(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】縦型洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/36 20200101AFI20221025BHJP
D06F 33/38 20200101ALI20221025BHJP
【FI】
D06F33/36
D06F33/38
(21)【出願番号】P 2018128321
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間宮 春夫
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-011291(JP,A)
【文献】特開2015-167867(JP,A)
【文献】特開2013-244031(JP,A)
【文献】特開2000-237489(JP,A)
【文献】特開平08-243293(JP,A)
【文献】特開2015-167866(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0115635(US,A1)
【文献】特開2003-154189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が溜められる外槽と、
駆動力を発生する駆動手段と、
前記外槽内に配置されて洗濯物を収容する洗濯槽であって、前記外槽との間で水を行き来させるための貫通穴を有し、洗濯物の出入口が上端に形成されて底壁が下端に設けられて、前記駆動手段の駆動力を受けて回転する洗濯槽と、
前記洗濯槽内において前記底壁上に配置され、前記駆動手段の駆動力を受けて回転する回転翼と、
前記洗濯槽内に給水する給水手段と、
前記駆動手段および前記給水手段を制御する制御手段とを含み、
前記制御手段は、洗い工程および前記洗い工程後のすすぎ工
程において、
前記給水手段によって前記洗濯槽内に水を溜めた状態で、前記駆動手段によって前記回転翼を
第1の態様で回転させることにより、前記洗濯槽内の洗濯物を攪拌する攪拌処理と、
前記攪拌処理後に、前記洗濯槽内に水が溜まった状態で前記駆動手段によって前記回転翼を
前記第1の態様とは異なる第2の態様で回転させることにより、前記洗濯槽内の洗濯物をほぐすほぐし処理と、
前記ほぐし処理後に、
前記洗濯槽内の水位が所定の槽回転水位か否かを確認し、水位が槽回転水位になるまで排水を行った後、水が溜まった前記洗濯槽を前記駆動手段によって回転させることにより、前記外槽内の水を前記外槽と前記洗濯槽との間で上昇させて前記出入口から前記洗濯槽内の洗濯物に浴びせる槽回転処理とを実行する、縦型洗濯機。
【請求項2】
前記槽回転処理中において、水が溜まった前記洗濯槽内における洗濯物の偏りの大きさを検出する検出手段をさらに含む、請求項1に記載の縦型洗濯機。
【請求項3】
前記槽回転処理中において前記検出手段が所定以上の大きさの偏りを検出すると、前記制御手段は、前記洗濯槽の回転を中止して前記回転翼を回転させることにより、前記洗濯槽内の洗濯物を攪拌する、請求項2に記載の縦型洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、縦型洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の洗濯機は、パルセータを内底部に回転自在に配設した洗濯兼脱水槽と、洗濯兼脱水槽を回転自在に内包した受け槽と、パルセータまたは洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動手段と、洗い工程やすすぎ工程などを制御する制御手段とを含む。制御手段は、洗い工程やすすぎ工程において、攪拌工程と洗濯槽回転工程とを実行する。制御手段は、攪拌工程において、パルセータを反転駆動させる。制御手段は、洗濯槽回転工程において、洗濯兼脱水槽を回転駆動して洗濯兼脱水槽と受け槽との間の洗濯水を上昇させ、洗濯兼脱水槽内に上方より散水する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の洗濯機において実行される洗濯槽回転工程では、洗濯水を上昇させて洗濯兼脱水槽内に散水するために、洗濯兼脱水槽を一定以上の回転速度で高速回転させる必要がある。しかし、洗濯兼脱水槽内の洗濯物の偏りが所定以上に大きいと、洗濯兼脱水槽の回転速度がスムーズに上昇せず、洗濯兼脱水槽に異常振動が発生するので、洗濯槽回転工程を続けることが困難である。また、異常振動が発生すると、洗濯物の偏りを解消するために、洗濯兼脱水槽に給水して洗濯物を水に浸してからパルセータを回転させて洗濯物をほぐした後に排水するという処理が一般的に行われるが、この処理により、洗濯時間が長くなる。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、洗濯槽の回転によって水を上昇させて洗濯槽内に散水する処理を円滑に実施でき、洗濯時間の短縮を図れる縦型洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水が溜められる外槽と、駆動力を発生する駆動手段と、前記外槽内に配置されて洗濯物を収容する洗濯槽であって、前記外槽との間で水を行き来させるための貫通穴を有し、洗濯物の出入口が上端に形成されて底壁が下端に設けられて、前記駆動手段の駆動力を受けて回転する洗濯槽と、前記洗濯槽内において前記底壁上に配置され、前記駆動手段の駆動力を受けて回転する回転翼と、前記洗濯槽内に給水する給水手段と、前記駆動手段および前記給水手段を制御する制御手段とを含み、前記制御手段は、洗い工程および前記洗い工程後のすすぎ工程において、前記給水手段によって前記洗濯槽内に水を溜めた状態で、前記駆動手段によって前記回転翼を第1の態様で回転させることにより、前記洗濯槽内の洗濯物を攪拌する攪拌処理と、前記攪拌処理後に、前記洗濯槽内に水が溜まった状態で前記駆動手段によって前記回転翼を前記第1の態様とは異なる第2の態様で回転させることにより、前記洗濯槽内の洗濯物をほぐすほぐし処理と、前記ほぐし処理後に、前記洗濯槽内の水位が所定の槽回転水位か否かを確認し、水位が槽回転水位になるまで排水を行った後、水が溜まった前記洗濯槽を前記駆動手段によって回転させることにより、前記外槽内の水を前記外槽と前記洗濯槽との間で上昇させて前記出入口から前記洗濯槽内の洗濯物に浴びせる槽回転処理とを実行する、縦型洗濯機である。
【0007】
また、本発明は、前記縦型洗濯機が、前記槽回転処理中において、水が溜まった前記洗濯槽内における洗濯物の偏りの大きさを検出する検出手段をさらに含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記槽回転処理中において前記検出手段が所定以上の大きさの偏りを検出すると、前記制御手段が、前記洗濯槽の回転を中止して前記回転翼を回転させることにより、前記洗濯槽内の洗濯物を攪拌することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、縦型洗濯機では、洗い工程およびすすぎ工程の少なくともいずれかにおいて、攪拌処理と、ほぐし処理と、槽回転処理とがこの順に実行される。攪拌処理では、洗濯槽内に水が溜まった状態で回転翼が回転するので、洗濯槽内の洗濯物が攪拌されることによって洗濯される。攪拌処理後のほぐし処理では、洗濯槽内に水が溜まった状態で回転翼が回転するので、洗濯槽内の洗濯物がほぐされることによって洗濯物の偏りが解消される。ほぐし処理後の槽回転処理では、水が溜まった洗濯槽が回転することによって、外槽内の水が外槽と洗濯槽との間で上昇して洗濯槽の上端の出入口から洗濯槽内の洗濯物に浴びせられる。このような上側からの散水により、出入口側の洗濯物も確実に洗濯できる。ほぐし処理によって洗濯物の偏りが事前に解消された状態で槽回転処理が開始されるので、槽回転処理において、洗濯槽の回転速度は、散水が開始される回転速度までスムーズに上昇する。これにより、槽回転処理を円滑に実施できる。また、事前のほぐし処理によって槽回転処理中に洗濯槽の異常振動が発生しにくいので、異常振動に応じて洗濯槽の回転を中止して洗濯槽内の洗濯物の偏りを解消する処理をなるべく実施せず済む。これにより、洗濯時間の短縮を図れる。
【0011】
また、本発明によれば、槽回転処理中において、水が溜まった洗濯槽内における洗濯物の偏りの大きさが検出される。その場合において、所定以上の大きさの偏りが検出されると、洗濯槽および回転翼の少なくとも一方が回転することによって、洗濯槽内の洗濯物をほぐしてもよい。これにより、槽回転処理を一旦中止して洗濯物の偏りを解消した後に槽回転処理をやり直さなくても、槽回転処理を継続することができるので、洗濯時間の短縮を一層図れる。
【0012】
また、本発明によれば、槽回転処理中において所定以上の大きさの偏りが検出されると、洗濯槽の回転が中止されるものの、回転翼が回転して洗濯槽内の洗濯物を攪拌することによって、洗濯物が引き続き洗濯されてもよい。この場合には、洗濯槽の回転が継続された場合と同等程度に洗濯物を洗濯することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、この発明の一実施形態に係る縦型洗濯機の模式的な縦断面図である。
【
図2】
図2は、縦型洗濯機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、縦型洗濯機において実行される洗濯運転を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、洗濯運転における第1実施例に係る槽回転処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、縦型洗濯機における洗濯槽の上部についての模式的な斜視図である。
【
図6】
図6は、第2実施例に係る槽回転処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る縦型洗濯機1の模式的な縦断面図である。
図1における上下方向を縦型洗濯機1の上下方向Zといい、上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。縦型洗濯機1は、筐体2と、外槽3と、洗濯槽4と、回転翼の一例としてのパルセータ5と、駆動手段の一例としてのモータ6と、切替手段の一例としてのクラッチ7とを含む。
【0015】
筐体2は、例えば金属製であり、ボックス状に形成される。筐体2の上面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口2Bが形成される。上面2Aには、開口2Bを開閉する扉10が設けられる。上面2Aにおける開口2Bの周囲には、液晶操作パネルなどで構成された表示操作部11が設けられる。縦型洗濯機1の使用者は、表示操作部11を操作することによって、縦型洗濯機1で実行される洗濯運転についての運転条件を選択したり、縦型洗濯機1に対して洗濯運転の開始や停止などを指示したりすることができる。表示操作部11には、使用者向けの情報が表示される。
【0016】
外槽3は、例えば樹脂製であり、有底円筒状に形成される。外槽3は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を下側Z2から塞いだ底壁3Bと、円周壁3Aの上端縁に沿って円周壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Cとを有する。環状壁3Cの内側には、円周壁3Aの中空部分に上側Z1から連通した出入口3Dが形成される。出入口3Dは、筐体2の開口2Bに対して下側Z2から対向して連通した状態にある。環状壁3Cには、出入口3Dを開閉する扉12が設けられる。環状壁3Cの下面には、出入口3Dを縁取りつつ斜め下側へ傾斜したガイド面3Eが設けられる。底壁3Bは、略水平に延びる円板状に形成され、底壁3Bの円中心位置には、底壁3Bを貫通した貫通孔3Fが形成される。
【0017】
外槽3の環状壁3Cには、水道水の蛇口につながった給水路13が上側Z1から接続される。給水路13の途中には、給水手段の一例としての給水弁14が設けられる。給水弁14は、例えば電磁弁によって構成される。外槽3の底壁3Bには、排水路15が下側Z2から接続される。排水路15の途中には、排水手段の一例としての排水弁16が設けられる。排水弁16は、例えばトルクモータ(図示せず)によって開閉される。排水弁16が閉じた状態で給水弁14が開くと、給水路13から外槽3内に給水されることによって、外槽3内に水が溜められる。給水弁14が閉じると、給水が停止する。排水弁16が開くと、外槽3内の水が排水路15から機外に排出される。
【0018】
洗濯槽4は、例えば金属製であり、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物Qを収容することができる。洗濯槽4は、外槽3内に同軸状で配置される。外槽3内に収容された状態の洗濯槽4は、その中心軸をなして上下方向Zに延びる軸線Jを中心として回転可能である。洗濯槽4は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁4Aと、円周壁4Aの中空部分を下側Z2から塞いだ底壁4Bと、円周壁4Aの上端縁に沿って軸線J側へ張り出したリング状の環状壁4Cとを有する。
【0019】
円周壁4Aの内周面は、洗濯槽4の内周面である。円周壁4Aは、外槽3の円周壁3Aによって取り囲まれた状態にある。底壁4Bは、洗濯槽4の下端に設けられる。環状壁4Cは、外槽3の環状壁3Cに対して下側Z2から対向した状態にある。環状壁4Cの内側には、出入口4Dが形成される。出入口4Dは、洗濯槽4の上端に位置し、円周壁4Aの中空部分を上側Z1に露出させる。出入口4Dは、外槽3の出入口3Dに対して下側Z2から対向して連通した状態にある。使用者は、開放された開口2B、出入口3Dおよび出入口4Dを介して、洗濯槽4に対して上側Z1から洗濯物Qを出し入れする。
【0020】
洗濯槽4の円周壁4Aおよび底壁4Bには、貫通穴4Eが複数形成され、外槽3内の水は、貫通穴4Eを介して外槽3と洗濯槽4との間で行き来して、洗濯槽4内にも溜められる。そのため、外槽3内の水位と洗濯槽4内の水位とは、一致する。なお、貫通穴4Eは、円周壁4Aには設けられずに、底壁4Bだけに設けられてもよい。
【0021】
洗濯槽4の底壁4Bは、円板状に形成され、外槽3の底壁3Bに対して上側Z1に間隔を隔てて略平行に延びる。底壁4Bにおいて軸線Jと一致する円中心位置には、底壁4Bを貫通した貫通孔4Fが形成される。底壁4Bには、貫通孔4Fを取り囲みつつ軸線Jに沿って下側Z2へ延び出た管状の支持軸17が設けられる。支持軸17は、外槽3の底壁3Bの貫通孔3Fに挿通されて、支持軸17の下端部は、底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0022】
パルセータ5は、軸線Jを円中心とする円盤状に形成され、洗濯槽4内において底壁4B上に配置される。パルセータ5において洗濯槽4の出入口4Dを臨む上面には、放射状に配置される複数の羽根5Aが設けられる。パルセータ5には、その円中心から軸線Jに沿って下側Z2へ延びる回転軸18が設けられる。回転軸18は、支持軸17の中空部分に挿通されて、回転軸18の下端部は、外槽3の底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0023】
モータ6は、インバータモータなどの電動モータである。モータ6は、筐体2内において、外槽3の下側Z2に配置される。モータ6は、軸線Jを中心として回転する出力軸19を有し、発生した駆動力を出力軸19から出力する。
【0024】
クラッチ7は、支持軸17および回転軸18のそれぞれの下端部と、モータ6から上側Z1に突出した出力軸19の上端部との間に介在される。クラッチ7は、モータ6が出力軸19から出力する駆動力を、支持軸17および回転軸18の一方または両方に対して選択的に伝達する。モータ6からの駆動力が支持軸17に伝達されると、洗濯槽4が、モータ6の駆動力を受けて軸線Jまわりに回転する。モータ6からの駆動力が回転軸18に伝達されると、パルセータ5が、モータ6の駆動力を受けて軸線Jまわりに回転する。クラッチ7として、公知の伝達機構が用いられる。前述したトルクモータ(図示せず)がクラッチ7を作動させてもよい。
【0025】
図2は、縦型洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。縦型洗濯機1は、給水手段、制御手段および検出手段の一例としてのマイクロコンピュータ21を含む。マイクロコンピュータ21は、例えば、CPU22と、ROMやRAMなどのメモリ23と、計時用のタイマ24とを含み、筐体2内に内蔵される(
図1参照)。
【0026】
前述したモータ6、クラッチ7、給水弁14および排水弁16のそれぞれは、例えば駆動回路25を介してマイクロコンピュータ21に対して電気的に接続され、前述した表示操作部11もマイクロコンピュータ21に対して電気的に接続される。マイクロコンピュータ21は、モータ6をONにして駆動させたり、OFFにして停止させたりする。マイクロコンピュータ21は、モータ6の回転方向を制御することもできる。そのため、モータ6は、正転したり逆転したりすることができる。マイクロコンピュータ21は、クラッチ7を制御することによって、モータ6の駆動力の伝達先を洗濯槽4およびパルセータ5の一方または両方へと切り替える。マイクロコンピュータ21は、給水弁14および排水弁16の開閉を制御する。使用者が表示操作部11を操作して運転条件などについて選択すると、マイクロコンピュータ21は、その選択を受け付ける。マイクロコンピュータ21は、表示操作部11の表示内容を制御する。
【0027】
縦型洗濯機1は、マイクロコンピュータ21に対して電気的に接続されたブザー26、回転数読取装置27および水位検出部28をさらに含む。マイクロコンピュータ21は、所定の音をブザー26で発生させることによって、洗濯運転の開始や終了などを使用者に知らせる。
【0028】
回転数読取装置27は、検出手段の一例として機能する。回転数読取装置27は、モータ6の回転数、厳密には、モータ6における出力軸19の回転数を読み取る装置であり、例えばホールICで構成される。回転数読取装置27が読み取った回転数は、リアルタイムでマイクロコンピュータ21に入力される。マイクロコンピュータ21は、入力された回転数に基いて、モータ6に印加する電圧のデューティ比を制御することによって、所望の回転数で回転するようにモータ6を制御する。なお、洗濯槽4およびパルセータ5のそれぞれの回転数は、モータ6の回転数と同じであってもよいし、クラッチ7での減速比などの所定の定数をモータ6の回転数に乗じて得られる値であってもよい。
【0029】
水位検出部28は、外槽3内の水位つまり洗濯槽4内の水位を検出する水位センサである。水位検出部28の一例として、外槽3内の圧力に基いて洗濯槽4内の水位を検出する圧力式水位センサを採用できる。
【0030】
マイクロコンピュータ21は、モータ6、クラッチ7、給水弁14および排水弁16の動作を制御することによって、洗濯運転を実行する。洗濯運転は、洗濯物Qを洗う洗い工程と、洗い工程後に洗濯物Qをすすぐすすぎ工程と、すすぎ工程の後に洗濯槽4を回転させて洗濯物Qを脱水する脱水工程とを有する。なお、縦型洗濯機1は、脱水工程の後に洗濯物Qを乾燥させる乾燥工程も実行する洗濯乾燥機であってもよい。この実施形態では、すすぎ工程が2回実行され、1回目のすすぎ工程を第1すすぎ工程といい、2回目のすすぎ工程を第2すすぎ工程という。
【0031】
使用者が洗濯物Qを洗濯槽4内に投入して洗濯運転の開始を指示すると、マイクロコンピュータ21は、洗濯運転を開始する。なお、使用者は、洗濯物Qの投入に前後して、洗剤を洗濯槽4内に投入してもよい。
図3のフローチャートを参照して、まず、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4内の洗濯物Qの量、つまり負荷量を検出する(ステップS1)。負荷量検出の一例として、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4を低速で定常回転させたときのモータ6の回転数のばらつきによって負荷量を検出する。マイクロコンピュータ21は、これから給水して洗濯槽4内に溜める水の水位W(
図1参照)を、先ほど検出した負荷量に基いて決定する。水位Wと負荷量との関係は、実験などで予め求められてメモリ23に記憶される。
【0032】
そして、マイクロコンピュータ21は、洗い工程の一環の給水処理として、給水弁14を連続的に開いて洗濯槽4内に給水する(ステップS2)。排水弁16が閉じた状態にあるので、洗濯槽4内の水位が上昇する。洗濯槽4内の水位が、先ほど決定した水位Wまで上昇すると、マイクロコンピュータ21は、給水弁14を閉じることによって給水を停止する。これにより、給水処理が終了する。
【0033】
次に、洗濯槽4内に水が溜まった状態において、マイクロコンピュータ21は、攪拌処理を実行する。具体的には、マイクロコンピュータ21は、モータ6の駆動力がパルセータ5に伝達されるように必要に応じてクラッチ7を切り替えてから、モータ6を駆動させることによってパルセータ5を回転させる(ステップS3)。パルセータ5は、同じ方向に連続回転してもよいが、この実施形態では、モータ6の間欠駆動によって、パルセータ5は、1秒~2秒の間隔で正転および逆転を交互に繰り返すように反転する。攪拌処理では、洗濯槽4内の洗濯物Qが、反転するパルセータ5によって攪拌洗いされる。なお、ステップS2での給水処理中においてもパルセータ5が回転してもよく、これにより、洗剤が水に溶けやすくなる。水に溶けた洗剤によって洗濯物Qの汚れが分解される。所定の撹拌時間が経過すると、マイクロコンピュータ21は、攪拌処理を終了する。
【0034】
攪拌処理後に、マイクロコンピュータ21は、引き続き洗濯槽4内に水が溜まった状態において、ほぐし処理を実行する(ステップS4)。マイクロコンピュータ21は、ほぐし処理では、攪拌処理とは異なる条件でモータ6を間欠駆動させることによってパルセータ5を反転させる。この実施形態では、一例として、パルセータ5は、攪拌処理のときよりも短い0.5秒の間隔で正転および逆転を交互に繰り返すように、攪拌処理のときよりも高い回転数で反転する。これにより、洗濯槽4内で水に浸かった洗濯物Qが、反転するパルセータ5によってほぐされる。そのため、洗濯物Qの偏りが解消される。洗濯物Qの偏りとは、洗濯槽4内における洗濯物Qの偏在のことであり、アンバランスとも呼ばれる。所定のほぐし時間が経過すると、マイクロコンピュータ21は、ほぐし処理を終了する。
【0035】
ほぐし処理後に、マイクロコンピュータ21は、槽回転処理を実行する(ステップS5)。具体的には、
図4のフローチャートを参照して、まず、マイクロコンピュータ21は、モータ6の駆動力が洗濯槽4に伝達されるようにクラッチ7を切り替える(ステップS51)。次に、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4内の水位が所定の槽回転水位に到達した状態にあるか否かを確認する(ステップS52)。槽回転水位とは、これから洗濯槽4が回転したときに外槽3内の水が出入口3Dから溢れない程度の水位であり、具体的には、洗濯槽4の内部高さの半分よりも高い。洗濯槽4内の水位が槽回転水位になければ(ステップS52でNO)、洗濯槽4内の水位が槽回転水位よりも高いので、マイクロコンピュータ21は、排水弁16を開いて洗濯槽4の排水を行う(ステップS53)。
【0036】
洗濯槽4内の水位が槽回転水位に到達した状態にあれば(ステップS52でYES)、マイクロコンピュータ21は、モータ6をONにして回転させる(ステップS54)。これにより、槽回転水位まで水が溜まった洗濯槽4が例えば200rpmで高速回転する。すると、外槽3内に渦が発生し、水面Sは、軸線J側の中央部が低くなって外周部が高くなるようにU字状に湾曲する(
図1の2点鎖線を参照)。これにより、外槽3内の水が、外槽3の円周壁3Aと洗濯槽4の円周壁4Aとの間で上昇する。上昇した水は、外槽3の環状壁3Cの下面に並んで設けられたリブ3Gの間を通ってスパイラル状に旋回しながら落下し、洗濯槽4の出入口4Dから洗濯槽4内に浴びせられる(
図1および
図5の太い2点鎖線を参照)。なお、外槽3の環状壁3Cのガイド面3Eが、リブ3Gの間を通る水を出入口4Dへ向けて下向きにガイドする(
図1参照)。
【0037】
給水処理後の状態において水面からはみ出しそうな位に洗濯物Qの量が多くても、洗濯槽4の回転による上側Z1からの散水により、出入口4D側の洗濯物Qも確実に洗濯できる。また、散水による洗濯であれば、洗濯物Qの傷みを低減できる。なお、洗濯物Qの量が所定以上である大容量洗濯の場合にのみ、槽回転処理が実行されてもよい。
【0038】
ステップS4のほぐし処理によって洗濯物Qの偏りが事前に解消された状態で槽回転処理が開始されるので、槽回転処理において、洗濯槽4の回転数は、散水が開始される回転数までスムーズに増加する。これにより、槽回転処理を円滑に実施できる。また、事前のほぐし処理によって槽回転処理中に洗濯槽4の異常振動が発生しにくいので、異常振動に応じて洗濯槽4の回転を中止して洗濯槽4内の洗濯物Qの偏りを解消する処理をなるべく実施せず済む。これにより、洗濯時間の短縮を図れる。
【0039】
槽回転処理中において、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4に水が引き続き溜まった状態で、洗濯槽4内における洗濯物Qの偏りの大きさ、いわゆる偏心荷重を検出する(ステップS55)。具体的には、洗濯物Qの偏りが大きくなると、モータ6の回転数のばらつきが大きくなる。そこで、マイクロコンピュータ21は、モータ6の回転数のばらつきを回転数読取装置27で読み取ることによって、洗濯槽4内における洗濯物Qの偏りを検出する。この場合には、洗濯槽4を一旦排水してから洗濯物Qの偏りの大きさを検出する場合と比べて、時間短縮を図れる。なお、別の公知の方法によって洗濯物Qの偏りの大きさを検出してもよい。洗濯物Qの偏りが所定以上の大きさであると、洗濯槽4の円滑な回転に影響が生じるおそれがある。
【0040】
所定以上の大きさの偏りが検出されなかった場合において(ステップS55でNO)、ステップS54でのモータ6の回転開始から所定の槽回転時間が経過すると(ステップS56でYES)、マイクロコンピュータ21は、モータ6を停止させることによって槽回転処理を終了する(ステップS57)。
【0041】
マイクロコンピュータ21は、槽回転処理中において所定以上の大きさの偏りを検出すると(ステップS55でYES)、今回の偏り検出が今回の槽回転処理における1回目の偏り検出であるか否かを確認する(ステップS58)。今回の槽回転処理における偏りの検出回数は、メモリ23において一時的に記憶される。
【0042】
今回の偏り検出が1回目であれば(ステップS58でYES)、マイクロコンピュータ21は、モータ6を停止させることによって、洗濯槽4の回転を一時中断する(ステップS59)。そして、マイクロコンピュータ21は、モータ6の駆動力がパルセータ5に伝達されるようにクラッチ7を切り替えたうえで、例えばステップS4のほぐし処理と同じ条件でパルセータ5を反転させることにより、洗濯槽4内の洗濯物Qをほぐす(ステップS60)。このときには洗濯槽4内に既に水が溜まって洗濯物Qが水に浸ってほぐれやすい状態にあるので、洗濯物Qをほぐすために給水する必要はない。なお、マイクロコンピュータ21は、洗濯物Qをほぐすために、パルセータ5の代わりに洗濯槽4を回転させてもよいし、洗濯槽4およびパルセータ5の両方を回転させてもよい。また、洗濯槽4およびパルセータ5は、同じ方向だけに回転してもよいし、前述したように反転してもよい。
【0043】
マイクロコンピュータ21は、洗濯物Qを所定時間ほぐした後に、モータ6の駆動力が洗濯槽4に伝達されるようにクラッチ7を切り替えたうえで、洗濯槽4の回転を再開する(ステップS54)。つまり、槽回転処理において偏りが初めて検出された場合には、ほぐしによって偏りが解消されたうえで、洗濯槽4の回転が再開される。これにより、槽回転処理を一旦中止して洗濯物Qの偏りを解消した後に槽回転処理をやり直さなくても、槽回転処理を継続することができるので、洗濯時間の短縮を一層図れる。一方、今回の槽回転処理における偏り検出が2回目以上であれば(ステップS58でNO)、マイクロコンピュータ21は、モータ6を停止することによって槽回転処理を中止する(ステップS57)。
【0044】
以上のように槽回転処理が終了または中止されると、洗い工程が終了する。次に、
図3を参照して、マイクロコンピュータ21は、洗い工程後の脱水工程、つまり中間脱水工程として、排水弁16を開いた状態で、洗濯槽4を高速回転させる(ステップS6)。この高速回転により生じた遠心力によって、洗濯槽4内の洗濯物が脱水される。脱水により洗濯物から染み出た水は、排水路15から機外に排出される。中間脱水工程の終盤において、マイクロコンピュータ21は、モータ6の駆動力が洗濯槽4に伝わらないようにクラッチ7を切り換えてモータ6を停止するので、洗濯槽4が惰性回転する。中間脱水工程の最後に、マイクロコンピュータ21は、排水弁16を閉じる。
【0045】
次に、マイクロコンピュータ21は、第1すすぎ工程として、シャワーすすぎを実行する(ステップS7)。具体的には、マイクロコンピュータ21は、排水弁16を閉じた状態で、給水弁14を間欠的に開くことによって、洗濯槽4内にシャワー給水する。この状態で、マイクロコンピュータ21は、洗濯物Qの隅々にシャワーが行き渡るように洗濯槽4を例えば30rpmで低速回転させる。これにより、洗濯槽4内の洗濯物Qが満遍なくすすがれる。その後、マイクロコンピュータ21は、ステップS6と同じ中間脱水工程を実行する(ステップS8)。なお、各中間脱水工程を直後のすすぎ工程における一部の処理とみなしてもよい。
【0046】
次に、マイクロコンピュータ21は、第2すすぎ工程を実行する。第2すすぎ工程の内容は、洗剤が存在しない以外において、洗い工程と同じである。具体的には、マイクロコンピュータ21は、ステップS2と同様に給水してから(ステップS9)、ステップS3と同様に洗濯物Qを攪拌すすぎして(ステップS10)、ステップS4と同様に洗濯物Qをほぐしてから(ステップS11)、ステップS5と同様に槽回転処理を実行する(ステップS12)。
【0047】
最後に、マイクロコンピュータ21は、中間脱水工程と同様の最終脱水工程を実行する(ステップS13)。ただし、洗濯槽4の回転条件は、中間脱水工程と最終脱水工程とで異なってもよく、特に、最終脱水工程における洗濯槽4の最高回転数は、中間脱水工程における洗濯槽4の最高回転数よりも高い。最終脱水工程の終了により、洗濯運転が終了する。
【0048】
槽回転処理については、以上に説明した第1実施例の他に、第2実施例が挙げられる。
図6は、第2実施例に係る槽回転処理を示すフローチャートである。なお、
図6では、
図4の処理ステップと同じ処理ステップには、
図4と同じステップ番号を付し、その処理ステップについての詳細な説明を省略する。
【0049】
第2実施例において、マイクロコンピュータ21は、槽回転処理中において所定以上の大きさの偏りを検出すると(ステップS55でYES)、速やかにモータ6を停止させることによって洗濯槽4の回転を中止する(ステップS61)。この場合、マイクロコンピュータ21は、モータ6の駆動力がパルセータ5に伝達されるようにクラッチ7を切り替えたうえでパルセータ5を回転動させることにより、洗濯槽4内の洗濯物Qを攪拌する(ステップS62)。このように、洗濯方法が洗濯槽4の回転からパルセータ5の攪拌に変更されて洗濯物Qが引き続き洗濯されるので、槽回転処理において洗濯槽4の回転が継続された場合と同等程度に洗濯物Qを洗濯することができる。
【0050】
そして、洗濯物Qが所定時間攪拌されると、マイクロコンピュータ21は、モータ6の駆動条件を変更することによって、例えばステップS4のほぐし処理と同じ条件で洗濯槽4内の洗濯物Qをパルセータ5によってほぐす(ステップS63)。洗濯物Qが所定時間ほぐされると、マイクロコンピュータ21は、モータ6を停止させることによって槽回転処理を終了する(ステップS57)。ステップS63のほぐしにより、その後の脱水工程などにおいて洗濯槽4が高速回転する際に異常振動が発生することを防止できる。
【0051】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0052】
例えば、攪拌処理とほぐし処理と槽回転処理とは、前述した実施形態では洗い工程および第2すすぎ工程の両方において実行されるが、洗い工程および第2すすぎ工程の一方だけで実行されてもよいし、第1すすぎ工程で実行されてもよい。洗い工程における槽回転処理(ステップS5)と、第2すすぎ工程における槽回転処理(ステップS12)とでは、前述したように内容が同じであってもよいし、異なってもよい。内容が異なる場合、洗い工程における槽回転処理(ステップS5)の内容は、第1実施例および第2実施例の一方であって、第2すすぎ工程における槽回転処理(ステップS12)の内容は、第1実施例および第2実施例の他方であってもよい。
【0053】
第1実施例に係る槽回転処理において、所定以上の大きさの偏りが2回以上検出された場合に(ステップS58でNO)、マイクロコンピュータ21は、槽回転処理をすぐに中止する(ステップS57)。これに代えて、マイクロコンピュータ21は、モータ6を停止して(ステップS61)、クラッチ7を切り替えた後に、パルセータ5を反転させて洗濯槽4内の洗濯物Qを攪拌したり(ステップS62)、ほぐしたりした後に(ステップS63)、槽回転処理を中止してもよい(ステップS57)。つまり、第2実施例の一部が第1実施例に組み合わされてもよい。
【0054】
縦型洗濯機1における洗濯槽4の軸線Jは、前述した実施形態では上下方向Zに沿って垂直に延びるように配置されるが(
図1参照)、縦型洗濯機1には、軸線Jが上下方向Zに対して若干傾斜して配置された構成も含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 縦型洗濯機
3 外槽
4 洗濯槽
4B 底壁
4D 出入口
4E 貫通穴
5 パルセータ
6 モータ
14 給水弁
21 マイクロコンピュータ
27 回転数読取装置
Q 洗濯物