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特許7164149シミュレータ、サーバ、評価システム、評価プログラム、及び評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】シミュレータ、サーバ、評価システム、評価プログラム、及び評価方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20221025BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20221025BHJP
【FI】
H04N7/18 D
G06T19/00 F
G06T19/00 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018112206
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019216347
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】亀田 能成
(72)【発明者】
【氏名】高鳥 光
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-223845(JP,A)
【文献】特開2017-151547(JP,A)
【文献】特開平11-195196(JP,A)
【文献】特開2004-005511(JP,A)
【文献】特開2016-143090(JP,A)
【文献】特開2007-156756(JP,A)
【文献】特開2006-215911(JP,A)
【文献】特開2018-085630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G06T 19/00
B60R 1/00
B60R 11/00
B60R 21/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体が通行する所定の固定空間を仮想的に再現する、表示装置及びサーバを備えたシミュレータであって、
上記サーバは、
上記固定空間を移動する複数の移動体の各々の位置を示す第1の位置情報を、各移動体から通信を介して取得して、第1の情報群を作成する第1作成部であって、所定の時間間隔で複数の第1の情報群を作成する第1作成部と、
上記固定空間の全領域を含み、且つ、上記複数の移動体を含む画像であって、所定の時間間隔で撮像された画像を表す画像情報を取得する取得部と、
上記画像情報を取得し、該画像情報に基づいて、上記複数の移動体の各々の位置を示す第2の位置情報を生成して、第2の情報群を作成する第2作成部であって、所定の時間間隔で複数の第2の情報群を作成する第2作成部と、
上記固定空間において通行する各移動体を仮想的な固定空間に表示するように上記表示装置を制御する表示装置制御部であって、上記第1の情報群の各々に上記第1の位置情報が含まれる各移動体を当該第1の位置情報に応じて表示するとともに、上記第2の情報群の各々に上記第2の位置情報が含まれる各移動体を当該第2の位置情報に応じて表示するように上記表示装置を制御する表示装置制御部と、を含んでいる、
ことを特徴とするシミュレータ。
【請求項2】
上記表示装置制御部が上記表示装置に供給する画像情報は、上記表示装置が表示する上記各移動体の両眼視差立体視を実現する画像情報である、
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレータ。
【請求項3】
上記表示装置は、上記固定空間の少なくとも側方を取り囲むスクリーンと、上記スクリーンに画像を投影する複数のプロジェクタとを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のシミュレータ。
【請求項4】
複数の移動体が通行する所定の固定空間を移動する複数の移動体の各々の位置を示す第1の位置情報を、各移動体から通信を介して取得して、第1の情報群を作成する第1作成部であって、所定の時間間隔で複数の第1の情報群を作成する第1作成部と、
上記固定空間の全領域を含み、且つ、上記複数の移動体を含む画像であって、所定の時間間隔で撮像された画像を表す画像情報を取得する取得部と、
上記画像情報を取得し、該画像情報に基づいて、上記複数の移動体の各々の位置を示す第2の位置情報を生成して、第2の情報群を作成する第2作成部であって、所定の時間間隔で複数の第2の情報群を作成する第2作成部と、
(A)第1の情報群のみに含まれる移動体のグループ、(B)第2の情報群のみに含まれる移動体のグループ、及び(C)第1の情報群及び第2の情報群の両方に含まれる移動体のうち予め定められた条件を満たす移動体のグループ、のうち少なくとも何れか1つのグループに含まれる各移動体をリスクが高い移動体であると判定する判定部と、を備えている、
ことを特徴とするサーバ。
【請求項5】
上記第1の情報群は、上記第1の位置情報が示す位置である第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度である第1の速度を示す第1の速度情報を含み、
上記第2の情報群は、上記第2の位置情報が示す位置である第2の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度である第2の速度を示す第2の速度情報を含み、
上記判定部は、上記第1の速度及び上記第2の速度のうち少なくとも何れか一方が予め定められた閾値速度を上回る移動体をリスクが高い移動体であると判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載のサーバ。
【請求項6】
上記第1の情報群は、上記第1の位置情報が示す位置である第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第1の速度ベクトルを示す第1の速度ベクトル情報を含み、
上記第2の情報群は、上記第2の位置情報が示す位置である第2の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第2の速度ベクトルを示す第2の速度ベクトル情報を含み、
上記判定部は、上記第1の位置及び上記第1の速度ベクトルと、上記第2の位置及び上記第2の速度ベクトルとから、予め定められた時間後に各移動体が到達すると見込まれる位置である予想位置を算出し、該予想位置同士の間隔が予め定められた閾値間隔を下回る移動体同士をリスクが高い移動体同士であると判定する、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のサーバ。
【請求項7】
上記判定部は、上記第1の速度ベクトル及び上記第2の速度ベクトルのうち少なくとも何れか一方の時間的な変化が不規則である移動体をリスクが高い移動体であると判定する、
ことを特徴とする請求項6に記載のサーバ。
【請求項8】
事故に至る可能性が高い速度ベクトルの時間的な変化のパターンを記憶した記憶装置を更に備え、
上記第1の情報群は、上記第1の位置情報が示す位置である第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第1の速度ベクトルを示す第1の速度ベクトル情報を含み、
上記第2の情報群は、上記第2の位置情報が示す位置である第2の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第2の速度ベクトルを示す第2の速度ベクトル情報を含み、
上記判定部は、上記第1の速度ベクトルの時間的な変化のパターン及び上記第2の速度ベクトルの時間的な変化のパターンを、上記事故に至る可能性が高い上記パターンと比較し、該当している移動体をリスクが高い移動体であると判定する、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のサーバ。
【請求項9】
事故に至る可能性が低い速度ベクトルの時間的な変化のパターンを記憶した記憶装置を更に備え、
上記第1の情報群は、上記第1の位置情報が示す位置である第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第1の速度ベクトルを示す第1の速度ベクトル情報を含み、
上記第2の情報群は、上記第2の位置情報が示す位置である第2の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第2の速度ベクトルを示す第2の速度ベクトル情報を含み、
上記判定部は、上記第1の速度ベクトルの時間的な変化のパターン及び上記第2の速度ベクトルの時間的な変化のパターンを、上記事故に至る可能性が低い上記パターンと比較し、逸脱している移動体をリスクが高い移動体であると判定する、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のサーバ。
【請求項10】
上記記憶装置は、上記第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第1の速度ベクトルの履歴と、上記第2の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第2の速度ベクトルの履歴とを更に記憶し、
上記判定部は、上記第1の速度ベクトル及び上記第2の速度ベクトルのうち少なくとも何れか一方の時間的な変化のパターンが、上記第1の速度ベクトルの履歴及び上記第2の速度ベクトルの履歴の何れの部分とも異なっている移動体をリスクが高い移動体であると判定する、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のサーバ。
【請求項11】
上記第1の情報群に第1の位置情報が含まれている各移動体の位置である第1の位置を上記固定空間のマップ上にマッピングした第1のマップと、上記第2の情報群に第2の位置情報が含まれている各移動体の位置である第2の位置を上記固定空間のマップ上にマッピングした第2のマップと、上記判定部によりリスクが高い移動体であると判定された移動体を、他の移動体から区別した状態で上記固定空間のマップ上にマッピングした第3のマップを作成するマップ作成部と、
上記第3のマップを画面に表示させる表示制御部と、を更に備えている、
ことを特徴とする請求項4~10の何れか1項に記載のサーバ。
【請求項12】
請求項4~11の何れか1項に記載のサーバと、
該サーバとネットワーク接続され、上記固定空間の画像を撮像する1又は複数のカメラと、を備えた評価システムであって、
上記サーバは、
上記1又は複数のカメラから上記画像を取得する取得部と、
上記画像に含まれる各移動体の位置を示す位置情報を上記第2の位置情報として抽出する位置情報抽出部と、を更に備えている、
ことを特徴とする評価システム。
【請求項13】
請求項4~11の何れか1項に記載のサーバと、
それぞれが近接センサを備えている複数の車両であって、上記複数の移動体の一部を構成する複数の車両と、を備えた評価システムであって、
上記複数の車両の各々は、(1)自身の位置である第3の位置を示す第3の位置情報と、(2)上記近接センサにより検出された、自身の周囲に存在する1又は複数の移動体の位置である第4の位置を示す第4の位置情報であって、上記第3の位置を基準として上記第4の位置の相対的な位置を示す第4の位置情報とを生成し、
サーバは、上記複数の車両の各々から、各車両の上記第3の位置情報及び上記第4の位置情報を取得する取得部を更に備え、
上記第2作成部は、上記第3の位置情報及び該第4の位置情報を集約することによって上記第2の情報群を作成する、
ことを特徴とする評価システム。
【請求項14】
上記サーバは、少なくとも、リスクが高いと判定した1又は複数の移動体のうち受信部を有している各移動体に対してその旨を通知する、又は、上記リスクが高いと判定した1又は複数の移動体の周囲に位置する各移動体のうち、受信部を有している各移動体に対して、その周囲にリスクが高いと判定された移動体が存在する旨を通知する通知部を更に備えている、
ことを特徴とする請求項12又は13に記載の評価システム。
【請求項15】
固定空間に配置された複数の報知器を更に備え、
上記サーバは、リスクが高いと判定した1又は複数の移動体の周囲に配置された1又は複数の報知器、又は、リスクが高いと判定した1又は複数の移動体の進行方向に配置された1又は複数の報知器を動作させる報知部を更に備えている、
ことを特徴とする請求項12~14の何れか1項に記載の評価システム。
【請求項16】
請求項4に記載のサーバとしてコンピュータを機能させるための評価プログラムであって、上記第1作成部、上記取得部、上記第2作成部、及び上記判定部としてコンピュータを機能させるための評価プログラム。
【請求項17】
複数の移動体が通行する所定の固定空間における各移動体のリスクを評価する評価方法であって、
上記固定空間を移動する複数の移動体の各々の位置を示す第1の位置情報を、各移動体から通信を介して取得して、第1の情報群を作成する第1作成工程であって、所定の時間間隔で複数の第1の情報群を作成する第1作成工程と、
上記固定空間の全領域を含み、且つ、上記複数の移動体を含む画像であって、所定の時間間隔で撮像された画像を表す画像情報を取得する取得工程と、
上記画像情報を取得し、該画像情報に基づいて、上記複数の移動体の各々の位置を示す第2の位置情報を生成して、第2の情報群を作成する第2作成工程であって、所定の時間間隔で複数の第2の情報群を作成する第2作成工程と、
(A)第1の情報群のみに含まれる移動体のグループ、(B)第2の情報群のみに含まれる移動体のグループ、及び(C)第1の情報群及び第2の情報群の両方に含まれる移動体のうち予め定められた特定の条件を満たす移動体のグループ、のうち少なくとも何れか1つのグループに含まれる移動体をリスクが高い移動体であると判定する判定工程と、を含む、
ことを特徴とする評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェアードスペース内を移動する移動体のリスクを評価するシミュレータ、サーバ、評価システム、評価プログラム、及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーロッパ(例えばイングランド)では、都市計画における1つのデザインアプローチとしてシェアードスペースと呼ばれるデザインアプローチが普及している(非特許文献1参照)。シェアードスペースは、信号や、交通標識や、行き先の表示など目に見える規制及び案内を可能な限り排除することにより、混沌として且つ人間らしい空間を演出することを目指している。そのために、シェアードスペースは、すべての交通参加者(歩行者や、自転車や、オートバイや、自動車など)が対等な立場に立つことを目指している。
【0003】
なお、以下において「シェアードスペース」という用語は、(1)デザインアプローチの名称として用いられる場合もあるし、(2)シェアードスペースと称されるデザインアプローチに基づきデザインされた空間の名称として用いられる場合もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Department for Transport, Local Transport Note 1/11, "Shared Space", October 2011, [online], [2018年5月29日検索]、インターネット<https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/3873/ltn-1-11.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すべての交通参加者が対等な立場に立つシェアードスペースにおいては、各交通参加者が事故に対するリスク感を高めることによって、より安全な交通環境を実現することができると考えられている。換言すれば、各交通参加者の安全は、各交通参加者の注意によって守られるとの思想がシェアードスペースというデザインアプローチのベースにある。とはいえ、各交通参加者の安全を各交通参加者の注意のみに委ねることについては、国民のコンセンサスを得ることが難しい場合がある。
【0006】
そこで、シェアードスペースの概念に反しない範囲内、すなわち、シェアードスペースの景観を損ねない範囲内において、各交通参加者のリスクを評価するための技術が求められている。各交通参加者のリスクを評価することができれば、その評価結果に基づき事故の発生を避けるための対策を講じることができるためである。
【0007】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、シェアードスペースにおける交通参加者のリスクを評価することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るシミュレータは、シェアードスペースを仮想的に再現する、表示装置及びサーバを備えたシミュレータである。上記サーバは、シェアードスペースを移動する複数の移動体の各々の位置を示す第1の位置情報を、各移動体から通信を介して取得して、第1の情報群を作成する第1作成部と、上記複数の移動体の各々を検知した情報を取得し、該情報に基づいて、上記複数の移動体の各々の位置を示す第2の位置情報を生成して、第2の情報群を作成する第2作成部と、上記第1の情報群及び上記第2の情報群の履歴に基づき、上記第1の情報群に上記第1の位置情報が含まれる各移動体、及び、上記第2の情報群に上記第2の位置情報が含まれる各移動体を表示するように上記表示装置を制御する表示装置制御部と、を含んでいる。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るサーバは、シェアードスペースを移動する複数の移動体の各々の位置を示す第1の位置情報を、各移動体から通信を介して取得して、第1の情報群を作成する第1作成部と、上記複数の移動体の各々を検知した情報を取得し、該情報に基づいて、上記複数の移動体の各々の位置を示す第2の位置情報を生成して、第2の情報群を作成する第2作成部と、(A)第1の情報群のみに含まれる移動体のグループ、(B)第2の情報群のみに含まれる移動体のグループ、及び(C)第1の情報群及び第2の情報群の両方に含まれる移動体のうち予め定められた条件を満たす移動体のグループ、のうち少なくとも何れか1つのグループに含まれる各移動体をリスクが高い移動体であると判定する判定部と、を備えている。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価システムは、本発明の何れか一態様に係るサーバと、該サーバとネットワーク接続され、上記シェアードスペースの画像を撮像する1又は複数のカメラと、を備えた評価システムである。この評価システムにおいて、上記サーバは、上記1又は複数のカメラから上記画像を取得する取得部と、上記画像に含まれる各移動体の位置を示す位置情報を上記第2の位置情報として抽出する位置情報抽出部と、を更に備えている。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価システムは、本発明の何れか一態様に係るサーバと、それぞれが近接センサを備えている複数の車両であって、上記複数の移動体の一部を構成する複数の車両と、を備えた評価システムでる。
【0012】
この評価システムにおいて、上記複数の車両の各々は、(1)自身の位置である第3の位置を示す第3の位置情報と、(2)上記近接センサにより検出された、自身の周囲に存在する1又は複数の移動体の位置である第4の位置を示す第4の位置情報であって、上記第3の位置を基準として上記第4の位置の相対的な位置を示す第4の位置情報とを生成する。
【0013】
また、この評価システムにおいて、サーバは、上記複数の車両の各々から、各車両の上記第3の位置情報及び上記第4の位置情報を取得する取得部を更に備え、上記第2作成部は、上記第3の位置情報及び該第4の位置情報を集約することによって上記第2の情報群を作成する。
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る評価方法は、複数の移動体が通行するシェアードスペースにおける各移動体のリスクを評価する評価方法である。この評価方法は、シェアードスペースを移動する複数の移動体の各々の位置を示す第1の位置情報を、各移動体から通信を介して取得して、第1の情報群を作成する第1作成工程と、上記複数の移動体の各々を検知した情報を取得し、該情報に基づいて、上記複数の移動体の各々の位置を示す第2の位置情報を生成して、第2の情報群を作成する第2作成工程と、(A)第1の情報群のみに含まれる移動体のグループ、(B)第2の情報群のみに含まれる移動体のグループ、及び(C)第1の情報群及び第2の情報群の両方に含まれる移動体のうち予め定められた特定の条件を満たす移動体のグループ、のうち少なくとも何れか1つのグループに含まれる移動体をリスクが高い移動体であると判定する判定工程と、を含む。
【0015】
なお、本発明の何れか一態様に係るサーバとしてコンピュータを機能させるための評価プログラムであって、上記取得部、上記作成部、及び上記判定部としてコンピュータを機能させるための評価プログラムも本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、シェアードスペースにおける交通参加者のリスクを評価することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態に係る評価システムを示す模式図である。
図2図1に示した評価システムに含まれるサーバのブロック図である。
図3】(a)は、図2に示したサーバが作成する第1の情報群の一例である。(b)、(c)、及び(d)の各々は、それぞれ、図2に示したサーバが作成する第1のマップ、第2のマップ、及び第3のマップの一例である。
図4図2に示したサーバが実行する評価方法のフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態に係るシミュレータを示す模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係るサーバとして利用可能なコンピュータの構成を例示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態である評価システム1について、図1図4を参照して説明する。図1は、評価システム1を示す模式図である。図2は、サーバ11の機能ブロックを示すブロック図である。図3の(a)は、サーバ11が備えている第1作成部112が作成する第1の情報群の一例である。図3の(b)、(c)、及び(d)の各々は、サーバ11が備えているマップ作成部114が作成する第1のマップ、第2のマップ、及び第3のマップの一例である。図4は、サーバ11が実行する評価方法M1のフローチャートである。
【0019】
<評価システム1>
評価システム1は、図1に示すように、サーバ11と、カメラCと、無線通信網10と、報知器群14と、電磁誘導線15とを備えている。また、報知器群14は、n個の報知器141,142,…,14i,…,14nにより構成されている。ここで、nは、任意の整数であり、iは、1以上n以下の整数である。
【0020】
以下のように構成された評価システム1は、シェアードスペースSSを通行する複数の移動体のリスクを評価する評価システムである。また、サーバ11は、図3に示す評価方法M1を実行することによって、シェアードスペースSSを移動する複数の移動体のリスクを評価する。サーバ11が備えている各機能ブロックについては、図2を参照して後述する。また、評価方法M1については、図4を参照して後述する。
【0021】
(無線通信網10)
無線通信網10は、4Gに代表される広域をカバーする無線通信網であってもよいし、Wi-Fi(登録商標)に代表されるローカルエリアをカバーする無線通信網であってもよい。本実施形態では、後述する歩行者群12の各歩行者が所持しているスマートフォンは、広域をカバーする無線通信網を用いてサーバ11とネットワーク接続されており、後述する電磁連結車両13の各車両は、ローカルエリアをカバーする無線通信網を用いてサーバ11とネットワーク接続されている。
【0022】
以下においては、広域をカバーする無線通信網とローカルエリアをカバーする無線通信網とを区別せずに、単に無線通信網10と称する。また、無線通信網10は、4G及びWi-Fiに限定されるものではない。如何なる態様の無線通信網であっても、無線通信網10として利用可能である。
【0023】
(移動体)
また、図1には、シェアードスペースSSを往来する交通参加者の例として、歩行者群12と、電磁連結車両13とを図示している。図1に示したシェアードスペースには、歩行者群12に含まれる歩行者12a~12mと、電磁連結車両13を構成する車両131~133とを図示している。なお、歩行者12a~12m及び車両131~133の各々は、特許請求の範囲に記載の移動体の一態様である。特許請求の範囲に記載の移動体の他の態様には、これらの他に、自転車や、オートバイや、自動車や、カートなどが含まれる。また、特許請求の範囲に記載の移動体の他の態様には、犬や猫などの動物も含まれる。なお、本実施形態では、歩行者12cのように車いすに乗っている人も歩行者の概念に含まれるものとして説明する。
【0024】
歩行者12a~12mのうち、子供である歩行者12h,12mを除いた歩行者12a~12g,12i~12lの各々は、GPS(Global Positioning System)機能を有し、且つ、無線通信網10を介してサーバ11にネットワーク接続されているスマートフォン(図1には不図示)を所持している。各スマートフォンは、複数のGPS衛生からGPS信号を受信し、測位することによって、自身の位置を表す位置情報を生成する。また、各スマートフォンは、無線通信網10を介してサーバ11にネットワーク接続されている。
【0025】
電磁連結車両13は、3台の車両131~133により構成された車両群であって、自動運転機能を有する車両群である。車両131~133の各々は、GPS(Global Positioning System)機能を有し、且つ、無線通信網10とネットワーク接続するための通信インターフェースを備えている。車両131~133の各々は、複数のGPS衛生からGPS信号を受信し、測位することによって、自身の位置を表す位置情報を生成する。また、車両131~133の各々は、無線通信網10を介してサーバ11にネットワーク接続されている。
【0026】
電磁連結車両13は、シェアードスペースSSの地面中に埋設され、且つ、サーバ11にネットワーク接続された電磁誘導線15から発せられる無線信号にしたがって、自動運転により運行されている。電磁連結車両13は、シェアードスペースSS内に点在する予め定められた停留所を巡回することによって、複数の歩行者を目的地まで運ぶ。なお、サーバ11と電磁誘導線15とをネットワーク接続する通信媒体は、LANケーブルや光ケーブルなどを用いた通信ケーブルであってもよいし、4GやWi-Fiなどを用いた無線通信網(例えば図1に示した無線通信網10)であってもよい。本実施形態では、図1に示すように、通信ケーブルを用いてサーバ11と電磁誘導線15とをネットワーク接続している。また、電磁誘導線15の途中に挿入されたn個の報知器14iからなる報知器群14については、後述する。
【0027】
(カメラC)
カメラCは、サーバ11とネットワーク接続され、シェアードスペースSSの全領域を含む画像を撮像する。カメラCが撮像する画像は、静止画像であってもよいし、動画像であってもよい。カメラCが撮像する画像が静止画像である場合、カメラCは、所定の時間間隔で撮像するように構成されていることが好ましい。本実施形態においてシェアードスペースSSに配置されているカメラは、1台のカメラCのみである。しかし、シェアードスペースSSには、複数台のカメラが配置されていてもよい。シェアードスペースSSに複数のカメラを配置することによって、画像に生じ得る死角を減らすことができる。
【0028】
なお、サーバ11とカメラCとをネットワーク接続する通信媒体は、LANケーブルや光ケーブルなどを用いた通信ケーブルであってもよいし、4GやWi-Fiなどを用いた無線通信網(例えば図1に示した無線通信網10)であってもよい。本実施形態では、図1に示すように、通信ケーブルを用いてサーバ11とカメラCとをネットワーク接続している。
【0029】
<サーバ11>
サーバ11は、図6を参照して後述するように、バス911と、演算装置912と、記憶装置である主記憶装置913及び補助記憶装置914と、入出力インターフェース915と、通信インターフェース916とを備えている。入出力インターフェース915には、入力装置920(例えばキーボードやマウスやタッチパッドなど)及び出力装置930(液晶表示装置やスピーカなど)が接続されている。通信インターフェース916は、サーバ11を無線通信網10や、カメラCや、電磁誘導線15などとネットワーク接続する。
【0030】
図2に示すように、サーバ11は、機能ブロックとして、取得部111と、第1作成部112と、第2作成部113と、マップ作成部114と、判定部115と、表示制御部116と、通知部117と、報知部118とを備えている。
【0031】
(取得部111)
取得部111は、通信インターフェース916を介して、各移動体から位置情報を取得し、且つ、カメラCから画像情報を取得する。
【0032】
具体的には、取得部111は、各歩行者12a~12g,12i~12lが所持している各スマートフォンから、各スマートフォンの位置(すなわち各歩行者の位置)を表す位置情報を、無線通信網10を介して取得する。同様に、第1作成部112は、各車両131~133から、各車両131~133の位置を表す位置情報を、無線通信網10を介して取得する。
【0033】
また、本実施形態において、取得部111は、カメラCからシェアードスペースSSの全領域を含む画像を表す画像情報を、通信ケーブルを介して取得する。
【0034】
(第1作成部112)
第1作成部112は、取得部111が取得した、各歩行者12a~12g,12i~12lの各スマートフォンの位置情報、及び、各車両131~133の位置情報の各々を、を第1の位置情報として扱う。本実施形態において、第1の位置情報は、例えば(Px,Py)というようにxy座標を用いて各移動体の位置を表す。なお、以下において、各歩行者12a~12g,12i~12l及び各車両131~133のことを、単に各移動体とも称する。
【0035】
第1作成部112は、図3の(a)に示したように、各移動体から取得した第1の位置情報をまとめ、タイムスタンプを付すことによって、第1の情報群を作成する。換言すれば、第1の情報群は、各移動体の名称を表す移動体名称と、各移動体の位置とを対応付けたテーブルである。第1作成部112は、第1の情報群を所定の時間間隔で作成し続ける。
【0036】
また、第1作成部112は、各移動体について、上述した第1の位置情報が示す位置である第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第1の速度ベクトルを示す第1の速度ベクトル情報を作成し、第1の情報群に含める(図3の(a)参照)。この場合、第1の情報群は、各移動体の移動体名称、位置、及び第1の速度ベクトルを対応付けたテーブルである。
【0037】
また、第1作成部112は、各移動体の第1の速度ベクトル情報の代わりに、各移動体の第1の速度情報を作成し、第1の情報群に含めるように構成されていてもよい。第1の速度情報は、第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度である第1の速度を示す情報である。この場合、第1の情報群は、各移動体の移動体名称、位置、及び第1の速度を対応付けたテーブルである。本実施形態では、この構成を採用している。
【0038】
なお、後述する判定部115が第1の速度ベクトル情報又は第1の速度情報を用いずに各移動体のリスクが高いか否かを判定するように構成されている場合、第1作成部112は、第1の位置情報のみを含む第1の情報群を作成するように構成されていてもよい。
【0039】
(第2作成部113)
第2作成部113は、位置情報抽出部1131を含んでいる。位置情報抽出部1131は、取得部111が取得した画像情報が表す画像から、移動体と見做せるオブジェクトを特定し、各オブジェクトの位置を第2の位置情報として抽出する。第2の位置情報は、第1の位置情報と同様に、xy座標を用いて各移動体の位置を表す。
【0040】
なお、位置情報抽出部1131が抽出した第2の位置情報の段階においては、第1の位置情報との対応関係を特定することができない。そこで、第2の位置情報では、第1の位置情報が含む移動体名称とは異なる仮の名称を、各移動体の位置と対応付ける。この点を除いて、第2の位置情報は、第1の位置情報と同様である。
【0041】
第2作成部113は、位置情報抽出部1131が抽出した各移動体の第2の位置情報をまとめ、タイムスタンプを付すことによって、第2の情報群を作成する。換言すれば、第2の情報群は、各移動体の名称を表す仮の名称と、各移動体の位置とを対応付けたテーブルである。第2作成部113は、第2の情報群を所定の時間間隔で作成し続ける。
【0042】
また、第2作成部113は、第1作成部112と同様に、各移動体の速度ベクトルである第2の速度ベクトルを示す第2の速度ベクトル情報を作成し、第2の情報群に含めるように構成されていてもよい。この場合、第2の情報群は、各移動体の仮の名称、位置、及び第2の速度ベクトルを対応付けたテーブルである。本実施形態では、この構成を採用している。
【0043】
また、各移動体の速度である第2の速度を示す第2の速度情報を作成、第2の情報群に含めるように構成されていてもよい。この場合、第2の情報群は、各移動体の仮の名称、位置、及び第2の速度を対応付けたテーブルである。
【0044】
(第2作成部113の変形例)
第2作成部113の変形例は、シェアードスペースSSの画像から第2の情報群を作成する代わりに、各車両131~133が備えている近接センサを用いて第2の情報群を作成するように構成されていてもよい。
【0045】
この場合、車両131は、複数の近接センサS1~S4からなるセンサ群Sを備えている。なお、図1には、車両131が備えている近接センサS1~S4のうち、前方に配置された近接センサS1,S2のみを図示しており、後方に配置された近接センサS3,S4の図示を省略している。また、車両132,133は、車両131と同様に、近接センサS1~S4を備えている。
【0046】
近接センサS1~S4の各々は、自身から近い距離(例えば10m以下)の範囲内に存在する移動体を検知するセンサである。近接センサS1~S4の態様としては、例えば、超音波を用いたソナー、可視光を用いたカメラ、及び、電波を用いたレーダーが挙げられる。近接センサS1~S4は、これらの態様の中から適宜選択することができる。
【0047】
各車両131~133は、(1)自身の位置である第3の位置を示す第3の位置情報と、(2)上記近接センサにより検出された、自身の周囲に存在する1又は複数の移動体の位置である第4の位置を示す第4の位置情報であって、上記第3の位置を基準として上記第4の位置の相対的な位置を示す第4の位置情報とを生成し、作成した第3の位置情報及び第4の位置情報を、無線通信網10を介してサーバ11に提供する。
【0048】
サーバ11の取得部111は、通信インターフェースを介して、第3の位置情報及び第4の位置情報を取得する。そのうえで、第2作成部113は、各車両131~133から取得した第3の位置情報及び第4の位置情報を集約することによって、第2の情報群を作成する。
【0049】
なお、本変形例においては、センサ群Sを備えた車両が、シェアードスペースSS内において偏在することなく、且つ、シェアードスペースSS内に適度な密度で存在していることが好ましい。この適度な密度は、各近接センサS1~S4が移動体を検知することができる検知可能距離に応じて定められる。
【0050】
この変形例は、シェアードスペースSSの画像を用いて第2の情報群を作成する第2作成部113の代わりとして用いることもできるし、シェアードスペースSSの画像を用いて第2の情報群を作成する第2作成部113と併用することもできる。すなわち、第2作成部113は、シェアードスペースSSの画像を用いて第2の情報群を作成し、且つ、第3の位置情報及び第4の位置情報を用いて第2の情報群を作成するように構成されていてもよい。
【0051】
この構成によれば、シェアードスペースSSの画像になんらかの死角となる領域が含まれている場合であっても、第3の位置情報及び第4の位置情報を用いて、その死角となる領域に存在し得る移動体を検出することができる。
【0052】
(マップ作成部114)
マップ作成部114は、第1の情報群に第1の位置情報が含まれている各移動体の位置である第1の位置を上記シェアードスペースSSのマップ上にマッピングした第1のマップ(図3の(b)参照)と、上記第2の情報群に第2の位置情報が含まれている各移動体の位置である第2の位置を上記シェアードスペースSSのマップ上にマッピングした第2のマップ(図3の(c)参照)とを作成する。
【0053】
図3の(b)に示した第1のマップには、図1に示した各移動体のうち歩行者12h,12mが表示されていない。これは、歩行者12h,12mがスマートフォンを所持していないためである。
【0054】
図3の(c)に示した第2のマップには、図1に示した各移動体のうち歩行者12a,12bが表示されていない。これは、カメラCが撮像する画像において、歩行者12a,12bが木に起因する死角に含まれているためである。
【0055】
(判定部115)
判定部115は、第1の情報群と第2の情報群とを参照し、第1の情報群に含まれる各第1の位置情報と、第2の情報群に含まれる各第2の位置情報とを比較する。そのうえで、判定部115は、各移動体(より詳しくは各移動体名称及び仮の名称)を(A)第1の情報群のみに含まれる移動体のグループ、(B)第2の情報群のみに含まれる移動体のグループ、及び(C)第1の情報群及び第2の情報群の両方に含まれる移動体のうち予め定められた条件を満たす移動体のグループ、のうち少なくとも何れか1つのグループに含まれる各移動体をリスクが高い移動体であると判定する。
【0056】
判定部115は、各第1の位置情報と、各第2の位置情報とを比較するときに、第1の位置情報と第2の位置情報とが完全に一致している場合に加えて、第1の位置情報と第2の位置情報との差(換言すれば第1の位置と第2の位置との距離)が予め定められた範囲に含まれる場合に、第1の位置情報と第2の位置情報とが一致していると見做すように構成されていてもよい。
【0057】
また、第2の位置情報が第1の位置情報と一致していると見做した場合、第2の位置情報に対応する仮の名称を、その第2の位置情報と一致している第1の位置情報に対応する移動体名称に書き換えてもよい。
【0058】
また、判定部115は、グループ分けすることによってリスクを評価した結果をマップ作成部114に提供するように構成されている。マップ作成部114は、グループ分けの結果に基づいて、(A)、(B)、及び(C)のグループに含まれる移動体を他の移動体から区別した第3のマップ(図3の(d)参照)を作成する。
【0059】
図3の(d)に示した第3のマップでは、(A)のグループの移動体を太線で示し、(B)のグループの移動体を黒塗りで示し、(C)のグループの移動体に交差する2本の線を付して示すことによって、各グループに含まれる移動体を他の移動体から区別している。
【0060】
なお、本実施形態においては、(C)のグループを規定する予め定められた条件として、以下の条件を採用している。これらの場合、判定部115は、第1の位置及び第1の速度ベクトルと、第2の位置及び第2の速度ベクトルとから、予め定められた時間後に各移動体が到達すると見込まれる位置である予想位置を算出するように構成されている。また、サーバ11の記憶装置には、事故に至る可能性が高い速度ベクトルの時間的な変化のパターンが記憶されている。
【0061】
条件1:該予想位置同士の間隔が予め定められた閾値間隔を下回る複数の移動体が存在する。
【0062】
条件2:第1の速度ベクトルの時間的な変化のパターン及び第2の速度ベクトルの時間的な変化のパターンを、記憶装置に記憶されている事故に至る可能性が高い上記パターンと比較し、上述した2つのパターンが該当している。
【0063】
条件3:第1の速度ベクトル及び第2の速度ベクトルのうち少なくとも何れか一方の時間的な変化が不規則である。
【0064】
条件4:第1の速度ベクトル及び第2の速度ベクトルのうち少なくとも何れか一方の時間的な変化のパターンが、第1の速度ベクトルの履歴及び第2の速度ベクトルの履歴の何れの部分とも異なっている。
【0065】
条件1によれば、互いに衝突する可能性が高いと見做せる移動体同士をリスクが高い移動体であると判定することができる。条件2によれば、事故に至る可能性が高いと考える移動体をリスクが高い移動体であると判定することができる。条件3によれば、動きが不規則な移動体をリスクが高い移動体であると判定することができる。条件4によれば、履歴に含まれていないような未知の動きをしている移動体をリスクが高い移動体であると判定することができる。
【0066】
本実施形態において、ボール遊びをしている歩行者12f,12gは、第1の情報群及び第2の情報群の両方に含まれる移動体であって、第1の速度ベクトル及び第2の速度ベクトルの時間的な変化が不規則な移動体である。すなわち、歩行者12f,12gは、条件3を満たす移動体である。したがって、判定部115は、歩行者12f,12gを(C)のグループに分類し、リスクが高い移動体であると判定する。
【0067】
なお、条件2は、事故に至る可能性が高いと考える移動体をリスクが高い移動体であると判定するための条件である。この条件2の代わりに、「第1の速度ベクトルの時間的な変化のパターン及び上記第2の速度ベクトルの時間的な変化のパターンを、上記事故に至る可能性が低い上記パターンと比較し、逸脱している」という条件を採用することもできる。この条件を採用した場合、事故に至る可能性が低いと考えられる移動体以外の移動体をリスクが高い移動体であると判定することができる。
【0068】
また、第1の情報群及び第2の情報群の各々が、それぞれ、第1の速度ベクトル情報及び第2の速度ベクトル情報の代わりに第1の速度情報及び第2の速度情報を含んでいる場合、「第1の速度及び第2の速度のうち少なくとも何れか一方が予め定められた閾値速度を上回る場合」という条件を採用することもできる。この条件を採用した場合、速度が閾値速度を上回る移動体をリスクが高い移動体であると判定することができる。なお、第1の速度情報及び第2の速度情報の代わりに第1の速度ベクトル情報及び第2の速度ベクトル情報を用いても、各ベクトルの絶対値を算出することによって、同様の判定を行うことができる。
【0069】
(表示制御部116)
表示制御部116は、マップ作成部114が作成した第3のマップを、画面に表示させる。表示制御部116が第3のマップを表示させる画面は、サーバが備えている出力装置930の一態様として備えている画面であってもよいし、各歩行者が所持しているスマートフォンが備えている画面であってもよいし、各車両131~133が備えている画面であってもよい。
【0070】
(通知部117)
通知部117は、通信インターフェースを介して、次の(1),(2)の処理のうち少なくとも何れか一方を行う。
(1)リスクが高いと判定した移動体のうち受信部を有している各移動体に対してその旨を通知する。
(2)リスクが高いと判定した移動体の周囲に位置する各移動体のうち、受信部を有している各移動体に対して、その周囲にリスクが高いと判定された移動体が存在する旨を通知する。
【0071】
(報知部118)
報知部118は、通信インターフェースを介して、リスクが高いと判定した移動体の周囲に配置された1又は複数の報知器14i、又は、リスクが高いと判定した1又は複数の移動体の進行方向に配置された1又は複数の報知器14iを動作させる。
【0072】
<評価方法M1>
図4に示すように、サーバ11が実行する評価方法M1は、取得工程S11と、第1作成工程S12と、第2作成工程S13と、マップ作成工程S14と、判定工程S15と、表示制御工程S16と、通知工程S17と、報知工程S18とを含む。また、第2作成工程S13は、位置情報抽出工程S131を含む。
【0073】
評価方法M1が含むこれらの各工程は、それぞれ、サーバ11が備えている各機能ブロックが実行する処理に対応する。例えば、取得工程S11は、取得部111が実行する処理である。同様に、第1作成工程S12~報知工程S18の各々は、それぞれ、第1作成部112~報知部118が実行する処理である。これらの各処理については、サーバ11の項にて説明済であるため、ここでは、その説明を省略する。
【0074】
<サーバ11及び評価システム1の効果>
サーバ11は、シェアードスペースSSを移動する複数の移動体(歩行者群12及び電磁連結車両13)の各々の位置を示す第1の位置情報を、各移動体から無線通信網10を介して取得して、第1の情報群を作成する第1作成部112と、複数の移動体の各々を検知した情報(本実施形態ではシェアードスペースSSの画像を表す画像情報)を取得し、該情報に基づいて、複数の移動体の各々の位置を示す第2の位置情報を生成して、第2の情報群を作成する第2作成部113と、(A)第1の情報群のみに含まれる移動体のグループ、(B)第2の情報群のみに含まれる移動体のグループ、及び(C)第1の情報群及び第2の情報群の両方に含まれる移動体のうち予め定められた条件を満たす移動体のグループ、のうち少なくとも何れか1つのグループに含まれる各移動体をリスクが高い移動体であると判定する判定部115と、を備えている。
【0075】
(A)のグループは、通信を介して取得した第1の位置情報に基づきその位置を特定した移動体のグループである。換言すれば、カメラCが撮像した画像からはその位置を特定できなかった移動体のグループであるため、その位置に誤差が含まれる場合が多いと考えられる。
【0076】
(B)のグループは、カメラCが撮像した画像に基づきその位置を特定した移動体のグループである。換言すれば、画像には捉えられているにも関わらず、サーバ11との間に通信を確立することができない移動体のグループであり、リスク回避のためのネゴシエーションを行えない移動体のグループである。
【0077】
(C)のグループは、予め定められた条件(速度が異様に高いなど)を満たす移動体のグループである。
【0078】
以上のように、(A)、(B)、及び(C)のグループは、リスクが高い移動体のグループである。したがって、このように構成されたサーバ11は、シェアードスペースにおける移動体(換言すれば交通参加者)のリスクを評価することができる。
【0079】
また、サーバ11において、第1の情報群は、第1の位置情報が示す位置である第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度である第1の速度を示す第1の速度情報を含み、第2の情報群は、第2の位置情報が示す位置である第2の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度である第2の速度を示す第2の速度情報を含み、判定部115は、第1の速度及び上記第2の速度のうち少なくとも何れか一方が予め定められた閾値速度を上回る移動体をリスクが高い移動体であると判定する、ことが好ましい。
【0080】
このように構成されたサーバ11は、速度が閾値速度を上回る移動体をリスクが高い移動体であると判定することができる。
【0081】
また、サーバ11において、第1の情報群は、第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第1の速度ベクトルを示す第1の速度ベクトル情報を含み、第2の情報群は、第2の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第2の速度ベクトルを示す第2の速度ベクトル情報を含み、判定部115は、第1の位置及び第1の速度ベクトルと、第2の位置及び第2の速度ベクトルとから、予め定められた時間後に各移動体が到達すると見込まれる位置である予想位置を算出し、該予想位置同士の間隔が予め定められた閾値間隔を下回る移動体同士をリスクが高い移動体同士であると判定する、ことが好ましい。
【0082】
この構成によれば、互いに衝突する可能性が高いと見做せる移動体同士をリスクが高い移動体であると判定することができる。
【0083】
また、サーバ11において、判定部115は、第1の速度ベクトル及び第2の速度ベクトルのうち少なくとも何れか一方の時間的な変化が不規則である移動体をリスクが高い移動体であると判定する、ことが好ましい。
【0084】
このように構成されたサーバ11は、動きが不規則な移動体をリスクが高い移動体であると判定することができる。
【0085】
また、サーバ11は、事故に至る可能性が高い速度ベクトルの時間的な変化のパターンを記憶した記憶装置を更に備え、第1の情報群は、第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第1の速度ベクトルを示す第1の速度ベクトル情報を含み、第2の情報群は、第2の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第2の速度ベクトルを示す第2の速度ベクトル情報を含み、判定部115は、第1の速度ベクトルの時間的な変化のパターン及び第2の速度ベクトルの時間的な変化のパターンを、上記事故に至る可能性が高い上記パターンと比較し、該当している移動体をリスクが高い移動体であると判定する、ことが好ましい。
【0086】
このように構成されたサーバ11は、事故に至る可能性が高いと考える移動体をリスクが高い移動体であると判定することができる。
【0087】
また、サーバ11は、事故に至る可能性が低い速度ベクトルの時間的な変化のパターンを記憶した記憶装置を更に備え、第1の情報群は、第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第1の速度ベクトルを示す第1の速度ベクトル情報を含み、第2の情報群は、第2の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第2の速度ベクトルを示す第2の速度ベクトル情報を含み、判定部115は、第1の速度ベクトルの時間的な変化のパターン及び第2の速度ベクトルの時間的な変化のパターンを、事故に至る可能性が低い上記パターンと比較し、逸脱している移動体をリスクが高い移動体であると判定する、ことが好ましい。
【0088】
このように構成されたサーバ11は、事故に至る可能性が低いと考えられる移動体以外の移動体をリスクが高い移動体であると判定することができる。
【0089】
また、サーバ11において、記憶装置は、第1の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第1の速度ベクトルの履歴と、第2の位置の時間変化から得られた、各移動体の速度ベクトルである第2の速度ベクトルの履歴とを更に記憶し、判定部115は、第1の速度ベクトル及び第2の速度ベクトルのうち少なくとも何れか一方の時間的な変化のパターンが、第1の速度ベクトルの履歴及び第2の速度ベクトルの履歴の何れの部分とも異なっている移動体をリスクが高い移動体であると判定する、ことが好ましい。
【0090】
このように構成されたサーバ11は、履歴に含まれていないような未知の動きをしている移動体をリスクが高い移動体であると判定することができる。
【0091】
また、サーバ11は、第1の情報群に第1の位置情報が含まれている各移動体の位置である第1の位置をシェアードスペースSSのマップ上にマッピングした第1のマップと、第2の情報群に第2の位置情報が含まれている各移動体の位置である第2の位置をシェアードスペースSSのマップ上にマッピングした第2のマップと、判定部115によりリスクが高い移動体であると判定された移動体を、他の移動体から区別した状態で上記シェアードスペースのマップ上にマッピングした第3のマップを作成するマップ作成部114と、第3のマップを画面に表示させる表示制御部116と、を更に備えている、ことが好ましい。
【0092】
このように構成されたサーバ11は、第3のマップを画面に表示させることができる。したがって、第3のマップをみたユーザ(換言すれば交通参加者)は、リスクが高いと判定された移動体を容易に識別することができる。
【0093】
また、評価システム1は、サーバ11と、サーバ11とネットワーク接続され、シェアードスペースSSの画像を撮像する1又は複数のカメラCと、を備えていることが好ましい。この評価システム1において、サーバ11は、上記1又は複数のカメラCから画像を取得する取得部111と、画像に含まれる各移動体の位置を示す位置情報を第2の位置情報として抽出する位置情報抽出部1131と、を更に備えている、ことが好ましい。
【0094】
このように構成された評価システム1は、カメラCが撮像したシェアードスペースSSの画像から、各移動体の第2の位置情報を作成することができる。
【0095】
また、評価システム1は、サーバ11と、それぞれが近接センサを備えている複数の車両131~133であって、複数の移動体の一部を構成する複数の車両131~133と、を備えていてもよい。この場合、車両131~133の各々は、(1)自身の位置である第3の位置を示す第3の位置情報と、(2)近接センサにより検出された、自身の周囲に存在する1又は複数の移動体の位置である第4の位置を示す第4の位置情報であって、第3の位置を基準として第4の位置の相対的な位置を示す第4の位置情報とを生成する。そのうえで、サーバ11は、上記複数の車両131~133の各々から、各車両131~133の上記第3の位置情報及び上記第4の位置情報を取得する取得部111を更に備えている。ここで、第2作成部113は、第3の位置情報及び第4の位置情報を集約することによって第2の情報群を作成する、ことが好ましい。
【0096】
この構成によれば、車両131~133の各々から取得した第3の位置情報及び第4の位置情報から各移動体の第2の位置情報を作成することができる。
【0097】
また、評価システム1は、サーバ11が、少なくとも、リスクが高いと判定した1又は複数の移動体のうち受信部を有している各移動体に対してその旨を通知する、又は、リスクが高いと判定した1又は複数の移動体の周囲に位置する各移動体のうち、受信部を有している各移動体に対して、その周囲にリスクが高いと判定された移動体が存在する旨を通知する通知部117を更に備えている、ことが好ましい。
【0098】
この構成によれば、リスクが高いと判定された移動体、及び、リスクが高いと判定された移動体の周囲に位置する各交通参加者の少なくとも何れかに、その移動体のリスクが高いことを知らせることができる。
【0099】
また、評価システム1は、シェアードスペースSSに配置された複数の報知器14iからなる報知器群14を更に備えていることが好ましい。この場合、サーバ11は、リスクが高いと判定した1又は複数の移動体の周囲に配置された1又は複数の報知器14i、又は、リスクが高いと判定した1又は複数の移動体の進行方向に配置された1又は複数の報知器14iを動作させる報知部118を更に備えている、ことが好ましい。
【0100】
この構成によれば、リスクが高いと判定された移動体の周囲に位置する各交通参加者に当該移動体のリスクが高いことを知らせることができる。そのため、各交通参加者にリスクを回避する行動を促すこができる。
【0101】
なお、図4に示した評価方法M1であって、図2に示したサーバ11に対応する評価方法M1は、サーバ11と同様の効果を奏する。
【0102】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係るシミュレータ2について、図5を参照して説明する。図5は、シミュレータ2を示す模式図である。
【0103】
なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0104】
<シミュレータ2>
(概要)
本発明の一実施形態に係るシミュレータは、シェアードスペースSSの風景と、シェアードスペースSS内を移動する移動体とを仮想的に再現するものである。このシミュレータは、表示装置とサーバとを備えている。
【0105】
サーバは、シェアードスペースを移動する複数の移動体の各々の位置を示す第1の位置情報を、各移動体から通信を介して取得して、第1の情報群を作成する第1作成部と、上記複数の移動体の各々を検知した情報を取得し、該情報に基づいて、上記複数の移動体の各々の位置を示す第2の位置情報を生成して、第2の情報群を作成する第2作成部と、上記第1の情報群及び上記第2の情報群の履歴に基づき、上記第1の情報群に上記第1の位置情報が含まれる各移動体、及び、上記第2の情報群に上記第2の位置情報が含まれる各移動体を表示するように上記表示装置を制御する表示装置制御部と、を含んでいる。
【0106】
以下では、図5に示すように、表示装置であるシェアードスペースに対応する空間の少なくとも側方を取り囲むスクリーン22と、スクリーン22に画像を投影するプロジェクタ群Pとを含み、シェアードスペースに対応する空間内に被験者SUBが入ることによって、より高い臨場感とともに体感することができる、大規模没入型のシミュレータ2について説明する。
【0107】
なお、本発明の一実施形態に係るシミュレータは、没入型のシミュレータ2に限定されるものではなく、ヘッドマウントディスプレイを表示装置として備えたシミュレータであってもよいし、ドライブシミュレータ又はフライトシミュレータのように、被験者を取り囲むように配置された複数の表示パネル(例えば液晶パネル)を表示装置として備えたシミュレータであってもよい。
【0108】
(構成)
図5に示すように、本実施形態のシミュレータ2は、サーバ21と、スクリーン22と、4つのプロジェクタP1~P4からなるプロジェクタ群Pとを備えている。また、シミュレータ2は、両眼視差立体視を実現するための眼鏡であって、スクリーン22により取り囲まれた空間に入る被験者SUBが用いる眼鏡を更に備えている。この眼鏡は、図5には図示していない。
【0109】
サーバ21は、図2に示したサーバ11に対して、表示装置制御部211を加えることにより得られる。すなわち、サーバ21は、サーバ11と同様に記憶装置を備えている。なお、図5には、サーバ21が備えている各機能ブロックのうち、第1作成部112、第2作成部113、及び表示装置制御部211のみを図示している。
【0110】
本実施形態において、記憶装置には、第1の情報群の履歴及び第2の情報群の履歴が記憶されている。
【0111】
なお、スクリーン22及びプロジェクタ群Pとして採用することができる表示装置に関する説明の詳細は、「大規模没入ディスプレイLarge Spaceの開発」、高鳥光、圓崎祐貴、矢野博明、岩田洋夫、TVRSJ, Vol. 21, No.3, pp.493-502, 2016にも記載されている。
【0112】
(スクリーン22)
スクリーン22は、4つのサブスクリーン221~224により構成されている。サブスクリーン221~224の各々は、仮想的にシェアードスペースSSを再現しようとする空間の側方を取り囲むように、該空間の床面の形状が長方形になるように配置されている。
【0113】
なお、スクリーン22は、4つのサブスクリーン221~224に加えて、上記空間の床面部分を覆うサブスクリーン及び上記空間の天井部分を覆うサブスクリーン(図5には不図示)を更に備えていてもよい。
【0114】
スクリーン22が取り囲む上記空間の大きさは、プロジェクタ群Pによって投影される画像を映すことができる大きさであれば特に限定されない。ただし、没入型のシミュレータである場合には、スクリーン22は、被験者SUBを収容可能な大きさであることが好ましい。また、シミュレータ2が再現する移動体と、車両の乗った状態の被験者SUBとの相互作用を解析する場合には、スクリーン22は、その車両を収容可能な大きさであることが好ましい。
【0115】
本実施形態において、スクリーン22は、幅25m、奥行き15m、高さ8mの空間の側方を取り囲むように配置されている。この構成によれば、被験者SUBは、スクリーン22が取り囲む空間内を歩くことができるし、車両に乗った状態で該空間内を移動することもできる。
【0116】
(プロジェクタ群P)
プロジェクタ群Pは、4つのプロジェクタP1~P4により構成されている。本実施形態において、プロジェクタP1は、サブスクリーン221の上端辺の中点近傍に配置されており、サブスクリーン221に対向するサブスクリーン223に画像を投影する。
【0117】
同様に、プロジェクタP2~P4の各々は、それぞれ、各サブスクリーン222,223,224の上端辺の中点近傍に配置されており、各サブスクリーン222,223,224に対向する各サブスクリーン224,221,222に画像を投影する。
【0118】
以上のように、本実施形態では、前面投射方式のプロジェクタ群P及びスクリーン22を採用している。しかし、プロジェクタ群P及びスクリーン22は、前面投射方式の代わりに背面投射方式を採用することもできる。何れの方式を採用するかは、スクリーン22が取り囲む空間及びスクリーン22の周囲に存在する空間の大きさや、スクリーン22の材質などに応じて、適宜選択することができる。
【0119】
(表示装置制御部211)
表示装置制御部211は、第1の実施形態において説明した第1の情報群及び第2の情報群の履歴であって、記憶装置に記憶されている履歴に基づき、第1の情報群に第1の位置情報が含まれる各移動体、及び、第2の情報群に第2の位置情報が含まれる各移動体を、スクリーン22に投影するようにプロジェクタ群Pを制御する。
【0120】
また、表示装置制御部211は、各プロジェクタP1~P4に供給する画像情報として、各プロジェクタP1~P4がスクリーン22に投影する各移動体の両眼視差立体視を実現する画像情報であることが好ましい。両眼視差立体視を実現するための代表的な方式としては、偏光眼鏡方式及びアクティブシャッタ眼鏡方式挙げられるが、それ以外の方式を採用することもできる。
【0121】
<シミュレータ2の効果>
シミュレータ2は、シェアードスペースSSを仮想的に再現する、表示装置(プロジェクタ群P及びスクリーン22)及びサーバ21を備えたシミュレータである。
【0122】
サーバ21は、シェアードスペースSSを移動する複数の移動体の各々の位置を示す第1の位置情報を、各移動体から通信を介して取得して、第1の情報群を作成する第1作成部112と、複数の移動体の各々を検知した情報を取得し、該情報に基づいて、上記複数の移動体の各々の位置を示す第2の位置情報を生成して、第2の情報群を作成する第2作成部113と、第1の情報群及び第2の情報群の履歴に基づき、第1の情報群に第1の位置情報が含まれる各移動体、及び、第2の情報群に第2の位置情報が含まれる各移動体を表示するように表示装置を制御する表示装置制御部211と、を含んでいる。
【0123】
このように構成されたシミュレータ2が再現する仮想的なシェアードスペースSSを被験者SUBが体験することによって、被験者SUBは、過去の履歴に基づいて移動する移動体を体感することができる。その結果、被験者SUBは、例えばシミュレータ2が再現した移動体が自身に迫ってきた場合に、実在のシェアードスペースSS内を移動している場合と同様の反応を示す。したがって、シミュレータ2が再現する移動体と、被験者SUBとの相互作用(例えば、被験者SUBの反応及びその反応後の結果)を解析することによって、移動体のリスクを評価することができる。
【0124】
また、シミュレータ2において、表示装置制御部211が表示装置に供給する画像情報は、表示装置制御部211が表示する各移動体の両眼視差立体視を実現する画像情報である、ことが好ましい。
【0125】
このように構成されたシミュレータ2は、被験者SUBが見た場合に3次元的に見える移動体を表示することができるため、被験者SUBが体感する臨場感をより高めることができる。
【0126】
また、シミュレータ2において、表示装置は、シェアードスペースSSに対応する空間の少なくとも側方を取り囲むスクリーン22と、スクリーン22に画像を投影する複数のプロジェクタP1~P4とを含むことが好ましい。
【0127】
このように構成されたシミュレータ2は、スクリーン22が取り囲む空間内に被験者SUBが入ることによって、没入型のシミュレータとして機能する。したがって、このシミュレータ2は、被験者SUBが体感する臨場感を更に高めることができる。
【0128】
〔ソフトウェアによる実現例〕
評価システム1が備えているサーバ11及びシミュレータ2が備えているサーバ21の各ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、サーバ11,21を、図6に示すようなコンピュータ(電子計算機)を用いて構成することができる。
【0129】
図6は、サーバ11,21として利用可能なコンピュータ910の構成を例示したブロック図である。コンピュータ910は、バス911を介して互いに接続された演算装置912と、主記憶装置913と、補助記憶装置914と、入出力インターフェース915とを備えている。演算装置912、主記憶装置913、および補助記憶装置914は、それぞれ、例えばCPU、RAM(random access memory)、ハードディスクドライブであってもよい。入出力インターフェース915には、ユーザがコンピュータ910に各種情報を入力するための入力装置920、および、コンピュータ910がユーザに各種情報を出力するための出力装置930が接続される。入力装置920および出力装置930は、コンピュータ910に内蔵されたものであってもよいし、コンピュータ910に接続された(外付けされた)ものであってもよい。例えば、入力装置920は、キーボード、マウス、タッチセンサなどであってもよく、出力装置930は、ディスプレイ、プリンタ、スピーカなどであってもよい。また、タッチセンサとディスプレイとが一体化されたタッチパネルのような、入力装置920および出力装置930の双方の機能を有する装置を適用してもよい。そして、通信インターフェース916は、コンピュータ910が外部の装置と通信するためのインターフェースである。
【0130】
補助記憶装置914には、コンピュータ910をサーバ11,21として動作させるための各種プログラムが格納されている。そして、演算装置912は、補助記憶装置914に格納された上記各プログラムを主記憶装置913上に展開して該プログラムに含まれる命令を実行することによって、コンピュータ910を、サーバ11,21が備える各部として機能させる。なお、補助記憶装置914がプログラム等の情報の記録に用いる記録媒体は、コンピュータ読み取り可能な「一時的でない有形の媒体」であればよく、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブル論理回路などであってもよい。
【0131】
また、コンピュータ910の外部の記録媒体に記録されているプログラム、あるいは任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介してコンピュータ910に供給されたプログラムを用いてコンピュータ910を機能させる構成を採用してもよい。そして、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0132】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0133】
SS シェアードスペース
1 評価システム
C カメラ
10 無線通信網
11 サーバ
111 取得部
112 第1作成部
113 第2作成部
1131 位置情報抽出部
114 マップ作成部
115 判定部
116 表示制御部
117 通知部
118 報知部
12 歩行者群
12a~12m 歩行者
13 電磁連結車両
131~133 車両
14 報知器群
141,142,…,14i,…,14n 報知器
2 シミュレータ
21 サーバ
211 表示装置制御部
22 スクリーン
P プロジェクタ群
P1~P4 プロジェクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6