、洗い工程およびすすぎ工程のそれぞれの後に実施されてもよい。
【0045】
以上のように、洗濯機1において、マイクロコンピュータ21は、洗濯中においてパルセータ5の回転が中断した間、つまり休止サイクル中に水位検知部28が検知した水位frと、設定水位fとの差に基いて洗濯槽4内の水位低下量ΔFを取得する。水位低下量ΔFは、布回り状態、つまり水流に伴う洗濯物Qの動き具合の指標である。水位低下量ΔFが第1の閾値αよりも少ない場合には、現在の水量に対して洗濯物Qが少ないことによって布回りが良すぎる、つまり、洗濯物Qの動きが活発すぎるので、水飛びが発生しやすい(図6における太い1点鎖線で示した水位を参照)。水位低下量ΔFが第1の閾値αよりも少ない場合には(ステップS12でYES)、マイクロコンピュータ21は、水流の設定値をランクダウンすることによって(ステップS15)、パルセータ5の回転再開後における水流の勢いを弱める。
【0046】
逆に、水位低下量ΔFが第2の閾値βよりも多い場合には(ステップS16でYES)、現在の水量に対して洗濯物Qが多いことによって布回りが悪い、つまり、洗濯物Qの動きが鈍いので、洗濯物Qを水流によって効果的に洗濯することが困難である(図6における太い破線で示した水位を参照)。この場合には、マイクロコンピュータ21は、水流の設定値をランクアップすることによって(ステップS18)、パルセータ5の回転再開後における水流の勢いを強める。これにより、布回りが良くなるので、勢いが強くなった水流によって洗濯物Qを効果的に洗濯することができる。
【0047】
このように既存の水位検知部28を用いることによって、低コストで布回り状態を検知して、水飛びの発生を抑制したり、布回りを改善したりすることできる。特に、マイクロコンピュータ21は、撹拌サイクル中でなく、パルセータ5の回転が停止した休止サイクル中に水位低下量ΔFを検知するので、水位低下量ΔFの検知精度の向上を図れる。さらに、マイクロコンピュータ21は、洗濯中において所定期間が経過した後に水位検知部28が検知した水位frと、設定水位fとの差に基いて水位低下量Δfを算出し、当該水位低下量Δfによって最終的な水位低下量ΔFを取得する(ステップS114~S119)。当該所定期間とは、洗い開始(ステップS6)から検知回数Nが2になるまでの期間(ステップS114でNO)、および、2回目以降の各休止サイクルにおいてパルセータ5の回転が中断してからの前述した4秒(ステップS115でYES)の少なくともいずれかである。そのため、ステップS115の場合には、4秒という所定期間が経過することによって安定した水位frと、設定水位fとの差に基くことによって、ばらつきの小さな水位低下量ΔFを求めることができるので、布回り状態を正確に検知できる。また、ステップS114の場合には、1回目の休止サイクルにおける水位も、2回目以降の各休止サイクルの開始からの前述した4秒間の水位と同様に変動し得ることから、水位低下量ΔFの算出のために使用されないので(ステップS114でYES)、正確な水位低下量ΔFを求めることができる。
【0048】
本実施形態とは異なり、モータ6のオフ時の惰性回転パルス数を取り出すパルスエンコーダを別途設けて、この惰性回転パルス数と閾値との関係に基いて水飛びの可能性を判断する場合には、水飛びする場合と水飛びしない場合とで惰性回転パルス数の差が小さいので、当該閾値を設定すること自体が困難である。しかし、この本実施形態の場合、水位低下量Δfは、水飛びする場合と水飛びしない場合とで顕著に異なるので(図6参照)、前述した第1の閾値αおよび第2の閾値βの設定が容易である。
【0049】
水位低下量Δfの積算値や移動平均値によって得られる水位低下量ΔFは、ばらつきが少なく、布回り状態の違いに応じて顕著に異なるので、水位低下量ΔFの検知精度の更なる向上を図れる。これにより、布回り状態を正確に検知して、水飛びの発生を効果的に抑制したり、布回りを効果的に改善したりすることできる。
【0050】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、水流調整処理(ステップS11~S18)は、洗い工程中の初期段階に1回だけ実行されてもよいし、洗い工程中に何回も実行されてもよい。
【0052】
また、洗濯機1は、洗濯槽4の軸線Jが上下方向Zに沿って垂直に延びるように配置された縦型の洗濯乾燥機であるが(図1参照)、洗濯機1には、軸線Jが上下方向Zに対して若干傾斜して配置された構成も含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 洗濯機
4 洗濯槽
5 パルセータ
14 給水弁
21 マイクロコンピュータ
28 水位検知部
f 設定水位
fr 水位
Δf 水位低下量
Q 洗濯物
α 第1の閾値
β 第2の閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6