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7164133ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子を含む複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子を含む複合体
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20221025BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C01B33/18 E
C08K3/36
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021131943
(22)【出願日】2021-08-13
(62)【分割の表示】P 2018535649の分割
【原出願日】2017-08-21
(65)【公開番号】P2021185233
(43)【公開日】2021-12-09
【審査請求日】2021-08-13
(31)【優先権主張番号】P 2016163081
(32)【優先日】2016-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 浩良
(72)【発明者】
【氏名】田中 学
(72)【発明者】
【氏名】亀山 百合
(72)【発明者】
【氏名】工藤 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】三上 寛翔
(72)【発明者】
【氏名】伊左治 忠之
(72)【発明者】
【氏名】小高 一利
(72)【発明者】
【氏名】菊池 隆正
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-222228(JP,A)
【文献】特開平01-317115(JP,A)
【文献】国際公開第2000/015552(WO,A1)
【文献】特開2008-169102(JP,A)
【文献】特開2016-011224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
B01D 53/22,61/00-71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子とマトリクス樹脂とを含む複合体であって、
前記ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子は、異形シリカナノ粒子の表面にハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子が付加されてなり、
前記異形シリカナノ粒子は、動的光散乱法による測定粒子径D1と窒素ガス吸着法による測定粒子径D2の比D1/D2が4以上であって、D1は40~500nmであり、そして透過型電子顕微鏡観察による5~40nmの範囲内の一様な太さを有する細長い形状のシリカナノ粒子、
窒素ガス吸着法による測定粒子径D2が10~80nmの球状コロイダルシリカ粒子とこの球状コロイダルシリカ粒子を接合するシリカからなり、動的光散乱法による測定粒子径D1と球状コロイダルシリカ粒子の窒素ガス吸着法による測定粒子径D2の比D1/D2が3以上であって、D1は40~500nmであり、前記球状コロイダルシリカ粒子が連結した数珠状のシリカナノ粒子、及び
窒素ガス吸着法により測定される比表面積をS2、画像解析法により測定される平均粒子径D3から換算した比表面積をS3として、表面粗度S2/S3の値が1.2~10の範囲にあり、D3が10~60nmの範囲である、コロイダルシリカ粒子の表面に複数の疣状突起を有する金平糖状のシリカナノ粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記マトリクス樹脂が、ポリイミド、及びポリエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする複合体。
【請求項2】
前記マトリクス樹脂が、下記構造式2に示されるPIM-1樹脂であることを特徴とする請求項記載の複合体。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子を含む複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノテクノロジー研究の一還として、平均粒子径が1nm位から数百nm位までのナノメートルオーダーの粒子径を有する微粒子(ナノ粒子)に関する研究が盛んに行われている。素材をナノサイズ化したナノ粒子では、従来のバルク材料とは異なり、様々な機態・特性を発現・付与できることが知られており、幅広い産業分野での応用が期待されている。ナノ粒子は一次粒子としての製造は可能であるが、その微細さに由来して凝集性が強く、放置しておくとマイクロオーダーの粒子径を有する凝集体となってしまう。例えば、上述したような無機物ナノ粒子を有機成分中に添加した場合、耐熱性の向上や機械的強度の向上が期待できる一方で、無機物粒子はその凝集性の強さから、そのままでは有機溶媒中や高分子マトリクス中でマイクロオーダーの凝集体を形成し、結果として期待したような有機-無機複合材料の特性・性能を得られない可能性がある。このため、一次粒子としての分散性を維持するために、粒子表面に対して均一な化学修飾を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
加えて現在、無機成分と有機成分をナノレベル又は分子レベルで混ぜ合わせることによって、両者のメリットを相乗的に高めることのできる有機-無機複合材料が注目を集めている。この概念は、エネルギー・環境問題を解決する上でその有用性が注目されている高分子気体分離膜にも適応がなされており、高分子マトリクス中に無機物ナノ粒子を添加した有機-無機複合材料の作製によって、既存の方法では達成できなかった高い機械的強度や熱的安定性、気体透過特性の達成が望まれている。
【0004】
高分子膜の気体透過特性を利用して気体を分離する方法は、気体の相変化を伴わずに気体の分離・回収ができ、他の気体分離法に比べて操作が簡便で装置の小型化が可能であり、また、連続的に気体分離を行うことができるため、環境負荷が少ないという特性を有している。このような省エネルギー型の高分子気体分離膜法は、近年、特に温室効果ガスの分離・回収や酸素富化空気の作製、天然ガスの精製技術として注目を集め、実用化が期待されているが、さらに気体分離性能及び気体透過量の点での改善が必要とされる。
【0005】
前記したように、高分子膜に無機物ナノ粒子を含有させることにより気体透過特性を改善する試みもなされているが、前記ナノ粒子の凝集の問題は、有機-無機複合気体分離膜の作製においても同様に問題となっており、既存の有機-無機複合気体分離膜では、高分子マトリクス中で無機物ナノ粒子が凝集することにより、膜強度の低下や、高い粒子含有率を達成できないことから、気体透過性を数倍程度までしか向上できないことが課題となっている。
【0006】
例えば、高分子膜に無機物ナノ粒子を含有させて気体分離膜特性を改善する方法として、シリカナノ粒子表面をアミノ基含有シランカップリング剤で処理して表面をシリル化し、さらにこのシリル化粒子をポリマーで処理することによりポリマーグラフトシリカ粒子を作製し、こうして得られたれポリマーグラフトシリカ粒子をポリマー中に分散させて樹脂膜とし、この膜の気体分離膜としての性能を調べた報告もなされている(非特許文献1参照)が、気体の透過量などにおいて十分といえる結果は得られていない。
【0007】
これらの課題を解決する方法として、シリカナノ粒子表面に対して嵩高いハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子を結合させることにより、有機溶媒中や高分子マトリクス中での凝集がなく、均一分散性に優れ、気体の透過量が大きく改善された気体分離膜が提唱されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-99607号公報
【文献】特開2010-222228号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】ポリマー(Polymer),47(2006),pp.7535-7547
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、高分子膜に無機物ナノ粒子を含有させて気体分離膜特性を改善する方法として特許文献2に記載の技術を検証する中で、無機物ナノ粒子として球状ナノ粒子を用いていたため、粒子同士の接触確率が低く、気体透過量において十分な結果が得られていないことを突き止めた。
【0011】
本発明は、高分子膜中に表面修飾異形シリカナノ粒子を含有する、気体透過量の特性において極めて優れた気体分離膜を提供するハイーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子を含む複合体を提供することを目的とするものである。
【0012】
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討を行った結果、シリカナノ粒子として異形シリカナノ粒子、例えば、細長い形状、数珠状又は金平糖状のシリカナノ粒子を用いることにより、気体の透過量が大きく改善された気体分離膜となることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、以下の第1観点~第4観点のいずれか一つに記載のハイーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子を含む複合体に関する。
【0014】
第1の観点は、異形シリカナノ粒子の表面にハイパープランチ高分子又はデンドリマー高分子が付加されてなり、前記異形シリカナノ粒子は、動的光散乱法による測定粒子径D1と窒素ガス吸着法による測定粒子径D2の比D1/D2が4以上であって、D1は40~500nmであり、そして透過型電子顕微鏡観察による5~40nmの範囲内の一様な太さを有する細長い形状のシリカナノ粒子、窒素ガス吸着法による測定粒子径D2が10~80nmの球状コロイダルシリカ粒子とこの球状コロイダルシリカ粒子を接合するシリカからなり、動的光散乱法による測定粒子径D1と球状コロイダルシリカ粒子の窒素ガス吸着法による測定粒子径D2の比D1/D2が3以上であって、D1は40~500nmであり、前記球状コロイダルシリカ粒子が連結した数珠状のシリカナノ粒子、及び窒素ガス吸着法により測定される比表面積をS2、画像解析法により測定される平均粒子径D3から換算した比表面積をS3として、表面粗度S2/S3の値が1.2~10の範囲にあり、D3が10~60nmの範囲である、コロイダルシリカ粒子の表面に複数の疣状突起を有する金平糖状のシリカナノ粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種であるハイバーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子である。
【0015】
第2の観点は、第1の観点のハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子とマトリクス樹脂とを含む複合体である。
【0016】
第3の観点は、前記マトリクス樹脂が、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリジメチルシロキサン、ポリ置換アセチレン、ポリ-4-メチルペンテン、及び天然ゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする第2の観点の複合体である。
【0017】
第4の観点は、前記マトリクス樹脂が、下記構造式2に示されるPIM-1樹脂であることを特徴とする第2の観点の複合体である。
【化1】
【0018】
また、別の本発明は、以下の第1観点~第8観点のいずれか一つに記載の気体分離膜の製造方法である。
【0019】
第1観点は、異形シリカナノ粒子の表面にハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子が付加されてなるハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子とマトリクス樹脂とを含有することを特徴とする気体分離膜である。
【0020】
第2観点は、前記異形シリカナノ粒子は、動的光散乱法による測定粒子径D1と窒素ガス吸着法による測定粒子径D2の比D1/D2が4以上であって、D1は40~500nmであり、そして透過型電子顕微鏡観察による5~40nmの範囲内の一様な太さを有する細長い形状のシリカナノ粒子、窒素ガス吸着法による測定粒子径D2が10~80nmの球状コロイダルシリカ粒子とこの球状コロイダルシリカ粒子を接合するシリカからなり、動的光散乱法による測定粒子径D1と球状コロイダルシリカ粒子の窒素ガス吸着法による測定粒子径D2の比D1/D2が3以上であって、D1は40~500nmであり、前記球状コロイダルシリカ粒子が連結した数珠状のシリカナノ粒子、及び窒素ガス吸着法により測定される比表面積をS2、画像解析法により測定される平均粒子径D3から換算した比表面積をS3として、表面粗度S2/S3の値が1.2~10の範囲にあり、D3が10~60nmの範囲である、コロイダルシリカ粒子の表面に複数の疣状突起を有する金平糖状のシリカナノ粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする第1観点に記載の気体分離膜である。
【0021】
第3観点は、前記ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子は、ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子と異形シリカナノ粒子とが反応性官能基含有化合物を介して結合していることを特徴とする第1観点又は第2観点に記載の気体分離膜である。
【0022】
第4観点は、前記反応性官能基含有化合物は、官能基含有シランカップリング剤であることを特徴とする第1観点~第3観点のいずれか一つに記載の気体分離膜である。
【0023】
第5観点は、前記反応性官能基含有化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする第1観点~第4観点のいずれか一つに記載の気体分離膜である。
【0024】
【化2】
(式中、Rはメチル基又はエチル基を表し、Rは炭素原子数1~5のアルキレン基、アミド基、アミノアルキレン基を表し、Rは、水素又は下記の一般式(2)で表される基を示す。)
【0025】
【化3】
(Rは炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表す。)
【0026】
第6観点は、前記ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子は、下記の一般式(3)で表される構造のモノマーの縮合体であることを特徴とする第1観点~第5観点のいずれか一つに記載の気体分離膜である。
【0027】
【化4】
(式中Rは、炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表し、X、Yはカルボキシル基、アミノ基、メチル基又はハロゲン原子を表す。m、nは1~4の整数を表し、3≦m+n≦6である。)
【0028】
第7観点は、前記マトリクス樹脂は、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリジメチルシロキサン、ポリ置換アセチレン、ポリ-4-メチルペンテン及び天然ゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする第1観点~第6観点のいずれか一つに記載の気体分離膜である。
【0029】
第8観点は、前記ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子の含有量が1~70質量%であることを特徴とする第1観点~第7観点のいずれか一つに記載の気体分離膜である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の気体分離膜は、ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子を付加した異形シリカナノ粒子が樹脂中に均一に分散しており、また該粒子同士の接触確率が改善されるため、気体透過量の極めて大きい気体分離膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明において用いられる異形シリカナノ粒子は、その形状が非球状であって、動的光散乱法による測定粒子径が500nm以下の異形シリカナノ粒子である。
【0032】
本発明において用いられる異形シリカナノ粒子は、マトリクス樹脂中におけるシリカナノ粒子同士の接触確率を向上させるために、以下に記す細長い形状、数珠状、及び金平糖状のシリカナノ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、これらを混合して用いても良い。
【0033】
異形シリカナノ粒子の形状が細長い形状である場合には、動的光散乱法による測定粒子径D1(nm)と窒素ガス吸着法による測定粒子径D2(nm)の比D1/D2が4以上であって、このD1は40~500nmであり、そして透過型電子顕微鏡観察による5~40nmの範囲内の一様な太さを有する細長い形状であることが好ましい。
【0034】
異形シリカナノ粒子の形状が球状コロイダルシリカ粒子とこの球状コロイダルシリカ粒子を接合するシリカからなり、前記球状コロイダルシリカ粒子が連結した数珠状である場合には、動的光散乱法による測定粒子径D1(nm)と球状コロイダルシリカ粒子の窒素吸着法による測定粒子径D2(nm)の比D1/D2が3以上であって、D1は40~500nmであることが好ましい。
【0035】
異形シリカナノ粒子の形状がコロイダルシリカ粒子の表面に複数の疣状突起を有する金平糖状である場合には、窒素ガス吸着法により測定される比表面積をS2(m2/g)、画像解析法により測定された平均粒子径D3(nm)から換算した比表面積をS3(m2/g)として、表面粗度S2/S3の値が1.2~10の範囲にあり、D3が10~60nmの範囲であることが好ましい。
【0036】
動的光散乱法による測定粒子径D1は、例えば、Malvern Instruments製Zetasizer Nano ZSにより測定することができる。窒素ガス吸着法による測定粒子径D2は、例えば、Quantachrome製MonosorbTMにより測定することができ、窒素ガス吸着法により測定される比表面積S2(m2/g)を用いて、換算式(a):D2(nm)=2720/S2(m2/g)により算出される。
【0037】
また、画像解析法により測定された平均粒子径D3から換算された比表面積S3については、透過型電子顕微鏡により、試料のナノシリカを写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最大径DLを測定したときの平均値を平均粒子径D3とし、次に試料のナノシリカを理想的な球状粒子と仮定して、次式(b)より比表面積S3が算定される。換算式(b):S3(m2/g)=2720/D3(nm)
【0038】
画像解析は、例えば、(株)ニレコ製自動画像処理解析装置LUZEX APを用いて行うことができる。
【0039】
比表面積は単位質量当りの表面積を示すから、表面粗度S2/S3の値については、粒子が球状であって、粒子表面が多くの疣状突起を有する程、S2/S3の値は大きくなり、粒子表面の疣状突起が少なく、平滑であるほど、S2/S3の値は小さくなり、その値は1に近づく。
【0040】
前記金平糖状の異形シリカナノ粒子の形状は、表面に複数の突起を有する微粒子であればどのような形状のものであってもよい。
【0041】
前記細長い形状の異形シリカナノ粒子としては、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックス(登録商標)UP、スノーテックスOUP、IPA-ST-UP、MEK-ST-UPなどが市販品として入手可能である。
【0042】
前記数珠状の異形シリカナノ粒子としては、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスPS-S、スノーテックスPS-SO、スノーテックスPS-M、スノーテックスPS-MOなどが市販品として入手可能である。
【0043】
また、これらの異形シリカナノ粒子には、球状のシリカナノ粒子を混合して用いることもでき、混合の割合はシリカ固形分として、異形シリカナノ粒子:球状シリカナノ粒子=100:0~10:90であることが好ましい。
【0044】
本発明におけるハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子は、異形シリカナノ粒子の表面に存在するシラノール基と反応して共有結合を形成する基とハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子を形成する際の結合基として機能する反応性官能基とを1分子内に有する反応性官能基含有化合物を介して、ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子と結合している。
【0045】
前記反応性官能基含有化合物は、官能基含有シランカップリング剤である。当該シランカップリング剤の有する反応性官能基としては、アミノ基、イソシアネート基、メルカプト基、グリシジル基、ウレイド基、ハロゲン基などが挙げられる。
【0046】
前記反応性官能基含有化合物は、下記の一般式(1)で表される化合物あることが好ましい。
【0047】
【化5】
(式中、Rはメチル基又はエチル基を表し、Rは炭素原子数1~5のアルキレン基、アミド基、アミノアルキレン基を表し、Rは、水素又は下記の一般式(2)で表される基を示す。)
【0048】
【化6】
(Rは炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表す。)
【0049】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0050】
前記反応性官能基含有化合物は、アミノ基以外の官能基を有するシランカップリング剤でも良く、例えば、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0051】
また、本発明における反応性官能基含有化合物は、前記一般式(1)のようなトリアルコキシシラン化合物でなくてもよく、例えば、ジアルコキシシラン化合物、モノアルコキシシラン化合物であってもよい。
【0052】
本発明におけるハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子は、ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子と異形シリカナノ粒子とが反応性官能基含有化合物を介して結合しており、前記ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子は、下記の一般式(3)で表される構造のモノマーの縮合体である。
【0053】
【化7】
(式中Rは炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表し、X、Yはカルボキシル基、アミノ基、メチル基又はハロゲン原子を表す。m、nは1~4の整数を表し、3≦m+n≦6である。)
【0054】
異形シリカナノ粒子の反応性官能基含有化合物による処理においては、異形シリカナノ粒子は、水又は炭素原子数1~4のアルコールに分散した液中に反応性官能基含有化合物を投入し、攪拌することにより行われる。炭素原子数1~4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノールが挙げられる。また、これらの混合溶媒であってもよい。
【0055】
異形シリカナノ粒子表面への反応性官能基の付加は、上記のように1段階反応によっても良いし、必要に応じて2段階以上の反応で行われても良い。2段階反応の具体例をカルボキシル基修飾異形シリカナノ粒子の調製で説明すると、例えば、先ず、異形シリカナノ粒子をアミノアルキルトリアルコキシシランで処理して、アミノ基修飾異形シリカナノ粒子を調製し、次いで一般式(4)で表されるジカルボン酸化合物又はその酸無水物で処理することにより、異形シリカナノ粒子に付加された反応性官能基の末端がカルボキシル基である異形シリカナノ粒子を調製することができる。
【0056】
【化8】
(式中、Rは炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表す。)
【0057】
上記一般式(4)で表される化合物としては、例えば、マロン酸、アジピン酸、テレフタル酸などが挙げられる。ジカルボン酸化合物は、上記式(4)で挙げられたものに限定されるものではない。
【0058】
2段階を超える反応で異形シリカナノ粒子表面への反応性官能基を付加する場合は、下記一般式(5)で表される末端にアミノ基を2つ有するモノマーを、前記式(1)、次いで前記式(3)で表される化合物で処理された異形シリカナノ粒子に付加することにより、表面修飾基の末端がアミノ基である異形シリカナノ粒子を調製し、前記の反応を繰り返すことにより行うことができる。
【0059】
【化9】
(式中、Rは炭素原子数1~20のアルキレン基、又は(-C24-O-)p及び/又は(-C36-O-)qを表し、p、qは各々独立に1以上100以下の整数である。)
【0060】
前記一般式(5)で表されるモノマーの例としては、エチレンジアミン、ポリオキシエチレンビスアミン(分子量2,000)、o,o’-ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコール-ブロック-ポリエチレングリコール(分子量500)などが挙げられる。
【0061】
このようにして調製された反応性官能基修飾異形シリカナノ粒子の第1溶媒分散液は、第2溶媒に置換した後、ハイパーブランチ高分子又デンドリマー高分子の付加反応を行うことができる。
【0062】
第2溶媒は、第1溶媒より疎水性の高い溶媒であり、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセロアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びγ-ブチロラクトン(GBL)のうち1種以上から選択される少なくとも1種であることが好ましく、これらの混合溶媒でもよい。
【0063】
第2溶媒への置換方法は特に限定されず、反応性官能基修飾異形シリカナノ粒子の第1溶媒分散液を乾燥後に第2溶媒に分散させても良いし、反応性官能基修飾異形シリカナノ粒子の第1溶媒分散液を乾燥させずに溶媒置換して第2溶媒の分散液としても良い。
【0064】
このように溶媒置換した後、反応性官能基修飾異形シリカナノ粒子の第2溶媒分散液にハイパーブランチ形成用モノマー又はデンドリマー形成用モノマーを反応させて、前記反応性官能基修飾異形シリカナノ粒子にハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子が付加された異形シリカナノ粒子の第2溶媒分散液を得る。
【0065】
デンドリマーの合成法には、Divergent法とConvergent法があり、Divergent法は、中心にある核分子から外側に向かってビルディングブロックの保護-脱保護を行ない反応させる方法である。Convergent法は、デンドリマーのサブユニットであるデンドロンを外側から合成し、最後に核分子とカップリング反応を行なう方法である。
【0066】
一方、ハイパーブランチ高分子は、基本的にAB2型モノマーの自己縮合により合成され、デンドリマーと比較すれば、はるかに容易に合成することができる。構造の規制、分子量分布については、デンドリマーほど精密ではないため、分子量や分岐度の異なる化合物の混合物であり、いわゆる高分子として取り扱うことができる。
【0067】
本発明で用いられるハイパーブランチ形成用モノマーとして、下記の一般式(6)で示されるカルボキシル基を1個、アミノ基を2個有する化合物を用いることが好ましい。
【0068】
【化10】
(式中、Rは炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表す。)
【0069】
上記一般式(6)で表されるハイパーブランチ形成用モノマーの例としては、3,5-ジアミノ安息香酸、3,5-ジアミノ-4-メチル安息香酸などが挙げられる。
【0070】
また、本発明で用いられるハイパーブランチ形成用モノマーとしては、アミノ基を3個以上有する化合物であってもよいし、Rは炭素原子数1~20のアルキレン基、芳香族基以外の基であってもよい。
【0071】
さらに、ハイパーブランチ形成用モノマーとして、下記の一般式(7)で表されるカルボキシル基を1個、ハロゲン原子を2個有する化合物を用いることもできる。
【0072】
【化11】
(式中、Rは炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表し、X1及びX2はハロゲン原子を表す。)
【0073】
上記一般式(7)で表される化合物としては、例えば、3,5-ジブロモ-4-メチル安息香酸、3,5-ジブロモサリチル酸、3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシ-安息香酸などが挙げられる。
【0074】
本発明で用いられるハイパーブランチ形成用モノマーは、上記1個のカルボキシル基と2個以上のアミノ基、又は1個のカルボキシル基と2個以上のハロゲン原子を含有する化合物に限られるものではなく、異形シリカナノ粒子に修飾された反応性官能基に応じて、ハイパーブランチ高分子が形成可能なモノマーが適宜用いられればよい。
【0075】
さらに、2段階反応でカルボキシル基による表面修飾が行われた異形シリカナノ粒子の場合には、下記の一般式(8)で表される1個のアミノ基と2個のカルボキシル基を有する化合物を用いて、ハイパーブランチ高分子を付加することができる。
【0076】
【化12】
(式中、R10は炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表す。)
【0077】
上記一般式(8)で表される化合物としては、例えば、2-アミノテレフタル酸、4-アミノテレフタル酸、DL-2-アミノスベリン酸などが挙げられる。
【0078】
また、下記の一般式(9)に示すように、他のモノマー種として、アミノ基を1つ、ハロゲンを2つ以上有するモノマーもハイパーブランチ高分子形成用モノマーとして使用することができる。
【0079】
【化13】
(式中、R11は炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表し、X及びX2はハロゲン原子を表す。)
【0080】
上記一般式(9)で表される化合物としては、例えば、3,5-ジブロモ-4-メチルアニリン、2,4-ジブロモ-6-ニトロアニリンなどが挙げられる。
【0081】
上記2段階反応でカルボキシル基による表面修飾が行われた異形シリカナノ粒子を用いる場合においても、上記1段階で表面アミノ基修飾がなされた異形シリカナノ粒子を用いる場合と同様に、上記一般式(8)及び(9)におけるカルボキシル基、ハロゲン原子は2個以上でもよいし、さらにカルボキシル基と反応するアミノ基以外の官能基を有する他のモノマーが用いられてもよい。
【0082】
これらの反応により形成されるハイパーブランチ高分子1本鎖の重量平均分子量は、例えば、200~2,000,000程度が好ましく、また分岐度としては、0.5~1程度が好ましい。
【0083】
反応性官能基修飾異形シリカナノ粒子にハイパーブランチ高分子を付加させる反応は、ハイパーブランチモノマーを、第2溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセロアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びγ-ブチロラクトン(GBL)のうち1種以上の溶媒に溶解させ、続いてカルボン酸活性化試薬のBenzotriazol-1-yloxytris(dimethylamino)phosphonium hexafluorophosphate(BOP)と求核試薬のトリエチルアミンを添加して攪拌し、この溶液にアミノ基修飾異形シリカナノ粒子を投入し、撹拌することにより行うことができる。前記BOPとトリエチルアミンの組み合わせ以外に、カルボン酸活性化試薬がトリフェニルホスフィンでもよく、求核試薬はピリジンを用いても良い。
【0084】
次にデンドリマー高分子が付加された異形シリカナノ粒子について説明する。以下では、先ず、アミノ基修飾異形シリカナノ粒子へのデンドリマー付加を説明する。
【0085】
本発明において、アミノ基修飾異形シリカナノ粒子に対してデンドリマー付加を行うに当たり、先ず、アミノ基修飾異形シリカナノ粒子に対し、例えば、下記の一般式(10)で表されるカルボキシル基を3個有するモノマー、又はカルボキシル基を4個以上有するモノマーを付加することが必要となる。使用されるモノマーの例としては、トリメシン酸やピロメリット酸などが挙げられる。
【0086】
【化14】
(式中、R12は炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表す。)
【0087】
前記カルボキシル基を3個有するモノマー、又はカルボキシル基を4個以上有するモノマーの付加に続いて、前記の一般式(5)で表される末端にアミノ基を2つ有するモノマーを付加する。これらの付加を繰り返すことで、デンドリマー修飾異形シリカナノ粒子が調製される。
【0088】
前記の2段階反応により官能基としてカルボキシル基により修飾された異形シリカナノ粒子を用いた場合には、カルボキシル基修飾異形シリカナノ粒子を下記の一般式(11)で表されるアミノ基を3個有するモノマー、又はアミノ基を4個以上有するモノマーを用いて処理する。
【0089】
【化15】
(式中、R13は炭素原子数1~20のアルキレン基又は炭素原子数6~18の芳香族基を表す。)
【0090】
前記一般式(11)で表されるモノマーとしては、1,2,5-ペンタントリアミンや1,2,4,5-ベンゼンテトラアミンなどが挙げられる。
【0091】
次いで、この粒子に対して下記の一般式(12)で表される末端にカルボキシル基を2つ有するモノマーを付加する。前記モノマーの例としては、こはく酸、レブリン酸、o,o’-ビス[2-(スクシニルアミノ)エチル]ポリエチレングリコール(分子量2,000)などが挙げられる。
【0092】
【化16】
(式中、R14は炭素原子数1~20のアルキレン基、(-C24-O-)p及び/又は(-C36-O-)qを表し、p、qは各々独立に1以上100以下の整数である。)
【0093】
以下、これらの付加を繰り返すことで表面デンドリマー修飾異形シリカナノ粒子が調製される。なお、デンドリマー形成モノマーとしては、アミノ基、カルボキシル基以外の基を用いてもよい。
【0094】
このように調製されるハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子は、マトリクス樹脂と混合され、最終的に製膜される。なお、ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子は、マトリクス樹脂と混合される前に乾燥されても良いし、他の第2溶媒又は第2溶媒以外の溶媒と溶媒置換、または一部を溶媒置換してもよい。
【0095】
マトリクス樹脂としては、従来、気体分離膜を形成するために用いられている公知の樹脂を適宜用いればよい。具体的には、例えば、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリジメチルシロキサン、ポリ置換アセチレン、ポリ-4-メチルペンテン、天然ゴムなど種々のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
ポリイミドは、他の樹脂と比較して、強度、耐久性、耐熱性に特に優れており、また、各種気体透過選択性にも優れていることから、本発明の気体分離膜のマトリクス樹脂として好ましいものである。このようなポリイミドのアミン構造は特に限定されないが、アミン基官能基に対し、オルト位片側がアルキル基で置換されたフェニレンジアミン、オルト位すべての位置がアルキル基又は芳香族基で置換されたフェニレンジアミン、3か所以上が水素以外の基で置換されたビフェニル構造を有するジアミン、ナフチジン構造を有するジアミン、特定のブロモ化ジアミンが挙げられる。
【0097】
特にガス分離性能及びガス透過性の観点から、1,3,5-トリメチルフェニレンジアミン、2,5-ジ―t-ブチル1,4-フェニレンジアミンが好ましい。
【0098】
また、使用する酸二無水物については特に限定されないが、ピロメリット酸無水物、ナフタレン酸二無水物、又は4,4‘-(ヘキサフルオロイソピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)が好ましい。特にガス分離性能及びガス透過性の観点から、6FDAが望ましい。
【0099】
また、これらのジアミンと酸二無水物を使用している際、それぞれ5質量%以内で他の酸二無水物、ジアミンを使用し共重合してもよい。共重合は、ランダム共重合、ブロック共重合のどちらでも構わない。
【0100】
ポリスルホンとしては、下記式(13)の繰り返し単位など、分子構造内に少なくとも1つに(-SO-)部位を有する樹脂であればよく、特に限定されない。
【0101】
【化17】
(式中、R15は炭素原子数2~10の飽和又は不飽和脂肪族基、炭素原子数6~18の芳香族基を表し、mは0又は1~20の整数である。)
【0102】
具体的には、例えば、下記のような繰り返し単位を有する樹脂が挙げられる。
【0103】
【化18】
【0104】
ポリエーテルとしては、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイドなど脂肪族ポリエーテルのほか、ポリエーテルエーテルケトンや固有微細孔性高分子(PIM)など芳香族ポリエーテルも挙げられる。
【0105】
本発明の気体分離膜は、マトリクス樹脂を溶解した溶液に前記のハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子が投入され、攪拌、混合されて均一な溶液とされた後、基材に塗布されて製膜される。このとき用いられる溶媒としては、前記の第2溶媒を用いることが好ましい。
【0106】
本発明の気体分離膜におけるハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子の含有率は、成膜可能な量であれば良く、特に限定されるものではないが、通常、膜の全組成の1~70質量%であり、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは10~50質量%である。
【0107】
基材に塗布された被膜の乾燥温度は、溶媒が揮発する温度であれば特に限定はされないが、10~300℃、好ましくは30~200℃である。
【0108】
また、被膜の乾燥時の雰囲気は特に制限されないが、マトリクス樹脂の酸化を防ぐために、不活性ガス中又は真空中で行われることが好ましく、溶媒の揮発の観点から真空中で行うことがより好ましい。
【0109】
本発明の気体分離膜の厚さは、適宜用途に合わせて調整すればよいが、通常、10~100μm程度である。
【0110】
こうして製造された気体分離膜は、二酸化炭素、窒素及び酸素の透過量など、気体透過性能に優れている。
【0111】
これは、異形シリカナノ粒子を用いることにより、高分子マトリクス中での表面ハイパーブランチ高分子又はデンドリマー高分子付加異形シリカナノ粒子同士の接触確率が向上したことが一つの要因と考えられるが、これら推測により本発明が限定されるものではない。
【実施例
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修飾数珠状シリカナノ粒子(P-NP)の作製、10質量%添加ポリイミド複合膜)
3Lナス型フラスコに数珠状シリカナノ粒子(P-NP)の水分散液(スノーテックス(登録商標)PS-SO、日産化学工業(株)製、シリカ濃度:15.5質量%、動的光散乱法による測定粒子径D1:92nm、窒素吸着法による測定粒子径D2:15nm、D1/D2=6.1)483.9gをエバポレーターを用いて、8.7kPaでイソプロパノール(IPA)9.5Lを添加しながら水を留去することにより、水をIPAに置換した。この操作を2バッチ行い、P-NPのIPA分散液3040gを得た。得られたIPA分散液のシリカ濃度は4.8質量%、水分量は0.7質量%であった。2つの3Lセパラブルフラスコに、得られたP-NPのIPA分散液1556g、1419gをそれぞれ量り取り、ここにそれぞれ超純水2.7g、2.5gと3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)(東京化成工業(株)製)22.3g、20.3gを添加し、ガラス撹拌羽根を用いて、室温下で48時間撹拌した。この反応液を遠心分離(1500G、5分)にかけて粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、超純水を加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を11回繰り返すことにより、合計でAPTES修飾P-NPの水分散液5223gを得た。3Lナス型フラスコに上記のAPTES修飾P-NPの水分散液5210gを、エバポレーターを用いて、4.0kPaで水を除去しながらチャージすることにより濃縮し、その後4.0kPaでN-メチルピロリドン(NMP)2.5Lを添加しながら水を留去して、APTES修飾P-NPのNMP分散液2400gを得た。得られたNMP分散液の固形分濃度は5.9質量%、水分量は0.7質量%であった。作製したAPTES修飾P-NPのAPTES修飾率を確認するために、得られたAPTES修飾P-NPの水分散液を110℃で15時間乾燥後、TGA装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、APTES修飾P-NPは、3.3質量%がAPTES、96.7質量%がシリカナノ粒子であることが確認された。次いで3LセパラブルフラスコにNMP45.8gと1,3-ジアミノ安息香酸(DABA)(Aldrich製)4.3g、トリエチルアミン(TEA)(関東化学(株)製)2.8g、Benzotriazol-1-yloxytris(dimethylamino)phosphonium hexafluorophosphate(BOP)(東京化成工業(株)製)12.3gを量り取り、APTES修飾P-NPのNMP分散液340gを添加した。これを室温下で5分間撹拌した後、オイルバスを用いて、80℃、1時間の条件で反応した。この反応液を遠心分離(1500G、5時間)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、NMPを加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を3回繰り返すことにより、DABA修飾P-NPのNMP分散液110gを得た。得られたNMP分散液の固形分濃度は10.3質量%、水分量は0.6質量%であった。得られたDABA修飾P-NPのNMP分散液43.4gを110℃で15時間乾燥し、DABA修飾P-NPの乾燥粉5gを得た。作製したDABA修飾P-NPのDABA修飾率を確認するために、TGA装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、DABA修飾P-NPは、DABA5.5質量%、APTES3.4質量%、シリカナノ粒子91.1質量%であった。10mLバイアルビンに、作製したDABA修飾P-NP乾燥粉0.0167gとテトラヒドロフラン(THF、関東化学製)3.2mLを量り取り、超音波洗浄器にて10分間処理することにより、分散処理を行った。これに構造式1に示すポリイミド(6FDA-3MPA、数平均分子量2.5×105、重量平均分子量/数平均分子量=1.7)0.15gを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で12時間撹拌した。得られたDABA修飾P-NP含有ポリイミド溶液をガラスシャーレ(直径6.1cm)上に流し入れ、40℃に設定したオーブン内にこのガラスシャーレを入れて、4時間かけて真空にして複合膜を作成した。作成した複合膜は、超純水を用いてシャーレから剥がした後、150℃、15時間の熱処理を行った。
【0113】
【化19】
【0114】
上記で得られた複合膜の気体透過測定を行った。測定には気体透過測定装置(K-315N-01C、理科精機工業(株)製)を用い、測定温度35℃、測定圧力76cmHg、供給気体を二酸化炭素、窒素、酸素として測定を行った。結果を表1に示す。
【0115】
〔実施例2〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修飾した細長い形状のシリカナノ粒子(C-NP)の作製、10質量%添加ポリイミド複合膜)
3Lセパラブルフラスコに細長い形状のシリカナノ粒子のIPA分散液(IPA-ST-UP、日産化学工業(株)製、シリカ濃度:15.6質量%、動的光散乱法による測定粒子径D1:49nm、窒素吸着法による測定粒子径D2:11nm、D1/D2=4.5、透過型電子顕微鏡観察による太さが10~15nmで一様である。)641gを量り取り、ここにIPA982.8gと超純水3.6g、APTES(東京化成工業(株)製)29.7gを添加し、ガラス撹拌羽根を用いて、室温下で48時間撹拌した。この反応液を遠心分離(1500G、5分)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、超純水を加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を12回繰り返すことにより、APTES修飾C-NPの水分散液1900gを得た。3Lナス型フラスコに得られたAPTES修飾C-NPの水分散液1894gをエバポレーターを用いて、4.0kPaで水を除去しながらチャージすることにより濃縮し、その後4.0kPaでNMP1.5Lを添加しながら水を留去することにより、APTES修飾C-NPのNMP分散液1435gを得た。得られたNMP分散液の固形分濃度は5.2質量%、水分量は0.7質量%であった。作製したAPTES修飾C-NPのAPTES修飾率を確認するために、得られたAPTES修飾C-NPの水分散液を110℃で15時間乾燥後、TGA装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、APTES修飾C-NPの重量内訳は、3.6質量%がAPTES、96.4質量%がシリカナノ粒子であることが確認された。次いで、3LセパラブルフラスコにNMP38.2gとDABA3.5g、TEA2.4g、BOP10.3gを量り取り、DABA修飾C-NPのNMP分散液766.3gを添加した。これを室温下で5分間撹拌した後、オイルバスを用いて、80℃、1時間の条件で反応した。この反応液を遠心分離(1500G、5時間)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、NMPを加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を3回繰り返すことにより、DABA修飾C-NPのNMP分散液299.0gを得た。得られたDABA修飾C-NPのNMP分散液の固形分濃度は7.5質量%、水分量は0.6質量%であった。得られたDABA修飾C-NPのNMP分散液53gを110℃で15時間乾燥し、DABA修飾C-NPの乾燥粉4gを得た。作製したDABA修飾C-NPのDABA修飾率を確認するために、得られたDABA修飾C-NPのNMP乾燥粉をTGA装置を用いて、熱重量分析を行った。この結果、DABA修飾C-NPは、DABA7.3質量%、APTES3.3質量%、シリカナノ粒子89.4質量%であった。10mLバイアルビンに作製したDABA修飾C-NPの乾燥粉0.0167gとTHF3.2mLを量り取り、超音波洗浄器にて10分間処理することにより、分散処理を行った。これに6FDA-3MPA0.15gを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で12時間撹拌した。得られたDABA修飾C-NP含有ポリイミド溶液を実施例1と同様の手順で複合膜を作成し、気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0116】
〔実施例3〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)2段階修飾数珠状シリカナノ粒子(P-NP-G2)の作製、10質量%添加ポリイミド複合膜)
3LセパラブルフラスコにNMP377.6gとDABA35.0g、TEA23.3g、BOP101.7gを量り取り、これに実施例1で作製したAPTES修飾P-NPのNMP分散液1700.7gを添加した。これを室温下で5分間撹拌した後、オイルバスを用いて、80℃、1時間の条件で反応した。この反応液を遠心分離(1500G、5時間)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、NMPを加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を3回繰り返すことにより、DABA修飾P-NPのNMP分散液1917gを得た。次いで、3LセパラブルフラスコにNMP755.2gとDABA70.0g、TEA46.5g、BOP203.4gを量り取り、DABA修飾P-NPのNMP分散液1917gを添加した。これを室温下で5分間撹拌した後、オイルバスを用いて、80℃、1時間の条件で反応した。この反応液を遠心分離(1500G、5時間)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、NMPを加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を3回繰り返すことにより、DABA2段階修飾P-NP-G2のNMP分散液956gを得た。得られたDABA2段階修飾P-NP-G2のNMP分散液の固形分濃度は7.0質量%、水分量は0.6質量%であった。得られたDABA修飾P-NP-G2のNMP分散液53gを110℃で15時間乾燥し、DABA修飾P-NP-G2の乾燥粉4gを得た。作製したDABA修飾P-NP-G2のDABA修飾率を確認するために、得られたDABA2段階修飾P-NP-G2の乾燥粉をTGA装置を用いて、熱重量分析を行った。この結果、DABA修飾P-NP-G2は、DABA16.0質量%、APTES2.8質量%、シリカナノ粒子81.2質量%であった。10mLバイアルビンに作製したDABA修飾P-NP-G2の乾燥粉0.0167gとTHF3.2mLを量り取り、超音波洗浄器にて10分間処理することにより、分散処理を行った。これに6FDA-3MPA0.15gを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で12時間撹拌した。得られたDABA修飾P-NP-G2含有ポリイミド溶液を実施例1と同様の手順で複合膜を作成し、気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0117】
〔比較例1〕(粒子未添加ポリイミド単独膜)
DABA修飾P-NPを添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順でポリイミド単独膜を作成し、その気体透過測定を行った。
【0118】
〔比較例2〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修飾球状シリカナノ粒子(S-NP)の作製、10質量%添加ポリイミド複合膜)
200mLナス型フラスコにシリカのイソプロパノール(IPA)分散液(IPA-ST、日産化学工業(株)製、シリカ濃度:30質量%、窒素吸着法による測定粒子径D2:12nm)33mLを量り取り、IPA166mLで希釈した。ここに超純水0.36gとAPTES(東京化成工業(株)製)3.14mLを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で48時間撹拌した。この反応液を遠心分離(1500G、5分)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、超純水を加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を12回繰り返すことにより、APTES修飾シリカナノ粒子の水分散液400mLを得た。作製したAPTES修飾シリカナノ粒子のAPTES修飾状況を確認するために、得られたAPTES修飾シリカナノ粒子の水分散液を110℃で15時間真空乾燥後、TGA装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、APTES修飾シリカナノ粒子は、APTES4.3質量%、シリカナノ粒子95.7質量%であった。200mL反応容器に得られたAPTES修飾ナノシリカ粒子の水分散液200mLを量り取り、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)50mLを添加し、エバポレーターを用いて水を留去することにより、NMPに分散したAPTES修飾シリカナノ粒子40mLを得た。次いで80mL反応容器にNMP6mLとDABA1.71g、TEA15.7mL、BOP4.97gを量り取り、これにNMPに分散したAPTES修飾シリカナノ粒子40mLを添加した。これを室温下で5分間撹拌した後、マイクロウェーブ反応器(Discover SP、Chem,Japan(株)製)を用いて、80℃、1時間の条件で反応した。この反応液を遠心分離(1500G、5時間)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、NMPを加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を3回繰り返すことにより、DABA修飾S-NP分散液100mLを得た。110℃で15時間真空乾燥後、DABA修飾S-NPを0.65g得た。作製したDABA修飾S-NPのDABA修飾状況を確認するために、TGA装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、DABA修飾S-NPは、DABA12.8質量%、APTES3.75質量%、シリカナノ粒子83.4質量%であった。10mLバイアルビンに作製したDABA修飾S-NPの乾燥粉0.0167gとTHF3.2mLを量り取り、超音波洗浄器にて10分間処理することにより、分散処理を行った。これに6FDA-3MPA0.15gを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で12時間撹拌した。得られたDABA修飾S-NP含有ポリイミド溶液を実施例1と同様の手順で複合膜を作成し、気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0119】
〔実施例4〕(3,5-ジメチル安息香酸(DMBA)修飾数珠状シリカナノ粒子(P-NP)の作製、10質量%添加ポリイミド複合膜)
200mLナス型フラスコに実施例1と同様の工程により作製したP-NPのIPA分散液(シリカ濃度:5.0質量%)100gを量り取り、超純水0.19gとAPTES1.6mLを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で48時間撹拌した。この反応液を遠心分離(1500G、10分)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、超純水を加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を12回繰り返すことにより、APTES修飾P-NPの水分散液200mLを得た。作製したAPTES修飾P-NPのAPTES修飾状況を確認するために、得られたAPTES修飾P-NPの水分散液を110℃で15時間真空乾燥後、TGA装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、表面APTES修飾P-NPは、2.57質量%がAPTES、97.4質量%がシリカナノ粒子であることが確認された。200mLナスフラスコに得られたAPTES修飾P-NPの水分散液200mLに、NMP35mLを添加し、エバポレーターを用いて水を留去することにより、APTES修飾P-NPのNMP分散液30mLを得た。次いで80mL反応容器にNMP5mLと1,3-ジメチル安息香酸(DMBA)(Aldrich製)1.10g、TEA1.02mL、BOP3.23gを量り取り、これにAPTES修飾P-NPのNMP分散液30mLを添加した。これを室温下で5分間撹拌した後、マイクロウェーブ反応器を用いて、80℃、1時間の条件で反応した。この反応液を遠心分離(1500G、5時間)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、NMPを加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を3回繰り返すことにより、DMBA修飾P-NPのNMP分散液100mLを得た。110℃で15時間真空乾燥後、DMBA修飾P-NPを1.82g得た。作製したDMBA修飾P-NPのDMBA修飾状況を確認するために、TGA装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、DMBA修飾P-NPは、DMBA2.76質量%、APTES2.54質量%、シリカナノ粒子94.7質量%であった。10mLバイアルビンに作製したDMBA修飾P-NP0.0167gとTHF3.2mLを量り取り、超音波洗浄器にて10分間処理することにより、分散処理を行った。これに6FDA-3MPA0.15gを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で12時間撹拌した。得られたDMBA修飾P-NP含有ポリイミド溶液を実施例1と同様の手順で複合膜を作成し、気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0120】
〔比較例3〕(3,5-ジメチル安息香酸(DMBA)修飾球状シリカナノ粒子(S-NP)の作製、10質量%添加ポリイミド複合膜)
200mLナス型フラスコに球状シリカのIPA分散液(IPA-ST、日産化学工業(株)製、シリカ濃度:30質量%、窒素吸着法による測定粒子径D2:12nm)33mLを量り取り、IPA166mで希釈した。ここに超純水0.36gとAPTES3.14mLを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で48時間撹拌した。この反応液を遠心分離(1500G、5分)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、超純水を加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を12回繰り返すことにより、APTES修飾S-NPの水分散液400mLを得た。作製したAPTES修飾S-NPのAPTES修飾状況を確認するために、得られたAPTES修飾S-NPの水分散液を110℃で15時間真空乾燥後、TGA装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、APTES修飾S-NPの重量内訳を概算したところ、4.4質量%がAPTES、95.6質量%がシリカナノ粒子であることが確認された。200mL反応容器に得られたAPTES修飾S-NPの水分散液200mを量り取り、NMP50mLを添加し、エバポレーターを用いて水を留去することにより、APTES修飾S-NPのNMP分散液40mLを得た。次いで80mL反応容器にNMP6mLとDMBA1.76g、TEA16.2mL、BOP5.13gを量り取り、これにAPTES修飾S-NPのNMP分散液40mLを添加した。これを室温下で5分間撹拌した後、マイクロウェーブ反応器を用いて、80℃、1時間の条件で反応した。この反応液を遠心分離(1500G、5時間)にかけることにより粒子を沈殿させ、上澄みを捨てた後、NMPを加え、超音波洗浄器を用いて沈殿物を再分散させた。この操作を3回繰り返すことにより、DMBA修飾S-NPのNMP分散液100mlを得た。110℃で15時間真空乾燥後、DMBA修飾S-NPを0.83g得た。作製したDMBA修飾S-NPのDMBA修飾状況を確認するために、TGA装置(DTG-60H、(株)島津製作所製)を用いて、熱重量分析を行った。この結果、DMBA修飾S-NPの重量内訳は、DMBA5.8質量%、APTES4.1質量%、シリカナノ粒子90.1質量%であった。0.15gの6FDA-3MPAを3.21mLのTHFに溶解した後、このポリマー溶液にDMBA修飾S-NPを0.0167g添加し、実施例1と同様に行って複合膜を作成し、気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0121】
〔実施例5〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修数珠状シリカナノ粒子(P-NP)、30質量%添加ポリイミド複合膜)
実施例1で作製したDABA修飾P-NP乾燥粉の配合を膜組成の全固形分に対して30質量%とした以外は、実施例1と同様に行って複合膜を作成し、その気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0122】
〔実施例6〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修飾した細長い形状のシリカナノ粒子(C-NP)、30質量%添加ポリイミド複合膜)
実施例2で作製したDABA修飾C-NP乾燥粉の配合を膜組成の全固形分に対して30質量%とした以外は、実施例2と同様に行って複合膜を作成し、その気体透過測定を行った。
【0123】
〔実施例7〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)2段階修飾数珠状シリカナノ粒子(P-NP-G2)、30質量%添加ポリイミド複合膜)
DABA修飾P-NP-G2乾燥粉の配合を膜組成の全固形分に対して30質量%とした以外は、実施例3と同様に行って複合膜を作成し、その気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0124】
〔実施例8〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修飾数珠状シリカナノ粒子(P-NP)、3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修飾球状シリカナノ粒子(S-NP)混合(15+15質量%)添加ポリイミド複合膜)
0.15gの6FDA-3MPA乾燥粉を3.21mLのTHFに溶解した後、このポリマー溶液に実施例1で作製したDABA修飾P-NP乾燥粉を0.0322g、比較例2で作製したDABA修飾S-NP乾燥粉を0.0322g添加し、実施例1と同様の手順で複合膜を作成し、気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0125】
〔実施例9〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)2段階修飾数珠状シリカナノ粒子(P-NP-G2)、3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修飾球状シリカナノ粒子(S-NP)混合(24+6質量%)添加ポリイミド複合膜)
0.15gの6FDA-3MPAを3.21mLのTHFに溶解した後、このポリマー溶液に実施例6で作製したDABA修飾P-NP-G2乾燥粉を0.0514g、比較例2で作製したDABA修飾S-NP乾燥粉を0.0129g添加し、実施例1と同様の手順で複合膜を作成し、気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0126】
〔比較例4〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修飾球状シリカナノ粒子(S-NP)、30質量%添加ポリイミド複合膜)
比較例2で作製したDABA修飾S-NP乾燥粉の配合を膜組成の全固形分に対して30質量%とした以外は、比較例2と同様に行って複合膜を作成し、その気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0127】
〔実施例10〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修飾数珠状シリカナノ粒子(P-NP)の作製、10質量%添加PIM-1複合膜)
10mLバイアルビンに実施例1で作製したDABA修飾P-NP乾燥粉0.0167gとTHF6.7mLを量り取り、超音波洗浄器にて10分間処理することにより、分散処理を行った。これに構造式2に示すPIM-1(重量平均分子量3.1×105、重量平均分子量/数平均分子量=5.4)0.15gを添加し、マグネチックスターラーを用いて、室温下で12時間撹拌した。得られたDABA修飾シリカナノ粒子含有PIM-1溶液をガラスシャーレ(直径6.1cm)上に流し入れ、30℃に設定したオーブン内にこのガラスシャーレを入れ、6時間かけて真空にして複合膜を作成した。作成した複合膜は超純水を用いてシャーレから剥がした後、70℃、18時間の熱処理を行った。
【0128】
【化20】
【0129】
上記で得られた複合膜の気体透過測定を行った。測定には気体透過測定装置(K-315N-01C、理科精機工業(株)製)を用い、実施例1と同様に、気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0130】
〔比較例5〕(粒子無添加PIM-1単独膜)
シリカナノ粒子を添加せず、PIM-1単独膜とした以外は、実施例10と同様に行って複合膜を作成し、その気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0131】
〔比較例6〕(3,5-ジアミノ安息香酸(DABA)修飾球状シリカナノ粒子(S-NP)、10質量%添加PIM-1複合膜)
比較例2で作製したDABA修飾S-NP乾燥粉を使用し、実施例10と同様に複合膜を作成し、その気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0132】
〔比較例7〕(3,5-ジメチル安息香酸(DMBA)修飾球状シリカナノ粒子(S-NP)の作製、10質量%添加PIM-1複合膜)
比較例3で作製したDMBA修飾S-NP乾燥粉を使用し、実施例10と同様に複合膜を作成し、その気体透過測定を行った。結果を表1に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
表1に示された通り、シリカ含有量を同じにした場合、シリカナノ粒子が球状である比較例に対して、異形シリカナノ粒子を含有する気体分離膜は、すべての実施例において二酸化炭素の気体透過係数が高い値となり、二酸化炭素の気体透過性について特に効果があることが判明した。