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特許7164206ヌクレオシド代謝拮抗物質のイバンドロネート結合体
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  • 特許-ヌクレオシド代謝拮抗物質のイバンドロネート結合体 図1
  • 特許-ヌクレオシド代謝拮抗物質のイバンドロネート結合体 図2
  • 特許-ヌクレオシド代謝拮抗物質のイバンドロネート結合体 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ヌクレオシド代謝拮抗物質のイバンドロネート結合体
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/073 20060101AFI20221025BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20221025BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20221025BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221025BHJP
   C07H 19/12 20060101ALI20221025BHJP
   C07H 19/173 20060101ALI20221025BHJP
   C07H 19/23 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C07H19/073
A61K31/7068
A61K45/00
A61K47/54
A61K47/55
A61P19/08
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
C07H19/12 CSP
C07H19/173
C07H19/23
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019569867
(86)(22)【出願日】2018-01-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018012687
(87)【国際公開番号】W WO2019005207
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-12-29
(31)【優先権主張番号】62/524,997
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519242403
【氏名又は名称】エムビーシー ファーマ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カルパイスキー, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ジネン, ショーン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0095932(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0041689(US,A1)
【文献】国際公開第2018/129399(WO,A1)
【文献】Novel Bone-Targeting Combination Therapy for Osteosarcoma,Grantome [online],2016年,URL:https://grantome.com/grant/NIH/R43-CA203166-01
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/073
A61P 35/00
A61P 19/08
C07H 19/09
A61K 31/7068
A61P 35/04
A61P 43/00
A61K 47/54
A61K 47/55
A61K 45/00
C07H 19/12
C07H 19/173
C07H 19/23
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造:
【化11】
有する化合物またはその薬学的に受容可能な酸付加塩であって、
ここでXは、以下:
【化11A】
からなる群より選択される抗がん化合物であり、前記抗がん化合物は、5’-,2’-または3’-ヌクレオシジル残基の形態でXとして結合し、Yは、H、アルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、および置換されたヘテロアリールからなる群より選択される、化合物。
【請求項2】
以下の構造:
【化14】
有する化合物またはその薬学的に受容可能な酸付加塩であって、
ここでXは、以下:
【化14A】
からなる群より選択される抗がん化合物であり、前記抗がん化合物は、5’-および3’-ヌクレオシジル残基の形態でXとして結合し、Yは、H、アルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、および置換されたヘテロアリールからなる群より選択される、化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項4】
がん誘導性骨疾患または原発性骨がんを処置するための、請求項1または2に記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項5】
抗がん化合物を骨または周囲組織に送達するための、請求項1または2に記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項6】
骨転移を防止するための、請求項1または2に記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項7】
がん誘導性骨疾患または原発性骨がんを処置するための、請求項1または2に記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物は、1またはこれより多くの治療剤と組み合わせて投与される、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記薬学的組成物は、皮下に、静脈内に、皮内に、筋肉内に、鼻内に、または経口的に投与される、請求項に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状を処置もしくは改善するか、または骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状の頻度もしくは重篤度を減少させるための、請求項1または2に記載の化合物を含む薬学的組成物。
【請求項11】
骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状を処置もしくは改善すること、または骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状の頻度もしくは重篤度を減少させることにおける使用のための、請求項1または2に記載の化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物、または請求項に記載の薬学的組成物であって、ここで該骨がんもしくはがん誘導性骨疾患が、改される、もしくは重症度が低減されるか、または該骨がんもしくはがん誘導性骨疾患と関連する疼痛が、防される、改善される、もしくは重症度が低減される、薬学的組成物。
【請求項12】
骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状を処置もしくは改善するか、または骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状の頻度もしくは重篤度を減少させるための医薬の製造における、請求項1または2に記載の化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩、または請求項に記載の薬学的組成物の使用であって、ここで該骨がんもしくはがん誘導性骨疾患が、改される、もしくは重症度が低減されるか、または該骨がんもしくはがん誘導性骨疾患と関連する疼痛が、防される、改善される、もしくは重症度が低減される、使用。
【請求項13】
ヌクレオシド代謝拮抗物質-イバンドロネート結合体を合成するための方法であって、該方法は、ヌクレオシド-5’-ホスフェートまたはヌクレオシド-2’-もしくは3’-ホスフェートと、トリフルオロ酢酸無水物とを、有機溶媒中の三級アミン塩基の存在下で反応させ、続いて、求核性触媒を添加し、続いて、イバンドロネートを添加し、続いて、水を添加し、イオン交換または逆相クロマトグラフィーによって精製する工程を包含し、前記求核性触媒が、ジメチルアミノピリジンおよびN-メチルイミダゾールからなる群より選択され、前記ヌクレオシド代謝拮抗物質が、以下:
【化16】
からなる群より選択される方法。
【請求項14】
三級アミンは、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、およびピリジンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
有機溶媒は、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
化学、生化学および医学の分野に関して、化合物および上記化合物を使用する方法が本明細書で提供される。より詳細には、ヌクレオシド代謝拮抗物質およびそれらのアナログとイバンドロネートとの結合体、上記結合体のうちの1またはこれより多くを含む薬学的組成物、上記結合体を合成するための方法、ならびに上記結合体を使用して疾患および/または状態を処置するための方法が、本明細書で開示される。
【背景技術】
【0002】
背景
必要性のある患者への活性化合物の送達は、代表的には、全身性の投与によって、例えば、静脈内経路または経口経路を介して達成される。このような全身性の送達は、薬物が身体のある種の領域においてのみ必要とされるとしても、健康な細胞および組織をその薬物に曝す。結果として、健康な細胞および組織は、その薬物によって有害な影響を及ぼされ得、その薬物の顕著により高い濃度が、薬理学的に関連するレベルを、処置を必要とする部位に送達するために必要である。
【0003】
本明細書で提供される組成物および方法は、当該分野におけるこの問題および他の問題に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
化合物、これら化合物を含む組成物、これら化合物を作製するための方法、およびこれら化合物を使用するための方法が、本明細書で提供される。
【0005】
一局面は、式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩に関する。
【0006】
別の局面は、式IIの化合物またはその薬学的に受容可能な塩に関する。
【0007】
式Iおよび式IIの化合物の合成のための方法が、本明細書でさらに開示される。
【0008】
ヌクレオシド代謝拮抗物質およびそれらのアナログを、上記化合物とイバンドロネートとを結合体化することによって骨に送達するための方法がさらになお、本明細書で開示される。
【0009】
式Iおよび/またはIIの1またはこれより多くの化合物、1またはこれより多くの薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤またはこれらの組み合わせを含む薬学的組成物がまた、本明細書で開示される。
【0010】
本明細書で開示される方法のいくつかの局面は、必要性のある患者に、治療上有効な量の、式Iおよび/もしくはIIの1もしくはこれより多くの化合物または上記化合物を含む薬学的組成物を投与することによって、がん、がん誘導性骨疾患、原発性骨がん、骨転移および疼痛が挙げられるが、これらに限定されない、疾患を処置することおよび/または疾患の症状を改善することに関する。このような化合物は、上記疾患の処置のために使用される医薬の製造において使用され得る。このような化合物は、種々の疾患を処置することにおいて使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、生理食塩水、ゲムシタビン-イバンドロネート結合体(GEM-IB)またはゲムシタビン-エチドロネート結合体(GEM-ET)で処置したマウスの乳癌のマウスモデルのカプラン-マイアー生存曲線を提供する。
【0012】
図2図2は、非処置(生理食塩水)のまたは2mg/kg ゲムシタビン-イバンドロネートでQD×5で処置した前立腺がん誘導性骨疾患モデルの画像分析を示す。
【0013】
図3図3は、前立腺がん誘導性骨疾患のマウスモデルにおける転移を示す。
【0014】
マウスを、生理食塩水、または等モル用量のイバンドロネート(Iband)、ゲムシタビン(Gem)、ゲムシタビン-エチドロネート結合体(Gem-Eti)で、またはゲムシタビン-イバンドロネート結合体5(Gem-Ibad)で処置した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
ヌクレオシド代謝拮抗物質は、広い治療用途および生物活性(例えば、抗腫瘍活性および/または抗ウイルス活性)を有するヌクレオシドアナログのクラスの代表である。これらの化合物は、取り込みおよび代謝に関して生理学的ヌクレオシドを模倣し、新たに合成されたDNAの中へと組み込まれ、DNA合成の阻害および成長しつつある鎖の終結を生じる。これらの薬物のうちのいくつかはまた、ヌクレオチド生成、RNA合成に影響を及ぼし、カスパーゼカスケードを活性化する。これらの活性のうちの全てが細胞死をもたらす。ヌクレオシドアナログは、よって、治療上不活性であり、宿主またはウイルスの酵素をそれらの活性形態へと変換され、その後、ヌクレオチド-重合酵素および細胞またはウイルスの代謝および生存に関与する他のヌクレオチド依存性酵素を阻害する。この活性化は、ヌクレオシドアナログを、それらそれぞれの5’-モノ-、ジ-およびトリホスフェートへと代謝的に変換することによって起こる。
【0016】
イバンドロネートは、骨粗鬆症の処置において使用される第3世代の窒素含有ビスホスホネートである;機機構的には、その化合物は、小さなGTP結合タンパク質のイソプレニル化を阻害することによって破骨細胞に影響を及ぼす。骨に対するその効果に加えて、イバンドロネートの抗がん活性の証拠は増えつつある1~8。しかし、これらの効果に関与する機構の理解は、未だ不十分である。
【0017】
他の薬物を骨に送達するためのビスホスホネートの使用は、骨ミネラルへのその高い親和性に起因して、以前から推奨されてきた(例えば、米国特許第6,214,812号(Karpeisky, M. et al.);米国特許第8,586,781号(Karpeisky, A. et al.);米国特許第9,216,204号(Karpeisky, A et al.);および最近の総説を参照のこと)。1つのこのような化合物、MBC-11(シタラビンとエチドロネートとの結合体(例えば、米国特許第7,598,246号(Dixon et al.);米国特許第6,896,871号(Karpeisky et al.)を参照のこと)は、現在臨床開発中である。乳がんまたは前立腺がん誘導性骨疾患の動物モデルにおいて改善された生存を有すると決定されたイバンドロネートの結合体が、本明細書で開示される:それぞれ、図1および図2を参照のこと。二次的な非骨転移の減少もまた観察された。これらの結合体は、このような活性を有するとは推測されてこなかった。このことは、イバンドロネートが骨標的化部分である場合の新規かつ特有の改善および利益を示唆する。
【0018】
例えば、新生物疾患および骨疾患の処置における使用のための、ヌクレオシド代謝拮抗物質およびそれらのアナログの新規なイバンドロネート誘導体が、本明細書で開示される。
【0019】
別段定義されなければ、本出願全体を通じて使用される全ての技術および科学用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「アルキル(alkyl)」基とは、直鎖または分枝鎖のアルキル基を含む、飽和脂肪族炭化水素をいう。いくつかの実施形態において、そのアルキル基は、1~20個の炭素を有する。いくつかの局面において、そのアルキル基は、1~10個の炭素、または1~6個の炭素を有する低級アルキルである。そのアルキル基は、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。置換されている場合、その置換基としては、ヒドロキシ、シアノ、アルコキシ、NOまたはN(CH、アミノ、NまたはSHが挙げられ得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル(cycloalkyl)」基とは、環式アルキル基であって、そのアルキル環を形成する3~10個、または例えば、5個もしくは6個の炭素原子を有するものをいう。
【0022】
本明細書で使用される場合、「アリール(aryl)」基とは、共役されたπ電子系を有する少なくとも1個の環を有する芳香族基をいい、炭素環式アリール、複素環式アリールおよびビアリール基を含み、これらのうちのいずれも、必要に応じて置換され得る。これらの基の上の置換基としては、ハロゲン、トリハロメチル、ヒドロキシル、SH、シアノ、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアミノ基が挙げられ得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール(heteroaryl)」とは、芳香族環であって、その芳香族環の中に1~3個のヘテロ原子を有し、その環の中の原子の残りが炭素原子であるものをいう。適切なヘテロ原子としては、酸素、硫黄、および窒素が挙げられ、例示的なヘテロアリールとしては、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、ピロロ、ピリミジル、ピラジニルおよびイミダゾリルが挙げられる。これらのヘテロアリール環はまた、置換されていてもよい。これらのヘテロアリール基の上の置換基としては、ハロゲン、トリハロメチル、ヒドロキシル、SH、シアノ、アルコキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアミノ基が挙げられ得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「抗がん化合物(anti-cancer compound)」または「抗がん活性を有する化合物(compound having anticancer activity)」とは、前臨床的もしくは臨床的な抗がん活性を示すか、またはがんに罹患している患者を処置するためにクリニックで使用される任意の化合物をいう。
【0025】
本明細書で使用される場合、「改変されていない核(または複素環式)塩基(unmodified nucleic (or heterocyclic) base)」または「天然の核塩基(natural nucleic base)」とは、さらなる置換基または改変を有しない、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、およびチミンを含む核酸の中で見出される任意の塩基である。
【0026】
本明細書で使用される場合、「改変された核(または複素環式)塩基(modified nucleic (or heterocyclic) base)」とは、改変されていない核塩基と比較して、化学構造において任意の改変を含む核酸の中で見出される任意の塩基である。
【0027】
本明細書で使用される場合、「改変されていない糖(unmodified sugar)」とは、β-D-リボフラノースまたは2-デオキシ-β-D-リボフラノースである。
【0028】
本明細書で使用される場合、「改変された糖(modified sugar)」とは、改変されていない糖の化学構造の中に任意の改変を含む任意の糖部分である。
【0029】
ヌクレオシド代謝拮抗物質Xは、残基または部分として本明細書で提供される化学構造へと、その分子において5’-OH、2’-OHまたは3’-OH位置の水素原子の置換を介して、結合される。
【0030】
1またはこれより多くのキラル中心を有する本明細書で記載される任意の化合物において、絶対的立体化学が明確に示されない場合、各中心が独立して、R配置またはS配置またはこれらの混合物であってもよいことは、理解される。よって、本明細書で提供される化合物は、エナンチオマーとして純粋であってもよいし、立体異性体の混合物であってもよい。EまたはZとして定義され得る幾何異性体を生成する1またはこれより多くの二重結合を有する本明細書で記載される任意の化合物において、各二重結合が独立して、EまたはZまたはこれらの混合物であってもよいことはまた、理解される。同様に、全ての互変異性形態もまた、包含されることが意図される。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される化合物は、以下の化学構造I:
【化1】
を有し、
ここでXは、抗がん化合物であり、Yは、H、アルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、置換されたヘテロアリールから選択される。その抗がん化合物は、細胞、動物、またはヒトのレベルで抗がん活性を示した化合物から選択される。
【0032】
他の実施形態において、Xが、ヌクレオシド代謝拮抗物質またはヌクレオシドアナログである式Iの化合物が本明細書で開示される。ヌクレオシド代謝拮抗物質またはヌクレオシドアナログの例としては、シタラビン、ゲムシタビン、クロファラビン、クラドリビン、ビダーザ、ダコゲン、フルダラビン、フロクスウリジン、ネララビンおよびペントスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
なお他の実施形態において、Xが、ヌクレオシド代謝拮抗物質を含み、以下の構造:
【化2】
を有する基から選択され、ここで
Bが天然または改変された核酸塩基であり、
=Hであり、
およびRは、H、OH、F、Clからからなる群より独立して選択される、
式Iの化合物が、本明細書で開示される。
【0034】
別の実施形態は、化学構造II:
【化3】
を有する化合物に関し、
ここでXは、抗がん化合物であり、Yは、H、アルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、および置換されたヘテロアリールから選択される。その抗がん化合物は、細胞、動物、またはヒトのレベルで抗がん活性を示した化合物から選択される。
【0035】
他の実施形態において、Xが、ヌクレオシド代謝拮抗物質またはヌクレオシドアナログである式IIの化合物が本明細書で開示される。ヌクレオシド代謝拮抗物質またはヌクレオシドアナログの例としては、シタラビン、ゲムシタビン、クロファラビン、クラドリビン、ビダーザ、ダコゲン、フルダラビン、フロクスウリジン、ネララビンおよびペントスタチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
別の実施形態において、Xが、
【化4】
を含み、
ここでBは、天然または改変された核酸塩基であり、
およびRは、H、OH、F、Clからなる群より独立して選択される、
式IIの化合物が、本明細書で開示される。
【表1-1】
【表1-2】
【0037】
表1に示される例示的なヌクレオシドは、Xとして、それらの5’-、2’-または3’-ヌクレオシジル残基またはアナログ形態において結合し得、例えば、5’-O-、2’-O-または3’-O-を通じて結合し得る。
【0038】
本明細書で記載される化合物の薬学的に受容可能な非毒性の酸付加塩およびこれらを含む薬学的に受容可能な製剤がまた、本明細書で企図される。このような塩としては、有機酸および無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、メタンスルホン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、ソルビン酸、アコニット酸、サリチル酸、フタル酸、エンボン酸、エタン酸などが挙げられるが、これらに限定されない)から得られるものが挙げられる。
【0039】
本明細書で記載される薬学的組成物は、好ましくは、単位投与量として適切な物理的に別個の単位、またはヒト被験体および他の哺乳動物に対する単一もしくは複数投与レジメンにおいて投与されるべき単位用量の所定のフラクションを意味する、単位投与形態において製剤化され、各々の単位は、適切な薬学的賦形剤と会合した状態で所望の治療効果を生じるように計算された活性物質の所定の量を含む。その組成物は、当該分野で周知の手順を使用することによって、患者に投与した後に活性成分の徐放または遅延した放出を提供するように製剤化され得る。
【0040】
本明細書で提供される薬学的組成物は、少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤と会合した式Iおよび/またはIIの1またはこれより多くの化合物を含む。このような組成物を調製するにあたって、その活性成分は通常、賦形剤と混合されるかもしくは賦形剤によって希釈され、またはカプセルもしくはサシェの形態にあり得るこのようなキャリアの中に閉じ込められる。その賦形剤が希釈剤として働く場合、それは、固体、半固体、または液体の物質であり得、それらは、その活性成分のためのビヒクル、キャリア、または媒体として作用する。従って、その組成物は、錠剤、丸剤、散剤、エリキシル剤、懸濁物、エマルジョン、液剤、シロップ剤、軟質および硬質のゼラチンカプセル、坐剤、滅菌注射用液剤および滅菌パッケージされた散剤の形態にあり得る。
【0041】
適切な賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリジノン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースが挙げられる。その製剤は、さらに以下を含み得る: 滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイル);湿潤剤;乳化剤および懸濁剤;保存剤(例えば、安息香酸メチルおよびヒドロキシ安息香酸プロピル);甘味剤;および矯味矯臭剤。
【0042】
本明細書で記載される1またはこれより多くの化合物を含む薬学的製剤を調製するにあたって、その活性化合物を粉砕して、他の成分と合わせる前に適切な粒度を提供することは、必要であり得る。その活性化合物が実質的に不溶性である場合、それは通常、200メッシュ未満の粒度へと粉砕される。その活性化合物が実質的に水溶性である場合、その粒度は通常、その製剤中で実質的に均一な分布を提供するように粉砕することによって調節される(例えば、約40メッシュ)。
【0043】
本明細書で提供される別の実施形態は、上記化合物とイバンドロネートとを結合体化することによって、抗がん化合物を骨へと送達するための方法に関する。いくつかの局面において、その得られる結合体は、式IまたはIIで開示される一般構造を有する。
【0044】
本明細書で提供される別の実施形態は、新生物疾患、骨疾患、およびがん誘導性骨疾患(例えば、原発性骨がんおよび転移癌を含め、任意の組織に由来する任意のがんが挙げられる)を改善するまたは処置することにおける使用のための、式IもしくはIIの新規な化合物、または式IもしくはIIの新規な化合物を含む薬学的組成物である。
【0045】
本明細書で提供される別の実施形態は、疼痛を改善するまたは処置することにおける使用のための、式IもしくはIIの新規な化合物、または式IもしくはIIの新規な化合物を含む薬学的組成物である。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「改善する(ameliorating)」または「改善する(ameliorate)」とは、例えば、より許容性にするために、疾患、感染、状態、または疼痛の改善(improvement)または良くする(bettering)ことを示す。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「処置する(treat)」または「処置(treatment)」とは、治療的処置および予防的手段、維持手段、または防止的手段の両方をいい、ここでその目的は、望ましくない生理学的状態を防止すること、または症状の重篤度における低減もしくはその症状の根底にある原因を減少させることを含む、有益なもしくは望ましい臨床結果を得ることである。例示的な症状としては、骨の疼痛、病的骨折、脊髄圧迫、およびクオリティー・オブ・ライフの全体的な低下が挙げられる。処置は、過剰なレベルの副作用なしに、臨床上顕著な応答を誘発することを含む。成功裡の処置は、骨格関連事象の所見(例えば、病的骨折、脊髄圧迫、骨への照射の必要性(疼痛もしくは差し迫った骨折のために)または骨への外科手術)の減少を含む。Ibrahim A, Scher N, Williams G, et al. Approval summary for zoledronic acid for treatment of multiple myeloma and cancer bone metastases. Clin Cancer Res. 2003;9:2394-9を参照のこと。
【0048】
新生物疾患としては、がん、白血病、および転移疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書で提供される他の実施形態は、疼痛を改善するかまたは処置することにおける使用のための、式IもしくはIIの新規な化合物またはそれらの薬学的組成物である。
【0050】
他の実施形態において、式IもしくはIIに従う化合物またはそれらの薬学的組成物のうちのいずれかは、医薬として使用され得る。
【0051】
さらなる実施形態において、式IもしくはIIに従う化合物またはそれらの薬学的組成物のうちのいずれかは、新生物疾患または疼痛の治療において使用され得る。
【0052】
なおさらなる実施形態において、式IもしくはIIに従う化合物またはそれらの薬学的組成物のうちのいずれかは、新生物疾患または疼痛の処置のための医薬の製造のために使用され得る。
【0053】
本明細書で提供される別の実施形態は、抗がんヌクレオシド代謝拮抗物質およびそれらのアナログを、骨および周囲組織へと、式IもしくはIIの化合物またはそのような化合物を含む薬学的組成物を使用して送達するための方法である。
【0054】
当業者は、本発明の化合物がヌクレオシドトリホスフェートに構造的に似ていることを認識する。本発明の化合物は、従来のヌクレオシドトリホスフェートとは、βリン原子とγリン原子との間を架橋する原子において異なる: O(トリホスフェート) 対 C(本発明の化合物)。Bogachev10, 11によるヌクレオシドトリホスフェート合成に基づいてイバンドロネート結合体を作製するための方法が、本明細書で提供される。ヌクレオシドトリホスフェート合成の方法は、当該分野で公知であり(例えば、Vaghefi12を参照のこと)、本発明のイバンドロネート結合体の調製のために使用されるように、当業者によって改変され得る。
【0055】
本発明のさらなる目的、利点、および新規の特徴は、以下の本発明の実施例を試験した際に当業者に明らかになり、実施例は、限定であると解釈されるべきではない。
【0056】
種々の刊行物が本明細書で引用され、これらの開示は、それらの全体において参考として援用される。このような刊行物は、本明細書で記載されるものを補充する例示的な、手順のまたは他の詳細を提供し得る。本開示が、先行発明によってこのような刊行物に先立つ権利がないという承認として解釈されるべきものは、本明細書中には何も存在しない。さらに、提供される刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なることがあり得るので、独立して確認される必要があり得る。
【0057】
本発明の実施形態が示されかつ記載されてきたが、その改変は、本開示の趣旨および教示から逸脱することなく当業者によってなされ得る。本明細書で記載される実施形態は、例示に過ぎず、限定であるとは意図されない。本明細書で開示される化合物および方法の多くのバリエーションおよび改変は可能であり、本発明の範囲内である。数値範囲または限定が明確に述べられる場合、このような明確な範囲または限定は、その明確に述べられた範囲または限定の範囲内に入る反復範囲または類似の大きさの限定を含むことが理解されるべきである。より広い用語(例えば、含む、包含する(comprises)、含む、包含する、が挙げられる(includes)、有する(having)など)の使用は、より狭い用語(例えば、からなる(consisting of)、から本質的になる(consisting essentially of)、から実質的に構成される(comprised substantially of)などの裏付けを提供することが理解されるべきである。よって、保護の範囲は、上記の説明によって限定されるのではなく、以下の請求項によってのみ限定され、その請求項の範囲は、その請求項の主題の全ての均等物を含む。各々のおよびあらゆる最初の請求項は、本発明の実施形態として本明細書の中に組み込まれる。従って、請求項は、さらなる説明であり、本明細書で開示される好ましい実施形態への追加である。
【実施例
【0058】
実施例1. ゲムシタビン-イバンドロネート結合体 5
【化5】
【0059】
Arの陽圧下(バルーン)および撹拌下で、アイスバス上で冷却した無水MeCN(10ml)中のゲムシタビン-5’-ホスフェート(1, 1.03g, 3mmol)、ジメチルアニリン(1.51ml, 12.01mmol)およびトリエチルアミン(418.31μl, 3mmol)の混合物に、MeCN(10ml)中のトリフルオロ酢酸無水物(TFAA, 2.5ml, 18mmol)の冷たい溶液を滴下した。その懸濁物は透明な溶液になった。これは、無水物2(濃黄色溶液)の形成を示す。反応混合物を室温において15分間撹拌し、次いで、真空ラインに接続して、過剰なTFAA/TFAを除去した。15分後、MeCN(10ml)中のN-メチルイミダゾール(NMI, 1.2ml, 15.01mmol)およびEtN(3.35ml, 2.24mmol)の混合物を、0℃において撹拌して添加した。5分後、そのアイスバスを外し、その反応混合物を室温において20分間撹拌した(淡黄色溶液)。次いで、MeCN(20ml, モレキュラーシーブ上で1時間貯蔵)中のイバンドロネートBuN塩の溶液を、カニューレを介して添加し、その反応物を室温において10分間撹拌した。次いで、50mM 酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)緩衝液(pH5.4)(60ml)を添加し、溶液をDCMで抽出した(2×60ml)。合わせた有機抽出物を、緩衝液(60ml)で逆抽出した。合わせた水抽出物を分離し、pHを5.3~5.5へと50% 水性AcOHで調節し、4つの等しい(40mL)容積へと分割し、精製するまで凍結した。1つの部分を融解し、50mm TEAA(pH5.3~5.5)で100mLへと希釈し、Sepra C18-E(50μm, 65A; 50mL)を有するカラムに載せた。そのカラムを、50mM TEAA(pH5.3)(800ml)、次いで、50mM TEAA(pH5.3)中の4% MeCN、そして最後に、同じ緩衝液中の10% MeCNで溶離した。適切な画分をプールし、1M LiOAcを、LiOAc 60mMの最終濃度になるように添加した。溶液を、<30℃のバス温度においてロータリーエバポレーターで15mlへと濃縮し、標題化合物を、200mL アセトン-MeOHミックス(4:1)で沈殿させた。そのミックスを冷蔵庫で60分間静置し、残渣を遠心分離(3000rpm, 3分間, 4℃)によって分離した。その沈殿物を、その同じミックスで2回洗浄し、高真空で乾燥させて、230mgの結合体をLi塩として得た。そのLi塩を水に溶解させ、Dowex 50Wx8 (H+)を通過させ、凍結乾燥させて、200mgの結合体 5を得た。
【0060】
【化6】
【0061】
HPLC条件:
・カラム: Kinetex 5u XB-C18 100A 4.6×100mm(Phenomenex).
・移動相: A - 20mM 酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA); B - 50% アセトニトリル/20mM TEAA
・0から20% Bへと15分で直線勾配
・流速: 1ml/分
・検出 - 274nm
【0062】
実施例2. シタラビン-イバンドロネート結合体
【化7】
【0063】
Arの陽圧下(バルーン)および撹拌下で、アイスバス上で冷却した無水MeCN(10ml)中のシタラビン-5’-ホスフェート(araCMP, 850mg, 2.63mmol)、N,N-ジメチルアニリン(1.28mL, 10.24mmol)およびEtN(374μL, 2.73mmol)の混合物に、MeCN(10ml)中のTFAA(1.02mL, 13.6mmol)の冷たい溶液を滴下した。その懸濁物は透明な溶液になった。これは、無水物7(濃黄色溶液)の形成を示す。反応混合物を室温において15分間撹拌し、次いで、真空ラインに接続して、過剰なTFAA/TFAを除去した。15分後、CHCN(10mL)中のNMI(629μL, 14.14mmol)およびEtN(1.84mL, 23.8mmol)の混合物を、0℃において撹拌して添加した。5分後、そのアイスバスを外し、その反応混合物を室温において20分間撹拌した(淡黄色溶液)。次いで、MeCN(35ml, モレキュラーシーブ上で1時間貯蔵)中のイバンドロネートBuN塩(7g)の溶液を、カニューレを介して添加し、その反応物を室温において10分間撹拌した。
【0064】
その反応物を、水(40mL)を添加することによってクエンチし、DCMで抽出して(2×40mL)、有機塩基を除去した。その水性層を、炭酸水素トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAB, 0.1M, pH6.8)で希釈し、Amberchrome CG61M(113mL)を有するカラムに載せた。載せ終わった後、そのカラムをTEAB(5 CV)で、次いで、DI水(8 CV)で溶離した。最後に、その結合体を、CHCN-HO(1:4~1:3)で溶離した。適切な画分を合わせ、バス温度<30℃において真空中で容積50mL未満へと濃縮した。その得られた濃縮物を凍結乾燥して、結合体をEtN塩(9)として得た。収量: 512mg(33%)。
【0065】
実施例3. シタラビン-イバンドロネート結合体のナトリウム塩
上記で得られた結合体のトリエチルアンモニウム塩の一部(330mg, 0.35mmol)を、水(10mL)に溶解し、Dowex 50WX8(Na形態)を通過させた(7mL, 10×)。そのカラムを、水で連続して溶離し、UV活性部分を集め、HPLCによって分析した。純粋な画分を集め、凍結乾燥して、結合体をナトリウム塩(10)として得た。収量: 144mg, 60%。
【化8】
【0066】
実施例4. 乳がんの齧歯類モデルにおいて生存利益を提供するゲムシタビン-イバンドロネート結合体 5およびゲムシタビン-エチドロネート結合体の実証
8週齢の雌性Harlanヌードマウス(Hsd:Athymic Nude-Foxn1nu)に、ダルベッコリン酸緩衝化生理食塩水中に10 細胞/mLにおいて、MDA-MB-231-luc-D3H2LN細胞(Caliper/Xenogen)を100μL 心内注射して投与した。移植の22日後に、その動物を10匹の群に無作為化した。各群に、1週間につき5日間(QD×5)、100μL 腹腔内注射として以下の薬剤のうちの1つを与えて、以下の投与を達成した: 生理食塩水、5mg/kg ゲムシタビン-イバンドロネート結合体、6mg/mg ゲムシタビン-エチドロネート結合体、等モル量の遊離エチドロネート、等モル量の遊離イバンドロネート、等モル量の遊離ゲムシタビン。遊離エチドロネート、イバンドロネートまたはゲムシタビンは、生存に対して顕著な効果を有さなかったが、図1に示されるように、ゲムシタビン-イバンドロネート結合体およびゲムシタビン-エチドロネート結合体はともに、生存を改善し、ゲムシタビン-イバンドロネート結合体は、最も大きな利益を提供した。
【0067】
実施例5. 前立腺がん誘導性骨疾患の齧歯類モデルにおいて生存利益を提供するゲムシタビン-イバンドロネート結合体 5の実証
6週齢の雄性SCIDマウスに、10μLの10 22RV1-Luc+ 前立腺がん細胞を脛骨へと注射した。6日目の発光から移植が確認されたので、マウスを10匹の群へと無作為化し、7日目に投与を開始した。マウスに、5日間/週で、生理食塩水または2mg/kg ゲムシタビン(gemcitibine)-イバンドロネート結合体(化合物5, 実施例1)を、6週間目の終了まで腹腔内注射で与え、7日間ごとに画像化した。Xenogen画像化ステーションを使用して、腫瘍サイズを可視化した;淡青色から赤色までのヒートマップは、増大しつつある腫瘍細胞数を示す。図2に示されるように、化合物5(実施例1)で処置した全てのマウスは、42日間の最後に生きていた一方で、非処理の生理食塩水コントロールは、10匹のマウスのうちの6匹のみが生き残った。さらに、画像分析は、28日目以降から、より少ないがん細胞が化合物5で処置したマウスにおいて存在することを示す。
【0068】
実施例6. 前立腺がん誘導性骨疾患の齧歯類モデルにおいて転移の発生を低減するゲムシタビン-イバンドロネート結合体およびゲムシタビン-エチドロネート結合体の実証
上記実施例5におけるように、6週齢の雄性SCIDマウスに、10μLの10 22RV1-Luc+ 前立腺がん細胞を脛骨へと注射した。6日目の発光から移植が確認されたので、マウスを10~13匹の群へと無作為化し、7日目に投与を開始した。マウスに、QD×5(5日間/週)で生理食塩水または2mg/kg ゲムシタビン-イバンドロネート結合体または等モル量のゲムシタビン-エチドロネート結合体、遊離イバンドロネート、または遊離ゲムシタビンの腹腔内注射を6週間目の最後まで与え、7日ごとに画像化した。Xenogen画像化ステーションを使用して、腫瘍細胞および脛骨移植部位に対して遠位の転移を可視化した。図3に示されるように、ゲムシタビン-イバンドロネート結合体およびゲムシタビン-エチドロネート結合体はともに、34日目および41日目に、遠位の転移を有するマウスのパーセントを低減した。ゲムシタビン-イバンドロネート結合体で処置したマウスで優れた利益が観察された。
【0069】
刊行物
【化9】
【化10】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
【化11】

を含む化合物またはその薬学的に受容可能な酸付加塩であって、
ここでXは、抗がん化合物であり、Yは、H、アルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、および置換されたヘテロアリールからなる群より選択される、化合物。
(項目2)
Xは、以下の構造:
【化12】

を有するヌクレオシド代謝拮抗物質であり、ここで
Bは、天然または改変された核酸塩基であり、
=Hであり、そして
およびR は、H、OH、F、およびClからなる群より独立して選択される、
項目1に記載の化合物。
(項目3)
Xは、以下の構造:
【化13】

を有するヌクレオシド代謝拮抗物質であり、ここで
Bは、天然または改変された核酸塩基であり、そして
およびR は、H、OH、F、およびClからなる群より独立して選択される、
項目1に記載の化合物。
(項目4)
【化14】

を含む化合物またはその薬学的に受容可能な酸付加塩であって、
ここでXは、抗がん化合物であり、Yは、H、アルキル、アリール、置換されたアリール、ヘテロアリール、および置換されたヘテロアリールからなる群より選択される、化合物。
(項目5)
Xは、以下の構造:
【化15】

を有するヌクレオシド代謝拮抗物質であり、ここで
Bは、天然または改変された核酸塩基であり、
およびR は、H、OH、F、およびClからなる群より独立して選択される、
項目4に記載の化合物。
(項目6)
Xは、シタラビン、ゲムシタビン、クロファラビン、クラドリビン、ビダーザ、ダコゲン、フルダラビン、フロクスウリジン、ネララビンおよびペントスタチンからなる群より選択される、項目1~5のいずれか1項に記載の化合物。
(項目7)
項目1~6のいずれか1項に記載の化合物および薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤を含む、薬学的組成物。
(項目8)
がん誘導性骨疾患または原発性骨がんを処置するための方法であって、該方法は、治療上有効な量の、項目1~6のいずれか1項に記載の化合物、または項目1~6のいずれか1項に記載の化合物を含む薬学的組成物を、その必要性のある被験体に投与する工程を包含する方法。
(項目9)
ヌクレオシド代謝拮抗物質を骨または周囲組織に送達するための方法であって、該方法は、治療上有効な量の、項目1~6のいずれか1項に記載の化合物または項目1~6のいずれか1項に記載の化合物を含む薬学的組成物を、その必要性のある被験体に投与する工程を包含する方法。
(項目10)
骨転移を防止するための方法であって、該方法は、治療上有効な量の、項目1~6のいずれか1項に記載の化合物または項目1~6のいずれか1項に記載の化合物を含む薬学的組成物を、その必要性のある被験体に投与する工程を包含する方法。
(項目11)
がん誘導性骨疾患または原発性骨がんを処置するための方法であって、該方法は、治療上有効な量の、項目1~6のいずれか1項に記載の化合物または項目1~6のいずれか1項に記載の化合物を含む薬学的組成物を、その必要性のある被験体に投与する工程を包含する方法。
(項目12)
前記化合物は、1またはこれより多くの治療剤と組み合わせて投与される、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記化合物または前記薬学的組成物は、皮下に、静脈内に、皮内に、筋肉内に、鼻内に、または経口的に投与される、項目11に記載の方法。
(項目14)
骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状を処置もしくは改善するか、または骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状の頻度もしくは重篤度を減少させるための方法であって、該方法は、項目1~6のいずれか1項に記載の化合物または項目1~6のいずれか1項に記載の化合物を含む薬学的組成物を、その必要性のある被験体に投与する工程を包含する方法。
(項目15)
骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状を処置もしくは改善すること、または骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状の頻度もしくは重篤度を減少させることにおける使用のための、項目1~6のいずれか1項に記載の化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩、または項目7に記載の薬学的組成物であって、ここで該骨がんもしくはがん誘導性骨疾患が、重篤度において改善もしくは低減されるか、または該骨がんもしくはがん誘導性骨疾患と関連する疼痛が、重篤度において防止、改善、もしくは低減される、化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩、または薬学的組成物。
(項目16)
骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状を処置もしくは改善するか、または骨がんもしくはがん誘導性骨疾患の少なくとも1つの症状の頻度もしくは重篤度を減少させるための医薬の製造における、項目1~6のいずれか1項に記載の化合物もしくはその薬学的に受容可能な塩、または項目7に記載の薬学的組成物の使用であって、ここで該骨がんもしくはがん誘導性骨疾患が、重篤度において改善もしくは低減されるか、または該骨がんもしくはがん誘導性骨疾患と関連する疼痛が、重篤度において防止、改善、もしくは低減される、使用。
(項目17)
ヌクレオシド代謝拮抗物質-イバンドロネート結合体を合成するための方法であって、該方法は、ヌクレオシド-5’-ホスフェートまたはヌクレオシド-2’-もしくは3’-ホスフェートと、トリフルオロ酢酸無水物とを、有機溶媒中の三級アミン塩基の存在下で反応させ、続いて、求核性触媒を添加し、続いて、イバンドロネートを添加し、続いて、水を添加し、イオン交換または逆相クロマトグラフィーによって精製する工程を包含する方法。
(項目18)
三級アミンは、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、およびピリジンからなる群より選択される、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記求核性触媒は、ジメチルアミノピリジンおよびN-メチルイミダゾールからなる群より選択される、項目17に記載の方法。
(項目20)
有機溶媒は、アセトニトリル、ピリジン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドからなる群より選択される、項目17に記載の方法。
図1
図2
図3