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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】レンジフード
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20221025BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
F24F7/06 101B
F24F7/06 101Z
F24F7/007 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019039473
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020143820
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000237374
【氏名又は名称】富士工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山岸 智和
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-091643(JP,A)
【文献】特開2017-032161(JP,A)
【文献】特開2012-177496(JP,A)
【文献】特開2009-092338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フード部と、
レンジフードに関係する情報を検知する検知部をケース体の内部に収納したセンサと、
前記センサの検出面の側に配置されるセンサカバーと、を有し、
前記フード部は、貫通した抜き孔を備えるパネルを有し、
前記センサカバーは、前記抜き孔に臨んだ状態において、前記パネルの裏面押え部によって押し付けられ、
前記押え部は、前記センサの前記ケース体である、レンジフード。
【請求項2】
前記センサカバーは、前記抜き孔の内周形状に対応した外周形状を備える突出部を有し、
前記突出部の高さは、前記パネルの板厚と同じ、または板厚以上である、請求項1に記載のレンジフード。
【請求項3】
前記センサの前記ケース体は、調理者から視認できない位置において前記フード部に固定されている、請求項1または2に記載のレンジフード。
【請求項4】
前記センサは、レンジフードに関係する情報として、調理器の上方温度、調理器の「点火」信号、調理者の有無、部屋の明るさ、フード部下方に存在する異物までの距離、および操作スイッチから調理者の手までの距離の少なくとも1つを検知する、請求項1~のいずれか1項に記載のレンジフード。
【請求項5】
前記センサは、レンジフードに関係する情報として、調理器の上方温度を検知する温度センサであり、
前記検知部は、水平面に対して傾斜して配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載のレンジフード。
【請求項6】
前記センサカバーの形成材料が樹脂材料であり、前記センサカバーの肉厚が均一である、請求項1~のいずれか1項に記載のレンジフード。
【請求項7】
前記センサカバーは、水平面と平行に配置され、
前記センサカバーの厚みは、前記調理器との間の距離が遠い部位に比べて、前記調理器との間の距離が近い部位の方が厚い、請求項に記載のレンジフード。
【請求項8】
前記温度センサが検知する前記上方温度をあらかじめ設定した閾値温度と比較してレンジフードの運転状態を制御する制御部をさらに有し、
前記温度センサは、前記調理器の前記上方温度を複数の画素によって検知する複眼温度センサから構成され、
前記閾値温度は、前記検知部と前記調理器との間の距離が近い画素に比べて、前記温度センサと前記調理器との間の距離が遠い画素の方が低い、請求項に記載のレンジフード。
【請求項9】
前記温度センサが検知する前記上方温度をあらかじめ設定した閾値温度と比較してレンジフードの運転状態を制御する制御部をさらに有し、
前記温度センサは、前記調理器の前記上方温度を複数の画素によって検知する複眼温度センサから構成され、
前記閾値温度は、前記フード部と前記調理器との離隔距離が小さい場合に比べて、前記離隔距離が大きい場合の方が低い、請求項に記載のレンジフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンジフードに関する。
【背景技術】
【0002】
フード部に設けた温度センサによって調理器の上方温度を検知し、検知温度に基づいて風量を決定する自動運転機能付きレンジフードがある(特許文献1を参照)。このようなレンジフードは一般的にセンサの検出面の側に配置されるセンサカバーの材料を透過できる部材とし、フード部の凹部に対してフード部外側(下面)から嵌めこまれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-137234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレンジフードのセンサカバーは赤外線を透過する材料でなくてはならず、樹脂製の材料が一般的に使用されている。センサカバーは肉厚が比較的薄いため、特許文献1記載のようにフード部外側(下面)から嵌め込む形態にあっては、十分な強度を確保することができない。このため、不意に手が触れる等した場合には、センサカバーが外れてしまう恐れがある。また、センサカバーは、使用者によって視認可能なフード部の底面部に位置する。このため、センサカバーを通して、センサカバーをフード部に取り付けるための部材(例えば、ネジ等)が見えてしまい、意匠性が悪いとい問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、センサカバーが十分な強度を確保して取り付けられ、センサカバーを通しての意匠性の低下も抑えることが可能なレンジフードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明のレンジフードは、フード部と、レンジフードに関係する情報を検知する検知部をケース体の内部に収納したセンサと、前記センサの検出面の側に配置されるセンサカバーと、を有する。前記フード部は、貫通した抜き孔を備えるパネルを有する。前記センサカバーは、前記抜き孔に臨んだ状態において、前記パネルの裏面押え部によって押し付けられている。前記押え部は、前記センサの前記ケース体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、センサカバーが十分な強度を確保して取り付けられ、センサカバーを通しての意匠性の低下も抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態のレンジフードをキッチンに設置した場合の正面図である。
図2】本実施形態のレンジフードをキッチンに設置した場合の側面図である。
図3】本実施形態のレンジフードが備える操作パネルの正面図である。
図4】温度センサおよびセンサカバーを示す斜視図である。
図5】センサカバーを温度センサから分離し、さらに温度センサの各構成部材を分解して示す斜視図である。
図6】温度センサおよびセンサカバーを示す正面図である。
図7】温度センサおよびセンサカバーを示す側面図である。
図8】温度センサおよびセンサカバーを示す底面図である。
図9】フード部に取り付けられた温度センサおよびセンサカバーを示す要部断面図である。
図10】センサカバーを一部切り欠いて示す斜視断面図である。
図11】フード部を上下反転し、調理者によって視認可能なフード部の底面部を上方に向けて示す斜視図である。
図12図11の状態から、フード部の底面部を構成する内面パネルを取り外し、温度センサが取り付けられたパネルを露出させて示す斜視図である。
図13】温度センサが取り付けられるパネルの要部を拡大して示す斜視図である。
図14】温度センサをパネルに取り付ける前の状態を示す斜視図である。
図15】温度センサをパネルに取り付けた状態を示す斜視図である。
図16】温度センサをパネルに固定部としての締結ネジによって固定した後の状態を示す斜視図である。
図17図16の状態から、フード部を上下反転し、フード部に取り付けられた温度センサおよびセンサカバーを示す要部断面図である。
図18】温度センサによる調理器の上方温度の検知状態を模式的に示す図である。
図19】フード部と調理器との離隔距離が最小許容距離である場合の温度センサの検知エリアを模式的に示す図である。
図20】フード部と調理器との離隔距離が最小許容距離と最大許容距離との間の中央値である場合の温度センサの検知エリアを模式的に示す図である。
図21】フード部と調理器との離隔距離が最大許容距離である場合の温度センサの検知エリアを模式的に示す図である。
図22】本実施形態のレンジフードの制御系のブロック図である。
図23】本実施形態のレンジフードにおけるファンの風量または/およびフィルタの回転数の制御に関する動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみに限定されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されている。したがって、各図面における各構成要素の寸法比率は実際とは異なる。また、図面において同一の要素には同一の符号を付し、明細書において重複する説明は省略する。
【0010】
(レンジフード100の機械系の構成)
図1および図2は、本実施形態に係るレンジフード100をキッチンに設置した場合の正面図および側面図、図3は、レンジフード100が備える操作パネル120の正面図である。図4図10は、温度センサ300およびセンサカバー400の説明に使用する図であり、図4は、温度センサ300およびセンサカバー400を示す斜視図、図5は、センサカバー400を温度センサ300から分離し、さらに温度センサ300の各構成部材を分解して示す斜視図である。図6図7図8は、温度センサ300およびセンサカバー400を示す正面図、側面図、底面図である。図9は、フード部140に取り付けられた温度センサ300およびセンサカバー400を示す要部断面図、図10は、センサカバー400を一部切り欠いて示す斜視断面図である。なお、レンジフード100に関係する情報を検知する検知部を備えるセンサとして、調理器200の上方温度を検知する温度センサ300を例に挙げて説明する。
【0011】
図1および図2を参照して、レンジフード100は、調理器200の上部に位置するフード部140と、スイッチ類を備える操作パネル120と、調理器200の上方温度を検知する検知部310を備える温度センサ300と、を有する。レンジフード100は調理器200で行われる調理時に生じる臭い、煙、油などを含む臭気や油煙を吸い込み外部に排気する。例示している調理器200は、3つの熱源210(後述する3つの熱源210A、210B、210Cの総称)およびグリルの吹出口220を有する。なお、本明細書において、熱源210とは、ガス用の調理器200に対してはバーナーやバーナー付近にある五徳を、IH用の調理器200に対してはヒーターを、それぞれ意味する。
【0012】
レンジフード100は、フード部140と、そのフード部140の上部に本体部110を備えている。フード部140は調理によって発生する臭気や油煙を捕集し、本体部110は、その捕集した臭気や油煙を排気する。フード部140は調理によって発生する臭気や油煙を吸い込む吸気口112を備え、本体部110は、屋外と連通する排気口114、吸気口112と排気口114とを結ぶ通路内に吸気口112から吸い込まれる油煙を吸引し排気させるファン116を備えている。ファン116はファンモータ117によって駆動される。吸気口112とファン116との間、または吸気口112に、吸気口112から吸い込んだ油煙から油分を除去するために回転するフィルタ(ディスク)118を備えている。フィルタ118はフィルタモータ119によって駆動される。なお、レンジフード100は、ファン116のみの回転、ファン116およびフィルタ118の両者の回転、あるいは、フィルタ118のみの回転のいずれの運転もできる。また、レンジフード100は回転しない固定式の(普通の)フィルタを備えていても良いし、フィルタレスのレンジフード100であっても良い。レンジフード100は、レンジフード100の動作を指示するための操作パネル120を備えている。操作パネル120は、フード部140の前側中央に配置されている。
【0013】
図3を参照して、操作パネル120は、スイッチ類として、運転スイッチ121、風量スイッチ122、風量自動スイッチ123、タイマースイッチ124、照明スイッチ125、および常時換気スイッチ126などを有する。
【0014】
運転スイッチ121は、レンジフード100を動作させるためのスイッチである。運転スイッチ121を押すとレンジフードON信号が送信され(後述の制御部に)、もう一度押すとレンジフードOFF信号が送信される。風量スイッチ122は、ファン116の風量を、弱、中、強に手動で切り替えるためのスイッチである。風量自動スイッチ123は、温度センサ300が検知する調理器200の上方温度に応じて、ファン116の風量およびフィルタ118の回転数を、段階的または連続的に、自動的に切り替える自動運転を行わせるためのスイッチである。なお、この自動運転は、風量スイッチ122が押されると解除される。タイマースイッチ124は、ファン116およびフィルタ118を調理終了後に回転させるためのスイッチである。照明スイッチ125は、調理器200の上面を照らすLED電球を点灯/消灯させるためのスイッチである。常時換気スイッチ126は、ファン116を手動で回転/停止させることで常時換気の運転/停止を行うためのスイッチである。
【0015】
温度センサ300は、操作パネル120の左右のいずれかにずれてフード部140の底面部141に配置されている。本実施形態では、温度センサ300は、操作パネル120の左側にずれて配置されている(図1を参照)。温度センサ300は、フード部140の底面部141のうち前面側に寄って配置されている(図2を参照)。
【0016】
図4図9を参照して、温度センサ300は、調理器200の上方温度を検知する検知部310と、検知部310を収納するケース体320と、ケース体320の上部開口321を塞ぐ蓋部330と、を有する。検知部310は、赤外線センサから構成されている。ケース体320は、検知部310が載置される支持部322を有する。蓋部330は、ケース体320の支持部322との間に検知部310を挟持する脚部331を有する。ケース体320の上部開口321に蓋部330を取り付けると、検知部310は、支持部322と脚部331との間に挟持される。フード部140の底面部141は、水平面に対して平行である。ケース体320は、その下面がフード部140の底面部141と平行となる状態に、フード部140に配置されている。温度センサ300をフード部140の底面部141に配置した状態において、検知部310は、水平面に対して三次元的にねじれて傾斜して配置されている。より詳しくは、左右方向のうち温度センサ300が設けられている側を一方、もう一方を他方とすると、検知部310の検知面は水平面に対して他方側を向くように傾斜し、かつ、後側に向くように傾斜して配置されている。
【0017】
なお、本実施形態では、検知部310は三次元的にねじれて傾斜して配置されているが、温度センサ300を設ける位置によっては、検知部310は、水平面に対して二次元的に傾斜して配置される。より詳しくは、温度センサ300がフード部140の側方縁のうち前後方向中央部に設けられている場合、左右方向のうち温度センサ300が設けられている側を一方、もう一方を他方とすると、検知部310の検知面は水平面に対して他方側を向くように傾斜して配置されている。または、温度センサ300がフード部140の前方縁のうち左右方向中央部に設けられている場合、検知部310の検知面は水平面に対して後側を向くように傾斜して配置されている。
【0018】
レンジフード100は、温度センサ300の検出面の側に配置されるセンサカバー400をさらに有する。一般的な赤外線センサは電子部品が実装された基板にレンズ部が取り付けられたユニットとなっている。レンジフード100などの油煙や埃が発生する環境下に設置される機器では、センサカバー400が必要不可欠である。
【0019】
図9を参照して、フード部140は、パネル150を有する。このパネル150は、貫通した抜き孔151を備える。パネル150は、調理者によって視認可能な底面部141を構成する表面150aを備える。抜き孔151は底面部141に備える。センサカバー400は、抜き孔151に臨んだ状態において、パネル150の裏面150bと押え部160との間に挟持されている。本実施形態では、押え部160は、温度センサ300のケース体320である。センサカバー400がパネル150の裏面150bと押え部160との間に挟持された状態においては、センサカバー400は、水平面と平行に配置されている。
【0020】
センサカバー400は、略矩形の板形状を有する。センサカバー400は、その中央部分に、抜き孔151の内周形状に対応した外周形状を備える突出部410を有する。突出部410の高さは、パネル150の板厚と同じ、または板厚以上である。
【0021】
突出部410は、その高さ寸法に拘わらず位置決めの機能を発揮する。このため、センサカバー400のズレを防止できる。
【0022】
ここに、「突出部410の高さがパネル150の板厚と同じ」とは、突出部410の高さが、パネル150の板厚と物理的に同じであることを要求するものではない。センサカバー400を取り付けた状態において、センサカバー400の突出部410の表面410aとパネル150の表面150aとが略面一となる高さで足りる。突出部410の表面410aは、パネル150の表面150aから若干寸法突出してもよいし、パネル150の表面150aから若干寸法窪んでもよい。突出部410の表面410aとパネル150の表面150aとが略面一となり、かつ、抜き孔151の内周と突出部410の外周との境界も狭くできるため、意匠性が良く、拭き掃除などでの清掃性が良好となる。清掃性が良好となるので、センサカバー400に油が付着することを防ぎ、センサ300の検知精度に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0023】
また、「突出部410の高さがパネル150の板厚以上」とは、突出部410の表面410aとパネル150の表面150aとを略面一にせず、段差と評価される程度に突出部410の表面410aをパネル150の表面150aから突出させる高さ寸法を意味する。突出部410の高さをパネル150の板厚以上とする場合は、突出部410のうちパネル150の表面150a(つまり、パネル下面)から下方へ出っ張った部位の下面から抜き孔151へ向かう面に湾曲面を設けることが好ましい。このようにすることによって、意匠性が良く、拭き掃除もしやすくなる。このとき、湾曲面は突出部410のうちパネル150の表面150aから下方へ出っ張った部位の下面から抜き孔151の端面に向かう面とすることが好ましい。抜き孔151とセンサカバー400との間に隙間が生じず、かつ、抜き孔151からセンサカバー400まで連続した滑らかな面となるからである。
【0024】
このように、突出部410の高さを、パネル150の板厚と同じ、または、板厚以上とすることによって、突出している部位が位置決めとなってセンサカバー400がずれ難くなり、さらに抜き孔151に油煙が入り込んで油が固着することを防止できる。
【0025】
センサカバー400は、ケース体320に向けて突出する2本のピン420を有する。ケース体320の下面は、2本のピン420が嵌り込む孔部323を有する。センサカバー400は、2本のピン420を孔部323に嵌めこむことによって、温度センサ300に対する位置が定まる。
【0026】
なお、図9および図10に示されるように、センサカバー400の外観面は、平らな形状を備えているが、検知部310を中心とする球状に湾曲させた面にしても良い。
【0027】
センサカバー400の形成材料は樹脂材料である。また、センサカバー400の肉厚は均一である。センサカバー400の形成材料は、赤外線を一定レベルで透過する材料である限りにおいて限定されないが、単結晶シリコンシートや樹脂材料を挙げることができる。成形の容易性や低コスト化を考慮すると、センサカバー400の形成材料は樹脂材料であることが好ましい。樹脂材料としては、例えば、高密度ポリエチレンやPTFEを例示することができる。肉厚は、特に限定されないが、薄すぎると破れる原因にもなり得ることから、1mm以上であることが好ましい。センサカバー400を樹脂材料から形成する場合において、センサカバー400の外側の冷却スピードと、内側の冷却スピードとの間のばらつきは、樹脂成形品に成形不良の一つである「ヒケ」が生じる原因となる。例示した高密度ポリエチレンは、収縮率が高く、冷却とともに収縮する量が比較的多い。このことから、高密度ポリエチレンは、一般的にヒケが生じやすい材料である。センサカバー400を樹脂材料から形成する場合において、センサカバー400の肉厚を均一とすることによって、収縮率が安定する。その結果、樹脂成形品であるセンサカバー400は、成形不良の一つである「ヒケ」の発生を抑えることができる。これによって、センサカバー400は、意匠性が良く、「ヒケ」を原因とする温度センサ300の検知精度に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0028】
フード部140への温度センサ300の取り付け構造についてさらに説明する。図11図17は、温度センサ300の取り付け構造を説明するために図である。図11は、フード部140を上下反転し、調理者によって視認可能なフード部140の底面部141を上方に向けて示す斜視図、図12は、図11の状態から、フード部140の底面部141を構成する内面パネル170を取り外し、温度センサ300が取り付けられたパネル150を露出させて示す斜視図である。図13は、温度センサ300が取り付けられるパネル150の要部を拡大して示す斜視図である。図14は、温度センサ300をパネル150に取り付ける前の状態を示す斜視図、図15は、温度センサ300をパネル150に取り付けた状態を示す斜視図、図16は、温度センサ300をパネル150に固定部180としての締結ネジ181によって固定した後の状態を示す斜視図である。図17は、図16の状態から、フード部140を上下反転し、フード部140に取り付けられた温度センサ300およびセンサカバー400を示す要部断面図である。
【0029】
レンジフード100は、上記したように、フード部140と、調理器200の上方温度(レンジフード100に関係する情報)を検知する検知部310をケース体320の内部に収納した温度センサ(センサ)300と、温度センサ300の検出面の側に配置されるセンサカバー400と、を有する。フード部140は、調理者によって視認可能な底面部141を構成する表面150aと、底面部に貫通した抜き孔151とを備えるパネル150を有する(図9図11図17を参照)。センサカバー400は、抜き孔151に臨んだ状態において、パネル150の裏面150bと押え部160との間に挟持されている(図9図14図17を参照)。
【0030】
フード部140の外観部材は、非可燃物としなければならない場合が多く、コスト的な観点から、金属薄板をプレス成形などによって賦形した板金部品であるパネル150が使用される。センサカバー400をセットするための部位(抜き孔151)の形状を単なる貫通孔とすることによって、汎用性的な加工機であるターレットパンチやレーザー加工機などによってパネル150を生産することができる。金型投資が不要であり、製造初期投資を抑えることができる。
【0031】
温度センサ300のケース体320の下面(図14において上側に示される面)は、センサカバー400をパネル150に押し付ける第1面324と、パネル150に固定するためのネジ穴326が形成された第2面325とを有する。第2面325には、2本のピン327が形成されている。第1面324と第2面325とは高さが異なり、段差が形成されている。パネル150は、ケース体320の下面の段差形状に対応して段差が形成されている。パネル150は、ケース体320の第1面324に向かい合う第1取付け部152と、ケース体320の第2面325に向かい合う第2取付け部153とを有する。パネル150の第1取付け部152の下面(図11図16において上側に示される面)は、調理者によって視認可能な底面部141を構成する表面150aである。このパネル150の第1取付け部152に、貫通した抜き孔151が形成されている。パネル150の第2取付け部153は、第1取付け部152から上方(図12図16において下方)に離れている。パネル150の第2取付け部153は、ケース体320の第2面325のネジ穴326に連通する第1通孔154、ケース体320の第2面325の2本のピン327のそれぞれが貫通する第2通孔155を有する。
【0032】
温度センサ300は、パネル150の内側から裏面150bに押し当てられる。このとき、軟質のセンサカバー400は、製品外郭部材であるパネル150と強度を持ったケース体320とによって挟み込まれる。これによって、触れるなどしてセンサカバー400が変形することを防ぐことができる。ケース体320は、ABSなどの安価な樹脂であっても肉厚や形状により一定の強度を確保することができる。
【0033】
本実施形態では、押え部160は、温度センサ300のケース体320である。専用の押え部160を設けることはできるが、温度センサ300のケース体320を押え部160として使用することによって次のような利点がある。すなわち、部品点数が少なくなるため、製品の製造にかかる時間が短くなる。また、部品点数が少なくなるため、製品にかかる材料費が安くなる。
【0034】
図12図16に示すように、センサのケース体320は、固定部180としての締結ネジ181によって、パネル150の第2取付け部153に固定される。この場合、ケース体320は、2本のピン327を第2通孔155に貫通させることによって、パネル150に対する位置が定まる。締結ネジ181は、第1通孔154に貫通され、ケース体320のネジ穴326に締結される。温度センサ300をパネル150に固定した後、図11に示すように、フード部140の底面部141を構成する内面パネル170が取り付けられる。この内面パネル170によって、パネル150の第2取付け部153および締結ネジ181が覆い隠される。このようにして、温度センサ300のケース体320は、調理者から視認できない位置においてフード部140に固定されている。調理者はケース体320を視認できないため、意匠性が良くなる。これと同時に、使用者が不用意に分解してしまうことを防ぐことができる。なお、調理者から視認できない位置であるかぎり、温度センサ300のケース体320をフード部140に固定する態様は実施形態において説明した場合に限定されない。例えば、製品外観から見えない位置の金具や外郭部材に固定すればよく、フード部140の天板からネジ止めする態様でもよい。また、ケース体320を固定する固定部180は締結ネジ181に限られるものではなく、溶接やカシメ等によって固定することができる。
【0035】
温度センサ300は、図1および図2に点線によって示される領域の温度を検知する。本実施形態で使用している温度センサ300は、調理器200の上方温度を複数の画素によって検知する複眼温度センサから構成されている。複眼温度センサは、例えば、8×8の64個の画素を有しそれぞれの画素に対応する領域の温度を別々に検知できる。温度センサ300は、調理器200の上方温度を64の領域に分けて検知でき、また、3つの熱源210のそれぞれの温度を個別に検知できる。複眼温度センサとしては、たとえば複眼式赤外線センサ342を例示することができる。複眼温度センサは、例示した8×8の64個の画素を有する場合に限られず、さらに多くの画素を有する複眼温度センサを用いても良い。
【0036】
なお、本実施形態では、温度センサ300として複眼温度センサを用いているが、単眼温度センサを用いても良い。単眼温度センサを用いる場合、3つの熱源210の平均温度を検知するように1つの単眼温度センサを設けても良いし、3つの熱源210のそれぞれの温度を個別に検知できるように、それぞれの熱源210に対応させて3つの単眼温度センサを設けても良い。実際に装備する場合には、単眼温度センサよりも複眼温度センサの方が好ましい。複眼温度センサと単眼温度センサは画素数の違いから複眼温度センサの方がより精密に温度検知が可能であるため、複眼温度センサの検知精度は単眼温度センサの検知精度よりも良いからである。
【0037】
図18は、温度センサ300による調理器200の上方温度の検知状態を模式的に示す図である。温度センサ300は、レンジフード100の底面部141に取り付けられているので、調理器200の上方温度は、調理器200の熱源210(バーナーやバーナー付近にある五徳またはヒーター)210A、210B、210Cおよびグリルの吹出口220をカバーする領域で検知される。本実施形態では複眼温度センサを用いているので、調理器200の熱源210A、210B、210Cの温度は、図18のように、たとえば8×8の64に分割された画素(Tij(i=1~8、j=1~8))の熱源210A、210B、210Cのそれぞれに対応する領域の温度として検知される。一方、温度センサ300が単眼温度センサである場合には、1つの単眼温度センサであれば3つの熱源の平均温度を検知する。また、3つの単眼温度センサを調理器200の熱源210A、210B、210Cのそれぞれに対応させて設ける場合には、調理器200の上方温度は、調理器200の熱源210A、210B、210Cのそれぞれについて検知される。したがって、レンジフード100は、調理器200のどの熱源210A、210B、210Cが使用されているのかを、温度センサ300の検知結果から容易に判断できる。
【0038】
複眼温度センサの画素の大きさは、フード部140と調理器200との離隔距離(図1の符号Hを参照)によって変わる。画素の面積は、離隔距離Hが大きくなると大きくなり、離隔距離Hが小さくなると小さくなる。
【0039】
図19図21は、フード部140と調理器200との離隔距離Hが異なる場合の温度センサ300の検知エリアを模式的に示す図である。フード部140は、調理器200との離隔距離Hが最小許容距離から最大許容距離までの範囲内においてキッチンに設置可能である。最小許容距離は例えば600mm、最大許容距離は例えば1000mmである。この場合、最小許容距離と最大許容距離との間の中央値は800mmである。
【0040】
図19に示すように、温度センサ300は、離隔距離Hが最小許容距離(例えば600mm)である場合を基準にして熱源210の中央寄りを検知可能な状態に配置されている。上述したように、画素の面積は離隔距離Hが大きくなると大きくなる。図20に示すように、離隔距離Hが中央値(例えば800mm)である場合、温度センサ300の検知エリアは、最小許容距離(例えば600mm)のときの検知エリアよりも広くなり、調理器200の上方温度をより広い範囲で検知可能となる。図21に示すように、離隔距離Hが最大許容距離(例えば1000mm)である場合、温度センサ300の検知エリアは、中央値(例えば800mm)のときの検知エリアよりもさらに広くなり、調理器200の上方温度をより広い範囲で検知可能となる。
【0041】
図9に示したように、温度センサ300の検知部310は水平面に対して傾斜して配置されている。センサカバー400は水平面と平行に配置されている。温度センサ300は複眼温度センサから構成されている。このような場合において、センサカバー400の厚みが均一のときには、画素ごとに赤外線の透過距離が異なるため、画素ごとに検知温度と実際の温度との間に誤差が生じる。
【0042】
そこで、センサカバー400の厚みは、調理器200との間の距離が遠い部位に比べて、調理器200との間の距離が近い部位の方が厚いことが好ましい。より詳しくは、フード部140の底面部141の前側において、左右方向のうち温度センサ300が設けられている側を一方、もう一方を他方とすると、センサカバー400の他方側は一方側に比べて厚みがある。または/および、センサカバー400の前側は後側に比べて厚みがある。このように構成することによって、センサカバー400における赤外線の透過距離は画素毎に同じになる。このため、温度センサ300の各画素と調理器200との間の距離の差によって生じる誤差を補正することができる。上記の厚み寸法の調整の範囲内では、センサカバー400を高密度ポリエチレンから樹脂成形しても、「ヒケ」が発生することはない。
【0043】
なお、温度センサ300を単眼温度センサから構成する場合も、上述したように、センサカバー400の厚みは、調理器200との間の距離が遠い部位に比べて、調理器200との間の距離が近い部位の方が厚いことが好ましい。温度センサ300の各画素と調理器200との間の距離の差によって生じる誤差を補正することができるからである。
【0044】
(レンジフード100の制御系の構成)
図22は、本実施形態のレンジフード100の制御系のブロック図である。レンジフード100は、ファン116、ファンモータ117、フィルタ118、フィルタモータ119、操作パネル120、制御部130、および温度センサ300を有する。なお、制御部130は閾値温度記憶部135を備え、レンジフード100に内蔵される。
【0045】
ファン116、ファンモータ117、フィルタ118、フィルタモータ119、操作パネル120、温度センサ300の構成および機能は上記した通りである。
【0046】
閾値温度記憶部135は、ファン116の風量または/およびフィルタ118の回転数を変化させるための閾値温度を記憶する。閾値温度記憶部135は、温度センサ300が検知する上方温度の領域ごとに対応させて閾値温度を記憶する。
【0047】
制御部130は、操作パネル120の風量自動スイッチ123(図3参照)が押され、レンジフード100が自動運転されているときには、温度センサ300が検知する調理器200の上方温度と閾値温度記憶部135に記憶されている閾値温度(ファン用の)とを比較し、ファン116の風量を決定する。また、制御部130は、温度センサ300が検知する調理器200の上方温度と閾値温度記憶部135に記憶されている閾値温度(フィルタ用の)とを比較し、フィルタ118の回転数を決定する。なお、本実施例ではファン116の風量とフィルタ118の回転数の両方を制御部130で決定する例を示したが、これに限らずいずれか一方を制御部130で決定するものとしても良い。また、制御部130は、フィルタ118を備えていないフィルタレスのレンジフード、または固定式のフィルタを備えているレンジフードの場合には、ファン116の風量のみを決定する。
【0048】
制御部130は、閾値温度を、温度センサ300と調理器200との間の距離が近い画素に比べて、温度センサ300と調理器200との間の距離が遠い画素の方が低くなるように設定する。より詳しくは、フード部140の底面部141の前側において、左右方向のうち温度センサ300が設けられている側を一方、もう一方を他方とすると、温度センサ300の各画素の温度閾値を一方側の温度閾値よりも他方側の温度閾値の方が低くなるように補正する。または/および、温度センサ300の各画素の温度閾値を前側の温度閾値よりも後側の温度閾値の方が低くなるように補正する。
【0049】
温度閾値の補正が必要となる理由は次のとおりである。温度センサ300の各画素と調理器200との距離が近いほど1つの画素が検知する検知範囲が狭く、各画素と調理器200との距離が遠いほど1つの画素が検知する検知範囲が広くなる。例えば、図21を見ると、左下の画素はマスの面積が小さいが、右上の画素はマスの面積が大きくなっている。複眼温度センサは各画素毎の平均温度をその画素の温度として捉えるため、マスの面積が大きいほど平均温度が低く検出される傾向にあるからである。したがって、閾値温度を、温度センサ300と調理器200との間の距離が近い画素(つまり、マスの面積が小さい)に比べて、温度センサ300と調理器200との間の距離が遠い画素(つまり、マスの面積が大きい)の方が低くなるように補正することによって、温度センサ300の各画素と調理器200との間の距離の差によって生じる誤差を補正することができる。
【0050】
温度センサ300は、検知部310が対象物から出る赤外線を受けると電気信号を発生させる。対象物の温度は、温度センサ300から出力された電気信号を温度に変換することによって決定される。本明細書における「閾値温度」は、電気信号から変換された温度のみならず、温度に対応して温度センサ300から出力された電気信号そのものも含んでいる。したがって、「閾値温度の補正」は、電気信号から変換された温度に対して補正をしてもよいし、電気信号そのものに対して補正してもよく、いずれのパターンも含まれる。
【0051】
図19図21に示したように、温度センサ300が調理器200の調理面の中心の真上に設置されていないため、温度センサ300の各領域が温度を検知する範囲はこれらの図に示すように歪む。このため、調理器200とレンジフード100との離隔距離Hの相違によって、たとえば、同じ熱源210Aであっても、温度センサ300が熱源210の温度を検知する領域がずれる。同様に、同じグリルの吹出口220であっても、温度センサ300がグリルの吹出口220の温度を検知する領域がずれる。
【0052】
このずれのため、グリルの吹出口の位置などの特定が正確にできなくなる。このため、熱源210の位置や数、グリルの吹出口の位置などを正確に特定したい場合は制御部130の記憶部は、離隔距離Hごとに、各熱源210の位置とグリルの吹出口220の位置が温度センサ300のどの領域に該当するのか、という情報を記憶しても良い。この場合離隔距離Hは、現場でレンジフード100を設置する際に設定できるようにする。
【0053】
制御部130は、閾値温度を、離隔距離Hが小さい場合に比べて、離隔距離Hが大きい場合の方が低くなるように設定する。
【0054】
(制御部130の動作)
図23は、本実施形態のレンジフード100におけるファン116の風量または/およびフィルタ118の回転数の制御に関する動作フローチャートである。この動作フローチャートは制御部130によって処理される。なお、この動作フローチャートは、操作パネル120(図3および図22参照)の風量自動スイッチ123が押され、レンジフード100が自動運転されているときに実行される。
【0055】
制御部130は、温度センサ300により調理器200の上方温度を検知する(S100)。上方温度は、領域ごとに検知される。具体的には、図18に示したように、温度センサ300の全ての領域Tij=T11~T88の温度を検知する。
【0056】
次に、制御部130は、検知された調理器200の上方温度と閾値温度記憶部135に記憶されている閾値温度とを比較する(S110)。次に、制御部130は、調理器200の上方温度と閾値温度との比較結果に応じて、ファン116の風量および/またはフィルタ118の回転数を制御する(S120)。この場合、調理器200の上方温度が高くなるほどファン116の風量および/またはフィルタ118の回転数は大きくなり、調理器200の上方温度が低くなるほどファン116の風量および/またはフィルタ118の回転数は小さくなる。このようにして、温度センサ300が検知する上方温度に基づいてファン116の風量およびフィルタ118の回転数を決定して自動運転することができる。
【0057】
制御部130は、閾値温度を、温度センサ300と調理器200との間の距離が近い画素に比べて、温度センサ300と調理器200との間の距離が遠い画素の方が低くなるように設定する。このように温度センサ300の各画素と調理器200との間の距離に応じて閾値温度を変えることによって、温度センサ300の各画素と調理器200との間の距離の差によって生じる誤差を補正することができる。
【0058】
制御部130は、閾値温度を、離隔距離Hが小さい場合に比べて、離隔距離Hが大きい場合の方が低くなるように設定する。このように離隔距離Hに応じて閾値温度を変えることによって、離隔距離Hの差によって生じる誤差を補正することができる。また、各熱源210の位置、数、グリルの使用の有無、グリルの吹出口220の位置などをより正確に把握することができる。
【0059】
上述した実施形態のレンジフード100にあっては、温度センサ300の各画素と調理器200との間の距離の差によって生じる誤差を補正するため、センサカバー400の厚みは、調理器200との間の距離が遠い部位に比べて、調理器200との間の距離が近い部位の方が厚い。センサカバー400の肉厚を均一にするときには、各画素に割り当てられたセンサカバー400の赤外線通過領域において、それぞれ赤外線が通過する厚みが異なる。つまり、各画素での赤外線透過率が異なることとなる。この場合は、黒体炉などで予め各画素における透過率を確認し、その値を補正値として制御プログラムで使用することで、各画素の正しい温度を導き出すことができる。
【0060】
温度センサ300を複眼温度センサから構成しているので、上記の補正値に加えて、より過剰に反応させたい画素の温度を低めになるような補正を付加するなどしても良い。温度を低めにする補正を行った場合は、その分、閾値温度を超え辛くなり、動作もし辛くなる。この逆もしかりである。
【0061】
本実施形態では、センサは、レンジフード100に関係する情報として調理器200の上方温度を検知する温度センサ300を例に挙げたが、この場合に限られるものではない。例えば、センサは、レンジフード100に関係する情報として、調理器200の上方温度の他に、調理器200の「点火」信号、調理者の有無、部屋の明るさ、フード部140の下方に存在する異物までの距離、および操作スイッチから調理者の手までの距離を検知するものでもよい。赤外線センサによって調理器200の「点火」信号を受信することによって、調理器200の使用に連動してレンジフード100を運転させることができる。光センサによって調理者の有無を検知することによって、人がいない状態が継続した時間に応じて調理器200を強制的に停止させることができる。また、光センサによって部屋の明るさを検知し、照明が消されたことを検知して、レンジフード100を運転させて室内を換気することができる。下引き型レンジフードにおいて、距離センサによってフード部下方に存在する異物までの距離を検知することによって、フード部降下時にフード部140の下方に異物が無いことを確認することができる。距離センサによって操作スイッチから調理者の手までの距離を検知することによって、操作パネル120のスイッチ類に非接触の状態において風量変更や照明のON/OFFを行うことができる。
【0062】
また、センサは、検知対象であるレンジフード100に関係する情報に応じた適切な位置に取り付けることができる。センサとしての温度センサ300は、調理器200の上方温度を検知するために、フード部140の底面部141に取り付けることができる。検知対象であるレンジフード100に関係する情報が「調理器200の上方温度」以外の場合は、センサの取り付け位置はフード部140の底面部141に限られない。例えば、センサは、フード部140の前面、側面、あるいは天面など、検知対象に応じた適切な位置に取り付けることができる。
【0063】
以上説明したように、レンジフード100は、フード部140と、レンジフード100に関係する情報を検知する検知部310をケース体320の内部に収納したセンサ300と、センサ300の検出面の側に配置されるセンサカバー400と、を有する。フード部140は、調理者によって視認可能な底面部141を構成する表面150aと、貫通した抜き孔151とを備えるパネル150を有する。センサカバー400は、抜き孔151に臨んだ状態において、パネル150の裏面150bと押え部160との間に挟持されている。
【0064】
このように構成することによって、センサカバー400は、パネル150と押え部160との間に挟み込まれた状態になり、強度が高くなる。このため、不意に手が触れる等した場合であっても、センサカバー400が外れことを防止できる。また、センサカバーを通して、センサカバー400をフード部140に取り付けるための部材が見えることがない。センサカバー400の取付け部分が使用者側に露出しないため、意匠性が良いレンジフード100となる。このように、センサカバー400が十分な強度を確保して取り付けられ、センサカバー400を通しての意匠性の低下も抑えることが可能なレンジフード100を提供できる。また、センサカバー400とフード部140との間に隙間が生じにくいため、隙間に油が付着して固着することを低減でき、清掃性も良くなる。
【0065】
センサカバー400は、抜き孔151の内周形状に対応した外周形状を備える突出部410を有する。突出部410の高さは、パネル150の板厚と同じ、または板厚以上である。
【0066】
このように構成することによって、突出している部位が位置決めとなってセンサカバー400がずれ難くなり、さらに抜き孔151に油煙が入り込んで油が固着することを防止できる。
【0067】
押え部160は、センサ300のケース体320である。
【0068】
このようにセンサ300のケース体320を押え部160として使用することによって、部品点数が少なくなるため、製品の製造にかかる時間が短くなる。また、部品点数が少なくなるため、製品にかかる材料費を低減できる。
【0069】
温度センサ300のケース体320は、調理者から視認できない位置においてフード部140に固定されている。
【0070】
このように構成することによって、ケース体320を固定する固定部180が使用者側に露出しないため、意匠性が良いレンジフード100となる。
【0071】
センサは、レンジフード100に関係する情報として、調理器200の上方温度、調理器200の「点火」信号、調理者の有無、部屋の明るさ、フード部140下方に存在する異物までの距離、および操作スイッチから調理者の手までの距離の少なくとも1つを検知する。
【0072】
このように構成することによって、調理器200の上方温度を検知して、調理状態に応じてレンジフード100を自動運転できる。調理器200の「点火」信号を検知して、調理器200の使用に連動してレンジフード100を自動運転できる。調理者の有無を検知して、調理器200を強制的に停止できる。部屋の明るさを検知して、レンジフード100を運転させて室内を換気できる。フード部140下方に存在する異物までの距離を検知して、下引き型レンジフードのフード部降下を制御できる。あるいは、操作スイッチから調理者の手までの距離を検知して、非接触の状態において操作スイッチによる動作を制御できる。
【0073】
センサは、レンジフード100に関係する情報として、調理器200の上方温度を検知する温度センサ300である。検知部310は、水平面に対して傾斜して配置されている。
【0074】
このように構成することによって、温度センサ300をどの位置に配置しても調理器200上方温度を検知することができる。
【0075】
センサカバー400の形成材料が樹脂材料であり、センサカバー400の肉厚が均一である。
【0076】
このように構成することによって、樹脂成形品であるセンサカバー400は、成形不良の一つである「ヒケ」の発生を抑えることができる。これによって、センサカバー400は、意匠性が良く、「ヒケ」を原因とするセンサ300の検知精度に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0077】
温度センサ300は、調理器200の上方温度を複数の画素によって検知する複眼温度センサから構成され、センサカバー400は、水平面と平行に配置されている。センサカバー400の厚みは、調理器200との間の距離が遠い部位に比べて、調理器200との間の距離が近い部位の方が厚い。
【0078】
このように構成することによって、温度センサ300の各画素と調理器200との間の距離の差によって生じる誤差を補正することができる。
【0079】
レンジフード100は、温度センサ300が検知する上方温度をあらかじめ設定した閾値温度と比較してレンジフードの運転状態を制御する制御部130を有する。温度センサ300は複眼温度センサから構成されている。閾値温度は、温度センサ300と調理器200との間の距離が近い画素に比べて、温度センサ300と調理器200との間の距離が遠い画素の方が低い。なお、レンジフード100の運転状態を制御とは、ファン116の風量のみを制御すること、ファン116の風量とフィルタ118の回転数との両者を制御すること、フィルタ118の回転数のみを制御することのいずれかを含んでいる。
【0080】
このように温度センサ300の各画素と調理器200との間の距離に応じて閾値温度を変えることによって、レンジフード100の運転状態を制御する場合に、温度センサ300の各画素と調理器200との間の距離の差によって生じる誤差を補正することができる。
【0081】
レンジフード100は、制御部130を有し、温度センサ300は複眼温度センサから構成されている。閾値温度は、フード部140と調理器200との離隔距離Hが小さい場合に比べて、離隔距離Hが大きい場合の方が低い。
【0082】
このように離隔距離Hに応じて閾値温度を変えることによって、レンジフード100の運転状態を制御する場合に、離隔距離Hの差によって生じる誤差を補正することができる。
【0083】
実施形態のレンジフード100の制御部130は、温度センサ300が検知する上方温度をあらかじめ設定した閾値温度と比較してフィルタ118の回転数をも制御する。したがって、制御部130は、温度センサ300が検知する上方温度に基づいて、ファン116の風量のみを制御すること、ファン116の風量とフィルタ118の回転数との両者を制御すること、フィルタ118の回転数のみを制御することのいずれの自動運転をも実行できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態を述べたが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想に基づいて様々な形態として実施可能であり、それらもまた本発明の範疇であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0085】
100 レンジフード、
110 本体部、
112 吸気口、
114 排気口、
116 ファン、
117 ファンモータ、
118 フィルタ、
119 フィルタモータ、
120 操作パネル、
130 制御部、
135 閾値温度記憶部、
140 フード部、
141 底面部、
150 パネル、
150a 表面、
150b 裏面、
151 抜き孔、
152 第1取付け部、
153 第2取付け部、
154 第1通孔、
155 第2通孔、
160 押え部、
170 内面パネル、
180 固定部、
181 締結ネジ、
200 調理器、
300 温度センサ(センサ)、
310 検知部、
320 ケース体(押え部)、
321 上部開口、
322 支持部、
323 孔部、
324 第1面、
325 第2面、
326 ネジ穴、
327 ピン、
330 蓋部、
331 脚部、
400 センサカバー、
410 突出部、
410a 表面、
420 ピン、
H 離隔距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23