(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法
(51)【国際特許分類】
B27K 5/00 20060101AFI20221025BHJP
B27K 5/06 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B27K5/00 F
B27K5/06 B
(21)【出願番号】P 2021504401
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2018121944
(87)【国際公開番号】W WO2020029507
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】201810891387.2
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521031420
【氏名又は名称】中国林業科学研究院木材工業研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】黄 栄鳳
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106217566(CN,A)
【文献】特開2004-345175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 5/00
B27K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無垢板材の厚さ方向における各層の含水率を調整することにより、
無垢板材の含水率を調整する際には、浸水及び/又は乾燥の手段により、無垢板材の乾湿界面を移動させ、無垢板材内部の低含水率層にドライエリアを形成し、無垢板材内部の高含水率層にウェットエリアを形成し、ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度をリアルタイムに検出し、
無垢板材内部の厚さ方向にドライエリアとウェットエリアを形成し、ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差を0.2MPa以上にし、ドライエリアとウェットエリアの位置分布を調整した後、
ホットプレス機で圧縮し、
無垢板材をホットプレス機に置いて圧縮すること、具体的には無垢板材をホットプレス機に置き、ホットプレス機を始動して100~150℃の温度で、2~7mm/minの圧縮速度で、3MPa以上の圧力で無垢板材を圧縮し、変位センサを用いて圧密層の厚さをリアルタイムに検出及び制御し、無垢板材のウェットエリアに高密度圧密層を形成することにより
、圧密化無垢板材を得る、
ことを特徴とす
る無垢板材の圧密化製造方法。
【請求項2】
前記圧密化無垢板材は、圧密層が木材表面にある表層圧密化板材、圧密層が木材の厚さ方向の中間にある中間層圧密化板材又は圧密層が木材の厚さ方向の中心にある中心層圧密化板材を含む、ことを特徴とする請求項
1に記載
の無垢板材の圧密化製造方法。
【請求項3】
表層圧密化板材の含水率を調整する方法は、先ず無垢板材を含水率が15%以下になるように乾燥し、次に木材を端部シーリングした後に浸水し又は端部シーリングせずに噴水し、木材表面の含水率を増加させ、木材表面にウェットエリアを形成し、浸水時間又は噴水量を制御することにより、木材内部の乾湿界面を移動させ、木材表面のウェットエリアと木材内部のドライエリアの位置分布を調整し、木材表面のウェットエリアと木材内部のドライエリアとの間の降伏応力度の差を調整することである、ことを特徴とする請求項
2に記載
の無垢板材の圧密化製造方法。
【請求項4】
中間層圧密化板材又は中心層圧密化板材の含水率を調整する方法は、無垢板材の含水率を15%以上に調整し、木材を端部シーリングした後、木材を乾燥処理することにより、木材の厚さ方向に外側から内側に含水率勾配が形成され、それにより木材表面にドライエリアが形成され、木材内部にウェットエリアが形成され、次に、板材をホットプレス機でクランプして加熱し、板材内部の乾湿界面を移動させ、それにより木材表面のドライエリアと木材内部のウェットエリアの位置分布を調整し、木材表面のドライエリアと木材内部のウェットエリアとの間の降伏応力度の差を調整することである、ことを特徴とする請求項3に記載
の無垢板材の圧密化製造方法。
【請求項5】
乾湿界面移動の公式は以下の通りであり、
【数1】
ここで、T
Sはホットプレス機でクランプし加熱するときの無垢板材の表面温度℃であり、T
Vは水の沸点温度℃であり、T
0は木材の初期温度であり、K
1、K
2はそれぞれウェットエリア、ドライエリアの木材の熱伝導係数W/m・Kであり、hは木材の厚さmであり、D
1はウェットエリアの木材の温度拡散率m
2/hであり、ρ
Lは木材の界面で単位体積あたりの蒸発される水分の重量kg/m
3であり、tはホットプレス機でクランプして加熱する時間であり、Sは時間がtであるときの界面から板面までの距離mであり、Lは界面水分の蒸発潜熱kJ/kgである、ことを特徴とする請求項
4に記載
の無垢板材の圧密化製造方法。
【請求項6】
端部シーリングは、骨膠、パラフィン又はアスファルトによって無垢板材の端部をシーリングする、ことを特徴とする請求項
3又は4に記載
の無垢板材の圧密化製造方法。
【請求項7】
圧縮が完了した後、先ずホットプレス機で5分間保持してから、ホットプレス機の圧力を1MPaに下げ、30分間以上保持し、ホットプレス機を開けて、プレートから木材を取り出し、熱処理窯内に入れ、180℃以上の高温熱処理成形を実行するが、成形する前に先ず圧縮板材を含水率が10%以下になるまで乾燥し、窯内の温度が目標温度まで上昇した後、窯内の圧力を0.25MPa以上になるように熱処理窯内に水蒸気を注入し、1時間以上保持し、最後に窯内の圧力を0.1MPaに下げた後、木材温度を60℃以下に下げ、窯内から取り出し、高湿度環境にて木材の含水率を8%以上に調整する、ことを特徴とする請求項1に記載
の無垢板材の圧密化製造方法。
【請求項8】
前記圧密化無垢板材は、さらに複数の圧密層を有する多層圧密化板材を含み、多層圧密化板材は先ず無垢板材を上下2つの圧密層を有する表層圧密化板材に加工し、次にホットプレス機に置き続き、ホットプレートで接触乾燥し、さらに板材内部の厚さ方向における乾湿界面を調整し、再び圧縮することにより、複数の圧密層を有する多層圧密化板材を得る、ことを特徴とする請求項
2に記載
の無垢板材の圧密化製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無垢板材の圧密化製造方法に関し、特に密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法に関し、無垢材の加工分野に関する。
【背景技術】
【0002】
木材圧縮技術は20世紀30年代にアメリカとドイツで最初に現われ、最初の圧縮木材は、レーダーに探知されることを防止するために、金属材料の代わりに、軍用機に使用された。20世紀90年代になってから、軟質木材の性能を改善し、人工林木材の応用範囲を広げることを目的とする木材圧縮技術の研究が世界各国の学者と産業界に注目されている。
【0003】
20数年間の研究を経て、木材圧縮技術は、木材の軟化、圧縮木材の力学的性質の制御、圧縮変形固定などが徐々に改善され、原木整形圧縮、製材全体圧縮、単板圧縮、製材表層圧縮、及び高周波加熱軟化と変形固定などの木材圧縮加工技術体制を形成した。井上雅文氏により開発された180℃の飽和蒸気圧(10Kgの圧力に相当する)で10分間処理し又は200℃の飽和蒸気圧(15Kgの圧力に相当する)で2分間処理する圧縮変形固定技術は、圧縮変形を永久的に固定することができる。この技術の開発は、材料の寸法安定性の角度から、木材圧縮技術の応用を更に前へ推進させた。しかし、材料を加工する装置が複雑であり、且つ装置のコスト及び生産コストが非常に高いため、今まで、このような木材全体圧縮技術は工業的に応用されていない。
【0004】
上記圧縮技術はいずれも木材全体を軟化し圧縮する。このような圧縮方式において、木材の力学的性質の向上は主に圧縮率の増加に依存する。しかし、圧縮率を向上させると圧縮木材の製造コストが増加してしまう。この課題について、多くの学者が様々な方式の表層圧縮研究を行ったが、その目的は低い圧縮率で木材の表面密度と硬度を向上させることである。塗登雲らは、乾燥ポプラを180℃で350秒間予熱した後、高温熱軟化圧縮を実施することにより、表層密度が比較的に大きい表層圧縮木材を得られたが、このような圧縮方式により得られた表層高密度化木材は、密度分布の結果から、中間部分も実際に圧縮されたことが分かった。このような圧縮木材は200℃、4時間の常圧後の熱処理固定を経た後、リバウンド率が最低3%まで低下される。Zhan JFらは、基本密度が319kg/m3のモミの気乾材の表面に噴水した後、直接160℃又は180℃のホットプレス機に置いて圧縮し、0.4分間以内に28mmから23.5mmに圧縮することにより、ピーク密度が650kg/m3より大きい上下面いずれも圧密化された木材を得られたが、圧密層の厚さが非常に限られ(又は非常に小さい)、密度分布を制御することができなかった。この研究でも常圧後の熱処理固定実験を実施したが、結果としては熱処理後に寸法安定性を最大40%まで向上させることができる。Clevan LamasonとMeng Gongらはポプラ材表面(深さ1mm)を沸騰した熱湯に5分間浸した後、145℃、175℃と205℃のホットプレス機で圧縮する方式を採用して、片面の表面密度が大きい圧縮木材を得た。また、145℃で圧縮された木材に対し温度が190℃、200℃と210℃である常圧後の熱処理を実施して圧縮変形固定を行うことにより、リバウンド率を3%に下げることができた。
【0005】
Inoue M、Gabrielli C、劉君良らは、木材表層にフェノール樹脂とメラミン樹脂などの化学ポリマーを含浸させた後に木材表層圧縮を行うことにより、表面性質と寸法安定性が顕著に改善される圧縮木材を得ることができるが、有害物質放出の課題が存在するため、その普及と応用を制限していると報道した。
【0006】
そのため、如何に低圧縮率で低密度木材の密度と強度を大幅に向上させ、圧縮変形をリバウンドせず、且つ圧密化木材の加工過程と使用過程が環境を汚染せず、プロセスが実現しやすいことを実現するかが、木工品業界で広く注目されるフロンティア研究の1つである。高品質広葉樹資源の減少に伴って、低密度木材の価値を高めて利用することが木材科学と技術分野に重視され、人工林の早生樹木材の高品質利用技術を開発することは重要な意義を有する。
【発明の概要】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法を提供することである。本発明は無垢板材を精確に圧縮することにより、木材の圧密層と圧縮されていない層の位置分布を精確に制御することが可能であり、また、本発明はより優れた力学的性質と寸法安定性を有し、さらに圧縮木材の品質を向上させる。
【0008】
上記技術的課題を解決するために、本発明の技術的解決手段は下記の通りである。密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法であって、無垢板材の厚さ方向に各層の含水率を調整し、無垢板材内部の厚さ方向にドライエリアとウェットエリアを形成し、ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差が0.2MPa以上であり、ドライエリアとウェットエリアとの位置分布を調整してから、ホットプレス機で圧縮し、無垢板材のウェットエリアに高密度圧密層を形成して、密度分布の制御可能な圧密化無垢板材を得る。
【0009】
上記密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法において、無垢板材の含水率を調整する際には、浸水(水に浸す)及び/又は乾燥の手段により、無垢板材の乾湿界面を移動させ、無垢板材内部の低含水率層にドライエリアを形成し、無垢板材内部の高含水率層にウェットエリアを形成させ、ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度をリアルタイムに検出し、ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差を0.2MPa以上に保証する。
【0010】
上記密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法において、前記圧密化無垢板材は、圧密層が木材表面にある表層圧密化板材、圧密層が木材の厚さ方向の中間にある中間層圧密化板材又は圧密層が木材の厚さ方向の中心にある中心層圧密化板材を含む。
【0011】
上記密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法において、表層圧密化板材の含水率調整方法は、先ず無垢板材を含水率が15%以下になるように乾燥し、次に木材を端部シーリングした後に浸水し又は端部シーリングせずに噴水し、木材表面の含水率を増加させ、木材表面にウェットエリアを形成し、浸水時間又は噴水量を制御することにより、木材内部の乾湿界面を移動させ、木材表面のウェットエリアと木材内部のドライエリアの位置分布を調整し、木材表面のウェットエリアと木材内部のドライエリアとの間の降伏応力度の差を調整する。
【0012】
上記密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法において、中間層圧密化板材又は中心層圧密化板材の含水率調整方法は、無垢板材の含水率を15%以上に調整し、木材を端部シーリングした後、木材を乾燥処理することにより、木材の厚さ方向に外側から内側に含水率勾配が形成され、それにより、木材表面にドライエリアが形成され、木材内部にウェットエリアが形成される。次に板材をホットプレス機でクランプして加熱し、板材内部の乾湿界面を移動させることにより、木材表面のドライエリアと木材内部のウェットエリアの位置分布を調整し、木材表面のドライエリアと木材内部のウェットエリアとの間の降伏応力度の差を調整する。
【0013】
上記密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法において、乾湿界面移動の公式は以下の通りである。
【0014】
【0015】
ここで、TSはホットプレス機でクランプし加熱する時の無垢板材の表面温度℃であり、TVは水の沸点温度℃であり、T0は木材の初期温度であり、K1、K2はそれぞれウェットエリア、ドライエリアの木材の熱伝導係数W/m・Kであり、hは木材の厚さmであり、D1はウェットエリアの木材の温度拡散率m2/hであり、ρLは木材の界面で単位体積あたりの蒸発される水分の重量kg/m3であり、tはホットプレス機でクランプし加熱する時間であり、Sは時間がtであるときの界面から板面までの距離mであり、Lは界面の水分の蒸発潜熱kJ/kgである。
【0016】
上記密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法において、無垢板材をホットプレス機に置いて圧縮するが、具体的には無垢板材をホットプレス機に置き、ホットプレスを始動して100~150℃の温度で、2~7mm/minの圧縮速度で、3MPa以上の圧力で無垢板材を圧縮し、変位センサを用いて圧密層の厚さをリアルタイムに検出し制御する。
【0017】
上記密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法において、端部シーリングする場合は骨膠、パラフィン又はアスファルトを使用して無垢板材の端部をシーリングする。
【0018】
上記密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法において、圧縮が完了した後、先ずホットプレス機で5分間保持してから、ホットプレス機の圧力を1MPaに下げ、30分間以上保持する。ホットプレス機を開けて、プレートから木材を取り出し、熱処理窯内に入れて、180℃以上の高温熱処理成形を実施し、成形する前に先ず圧縮板材を含水率が10%以下になるように乾燥し、窯内の温度が目標温度まで上昇した後、窯内の圧力を0.25MPa以上になるように熱処理窯内に水蒸気を注入して1時間以上保持し、最後に先ず窯内の圧力を0.1MPaに下げた後、木材温度を60℃以下に下げ、窯内から取り出し、高湿度環境にて木材の含水率を8%以上に調整する。
【0019】
上記密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法において、前記圧密化無垢板材は、さらに複数の圧密層を有する多層圧密化板材を含み、多層圧密化板材は先ず無垢板材を上下2つの圧密層を有する表層圧密化板材に加工した後、ホットプレス機に置き、ホットプレートを使用して接触乾燥し、さらに板材内部の厚さ方向の乾湿界面を調整し、再び圧縮し、複数の圧密層を有する多層圧密化板材を得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、従来技術に比べ、以下のような有益な効果を有する。
【0021】
(1)本発明は無垢板材の含水率を調整することにより、無垢板材の内部の厚さ方向にドライエリアとウェットエリアを形成し、ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差を0.2MPa以上にし、また、ドライエリアとウェットエリアの位置分布を調整することにより、圧密化無垢板材の密度分布を制御可能にする。本発明は無垢板材の圧密層と未圧密層の位置分布を精確に制御することにより、精確な圧縮を実現することができ、一方では、木材を効果的に節約し、製品の品質と性質を向上させ、他方では、木製品のカスタマイズを実現し、一般的な木材の使用分野を拡大し、一般的な木材の価値を向上させることができる。
【0022】
(2)さらに、本発明の圧密化無垢板材は、圧密層が木材表面にある表層圧密化板材、圧密層が木材の中間にある中間層圧密化板材又は圧密層が木材の中心にある中心層圧密化板材を含む。出願人は表層圧密化板材、中間層圧密化板材と中心層圧密化板材の含水率を調整する方法、及び含水率を調整することによりドライエリアとウェットエリアの位置分布を調整する方法について具体的な限定と最適化を実施し、それにより無垢板材の厚さ方向における如何なるエリアでの配向圧密化を実現し、製品の使用範囲と実用性を大幅に向上させた。
【0023】
(3)さらに、出願人は実験から含水率を調整する時の乾湿界面移動の関数公式が以下であることを発見する。
【0024】
【0025】
該関数関係式によりホットプレス機でクランプし加熱する時間とクランプ温度(即ち、ホットプレス機でクランプし加熱する時の無垢板材の表面温度)における乾湿界面の移動法則を精確に取得することができ、それによりホットプレス機でクランプし加熱する時間とクランプ温度のドライエリア、ウェットエリアの変化との精確な関係を取得し、さらに無垢板材を精確に圧縮し、木材の圧密層と未圧密層の位置分布を精確に制御可能にさせる。
【0026】
(4)本発明はさらに圧密化無垢板材の変形防止固定処理を改良し、改良後の圧密化板材は吸湿リバウンド率、吸水リバウンド率の面において極めて優れた性質を有し、製品のMOE、MOR、硬度と表面硬度などの性質を大幅に向上させ、圧縮木材の品質をさらに向上させる。
【0027】
【0028】
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】無垢板材の含水率を調整しドライエリアとウェットエリアを形成する概略図である。
【0030】
【
図2】圧縮されていないポプラ板材の密度分布図である。
【0031】
【
図3】ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差が0.2MPaである時、ポプラの上下表層を5mm圧縮した表層圧密化の密度分布図である。
【0032】
【
図4】ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差が0.10MPaである時、ポプラの無垢板材を本発明の上下表層を5mm圧縮した圧密化方法を採用して圧縮した場合の板材の密度分布図である。
【0033】
【
図5】ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差が0.16MPaである時、ポプラの無垢板材を本発明の上下表層を7mm圧縮した圧密化方法を採用して圧縮した場合の板材の密度分布図である。
【0034】
【
図6】本発明の製造プロセスに従って製造した圧密化無垢板材の効果図である。
【0035】
【
図7】ポプラの上下表層を10mm圧縮した表層圧密化の密度分布図である。
【0036】
【
図8】キャンプノスペルマの中間層を圧密化した密度分布図である。
【0037】
【
図9】ポプラの中心層を5mm圧縮した中心層圧密化板材の密度分布図である。
【0038】
【
図10】ポプラの中心層を10mm圧縮した中心層圧密化板材の密度分布図である。
【0039】
【
図11】ポプラの3つの圧密層(上、下表層と中心層)の密度分布図である。
【0040】
【
図12】ポプラの5つの圧密層(上、下表層、2つの中間層、1つの中心層)の密度分布図である。
【0041】
【
図13】本発明の製造プロセスに従って製造した圧密化無垢板材の実際の写真である。
【0042】
【
図14】本発明の製造プロセスに従って製造した多層圧密化板材の実際の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
実施例1:密度分布の制御可能な無垢板材の圧密化製造方法であって、浸水及び/又は乾燥の手段により無垢板材の厚さ方向における各層の含水率を調整することにより、無垢板材内部の厚さ方向の低含水率層にドライエリアを形成し、無垢板材内部の厚さ方向の高含水率層にウェットエリアを形成し、ドライエリアとウェットエリアの接合部に乾湿界面を形成し、
図1に示すように、
図1は無垢板材の含水率を調整してドライエリアとウェットエリアを形成するイメージを示す図であり、横座標xは板材の厚さ方向における位置であり、縦座標は横座標に対応する位置の含水率である。図において、エリア1はドライエリアであり、エリア2はウェットエリアであり、エリア1とエリア2の接合面は乾湿界面である。また、ドライエリアとウェットエリアの含水率が異なるため、ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度も異なり、ドライエリアとウェットエリアの含水率を調整することにより、さらに降伏応力度の差を調整することができ、含水率を調整することにより、板材の厚さ方向におけるドライエリアとウェットエリアの位置分布を調整し、ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度をリアルタイムに検出することにより、ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差を0.2MPa以上に保証する。
図2は圧縮されていないポプラ板材の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)であり、
図3はドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差が0.2MPaである時、ポプラの上、下表層を5mm圧縮した表層を圧密化した場合の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)である。
図3から分かるように、降伏応力度の差が0.2MPaである時、本発明は無垢板材の表層の圧密化を効果的且つ正確に実現することができる。
図4はドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差が0.10MPaである時、ポプラの無垢板材を本発明の上下表層を5mm圧縮した圧密化方法を採用して圧縮した板材の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)であり、
図4から分かるように、降伏応力度の差が0.10MPaである時、圧密層を得ることができない。
図5はドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差が0.16MPaである時、ポプラの無垢板材を本発明の上下表層を7mm圧縮した圧密化方法を採用して圧縮した板材の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)であり、
図5から分かるように、降伏応力度の差が0.16MPaである時、圧密層を得ることができない。さらに、本発明は浸水及び/又は乾燥などの含水率を調整する手段により、無垢板材の乾湿界面を移動させ、それにより、ドライエリアとウェットエリアの位置分布を調整し、ドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差を0.2MPa以上に保証し、さらに無垢板材をホットプレス機に置き、100~150℃の温度、2~7mm/minの圧縮速度、3MPa以上の圧力で圧縮し、変位センサを用いて圧密層の厚さをリアルタイムに検出及び制御する。無垢板材のウェットエリアに高密度圧密層を形成することにより、密度分布の制御可能な圧密化無垢板材を得る。
【0044】
前記圧密化無垢板材は、圧密層が木材表面にある表層圧密化板材、圧密層が木材の厚さ方向の中間にある中間層圧密化板材又は圧密層が木材の厚さ方向の中心にある中心層圧密化板材を含む。
【0045】
表層圧密化板材の含水率を調整する方法は以下の通りであり、先ず無垢板材を含水率が15%以下になるように乾燥し、次に木材を骨膠、パラフィン又はアスファルトによって端部シーリングした後に浸水し又は端部シーリングせずに噴水し、木材表面の含水率を増加させ、木材表面にウェットエリアを形成し、浸水時間又は噴水量を制御することにより、木材内部の乾湿界面を移動させ、木材表面のウェットエリアと木材内部のドライエリアの位置分布を調整し、木材表面のウェットエリアと木材内部のドライエリアとの間の降伏応力度の差を調整する。
【0046】
中間層圧密化板材又は中心層圧密化板材の含水率を調整する方法は以下の通りであり、無垢板材の含水率を15%以上に調整し、木材の端部に対し骨膠、パラフィン又はアスファルトを使用して端部シーリングしてから、木材を乾燥処理するが、乾燥処理は接触又は非接触の熱伝導乾燥を採用してもよく、好ましくは、ホットプレス機のホットプレートの接触式乾燥方法を選択してもよい。このような乾燥方法は乾燥効率が高く、乾燥効果に優れる。乾燥処理において、木材の厚さ方向(横方向)に外側から内側に含水率勾配が形成され、それにより木材表面にドライエリアが形成され、木材内部にウェットエリアが形成され、ドライエリアとウェットエリアの接合部に乾湿界面が形成される。乾燥温度と時間を調整することにより、木材内部の乾湿界面を移動させ、木材表面のドライエリアと木材内部のウェットエリアの位置分布を調整し、木材表面のドライエリアと木材内部のウェットエリアとの間の降伏応力度の差を調整する。
【0047】
接触式乾燥方法を採用してドライエリアとウェットエリアの乾湿界面の移動を調整する公式は以下の通りである。
【0048】
【0049】
上式において、T
Sはホットプレス機でクランプし加熱する時の無垢板材の表面温度℃であり、T
Vは水の沸点温度℃であり、T
0は木材の初期温度であり、K
1、K
2はそれぞれウェットエリア、ドライエリアの木材の熱伝導係数W/m・Kであり、hは木材の厚さmであり、D
1はウェットエリアの木材の温度拡散率m
2/hであり、ρ
Lは木材界面で単位体積あたりの蒸発される水分の重量kg/m
3であり、tはホットプレス機でクランプし加熱する時間であり、Sは時間がtであるときの界面から板面までの距離mであり、Lは界面水分の蒸発潜熱kJ/kgである。
図1に示すようになる。上記公式により、ホットプレス機でクランプした時の加熱時間t、ホットプレス機でクランプして加熱している時の無垢板材の表面温度T
Sを調整することによる乾湿界面の移動位置を定量且つ正確に計算することができ、それにより、ドライエリアとウェットエリアの位置分布をさらに精確に取得し、密度分布の制御可能な圧密化無垢板材を得る。
【0050】
前記
図6は本発明の製造プロセスにより製造された圧密化無垢板材の効果図であり、
図6から分かるように、本発明は表層圧縮板材、中間層圧縮板材、中心層圧縮板材及び多層圧縮板材などの様々な圧密化板材を製造し得られることができる。
【0051】
好ましくは、本発明に記載の圧密化無垢板材は、さらに、複数の圧密層を有する多層圧密化板材を含む。多層圧密化板材は、先ず無垢板材を上下2つの圧密層を有する表層圧密化板材に加工した後、ホットプレス機に置き、伝導式加熱を120s以上実行し、さらに、板材の内部厚さ方向の乾湿界面を調整し、再び圧縮することにより、2つの圧縮表層と2つの圧縮中間層という複数の圧密層を有する多層圧密化板材を得る。板材の厚さが十分である場合、
図14に示すように、この過程は4つ以上の圧密層が出来上がるまで、即ち、2つの圧縮表層、2つの圧縮中間層及び1つの圧縮中心層が出来上がるまで、続けて実施することができる。
【0052】
実施例2:表層圧密化板材の具体的な製造方法は以下の通りである。
【0053】
単一表面(1つの表面のみ)の圧縮プロセスであって、
【0054】
含水率が気乾による含水率値以下(10%以下)である板材の片面を浸水し又は水面に浮かべ又は水に濡すことにより、表面の含水率を20%より大きくした後、片面のプレートが100~150℃に加熱されたホットプレス機の加熱されたプレートに、浸水した面を置き、2~7mm/minの速度で連続的に、3MPa以上の圧力で目標厚さになるまで圧縮し、浸水されて加熱された面が圧縮された片面圧縮木材を形成する。
【0055】
上下2つの表層圧縮プロセスは以下の通りである。
【0056】
初期含水率が15%より小さい気乾材から絶乾材を、端部シーリングしてから浸水し又は端部シーリングせずに噴水することにより、木材表面の含水率を増加し、増加量は20g/m2以上となり、木材表面のウェットエリアと内部のドライエリアとの間に0.2MPa以上の降伏応力度の差を形成する。その後、100~150℃に加熱されたホットプレス機に置き、2~7mm/minの速度で連続的に、3MPa以上の圧力で目標厚さになるまで圧縮し、上下2つの表面がいずれも圧縮された両面圧縮木材を形成する。
【0057】
前記
図3はポプラの上下表層を5mm圧縮した表層圧密化された場合の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)であり、
図7はポプラの上下面が10mm圧縮された表層圧密化された場合の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)である。
図3と
図7から分かるように、本発明は無垢板材の上下表層の圧縮及び圧密化を効果的且つ正確に実現することができる。
【0058】
実施例3:中間層圧密化板材の具体的な製造方法は以下の通りである。
【0059】
含水率が15%より大きい板材の端部(横断面)を骨膠、パラフィン又はアスファルト等の木材端部シーリング用材料で塗布した後、接触式(ホットプレート)熱伝導方法を採用し、100℃以上で60s以上のクランプ乾燥処理し、板材の乾湿界面を所定の位置に移動させ、板材のドライエリアとウェットエリアの降伏応力度の差を0.25MPaにし、変位センサを用いて最終的な圧縮量を制御した後、100~150℃のホットプレス機を用いて、3MPa以上の圧力で、2~7mm/minの速度で連続的にすれば、表面が圧縮されずに、内部に2つの圧密層が形成される中間層圧密化木材を形成することができる。
【0060】
前記
図8はキャンプノスペルマの中間層圧密化の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)である。
図8から分かるように、中間層が圧密化された後に板材の厚さ方向に2つの中間層圧密層が形成される。
【0061】
実施例4:中心層圧密化板材の具体的な製造プロセスは以下の通りである。
【0062】
含水率が15%より大きい板材の端部(横断面)を骨膠、パラフィン又はアスファルト等の木材端部シーリング用材料で塗布した後、接触式又は非接触式熱伝導方法を採用して、100℃以上で5分以上の乾燥処理を実行することにより、板材表面と板材中心の1~6mmの範囲内に0.2MPa以上の降伏応力度の差を形成させ、圧縮量を1~6mmに設定した後、100~150℃のホットプレス機を用いて圧縮し、2~7mm/minの速度で圧力が3MPa以上で連続的に圧縮すれば、表面が圧縮されずに、中心が圧密化される中心層圧密化木材を形成することができる。
【0063】
前記
図9はポプラの中心層が5mm圧縮された中心層圧密化板材の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)である。
図10はポプラの中心層が10mm圧縮された中心層圧密化板材の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)である。
図9と
図10から分かるように、本発明は無垢板材の中心層圧密化を効果的且つ精確に実現することができる。
【0064】
実施例5:多層圧密化板材の具体的な製造プロセスは以下の通りである。
【0065】
上下2つの表面を圧縮するプロセスに従って圧縮した木材をホットプレス機に置き、伝導式加熱を120s以上実施して再び圧縮することにより、表面圧密化された上に、圧密化された2つの中間層圧密層が増やされ、板材の厚さが十分である場合、この圧密化プロセスが、中心層が圧密化されるまで、続けることができる。
【0066】
圧縮が完了した後、プレス機で5分間保持してから、圧力を1MPaに下げ、30分間以上保持する。プレス機を開けて、プレートから木材を取り出し、密閉の熱処理窯内に入れ、含水率が10%以下になるまで乾燥した後、直接180℃以上の高温熱処理成形を実施する。熱処理温度が180℃になってから、窯内の圧力を0.25MPa以上になるように熱処理窯内に水蒸気を注入し、1時間以上保持する。窯内の圧力を0.1MPaまで下げてから、温度を60度以下に下げ、窯内から取り出し、圧縮変形のリバウンド率が3%より小さい分層圧密化板材を得ることができる。
【0067】
前記
図11はポプラの3つの圧密層(上下表層と中心層)の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)である。
図12はポプラの5つの圧密層(上下表層、2つの中間層、1つの中心層)の密度分布図であり、横座標は板材の下面から上面までの距離(mm)であり、縦座標は横座標に対応する位置の木材密度(g/cm
3)である。
【0068】
前記
図13は本発明の製造プロセスに従って製造した圧密化無垢板材の実際の写真であり、左から右へ順に表層が5mm、10mm圧縮された圧密化板材、中心層が5mm、10mm圧縮された圧密化板材と圧縮されていない板材である。
図14は本発明の製造プロセスに従って製造した多層圧密化板材の実際の写真であり、左側は2つの表層と中心層を有する多層圧密化板材であり、右側は2つの表層、2つの中間層と中心層を有する多層圧密化板材である。