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特許7164179水素ガス生成用混合物カートリッジおよび水素ガス吸引具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】水素ガス生成用混合物カートリッジおよび水素ガス吸引具
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20221025BHJP
   A61M 15/06 20060101ALI20221025BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M15/06 A
C01B3/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018247338
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020103745
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】510281874
【氏名又は名称】株式会社環境技研
(74)【代理人】
【識別番号】100158665
【弁理士】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝義
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143770(JP,A)
【文献】実開昭59-061037(JP,U)
【文献】登録実用新案第3140984(JP,U)
【文献】欧州特許出願公開第01927807(EP,A1)
【文献】特開2009-279241(JP,A)
【文献】特開2018-019908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61M 15/06
C01B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端と後端が閉じられ、内部にマグネシウム粉粒体、クエン酸粉粒体および粉末セルロースからなる水素ガス生成用混合物を入れた筒状不織布を水素ガス生成体とし、該水素ガス生成体の前後に、保水材、吸水材をそれぞれ配置して、保水材、水素ガス生成体および吸水材を、先端開口部内縁に折り曲げ部が形成され、かつ先端部の筒部に複数の軸方向に伸びる細長い切り欠きが形成された合成樹脂製の筒状ケースに収納して詰めてなる水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジであって、該切り欠きは該カートリッジに詰め込まれた保水材の長さと同程度であることを特徴とする水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジ。
【請求項2】
前記筒状ケースの後端部に、外径が大きくなる膨らみを形成するとともに複数の細長の切り欠きを形成したことを特徴とする、請求項1に記載の水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジ。
【請求項3】
前記吸水材の先端に気体は通過するが液体は通過しないフルターを取り付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジ。
【請求項4】
前記筒状ケースの外表面に示温材テープを貼付したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジ。
【請求項5】
前記保水材もしくは吸水材に芳香剤を添加したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジ。
【請求項6】
ホルダーとキャップと水素ガス生成用混合物カートリッジとからなる水素ガス吸引具であって、
ホルダーは、一方の端部に水素ガス生成用混合物カートリッジの挿入口を設けるとともに他方の端部に吸引口を設け、
キャップは、有底の筒状材からなり、開口側寄りの筒部に空気流入用孔が形成され、
キャップとホルダーは、キャップがホルダーに装着されて、ホルダーに挿入される水素ガス生成用混合物カートリッジを包囲することができ
水素ガス生成用混合物カートリッジが請求項1乃至5のいずれか一項に記載の水素ガス生成用混合物カートリッジであることを特徴とする水素ガス吸引具。
【請求項7】
前記キャップの筒部の周囲には、マークが形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の水素ガス吸引具。
【請求項8】
前記キャップは透明の部位と不透明の部位からなり、透明の部位からホルダーに挿入された水素ガス生成用混合物カートリッジを観察できることを特徴とする請求項6又は7に記載の水素ガス吸引具。
【請求項9】
前記ホルダーの、挿入される水素ガス生成用混合物カートリッジの後端よりも吸引口寄りの部位に、気体は通過するが液体は通過しないフルターを取り付けたことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の水素ガス吸引具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス生成用混合物カートリッジおよび水素ガス吸引具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素ガスを体内に取り込むことにより、健康の維持、向上を図ることが注目されている。
水素ガスを体内に取り込む手段として、容器にマグネシウム粉末と低温で焼結可能な粘土やセラミック素材を混合して成形した水素発生用錠剤を入れ、次いでクエン酸水溶液を加え、発生した水素ガスを吸引するものが知られているが、容器が大きくなるため、タバコの喫煙具のように携行して、手軽に利用できるものではなかった。
【0003】
上記のような水素ガス生成器に対して、小型で携行できるようにした水素ガス吸引具の発明が特許文献1に記載されている。これは先端と後端が閉じられ、内部にマグネシウム粉粒体、クエン酸粉粒体および粉末セルロースからなる水素ガス生成用混合物を入れた筒状不織布を水素ガス生成体とし、該水素ガス生成体を筒状ケースに収納し、筒状ケースの先端部に保水材を、後端部に吸水材をそれぞれ詰めてなる水素ガス生成用混合物カートリッジを吸引具のホルダーに装着して、水素ガスを吸引するものである。
【0004】
この特許文献1に記載された水素ガス吸引具は、水素ガス生成体が収納されたカートリッジの先端部を容器やコップなどに蓄えられた水に数秒間浸して引き上げると、カートリッジの先端部に詰められた保水材に水が保水される。そして、この保水された水が粉末セルロースの吸水効果により、水素ガス生成体1の内部に浸透して、マグネシウムとクエン酸が反応し水素ガスが発生する。
発生した水素ガスをホルダーの吸引口から吸引しはじめると、カートリッジ先端部の保水材から水が水素ガス生成体1に補給され、反応が継続して水素ガスが発生し続ける。
【0005】
この発明で使用されている水素ガス生成用混合物カートリッジは、保水材への水の浸透などに改良の余地があった。また、この発明の水素ガス吸引具は、キャップがないため、携行に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-143770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような事情に鑑みて、保水材への水の浸透を改良した水素ガス生成用混合物カートリッジおよび携行するのに好適な水素ガス吸引具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
[1]先端と後端が閉じられ、内部にマグネシウム粉粒体、クエン酸粉粒体および粉末セルロースからなる水素ガス生成用混合物を入れた筒状不織布を水素ガス生成体とし、該水素ガス生成体の前後に、保水材、吸水材をそれぞれ配置して、保水材、水素ガス生成体および吸水材を、先端開口部内縁に折り曲げ部が形成され、かつ先端部の筒部に複数の軸方向に伸びる細長い切り欠きが形成された合成樹脂製の筒状ケースに収納して詰めてなる水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジであって、該切り欠きは該カートリッジに詰め込まれた保水材の長さと同程度であることを特徴とする水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジ。
[2]前記筒状ケースの後端部に、外径が大きくなる膨らみを形成するとともに複数の細長の切り欠きを形成したことを特徴とする、[1]に記載の水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジ。
[3]前記吸水材の先端に気体は通過するが液体は通過しないフルターを取り付けたことを特徴とする[1]又は[2]に記載の水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジ。
[4]前記筒状ケースの外表面に示温材テープを貼付したことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジ。
[5]前記保水材もしくは吸水材に芳香剤を添加したことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の水素ガス吸引具用の水素ガス生成用混合物カートリッジ。
[6]ホルダーとキャップと水素ガス生成用混合物カートリッジとからなる水素ガス吸引具であって、ホルダーは、一方の端部に水素ガス生成用混合物カートリッジの挿入口を設けるとともに他方の端部に吸引口を設け、キャップは、有底の筒状材からなり、開口側寄りの筒部に空気流入用孔が形成され、キャップとホルダーは、キャップがホルダーに装着されて、ホルダーに挿入される水素ガス生成用混合物カートリッジを包囲することができ、水素ガス生成用混合物カートリッジが[1]乃至[5]のいずれかに記載の水素ガス生成用混合物カートリッジであることを特徴とする水素ガス吸引具。
[7]前記キャップの筒部の周囲には、マークが形成されていることを特徴とする、[6]に記載の水素ガス吸引具。
[8]前記キャップは透明の部位と不透明の部位からなり、透明の部位からホルダーに挿入された水素ガス生成用混合物カートリッジを観察できることを特徴とする[6]又は[7]に記載の水素ガス吸引具。
[9]前記ホルダーの、挿入される水素ガス生成用混合物カートリッジの後端よりも吸引口寄りの部位に、気体は通過するが液体は通過しないフルターを取り付けたことを特徴とする[6]乃至[8]のいずれかに記載の水素ガス吸引具。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水素ガス生成用混合物カートリッジは、筒状ケースの先端開口の内縁に折り曲げ部を形成し、先端部に切り欠きを形成しているから、筒状ケースに保水材、水素ガス生成用混合物および吸水材の詰め込み作業が容易であるとともに、一定量の水を速やかに保水することができる。また、本発明の水素ガス吸引具は、キャップを備えているから、水素ガス生成用混合物カートリッジを収納した状態で携行することができる。そして、キャップに空気流入用の孔を設けているので、キャップをホルダーに装着した状態で水素ガスを吸引することができ、吸引後あるいは吸引途中に、衣服のポケットやハンドバッグなどに入れて携行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】水素ガス生成用混合物カートリッジの斜視図を示す。
図2】水素ガス生成用混合物カートリッジの断面を示す。
図3】水素ガス生成体を示す。
図4】フィルターを有する水素ガス生成用混合物カートリッジの断面を示す。
図5】示温材テープが貼付された水素ガス生成用混合物カートリッジの斜視図を示す。
図6】水素ガス生成用混合物カートリッジが挿入されたホルダーを示す。
図7】水素ガス生成用混合物カートリッジが収納された水素ガス吸引具を示す。
図8】水素ガス吸引具の外観を示す。
図9】段付き部まで水が注がれたキャップを示す。
図10】ホルダーにフィルターが取り付けられた水素ガス吸引具を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水素ガス生成用混合物カートリッジおよび水素ガス吸引具の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2に、水素ガス生成用混合物カートリッジ1の斜視図および断面図をそれぞれ示す。以下、水素ガス生成用混合物カートリッジを単に「カートリッジ」という。
カートリッジ1は、合成樹脂製の筒状ケース2に、水素ガス生成体3の前後に、保水材4、吸水材5をそれぞれ配置して、保水材4、水素ガス生成体3および吸水材5を詰めたものである。
【0012】
水素ガス生成体3は、マグネシウム粉粒体、クエン酸粉粒体および粉末セルロースの混合物を筒状不織布31に詰めたものである。なお、マグネシウムとクエン酸のみでは水素は発生せず、水の存在があってクエン酸とマグネシウムが化学反応し、水素ガスが発生する。
【0013】
マグネシウム粉粒体、クエン酸粉粒体および粉末セルロースの混合物が詰められた筒状不織布31の先端、後端32は、ヒートシールすることなどにより閉じられている。不織布としては、例えば、お茶パックなどに使用される食品用不織布を使用することができる。水素ガス生成体3のヒートシールされた先端と後端の部分は折り曲げて筒状ケース2に収納されている。
なお、ここで「粉粒体」とは、粉粒体を構成する粒子が粉(こな)状の粒子や粒径が1mm程度以下の粒状の粒子を含むものを意味している。
なお、ここで粉末セルロースとは、植物体の細胞膜の主成分であるセルロースを粉末にしたものであり、セルロースエーテルなどのセルロースの誘導体を含むものではない。
【0014】
マグネシウム粉粒体、クエン酸粉粒体および粉末セルロースの混合物は、混合物の素材が分離しないようにすることが化学反応を継続させ、より安定して効率よく水素ガスを発生させることができるので、マグネシウム粉粒体とクエン酸粉粒体および粉末セルロースからなる3種の素材の混合物を団粒化したものを使用することが望ましい。団粒化する手段は特許文献1に詳細に記載されている。
【0015】
カートリッジ1の先端部を水に漬けると、保水材4にマグネシウムとクエン酸の反応に必要な水が保水される。保水された水が水素ガス生成体3に浸透すると、マグネシウムとクエン酸が反応して水素ガスが発生する。水素ガス生成体3には吸水性の粉末セルロースが存在するので、水は徐々に水素ガス生成体3に浸透する。
保水材4には、スポンジのような材料が使用できる。例えば、メラミンフォームやウレタンフォームのスポンジが使用できるが、これらのものに限るものではない。
【0016】
筒状ケース2の後端部に詰められた吸水材5は、後述するホルダー8の吸引口83から生成される水素ガスを強く吸引した際に、水素ガス生成体3に浸透した水がクエン酸水溶液となって水素ガス生成体3から漏れ出た場合に、このクエン酸水溶液を吸収、保持して筒状ケース2の後端から後述するホルダー8の吸引口83に漏れることを防止するためのものである(図7参照)。こうすることで、クエン酸水溶液が口腔内に入らないようにしている。
吸水材5には、保水材4と同様に、スポンジのような材料、例えば、メラミンフォームやウレタンフォームのスポンジが使用できるが、これらのものに限るものではない。
【0017】
さらに、図4に示すように、気体は通過できるが液体は通過できないフィルター6を吸水材5の先端に貼り付けることにより挿入し、クエン酸水溶液が口腔内に入らないようにより確実に防止することができる。このようなフィルターは市販されている。
気体は通過できるが液体は通過できないフィルター6は、後述するように、水素ガス吸引具のホルダーに取り付けてもよい。
【0018】
図2から分かるように、保水材4と水素ガス生成体3の間に隙間ができると、保水材4に保水された水が水素ガス生成体3に供給できなくなるから、保水材4と水素ガス生成体3の先端面とが接触し、かつ水素ガス生成体3の後端面と吸水材5やフィルター6とが接触した状態を維持できるようにする必要がある。保水材4および吸水材5に弾性がある場合は、やや圧縮された状態で詰めるのが望ましい。
【0019】
カートリッジ1の筒状ケース2は、先端部に、軸方向に延びる細長い切り欠き21を形成する。こうすることで、カートリッジ1の先端部を水に浸したときに、筒状ケース2の先端の開口のみならず、切り欠き21からも水が浸入して、保水材4に水素ガス生成に必要な水が速やかに浸透して保水することができる。切り欠き21の長さは、カートリッジ1に詰め込まれた保水材4の長さと同程度にすることが望ましい。
切り欠き21の長さを目安にしてカートリッジ1の先端部を水に浸して引き上げると、保水材の一定量の水を浸透させやすい。例えば、切り欠き21の長さを超えてカートリッジ1の先端部を水に浸して引き上げると過剰量の水が保水材に入りやすい。逆に、切り欠きの長さよりも短い範囲でカートリッジの先端部を浸すと過小量の水が保水材に入ることになりやすい。
【0020】
また、カートリッジ1の筒状ケース2は、図1図2に示すように、保水材4が詰められる先端部の開口内縁には折り曲げ部22を形成する。こうすると、筒状ケース2の後端部の開口から、保水材4、水素ガス生成体3および吸水材5を詰め込んだ場合、これらの詰め物が筒状ケース2の先端部から抜け落ちることを防ぐことができ、これらの詰め物を詰め込む作業が容易である。
また、筒状ケース2の先端部の開口外縁には、先端部の強度を補強するために、突部23を形成してもよい(図2参照)。
【0021】
また、図1図2に示すように、吸水材5が詰められる筒状ケース2の後端部の外周には外径が大きくなる膨らみ24を形成するとともに、軸方向に延びる細長い切り欠き25を形成することが望ましい。こうすることで、後述するホルダー8にカートリッジ1の後端部を挿入しやすくなり、また確実に装着することができる。切り欠き25の長さは、吸水材5の厚さと同程度かそれ以下とすることが望ましい。
【0022】
水素ガス生成体3から水素ガスが発生し出すと同時に反応熱と水蒸気が発生し、水素ガス生成体3の内部が80℃近くになり、筒状ケース2の表面温度は50℃前後に達する。
図5に示すように、筒状ケース2の外表面に温度の変化により色が変化するテープ状の示温材7を付着させておくと、上記の反応熱による温度上昇により示温材7の色が変化し、反応熱の発生を可視化することができる。こうすることにより、水素ガスが発生していることを間接的に知ることができる。
【0023】
また、この反応熱を利用して、メンソールなどの芳香剤を蒸散させることが可能である。例えば、予め保水材4や吸水材5に芳香剤を数滴たらして加えておくと、前者の場合は、保水材4に加えられた芳香剤が保水された水とともに水素ガス生成体3に移行し、水素ガス生成体3から発生する反応熱により芳香剤の揮発成分が気化し、後者の場合は、水素ガス生成体3から発生する反応熱により加熱された水素ガスと水蒸気の熱によって吸水材5に加えられた芳香剤の揮発成分が気化し、いずれの場合においても、水素ガス吸引時に、芳香剤の揮発成分が口腔や鼻腔に拡がり、気分や体調を良好にする効果が期待できる。
【0024】
次に水素ガス吸引具100を構成するホルダー8とキャップ9について説明する。
図6に示すように、カートリッジ1はホルダー8に装着される。
ホルダー8は、カートリッジ1が挿入される本体部81と本体部81に連続する吸引部82とを有している。吸引部82の端部には吸引口83が形成されている。
【0025】
ホルダー8の本体部81は、一方の端部にカートリッジ1の挿入口84を有し、カートリッジ1の後端部が装着できる空間が形成された円筒状の形状を有している部位である。したがって、カートリッジ1は先端部側が露出した状態でホルダー8に保持される。
ホルダー8の上記の空間の後端には段付き部85を形成して、カートリッジ1がこれ以上吸引部82の側に寄らないようにすることが望ましい。
【0026】
図6図8から分かるように、ホルダー8の吸引部82は、水素ガスを吸引するときに口にくわえる部位であり、内部には水素ガス生成体3から生成した水素ガスの通り道が形成されている。吸引部82は本体部81より細くなっている。
【0027】
キャップ9は、一方の端部が開口した有底の筒状体であり、コップ状の形状をしている。
キャップ9は、図7に示すように、開口している一方の端部がホルダー8に装着されて、ホルダー8とキャップ9とで、カートリッジ1が収納できる円筒状の空間が形成される。
図7に示すものでは、キャップ9の開口側の端部外周に雄ネジ溝が形成されるとともにホルダー8の開口側の端部内周に雌ネジ溝が形成されており、キャップ9とホルダー8は、それぞれの開口側で螺合して結合できるようになっている。キャップ9のホルダー8への装着の手段はこれに限るものではない。
【0028】
ホルダー8にカートリッジ1が保持された状態で、ホルダー8にキャップ9が装着されると、カートリッジ1のホルダー8から露出した部位がキャップ9の内部に収納される。このとき、カートリッジ1の先端面とキャップ9の底面との間にほとんど隙間がない状態にすると水素ガス吸引具100を小型化することができる。
【0029】
図7図9に示すように、キャップ9の開口側寄りの筒部には空気流入用孔91が形成されている。このことにより、キャップ9をホルダー8に装着した状態でカートリッジ1から生成する水素ガスを吸引することができる。水素ガスの吸引を途中で止めた時や完了した時には、そのままホルダー8にキャップ9を装着したまま、衣服のポケットやハンドバッグに、保水材4の水で汚すことなく収納することができる。また、キャップ9を装着しない状態でも、ホルダー8に装着されたカートリッジから生成する水素ガスを吸引することもできる。
【0030】
キャップ9の筒部の内面には、段付き部92を形成して、この段付き部92は水素ガス生成に必要な水のキャップ9への注水量の目安を示すマークとして利用することができる。例えば、図9に示すように、開口側を上にしてキャップ9を保持した状態でキャップ9内に段付き部92まで水面がくるまで水を入れて、カートリッジ1の先端部をキャップ9内の水に漬けると、保水材4にほぼ一定の水を保水させることができる。マークは段付き部に限るものではなく、また、マークをキャップの外面に形成してもよい。キャップの底面は平らにして、キャップをテーブルなどの面に立てて水を注いでもよい。
【0031】
マグネシウム粉粒体、クエン酸粉粒体および粉末セルロースを、質量比1:6~8:1の割合で混合して団粒化した水素ガス発生用混合物1gを筒状不織布に詰めた水素ガス生成体3の長さが約35mm、直径が約8mmの水素ガス生成体3を収納したカートリッジ1に対して水2ccを供給すると、マグネシウムとクエン酸がほとんど消費されて、10分間程度、水素ガスが吸引できる。
したがって、水素ガス生成物1gを収納したカートリッジを使用する場合、図9において、キャップ9に水2ccを入れたときの水面が位置する部位に段付き部92をマークとして形成すればよい。
【0032】
すでに記載したように、水素ガス生成体3から水素ガスが発生し出すと同時に反応熱と水蒸気が発生し、カートリッジ1の表面温度は50℃前後に達するので、カートリッジ1の構成部材である筒状ケース2の外表面に温度の変化により色が変化する示温材7を付着させておくと(図5参照)、上記の反応熱により示温材の色が変化し、反応熱の発生を可視化することができる。こうすることにより、水素が発生していることを間接的に知ることができる。そして、キャップ9全体を透明にするか、あるいはキャップ9には示温材7の位置に対応するキャップの部位または該部位の一部を透明にし、他の部位を不透明にすることで、示温材7の色の変化を観察できる覗き窓を形成するかすることにより、示温材7の色の変化を観察することができる。
【0033】
ホルダー8に挿入されたカートリッジ1の先端部を水に漬け、保水材4に水を保水させると、水素ガス生成体3に水が浸透してマグネシウムとクエン酸が反応して水素ガスが生成するので、生成する水素ガスをホルダー8の吸引口から水素ガスを吸引することができる。
【0034】
本発明の水素ガス吸引具100には、キャップ9が備わっているから、図7に示すように、カートリッジ1を収納したまま携行することができ、キャップを外して、保水材4に水を保水させると、水素ガスの吸引が可能となる。
また、キャップ9の開口側を上にして水を注ぎ入れると、ほぼ一定量の水が蓄えられる。キャップの筒部に水量の目安となるマークが付けられている場合はより確実に所定の水量を蓄えることができる。
そして、キャップ9に蓄えられた水に、カートリッジ1の先端部を漬けると、保水材4に水素ガス生成体3の水素ガス生成反応に必要な水を保水することができる。
【0035】
このように、キャップ9を利用すると、ほぼ一定量の水を保水材に供給することができるから、水素ガス生成体3のマグネシウムとクエン酸を反応によりほとんどすべて消費することができ、未反応のマグネシウムやクエン酸が残存することなく、カートリッジ1を無駄にすることがないようにすることができる。
また、キャップ9には空気が流入する空気流入用孔91が設けられているから、カートリッジ1が挿入されたホルダー8にキャップ9を装着した状態で吸引することできる。吸引が終了した後や吸引を途中で中断した後では、キャップを付けた状態で、ポケットやハンドバッグなどに入れて携行することができる。
【0036】
上述したように、気体は通過できるが液体は通過できないフィルター6は、吸水材5の先端に取り付けることができるが、このフィルター6をホルダー8に取り付けてもよい。例えば、図10から分かるように、挿入されたカートリッジ1の後端(吸水材5の後端)よりも吸引口83寄りのホルダー8の部位にフィルター6を貼り付けて取り付ける。こうすることにより、水素ガスはフィルター6を通過して吸引口83から口腔内に入るから、クエン酸水溶液が口腔内に入らないようにより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0037】
1:カートリッジ
2:筒状ケース
21:(先端部の)切り欠き
22:(先端部内縁の)折り曲げ部
23:(先端部外縁の)突部
24:(後端部の)膨らみ
25:(後端部の)切り欠き
3:水素ガス生成体
31:筒状不織布
32:筒状不織布の先端、後端
4:保水材
5:吸水材
6:フィルター
7:示温材
8:ホルダー
81:本体部
82:吸引部
83:吸引口
84:挿入口
85:段付き部
9:キャップ
91:空気流入用孔
92:段付き部
100:水素ガス吸引具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10