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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】寝具評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20221025BHJP
   A61B 5/107 20060101ALI20221025BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20221025BHJP
   A47C 31/12 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61B5/055 390
A61B5/107 200
G01M99/00 Z
A47C31/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018105073
(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公開番号】P2019208628
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】516228501
【氏名又は名称】TEAMLAB BODY株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】菅本 一臣
(72)【発明者】
【氏名】西谷 剛史
(72)【発明者】
【氏名】西川 康行
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530155(JP,A)
【文献】特開2011-131040(JP,A)
【文献】特開2017-176539(JP,A)
【文献】特開2007-151817(JP,A)
【文献】特開2003-130635(JP,A)
【文献】特開2004-205231(JP,A)
【文献】特開2015-043825(JP,A)
【文献】特開2015-211830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0052570(US,A1)
【文献】山田 朱織 ほか2名,整形外科臨床における枕調節の意義,臨床整形外科,株式会社 医学書院,2011年,第46巻第9号,第852-858頁
【文献】山田 朱織,頸の姿勢異常と枕,脊椎脊髄ジャーナル,2008年,Vol.21, No.12,第1233-1240頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
A61B 5/055-5/22
A61B 6/00-6/14
A47C 17/00-31/12
A47G 9/00-11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
寝具に載せられた被検者の身体から前記寝具の評価を行う寝具評価方法であって、
前記評価する寝具として、互いに弾性特性が異なる複数種類の敷き寝具、及び、互いに高さが異なる複数種類の枕のいずれかを用意する工程と、
前記寝具に被検者の身体を載せる工程と、
前記寝具に載せられた前記被検者の背骨を撮影して前記背骨の複数のスライス画像を取得する工程と、
前記複数のスライス画像を組み合わせて前記背骨の3次元画像を作成する工程と、
前記背骨の3次元画像から脊椎骨の3次元的配列の評価を行う工程と、
を備える寝具評価方法。
【請求項2】
前記複数のスライス画像を取得する工程では、前記寝具に載せられた前記被検者の身体をMRI装置で撮影する、
請求項1に記載の寝具評価方法。
【請求項3】
前記複数のスライス画像を取得する工程、前記背骨の3次元画像を作成する工程、及び前記脊椎骨の3次元的配列の評価を行う工程は、
前記寝具の上で仰向けとされた前記被検者の身体、及び前記寝具の上で横向き寝とされた前記被検者の身体、のそれぞれに対して行う、
請求項1又は2に記載の寝具評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具を評価する寝具評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
寝心地の良い寝具を提供するために寝具を様々な観点から評価することは従来から行われている。特開2003-130634号公報には、寝具の沈み込み形状の計測方法及び計測装置が記載されている。この計測装置は、沈み込み量を計測するセンサと、インタフェースユニット及びAD変換ボードを介してセンサに接続されたコンピュータとを備える。センサは、基準関節片と、基準関節片から所定の方向に延びるように配列される複数の関節片とを備える。一の関節片は基準関節片に屈折可能に連結されており、他の複数の関節片のそれぞれは隣接する関節片に屈折可能に連結されている。各関節片の上面には圧力センサが固定されている。また、各関節片には、隣接する関節片に対する屈折角を検出する角度センサが組み込まれている。
【0003】
検出された屈折角及び圧力のデータはコンピュータに送信される。コンピュータは、受信した屈折角と圧力のデータから、被検者の身体が載せられた寝具の形状及び体圧曲線をグラフ表示する。また、前述した基準関節片は被検者の頭部側に配置され、各関節片は基準関節片から被検者の足側に向かって複数配列される。コンピュータは、基準関節片側の関節片に対する関節片の屈折角から寝具の形状をグラフ表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-130634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した計測装置では、一の関節片に対する他の関節片の屈折角から寝具の形状を測定する。しかしながら、寝具の形状は寝具の評価の一助にはなるものの、寝具の形状のみからは寝具の評価を適切に行うことができない。すなわち、寝心地の良い寝具を提供するためには寝具の形状を測定するだけでは不十分であり、寝具の評価の精度を高めるためには寝具に載せられた被検者の身体の状態を測定することが必要である。従って、被検者の身体の状態を加味した寝具の評価を高精度に行うことが求められる。
【0006】
本発明は、被検者の身体の状態を加味して寝具の評価を高精度に行うことができる寝具評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る寝具評価方法は、寝具に載せられた被検者の身体から寝具の評価を行う寝具評価方法であって、評価する寝具として、互いに弾性特性が異なる複数種類の敷き寝具、及び、互いに高さが異なる複数種類の枕のいずれかを用意する工程と、寝具に被検者の身体を載せる工程と、寝具に載せられた被検者の背骨を撮影して背骨の複数のスライス画像を取得する工程と、複数のスライス画像を組み合わせて背骨の3次元画像を作成する工程と、背骨の3次元画像から脊椎骨の3次元的配列の評価を行う工程と、を備える。
【0008】
この寝具評価方法では、寝具に載せられた被検者の身体から寝具の評価を行う。よって、被検者の脊椎骨(背骨)の3次元的配列を解析し、その解析結果に基づいて寝具の評価を行うことができるので、寝具の評価を高精度に行うことができる。また、この寝具評価方法では、被検者の背骨を撮影して背骨の複数のスライス画像を取得した後に、複数のスライス画像から背骨の3次元画像を作成する。そして、背骨の3次元画像から脊椎骨の3次元的配列の評価を行うことにより被検者が載せられた寝具の評価を行う。例えば、3次元画像から取得した脊椎骨の3次元的配列が自然な立ち姿勢のときの脊椎骨の3次元的配列に近いかどうかを評価し、取得した脊椎骨の3次元的配列が自然な立ち姿勢のときの脊椎骨の3次元的配列に近い場合には良い寝具であると評価すると共に、取得した脊椎骨の3次元的配列が自然な立ち姿勢のときの脊椎骨の3次元的配列に近くない場合には良くない寝具であると評価することができる。従って、寝具に載せられた被検者の背骨の3次元画像から脊椎骨の3次元的配列の評価を行うことにより、寝具の評価を高精度に行うことができる。
【0009】
また、複数のスライス画像を取得する工程では、寝具に載せられた被検者の身体をMRI装置で撮影してもよい。この場合、寝具に載せられた被検者の身体を撮影するときに、身体の任意の断層面におけるスライス画像を取得することができると共に放射線を不要とすることができる。従って、背骨の高精度な3次元画像を取得することができると共に撮影を安全に行うことができる。
【0010】
また、複数のスライス画像を取得する工程、背骨の3次元画像を作成する工程、及び脊椎骨の3次元的配列の評価を行う工程は、寝具の上で仰向けとされた被検者の身体、及び寝具の上で横向き寝とされた被検者の身体、のそれぞれに対して行ってもよい。この場合、仰向け及び横向き寝のそれぞれにおける背骨の状態から寝具の評価を行うことができる。従って、仰向け及び横向き寝のそれぞれを考慮した寝具の評価を行うことができるので、寝具の評価を一層高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検者の身体の状態を加味して寝具の評価を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る寝具評価方法に用いられる評価装置の一例を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る寝具評価方法の一例を示すフローチャートである。
図3図2の寝具評価方法において、寝具に被検者を仰向けで載せた状態を示す平面図である。
図4図2の寝具評価方法において、寝具に被検者を横向き寝で載せた状態を示す平面図である。
図5】(a),(b)及び(c)は、仰向けとされた被検者の背骨を水平方向から見た3次元画像の例を示す図である。
図6】(a),(b)及び(c)は、横向き寝とされた被検者の背骨を水平方向から見た3次元画像の例を示す図である。
図7図2の寝具評価方法において、評価される枕の種類を示す側面図である。
図8図7の各枕に仰向けとされた被検者の背骨を水平方向から見た3次元画像の例を示す図である。
図9図7の各枕に横向き寝とされた被検者の背骨を水平方向から見た3次元画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、図面を参照しながら本発明に係る寝具評価方法の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法又は角度等は図面に記載のものに限定されない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る寝具評価方法で用いられる評価装置の一例を示す斜視図である。図1に示されるように、本実施形態に係る寝具評価方法では、評価装置としてMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置1が用いられる。MRI装置1は、ガントリ2と、被検者Mが載置されるベッド3とを備える。一例として、ガントリ2の外側には、モニタ4aを含む操作盤4が設けられている。
【0015】
操作盤4は、CPU等のプロセッサと、ROM及びRAM等のメモリとを備えており、有線又は無線の通信ネットワークを介してMRI装置1が備える各機器と通信可能に接続されている。これにより、MRI装置1の操作者は、操作盤4に設けられた各種操作ボタン等を操作することにより、MRI装置1が備える各機器の動作を制御可能となっている。
【0016】
ガントリ2は、例えば、ベッド3に載せられた被検者Mが入り込む測定空間Kを内部に有する。MRI装置1による寝具の評価を実施するときには、ベッド3に寝具及び被検者Mが載置された状態でベッド3が測定空間Kに向かって移動することにより、被検者Mが測定空間Kの内部に進入する。MRI装置1は、測定空間Kの内部に進入した被検者Mの臓器等、撮影対象物の複数のスライス画像を撮影する。
【0017】
MRI装置1による複数のスライス画像の撮影が完了した後には、ベッド3が測定空間Kからガントリ2の外部に移動し、ベッド3がガントリ2から離れる方向に移動して撮影が完了する。MRI装置1が撮影した撮影対象物の複数のスライス画像は画像処理によって組み合わされ、当該撮影対象物の3次元画像が生成される。本実施形態では、寝具に載せられた被検者Mの背骨の3次元画像を生成し、当該背骨の3次元画像を評価することによって寝具の評価を行う。
【0018】
本明細書において、「寝具」は、寝具の使用者が身体を休めたり睡眠をとったりするときに使用者の身体が当てられるものであり、典型的には、枕、布団、マットレス、座布団又はクッションである。「敷き寝具」とは、寝具のうち使用者の身体が載せられるものを示しており、例えば、マットレス、敷き布団、カーペット又は絨毯である。「被検者」は、背骨の撮影が行われる撮影対象者であり、例えば、研究開発等において寝具を評価するときに背骨が評価される被評価者を含む。「評価」とは、作成した対象物の画像から対象物の良し悪しを決定することを含んでおり、対象物の状態が良好であるか否かを判断することを含んでいる。
【0019】
「背骨」とは脊柱を示しており、「背骨」は頸椎、胸椎、腰椎、仙椎及び尾椎を含んでいる。頸椎は頭部側から臀部側に向かって並ぶ第1~第7頸椎を含んでおり、胸椎は頭部側から臀部側に向かって並ぶ第1~第12胸椎を含んでいる。また、腰椎は、頭部側から臀部側に向かって並ぶ第1~第5腰椎を含んでいる。「スライス画像」は撮影対象物の断層画像を示しており、「3次元画像」は複数のスライス画像が組み合わされることによって撮影対象物が立体的に表示された画像を示している。
【0020】
次に、本実施形態に係る寝具評価方法の各工程の例について図2を参照しながら説明する。図2は、寝具評価方法の各工程の例を示すフローチャートである。この寝具評価方法では、寝具の上に被検者を載せて被検者の背骨の3次元画像を撮影し、背骨の3次元画像が自然な立ち姿勢の背骨の状態に近いか否かを評価する。すなわち、寝具に載せられた被検者Mの背骨の3次元画像が自然な立ち姿勢の背骨の状態に近い場合、被検者Mの身体に無理な力がかかっていないので、寝具が良好であると評価できる。一方、寝具に載せられた被検者Mの背骨の3次元画像が自然な立ち姿勢の背骨から乖離している場合、被検者Mの身体に無理な力がかかっていると推測されるので、寝具が良好でないと評価できる。
【0021】
まず、対象となる寝具がマットレスである場合について説明する。最初に、対象となる寝具と被検者Mの設置を行う(ステップS1)。このとき、図3に示されるように、例えば対象となる敷き寝具A、敷き寝具B、敷き寝具Cのいずれかをベッド3の上に載せ、ベッド3の上に載せた寝具の上に被検者Mの身体を載せる(身体を載せる工程)。一例として、敷き寝具Aは厚さ100mmの低反発マットレス、敷き寝具Bは複数の凹凸とスリットが分散配置された厚さ90mmの高反発マットレス、敷き寝具Cは厚さ5mmのウールパッドであり、敷き寝具A、敷き寝具B及び敷き寝具Cのそれぞれに対して評価を行う。
【0022】
ベッド3に設置した敷き寝具Aの上に被検者Mの身体を載せてベッド3をMRI装置1の測定空間Kに移動させる。そして、MRI装置1によって、図3及び図4に示されるように、被検者Mの仰臥位時(仰向け時)の身体、及び被検者Mの側臥位時(横向き寝時)の身体、をそれぞれ撮影する(ステップS2)。ステップS2では、敷き寝具Aの幅方向の中央に被検者Mの身体正中線の位置を合わせて身体正中線に沿って延びる断層面Tのスライス画像を撮影する(スライス画像を取得する工程)。このとき、断層面Tを敷き寝具Aの幅方向にずらしながら断層面Tのスライス画像を複数回撮影する。
【0023】
以上のように、断層面Tのスライス画像を複数回撮影した後には、各スライス画像から被検者Mの背骨の画像を抽出して被検者Mの背骨の3次元画像を生成する(ステップS3、3次元画像を生成する工程)。このとき、各スライス画像から抽出した背骨の部分を背骨の3次元的な表面画像(Surface Model)に変換してもよい。以上のステップS1~S3を敷き寝具A、敷き寝具B及び敷き寝具Cの全てに対して行う。
【0024】
敷き寝具A、敷き寝具B及び敷き寝具Cの全てに対して被検者Mの背骨の3次元画像を生成した後には(ステップS4においてYES)、背骨及び寝具の評価を行う(ステップS5、評価を行う工程)。図5(a)、図5(b)及び図5(c)のそれぞれは、敷き寝具A、敷き寝具B及び敷き寝具Cのそれぞれに仰臥位とされた被検者Mの身体を撮影した結果得られた背骨の3次元画像から得た画像N1を模式的に示している。画像N1、及び後述する画像N2(図6参照)、画像N3(図8参照)及び画像N4(図9参照)は、被検者Mの身体を撮影した結果得られた背骨の3次元画像から得た正確な側面像(正面像)に相当する。
【0025】
背骨(脊椎骨)は、その1つ1つが3次元的形状を有し、3次元的に配列されている。本明細書では、脊椎骨の1つ1つが3次元的に配列されている状態を「3次元的配列」と称する。脊椎骨は前後左右に傾いたり曲がったりすることが可能な状態で配列されており、本実施形態では、この脊椎骨の3次元的配列の評価を行うことによって寝具を評価している。
【0026】
この脊椎骨の3次元的配列の評価において、例えば、仰臥位の場合は、頸椎の臀部側(頸椎の左側)を通ると共に身体正中線に沿って延びる基準線L1から腰椎の臀部側の最上点P2までの距離の長短を測定する。具体例として、第7頸椎の中心点O1を通ると共に身体正中線に沿って延びる基準線L1から第5腰椎の最上点P2までの距離D1の長短によって評価を行った。距離D1の値(絶対値)が小さく0に近いときの背骨の状態が自然な立ち姿勢の背骨の状態であることを示しており、距離D1の値が大きいほど背骨の状態が不自然であることを示している。
【0027】
図5(a)、図5(b)及び図5(c)に示される例では、敷き寝具Aでは距離D1が-18mm、敷き寝具Bでは距離D1が+12mm、敷き寝具Cでは距離D1が+27mmであった。従って、被検者Mを仰臥位とした場合には、敷き寝具Bで最も距離D1が短いので、複数の凹凸とスリットが分散配置された高反発マットレスである敷き寝具Bを用いた場合が最も良好であったことが分かる。すなわち、敷き寝具A、敷き寝具B及び敷き寝具Cのうち、敷き寝具Bに仰臥位とされた被検者Mの背骨の状態が自然な立ち姿勢の背骨に最も近いことが分かる。
【0028】
図6(a)、図6(b)及び図6(c)のそれぞれは、敷き寝具A、敷き寝具B及び敷き寝具Cのそれぞれに側臥位で載せられた被検者Mの身体を撮影した結果得られた背骨の3次元画像から得た画像N2を模式的に示している。この脊椎骨の3次元的配列の評価において、例えば、側臥位の場合は、身体正中線に対する頸椎の頭部側(頸椎の右側)と頸椎の臀部側とを結ぶ直線の角度θ1と、身体正中線に対する腰椎の臀部側と胸椎の臀部側(又は腰椎の頭部側)とを結ぶ直線の角度θ2とを測定する。
【0029】
具体例として、身体正中線に対する第2頸椎と第7頸椎とを結ぶ直線の角度θ1と、身体正中線に対する第5腰椎と第12胸椎とを結ぶ直線の角度θ2とを測定した。なお、一部の画像N2においては、角度θ1又は角度θ2の値が非常に小さかったため角度θ1又は角度θ2の一部の図示を省略している。角度θ1及び角度θ2が小さく0°に近いときの背骨の状態が自然な立ち姿勢の背骨であることを示しており、角度θ1及び角度θ2が大きいほど背骨の状態が不自然であることを示している。図6(a)、図6(b)及び図6(c)に示される例では、敷き寝具Aでは角度θ1が8.4°角度θ2が0.7°であり、敷き寝具Bでは角度θ1が1.9°角度θ2が0.6°であり、敷き寝具Cでは角度θ1が5.0°角度θ2が1.1°であった。
【0030】
従って、被検者Mを側臥位とした場合には、敷き寝具Bが最も角度θ1及び角度θ2が小さいので、複数の凹凸とスリットが分散配置された高反発マットレスである敷き寝具Bを用いた場合が最も良好であったことが分かる。すなわち、敷き寝具A、敷き寝具B及び敷き寝具Cのうち、敷き寝具Bに側臥位とされた被検者Mの背骨の状態が自然な立ち姿勢の背骨に最も近いことが分かる。以上のように、仰臥位及び側臥位のそれぞれの場合における敷き寝具A、敷き寝具B及び敷き寝具Cの評価を行った後、一連の工程を終了する。
【0031】
次に、対象となる寝具が枕である場合について説明する。対象となる寝具が枕である場合でも、例えば、図2に示される工程によって評価を行う。従って、前述した工程と重複する内容については説明を適宜省略する。最初に、対象となる枕をマットレスの上に載せて枕と被検者Mの設置を行う(ステップS1)。図7に示されるように、対象となる枕X、枕Y及び枕Zのいずれかを敷き寝具Bの上に載せ、敷き寝具Bに載せた枕の上に被検者Mの後頭部M1を載せる。一例として、枕Xは高さが30mmの枕、枕Yは高さが60mmの枕、枕Zは高さが90mmの枕である。枕X、枕Y、枕Z、及び枕が無く後頭部M1を直接敷き寝具Bの上に載せた場合(枕無し)、のそれぞれ対して評価を行う。
【0032】
ベッド3の上における枕及び被検者Mの設置が完了した後には、ベッド3をMRI装置1の測定空間Kに移動させ、前述と同様、被検者Mの仰臥位時の身体、及び被検者Mの側臥位時の身体、をそれぞれ撮影し、スライス画像を複数回撮影する(ステップS2)。そして、各スライス画像から被検者Mの背骨の画像を抽出して被検者Mの背骨の3次元画像を生成する(ステップS3)。枕X、枕Y、枕Z及び枕無しの全てに対して被検者Mの背骨の3次元画像を生成した後には(ステップS4においてYES)、背骨及び枕の評価を行う(ステップS5)。
【0033】
図8は、枕X、枕Y、枕Z及び敷き寝具B(枕無し)のそれぞれに後頭部M1が載せられて仰臥位とされた被検者Mの背骨の3次元画像から得た画像N3を示している。仰臥位の場合における脊椎骨の3次元的配列の評価は、前述と同様、頸椎の臀部側を通ると共に身体正中線に沿って延びる基準線L2から腰椎の臀部側の最上点までの長短を測定する。すなわち、頸椎の臀部側を通ると共に身体正中線に沿って延びる基準線L2に対する腰椎のずれ量を測定し、本実施形態では、第7頸椎の中心点O2を通ると共に身体正中線に沿って延びる基準線L2に対する第5腰椎N5のずれ量の長短によって評価を行った。当該ずれ量が小さく0に近いときの背骨の状態が自然な立ち姿勢の背骨の状態であることを示しており、当該ずれ量が大きいほど背骨の状態が不自然であることを示している。
【0034】
図8に示される例では、被検者Mを仰臥位とした場合には、高さが30mmである枕X、及び高さが60mmである枕Yを用いた場合(N(X)の場合及びN(Y)の場合)が基準線L2に対する第5腰椎N5のずれ量が比較的小さいので、枕X及び枕Yを用いた場合が良好であったことが分かる。すなわち、枕X、枕Y、枕Z及び枕無しのうち、高さが30mmである枕X、及び高さが60mmである枕Yに仰臥位とされた被検者Mの背骨の状態が自然な立ち姿勢の背骨に最も近いことが分かる。
【0035】
図9は、枕X、枕Y、枕Z及び枕無しのそれぞれの場合において側臥位とされた被検者Mの身体を撮影した結果得られた背骨の3次元画像から得た画像N4を示している。側臥位の場合における脊椎骨の3次元的配列の評価は、身体正中線に対する頸椎の頭部側(頸椎の右側)と頸椎の臀部側とを結ぶラインL3の傾き度合を測定する。具体例として、身体正中線に対する第2頸椎と第7頸椎とを結ぶラインL3の傾き度合を測定した。なお、一部の画像N4ではラインL3の傾き度合が非常に小さいため、一部の画像N4ではラインL3の図示を省略している。身体正中線に対するラインL3の傾きが小さいときの背骨の状態が自然な立ち姿勢の背骨の状態であることを示しており、身体正中線に対するラインL3の傾きが大きいほど背骨の状態が不自然であることを示している。
【0036】
図9に示される例では、被検者Mを側臥位とした場合には、高さが60mmである枕Yを用いた場合(N(Y)の場合)が身体正中線に対する第2頸椎と第7頸椎とを結ぶラインL3の傾きが最も小さいので、枕Yを用いた場合が最も良好であったことが分かる。すなわち、枕X、枕Y、枕Z及び枕無しのうち、高さが60mmである枕Yに側臥位とされた被検者Mの背骨の状態が自然な立ち姿勢の背骨に最も近いことが分かる。以上のように、仰臥位及び側臥位のそれぞれの場合における枕X、枕Y、枕Z及び枕無しの評価を行った後、一連の工程を終了する。
【0037】
次に、本実施形態に係る寝具評価方法の作用効果について詳細に説明する。この寝具評価方法では、敷き寝具A、敷き寝具B、敷き寝具C、枕X、枕Y及び枕Zのいずれかに載せられた被検者Mの身体から敷き寝具A、敷き寝具B、敷き寝具C、枕X、枕Y及び枕Zのそれぞれの評価を行う。よって、被検者Mの身体の脊椎骨の3次元的配列を解析し、その解析結果に基づいて敷き寝具A、敷き寝具B、敷き寝具C、枕X、枕Y及び枕Z等の寝具の評価を行うことができるので、寝具の評価を高精度に行うことができる。
【0038】
また、この寝具評価方法では、被検者Mの背骨を撮影して背骨の複数のスライス画像を取得した後に、複数のスライス画像から背骨の3次元画像を作成する。そして、背骨の3次元画像から脊椎骨の3次元的配列の評価を行うことにより被検者Mが載せられた寝具の評価を行う。具体的には、3次元画像から取得した脊椎骨の3次元的配列が自然な立ち姿勢のときの脊椎骨の3次元的配列に近いかどうかを評価し、取得した脊椎骨の3次元的配列が自然な立ち姿勢のときの脊椎骨の3次元的配列に近い場合には良い寝具であると評価すると共に、取得した脊椎骨の3次元的配列が自然な立ち姿勢のときの脊椎骨の3次元的配列に近くない場合には良くない寝具であると評価することができる。従って、寝具に載せられた被検者Mの背骨の3次元画像から脊椎骨の3次元的配列の評価を行うことにより、寝具の評価を高精度に行うことができる。
【0039】
また、複数のスライス画像を取得する工程では、寝具に載せられた被検者Mの身体をMRI装置1で撮影する。よって、寝具に載せられた被検者Mの身体を撮影するときに、身体の任意の断層面Tにおけるスライス画像を取得することができると共に放射線を不要とすることができる。従って、背骨の高精度な3次元画像を取得することができると共に撮影を安全に行うことができる。
【0040】
また、複数のスライス画像を取得する工程、背骨の3次元画像を作成する工程、及び脊椎骨の3次元的配列の評価を行う工程は、寝具の上で仰向け(仰臥位)とされた被検者Mの身体、及び寝具の上で横向き寝(側臥位)とされた被検者Mの身体、のそれぞれに対して行う。よって、仰向け及び横向き寝のそれぞれにおける背骨の状態から寝具の評価を行うことができる。従って、仰向け及び横向き寝のそれぞれを考慮した寝具の評価を行うことができるので、寝具の評価を一層高精度に行うことができる。
【0041】
また、図5(a)、図5(b)、図5(c)、図6(a)、図6(b)及び図6(c)に示されるように、敷き寝具の評価では、低反発マットレスである敷き寝具A、高反発マットレスである敷き寝具B、及びウールパッドである敷き寝具Cに対して評価を行うことにより、マットレスの弾性特性の相違による脊椎配列の状態を把握することができる。更に、図8及び図9に示されるように、枕の評価では、互いに高さが異なる枕X、枕Y、枕Z及び枕無しに対して評価を行うことにより、枕の高さの相違によって互いに異なる頸椎及び脊椎骨配列の状態を把握することができる。例えば、高反発マットレスである敷き寝具Bを被検者Mに提供すると共に、枕の内部の詰め物の量等を調整して高さが30mmの枕X又は高さが60mmの枕Yを被検者Mに提供することが可能となり、本実施形態に係る寝具評価方法では最適な寝具の提案を行うことが可能となる。
【0042】
以上、本発明に係る寝具評価方法の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。すなわち、寝具評価方法の各工程の内容及び順序は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0043】
例えば、前述の実施形態では、評価装置としてMRI装置1を用いて被検者Mの背骨の3次元画像を作成する例について説明した。しかしながら、MRI装置以外の評価装置を用いて被検者Mの背骨の3次元画像を作成してもよい。例えば、CT(Computed Tomography)、PET(Positron EmissionTomography)、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)又はPET-CT(Positron Emission Tomography - Computed Tomography)によって被検者Mの背骨の3次元画像を作成してもよい。
【0044】
また、前述の実施形態では、敷き寝具A、敷き寝具B、敷き寝具C、枕X、枕Y及び枕Zのそれぞれに載せられた被検者Mの背骨を評価する例について説明した。しかしながら、本発明に係る寝具評価方法は、敷き寝具及び枕に限られず、種々の寝具に適用させることができる。
【符号の説明】
【0045】
1…MRI装置(評価装置)、2…ガントリ、3…ベッド、4…操作盤、4a…モニタ、A,B,C…敷き寝具、D1…距離、K…測定空間、L1,L2…基準線、M…被検者、M1…後頭部、N1,N2,N3,N4…画像、N5…第5腰椎、O1,O2…中心点、P2…最上点、T…断層面、X,Y,Z…枕、θ1,θ2…角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9