(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】結晶化度測定装置、樹脂含有材料製造装置、結晶化度測定方法及び樹脂含有材料製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
G01N21/65
(21)【出願番号】P 2018183782
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神原 信幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 直元
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 清嘉
(72)【発明者】
【氏名】加茂 宗太
(72)【発明者】
【氏名】山口 誠
(72)【発明者】
【氏名】寺境 光俊
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
(72)【発明者】
【氏名】村岡 幹夫
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/027350(WO,A1)
【文献】特表平02-502835(JP,A)
【文献】特開平07-035702(JP,A)
【文献】RAMIREZ et al.,Micro-Raman study of the fatigue fracture and tensile behaviour of polyamide (PA 66) fibres,JOURNAL OF RAMAN SPECTROSCOPY,2004年,Vol.35/Iss.12,PP.1063-1072
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/65
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料のラマンスペクトルを取得するラマン分光部と、
前記ラマンスペクトルのうち、600cm
-1未満の領域にあるスペクトルである低波数スペクトルの強度に基づいて、前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出する解析部と、
を有することを特徴とする結晶化度測定装置。
【請求項2】
前記解析部は、2つの前記低波数スペクトルの強度の比に基づいて、前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出することを特徴とする請求項1に記載の結晶化度測定装置。
【請求項3】
結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を供給する材料供給部と、
前記材料供給部の下流側に設けられ、前記材料供給部から供給された前記樹脂含有材料を加圧する加圧部と、
前記加圧部によって加圧された前記樹脂含有材料を加熱する加熱部と、
前記加圧部及び前記加熱部の下流側に設けられ、前記加圧部及び前記加熱部によって加圧及び加熱処理が施された前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定する請求項1または請求項2に記載の結晶化度測定装置と、
前記結晶化度測定装置の下流側に設けられ、前記結晶化度測定装置によって測定された前記結晶化度に応じて、前記結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料に対して再加熱処理を施す再加熱部と、
を有することを特徴とする樹脂含有材料製造装置。
【請求項4】
結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を加圧する加圧面を有する加圧部と、
前記加圧部によって加圧された前記樹脂含有材料を加熱する加熱部と、
前記加圧部及び前記加熱部によって加圧及び加熱処理が施された前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定する請求項1または請求項2に記載の結晶化度測定装置と、
前記結晶化度測定装置と前記加圧面との間を導光する導光部と、
を有し、
前記導光部は、前記結晶化度測定装置の前記ラマン分光部から供給される照射光を前記結晶化度測定装置から前記加圧面に向かって導光し、前記照射光に応じて前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂から発光されるラマン散乱光を前記加圧面から前記結晶化度測定装置に向かって導光し、
前記加熱部は、前記結晶化度測定装置によって測定された前記結晶化度に応じて、加熱を調整することを特徴とする樹脂含有材料製造装置。
【請求項5】
結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を密封状態で加圧しながら加熱する密封加圧加熱装置と、
前記密封加圧加熱装置によって密封加圧加熱処理が施された前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定する請求項1または請求項2に記載の結晶化度測定装置と、
前記結晶化度測定装置と前記密封加圧加熱装置の内部との間を導光する導光部と、
を有し、
前記導光部は、前記結晶化度測定装置の前記ラマン分光部から供給される照射光を前記結晶化度測定装置から前記密封加圧加熱装置の内部に向かって導光し、前記照射光に応じて前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂から発光されるラマン散乱光を前記密封加圧加熱装置の内部から前記結晶化度測定装置に向かって導光し、
前記密封加圧加熱装置は、前記結晶化度測定装置によって測定された前記結晶化度に応じて、加熱を調整することを特徴とする樹脂含有材料製造装置。
【請求項6】
結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料のラマンスペクトルを取得するラマン分光ステップと、
前記ラマン分光ステップで取得した前記ラマンスペクトルのうち、600cm
-1未満の領域にあるスペクトルである低波数スペクトルの強度に基づいて、前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出する結晶化度算出ステップと、
を有することを特徴とする結晶化度測定方法。
【請求項7】
前記結晶化度算出ステップでは、2つの前記低波数スペクトルの強度の比に基づいて、前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出することを特徴とする請求項6に記載の結晶化度測定方法。
【請求項8】
結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を供給する材料供給ステップと、
前記材料供給ステップで供給された前記樹脂含有材料を加圧しながら加熱する加圧加熱ステップと、
前記加圧加熱ステップで加圧及び加熱処理を施した前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を、請求項6または請求項7に記載の結晶化度測定方法に基づいて測定する結晶化度測定ステップと、
前記結晶化度測定ステップで測定した前記結晶化度に基づいて、前記結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料に対して再加熱処理を施すか否かを判定する再加熱処理判定ステップと、
前記再加熱処理判定ステップで前記再加熱処理を施す旨の判定をした場合、前記結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料に対して再加熱処理を施す再加熱ステップと、
を有することを特徴とする樹脂含有材料製造方法。
【請求項9】
結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を加圧しながら加熱する加圧加熱処理を開始する加圧加熱開始ステップと、
前記加圧加熱開始ステップを経て、前記加圧加熱処理を施している前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を、請求項6または請求項7に記載の結晶化度測定方法に基づいて測定する結晶化度測定ステップと、
前記結晶化度測定ステップで測定した前記結晶化度に基づいて、前記加圧加熱処理を調整する加圧加熱調整ステップと、
を有することを特徴とする樹脂含有材料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化度測定装置、樹脂含有材料製造装置、結晶化度測定方法及び樹脂含有材料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性熱可塑樹脂は、その成形条件によってその結晶化度が変化するため、これに伴い、樹脂含有材料の品質が変化することが知られている。結晶性熱可塑性樹脂の結晶度を測定する方法としては、フーリエ変換型赤外線分光光度計を用いて、透過法により結晶性熱可塑樹脂の赤外吸収スペクトルを測定し、この赤外吸収スペクトルのうち、波数領域が4500cm-1~2000cm-1の範囲における赤外吸収スペクトルの測定値に基づいて結晶性熱可塑樹脂の肉厚部位の結晶化度を算出する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法は、一般的に分子解析で用いられる波数領域が650cm-1~4000cm-1の範囲のうち、波数領域が4500cm-1~2000cm-1の範囲という高波数領域における赤外吸収スペクトルの形状に影響を与える因子である肉厚や結晶化度などを高度に制御した基準試料を用いることで、結晶性熱可塑樹脂の肉厚部位の結晶化度を算出するものである。このため、特許文献1の方法では、例えば、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料、例えば、熱硬化性樹脂、結晶性を有さない熱可塑性樹脂、及び、炭素繊維に例示される強化繊維等を含む場合、この波数領域が4500cm-1~2000cm-1の範囲における赤外吸収スペクトルを、結晶化度を算出可能に十分な精度で取得することが困難であるという問題があった。
【0005】
また、結晶化度を測定する方法としては、示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を用いる熱融解法、X線回折(X-Ray Diffraction、XRD)を用いるX線法が知られている。しかしながら、熱融解法は樹脂片を溶かしてその融解熱を測定することで結晶化度を測定する方法であるので、非破壊検査ではないため、品質保証のための全数検査に用いることができず、製造現場での使用にはあまり適さない。また、X線法は、装置全体を放射線防護する設備が必要になるため、製造現場での使用には適さない。すなわち、熱融解法及びX線法は、いずれも、結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を容易に測定することが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することが可能な結晶化度測定装置、樹脂含有材料製造装置、結晶化度測定方法及び樹脂含有材料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、結晶化度測定装置は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料のラマンスペクトルを取得するラマン分光部と、前記ラマンスペクトルのうち、600cm-1未満の領域にあるスペクトルである低波数スペクトルの強度に基づいて、前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出する解析部と、を有することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ラマン分光法を用いて、樹脂含有材料の分子構造に起因する分子振動に影響を受けない低波数スペクトルの強度に基づいて結晶化度を算出するので、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することができる。
【0009】
この構成において、前記解析部は、2つの前記低波数スペクトルの強度の比に基づいて、前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出することが好ましい。この構成によれば、基準試料を準備することなく、結晶化度を算出するためのパラメータを単位化できるので、結晶化度をより容易にかつより精度よく算出することができる。
【0010】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、樹脂含有材料製造装置は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を供給する材料供給部と、前記材料供給部の下流側に設けられ、前記材料供給部から供給された前記樹脂含有材料を加圧する加圧部と、前記加圧部によって加圧された前記樹脂含有材料を加熱する加熱部と、前記加圧部及び前記加熱部の下流側に設けられ、前記加圧部及び前記加熱部によって加圧及び加熱処理が施された前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定する上記した結晶化度測定装置と、前記結晶化度測定装置の下流側に設けられ、前記結晶化度測定装置によって測定された前記結晶化度に応じて、前記結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料に対して再加熱処理を施す再加熱部と、を有することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、上記した結晶化度測定装置を有するため、当然に、ラマン分光法を用いて、樹脂含有材料の分子構造に起因する分子振動に影響を受けない低波数スペクトルの強度に基づいて結晶化度を算出するので、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することができる。また、測定した結晶化度に応じて再加熱処理を施す再加熱部を有するので、1回の一連の製造工程で、所望の結晶化度の結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を得ることができる。
【0012】
もしくは、上述した課題を解決し、目的を達成するために、樹脂含有材料製造装置は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を加圧する加圧面を有する加圧部と、前記加圧部によって加圧された前記樹脂含有材料を加熱する加熱部と、前記加圧部及び前記加熱部によって加圧及び加熱処理が施された前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定する上記した結晶化度測定装置と、前記結晶化度測定装置と前記加圧面との間を導光する導光部と、を有し、前記導光部は、前記結晶化度測定装置の前記ラマン分光部から供給される照射光を前記結晶化度測定装置から前記加圧面に向かって導光し、前記照射光に応じて前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂から発光されるラマン散乱光を前記加圧面から前記結晶化度測定装置に向かって導光し、前記加熱部は、前記結晶化度測定装置によって測定された前記結晶化度に応じて、加熱を調整することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、上記した結晶化度測定装置を有するため、当然に、ラマン分光法を用いて、樹脂含有材料の分子構造に起因する分子振動に影響を受けない低波数スペクトルの強度に基づいて結晶化度を算出するので、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することができる。また、導光部を有するので、加圧加熱ヘッドに例示される加圧部及び加熱部で加圧及び加熱処理中の樹脂含有材料に対して、この導光部を介してラマン分光部によるラマン分光処理をすることができるため、結晶化度を加圧中にリアルタイムで算出することができる。また、このため、測定した結晶化度に応じて加圧及び加熱処理中に加熱を調整することができるので、1回の一連の製造工程で、所望の結晶化度の結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を得ることができる。
【0014】
もしくは、上述した課題を解決し、目的を達成するために、樹脂含有材料製造装置は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を密封状態で加圧しながら加熱する密封加圧加熱装置と、前記密封加圧加熱装置によって密封加圧加熱処理が施された前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定する上記した結晶化度測定装置と、前記結晶化度測定装置と前記密封加圧加熱装置の内部との間を導光する導光部と、を有し、前記導光部は、前記結晶化度測定装置の前記ラマン分光部から供給される照射光を前記結晶化度測定装置から前記密封加圧加熱装置の内部に向かって導光し、前記照射光に応じて前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂から発光されるラマン散乱光を前記密封加圧加熱装置の内部から前記結晶化度測定装置に向かって導光し、前記密封加圧加熱装置は、前記結晶化度測定装置によって測定された前記結晶化度に応じて、加熱を調整することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、上記した結晶化度測定装置を有するため、当然に、ラマン分光法を用いて、樹脂含有材料の分子構造に起因する分子振動に影響を受けない低波数スペクトルの強度に基づいて結晶化度を算出するので、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することができる。また、導光部を有するので、オートクレーブ装置に例示される密封加圧加熱装置での密封状態における加圧及び加熱処理中の樹脂含有材料に対して、この導光部を介してラマン分光部によるラマン分光処理をすることができるため、結晶化度を加圧中にリアルタイムで算出することができる。また、このため、測定した結晶化度に応じて密封状態における加圧及び加熱処理中に加熱を調整することができるので、1回の一連の製造工程で、所望の結晶化度の結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を得ることができる。
【0016】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、結晶化度測定方法は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料のラマンスペクトルを取得するラマン分光ステップと、前記ラマン分光ステップで取得した前記ラマンスペクトルのうち、600cm-1未満の領域にあるスペクトルである低波数スペクトルの強度に基づいて、前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出する結晶化度算出ステップと、を有することを特徴とする。この構成によれば、対応する上記した結晶化度測定装置と同様に、ラマン分光法を用いて、樹脂含有材料の分子構造に起因する分子振動に影響を受けない低波数スペクトルの強度に基づいて結晶化度を算出するので、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することができる。
【0017】
この構成において、前記結晶化度算出ステップでは、2つの前記低波数スペクトルの強度の比に基づいて、前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出することが好ましい。この構成によれば、対応する上記した結晶化度測定装置と同様に、基準試料を準備することなく、結晶化度を算出するためのパラメータを単位化できるので、結晶化度をより容易にかつより精度よく算出することができる。
【0018】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、樹脂含有材料製造方法は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を供給する材料供給ステップと、前記材料供給ステップで供給された前記樹脂含有材料を加圧しながら加熱する加圧加熱ステップと、前記加圧加熱ステップで加圧及び加熱処理を施した前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を、上記した結晶化度測定方法に基づいて測定する結晶化度測定ステップと、前記結晶化度測定ステップで測定した前記結晶化度に基づいて、前記結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料に対して再加熱処理を施すか否かを判定する再加熱処理判定ステップと、前記再加熱処理判定ステップで前記再加熱処理を施す旨の判定をした場合、前記結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料に対して再加熱処理を施す再加熱ステップと、を有することを特徴とする。この構成によれば、対応する上記した樹脂含有材料製造装置と同様に、上記した結晶化度測定方法を有するため、当然に、ラマン分光法を用いて、樹脂含有材料の分子構造に起因する分子振動に影響を受けない低波数スペクトルの強度に基づいて結晶化度を算出するので、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することができる。また、測定した結晶化度に応じて再加熱処理を施すので、1回の一連の製造工程で、所望の結晶化度の結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を得ることができる。
【0019】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、樹脂含有材料製造方法は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を加圧しながら加熱する加圧加熱処理を開始する加圧加熱開始ステップと、前記加圧加熱開始ステップを経て、前記加圧加熱処理を施している前記樹脂含有材料に含まれる前記結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を、上記した結晶化度測定方法に基づいて測定する結晶化度測定ステップと、前記結晶化度測定ステップで測定した前記結晶化度に基づいて、前記加圧加熱処理を調整する加圧加熱調整ステップと、を有することを特徴とする。この構成によれば、対応する上記した樹脂含有材料製造装置と同様に、上記した結晶化度測定方法を有するため、当然に、ラマン分光法を用いて、樹脂含有材料の分子構造に起因する分子振動に影響を受けない低波数スペクトルの強度に基づいて結晶化度を算出するので、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することができる。また、加圧及び加熱処理中の樹脂含有材料に対して、ラマン分光処理をして結晶化度を加圧中にリアルタイムで算出し、測定した結晶化度に応じて加圧及び加熱処理中に加熱を調整するので、1回の一連の製造工程で、所望の結晶化度の結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、結晶化度測定装置を含む樹脂含有材料製造装置を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る、結晶化度測定方法を含む樹脂含有材料製造方法のフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2の結晶化度測定方法に用いるパラメータを説明するグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る、結晶化度測定装置を含む樹脂含有材料製造装置を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る、結晶化度測定方法を含む樹脂含有材料製造方法のフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る、結晶化度測定装置を含む樹脂含有材料製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る結晶化度測定装置10を含む樹脂含有材料製造装置20を示す図である。
図1に示す結晶化度測定装置10は、水平テーブル15の上を搬送される結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1の結晶化度を測定する。
図1に示す樹脂含有材料製造装置20は、樹脂含有材料1を製造する装置であり、樹脂含有材料1の製造の途中で、結晶化度測定装置10を用いて樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定するものである。ここで、結晶性熱可塑樹脂の結晶化度とは、結晶性熱可塑樹脂において、結晶化されている質量の、結晶化されている質量と結晶化されていない質量との合計に対する割合のことであり、例えば百分率で表される。
【0023】
樹脂含有材料1は、結晶性熱可塑樹脂を含む。結晶性熱可塑樹脂は、結晶性と熱可塑性とを有する樹脂であり、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)等が例示される。樹脂含有材料1は、結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含んでいても良い。樹脂含有材料1に含まれていても良い結晶性熱可塑樹脂以外の材料は、非晶性熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び、強化繊維が例示される。
【0024】
樹脂含有材料1に含まれていても良い非晶性熱可塑性樹脂は、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂等が例示される。樹脂含有材料1に含まれていても良い熱硬化性樹脂は、エポキシ系樹脂、ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂等が例示される。樹脂含有材料1に含まれていても良い強化繊維は、5μm以上7μm以下の範囲内の基本繊維を数100本から数10000本程度束ねた炭素繊維、金属繊維、ガラス繊維及びプラスチック繊維等が例示される。樹脂含有材料1は、強化繊維を含む場合、繊維強化型の複合材料となる。樹脂含有材料1は、複合材料である場合、強化繊維に結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂を含浸させたものであってもよいし、強化繊維と結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂繊維との混紡であるコミングル材であってもよい。樹脂含有材料1は、コミングル材である場合、強化繊維と結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂繊維とをニット状に織り込んだコミングルニット材も含む。
【0025】
結晶化度測定装置10は、
図1に示すように、ラマン分光部11と、制御部12と、を有する。ラマン分光部11は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1のラマンスペクトルを取得するものであり、水平テーブル15の上の樹脂含有材料1の搬送路に対向して設けられている。ラマン分光部11は、詳細には、図示しない励起光源、試料照射部、分光器及び散乱光検出器で構成されている。ラマン分光部11の励起光源は、ラマン散乱の断面積が小さいためにその散乱光が比較的弱いことから、所定の単波長の励起光を発生させるレーザ等が好適に用いられる。ラマン分光部11の試料照射部は、励起光源で発生させた励起光をラマン分光部11の外側に向けて照射光として照射するための光学系である。ラマン分光部11の分光器は、照射光に応じて樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂から発光されるラマン散乱光を分光してラマンスペクトルを取得するものであり、回折格子を組み込んだポリクロメータ等が好適に用いられる。ラマン分光部11の検出器は、ラマン散乱光を分光器で分光して得られたラマンスペクトルを検出して電子情報として取り込むものであり、光電子増倍管及びCCD(Charge Coupled Device)検出器等が好適に用いられる。
【0026】
制御部12は、ラマン分光部11の各部、及び、後述する樹脂含有材料製造装置20の各部である材料供給部21、加圧部22、加熱部23並びに再加熱部24を一括して制御する。また、制御部12は、さらに、ラマン分光部11が電子情報として取り込んだラマンスペクトルのうち、600cm-1未満の領域にあるスペクトルである低波数スペクトルの強度に基づいて、結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出する解析部13を有する。
【0027】
制御部12は、入力部と、記憶部と、処理部と、を備える。制御部12は、コンピュータが例示される。入力部は、例えば、外部接続される機器からの種々のデータの入力を受け付けるインターフェース、及びユーザからの入力を受け付けるインターフェースであるマウス、キーボード、表示装置等と一体化されたタッチパネルであり、入力を受け付けた情報等を記憶部または処理部に伝達する。記憶部は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びフラッシュメモリー等の記憶媒体または記憶装置を有し、処理部により処理されるソフトウェア・プログラムである結晶化度測定プログラム及び樹脂含有材料製造プログラム、並びに、及びこれらのソフトウェア・プログラムにより参照されるデータ等を記憶する。また、記憶部は、処理部が処理結果等を一時的に記憶する記憶領域としても機能する。処理部は、記憶部からソフトウェア・プログラム等を読み出して処理することで、ソフトウェア・プログラムの内容に応じた機能、具体的には、本発明の実施形態に係る結晶化度測定装置10により本発明の実施形態に係る結晶化度測定方法を実施する機能、並びに、本発明の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置20により本発明の実施形態に係る樹脂含有材料製造方法を実施する機能を発揮する。処理部は、記憶部から読み出した情報、及び処理した情報等を、制御部12に接続された表示装置等に表示させることができる。
【0028】
解析部13の機能は、演算処理装置がROMに記憶されている結晶化度測定プログラムをRAM上で実行することにより実現される。なお、解析部13の機能の詳細な説明は、後述する結晶化度測定方法の説明の箇所で記載する。
【0029】
樹脂含有材料製造装置20は、
図1に示すように、結晶化度測定装置10と、材料供給部21と、加圧部22と、加熱部23と、再加熱部24と、を有する。材料供給部21は、搬送方向に延びて形成された板状の樹脂含有材料1を、ロール状に巻き取られた樹脂含有材料1を巻き戻しながら、搬送路の下流へ向けて供給する。
【0030】
加圧部22は、水平テーブル15の上の樹脂含有材料1の搬送路において、水平テーブル15に対向して材料供給部21の下流側に設けられ、材料供給部21から供給された樹脂含有材料1を加圧する。加圧部22は、水平方向に沿って延びる加圧面側を水平テーブル15に対して押し付けることで、水平テーブル15と加圧部22との間に位置する樹脂含有材料1を鉛直方向に沿って加圧する加圧ヘッドが例示される。
【0031】
加熱部23は、加圧部22の付近に水平テーブル15に対向して設けられ、加圧部22によって加圧された状態の樹脂含有材料1を加熱する。なお、第1の実施形態では、加熱部23は加圧部22の付近に設けられているが、本発明はこれに限定されず、加圧部22に内蔵して設けられていても良い。
【0032】
加熱部23は、周知のいかなる加熱方式のものが用いられるが、加圧部22または水平テーブル15を透過して樹脂含有材料1に対して直接加熱作用を及ぼす加熱方式のものが好ましい。加熱部23は、具体的には、赤外線加熱方式のものが挙げられる。また、加熱部23は、樹脂含有材料1が炭素繊維及び金属繊維に例示される電気伝導性を有する強化繊維を含む場合、誘導磁場加熱方式のもの並びに誘導電場加熱方式のものが用いられることが好ましい。
【0033】
加熱部23は、加圧部22に内蔵して設けられている場合、加圧部22の加圧面側に、磁場が印加されて発熱する鉄粉、または、金属等の電磁場発熱体に例示される発熱体が設けられ、発熱体を介して樹脂含有材料1を加熱する方式のものが用いられても良い。ここで、金属等の電磁場発熱体は、金属等の電磁場発熱体における所定の方向に沿った電場が印加されることで、分子運動量が増加して、金属等の電磁場発熱体の内部に発熱が誘起される。また、金属等の電磁場発熱体は、金属等の電磁場発熱体における所定の方向に直交する方向に沿った磁場が印加されることで、内部に電流が発生し、金属等の電磁場発熱体自体の電気抵抗によって発熱する。同様に、金属等の電磁場発熱体は、電磁波を吸収して、発熱する。金属等の電磁場発熱体は、例えば、溶液に分散して吹き付けることで塗布された金属等の電磁場発熱体のシートとして設けられる。
【0034】
上記した結晶化度測定装置10は、樹脂含有材料製造装置20では、水平テーブル15の上の樹脂含有材料1の搬送路において、加圧部22及び加熱部23の下流側に設けられており、加圧部22及び加熱部23によって加圧及び加熱処理が施された樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定する。
【0035】
再加熱部24は、水平テーブル15の上の樹脂含有材料1の搬送路において、結晶化度測定装置10の下流側に設けられ、結晶化度測定装置10によって測定された結晶化度に応じて、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1に対して再加熱処理を施す。再加熱部24は、具体的には、加熱部23と同様の加熱方式のものが好適に用いられる。
【0036】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る、結晶化度測定方法を含む樹脂含有材料製造方法のフローチャートである。第1の実施形態に係る結晶化度測定方法及び樹脂含有材料製造方法について、
図2を用いて説明する。第1の実施形態に係る結晶化度測定方法は、結晶化度測定装置10によって実行され、第1の実施形態に係る樹脂含有材料製造方法は、樹脂含有材料製造装置20によって実行される。第1の実施形態に係る結晶化度測定方法は、
図2に示すように、ラマン分光ステップS11と、結晶化度算出ステップS12と、を有する。第1の実施形態に係る樹脂含有材料製造方法は、
図2に示すように、材料供給ステップS21と、加圧加熱ステップS22と、ラマン分光ステップS11及び結晶化度算出ステップS12を含む結晶化度測定ステップS10と、再加熱処理判定ステップS23と、再加熱ステップS24と、を有する。
【0037】
材料供給ステップS21は、材料供給部21が、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1を、水平テーブル15の上の樹脂含有材料1の搬送路に供給するステップである。加圧加熱ステップS22は、材料供給ステップS21で供給された樹脂含有材料1を、加圧部22が加圧しながら、加熱部23が加熱するステップである。これにより、樹脂含有材料1が加圧及び加熱処理が施され、内部に包含していた種々のガスが脱気され、所望の形状に成形される。
【0038】
結晶化度測定ステップS10は、加圧加熱ステップS22で加圧及び加熱処理を施した樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定する。結晶化度測定ステップS10において、ラマン分光ステップS11は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1のラマンスペクトルを取得するステップである。ラマン分光ステップS11では、具体的には、結晶化度測定装置10において、励起光源が、結晶性熱可塑樹脂の励起光を発生させ、試料照射部が、この励起光を樹脂含有材料1に向けて照射し、分光器が、照射光に応じて樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂から発光されるラマン散乱光を分光してラマンスペクトルを取得し、検出器が、このラマンスペクトルを検出して電子情報として取り込む。
【0039】
結晶化度算出ステップS12は、ラマン分光ステップS11で取得したラマンスペクトルのうち、600cm-1未満の領域にあるスペクトルである低波数スペクトルの強度に基づいて、樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出するステップである。
【0040】
図3は、
図2の結晶化度測定方法に用いるパラメータを説明するグラフである。
図3に示すグラフは、横軸が第1パラメータ、縦軸が第2パラメータである。
図3に示すグラフにおける第1パラメータは、所定の結晶性熱可塑樹脂の試料について、X線回折を用いて測定した結晶化度である。
図3に示すグラフにおける第2パラメータは、X線回折を用いて結晶化度測定したものと同じ所定の結晶性熱可塑樹脂の試料について、1064nmの励起光を用いて取得したラマンスペクトルにおける34cm
-1のスペクトルの強度の97cm
-1のスペクトルの強度に対する比である。この第1パラメータと第2パラメータとが、
図3に示すように線形の関係にあることから、第2パラメータを用いて、X線回折を用いるのと同様精度で、ラマン分光法を用いて容易に結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定することがわかる。
【0041】
結晶化度算出ステップS12では、解析部13が、制御部12の記憶部に記憶されたこの第1パラメータと第2パラメータとの相関関係を取得して用いて、ラマン分光ステップS11でラマン分光部11が電子情報として取り込んだラマンスペクトルのうち、600cm
-1未満の領域にあるスペクトルである低波数スペクトルの強度に基づいて、結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出する。結晶化度算出ステップS12では、解析部13が、
図3を用いて説明したように、2つの低周波スペクトルの強度の比に基づいて、結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出することが好ましい。
【0042】
再加熱処理判定ステップS23は、制御部12が、結晶化度測定ステップS10で測定した結晶性熱可塑樹脂の結晶化度に基づいて、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1に対して再加熱処理を施すか否かを判定するステップである。再加熱処理判定ステップS23では、具体的には、制御部12が、結晶化度測定ステップS10で測定した結晶性熱可塑樹脂の結晶化度が所望の範囲内にある場合、結晶化度に依存する種々の物理的パラメータの品質保証が十分になされていると判断して、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1に対して再加熱処理を施す必要がないと判断して、
図2のフローチャートのNoに進む。再加熱処理判定ステップS23では、一方、制御部12が、結晶化度測定ステップS10で測定した結晶性熱可塑樹脂の結晶化度が所望の範囲内から外れている場合、結晶化度に依存する種々の物理的パラメータの品質について改良の余地があると判断して、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1に対して再加熱処理を施す必要があると判断して、
図2のフローチャートのYesに進む。
【0043】
再加熱ステップS24は、再加熱処理判定ステップS23で再加熱処理を施す旨の判定をした場合(再加熱処理判定ステップS23でYes)、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1に対して再加熱処理を施す。また、再加熱ステップS24は、再加熱処理判定ステップS23で再加熱処理を施さない旨の判定をした場合(再加熱処理判定ステップS23でNo)、このステップを実行しない。
【0044】
このように、加圧加熱ステップS22で所望の結晶化度を有する結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1が得られた場合、再加熱ステップS24を実行せずに、そのまま所望の結晶化度を有する結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1を得ることができる。また、加圧加熱ステップS22で所望の結晶化度を有する結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1が得られなかった場合、再加熱ステップS24を実行することで結晶化度を再調整して、所望の結晶化度を有する結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1を得ることができる。
【0045】
第1の実施形態に係る結晶化度測定装置10及び結晶化度測定方法は、以上のような構成を有するので、ラマン分光法を用いて、樹脂含有材料1の分子構造に起因する分子振動に影響を受けない低波数スペクトルの強度に基づいて結晶化度を算出するので、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することができる。また、第1の実施形態に係る結晶化度測定装置10及び結晶化度測定方法は、従来のように、熱融解法による破壊検査をする必要性もなくし、X線法のために放射線防護設備を設ける必要性もなくすものとなっている。第1の実施形態に係る結晶化度測定装置10及び結晶化度測定方法は、発明者らの鋭意検討の結果、従来の一般的なラマン分光法では分子構造に起因する分子振動の情報を取得できない領域であるとして無視されることが当たり前であった600cm-1未満の領域にあるスペクトル、好ましくは100cm-1以上200cm-1以下の領域にあるスペクトルに着目し、この領域のスペクトルを用いることで容易に結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を測定することができることを初めて発見したことによって、その結果として種々の効果をもたらした発明である。
【0046】
第1の実施形態に係る結晶化度測定装置10及び結晶化度測定方法は、解析部13が、2つの低波数スペクトルの強度の比に基づいて、結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を算出している。このため、第1の実施形態に係る結晶化度測定装置10及び結晶化度測定方法は、特許文献1のように基準試料を準備することなく、結晶化度を算出するためのパラメータを単位化できるので、結晶化度をより容易にかつより精度よく算出することができる。
【0047】
第1の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置20及び樹脂含有材料製造方法は、上記した第1の実施形態に係る結晶化度測定装置10及び結晶化度測定方法をそれぞれ有するため、当然に、ラマン分光法を用いて、樹脂含有材料1の分子構造に起因する分子振動に影響を受けない低波数スペクトルの強度に基づいて結晶化度を算出するので、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することができる。また、第1の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置20及び樹脂含有材料製造方法は、測定した結晶化度に応じて再加熱処理を施す再加熱部24を有するので、1回の一連の製造工程で、所望の結晶化度の結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1を得ることができる。
【0048】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る、結晶化度測定装置10を含む樹脂含有材料製造装置30を示す図である。第2の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置30は、第1の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置20と同様に、結晶化度測定装置10を含む。第2の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置30は、第1の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置20と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0049】
樹脂含有材料製造装置30は、
図4に示すように、加圧部31と、加熱部32と、結晶化度測定装置10と、導光部33と、を有する。加圧部31は、加熱部32が内蔵されており、導光部33が内部を貫通して設けられている点を除いて、加圧部22と同様である。加熱部32は、加圧部31に内蔵されている点を除き、加熱部23と同様である。第2の実施形態では、加圧部31と加熱部32とが、合わせて加圧加熱ヘッドを構成している。
【0050】
第2の実施形態に係る結晶化度測定装置10は、第1の実施形態に係る結晶化度測定装置10において、制御部12が、樹脂含有材料製造装置20の各部である材料供給部21、加圧部22、加熱部23並びに再加熱部24を一括して制御することに代えて、樹脂含有材料製造装置30の各部である加圧部31及び加熱部32を一括して制御する点で異なり、その他の構成については同様である。
【0051】
導光部33は、結晶化度測定装置10と加圧部31の加圧面との間に渡って設けられている。導光部33は、結晶化度測定装置10のラマン分光部11から供給される照射光を、結晶化度測定装置10から加圧部31の加圧面に向かって導光し、加圧部31の加圧面から対向する樹脂含有材料1に向けて照射するように設けられている。また、導光部33は、この照射光に応じて樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂から発光されるラマン散乱光を、加圧部31の加圧面から結晶化度測定装置10のラマン分光部11に向かって導光し、分光器及び検出器を経て、結晶化度測定装置10のラマン分光部11が、ラマン散乱光に基づくラマンスペクトルを検出して電子情報として取り込むことができるように設けられている。導光部33は、結晶化度測定装置10のラマン分光部11から供給される照射光及びこの照射光に応じて樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂から発光されるラマン散乱光を導光することが可能な導光材料である光ファイバが用いられたものが例示される。
【0052】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る、結晶化度測定方法を含む樹脂含有材料製造方法のフローチャートである。第2の実施形態に係る結晶化度測定方法及び樹脂含有材料製造方法について、
図5を用いて説明する。第2の実施形態に係る結晶化度測定方法は、第1の実施形態に係る結晶化度測定方法と同様に、結晶化度測定装置10によって実行され、第2の実施形態に係る樹脂含有材料製造方法は、樹脂含有材料製造装置30によって実行される。第2の実施形態に係る結晶化度測定方法は、第1の実施形態に係る結晶化度測定方法と同様なので、その詳細な説明を省略する。第2の実施形態に係る樹脂含有材料製造方法は、
図5に示すように、材料供給ステップS31と、加圧加熱開始ステップS32と、第1の実施形態と同様の結晶化度測定ステップS10と、加圧加熱調整ステップS33と、加圧加熱終了判定ステップS34と、を有する。
【0053】
材料供給ステップS31は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1を、水平テーブル15と加圧部31の加圧面との間に供給するステップである。材料供給ステップS31は、第1の実施形態に係る材料供給ステップS21と同様の方式を採用しても良いし、その他の方法で供給する方式を採用してもよい。
【0054】
加圧加熱開始ステップS32は、材料供給ステップS31で供給された樹脂含有材料1を、加圧部31が加圧を開始するとともに、加熱部32が加熱を開始するステップである。これにより、樹脂含有材料1に対して加圧加熱処理を施すことが開始される。結晶化度測定ステップS10は、第2の実施形態では、解析部13が、加圧加熱開始ステップS32を経て加圧加熱処理を施している樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂に対して、結晶化度を測定する。結晶化度測定ステップS10では、結晶化度測定装置10のラマン分光部11が、導光部33を介して樹脂含有材料1に向けて照射光を照射し、樹脂含有材料1から発光されるラマン散乱光を導光部33を介して受光する。
【0055】
加圧加熱調整ステップS33は、制御部12が、結晶化度測定ステップS10で測定した樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂の結晶化度に基づいて、加圧加熱処理を調整するステップである。加圧加熱調整ステップS33では、具体的には、制御部12が、結晶化度測定ステップS10で測定した樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂の結晶化度が所望の結晶化度と比較して高いか低いか、もしくはどの程度の差があるかに応じて、所望の結晶化度に近づける方向に、加熱部32の加熱温度を調整する。
【0056】
加圧加熱終了判定ステップS34は、制御部12が、樹脂含有材料1の加圧加熱処理を終了するか否かを判定するステップである。加圧加熱終了判定ステップS34では、具体的には、制御部12が、樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂の結晶化度が所望の結晶化度を含む所定の領域内にあると判定した場合、樹脂含有材料1の加圧加熱処理を終了すると判定して、
図5のフローチャートのYesに進む。加圧加熱終了判定ステップS34では、一方、制御部12が、樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂の結晶化度が所望の結晶化度を含む所定の領域から外れていると判定した場合、樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂の結晶化度を再調整する必要があると判定して、樹脂含有材料1の加圧加熱処理を終了しないと判定して、
図5のフローチャートのNoに進む。
【0057】
結晶化度測定ステップS10及び加圧加熱調整ステップS33は、加圧加熱終了判定ステップS34において加圧加熱処理を終了すると判定するまで、すなわち、樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂の結晶化度が所望の結晶化度を含む所定の領域内にあると判定するまで、繰り返し実行する。このような処理を施すため、所望の結晶化度を有する結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1を得ることができる。
【0058】
第2の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置30及び樹脂含有材料製造方法は、上記した第2の実施形態に係る結晶化度測定装置10及び結晶化度測定方法をそれぞれ有するため、当然に、ラマン分光法を用いて、樹脂含有材料1の分子構造に起因する分子振動に影響を受けない低波数スペクトルの強度に基づいて結晶化度を算出するので、結晶性熱可塑樹脂に加えて結晶性熱可塑樹脂以外の材料を含む場合であっても、結晶化度を容易にかつ精度よく算出することができる。また、第2の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置30及び樹脂含有材料製造方法は、導光部33を介して、加圧加熱ヘッドに例示される加圧部31及び加熱部32で加圧及び加熱処理中の樹脂含有材料1に対して、ラマン分光部11によるラマン分光処理をすることができるため、結晶化度を加圧中にリアルタイムで算出することができる。また、第2の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置30及び樹脂含有材料製造方法は、このため、測定した結晶化度に応じて加圧及び加熱処理中に加熱を調整することができるので、1回の一連の製造工程で、所望の結晶化度の結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1を得ることができる。
【0059】
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態に係る、結晶化度測定装置10を含む樹脂含有材料製造装置40を示す図である。第3の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置40は、第1の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置20及び第2の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置30と同様に、結晶化度測定装置10を含む。第3の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置40は、第1の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置20と同様の構成に第1の実施形態と同一の符号群を用い、第2の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置30と同様の構成に第2の実施形態と同一の符号群を用い、その詳細な説明を省略する。
【0060】
樹脂含有材料製造装置40は、
図6に示すように、密封加圧加熱装置41と、結晶化度測定装置10と、導光部33と、を有する。密封加圧加熱装置41は、結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1を密封状態で加圧しながら加熱するものであり、具体的には、内部を気体で高圧化することで加圧しながら加熱するオートクレーブ装置が例示される。
【0061】
第3の実施形態に係る結晶化度測定装置10は、第1の実施形態に係る結晶化度測定装置10において、制御部12が、樹脂含有材料製造装置20の各部である材料供給部21、加圧部22、加熱部23並びに再加熱部24を一括して制御することに代えて、樹脂含有材料製造装置40の各部である密封加圧加熱装置41を一括して制御する点で異なり、その他の構成については同様である。
【0062】
導光部33は、第3の実施形態では、結晶化度測定装置10と密封加圧加熱装置41の樹脂含有材料1が載置される箇所との間に渡って設けられている。導光部33は、第3の実施形態では、結晶化度測定装置10のラマン分光部11から供給される照射光を、結晶化度測定装置10から密封加圧加熱装置41の内部に載置された樹脂含有材料1の表面に向かって導光し、樹脂含有材料1に向けて照射するように設けられている。また、導光部33は、第3の実施形態では、この照射光に応じて樹脂含有材料1に含まれる結晶性熱可塑樹脂から発光されるラマン散乱光を、密封加圧加熱装置41の外部に設けられた結晶化度測定装置10のラマン分光部11に向かって導光し、分光器及び検出器を経て、結晶化度測定装置10のラマン分光部11が、ラマン散乱光に基づくラマンスペクトルを検出して電子情報として取り込むことができるように設けられている。第3の実施形態に係る導光部33は、第2の実施形態と同様のものが例示される。
【0063】
第3の実施形態に係る結晶化度測定方法及び樹脂含有材料製造方法について説明する。第3の実施形態に係る結晶化度測定方法は、第2の実施形態に係る結晶化度測定方法において、材料供給ステップS31における結晶性熱可塑樹脂を含む樹脂含有材料1の供給先を、水平テーブル15と加圧部31の加圧面との間に代えて、密封加圧加熱装置41の内部の載置位置に変更し、加圧加熱開始ステップS32及び加圧加熱調整ステップS33を実行する主体を、加圧部31及び加熱部32に代えて、密封加圧加熱装置41に変更したものであり、その他の構成は同様である。
【0064】
第3の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置40及び樹脂含有材料製造方法は、以上のような構成を有するので、オートクレーブ装置に例示される密封加圧加熱装置41を用いる場合であっても、第2の実施形態に係る樹脂含有材料製造装置30及び樹脂含有材料製造方法と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0065】
1 樹脂含有材料
10 結晶化度測定装置
11 ラマン分光部
12 制御部
13 解析部
15 水平テーブル
20,30,40 樹脂含有材料製造装置
21 材料供給部
22,31 加圧部
23,32 加熱部
24 再加熱部
33 導光部
41 密封加圧加熱装置