(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】架線吊り具用保護カバー装置及びこれに使用するカバー本体
(51)【国際特許分類】
B60M 1/22 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
B60M1/22 F
(21)【出願番号】P 2018125196
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】P 2018001300
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591222234
【氏名又は名称】株式会社ビーシー製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】甲平 弘
(72)【発明者】
【氏名】甲平 雅昭
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-086011(JP,U)
【文献】特開2001-263327(JP,A)
【文献】特開2001-200820(JP,A)
【文献】特開2019-043537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌め合わせると一端と他端とにフランジを有する筒体となる一対のカバー本体と、前記一対のカバー本体を離反不能に保持する一対の止めピンとを有しており、
前記一対のカバー本体は、重ね合わせると筒状になるよう半円溝を有する半割り樋状部と、前記半割り樋状部の一端に形成したフランジ部と、前記半割り樋状部の他端部において前記半円溝と反対側に突出した突起部とを有しており、
前記フランジ部には、2つのカバー本体を重ね合わせたときには一方のカバー本体の突起部が入り込む切り開き溝が形成されていて、一方のカバー本体の突起部が他方のカバー本体の切り開き溝に嵌まると、2つのカバー本体は軸心と直交した方向に離反不能に保持されるようになっており、
かつ、前記フランジ部のうち前記切り開き溝を挟んだ両側に、当該フランジ部の外端面から突出した膨出部が形成されていて、一対の膨出部で1つの突起部が挟まれた形態になっており、前記一対の膨出部と1つの突起部とに、前記半割り樋状部の軸線と直交した方向と平行なピン穴が互いに連通するように形成されている構成であって、
前記止めピンは、前記膨出部と突起部とのピン穴に嵌まるストレート状の連結部と、前記連結部の一端に連続していて前記膨出部と突起部の外側に位置して前記連結部と略平行に延びる抜け止め部とを有しており、
前記抜け止め部の先端部に、一方の膨出部の外側面に係止するストッパー部が形成されており、前記抜け止め部を弾性に抗して連結部に対して広げ変形させることにより、前記連結部をピン穴に挿脱させることが許容されており、
かつ、前記膨出部に、前記連結部を1つの膨出部のみに嵌まっている状態まで後退させたときに、前記ストッパー
部が係合して止めピンを仮保持する仮止め係合部を形成している、
架線吊り具用保護カバー装置。
【請求項2】
請求項1に記載した架線吊り具用保護カバー装置のカバー本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用の架線吊り具用保護カバー装置及びこれに使用するカバー本体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の架線は線材製の吊り具を介してケーブルで吊支されており、吊り具は、保護カバーを介してケーブルに吊り懸けされている(ケーブルで中間ケーブルを吊支し、中間ケーブルで架線を吊支することもある。)。保護カバーには様々な種類があるが、ケーブルに被嵌するものであるため、2つのカバー本体から成っていて、嵌め合わせると筒状になって、内部にケーブルが通るように構成されている。
【0003】
そして、2つのカバー本体を嵌め合わせた状態に保持するために止めピンが使用されており、この止めピンとして、特許文献1に記載されているような割りピンが使用されている。しかし、割りピンは、ピン穴に挿入してから先端を曲げねばならないため、作業者の負担が大きいという問題がある(保護カバー装置の取付けや交換は高所での作業であり、また、終電後の夜間での作業が大半であり、更に、安全のために手袋を使用して行われるため、作業者の負担は非常に大きい。)。
【0004】
そこで、折り曲げ作業を要しない止めピンが提案されており、その例として特許文献2には、ピン穴に嵌まる連結部をく字形に曲げると共に、ピン穴から露出した部分を折り返してストッパー部を形成したものが開示されている。また、ピン穴に嵌まる部分と、ピン穴の外側に位置した抜け止め部とを有するベータピンと呼ばれるものも提案されている。
【0005】
特許文献2の止めピンは、単にピン穴に挿入するだけで一対のカバー本体を離反不能に保持できるため、作業性に優れている。また、構造は簡単であるため、コスト的に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平4-55422号のCD-ROM
【文献】特開2014-189163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、保護カバー装置を構成する一対のカバー本体は同一形状になっているが、一対のカバー本体を嵌め合わせた状態にして、対の関係を明確化しておきたいという要望がある。すなわち、一対のカバー本体を事前に嵌め合わせておいて製造不良がないことを確認して、セットの関係を明確化しておくことにより、現場において作業をスムースに行えるようにしておきたいという要望がある。
【0008】
この場合は、連結されているカバー本体を現場で分離してから、ケーブルにセットして連結し直すという手順を踏まねばならない。従って、一方のカバー本体に止めピンを仮保持しておけると、現場での作業はしごく容易になるし、止めピンの脱落も防止又は大幅に抑制できる。
【0009】
しかし、特許文献2の止めピンを初めとした従来の止めピンは、2つのカバー本体の嵌め合わせを許容しつつ、一方のカバー本体に仮保持できるという機能を有していないため、一対のカバー本体を嵌め合わせておいて止めピンを完全に挿入した状態にしておいて、現場で止めピンを抜き外してから、一対のカバー本体を分離して吊り具の装着し、次いで、一対のカバー本体を嵌め合わせ直し、それから、再び止めピンをピン穴に挿入してカバー本体同士の嵌め合わせ状態を保持する、という手順を採らねばならないため、作業が非常に面倒であった。
【0010】
本願発明はこのような現状を契機として成されたものであり、架線吊り具用保護カバー装置に関連して、改良された技術を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、架線吊り具用保護カバー装置とこれに使用するカバー本体を含んでいる。
【0012】
本願発明の架線吊り具用保護カバー装置は、
「嵌め合わせると一端と他端とにフランジを有する筒体となる一対のカバー本体と、前記一対のカバー本体を離反不能に保持する一対の止めピンとを有しており、
前記一対のカバー本体は、重ね合わせると筒状になるよう半円溝を有する半割り樋状部と、前記半割り樋状部の一端に形成したフランジ部と、前記半割り樋状部の他端部において前記半円溝と反対側に突出した突起部とを有しており、
前記フランジ部には、2つのカバー本体を重ね合わせたときには一方のカバー本体の突起部が入り込む切り開き溝が形成されていて、一方のカバー本体の突起部が他方のカバー本体の切り開き溝に嵌まると、2つのカバー本体は軸心と直交した方向に離反不能に保持されるようになっており、
かつ、前記フランジ部のうち前記切り開き溝を挟んだ両側に、当該フランジ部の外端面から突出した膨出部が形成されていて、一対の膨出部で1つの突起部が挟まれた形態になっており、前記一対の膨出部と1つの突起部とに、前記半割り樋状部の軸線と直交した方向と平行なピン穴が互いに連通するように形成されている」
という基本構成になっている。
【0013】
そして、
「前記止めピンは、前記膨出部と突起部とのピン穴に嵌まるストレート状の連結部と、前記連結部の一端に連続していて前記膨出部と突起部の外側に位置して前記連結部と略平行に延びる抜け止め部とを有しており、
前記抜け止め部の先端部に、一方の膨出部の外側面に係止するストッパー部が形成されており、前記抜け止め部を弾性に抗して連結部に対して広げ変形させることにより、前記連結部をピン穴に挿脱させることが許容されており、
かつ、前記膨出部に、前記連結部を1つの膨出部のみに嵌まっている状態まで後退させたときに、前記ストッパー部が係合して止めピンを仮保持する仮止め係合部を形成している」
という構成になっている。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の架線吊り具用保護カバー装置を構成するカバー本体である。
【発明の効果】
【0019】
本願発明では、止めピンはベータピンの一種の変形版になっており、割りピンのように先端部を折り曲げる作業は必要ないため、カバー本体への取付け作業・取り外し作業は容易である。従って、毛袋を使用して夜間に高所で行うような作業であっても、特許文献2の止めピンと同様に、作業者の負担を軽減することができる。
【0020】
そして、請求項1,2では、止めピンは、一方のカバー本体に仮止めしておくことができるため、一対のカバー本体を予め嵌め合わせた状態にしておいて、現場で分離してから吊り具を装着して再度の嵌め合わせを行うにおいて、止めピンを一方のカバー本体に取り付けたままにしておけるため、一対のカバー本体を予めセットにしておいて、現場で分離してから再度嵌め合わせ直す作業を、容易に行うことができる。従って、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0021】
また、止めピンを仮止め状態まで後退させることは、抜け止め部を弾性に抗して広げてから後退させることによって簡単に行える。この面でも、一対のカバー本体を現場で分離してから再度嵌め直す作業を、簡単かつ容易に行える。また、抜け止め部を弾性に抗して広げ変形しないと連結部をピン穴から抜き外すことはできないため、一対のカバー本体を分離不能に保持する機能においても優れている。
【0022】
実施形態で開示した止めピンは、一対の膨出部が先端に位置したストッパー部と基部に位置した鉤状係止部とで挟まれるため、抜け防止機能に優れている。また、基部は、作業者が止めピンをピン穴に挿脱するにおいて指先で摘む部分として機能するが、鉤状係止部があることによって基部は膨れた状態になって人の指先で摘み易くなるため、作業性の向上に貢献できる。従って、人が止めピンを指先で摘み損ねて落してしまう、といった事態も防止又は大幅に抑制できる。
【0023】
この場合、ストッパー部をU形に形成すると、ストッパー部は単純な形状であるため、一方の膨出部に対する係脱を容易化できる。他方、実施形態のようにストッパー部をループ形状(カール形状)に形成すると、一方の膨出部に対する引っ掛かり代を大きくできるため、離脱防止機能に優れている。実施形態の止めピンは、請求項1に記載したカバー装置に使用する止めピンとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は嵌め合わせた状態の斜視図、(B)は分離斜視図である。
【
図2】(A)は嵌め合わせた状態の正面図、(B)は分離して止めピンを仮止めした状態での正面図である。
【
図3】(B)は分離して止めピンを仮止めした状態での斜視図、(B)は仮止め状態での要部の縦断正面図である。
【
図5】第7実施形態を示す図で、(A)は止めピンの正面図、(B)はカバー装置に組み込んだ状態の正面図、(C)(D)は変形例の部分正面図である。
【
図6】(A)は第8実施形態の正面図、(B)は第9実施形態の部分正面図、(C)は第10実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1).第1実施形態の基本構造
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、
図1~
3を参照して第1実施形態を説明する。
図1のとおり、保護カバー装置は、同一構造に形成された一対のカバー本体1と、一対のカバー本体1を嵌め合わせ状態(結合状態、一体化状態)に保持する2本の止めピン2とで構成されている。
【0026】
カバー本体1は樹脂の成形品であり、互いに重ね合わせると円筒体を成す断面半円状の半割り樋状部3と、その一端に形成したフランジ部4と、他端に形成した突起部5とを有している。突起部5の突出寸法は、フランジ部4の突出寸法と同じ寸法に設定されている。従って、フランジ部4の外周面と突起部5の外周面とは、滑らかに連続している。
【0027】
突起部5は、半割り樋状部3の開口溝と反対方向に突出しており、横幅Wは半割り樋状部3の外径(横幅)Rよりも小さくなっている。一方、フランジ部4は、半割り樋状部3の開口方向の箇所に位置した切り開き溝6を有しており、一方のカバー本体1の切り開き溝6に他方のカバー本体1の突起部5が嵌まることにより、フランジ部4と突起部5とで円板体が構成されるようになっている。
【0028】
突起部5の横幅Wが半割り樋状部3の外径Rよりも小さいため、半割り樋状部3の他端部には、突起部5の外側に位置した露出部7が存在しており、一方のカバー本体1の露出部7が他方のカバー本体1におけるフランジ部4の内径部8に嵌まることにより、一対のカバー本体1は、軸心と直交した方向(半径方向)に離反不能に保持されている。
【0029】
また、半割り樋状部3の長手両側縁のうち、一方の長手側縁部は、内向き段部9を有する第1係合ガイド部10になっていて、他方の長手側縁部は、外向き段部11を有する第2係合ガイド部12になっており、
図2(A)のとおり、一方のカバー本体1の第1係合ガイド部10と他方のカバー本体1の第2係合ガイド部12とが嵌まり合うことにより、一対のカバー本体1はガタ付き不能に保持されている。また、両係合ガイド部10,12は、2つのカバー本体1をスライドさせて嵌め合わせるに際してのガイド機能も保持している。
【0030】
半割り樋状部3のうち他端寄りの部位には、突起部5の付け根に連続した突条13が周方向に延びるように形成されている。一方のカバー本体1の突条13が、他方のカバー本体1におけるフランジ部4の内周縁14に当たることにより、2つのカバー本体1の軸方向の位置が規定されている。
【0031】
突起部5は、軸方向にある程度の寸法を有しており、2つのカバー本体1を嵌め合わせた状態で、他方のカバー本体1のフランジ部4の外側に突出している。そこで、フランジ部4の外面のうち切り開き溝6を挟んだ両側の部位に、突起部5と重なる左右の膨出部15,15′を形成している。そして、左右の膨出部15,15′と1つの突起部5とに、嵌め合わせた状態で一直線に連続するピン穴16を形成している。なお、膨出部15,15′の軸方向の突出寸法は突起部5の突出寸法よりも小さくなっているが、突起部5と同じ突出寸法に揃えておくことも可能である。
【0032】
(2).第1実施形態の止めピン・仮止め構造
止めピン2はステンレス鋼線等の金属線材から成っており、ピン穴16に嵌まるストレート状の連結部20と、連結部20の一端に基部21を介して繋がった抜け止め部22とを有している。抜け止め部22は、膨出部15,15′及び突起部5の外側に位置して連結部20と略平行に延びるようになっており、抜け止め部22の先端には、一方の膨出部15の外側面15aに係止する(引っ掛かって止まる)ストッパー部23を曲げ形成している。
【0033】
ストッパー部23は、カバー装置の軸心方向から見て、連結部20と反対側に開口する略U形に形成されている。連結部20の先端部20aは一方の膨出部15の外側に突出しているが、
図2(A)に示すように、連結部20の先端部20a及び抜け止め部22のストッパー部23が一方の膨出部15の外側に突出した寸法L1は、膨出部15の幅寸法(或いはピン穴16の長さ)L2よりも僅かに小さい寸法に設定している(L1=L2であってもよい。)。なお、連結部20の先端部20aは、必ずしも一方の膨出部15の外側に露出させる必要はない。
【0034】
連結部20と抜け止め部22とが繋がった基部21には、他方の膨出部15′の外側面15bに当接する鉤状係止部24を形成している。鉤状係止部24はストッパー部23と反対方向に突出している。基部21の外端部は、軸新方向から見たフランジ部4の外周にほぼ沿って延びるように傾斜させている。これは、基部21ができるだけカバー本体1の外側にはみ出ないようにして、ビニル袋や凧糸などの飛来物の引っ掛りを防止するための措置である。
【0035】
止めピン2は、基部21を弾性変形させて抜け止め部22を連結部20に対して広げ変形することにより、連結部20をピン穴16に挿脱することができる。そして、膨出部15,15′の軸心側端面15cに、連結部20が一方の膨出部15のみに嵌まった状態まで後退させたときに、ストッパー部23が嵌まる凹所状の仮止め係合部25を形成している。
【0036】
ストッパー部23は湾曲部(R部)を有するU形に曲がっているので、仮止め係合部25は、
図3(B)に明示するように、ストッパー部23の湾曲部が嵌まる円弧状に形成されている。但し、仮止め係合部25は、ストッパー部23が引っ掛かって止まる機能があれば足りので、円錐状や角形のなどの断面形状であってもよい。
【0037】
(3).第1実施形態のまとめ
既述のとおり、止めピン2は、抜け止め部22を基部21の弾性に抗して広げ変形することにより、連結部20をピン穴16に挿脱することができる。連結部20をピン穴16に差し込みきると、ストッパー部23が一方の膨出部15の外側面15aに係止する(引っ掛かって止まる)ため、止めピン2は抜け不能に保持される。従って、一対のカバー本体1を筒状に結合した状態に保持できる。
【0038】
架線の張設や交換などに際しては、まず、
図1に一点鎖線で示す吊り具27をケーブル28に嵌め込み、次いで、分離した1つのカバー本体1を、ケーブル28を挟んだ状態で重ね合わせてからスライドさせて一体化し、次いで、一対ずつの膨出部15,15′と突起部5とを止めピン2で連結するという手順が採られる。
【0039】
そして、各カバー本体1がバラバラの状態になっている場合は、各カバー本体1の1つの膨出部15′に止めピン2を仮止めしておくことにより、2つのカバー本体1を一体化する作業を容易に行える。すなわち、カバー本体1をケーブル28に被せてからスライドさせて、2つのカバー本体1を一体化し、次いで、止めピン2の連結部20をピン穴16に差し込むという手順は不要であり、予め1つの膨出部15′にセットされている止めピン2を押し込むという単純な作業により、架線吊り具用保護カバー装置の組み立て作業を行える。
【0040】
従って、夜間において、高所で手袋を装着した状態で行う作業であっても、架線吊り具用保護カバー装置の取付け作業を簡単かつ迅速に行うことができる。止めピン2の脱落も、防止又は著しく抑制することができる。
【0041】
一対のカバー本体1を予め一体化しておいて、現場で分離してから再度一体化し直す場合は、止めピン2を途中まで抜いて一方の膨出部15に仮止めした状態にし、次いで、カバー本体1を互いに分離してから、ケーブル28への被せ作業とスライドによる嵌め合わせ(結合)を行い、それから、止めピン2を押し込むという手順を採ったらよい。この場合も、作業は容易であり、止めピン2の脱落も防止又は著しく抑制することができる。
【0042】
実施形態のように、抜け止め部22を膨出部15,15′及び突起部5の軸心側端面15c,5cの側に位置させると、止めピン2がカバー本体1の外側にはみ出ることを極力防止できるため、飛来物の引っ掛かり事故を防止する上で好適である。ストッパー部23は、抜け止め部22の先端をL形に曲げただけでよいが、実施形態のようにストッパー部23をU字状に形成すると、ストッパー部23を、膨出部15,15′及び突起部5の軸心側端面15c,5c上を滑り移動させることができるため、止めピン2の挿脱を容易に行える利点がある。
【0043】
(4).第2~6実施形態
次に、
図4以下に示す他の実施形態を説明する。まず、
図4に示す第2~6実施形態を説明する。
図4(A)に示す第2実施形態では、仮止め係合部25を軸線方向に開口溝に形成している。
図4(B)に示す第3実施形態では、ストッパー部23をJ字形に形成している。また、
図4(C)に示す第4実施形態では、ストッパー部23は円形にカールさせている。これら第3,4実施形態では、ストッパー部23は、膨出部15,15′及び突起部5の軸心側端面15c,5cに対する滑り移動の容易性を損なうことなく、飛来物の引っ掛かりをしっかりと防止できる利点がある。
【0044】
図4(D)に示す第5実施形態では、基部21は、連結部20と抜け止め部22との延長部を重ね合わせた形態に形成しており、基端は円形にカールさせている。また、他方の膨出部15,15′の外側面15bに引っ掛かる鉤状係止部24も形成している。この実施形態では、軸心方向から見て基部21はフランジ部4の外側にはみ出ないため、飛来物の引っ掛かり防止機能に優れている。なお、第2~4実施形態と第5実施形態とを組み合わせることも可能である。
【0045】
図4(E)に示す第6実施形態では、抜け止め部22を、膨出部15,15′及び突起部5の外周側端面15d,5dに重なる(或いは近接する)にように形成している。従って、抜け止め部22は、フランジ部4の外周に重なるような円弧状に形成されており,かつ、仮止め係合部25は、膨出部15,15′の外周側端面15dに形成されている。ストッパー部23はと2つ折り状態になっている。
【0046】
(5).第7~10実施形態
次に、
図5に示す第7実施形態を説明する。
図7(A)(B)に示す第7実施形態は、基本的には第1実施形態と同じであり、第1実施形態との主たる相違点は、ストッパー部23が、カバー装置の軸心方向から見てループ状(カール状)に曲げ形成されている点である。なお、
図5以下の実施形態において、第1実施形態の仮止め係合部25は、存在してもよいし、無くてもよい。
【0047】
ストッパー部23を正確に述べると、抜け止め部22の先端を、連結部20に向けて曲げてから基部21の側に曲げてカールさせている。このため、ストッパー部23には、一方の膨出部15の外側面15aに対して広い範囲(長い距離)で当接可能なストレート状等の当たり部23bを形成できる。このように、ストレート状等の当たり部23bを、一方の膨出部15の外側面15aに対して広い面積(長さ)でしっかりと当てることができることにより、振動があっても止めピン2の抜けをしっかりと防止できる。
【0048】
更に述べると、当たり部23bは基部21の側に曲げられているため、外側面15aに対する当たり部23bの当たり位置を、カバー装置の軸心から遠い側に大きく位置させることができる。これにより、当たり部23bが一方の膨出部15の外側面15aに対して深く係止した状態になって、抜け止め機能を格段に向上できるのである。従って、ストレート状の当たり部23bがその全長に亙って外側面15aに当接することは、必ずしも必要はない。
【0049】
もとより、実施形態のように、当たり部23bをストレート状に形成すると、一方の膨出部15の外側面15aに対する引っ掛かり機能が向上るため、抜け防止効果は一層高くなる。また、実施形態では、当たり部23bの一部が連結部20の先端部20aとフランジ部4との間に入り込んでいるが、このように構成すると、当たり部23bのカバー装置の軸心方向に移動することが阻止されるため、抜け防止機能を更に向上できる。
【0050】
第7実施形態では、
図5(A)に示すように、連結部20と抜け止め部22とは、外力が作用していない自由状態において、先端に向けて間隔Lが狭まるように設定しており、かつ、ストッパー部23の直近部の間隔(最も狭い部分の間隔)は、膨出部15におけるピン穴16と軸心側端面15cとの間隔W2よりも小さくなるように設定している。
【0051】
従って、止めピン2で2つのカバー本体1を連結した状態では、連結部20と抜け止め部22とは、主として基部21の弾性力によって狭まるような作用を受けており、従って、連結部20と抜け止め部22とにより、一方の膨出部15が弾性的に挟持された状態になっている。このため、振動に対する抵抗に優れていて、抜け防止機能を確実化できる。この点も、本実施形態の有利な利点の一つである。
【0052】
図5(A)(B)の例では、当たり部23bは、抜け止め部22を挟んでカバー本体1のフランジ部4の側に向かうように曲げているが、(C)に示すように、当たり部23bを、抜け止め部22を挟んでカバー本体1のフランジ部4と反対側に向かうように曲げることも可能である。
図5(D)の変形例では、当たり部23bは、連結部20の先端部20aとフランジ部4との間の部位に深く入り込んでいる。このため、抜け防止機能は更に向上しているといえる。
【0053】
図6(A)に示す第8実施形態では、基部21をリング状に巻いている。従って、基部21のうち連結部20に繋がった部分と抜け止め部22に繋がった部分とがクロスしている。このように、線材をクロスした状態に巻くと、連結部20と抜け止め部22とを広げるように変形させることに対して、基部21が窄まるように変形するため、止めピン2を取り外そうとする外力に対する弾性抵抗は、従前の実施形態よりも格段に強くなる。従って、抜け防止機能は更にすぐれている。この場合、ストッパー部23はループ構造に形成しているが、第1実施形態のようなU形であってもよい。また、リング状の基部は従前の実施形態にも適用できる(つまり、基部21の形状はストッパー部23の形状とは関係なく、任意に設定できる。)。
【0054】
図6(B)に示す第8実施形態では、ストッパー部23は、L形に曲げてから先端側に曲げてループ形状に形成している。そして、抜け止め部22の先端部22aを、連結部20と反対側に向けて曲がった逃がし部と成すことにより、当たり部23bの全体が膨出部15の外側面15aに当たる(深く係止する)ように設定している。このように、抜け止め部22の先端に逃がし部22aを形成することは、第1実施形態にも適用できる。
【0055】
図6(C)に示す第10実施形態では、
図4(E)の実施形態を基本形として、ストッパー部23をループ状に形成する一方、基部21をリング状に形成している。この実施形態でも、連結部20と抜け止め部22とを広げ変形させることに要する力は大きくなるため、抜け防止機能は非常に高いま。また、ストッパー部23はループ形状であって人の指先を引っ掛けやすいため、取り外しも容易である。
【0056】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、一対のカバー本体を軸線と直交した方向に離反不能に保持する手段としては、突起部と切り開き溝とを軸線方向視で扇形に形成したり、突起部の側面と切り開き溝の側面とに互いに嵌まり合う凹凸を形成したりしてもよい。止めピンも、本願発明の機能を有する限り、様々に変形できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本願発明は、架線吊り具用保護カバー装置に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0058】
1 カバー本体
2 止めピン
3 半割り樋状部
4 フランジ部
5 突起部
6 切り開き溝
10,12 第1係合ガイド部
15,15′ 膨出部
16 ピン穴
20 連結部
21 基部
22 抜け止め部
23 ストッパー部
23a 当たり部
24 鉤状係止部
25 仮止め係合部
27 吊り具
28 ケーブル