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  • 特許-帽子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】帽子
(51)【国際特許分類】
   A42B 1/018 20210101AFI20221025BHJP
   A42B 1/008 20210101ALI20221025BHJP
【FI】
A42B1/018 A
A42B1/008 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017113252
(22)【出願日】2017-06-08
(65)【公開番号】P2018204155
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-01-23
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591137606
【氏名又は名称】株式会社フリーハンド
(74)【代理人】
【識別番号】100178179
【弁理士】
【氏名又は名称】桐生 美津恵
(72)【発明者】
【氏名】八田 雄一
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】稲葉 大紀
【審判官】藤原 直欣
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-91322(JP,U)
【文献】特開平10-60724(JP,A)
【文献】国際公開第00/69296(WO,A1)
【文献】実開昭57-18640(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 1/018-1/0189
A42B 1/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を覆う本体と、
前記本体の周囲を覆う風防部と、該風防部の下端の少なくとも一部から外向きにのみ張り出すツバ部と、を有する外周部と、
前記本体及び前記外周部を間隙を設けて結合する結合部材と、
を備え、
前記結合部材は、前記本体及び前記外周部の一方に複数の接合部を接続し、該複数の接合部のうちの隣接する各2接合部の間の部分を前記本体及び前記外周部の他方に接続する紐状又は帯状部材であることを特徴とする、帽子。
【請求項2】
前記本体の少なくとも前側で、前記本体及び前記外周部の間の間隙は5mm以上のサイズを有することを特徴とする、請求項1に記載の帽子。
【請求項3】
前記風防部は、水平面に対して70~100度の角度で、2cm以上の高さをもって屹立することを特徴とする、請求項1又は2に記載の帽子。
【請求項4】
前記風防部は、環状の帯体であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の帽子。
【請求項5】
前記結合部材は、弾性を有することを特徴とする、請求項4に記載の帽子。
【請求項6】
前記本体の前側の下端は、前記風防部の前記下端より上方に位置することを特徴とする、請求項に記載の帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
帽子を頭に被ることで日を除けることができる。しかし、強い風を受けて帽子が飛ばされてしまうことがある。特に帽子を被って自転車に乗車する場合、自転車の速度の応じた風速の風を前方から受けるため、帽子が飛ばされてしまう蓋然性が高くなる。
【0003】
そこで、特許文献1には、頭を覆うヘッドとヘッドの周囲から張り出すツバの間にハト目又は刺繍穴を設け、ピンを用いて髪の毛に留める帽子が開示されている。これによれば、紐を用いることなく帽子を装着することができる。しかし、ピンを用いて帽子を髪の毛に留めるため、風を受けて帽子の下側から上向きにうける風圧が髪の毛にかかることとなる。
【0004】
また、特許文献2には、ひさしに通気壁を設けられた帽子が開示されている。これによれば、風を受けてもひさしの裏面から表面へと通気導入口を流通することで、ひさしにかかる抵抗が低減され帽子が飛ばされ難くなる。しかし、ひさしの通気導入口は表面から裏面へも通気するものであり、帽子が飛ばされてしまうことを十分に防止できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3014590号公報
【文献】特開2002-061018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、風で飛ばされ難い帽子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の帽子は、
頭部を覆う本体と、
前記本体の周囲を覆う風防部と、該風防部の下端の少なくとも一部から外向きに張り出すツバ部と、を有する外周部と、
前記本体及び前記外周部を間隙を設けて結合する結合部材と、
を備える帽子ことを特徴とする。
【0008】
この特徴によれば、ツバ部の上側に受ける風はツバ部及び風防部により防がれて帽子を頭部に押さえつけ、ツバ部の下側に入ってユーザの顔に受けた風は本体及び外周部の間の間隙を通って帽子の上方に抜ける。外周部の外側の圧力が内側の圧力よりも大きくなり、風に飛ばされ難い帽子を提供することができる。
【0009】
本発明の帽子は、
前記本体の少なくとも前側で、前記本体及び前記外周部の間の間隙は5mm以上のサイズを有することを特徴とする。
【0010】
この特徴によれば、ツバ部の下側に入った風の多くを間隙を通して帽子の上方に抜くことができる
【0011】
本発明の帽子は、
前記風防部は、水平面に対して70~100度の角度で、2cm以上の高さをもって屹立することを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、ツバ部の上側に受ける風が風防部に当たり、帽子を頭部に押さえつける力が大きくなる。
【0013】
本発明の帽子は、
前記風防部は、環状の帯体であることを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、本体及び外周部の間の間隙が、本体と風防部との間の筒状となる。筒を透過する風によって筒内の気圧が低下し、外周部の内外気圧差を大きくすることができる。
【0015】
本発明の帽子は、
前記結合具材は、弾性を有することを特徴とする。
【0016】
この特徴によれば、風防部に当たる風によって結合具材が収縮し、本体と風防部との間隔が小さくなり、筒を透過する風が高速になり、筒内の気圧がより低下する。
【0017】
本発明の帽子は、
前記結合部材は、前記本体及び前記外周部の一方に複数の接合部を接続し、該複数の接合部のうちの隣接する各2接合部の間の接合部を前記本体及び前記外周部の他方に接続する紐状又は帯状部材であることを特徴とする。
【0018】
この特徴によれば、弾力を持ちつつ、大きな間隙を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、風で飛ばされ難い帽子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、帽子の構成を示す図である。
図2図2は、風の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施例について説明する。
【0022】
図1は、帽子の構成を示す図である。図1(A)~(C)はそれぞれ上面図、側面図、及び底面図であり、図1(A)~(C)における図面左右方向を前後方向、図1(A)及び(C)における上下方向を幅方向、図1(B)における上下方向を高さ方向とする。帽子1は、本体2、外周部3、及び結合部材4を備える。
【0023】
本体2は、頭部を覆う帽子の本体部であり、トップ2a及びサイド2bを有する。トップ2aは、頭頂部を覆う。サイド2bは、前頭部、側頭部、及び後頭部(すなわち頭部の周囲)を覆う。トップ2a及びサイド2bは、布地等を用いて半球体状に一体成形してもよいし、個別に形成されたものを縫合することで一体化してもよい。また、表側と裏側とで異なる布地を用いてもよいし、裏側に汗取りバンドを設けてもよい。
【0024】
外周部3は、本体2の周囲にツバを設ける部分であり、風防部3a及びツバ部3bを有する。風防部3a及びツバ部3bは、布地等を用いて一体成形してもよいし、個別に形成されたものを縫合することで一体化してもよい。
【0025】
風防部3aは、本体2の周囲を覆う部材であり、例えば帯状部材の両端を接合して成る環状の帯体である。風防部3aを本体2の周囲に配することで、ツバ部3bの上側に受ける風を、後述する本体2及び外周部3の間の間隙4aに通さないことができる。なお、風防部3aは、水平面に対して角度θで屹立する。θの値は70~100度、好ましくは約90度とする。風防部3aの後部は、本体2の後部と糸部材等の接合部材5により接合されている。
【0026】
ツバ部3bは、帽子1のツバをなす部分であり、風防部3aの下端から外向きに張り出して風防部3aの下端より下方に端部を配する。本実施例では、ツバ部3bは、風防部3aの全周囲から外向きに張り出して上面視円環形状をなすが、風防部3aの前側約60度の角度範囲から外向きに張り出して上面視三日月形状及び扇形形状をなしてもよい。
【0027】
結合部材4は、本体2及び外周部3をそれらの間に間隙4aを設けて結合する部材である。結合部材4は、例えば布地等からなる弾性を有する帯状部材であり、幅方向を上下方向に向けて、本体2に複数の接合部、ここでは一例として5の接合部2a1~2a5を接合し、接合部2a1~2a5のうちの隣接する各2接合部の間の4の接合部3a1~3a4を風防部3aに接合する。これにより、本体2の少なくとも前側で本体2及び風防部3aの間に間隙を維持し、その間隙を通じてツバ部3bの下側に入った風を上方に抜くことができる。なお、結合部材4は、弾性を有すれば帯状部材に限らず、幅の小さい紐状部材でもよい。また、結合部材4は、本体2及び外周部3の一方に少なくとも2接合部で接合し、各2接合部の間の接合部で本体2及び外周部3の他方に接合してもよい。ここで接合部2a1~2a5及び3a1~3a4は、本体2及び外周部3上の1点であっても、上下方向に延びる線であってもよい。
【0028】
結合部材4により本体2と外周部3とを結合した状態において、本体2の少なくとも前側の下端は、風防部3aの下端より上方に位置する。これにより、ツバ部3bの下側に入った風のうち上方を向いて本体2及び外周部3の間の間隙4aを通る風のみが本体2の下端を上方に押し上げ得ることで、風により飛ばされ難くなる。
【0029】
図2は、風の効果を示す図である。図は、図1(A)におけるS-S線断面である。帽子1の前側からの風は、ツバ部3bにより、図に破線で示した箇所を境界として、ツバ部3bの上側に受ける風61と、ツバ部3bの下側に入る風62とに分離される。
【0030】
ツバ部3bの上側に受ける風61は、風防部3aとツバ部3bとで構成される湾曲面に当たり、外周部3を下方に押す力71を発生させる。航空機の翼が浮力を発生させることと同じ原理によるものである。
【0031】
ツバ部3bの下側に入る風62は、顔8に当たり、本体2と風防部3aとの間隙から上方に抜ける。風62の一部は顔8で反射されてツバ部3bを上方に押し上げるが、ツバ部3bの湾曲形状が大きな浮力を生むものではなく、また、反射される風量が多いものではないので、発生する外周部3を上方に押す力72は、外周部3を下方に押す力71よりも小さい。
【0032】
以上の結果、帽子1の前側からの風は、帽子1を下方に押すこととなる。帽子1が風によって飛ばされることは、原則として、ない。
【0033】
ただし、風力が強ければ、乱流等によって帽子1が飛ばされる可能性がある。そこで、実験を行って検証した。
【0034】
実験は、マネキンに、ツバ部3bの下端が水平となるように帽子1を被せ、帽子1の前側から水平方向の風を、風速を上げながらあてて、帽子1がマネキンから離脱する際の風速を測定した。
【0035】
帽子1は、14m/sの風速でもマネキンから離脱しなかった。時速に換算すると略50km/hであり、自転車に乗車した通常の状態では、本発明の帽子1は前からの風によって飛ばされないことが立証された。
【0036】
帽子1から結合部材4を除去し、本体2と風防部3aとを縫合し、同様の実験を行ったところ、帽子1がマネキンから離脱する際の風速は、7m/sであった。本体2及び外周部3の間の間隙4aがない場合には、自転車に乗車した状態で、自転車の速度が上がると風に飛ばされることとなる。
【0037】
以上詳細に説明したように、本実施例に係る帽子1は、14m/s程度までの前からの風で飛ばされることがない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
風で飛ばされ難い帽子である。多くの個人、特に自転車利用者による利用が考えられる。
【符号の説明】
【0039】
1 帽子
2 本体
2a トップ
2a1~2a5 接合部
2b サイド
3 外周部
3a 風防部
3a1~3a4 接合部
3b ツバ部
4a 間隙
4 結合部材
5 接合部材
61 風
62 風
71 力方向
72 力方向
図1
図2