(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】演算装置、施工方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 3/02 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
E02D3/02
(21)【出願番号】P 2017252184
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-11-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2017年7月3日にhttps://www.kkr.mlit.go.jp/road/shintoshikenkyukai/project/45.htmlおよびhttps://www.kkr.mlit.go.jp/road/shintoshikenkyukai/2016shiryo/seika-09.pdfに掲載 〔刊行物等〕 2017年8月1日にDVD-ROMにて「土木学会平成29年度全国大会第72回年次学術講演会講演概要集」を配布 〔刊行物等〕 2017年8月8日に「平成29年度全国大会第72回年次学術講演会(土木学会)」講演概要集を配布 〔刊行物等〕 2017年9月13日に「平成29年度全国大会第72回年次学術講演会(土木学会)」にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰三
(72)【発明者】
【氏名】土佐 信一
(72)【発明者】
【氏名】平 浩之
(72)【発明者】
【氏名】関家 史郎
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-150147(JP,A)
【文献】特開平07-048809(JP,A)
【文献】特開2003-253663(JP,A)
【文献】特開2004-257171(JP,A)
【文献】特開平10-311022(JP,A)
【文献】特開2008-014018(JP,A)
【文献】特開2002-129546(JP,A)
【文献】特開2003-261928(JP,A)
【文献】特開2017-137729(JP,A)
【文献】特開昭63-241204(JP,A)
【文献】特開2001-159116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土を締め固める前と後との地形の三次元測量結果の入力を受け付ける入力部と、
前記三次元測量結果
から前記地形の三次元形状データを得、前記三次元形状データを用いて、前記地形の位置ごとの前記土の締固めの品質の指標を示す品質値を算出する演算部と、を備え
、
前記地形の位置ごとの前記品質値は、前記三次元形状データの前記位置における前記土を締め固める前の前記土の厚みと後の前記土の厚みとの差分を算出し、前記差分を用いて算出される値である
演算装置。
【請求項2】
前記地形は複数の盛土層が積層されてなる盛土であって、
前記演算部は、各盛土層の締め固める前と後との三次元測量結果
から前記地形の三次元形状データを得、前記各盛土層について、
前記三次元形状データの、当該盛土層における位置ごとの
、前記土を締め固める前の層厚と後の層厚との差分を算出し、前記差分を用いて前記品質値を算出する
請求項1に記載の演算装置。
【請求項3】
前記品質値は、前記位置において算出された前記差分から得られる圧縮ひずみと、前記各盛土層に積層された前記土の締め固め前に計測された密度と、を用いて算出される、前記位置ごとの圧縮密度を含む
請求項2に記載の演算装置。
【請求項4】
前記地形における各位置に当該位置における前記品質値を対応付けた管理データを生成する生成部をさらに備える
請求項1
~3のいずれか一項に記載の演算装置。
【請求項5】
管理データは、前記地形における各位置に対応付けられた、前記土の締固めの品質に影響を与える関連データを含む
請求項
4に記載の演算装置。
【請求項6】
前記管理データは、内部空間情報を属性に持つ三次元データとして生成され、
前記三次元データは、地形の形状を示し、
前記内部空間情報は、前記品質値を含む
請求項
4または
5に記載の演算装置。
【請求項7】
前記管理データは、複数区画毎に生成された管理データを統合して生成されている
請求項
6に記載の演算装置。
【請求項8】
前記地形の位置ごとの前記品質値を表示装置に表示させる出力部をさらに備える
請求項1~
7のいずれか1項に記載の演算装置。
【請求項9】
前記品質値と品質値の許容範囲との比較に基づいて、前記地形における位置ごとに前記土の締固めの品質を判定する判定部と、
前記判定の結果に基づく処理を実行させる指示部と、
をさらに備える請求項1~
8のいずれか1項に記載の演算装置。
【請求項10】
前記判定の結果に基づく処理は、表示装置に前記判定の結果に基づく表示をさせる処理、および、前記判定の結果に基づく施工動作を建設機械に指示する処理、の少なくとも1つを含む
請求項
9に記載の演算装置。
【請求項11】
土の締固め施工を含む施工方法であって、
土をまき出す工程と、
まき出した土の層の少なくとも一部を三次元測量する工程と、
前記まき出した土を締め固める工程と、
前記締め固める工程の後の前記まき出した土の層の少なくとも一部を三次元測量する工程と、
前記締め固める工程前後の三次元測量結果
から前記土の層の三次元形状データを得、
前記三次元形状データの前記まき出した土の層の位置ごとの
前記締め固める工程前後の層厚の差分を算出し、前記差分を用いて土の締固めの品質の指標を示す品質値を算出する算出工程と、
を有する施工方法。
【請求項12】
算出された前記品質値と品質値の許容範囲との比較に基づいて、前記まき出した土の層の位置ごとに前記土の締固めの品質を判定する工程と、
前記品質値が前記許容範囲にない位置にある前記まき出した土の層を、再度、締め固める工程と、
をさらに有する、請求項
11に記載の施工方法。
【請求項13】
土の締固めの品質の指標を示す品質値を算出する演算装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータを、
土を締め固める前と後との地形の三次元測量結果の入力を受け付ける入力部、および、
前記三次元測量結果
から前記地形の三次元形状データを得、前記三次元形状データを用いて、前記地形の位置ごとの前記品質値を算出する演算部、として機能させ
、
前記地形の位置ごとの前記品質値は、前記三次元形状データの前記位置における前記土を締め固める前の前記土の厚みと後の前記土の厚みとの差分を算出し、前記差分を用いて算出される値である
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は演算装置、施工方法、およびコンピュータプログラムに関し、特に、土の締固めの品質管理を行う演算装置、施工方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
盛土施工においては、土の締固めに関する厳しい品質管理が要求される。そのため、締固め特性を確認するための試験が必要となる。
【0003】
「JIS A 1210 突固めによる土の試験方法」には、室内での突固めによる締固め試験が規定されている。また、地盤工学会 土の締固め編集委員会編集「地盤工学・実務シリーズ30 土の締固め」には、現場における締固め試験として、砂置換法、水置換法、コアカッター法、および、ラジオアイソトープ法などにより密度を計測し、計測された密度から締固め特性を表す品質値を算出する方法が紹介されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】地盤工学会 土の締固め編集委員会編集「地盤工学・実務シリーズ30 土の締固め」丸善出版、平成24年4月27日発行、p.16-43
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような試験は、煩雑であったり、大掛かりな装置が必要であったりする。そのため、簡易に締固め特性を確認する手法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある側面に従うと、演算装置は、土を締め固める前と後との地形の三次元測量結果の入力を受け付ける入力部と、三次元測量結果に基づいて、地形の位置ごとの土の締固めの品質の指標を示す品質値を算出する演算部と、を備える。
【0007】
本開示のある側面に従うと、施工方法は土の締固め施工を含む施工方法であって、土をまき出す工程と、まき出した土の層の少なくとも一部を三次元測量する工程と、まき出した土を締め固める工程と、締め固める工程の後のまき出した土の層の少なくとも一部を三次元測量する工程と、締め固める工程前後の三次元測量結果を用いて、まき出した土の層の位置ごとの土の締固めの品質の指標を示す品質値を算出する算出工程と、を有する。
【0008】
本開示のある側面に従うと、コンピュータプログラムは、土の締固めの品質の指標を示す品質値を算出する演算装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、土を締め固める前と後との地形の三次元測量結果の入力を受け付ける入力部、および、三次元測量結果に基づいて、地形の位置ごとの品質値を算出する演算部、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる施工管理システム(以下、システム)の構成を表した概略図である。
【
図2】
図2は、システムでの盛土の三次元測量の手順を説明するための図である。
【
図3】
図3は、演算装置の演算部における品質値の演算結果を表した図である。
【
図4】
図4は、本システムを用いた、土の締固め施工を含む施工方法の一部工程を表わしたフローチャートである。
【
図5】
図5は管理データの具体例を表わした図である。
【
図6】
図6(A)は、発明者らによる施工実験によって得られた品質値の表示であり、
図6(B)は、
図6(A)の表示を模式的に示した図である。
【
図7】
図7は、第2の実施の形態にかかる演算装置の生成部において実行される管理データの生成処理の流れを表したフローチャートである。
【
図8】
図8は、管理データの生成手順を表わした図である。
【
図9】
図9は、第3の実施の形態にかかる演算装置の判定部において実行される判定処理の流れを表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の概要]
(1)実施の形態にかかる演算装置は、土を締め固める前と後との地形の三次元測量結果の入力を受け付ける入力部と、三次元測量結果に基づいて、地形の位置ごとの土の締固めの品質の指標を示す品質値を算出する演算部と、を備える。品質値は、土の締固め特性を表わす指標値であって、たとえば、締固め前後の土層の層厚、圧縮ひずみ、締固め後の土の密度、締固め度(D値)、などである。地形の位置ごとの品質値が算出されることで、地形の位置ごとに土の締固めの品質管理を行うことができる。なお、対象とする地形は、たとえば、盛土である。
【0011】
(2)好ましくは、上記地形は複数の盛土層が積層されてなる盛土であって、演算部は、各盛土層の締め固める前と後との三次元測量結果に基づいて、各盛土層について、当該盛土層における位置ごとの品質値を算出する。盛土層が積層されてなる盛土の各盛土層について当該盛土層における位置ごとの品質値が算出されることで、当該盛土の内部の位置の品質値を得ることができる。そのため、盛土についての土の締固めの品質管理を行うことができる。
【0012】
(3)好ましくは、演算装置は、地形における各位置に当該位置における品質値を対応付けた管理データを生成する生成部をさらに備える。当該管理データが生成されることで、地形の位置ごとに土の締固めの品質管理を行うことができる。また、施工後の維持管理にも用いることができる。
【0013】
(4)好ましくは、管理データは、地形における各位置に対応付けられた、土の締固めの品質に影響を与える関連データを含む。関連データは、たとえば、当該位置の施工機械の施工データと、土質情報と、のうちの少なくとも1つである。施工データは、たとえば、建設機械の走行履歴、転圧回数、振動データ、などと、当該建設機械の種類等を示す属性と、の組み合わせである。土質情報は、たとえば、土の種類、含水比、粒径等を示す属性からなる群から選択される1または複数の情報である。当該管理データが生成されることで、地形の位置ごとに土の締固めの品質値と関連データとを関連付けて管理することができる。また、施工後の維持管理にも用いることができる。
【0014】
(5)好ましくは、管理データは、内部空間情報を属性に持つ三次元形状データとして生成され、三次元形状データは地形の形状を示し、内部空間情報は品質値を含む。これにより、施工空間の内部の土の締固めの品質管理を効率的に行うことができる。
【0015】
(6)好ましくは、管理データは、複数区画毎に生成された管理データを統合して生成されている。区画とは、例えば、土の締固めを含む施工領域、つまり工事全体のうちの単位区画である1工区を1区画としてもよいし、1回の撮影された範囲などの工区以外の範囲を1区画としてもよい。これにより、施工範囲全体にわたる管理データを生成することができる。そのため、施工範囲全体について土の締固めの品質管理を効率的に行うことができる。
【0016】
(7)好ましくは、演算装置は、地形の位置ごとの品質値を表示装置に表示させる出力部をさらに備える。表示装置に品質値が表示されることで、施工管理者等は当該表示装置の表示を参照して、位置ごとの土の締固めの品質を判断することができる。その結果、品質が許容範囲にない位置については再締固めを行うなどの対処が可能になる。
【0017】
(8)好ましくは、演算装置は、品質値と品質値の許容範囲との比較に基づいて、地形における位置ごとに土の締固めの品質を判定する判定部と、判定の結果に基づく処理を実行させる指示部と、をさらに備える。これにより、位置ごとの土の締固めの品質の判定結果に基づいた下のような処理が自動的に実行される。
【0018】
(9)好ましくは、判定の結果に基づく処理は、表示装置に判定の結果に基づく表示をさせる処理、および、判定の結果に基づく施工動作を建設機械に指示する処理、の少なくとも1つを含む。前者の処理によって、当該表示を見た施工管理者等は位置ごとの土の締固めの品質を判断することができる。その結果、品質が許容範囲にない位置については再締固めを行うなどの対処が可能になる。また、後者の処理によって、品質が許容範囲にない位置については再締固めが自動的に行われ、施工品質を向上させることができる。
【0019】
(10)実施の形態にかかる施工方法は土の締固め施工を含む施工方法であって、土をまき出す工程と、まき出した土の層の少なくとも一部を三次元測量する工程と、まき出した土を締め固める工程と、締め固める工程の後のまき出した土の層の少なくとも一部を三次元測量する工程と、締め固める工程前後の三次元測量結果を用いて、まき出した土の層の位置ごとの土の締固めの品質の指標を示す品質値を算出する算出工程と、を有する。施工方法土の締固め施工を含む施工方法において、締め固める工程前後の三次元測量結果を用いて地形の位置ごとの品質値が算出されることで、地形の位置ごとに土の締固めの品質管理を行うことができる。
【0020】
(11)好ましくは、施工方法は、算出された品質値と品質値の許容範囲との比較に基づいて、まき出した土の層の位置ごとに土の締固めの品質を判定する工程と、品質値が許容範囲にない位置にあるまき出した土の層を、再度、締め固める工程と、をさらに有する。これにより、土の締固めの品質を向上させることができる。
【0021】
(12)実施の形態にかかるコンピュータプログラムは、土の締固めの品質の指標を示す品質値を算出する演算装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、土を締め固める前と後との地形の三次元測量結果の入力を受け付ける入力部、および、三次元測量結果に基づいて、地形の位置ごとの品質値を算出する演算部、として機能させる。演算装置として機能するコンピュータで地形の位置ごとの品質値が算出されることで、地形の位置ごとに土の締固めの品質管理を行うことができる。
【0022】
[本開示の詳細な説明]
以下に、図面を参照しつつ、好ましい実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらの説明は繰り返さない。
【0023】
<第1の実施の形態>
〔課題の説明〕
締固め特性を確認するための試験として知られている、砂置換法、水置換法などによって土の密度を計測し、計測された密度から締固め特性を表す品質値を算出する方法では、試験装置を用意する負担に加え、時間と労力とを要する。そのため、施工ヤードの代表点でしか計測ができない。施工ヤードが面的または空間的な広がりを有する場合、数少ない代表点での計測に基づいて締固め特性を確認すると、施工ヤード全体の品質が保証しきれていない場合もある。それ故、締固め特性を簡易に、面的または空間的に確認する手法が望まれる。
【0024】
〔システム構成〕
図1は、本実施の形態にかかる施工管理システム(以下、システム)の構成を表した概略図である。本システムは、対象となる地形に対して三次元測量を実行し、三次元測量結果から品質値を算出するために用いられる。品質値は、盛土における土の締固めの品質を示す指標である。
【0025】
図を参照して、本実施の形態にかかるシステムは、演算装置1と、三次元測量のための測定装置31を搭載したUAV(無人航空機:Unmanned Aerial Vehicle)3と、コンピュータ制御された建設機械であるICT(Information and Communications Technology)建設機械5と、を含む。
【0026】
演算装置1、UAV3、および、ICT建設機械5は、それぞれ、インターネット等の外部ネットワーク9を介して接続されたサーバ8などの外部装置と通信するための通信部14,33,55を有し、サーバ8を介してデータを送受信する。また、演算装置1は、インタフェース12を介して表示装置7と接続されている。
【0027】
なお、演算装置1は無線通信機13を含み、UAV3の無線通信機32と無線通信によってデータを直接送受信してもよい。また、演算装置1の無線通信機13は、ICT建設機械5の無線通信機53と無線通信によってデータを直接送受信してもよい。または、演算装置1、UAV3、および、ICT建設機械5は、それぞれ、外付けメモリを介してデータの受け渡しを行ってもよい。
【0028】
〔演算装置の構成〕
演算装置1は、品質値を算出する演算を行う。
図1に示すように、演算装置1は、制御部10、無線通信機13、通信部14、および、記憶部15を含む。
制御部10はCPU(Central Processing Unit)を含む。制御部10のCPUは、記憶部15に記憶された1または複数のプログラムを読み出して各種処理を実行するための機能を有している。制御部10のCPUは、たとえば時分割で複数のプログラムを切り替えて実行することにより、複数のプログラムを並列的に実行可能である。
制御部10のCPUは、1または複数の大規模集積回路(LSI)を含む。複数のLSIを含むCPUでは、複数のLSIが協働して当該CPUの機能を実現する。
【0029】
記憶部15は、フラッシュメモリまたはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性のメモリ素子よりなる。記憶部15は、制御部10のCPUが実行するプログラムまたは実行に必要なデータなどを記憶する記憶領域を有する。
【0030】
制御部10のCPUは、記憶部15に記憶された1または複数のプログラムを実行することによって、無線通信機13からのデータを入力する入力部100、品質値を計算する演算部101、および、品質値から後述する管理データを生成する生成部102と、品質値の表示用データを通信部14に渡して出力処理を実行させる出力部103、として機能する。
【0031】
通信部14には、専用線等を介して表示装置7が接続されていてもよい。また、通信部14には、インターネット等の外部ネットワーク9を介してサーバ8が接続されていてもよい。通信部14は、制御部10のCPUから与えられた情報を所定の宛先に送信する。また、外部装置から受信した情報を制御部10のCPUに与える。
【0032】
〔UAVの構成〕
UAV3は、測定装置31、無線通信機32、および、通信部33を備え、盛土の地形を上空から三次元測量する。測定装置31による地形の三次元測量結果を含む測量データMDは、通信部33によってサーバ8に送信、または、無線通信機32によって演算装置1に直接送信される。測定装置31は、たとえば、カメラまたは3Dレーザスキャナである。この場合、測量データMDは、カメラによる撮影データ等を含む。なお、本システムは、UAV3に替えて、盛土を上方から三次元測量可能な3Dレーザスキャナを含んでもよい。
【0033】
〔ICT建設機械の構成〕
ICT建設機械5は、土の締固めに用いられる、バックホウ、振動ローラ、タンピングローラ、ブレートコンパクタ、などである。ICT建設機械5は、受信装置51、制御装置52、無線通信機53、表示装置54、および、通信部55を含む。
【0034】
受信装置51は、GNSS(Global Navigate Satellite System)から衛星信号を受信し、自装置の絶対位置を特定する。絶対位置は、たとえば、緯度および経度で表わされる平面位置に加えて、水平面からの高さによって特定される空間上の位置を指す。特定された絶対位置を示す位置情報は制御装置52に入力される。
制御装置52は、図示しないCPUおよび記憶部を含む。CPUは、記憶部に記憶された1または複数のプログラムを読み出して各種処理を実行するための機能を有している。各種処理は、図示しないアクチュエータを制御することによってオペレータ指示や演算装置1からの制御信号に従った動作を実現する処理、および、演算装置1から受信したデータに基づく表示を表示装置54に行う処理、などを含む。
【0035】
制御装置52は、GNSSから受信した衛星信号によって得られる現在位置と、アクチュエータの制御状況などから得られるICT建設機械5の動作と、に基づいて施工データを生成する。施工データは、ICT建設機械5による、盛土表面における平面位置ごとの土の締固め動作を表したデータである。施工データは、たとえば、締固め施工時のICT建設機械5の走行履歴である。盛土表面における平面位置は、高さの情報を持たない平面内での位置を指し、たとえば、高さをz軸としたとき、x,y座標で表わされる位置を指す。
【0036】
制御装置52は、生成した施工データに必要に応じて処理を施し、当該施工データCDを通信部55によってサーバ8に送信させる。または、施工データCDを無線通信機53に渡して無線通信によって演算装置1に直接送信させる。加工データに対する処理は、たとえば、施工データからICT建設機械5の動作時の位置情報の集合、たとえば締固め時の走行履歴を示す位置情報の集合を得る処理、転圧回数および振動データなどのICT建設機械5の作業部の動作を特定する情報を得る処理、および、当該ICT建設機械5の種類やIDなどの属性を付加する処理、などである。また、制御装置52は、演算装置1から受信、またはサーバ8から取得した表示用のデータを表示装置54に表示させる。
【0037】
〔測量手順〕
図2は、本システムでの盛土の三次元測量の手順を説明するための図である。
図2の測量手順は、土の締固め施工を含む施工方法に含まれる。盛土は、盛土層が積層されてなる土の積層構造であって、周囲より高い位置で平らな面を有する。盛土施工では、「まき出し」工程と「締固め」工程とが繰り返される。「まき出し」は、土を搬入して敷き広げること、「締固め」はまき出し後の土を振動および/または圧迫によって空隙を減少させて密度を高めること、である。
【0038】
図を参照して、第(n-1)層の締固め後、UAV3を利用して盛土を上空から撮影する(A)。UAV3による撮影は、国土地理院のUAVを用いた公共測量マニュアル(案)に規定された条件に従って行うことができる。
【0039】
次に、締固め後の第(n-1)層の上に第n層の土をまき出し、締固め前の第n層の地形を上空から撮影する(B)。次に、まき出し後の第n層を締め固め、締固め後の第n層の地形を上空から撮影する(C)。
【0040】
図2の(A)~(C)が繰り返されることで、盛土層が積層されて盛土が形成されるとともに、各層について締固めの前後の上空から撮影した撮影データが得られる。
【0041】
〔品質値算出の原理〕
演算装置1は、
図2の(A)~(C)で得られた撮影データ(すなわち三次元測量結果)から品質値を算出する。品質値は、たとえば、第n層の締固め前と後とそれぞれの層厚H1およびH2である。
【0042】
演算装置1は、UAV3によってサーバ8に格納された撮影データを取得する。または、UAV3の無線通信機32から無線送信された撮影データを受信する。制御部10の入力部100は、通信部14または無線通信機13から撮影データの入力を受け付ける。
【0043】
演算装置1の制御部10の演算部101は、入力された撮影データを画像解析して三次元データを作成し、三次元データから数値表層モデルを得る。また、演算部101は、撮影画像における施工範囲内の各位置を絶対位置に変換する。一例として、演算部101は、施工範囲に設置され、撮影された絶対位置(たとえば緯度経度および水平面からの高さ)が既知のマーカの、撮影画像における絶対位置を基準にして、撮影画像における施工範囲内の各位置を絶対位置に変換する。位置の変換方法は、この方法に限定されず他の方法であってもよい。
【0044】
演算部101は、
図2(A)の締固め後の第(n-1)層の撮影データと、
図2(B)のまき出し後(締固め前)の第n層の撮影データとのそれぞれから得られた数値表層モデルの、同一の平面位置における高さの差分を算出することで、締固め前の第n層の層厚H1を得る。
【0045】
同様に、演算部101は、
図2(B)のまき出し後(締固め前)の第n層の撮影データと、
図2(C)の締固め後の第n層の撮影データとのそれぞれから得られた数値表層モデルの、同一の平面位置における高さの差分を算出することで、締固め後の第n層の層厚H2を得る。
【0046】
締固め後の第(n-1)層までの地表からの総高さDn-1に層厚H2を加えると、締固め後の第n層までの地表からの総高さDnが得られる。
【0047】
UAV3の測定装置31で得られる撮影データは第n層の上面であるため、演算部101は、第n層上の平面位置iごとに高さの差分を算出することで、平面位置iごとの締固め前後の層厚H1i,H2iを得ることができる。
【0048】
品質値の他の例は、圧縮ひずみεiである。圧縮ひずみεiは、第n層上の点iの圧縮量の度合いを表す指標であって、下の式(1)で得られる。
εi=ΔHi/Hi=(H1i-H2i)/H1i …(1)
【0049】
品質値の他の例は、締固め後の密度ρiである。密度ρiは、締固め前の密度をρ0とすると、上記式(1)で得られた圧縮ひずみεiを用い、下の式(2)で得られる。締固め前の密度ρ0は、第n層にまき出した土の代表点の密度測定によって得られる。密度ρ0にばらつきがない場合、密度を計測する第n層の代表点である平面位置はいずれの位置であってもよいものとし、当該平面位置で計測された密度ρ0は、第n層のすべての平面位置における密度とする。
ρi=ρ0×1/(1-εi) …(2)
【0050】
なお、品質値は、上の例に示された指標に限定されず、その他、たとえば、締固め度(D値)、などであってもよい。また、これら複数の指標のうちの2以上の指標の組み合わせであってもよい。
【0051】
図3は、演算部101における品質値の演算結果を表した図である。図を参照して、演算部101は、第n層上の平面位置(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)…ごとに、品質値の一例として圧縮ひずみε1、ε2、ε3、…を算出する。また、品質値の他の例として、締固め後の密度ρ1、ρ2、ρ3、…を算出する。なお、品質値は、圧縮ひずみε1、ε2、ε3、…と締固め後の密度ρ1、ρ2、ρ3、…との組み合わせであってもよい。
【0052】
〔施工方法〕
図4は、本システムを用いた、土の締固め施工を含む施工方法の一部工程を表わしたフローチャートである。図を参照して、施工方法のある工程においては、第n層の土をまき出し(ステップS101)、まき出し後(締固め前)の第n層をUAV3により撮影する(ステップS103)。撮影データを含む測量データMD1は、無線通信機32によって演算装置1に入力される(ステップS105)。演算装置1の制御部10は、入力された測量データから、第n層上の平面位置iごとの層厚(高さ)Hiを算出する(ステップS107)。
【0053】
次に、第n層を締め固め(ステップS109)、締め固め後の第n層をUAV3により撮影する(ステップS111)。撮影データを含む測量データMD2は、無線通信機32によって演算装置1に入力される(ステップS113)。演算装置1の制御部10は、入力された測量データから、第n層上の平面位置iごとの品質値を算出し、算出した品質値を記憶部15に記憶する(ステップS115)。
【0054】
制御部10は、同様にして第n+1層,第n+2層、…と順に同様の工程を繰り返し、すべての盛土層について位置iの品質値を算出して記憶部15に記憶する。
【0055】
第1の実施の形態にかかる演算装置1の制御部10の生成部102は、複数の盛土層からなる盛土全体についての締固めの管理データ(以下、管理データ)を生成する。当該管理データは、盛土を構成する盛土層ごとに、当該盛土層上の平面位置iに当該平面位置iにおける品質値が対応付けられたデータである。生成部102は、演算部101から、
図3の演算結果を盛土層ごとに取得して、盛土層ごとに、位置をキーとして品質値を対応付けることによって管理データを生成する。
【0056】
図5は管理データの具体例を表わした図である。
図5の管理データは、盛土の各層上の平面位置(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)…をキーとし、各平面位置に品質値q11,q12,q13、…を対応付けたデータである。
【0057】
好ましくは、生成部102は、平面位置iをキーとし、各平面位置iに、品質値に加えて、土の締固めの品質に影響を与える関連データを対応付ける。関連データは、たとえば、施工時のICT建設機械5の施工データから得られる、盛土の第n層上の平面位置ごとの施工データである。また、関連データは、たとえば、土質情報である。また、関連データは、たとえば、これらの組合せである。土質情報は、たとえば、土の種類、含水比、粒径などであって、これら情報は、図示しない入力部などによって演算装置1に入力される。たとえば、管理データは、
図5に示されたように、さらに、各層上の平面位置iに対応付けられた施工データを含む。
【0058】
演算装置1は、ICT建設機械5によってサーバ8に格納された施工データCDを取得する。または、ICT建設機械5の無線通信機32から無線送信された施工データCDを受信する。制御部10の入力部100は、通信部14または無線通信機13から施工データCDの入力を受け付ける。
【0059】
管理データに含まれる平面位置iに対応付けられた施工データは、ICT建設機械5から送信された施工データCDそのもの、つまり、各平面位置iにおける施工データCDであってもよいし、所定の処理を施した施工データCDであってもよい。所定の処理は、施工データCDから、土の締固め品質に影響する、ICT建設機械5の土の締固めの動作から得られる平面位置iごとの値v1、v2、v3…を得る処理であって、たとえば、当該平面位置iを通過した回数(転圧回数)、当該平面位置iにおける振動挙動、などである。
【0060】
〔結果出力〕
演算装置1の制御部10の生成部102は、さらに、
図5の管理データから出力用のデータを生成する。出力用のデータは、
図5の管理データそのものであってもよい。この場合、出力部103は当該データを通信部14に渡して、外部ネットワーク9を介してサーバ8に送信し、サーバ8に記憶させる。
【0061】
他の例として、出力用のデータは、表示装置7での表示用のデータである。
図6(A)は、発明者らによる施工実験によって得られたある盛土層における品質値の算出結果の表示である。
図6(B)は、
図6(A)の
図6(A)の表示を模式的に示した図である。
図6(A),(B)では、第n層上の各平面位置を表わすセル(格子)に、当該平面位置の品質値に対応付けられた色(図例ではハッチングで表現)が付されている。
図6(A),(B)の例では、品質値は地表からの総高さDであって、薄い色ほど総高さDが低い、つまり、沈下量が大きく、濃い色ほど総高さDが高い、つまり、沈下量が小さいことを示している。
【0062】
図5の管理データから
図6(A),(B)の表示用のデータを生成する場合、生成部102は、各平面位置とセルとの関係を予め記憶しておき、各セルに対応した平面位置の品質値を
図5の管理データから読み出して、その値に対応した色を当該セルに割り当てる。
【0063】
〔第1の実施の形態の効果〕
第1の実施の形態にかかるシステムでは、締固め前後の測量データに基づいて、盛土の第n層上の平面位置ごとの締固めの品質値が算出される。これにより、第n層について、位置に品質値を対応付けて施工時の管理データとして記録することができる。さらに、各層上の平面位置について盛土の締固めの品質値が算出される。これにより、各層について平面位置に品質値を対応付けて施工時の管理データとして記録することができる。
【0064】
好ましくは、本システムでは、土の締固めの品質に影響を与える関連データを上記の施工時の管理データと対応付けることができる。関連データは、たとえば、施工時のICT建設機械5の施工データから得られる、盛土の第n層上の平面位置ごとの施工データである。また、関連データは、たとえば、土質情報である。また、関連データは、たとえば、これらの組合せである。
【0065】
このような施工時の管理データが得られることによって、たとえば、
図6(A),(B)のような表示を行うことができる。表示装置7でかかる表示がなされることによって、第n層の品質値の面分布が視覚化され、把握されやすくなる。
図6(B)の例では、行方向をA~H、列方向をa~eとしてこれらの交差でセルを定義すると、中央付近であるセルDa~c、Ea~cは沈下量が大きく、締固めが十分であり、セルAa、A~He、Ha,b,d,eなどの端部は沈下量が小さく、締固めが不足しがちであることが一目で把握される。
【0066】
なお、
図6(A),(B)の表示はICT建設機械5の表示装置54で行われてもよい。この表示がICT建設機械5の表示装置54で行われることで、ICT建設機械5のオペレータは、締固めが不足しているなどの締固めの異常個所を視覚的に把握できる。そのため、その箇所に対して再度締固め動作を行なわせるなどのICT建設機械5の操作が可能になる。なお、ICT建設機械5の表示装置54で表示を行わせることは、第2の実施の形態でも同様に行われてもよい。
【0067】
かかる管理情報が記録されることで、盛土の締固めの施工時の品質管理が効率化、高度化されるとともに、当該盛土の将来の維持管理も効率化、高度化される。
【0068】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態にかかる演算装置1の制御部10の生成部102は、施工完了後の撮影データなどから得られる三次元形状データ(たとえばサーフェスデータ)を複数の三次元立体要素からなる三次元形状データ(たとえばボクセルデータ)に変換する。なお、三次元立体要素は、たとえば、ボクセルであり、ボクセルは、デジタルデータによる立体表現を指す。立体は、直方体等の四面体が想定されるが、三角錐(四面体)や五面体など、他の多面体形状であってもよい。
【0069】
生成部102は、内部空間情報を属性に持つ三次元データとして管理データを生成する。管理データは、当該ボクセル1つ分のボクセルデータを、三次元データから変換されるすべてのボクセル分有する、全体のボクセルデータである。
【0070】
また、第2の実施の形態にかかる演算装置1の制御部10の生成部102は、さらに、複数工区毎に生成された管理データを統合して、当該複数工区の管理データを生成する。工区は土の締固めを含む施工領域(工事全体)の単位区画を指し、盛土施工は工区ごとに実施される。
【0071】
図7は、第2の実施の形態にかかる演算装置1の生成部102において実行される管理データの生成処理の流れを表したフローチャートである。また、
図8は、管理データの生成手順を表わした図である。
【0072】
図7を参照して、演算装置1の制御部10は、第m工区について、撮影データなどから得られる、
図8(A)に示される三次元形状データ(たとえばサーフェスデータ)を、
図8(B)のボクセルデータに変換する(ステップS205)。制御部10は、各ボクセルについて、当該ボクセルの形状を示すデータを当該ボクセルのボクセルデータとするとともに、当該ボクセルの内部の絶対位置ごとの品質値(たとえば圧縮ひずみ)を当該ボクセルのボクセルデータとする(ステップS209)。ボクセルの形状を示すデータは、たとえば、ボクセルの各頂点の絶対位置である。
【0073】
制御部10は、無線通信機32によって演算装置1に入力された、第m工区の各盛土層のまき出し前後の測量データMD1,MD2から、各ボクセルの内部の絶対位置ごとの品質値を算出し(ステップS207)、当該ボクセルのボクセルデータとする。すなわち、各ボクセルには、当該ボクセルのボクセルデータとして、当該ボクセルの形状を示すデータおよび当該ボクセル内部の絶対位置に対応した品質値が割り当てられる。
【0074】
好ましくは、ステップS207で制御部10は、さらに、各ボクセルの内部の絶対位置ごとの施行データCDを、当該ボクセルのボクセルデータとする。すなわち、各ボクセルには、当該ボクセルのボクセルデータとして、当該ボクセルの形状を示すデータ、当該ボクセル内部の絶対位置に対応した品質値、および、当該ボクセル内部の絶対位置に対応した施行データCDが割り当てられる。
【0075】
制御部10は、すべての工区についてボクセルデータを生成するまで(ステップS211でNO)、工区ごとに(ステップS213)、以上の処理を繰り返す。これにより、全工区について、ボクセルデータが生成される。
【0076】
すべての工区のボクセルデータが生成されると(ステップS211でYES)、制御部10は、それらを統合して、
図8(C)に示された全体データを生成する(ステップS215)。ステップS215での統合は、隣接する工区間の境界のボクセルを絶対位置が一致するように重ねること、予め規定されている工区の配置に従って工区ごとのボクセルデータを配置すること、などである。これにより、複数工区のボクセルデータが連続した管理データが生成される。
【0077】
さらに、演算装置1の制御部10の生成部102は、ボクセルデータである管理データから、出力用のデータを生成する。出力用のデータは、管理データそのものであってもよい。この場合、出力部103は、工区ごとのボクセルデータ(
図8(B))である管理データ、または複数工区のボクセルデータからなる管理データを、サーフェスデータ(
図8(A))とともに出力してもよい。または、工区ごとのボクセルデータ(
図8(B))である管理データおよび複数工区のボクセルデータからなる管理データの両方を出力してもよい。
【0078】
他の例としてまた、出力用のデータは、表示装置7での表示用のデータであってもよい。生成部102は、品質値および施行データの組み合わせと色との対応を予め記憶しておき、各ボクセルの、品質値および施行データに応じた色を当該ボクセルに割り当てる。これにより、表示装置7に各層について図(A),(B)と同様の表示が可能であると共に、当該盛土層に直交する面での断面の品質値および/または施工データの面分布を
図6(A),(B)と同様に表示することもできる。
【0079】
〔第2の実施の形態の効果〕
第2の実施の形態にかかるシステムでは、盛土の各層上の位置ごとの品質値を積層することで、盛土内部の締固めの品質値を三次元情報化し、施工時の管理データとして記録することができる。
【0080】
このような施工時の管理データが生成されることによって、盛土内部についても
図6のような盛土の締固めの品質値の三次元分布を表示できる。表示装置7でかかる表示がなされることによって、盛土内部の締固めの品質値の三次元分布が視覚化され、把握されやすくなる。
【0081】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態にかかるシステムでは、盛土施工時に、算出された品質値に基づいて締固めの異常位置を判定する。好ましくは、第3の実施の形態にかかるシステムでは、判定結果に基づいた案内表示、または施工制御を行う。このため、制御部10のCPUは、記憶部15に記憶された1または複数のプログラムを実行することによって、判定処理を行う判定部105と、判定結果に基づいた処理を指示する指示部106と、をさらに有する(
図1)。
【0082】
図9は、第3の実施の形態にかかる演算装置1の判定部105において実行される判定処理の流れを表したフローチャートである。かかる処理は盛土施工中に実行され、一例として、ある層(判定対象層とも言う)の締固め完了ごとに実行される。
【0083】
図を参照して、演算装置1の制御部10は、管理データ(
図5)、または、品質値の演算結果(
図3)から、判定対象層上の平面位置jの品質値(たとえば圧縮ひずみ)を読み出す(ステップS301)。制御部10は、品質が異常なしとされる品質値の許容範囲を予め記憶しておき、読み出した品質値が許容範囲内であるか否かを判定する。品質値が許容範囲内である平面位置については(ステップS303でYES)、制御部10は締固めが正常であると判定する(ステップS305)。
【0084】
平面位置jの圧縮ひずみが許容範囲内でない場合(ステップS303でNO)、制御部10は、平面位置jにおける締固めが異常であると判定する(ステップS307)。締固めが異常である平面位置を判定した場合、制御部10は当該判定結果に応じた動作を行う。判定結果に応じた動作は、一例として、異常と判定した平面位置jをICT建設機械5の表示装置54に表示させるための信号を生成して無線通信機13に渡し、ICT建設機械5の無線通信機53に送信させる動作である(ステップS309)。この動作により、ICT建設機械5の表示装置54には締固めが異常である平面位置jが表示される。
【0085】
判定結果に応じた動作は、他の例として、または上記の動作に加えて、異常と判定された平面位置jに対して適切な施工(たとえば再締固め動作)を実行させるための制御信号を生成して無線通信機13に渡し、ICT建設機械5の無線通信機53に送信させる動作である(ステップS311)。この動作により、ICT建設機械5の制御装置52は、当該制御信号に従うICT建設機械5の動作を行なって、ICT建設機械5に再締固め動作を実行させることができる。
【0086】
平面位置jについて上記の異常の有無の判定が完了すると、制御部10は、jにj+1を代入し(ステップS315)、以上の処理を繰り返す。すなわち、制御部10は判定対象層上のすべての平面位置について締固めの異常の有無を判定する。
【0087】
〔第3の実施の形態の効果〕
第3の実施の形態にかかるシステムでは、盛土施工中において、判定対象層上の平面位置ごとに品質値に基づいて締固めの異常の有無が判定される。これにより、判定結果に従った制御が可能になる。
【0088】
判定結果に従った制御は、たとえば、ICT建設機械5の表示装置54に判定結果(少なくとも異常である位置)を案内表示する制御である。この案内表示は、いわゆるマシンガイダンスとも呼ばれる。この表示が行われることで、ICT建設機械5のオペレータは、締固めが不足しているなどの異常個所を視覚的に把握できる。そのため、その箇所に対して再度締固め動作を行なわせるなどのICT建設機械5の操作が可能になる。
【0089】
判定結果に従った制御は、たとえば、ICT建設機械5に再締固め動作を実行させる制御である。この制御は、いわゆるマシンコントロールとも呼ばれ、自動運転機能を有する場合に実行可能である。この制御が行われることで、締固めが不足しているなどの異常個所が生じている場合に、ICT建設機械5は自動で再度締固め動作を行なう。
【0090】
これにより、盛土の締固めの施工時の品質管理が効率化されるとともに、施工品質を向上させることができる。
【0091】
<第4の実施の形態>
上述の動作を演算装置1に実行させるための、1つ以上のソフトウェアモジュールの組み合わせであるプログラムを提供することもできる。
【0092】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 演算装置
5 ICT建設機械
7 表示装置
10 制御部
13 無線通信機(入力部)
14 通信部(入力部)
54 表示装置
100 入力部
101 演算部
102 生成部
103 出力部
105 判定部
106 指示部
MD1,MD2 測量データ