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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/43 20060101AFI20221025BHJP
   A01B 63/10 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
E02F3/43 B
E02F3/43 G
A01B63/10 C
A01B63/10 F
A01B63/10 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2017205489
(22)【出願日】2017-10-24
(65)【公開番号】P2019078066
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-09-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大浅 貴央
(72)【発明者】
【氏名】二宮 清孝
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】実公平08-009234(JP,Y2)
【文献】特開2006-161498(JP,A)
【文献】特開2010-174546(JP,A)
【文献】特開平06-185093(JP,A)
【文献】特許第5700613(JP,B1)
【文献】特開平08-027840(JP,A)
【文献】特許第2546294(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0211597(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/00-3/96
E02F 9/00-9/28
A01B 63/00-63/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に取り付けられるブームと、前記ブームの先端部に取り付けられるアタッチメントとを含む作業機と、
前記ブームを上下揺動させるための第1アクチュエータと、
前記ブームを自動的に揺動下降させる下げ自動制御を実行するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記下げ自動制御の実行中、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出したとき、前記第1アクチュエータのボトム側とトップ側とを連通させることで前記第1アクチュエータを伸縮自在な状態にすることによって、前記第1アクチュエータを前記下げ自動制御から浮き状態に切り換える
作業車両。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1アクチュエータの角度に基づいて、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出する、
請求項記載の作業車両。
【請求項3】
前記アタッチメントを前後揺動させるための第2アクチュエータをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1アクチュエータの角度と前記第2アクチュエータの角度とに基づいて、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出する、
請求項に記載の作業車両。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1アクチュエータのストローク量に基づいて、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出する、
請求項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記アタッチメントを前後揺動させるための第2アクチュエータをさらに備え、
前記コントローラは、前記第1アクチュエータのストローク量と前記第2アクチュエータのストローク量とに基づいて、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出する、
請求項に記載の作業車両。
【請求項6】
前記第1アクチュエータのボトム側における油圧を検知する油圧センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記油圧センサによって検知される前記油圧が所定の閾値以下になったことに基づいて、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出する、
請求項に記載の作業車両。
【請求項7】
前記ブームを昇降操作するための操作装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記操作装置が下降側に所定の操作量以上操作された場合、前記下げ自動制御を実行開始する、
請求項1乃至のいずれかに記載の作業車両。
【請求項8】
前記下げ自動制御における前記ブームの下降速度の設定画面を表示するディスプレイをさらに備え、
前記コントローラは、前記ディスプレイに入力された速度を前記下降速度に設定する、
請求項1乃至のいずれかに記載の作業車両。
【請求項9】
前記下げ自動制御における前記ブームの下降速度を設定するためのダイヤルをさらに備え、
前記コントローラは、前記ダイヤルの位置に応じた速度を前記下降速度に設定する、
請求項1乃至のいずれかに記載の作業車両。
【請求項10】
車体に取り付けられるブームを自動的に揺動下降させる下げ自動制御を実行する下げ自動制御工程と、
前記ブームの先端部に取り付けられるアタッチメントが接地する位置に達したことを検出する検出工程と、
前記アタッチメントが接地する位置に達した時に、前記ブームを上下揺動させるための第1アクチュエータのボトム側とトップ側とを連通させることで前記第1アクチュエータを伸縮自在な状態にすることによって、前記第1アクチュエータを前記下げ自動制御から浮き状態に切り換える浮き工程と、
を備える作業車両の制御方法。
【請求項11】
前記検出工程では、前記第1アクチュエータの角度に基づいて、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出する、
請求項10に記載の作業車両の制御方法。
【請求項12】
前記検出工程では、前記第1アクチュエータの角度と、前記アタッチメントを前後揺動させるための第2アクチュエータの角度とに基づいて、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出する、
請求項10に記載の作業車両の制御方法。
【請求項13】
前記検出工程では、前記第1アクチュエータのストローク量に基づいて、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出する、
請求項10に記載の作業車両の制御方法。
【請求項14】
前記検出工程では、前記第1アクチュエータのストローク量と、前記アタッチメントを前後揺動させるための第2アクチュエータのストローク量とに基づいて、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出する、
請求項10に記載の作業車両の制御方法。
【請求項15】
前記検出工程では、前記第1アクチュエータのボトム側における油圧が所定の閾値以下になったことに基づいて、前記アタッチメントが接地する位置に達したことを検出する、
請求項10に記載の作業車両の制御方法。
【請求項16】
前記下げ自動制御工程では、前記ブームを昇降操作するための操作装置が下降側に所定の操作量以上操作された場合、前記下げ自動制御を実行開始する、
請求項10乃至15のいずれかに記載の作業車両の制御方法。
【請求項17】
前記下げ自動制御工程では、前記下げ自動制御における前記ブームの下降速度の設定画面を表示するディスプレイに入力された速度を前記下降速度に設定する、
請求項10乃至16のいずれかに記載の作業車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールローダ及びブルドーザなどの作業車両では、簡便かつ正確にアタッチメントを所定の下降位置まで繰り返し下降させることを目的として、アタッチメントを所定位置まで自動的に下降させる下げ自動制御が行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-133105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オペレータは、自重で接地させた状態(いわゆる、浮き状態)のアタッチメントを用いて、地面の均し作業を行いたい場合がある。
【0005】
この場合、ある高さから地面までアタッチメントを自重で下降させると、アタッチメントが接地する際に大きな衝撃が発生する。
【0006】
また、特許文献1に記載の下げ自動制御によってアタッチメントを所定位置まで下降させた後に、アタッチメントを地面まで自重で下降させると、アタッチメントが接地する際の衝撃は若干抑制されるものの、下げ自動制御の実行後にアタッチメントを手動で浮き状態にする必要があるため操作が煩雑である。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、アタッチメントを簡便に接地可能な作業車両及び作業車両の制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る作業車両は、車体と、作業機と、第1アクチュエータと、コントローラとを備える。作業機は、車体に取り付けられるブームと、ブームの先端部に取り付けられるアタッチメントとを含む。第1アクチュエータは、ブームを上下揺動させる。コントローラは、ブームを自動的に揺動下降させる下げ自動制御を実行する。コントローラは、下げ自動制御の実行中、アタッチメントが所定位置に達したことを検出したとき、第1アクチュエータを浮き状態にする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アタッチメントを簡便に接地可能な作業車両及び作業車両の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ホイールローダを示す側面図
図2】ホイールローダの制御系統を示すブロック図
図3】下げ自動制御を説明するためのフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る「下げ自動制御」が適用された「作業車両」の一例について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。例えば、以下の説明では、アタッチメントとしてバケットを備えるホイールローダを例に挙げて説明するが、本発明に係る「下げ自動制御」は、作業車両に広く適用可能である。作業車両としては、ホイールローダのほか、油圧ショベルなどが挙げられる。アタッチメントとしては、バケットのほか、フォーク、グラップルなどが挙げられる。
【0012】
本明細書において、「前」は、作業車両の前進方向を示す用語であり、「後」は作業車両の後退方向を示す用語である。また、「左」「右」は作業車両が前進しているときの進行方向を基準とする用語である。
【0013】
(ホイールローダ1)
図1は、本実施形態に係るホイールローダ1を示す側面図である。
【0014】
ホイールローダ1は、車体2、作業機5、前輪6F、後輪6R、運転室7、ブームシリンダ9、及びバケットシリンダ10を備える。ブームシリンダ9は、第1アクチュエータの一例であり、バケットシリンダ10は、第2アクチュエータの一例である。
【0015】
車体2には、作業機5、前輪6F、後輪6R、及び運転室7が取り付けられる。運転室7内には、オペレータが着座する運転席DSと、作業機5を操作するための操作レバーCLとが配置される。操作レバーCLは、操作装置の一例である。
【0016】
作業機5は、車体2の前方に取り付けられる。作業機5は、ブーム3とバケット4とを有する。ブーム3は、車体2に取り付けられ、車体2から前方に向かって延びる。ブーム3は、上下揺動(昇降)可能に車体2によって支持される。ブーム3の基端部には、ブーム角検出センサ3aが配置される。ブーム角検出センサ3aは、水平方向に対するブーム3の角度を検出する。本実施形態では、ブーム3を自動的に揺動下降させる下げ自動制御が実行される。下げ自動制御については後述する。
【0017】
バケット4は、開口部4Hと爪4Cとを有する。バケット4は、爪4Cが土砂又は砕石等の積載物をすくい取る。爪4Cがすくい取った積載物は、開口部4Hからバケット4の内部に入る。バケット4は、ブーム3の先端部に取り付けられる。バケット4は、前後揺動可能にブーム3によって支持される。本明細書では、バケット4が後方に揺動されることを「チルト」と称し、バケット4が前方に揺動されることを「ダンプ」と称する。
【0018】
前輪6Fと後輪6Rは、路面Rに接地する。前輪6Fと後輪6Rとが路面R上で回転することにより、ホイールローダ1は走行する。前輪6Fと後輪6Rとの間で車体2が屈曲することによって、ホイールローダ1は操舵される。
【0019】
ブームシリンダ9は、車体2とブーム3とに連結される。ブーム3は、ブームシリンダ9が伸縮することによって上下揺動する。バケットシリンダ10は、車体2とベルクランク11の上端部とに連結される。ベルクランク11は、ブーム3に固定された支持部材12の先端部に回動可能に支持される。ベルクランク11の下端部は、連結部材13を介してバケット4に連結される。バケット4は、バケットシリンダ10が伸縮することによって、ブーム3に支持された部分を中心として前後にチルト及びダンプする。支持部材12の先端部には、バケット角検出センサ4aが配置される。バケット角検出センサ4aは、水平方向に対するバケット4の底面の角度を検出する。
【0020】
操作レバーCLは、ブームシリンダ9の伸縮によってブーム3を昇降操作するために用いられる。本実施形態では、ニュートラル領域を基準として操作レバーCLを下降側(本実施形態では、前方)に操作すると、ブーム3は下降する。ニュートラル領域を基準として操作レバーCLを上昇側(本実施形態では、後方)に操作(傾動)すると、ブーム3は上昇する。なお、操作レバーCLが上昇側と下降側の間のニュートラル領域に位置する場合、ブーム3は停止する。
【0021】
操作レバーCLは、バケットシリンダ10の伸縮によってバケット4をチルト又はダンプさせるために用いられる。本実施形態では、ニュートラル領域を基準として操作レバーCLをチルト側(本実施形態では、左方)に操作(傾動)すると、バケット4はチルトする。また、ニュートラル領域を基準として、操作レバーCLをダンプ側(本実施形態では、右方)に操作(傾動)すると、バケット4はダンプする。なお、操作レバーCLがチルト側とダンプ側の間のニュートラル領域に位置する場合、バケット4は停止する。
【0022】
(ホイールローダ1の制御系統)
図2は、ホイールローダ1の動作を制御する制御系統1aを示すブロック図である。
【0023】
ホイールローダ1の制御系統1aは、作業機ポンプ20、ブーム操作弁21、バケット操作弁22、パイロットポンプ23、作業機電子制御弁24、及びコントローラ25を備える。
【0024】
作業機ポンプ20は、ホイールローダ1に搭載される動力発生源としてのエンジン26によって駆動される。作業機ポンプ20は、ブーム操作弁21及びバケット操作弁22のそれぞれに作動油を吐出する。
【0025】
ブーム操作弁21及びバケット操作弁22は、それぞれ油圧パイロット式の操作弁である。ブーム操作弁21はブームシリンダ9に接続され、バケット操作弁22はバケットシリンダ10に接続される。
【0026】
ブーム操作弁21は、ブームシリンダ9のヘッド側ポート及びブームシリンダ9のボトム側ポートそれぞれの流路を切換える切換弁である。本実施形態において、ブーム操作弁21は、ブームシリンダ9のヘッド側とボトム側とを連通させる浮きポジションを有する。ブーム操作弁21が浮きポジションに位置する場合、ブームシリンダ9のヘッド側とボトム側のそれぞれが作動油タンク30に接続した状態になる。バケット操作弁22は、バケットシリンダ10のヘッド側ポート及びバケットシリンダ10のボトム側ポートそれぞれの流路を切換える切換弁である。
【0027】
ブーム操作弁21及びバケット操作弁22それぞれのパイロット受圧部は、作業機電子制御弁24を介してパイロットポンプ23に接続される。パイロットポンプ23は、エンジン26によって駆動される。パイロットポンプ23は、作業機電子制御弁24を介してブーム操作弁21及びバケット操作弁22それぞれのパイロット受圧部に対して、パイロット圧力の作動油を供給する。
【0028】
作業機電子制御弁24は、ブーム下降制御弁24a、ブーム上昇制御弁24b、バケットダンプ制御弁24c、及びバケットチルト制御弁24dを有する。ブーム下降制御弁24a及びブーム上昇制御弁24bは、ブーム操作弁21の一対のパイロット受圧部それぞれに接続される。バケットダンプ制御弁24c及びバケットチルト制御弁24dは、バケット操作弁22の一対のパイロット受圧部それぞれに接続される。ブーム下降制御弁24aのソレノイド指令部24e、ブーム上昇制御弁24bのソレノイド指令部24f、バケットダンプ制御弁24cのソレノイド指令部24g、及びバケットチルト制御弁24dのソレノイド指令部24hのそれぞれには、コントローラ25からの指令信号が入力される。
【0029】
ブーム操作弁21、ブーム下降制御弁24a、ブーム上昇制御弁24b、及びブームシリンダ9は、ブーム3を昇降させるブーム駆動部として機能する。バケット操作弁22、バケットダンプ制御弁24c、バケットチルト制御弁24d、及びバケットシリンダ10は、バケット4をチルト及びダンプさせるバケット駆動部として機能する。
【0030】
コントローラ25は、例えば、コンピュータである。コントローラ25は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部と、ROM(Read Only Memory)等の記憶部とを含む。コントローラ25は、コンピュータプログラムに記述された各種の命令を逐次実行することにより、作業機5の動作を制御する。
【0031】
コントローラ25は、ブームレバーポテンショメータ27、バケットレバーポテンショメータ28、ディスプレイ29、ブーム角検出センサ3a、及びバケット角検出センサ4aに接続される。
【0032】
ブームレバーポテンショメータ27は、操作レバーCLに設けられる。ブームレバーポテンショメータ27は、操作レバーCLの前後方向における操作量を検出する。バケットレバーポテンショメータ28は、操作レバーCLに設けられる。バケットレバーポテンショメータ28は、操作レバーCLの左右方向における操作量を検出する。
【0033】
コントローラ25は、操作レバーCLが上昇側に操作された場合、ブーム操作弁21を切り換えることによって、ブームシリンダ9のヘッド側を作動油タンク30に連通させ、かつ、ブームシリンダ9のボトム側を作業機ポンプ20に連通させる。これによって、ブーム3は揺動上昇する。コントローラ25は、操作レバーCLが下降側に操作された場合、ブーム操作弁21を切り換えることによって、ブームシリンダ9のボトム側を作動油タンク30に連通させ、かつ、ブームシリンダ9のヘッド側を作業機ポンプ20に連通させる。これによって、ブーム3は揺動下降する。これらの場合、コントローラ25は、操作レバーCLの操作量に応じた駆動速度でブーム3を駆動させる。
【0034】
コントローラ25は、操作レバーCLがチルト側に操作された場合、バケット操作弁22を切り換えることによって、バケットシリンダ10のヘッド側を作動油タンク30に連通させ、かつ、バケットシリンダ10のボトム側を作業機ポンプ20に連通させる。これによって、バケット4は前方にチルトする。コントローラ25は、操作レバーCLがダンプ側に操作された場合、バケット操作弁22を切り換えることによって、バケットシリンダ10のボトム側を作動油タンク30に連通させ、かつ、バケットシリンダ10のヘッド側を作業機ポンプ20に連通させる。これによって、バケット4は後方にダンプする。これらの場合、コントローラ25は、操作レバーCLの操作量に応じた駆動速度でバケット4を駆動させる。
【0035】
本実施形態において、コントローラ25は、操作レバーCLが下降側に所定の操作量以上操作された場合、ブーム3を自動的に揺動下降させる下げ自動制御を実行開始する。下げ自動制御におけるブーム3の下降速度は、ディスプレイ29に表示される設定画面においてオペレータが入力することができる。ディスプレイ29には、例えばタッチパネル式モニタを用いることができる。コントローラ25は、ディスプレイ29に入力された速度を、下げ自動制御における下降速度に設定する。コントローラ25は、下げ自動制御の実行中、ブーム3が設定された下降速度に維持されるようにブーム駆動部を制御する。
【0036】
ここで、コントローラ25は、下げ自動制御の実行中、バケット4が接地する位置に達したことを検出したとき、ブームシリンダ9を浮き状態にする。浮き状態とは、ブームシリンダ9のヘッド側とボトム側とタンクとが連通した状態である。コントローラ25は、ブーム操作弁21を浮きポジションに切り換えることによって、ブームシリンダ9を浮き状態にする。浮き状態のブームシリンダ9は伸縮自在であるため、バケット4はブームシリンダ9によって保持されない。そのため、バケット4は自重で地面に置かれた状態になる。この状態でホイールローダ1を後進させると、バケット4による地面の均し作業を効率的に行うことができる。
【0037】
コントローラ25は、ブーム角検出センサ3a及びバケット角検出センサ4aそれぞれの角度に基づいて、バケット4が接地したことを検出する。具体的には、コントローラ25は、ブーム角検出センサ3aの出力値に基づいてブームシリンダ9の姿勢を検知し、かつ、バケット角検出センサ4aの出力値に基づいてバケット4の姿勢を検知することによって、バケット4のいずれかの部位が接地する位置に達したか否かを判定する。
【0038】
(下げ自動制御)
コントローラ25による下げ自動制御について、図3に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0039】
ステップS1において、コントローラ25は、下げ自動制御の実行中か否か判定する。下げ自動制御の実行中である場合、処理はステップS2に進み、下げ自動制御の実行中でない場合、処理はステップS1を繰り返す。
【0040】
ステップS2において、コントローラ25は、ブーム角検出センサ3a及びバケット角検出センサ4aそれぞれの角度に基づいて、バケット4が接地する位置に達したか否か判定する。バケット4が接地する位置に達した場合、処理はステップS3に進み、バケット4が接地する位置に達していない場合、処理はステップS1に戻る。
【0041】
ステップS3において、コントローラ25は、ブーム操作弁21を浮きポジションに切り換えることによって、ブームシリンダ9を浮き状態にする。これによって、バケット4は自重で地面に置かれた状態になる。以上で、コントローラ25は、下げ自動制御を終了する。
【0042】
(特徴)
(1)コントローラ25は、ブーム3を自動的に下降させる下げ自動制御の実行中、バケット4が接地する位置に達したことを検出したとき、ブームシリンダ9を浮き状態にする。従って、下げ自動制御の実行中にバケット4が接地するタイミングでブーム3を浮き状態にできるため、バケット4を簡便に接地させられるとともに、バケット4が接地する際の衝撃を抑制することができる。
【0043】
(2)コントローラ25は、ブーム角検出センサ3a及びバケット角検出センサ4aそれぞれの角度に基づいて、バケット4が接地したことを検出する。従って、バケット4が接地するタイミングを精度良く検知できるため、バケット4が接地する際の衝撃をより抑制することができる。
【0044】
(他の実施形態)
上記実施形態において、コントローラ25は、ブーム角検出センサ3a及びバケット角検出センサ4aそれぞれの角度に基づいて、バケット4が接地したことを検出することとしたが、バケット4が接地することは様々な方法で検出することができる。例えば、コントローラ25は、ブーム角検出センサ3aの角度のみに基づいて、バケット4が接地したことを検出することができる。また、コントローラ25は、ブームシリンダ9のストローク量に基づいて、バケット4が接地したことを検出することができる。この場合、ホイールローダ1は、ブームシリンダ9のストローク量を検出するブームストロークセンサを備えていればよい。また、コントローラ25は、ブームシリンダ9のストローク量とバケットシリンダ10のストローク量とに基づいて、バケット4が接地したことを検出することができる。この場合、ホイールローダ1は、ブームシリンダ9のストローク量を検出するブームストロークセンサと、バケットシリンダ10のストローク量を検出するバケットストロークセンサとを備えていればよい。さらに、コントローラ25は、ブームシリンダ9のボトム側における油圧が所定の閾値以下になったことに基づいて、バケット4が接地したことを検出することができる。この場合、ホイールローダ1は、ブームシリンダ9のボトム側における油圧を検知する油圧センサを備えていればよい。
【0045】
上記実施形態において、コントローラ25は、操作レバーCLが下降側に所定操作量以上操作されたときに下げ自動制御を実行することとしたが、下げ自動制御の実行開始条件はこれに限られるものではない。例えば、コントローラ25は、操作レバーCLが下降側に所定操作量以上操作された後、操作レバーCLがニュートラル位置に戻されたときに下げ自動制御を実行することとしてもよい。また、コントローラ25は、操作レバーCLが下降側に所定操作量以上操作された後、オペレータが下げ自動制御の実行ボタンを押下したときに下げ自動制御を実行することとしてもよい。
【0046】
上記実施形態において、コントローラ25は、ディスプレイ29に表示される設定画面に入力された速度を下げ自動制御における所定速度に設定することとしたが、これに限られるものではない。例えば、コントローラ25は、下げ自動制御における所定速度を設定するためのダイヤルの位置に応じて、所定速度を設定してもよい。
【0047】
上記実施形態において、コントローラ25は、バケット4が接地する位置に達したことを検出したときに、ブームシリンダ9を浮き状態にすることとしたが、これに限られるものではない。コントローラ25は、バケット4が所定位置に達したことを検出したときに、ブームシリンダ9を浮き状態にしてもよい。所定位置は、バケット4が地面に近接する位置に設定されることが好ましい。この場合においても、バケット4を簡便に接地させられるとともに、バケット4が接地する際の衝撃を抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ホイールローダ
1a 制御系統
2 車体
3 ブーム
4 バケット
5 作業機
9 ブームシリンダ
10 バケットシリンダ
20 作業機ポンプ
21 ブーム操作弁
22 バケット操作弁
23 パイロットポンプ
24 作業機電子制御弁
25 コントローラ
26 エンジン
29 ディスプレイ
30 作動油タンク
CL 操作レバー
図1
図2
図3