(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電子黒体空洞及び二次電子検出装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20221025BHJP
C01B 32/00 20170101ALI20221025BHJP
C01B 32/158 20170101ALI20221025BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20221025BHJP
【FI】
H01J37/244
C01B32/00
C01B32/158
B82Y30/00
(21)【出願番号】P 2021068716
(22)【出願日】2021-04-14
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】202011497833.5
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】66,Chung Shan Road,Tu-Cheng New Taipei,236(TW)
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】特許業務法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 科
(72)【発明者】
【氏名】陳 果
(72)【発明者】
【氏名】柳 鵬
(72)【発明者】
【氏名】姜 開利
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-009779(JP,A)
【文献】特開2005-032542(JP,A)
【文献】特開昭58-115383(JP,A)
【文献】特開2018-147764(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101239712(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/244
C01B 32/00
C01B 32/158
B82Y 30/00
G21N 23/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子黒体空洞と、二次電子検出要素と、を含む二次電子検出装置であって、前記二次電子検出要素は前記電子黒体空洞の中に設置され、前記二次電子検出要素は二次電子プローブを含み、
前記電子黒体空洞は、内面と、空洞と、開口部と、を含み、
前記空洞は、前記内面によって囲まれ形成され、
前記開口部は、電子ビームが前記空洞に入るために使用され、
前記空洞の前記内面に第一多孔炭素材料層が設置され、
前記第一多孔炭素材料層は複数の第一炭素材料粒子を含み、
複数の前記第一炭素材料粒子の間に微小な間隙があり、複数の前記第一炭素材料粒子間の間隙はナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールであり、
前記二次電子プローブは第二多孔炭素材料層を含み、前記第二多孔炭素材料層は前記第一多孔炭素材料層と絶縁して設置され、前記第二多孔炭素材料層は複数の第二炭素材料粒子間を含み、複数の第二炭素材料粒子間にナノメートルまたはマイクロメートルの間隙があることを特徴とする二次電子検出装置。
【請求項2】
前記第一炭素材料粒子はカーボンファイバー、カーボンマイクロワイヤー、カーボンナノチューブ、カーボンナノボール、カーボンミクロボールのいずれか一種または多種であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電子検出装置。
【請求項3】
前記第一多孔炭素材料層はカーボンナノチューブアレイ或いはカーボンナノチューブネットワーク構造体であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電子検出装置。
【請求項4】
内面と、空洞と、開口部と、を含む電子黒体空洞であって、
前記空洞は、前記内面によって囲まれ形成され、
前記開口部は、電子ビームが前記空洞に入るために使用され、
前記空洞の前記内面に第一多孔炭素材料層が設置され、
前記第一多孔炭素材料層は複数の
カーボンナノチューブを含み、
複数の前記
カーボンナノチューブの間に微小な間隙があり、複数の前記
カーボンナノチューブ間の間隙はナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールであり、
前記第一多孔炭素材料層は、複数のカーボンナノチューブフィルムを積層して形成され、
各カーボンナノチューブフィルムは、前記各カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列される複数のカーボンナノチューブを含むことを特徴とする電子黒体空洞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子黒体空洞及び電子黒体空洞を使用した二次電子検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロエレクトロニクス技術分野では、電子を吸収する素子によって電子を吸収して、特定の測定を行う。従来技術では、電子を吸収するために金属が一般的に使用されていたが、金属表面に電子を吸収させようとすると、多数の電子が反射または透過し、金属表面では吸収できず、電子の吸収効率が低い。
【0003】
現在、ほぼ100%の電子を吸収できる材料は見つかっておらず、この材料は電子黒体材料と呼ぶことができる。したがって、電子吸収率がほぼ100%である電子黒体空洞を設計することは非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第101239712号明細書
【文献】中国特許出願公開第101284662号明細書
【文献】中国特許出願公開第101314464号明細書
【文献】中国特許出願公開第103172044号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これによって、電子黒体材料を使用する電子黒体空洞を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
内面と、空洞と、開口部と、を含む電子黒体空洞であって、前記空洞は、前記内面によって囲まれ形成され、前記開口部は、電子ビームが前記空洞に入るために使用され、前記空洞の前記内面に第一多孔炭素材料層が設置され、前記第一多孔炭素材料層は複数の第一炭素材料粒子を含み、複数の前記第一炭素材料粒子の間に微小な間隙があり、複数の前記第一炭素材料粒子間の間隙はナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールである。
【0007】
前記第一炭素材料粒子はカーボンファイバー、カーボンマイクロワイヤー、カーボンナノチューブ、カーボンナノボール、カーボンミクロボールのいずれか一種または多種である。
【0008】
前記第一多孔炭素材料層はカーボンナノチューブアレイ或いはカーボンナノチューブネットワーク構造体である。
【0009】
任意の前記電子黒体空洞と、二次電子検出要素と、を含む二次電子検出装置であって、前記二次電子検出要素は前記電子黒体空洞の中に設置されることを特徴とする二次電子検出装置。
【0010】
二次電子検出装置は二次電子プローブを含み、前記二次電子プローブは第二多孔炭素材料層を含み、前記第二多孔炭素材料層は前記第一多孔炭素材料層と絶縁して設置され、前記第二多孔炭素材料層は複数の第二炭素材料粒子間を含み、複数の第二炭素材料粒子間にナノメートルまたはマイクロメートルの間隙がある。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比べて、本発明により提供される電子黒体空洞の内面には多孔炭素材料層が設置され、多孔炭素材料層は電子の絶対的な黒体と見なすことができる。したがって、電子ビームが電子黒体空洞の内面に当たると、電子ビームが内面に設置される多孔炭素材料層に完全に吸収され、電子黒体空洞の表面から逃げる二次電子は内面に設置された多孔炭素材料層に完全に吸収され、放出されず、電子黒体空洞は優れた電子シールド効果を持っている。したがって、本発明の電子黒体空洞を用いた二次電子検出装置により検出された二次電子は、基本的にサンプルの表面から放出されたものであるため、検出精度は非常に高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施例の電子黒体空洞の構造を示す図である。
【
図2】本発明の第一実施例の多孔炭素材料層が超配列カーボンナノチューブアレイである場合、
図1の電子黒体空洞の電子吸収速度は、超配列カーボンナノチューブアレイの高さによって変化することを示す図である。
【
図3】本発明の第二実施例の二次電子検出装置の構造を示す図である。
【
図4】本発明の二次電子プローブにおける多孔炭素材料層が基板に設置される構造を示す図である。
【
図5】本発明の二次電子検出要素の構造を示す図である。
【
図6】従来の金属空洞を備えた二次電子検出装置を使用してサンプルの表面を検出することによって得られた表面画像である。
【
図7】本発明の二次電子検出装置を用いて
図6のサンプルの表面を検出して得られた表面画像である。
【
図8】従来の二次電子検出装置を使用してサンプル(平坦なシリコンウェーハに厚さ100nmのAu層を蒸着して形成する構造体)を検出して得られたサンプル写真である。
【
図9】本発明の二次電子検出装置を使用して
図8のサンプルを検出して得られたサンプル写真である。
【
図10】従来の二次電子検出装置および本発明の二次電子検出装置を使用して、同じサンプルのグレースケールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0014】
図1を参照すると、本発明の第一実施例は、電子黒体空洞10を提供する。電子黒体空洞10は、内面101と、空洞102と、開口部103と、を有する。空洞102は、内面101によって囲まれ、形成されている。開口部103は、電子ビームが空洞102に入るために使用される。電子黒体空洞10の内面101に多孔炭素材料層104が設置される。多孔炭素材料層104は、複数の炭素材料粒子を含む。複数の炭素材料粒子の間に微小な間隙がある。複数の炭素材料粒子間の間隙は、ナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールである。多孔炭素材料層104は、自立構造体である。いわゆる「自立構造体」とは、多孔炭素材料層102が、基板の表面に設置されることなく、それ自身の特定の形状を維持できることを意味する。
【0015】
多孔炭素材料層104における複数の炭素材料粒子間に小さな間隙がある。電子ビームが多孔炭素材料層104に入った後、電子ビームは、多孔炭素材料層104における複数の炭素材料粒子間の小さな間隙で、複数回屈折および反射され、多孔炭素材料層104から放出されることができない。多孔炭素材料層104の電子吸収率は99.99%以上に達し、ほぼ100%に達することができる。換言すれば、多孔炭素材料層104は、電子の絶対的な黒体と見なすことができる。したがって、電子ビームが電子黒体空洞10の内面101に当たると、電子は、内面101に設置された多孔炭素材料層104に完全に吸収される。電子黒体空洞10の表面から逃げる二次電子も多孔炭素材料層104に吸収されて放出されず、それによって空洞自体によって生成される二次電子を遮蔽することができる。
【0016】
複数の炭素材料粒子間の間隙は、ナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールである。マイクロメートルスケールとは、間隙のサイズが1000ミクロン以下であることを意味する。一つの例において、間隙のサイズが100ミクロン以下である。ナノメートルレベルとは、間隙のサイズが1000ナノメートル以下であることを意味する。一つの例において、間隙のサイズが100ナノメートル以下である。好ましくは、多孔炭素材料層104における炭素材料粒子間の間隙は、複数の微孔を形成する。一つの例において、微孔の孔径は5μm~50μmである。一つの例において、微孔の孔径は、5μm~30μmである。
【0017】
多孔炭素材料層104は、電子黒体空洞10の内面101全体に設置されている。すなわち、多孔炭素材料層104は、電子黒体空洞10の内面101全体を完全に被覆する。ただし、多孔炭素材料層104がサンプルの二次電子検出に使用される場合、サンプルおよび二次電子検出要素が配置される内面の位置には多孔炭素材料層104が設置されなくてもよい。好ましくは、多孔炭素材料層104は、純粋な炭素構造である。これは、多孔炭素材料層104が、他の不純物を含まない複数の炭素材料粒子のみから構成され、炭素材料粒子も純粋な炭素材料粒子であることを意味する。
【0018】
炭素材料粒子は、線状粒子と球状粒子の一方または両方を含む。線状粒子の断面の最大直径は1000ミクロン以下である。線状粒子は、カーボンファイバー、カーボンマイクロワイヤー、カーボンナノチューブなどであってもよい。球状粒子の最大直径は1000ミクロン以下である。球状粒子は、カーボンナノボールまたはカーボンミクロボールであり得る。好ましくは、炭素材料粒子はカーボンナノチューブであり、多孔炭素材料層104はカーボンナノチューブ構造体である。カーボンナノチューブ構造体はカーボンナノチューブアレイまたはカーボンナノチューブネットワーク構造体である。
【0019】
カーボンナノチューブ構造体がカーボンナノチューブアレイである場合、カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブの延伸方向が内面101と交差して角を形成する。角は0度より大きく90度以下である。これは、カーボンナノチューブアレイにおける複数のカーボンナノチューブ間の小さな間隙によって、電子がカーボンナノチューブアレイから放出されることを防ぎ、カーボンナノチューブアレイの電子に対する収集率を改善し、電子黒体空洞10の電子に対する遮蔽効率を改善できる。本実施例において、カーボンナノチューブ構造体は超配列カーボンナノチューブアレイであり、超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブの延伸方向は内面101に垂直である。
【0020】
超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブの延伸方向は基本的に同じである。もちろん、超配列カーボンナノチューブアレイにはランダムに配置されたカーボンナノチューブがいくつかあり、これらのカーボンナノチューブは、超配列カーボンナノチューブアレイにおけるほとんどのカーボンナノチューブの全体的な配向に大きな影響を与えない。超配列カーボンナノチューブアレイには、基本的にアモルファスカーボンや残留触媒金属粒子などの不純物が含まれない。超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブは、分子間力によって互いに密接に接触してアレイを形成する。超配列カーボンナノチューブアレイのサイズ、厚さ、および表面積は制限されておらず、実際のニーズに応じて選択できる。超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、特許文献1に掲載されている。スペースを節約するために、ここでのみ引用されているが、特許文献1のすべての技術的開示も、本発明の技術的開示の一部と見なされるべきである。カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイに限定されず、他のカーボンナノチューブアレイであってもよい。
【0021】
カーボンナノチューブネットワーク構造体におけるカーボンナノチューブ間に形成される微孔は非常に小さい。微孔のサイズはマイクロメートルスケールである。カーボンナノチューブネットワーク構造体は、カーボンナノチューブスポンジ状構造体、カーボンナノチューブフィルム構造体、カーボンナノチューブペーパー、または複数のカーボンナノチューブを織りまたは絡み合わせることによって形成されたネットワーク構造体であってもよく、または他のカーボンナノチューブネットワーク構造体であってもよい。
【0022】
カーボンナノチューブスポンジ状構造体は、複数のカーボンナノチューブが絡み合って形成されたスポンジ状のカーボンナノチューブ構造体である。カーボンナノチューブスポンジ状構造体は自立構造を有する多孔構造体である。
【0023】
カーボンナノチューブワイヤーは複数のカーボンナノチューブを含む。複数のカーボンナノチューブは分子間力で端と端が接続されている巨視的な線状構造体である。カーボンナノチューブワイヤーは、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤまたはねじれ状カーボンナノチューブワイヤである。非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは複数のカーボンナノチューブを含む。複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。一つの例において、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは複数のカーボンナノチューブのみからなる。非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長手方向に沿って、対向する両端に相反する力を印加することにより、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは複数のカーボンナノチューブを含む。複数のカーボンナノチューブは、基本的に平行に配列され、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に螺旋状に配列されている。複数のカーボンナノチューブは延伸方向に沿って、分子間力で端と端が接続されている。一つの例において、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは複数のカーボンナノチューブのみからなる。
【0024】
カーボンナノチューブフィルムの構造体は、複数のカーボンナノチューブフィルムを積層して形成される。隣接するカーボンナノチューブフィルムは分子間力によって結合される。カーボンナノチューブフィルム構造体におけるカーボンナノチューブの間に、小さな間隙が形成される。カーボンナノチューブフィルムは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム、綿毛構造カーボンナノチューブフィルム、またはプレシッド構造カーボンナノチューブフィルムであってもよい。
【0025】
ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブを含む。好ましくは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブからなる。複数のカーボンナノチューブはドローン構造カーボンナノチューブフィルムの表面に基本的に平行に配列される。具体的には、複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端から端まで接続され、同じ方向に沿って配列されている。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブアレイから直接引っ張ることによって得ることができる。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは自立構造体である。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける多数のカーボンナノチューブは、分子間力でお互いに結合しているので、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムは特定の形状を有し、自立構造体を形成する。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの厚さは0.5ナノメートルから100ミクロンまでである。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの幅はカーボンナノチューブアレイのサイズに関連し、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの長さは制限されない。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献1に掲載されている。スペースを節約するために、ここでのみ引用されているが、特許文献1のすべての技術的開示も、本発明の技術的開示の一部と見なされるべきである。ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおける多数のカーボンナノチューブは、分子間力によって端から端まで接続されている。一つの例において、カーボンナノチューブフィルム構造体は、複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムが積層されて形成される。隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、それぞれ0°~90°(0°を含まず)の角度で交差している。複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差してネットワークフィルム構造体を形成している。
【0026】
綿毛構造カーボンナノチューブフィルムは、絡み合って均一に分布している複数のカーボンナノチューブを含む。好ましくは、綿毛構造カーボンナノチューブフィルムは、絡み合って均一に分布している複数のカーボンナノチューブからなる。カーボンナノチューブは、分子間力によって互いに接近して、相互に絡み合い、カーボンナノチューブネット状構造体が形成され、自立構造体を有する綿毛構造カーボンナノチューブフィルムが形成される。綿毛構造カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、絡み合い、等方的に配列されている。綿毛構造カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブアレイを処理することによって得ることができる。綿毛構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献2に掲載されている。スペースを節約するために、ここでのみ引用されているが、特許文献2のすべての技術的開示も、本発明の技術的開示の一部と見なされるべきである。
【0027】
プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムは複数のカーボンナノチューブを含む。好ましくは、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムは複数のカーボンナノチューブからなる。複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。隣接するカーボンナノチューブ同士が分子間力で相互に結合され接続される。カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用して、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、押し器具の形状及びカーボンナノチューブアレイを押す方向により決められる。
【0028】
プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される場合には、該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含み、隣接するカーボンナノチューブ同士が分子間力で相互に引き合わさって接続される。また、該カーボンナノチューブフィルムは、平面等方性を有し、該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長している基板に垂直な方向に沿って、カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される場合には、該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列した複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿ってカーボンナノチューブアレイを同時に押すと、基本的に同じ方向に配列したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、カーボンナノチューブアレイを同時に押すと、異なる方向に沿って、選択的な方向に配列したカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、特許文献3に掲載されている。スペースを節約するために、ここでのみ引用されているが、特許文献3のすべての技術的開示も、本発明の技術的開示の一部と見なされるべきである。
【0029】
カーボンナノチューブペーパーは、基本的に同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。複数のカーボンナノチューブは、延伸方向に分子間力で端と端が接続されている。複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブペーパーの表面に基本的に平行である。カーボンナノチューブペーパーの製造方法は、特許文献4に掲載されている。スペースを節約するために、ここでのみ引用されているが、特許文献4のすべての技術的開示も、本発明の技術的開示の一部と見なされるべきである。
【0030】
カーボンナノチューブ構造体は純粋であり、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの比表面積は大きく、カーボンナノチューブ構造自体は大きな粘度を持っている。したがって、カーボンナノチューブ構造体は自身の接着力によって、内面101に固定されることができる。カーボンナノチューブ構造体を内面101によりよく固定するために、カーボンナノチューブ構造体も接着剤によって内面101に固定される。本実施例において、カーボンナノチューブ構造体は純粋であり、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの比表面積は大きく、カーボンナノチューブ構造体はそれ自体の接着力によって内面101に固定されている。
【0031】
電子ビームのエネルギーが高くなるにつれて、多孔炭素材料層104におけるその通過深さはより深くなり、逆に電子ビームのエネルギーが低くなるにつれて、通過深さはより浅くなる。好ましくは、電子ビームのエネルギーが20keV以下である場合、多孔炭素材料層104の厚さは200μm~600μmである。この厚さ範囲では、電子ビームは多孔炭素材料層104を容易に通過せず、多孔炭素材料層104から外部に反射されにくい。また、この厚さ範囲において、多孔炭素材料層104は高い電子吸収率を有する。一つの例において、多孔炭素材料層104の厚さは300μm~500μmである。もう一つの例において、多孔炭素材料層104の厚さは250μm~400μmである。
【0032】
図2を参照すると、多孔炭素材料層104が超配列カーボンナノチューブアレイである場合、電子黒体空洞10の電子吸収率は、超配列カーボンナノチューブアレイの高さによって変化する。
図2に示すように、カーボンナノチューブアレイの高さが増加するにつれて、電子黒体空洞10の電子吸収率が増加することが分かる。カーボンナノチューブアレイの高さが500μmである場合、電子黒体空洞10の電子吸収率は0.95を超え、基本的に1.0に近い。超配列カーボンナノチューブアレイの高さが540μmより大きい場合、超配列カーボンナノチューブアレイの高さが増加し続けても、電子黒体空洞10の電子吸収率は基本的に変化しない。
【0033】
多孔炭素材料層104が超配列カーボンナノチューブアレイである場合、超配列カーボンナノチューブアレイの高さは350μm~600μmであることが好ましい。この高さ範囲では、電子ビームは多孔炭素材料層104を容易に通過せず、多孔炭素材料層104から外部に反射されにくい。この高さ範囲では、超配列カーボンナノチューブアレイは高い電子吸収率を有し、電子黒体空洞10が電子に対してより良好な遮蔽効果を有することができる。より好ましくは、超配列カーボンナノチューブアレイの高さは400μm~550μmである。この実施例において、多孔炭素材料層104は、超配列カーボンナノチューブアレイであり、超配列カーボンナノチューブアレイの厚さは550ミクロンである。
【0034】
電子黒体空洞10の材料は導電性材料であり、例えば、金属或いは金属合金である。本実施例において、電子黒体空洞10の材料はアルミニウム合金である。電子黒体空洞10の形状は、実際の必要に応じて設計できる。本実施例において、電子黒体空洞10の形状は直方体である。
【0035】
図3を参照すると、本発明の第二実施例は二次電子検出装置20を提供する。二次電子検出装置20は電子黒体空洞201と、二次電子検出要素202と、を含む。電子黒体空洞201は、内面2011と、空洞2012と、開口部2013と、を有する。空洞2012は、電子黒体空洞201の内面2011を囲むことによって形成される。二次電子検出要素202は、空洞2012に設置される。開口部2013は、電子ビームが空洞2012に入るために使用される。電子黒体空洞201の内面2011に多孔炭素材料層2014が設置される。
【0036】
電子黒体空洞201は、第一実施例の電子黒体空洞10と全く同じである。電子黒体空洞201は、第一実施例の電子黒体空洞10のすべての技術的特徴を含む。多孔炭素材料層2014は、第一実施例の多孔炭素材料層104と同じである。多孔炭素材料層2014は、第一実施例の多孔炭素材料層104のすべての技術的特徴を含む。
【0037】
二次電子検出要素202は、空洞2012の中の任意の位置に設置することができる。例えば、二次電子検出要素202は、二次電子黒体空洞201の内面2011に設置されてもよく、または固定ブラケットを介して内面2011に接触することなく空洞2011に設置されてもよい。二次電子検出素子202が内面2011に設置されている場合、多孔炭素材料層2014は、二次電子検出素子202が設置される内面の部分には設置されていない。すなわち、電子黒体空洞201の内面2011には、二次電子検出素子202が設置される部分を除いて、内面2011の他の部分に多孔炭素材料層2014が設置される。本実施例において、二次電子検出要素202は、電子黒体空洞201の側壁の内面2011に設置される。
【0038】
二次電子検出要素202は、二次電子プローブ2021を含む。一つの例において、二次電子プローブ2021は多孔炭素材料層2022を含み、且つ多孔炭素材料層2022は多孔炭素材料層2014と絶縁して設置される。多孔炭素材料層2022は、多孔炭素材料層2014および第一実施例の多孔炭素材料層104と同じである。
【0039】
多孔炭素材料層2022は、複数の炭素材料粒子を含む。複数の炭素材料粒子の間に微小な間隙がある。複数の炭素材料粒子間の間隙は、ナノメートルスケールまたはマイクロメートルスケールである。多孔炭素材料層2022は、電子の絶対的な黒体と見なすことができる。多孔炭素材料層2022は、自立構造体である。
【0040】
好ましくは、多孔炭素材料層2022は、純粋な炭素構造を有する。これは、多孔炭素材料層2022が、他の不純物を含まない複数の炭素材料粒子のみから構成され、炭素材料粒子も純粋な炭素材料粒子であることを意味する。
【0041】
炭素材料粒子は、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、カーボンナノボールなどが含まれる。好ましくは、炭素材料粒子はカーボンナノチューブであり、多孔炭素材料層2022はカーボンナノチューブ構造体である。カーボンナノチューブ構造体はカーボンナノチューブアレイまたはカーボンナノチューブネットワーク構造体である。
【0042】
二次電子プローブ2021が多孔炭素材料層2022を含む場合、多孔炭素材料層2022における複数の炭素材料粒子間にナノメートルまたはマイクロメートルの間隙がある。二次電子ビームが多孔炭素材料層2022に入った後、二次電子ビームは、多孔炭素材料層2022における複数の炭素材料粒子間にあるナノメートルまたはマイクロメートルの間隙で、複数回屈折および反射され、多孔炭素材料層2022から放出されることができない。多孔炭素材料層2022は、二次電子の絶対的な黒体と見なすことができる。したがって、多孔炭素材料層2022は、二次電子の収集効果が優れている。多孔炭素材料層2022を使用する二次電子プローブ2021はサンプル表面から逃げる二次電子を検出すると、基本的に二次電子が逃げないため、検出精度が高くなる。
【0043】
図4を参照すると、多孔炭素材料層2022は、基板2023の表面に設置することができる。基板2023は、好ましくは平坦な構造体である。基板2023の材料は絶縁材料である。基板2023は可撓性または剛性の基板である。基板2023の材料は、例えば、ガラス、プラスチック、シリコンウェーハ、二酸化シリコンウェーハ、石英ウェーハ、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、シリコン、酸化物層を有するシリコン、石英などのいずれかの一種である。基板2023のサイズは、実際のニーズに応じて設定される。本実施例において、多孔炭素材料層2022は、基板2023の表面に設置され、基板2023はシリコンウェーハである。
【0044】
二次電子プローブ2021の材料は、多孔炭素材料層2022に限定されず、他の材料であってもよい。
【0045】
図5を参照すると、二次電子検出要素202は、試験ユニット2024をさらに含む。試験ユニット2024は、導線2025を介して二次電子プローブ2021に電気的に接続される。試験ユニット2024は、二次電子プローブ2021によって収集された二次電子を検出し、数値変換を実行するために使用される。試験ユニット2024は、電流計、電圧計、または温度表示装置である。本実施例において、試験ユニット2024は電流計である。二次電子プローブ2021によって収集された二次電子が導線を介して電流計に伝達されるとき、二次電子によって生成された電流値を電流計によって読み取って、サンプルの表面から逃げる二次電子の数量を得ることができる。
【0046】
アプリケーションでは、二次電子検出要素202を出力ユニットに接続することができる。出力ユニットは、画像表示装置、アラームなどである。本実施例において、出力ユニットは液晶ディスプレイであり、試験ユニット2024によって測定された電流信号は、液晶ディスプレイに画像を出力する。
【0047】
図6は、従来の金属空洞を備えた二次電子検出装置を使用してサンプルの表面を試験することによって得られた表面画像である。
図7は、本発明の電子黒体空洞の二次電子検出装置20を用いてサンプルの表面を試験して得られた表面画像である。
図6と
図7の二次電子検出装置は、空洞のみが異なり、他の素子は同じであり、サンプルも同じである。
図7のサンプル画像は、
図6の画像よりもはるかに鮮明であることが分かる。これは、本発明の二次電子検出装置20が、空洞で生成された二次電子を遮蔽し、サンプル表面の二次電子はより高い精度で検出されることができる。
【0048】
図8および
図9はそれぞれ従来の二次電子検出装置及び本発明の二次電子検出装置を使用して同じサンプルを検出して得られたサンプル写真である。試験サンプルは平坦なシリコンウェーハに厚さ100nmのAu層を蒸着して形成する構造体である。
図9のサンプル画像は
図8の画像よりもはるかに鮮明である。
図8の画像分散は9.29であり、
図9の画像分散はわずか2.88である。同じサンプルを検出する場合、本発明の二次電子検出装置によって得られたサンプル画像の画像分散は、従来の二次電子検出装置によって得られたサンプル画像の画像分散よりもはるかに小さいことが分かる。したがって、本発明の二次電子検出装置を用いて得られたサンプル画像の画質は、従来の二次電子検出装置を用いて得られたサンプル画像の画質よりもはるかに高い。
【0049】
図10は、従来の二次電子検出装置および本発明の二次電子検出装置を使用して、同じサンプルのグレースケールを示す図である。ここで、サンプルは、平坦なシリコンウェーハに厚さ100nmのAu層を蒸着して形成する構造体である。
図10から、従来の二次電子検出装置と比較して、本発明の二次電子検出装置によって得られたサンプルのグレー値は比較的均一であることが分かる。
【0050】
本発明により提供される電子黒体空洞の内面には多孔炭素材料層が設置され、多孔炭素材料層は電子の絶対的な黒体と見なすことができる。したがって、電子ビームが電子黒体空洞の内面に当たると、電子ビームが内面に設置される多孔炭素材料層に完全に吸収され、電子黒体空洞の表面から逃げる二次電子は内面に設置された多孔炭素材料層に完全に吸収され、放出されず、電子黒体空洞は優れた電子シールド効果を持っている。したがって、本発明の電子黒体空洞10を用いた二次電子検出装置により検出された二次電子は、基本的にサンプルの表面から放出されたものであるため、検出精度は非常に高い。本発明により提供される二次電子検出装置の二次電子プローブは、多孔炭素材料層を含み、多孔炭素材料層は二次電子の絶対的な黒色体と見なすことができる。したがって、多孔炭素材料層は、二次電子の収集に特に優れた効果を有する。二次電子検出素子を使用してサンプル表面から逃げる二次電子を検出すると、基本的に二次電子が失われることはなく、二次電子検出装置の検出精度を高める。多孔炭素材料層はカーボンナノチューブ構造体でもよい。カーボンナノチューブ構造体は優れている導電性、柔軟性、強度を有するため、高温や低温などの非常に過酷な環境でも使用でき、二次電子検出装置の応用範囲が広い。カーボンナノチューブ構造体の重量が比較的軽いため、実際の操作に役立つ。二次電子検出装置は、品質と体積が厳しいマイクロデバイスに適している。
【符号の説明】
【0051】
10、20 電子黒体空洞
101、2011 内面
102、2012 空洞
103、2013 開口部
104、2014、2022 多孔炭素材料層
202 二次電子検出素子
2021 二次電子プローブ
2023 基板
2024 試験ユニット
2025 導線