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特許7164299感圧性粘着剤層、及びこれを用いた粘着テープ及び構成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】感圧性粘着剤層、及びこれを用いた粘着テープ及び構成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20221025BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221025BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221025BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20221025BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J11/06
C09J7/38
C09J7/21
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017560622
(86)(22)【出願日】2017-10-31
(86)【国際出願番号】 JP2017039421
(87)【国際公開番号】W WO2018079853
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2016213814
(32)【優先日】2016-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】服部 絢子
(72)【発明者】
【氏名】安田 誠也
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/069462(WO,A1)
【文献】特開2015-151432(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1224006(KR,B1)
【文献】特表2007-513216(JP,A)
【文献】特表2014-515049(JP,A)
【文献】特開2011-021103(JP,A)
【文献】特開2009-279862(JP,A)
【文献】特開2003-041232(JP,A)
【文献】特開2011-236414(JP,A)
【文献】特開2018-027649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートにより架橋された(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対して非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)を1.0~60質量部含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、アルキル基の炭素数が4~10の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーとビニル基を含有するカルボン酸とを含む重合性モノマー(a)の重合体であり、前記重合性モノマー(a)中のビニル基を含有するカルボン酸の含有量が1質量%以上12質量%以下であり、
微粒子を含み、
23℃における引張貯蔵弾性率が5×10~7×10Paであり、引張貯蔵弾性率が1×10Paとなる温度が205℃以下であり、
残留モノマー量が0.5質量%以下である感圧性粘着剤層。
【請求項2】
前記非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)が、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、及びレゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェートからなる群より選ばれる1種以上である請求項1に記載の感圧性粘着剤層。
【請求項3】
前記感圧性粘着剤層が粘着付与樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の感圧性粘着剤層。
【請求項4】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に、請求項1~3のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層とを備える粘着テープ。
【請求項5】
前記基材がポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリエチレンテレフタレートクロスからなる群から選択される少なくとも1種である請求項4に記載の粘着テープ。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の感圧性粘着剤層と、表面に凹凸を有するシート材とを備え、前記感圧性粘着剤層が、凹凸を有する表面上に設けられる構成物。
【請求項7】
前記シート材が織物又は編物である請求項6に記載の構成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物を硬化した感圧性粘着剤層、及びこれを用いた粘着テープ及び構成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着テープや粘着テープは、接着剤よりも施工が簡便であり、また、施工速度に優れることから、モルタル等の建築用材料、電子機器、織物、編物等の繊維材料等の様々な分野において用いられている。特に建築用材料、繊維材料は表面が粗面であることが多いため、これら用途においては基材上に粘着剤層を設けることによって粗面への追従性や粘着力の向上が図られている。このような接着テープや粘着テープとして、例えば特許文献1には、接着剤層に対して特定のガラスのミクロバブル(中空微小球)を含有させた感圧性接着テープが記載されている。
【0003】
また、建築用途に用いられる粘着テープについては一般的に難燃性に優れることが求められることが多い。さらに、繊維材料に用いられる粘着テープも、例えば自動車、飛行機、鉄道車両等の輸送分野の内装材にて使用される場合などには、難燃性が求められることがある。例えば、特許文献2には、アクリル系高分子樹脂、及び水酸化アルミニウム等の金属水酸化物からなる難燃充填剤を含み、粘着剤の製造過程において残留した単量体の含有量を規定した粘着剤が記載されている。この粘着剤では、単量体の含有量を2重量%以下とすることで、粘着剤の難燃性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭57-17030号公報
【文献】特表2007-513216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1においては、難燃性に関する検討が十分になされていない。一方で、特許文献2のように、単量体の含有量を少なくするだけでは、難燃性を向上するには限界があり、他の手段により難燃性を向上することが求められている。
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであって、モルタル等の建築材料、織物、編物等の繊維材料に代表される粗面などの各種の被着面に対して良好な粘着性を有し、かつ、優れた難燃性を備える感圧性粘着剤層、及びこれを用いた粘着テープ及び構成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]、[2]及び[3]を要旨とする。
[1](メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対して非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)を1.0~60質量部含有し、23℃における引張貯蔵弾性率が5×104~7×107Paであり、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度が205℃以下であり、残留モノマー量が0.5質量%以下である感圧性粘着剤層。
[2]基材と、前記基材の少なくとも一方の面に、前記感圧性粘着剤層を有する粘着テープ。
[3]前記感圧性粘着剤層と、表面に凹凸を有するシート材とを備え、前記感圧性粘着剤層が、凹凸を有する表面上に設けられる構成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各種の被着面に対して良好な粘着性を有し、かつ、優れた難燃性を備える感圧性粘着剤層、及びこれを用いた粘着テープ、構成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の感圧性粘着剤層は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対して非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)を1.0~60質量部含有するものであり、その引張貯蔵弾性率が、23℃において、5×104~7×107Paとなるものである。また、引張貯蔵弾性率は、温度を上昇させていくと低下していくものであるが、本発明の感圧性粘着剤層は、温度を上昇させたときに、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度が205℃以下となるものである。
【0009】
感圧性粘着剤層は、23℃の引張貯蔵弾性率が上記範囲外となると、十分な粘着性を発現することが難しくなる。また、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度が205℃以下となることで、難燃性が良好となるものである。その原理は定かではないが、以下のように推定される。感圧性粘着剤層は、加熱されたときの流動性が増し、その状態からさらに加熱されると一部が滴下するような状態となる。その滴下する温度が低くなると、その滴下物が先に燃焼し、難燃剤(B)が配合されることも相俟って感圧性粘着剤層全体が燃焼されることが防止され、それにより、感圧性粘着剤層の難燃性が向上すると推定される。そして、感圧性粘着剤層は、引張貯蔵弾性率が1×104Pa以下では、軟化ないし流動化した状態となるが、この引張貯蔵弾性率が1×104Pa以下となる温度が低いと上記した滴下する温度も低くなり、感圧性粘着剤層の難燃性が向上すると推定される。一方で、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度が205℃より高いと十分に難燃性が向上しない。
【0010】
粘着性をより良好にする観点から、感圧性粘着剤層の23℃における引張貯蔵弾性率は、好ましくは1×105~6×107Pa、より好ましくは3×105~5×107Pa、さらに好ましくは3.5×105~8×105Paである。
また、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度は、難燃性をより高めるために、200℃以下が好ましい。一方で、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度は、その下限値が特に限定されないが、実用的には、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましい。
引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度は、後述するように例えば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量を調整することで上記範囲内にすることが可能である。
【0011】
本発明においては、感圧性粘着剤層中に含まれる残留モノマー量は、感圧性粘着剤層の難燃性をより向上させる観点から、感圧性粘着剤層全量に対して、0.5質量%以下、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.25質量%以下である。また、残留モノマー量の下限値は、特に限定されないが、0質量%(すなわち、未検出)以上であればよい。
なお、残留モノマー量は、感圧性粘着剤層中に含まれる後述する未反応の重合性モノマー(a)の量を実質的に意味する。なお、残留モノマー量は、測定対象となる試料液に対してガスクロマトグラフ装置で測定を行い、最も配合量(質量)が多い重合性モノマー(a)の主成分基準で予め作成しておいた検量線に基づいて求めることができるが、詳しくは実施例に示すとおりである。
残留モノマー量は、例えば、後述する製造方法で感圧性粘着剤層を製造するとともに、光重合開始剤の使用の有無、光重合開始剤の使用量、紫外線照射条件等を適宜調整することで残留モノマー量を少なくすることが可能であるが、紫外線照射条件を調整することで少なくすることが好ましい。一般的にポリマーは、光照射強度を高くしたり、紫外線照射時間を長くしたりすることで重合が進むが、残留モノマー量を少なくするためには紫外線照射時間を長くするとよい。
【0012】
<(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)>
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、例えば、下記重合性モノマー(a)を含む粘着剤組成物を重合することにより得ることができ、下記重合性モノマー(a)の重合体である。
【0013】
〔重合性モノマー(a)〕
重合性モノマー(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを挙げることができる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」とは、「アクリル酸アルキルエステル、又はメタクリル酸アルキルエステル」を意味する。他の類似の用語も同様である。
〔(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー〕
本発明における(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、(メタ)アクリル酸と脂肪族アルコールとのエステルであって、前記脂肪族アルコールのアルキル基の炭素数が、好ましくは2~14、より好ましくは4~10である脂肪族アルコールに由来するアルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が前記範囲内であると、感圧性粘着剤層のガラス転移温度(Tg)が高くなり過ぎず、粘着力が良好になる。また、23℃における引張貯蔵弾性率、及び引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度を上記範囲内に調整しやすくなる。
【0014】
具体的な(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
重合性モノマー(a)中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは88質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、23℃における引張貯蔵弾性率、及び引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度を上記範囲内に調整しやすくなる。また、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させることも可能である。
【0016】
〔極性基含有モノマー〕
本発明においては、感圧性粘着剤層のTg、23℃における引張貯蔵弾性率、及び引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度等を調整する観点、及び感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、重合性モノマー(a)として極性基含有モノマーを用いてもよい。極性基含有モノマーは、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーと併用することが好ましい。
極性基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニルモノマー;
(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等の窒素含有ビニルモノマーが挙げられる。
これらの中でも、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のビニル基を含有するカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましく、アクリル酸が更に好ましい。
これらの極性基含有モノマーは、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
重合性モノマー(a)が極性基含有モノマーを含有する場合、重合性モノマー(a)中のその含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。極性基含有モノマーの含有量を上記範囲内に調整することで、23℃における引張貯蔵弾性率及び引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度を上記範囲内としやすくなる。また、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させやすくなる。
【0018】
〔その他のモノマー〕
重合性モノマー(a)としては、粘着剤組成物の粘度を調整するなどの観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー及び極性基含有モノマー以外のその他のモノマーを用いてもよい。
その他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、及びp-メチルスチレン等のスチレン系モノマーが挙げられる。
【0019】
重合性モノマー(a)がその他のモノマーを含有する場合、その含有量は、粘着剤組成物の粘度を調整する観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下である。
【0020】
〔質量平均分子量〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、その質量平均分子量が50万~150万であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量をこのような範囲内とすることで、23℃における引張貯蔵弾性率、及び引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度を上記範囲内に調整しやすくなる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量は、上記観点からより好ましくは60万以上、更に好ましくは70万以上、よりさらに好ましくは80万以上であり、より好ましくは140万以下、さらに好ましくは130万以下、より更に好ましくは110万以下、最も好ましくは100万以下である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値を指す。また、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量とは、後述する架橋剤によって架橋されている場合には、架橋されていない(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量を意味し、その測定法は例えば後述する実施例のとおりに行うとよい。
より詳細には、重合性モノマー(a)のみを感圧性接着剤層を作製するとき同様の条件(同じ光重合開始剤の種類及び量、及び同じ硬化条件)で重合させた得たポリマーについて測定した質量平均分子量を意味する。したがって、粘着剤組成物が、架橋剤を含む場合でも、架橋剤を含有させずに重合性モノマー(a)を重合させたものについて質量平均分子量を測定したものである。
【0021】
〔ゲル分率〕
感圧性粘着剤層のゲル分率は、40質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
ゲル分率を上記範囲内とすることで、23℃における引張貯蔵弾性率、及び引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度を上記範囲内に調整しやすくなる。また、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させやすくなるとともに、柔軟性が低下することも抑制する。
上記観点から、感圧性粘着剤層のゲル分率は、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。なお、ゲル分率は下記式(1)より算出することができる。
ゲル分率(質量%)=(B/A)×100 式(1)
A:感圧性粘着剤層(試験片)の重量
B:40℃のテトラヒドロフランに感圧性粘着剤層(試験片)を48時間浸漬し、その後の感圧性粘着剤層の不溶解分の乾燥重量
【0022】
〔膨潤度〕
感圧性粘着剤層の膨潤度は、30以上80以下であることが好ましい。膨潤度を上記範囲内とすることで、23℃における引張貯蔵弾性率を上記範囲内に調整しやすくなる。また、下限値以上とすることで、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させやすく、上限値以下とすることで感圧性粘着剤層の柔軟性の低下を抑制しやすくなる。膨潤度は、上記観点からより好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上、更に好ましくは45以上であり、より好ましくは75以下である。なお、膨潤度は下記式(2)より算出することができる。
膨潤度=C/D 式(2)
C:感圧性粘着剤層(試験片)0.05gとテトラヒドロフラン40mlとを50mlサンプル瓶へ入れて12時間振盪機を用いて膨潤させ、#200金属メッシュにて濾液と固体とを分離した後に測定した固体重量
D:感圧性粘着剤層(試験片)を110℃にて3時間以上乾燥し、放冷した後に測定した固体重量
【0023】
〔架橋剤〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)は、感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点、及び感圧性粘着剤層のゲル分率を調製する観点から架橋剤により架橋されていることが好ましい。
架橋剤としては、ビニル基を2つ以上有するものが挙げられ、好ましくは(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。このような架橋剤は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の主鎖中に組み込まれ、その主鎖同士を架橋してネットワークを形成する。
具体的な架橋剤としては、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトシキ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトシキ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロキシ化グリセリルトリアクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び液状水素化1,2-ポリブタジエンジアクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、分子量が400以上の架橋剤が好ましく、具体的には、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、及び液状水素化1,2-ポリブタジエンジアクリレートなどが好ましく、液状水素化1,2-ポリブタジエンジアクリレートがより好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)が架橋剤により架橋されている場合、重合性モノマー(a)100質量部に対する架橋剤の量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下である。架橋剤の量をこれら範囲内に調整することで、感圧性粘着剤の粘着力を向上させ、かつ適切なゲル分率を有する感圧性粘着剤を得やすくなる。
【0025】
〔(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の製造方法〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の製造方法に特に制限はないが、例えば、重合性モノマー(a)、必要に応じて光重合開始剤及び架橋剤を含む粘着剤組成物に対して光を照射して重合することにより製造することができる。
<光重合開始剤>
本発明において用いることができる光重合開始剤としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシー2-プロピル)ケトン[商品名:ダロキュアー2959、メルク社製]等のケトン系;α-ヒドロキシ-α、α-ジメチル-アセトフェノン[商品名:ダロキュア1173、メルク社製]、メトキシアセトフェン、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェン[商品名:イルガキュア651、BASF社製]、及び2-ヒドロキシー2-シクロヘキシルアセトフェノン[商品名:イルガキュア184、BASF製]等のアセトフェノン系;ベンジルジメチルケタール等のケタール系;その他、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0026】
重合性モノマー(a)100質量部に対する光重合開始剤の量は、後述する残存モノマーの量を低減する観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上、特に好ましくは0.4質量部以上であり、そして、感圧性粘着剤層中に光重合開始剤が多く残留することを防ぐ観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0027】
<非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)>
本発明においては、感圧性粘着剤層の難燃性を向上させることを目的として、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤を用いる。
非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤としては、非ハロゲンリン酸エステル、非ハロゲン縮合リン酸エステルなどが挙げられ、非ハロゲン縮合リン酸エステルを用いることが好ましい。
非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェート及びこれらを各種置換基で置換した化合物等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート、及びレゾルシノールビスジ-2,6-キシレニルホスフェートから選ばれる1種以上が好ましく、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビスジフェニルホスフェートから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0028】
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対する非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)の含有量は、1.0~60質量部である。1.0質量未満とすると、感圧性粘着剤層に十分な難燃性を付与することが難しくなる。また、60質量部を超えると、感圧性粘着剤層の粘着力が低下する。
感圧性粘着剤層に十分な難燃性を付与する観点から、上記含有量は、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは2.5質量部以上である。また、感圧性粘着剤層の粘着力が低下することを抑制する観点から、好ましくは55.0質量部以下、より好ましくは50.0質量部以下、更に好ましくは45.0質量部以下、より更に好ましくは40.0質量部以下である。
なお、前述の重合性モノマー(a)は反応性が良好であることから、本発明においては、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部」と「重合性モノマー(a)100質量部」とを同量としてみなすことができる。したがって、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部に対する非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)の量」は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を製造する際の重合性モノマー(a)の仕込み量に基づいて算出することができる。
【0029】
<その他の成分>
本発明の感圧性粘着剤層(すなわち、粘着剤組成物)は、例えば、下記の成分を含有してもよい。
〔粘着付与樹脂〕
本発明の感圧性粘着剤層は、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、粘着付与樹脂を含有してもよい。
粘着付与樹脂としては、水添テルペン樹脂、水添ロジン、不均化ロジン樹脂、石油樹脂、及び水添石油樹脂等の重合阻害性の低い粘着付与樹脂が好ましい。これらの中でも、粘着付与樹脂が二重結合を多く有していると重合反応を阻害することから、水添石油樹脂が好ましい。
粘着付与樹脂の軟化点は、感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは125℃以上である。
【0030】
粘着剤組成物が粘着付与樹脂を含有する場合において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部(すなわち、重合性モノマー(a)100質量部)に対する粘着付与樹脂の量は、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上、より更に好ましくは9質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、より更に好ましくは25質量部以下である。粘着付与樹脂の量が前記範囲内であると、感圧性粘着剤層の粘着力が向上すると共に、柔軟性も向上する。
【0031】
〔微粒子〕
本発明の感圧性粘着剤層は、感圧性粘着剤層の粗面に対する粘着力を向上させる観点、及び感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、微粒子を含有してもよい。
微粒子の体積中位粒径(D50)は、感圧性粘着剤層の粗面に対する粘着力を向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上、より更に好ましくは20μm以上、より更に好ましくは25μm以上であり、感圧性粘着剤層の凝集力を向上させる観点から、好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下、更に好ましくは120μm以下、より更に好ましくは110μm以下、より更に好ましくは100μm以下である。なお、本明細書において「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0032】
前記微粒子としては、ガラスバルーン、シラスバルーン、及びフライアッシュバルーン等の無機質中空粒子、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、及びフェノール樹脂等からなる有機質中空粒子、ガラスビーズ、シリカビーズ、及び合成雲母等の無機質微粒子、ポリアクリル酸エチル、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレン等の有機質微粒子が挙げられる。
【0033】
感圧性粘着剤層が微粒子を含有する場合において、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)100質量部(すなわち、重合性モノマー(a)100質量部)に対する微粒子の量は、感圧性粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、感圧性粘着剤層の凝集力の低下を抑制する観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0034】
本発明において用いる粘着剤組成物は、前述のその他の成分の他に、添加剤として、例えば、可塑剤、軟化剤、顔料、及び染料等を含有してもよい。
【0035】
<感圧性粘着剤層の製造方法>
本発明の感圧性粘着剤層の製造方法は特に制限はないが、重合性モノマー(a)、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)、及び必要に応じて光重合開始剤や架橋剤等を含む粘着剤組成物に光照射することにより、(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)を製造しつつ、感圧性粘着剤層を製造することが好ましい。
前記製造方法を具体的に説明すると、まず、1種以上の重合性モノマー(a)、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)、及び架橋剤や光重合開始剤等をガラス容器等の反応容器に投入し、粘着剤組成物を得る。
次いで、前記粘着剤組成物中の溶存酸素を除去するために、一般に窒素ガス等の不活性ガスを供給して酸素をパージする。そして、粘着剤組成物を剥離紙等の剥離シートからなる基材上に塗布するか、又は、プラスチックフィルム、金属箔、紙、布、不織布等の基材に塗布した後、光を照射し重合することにより感圧性粘着剤層を得ることができる。
前記粘着剤組成物の塗布もしくは含浸から光を照射する工程までは、不活性ガス雰囲気下、又はフィルム等により酸素が遮断された状態で行うことが好ましい。
【0036】
粘着剤組成物に光を照射する際に用いることができるランプとしては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウエーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。これらの中でも、ケミカルランプが好ましい。粘着剤組成物に対して光を照射する際の光照射強度は、光重合開始剤によって異なるが、0.1~100mW/cm2程度が好ましい。
【0037】
<感圧性粘着剤層の厚さ>
感圧性粘着剤層の厚さは、感圧性粘着剤層の粘着力を確保する観点から、好ましくは150μm以上、より好ましくは200μm以上、更に好ましくは250μm以上、より更に好ましくは300μm以上であり、感圧性粘着剤層の粗面などの被着面に対する追従性を向上させる観点から、好ましくは1,000μm以下、より好ましくは950μm以下、更に好ましくは900μm以下、より更に好ましくは850μm以下、より更に好ましくは800μm以下である。
【0038】
感圧性粘着剤層は、各種の被着面に対して使用することが可能であるが、粗面用感圧性粘着剤層であることが好ましい。「粗面用感圧性粘着剤層」とは、建築材料、繊維材料等の粗面の接着に用いるものであって、粘着剤層を被着面に配置した後、圧力をかけることにより被着面に対して接着することができる粘着剤層をいう。本発明の感圧性粘着剤層は、被着面が粗面であっても良好な粘着性を発現することが可能である。
ただし、感圧性接着剤層は、上記以外の凹凸を有する被着体、さらには、車両等に使用される金属板、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合合成樹脂板(ABS板)、及びポリ塩化ビニル板(PVC板)等に対しても優れた粘着性を示し、これらの材料に対しても好適に用いることができる。
【0039】
[粘着テープ]
本発明の粘着テープは、基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられた上記した感圧性粘着剤層とを有するものである。
<基材>
粘着テープに用いられる基材に特に制限はないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート等を用いた樹脂クロス、連続気泡構造を有する発泡体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ウレタン等の樹脂材料を用いた透湿性フィルム、含浸紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、和紙、合成紙、これらのラミネート品等が挙げられ、中でも、リワーク時に基材の破れを生じにくくする観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)及びポリエチレンテレフタレートクロス(PETクロス)が好ましい。
【0040】
透湿性フィルムは、例えば、KTF(三菱樹脂(株)製)、エスポアール(三井化学(株)製)、ポーラム((株)トクヤマ製)、タピレンMPF(大化工業(株)製)、セルポア(積水フィルム(株)製)、マイクロポーラスフィルム(スリーエムジャパン(株)製)、PORO(フタムラ化学(株)製)、ハイポア(旭化成イーマテリアルズ(株)製)等の市販品として入手可能である。また、機械的にクレーズ処理したものは、例えば、モノトラン((株)ナック販売製)等の市販品として入手可能である。
また、基材は、上記各材料の一方の面を離型処理した剥離シートであってもよく、その場合、粘着剤層を離型処理面上に設けるとよい。
【0041】
さらに、基材の感圧性粘着剤層を設ける面とは反対側の面には、離型層、帯電防止層等が設けられてもよい。また、粘着テープが基材の両面に感圧性粘着剤層が設けられた両面テープの場合には、一方の感圧性粘着剤層の面に離型紙、離型フィルムが積層されてもよい。
また、基材と感圧性粘着剤層との密着性を向上させるために、基材に対して必要に応じてコロナ処理等の表面処理を施してもよい。
基材の厚みは、20μm以上が好ましく、より好ましくは30~100μmである。基材の厚みを20μm以上とすることでリワーク時に破れ等が生じにくくなる。
【0042】
<粘着テープの製造>
本発明の粘着テープは、前述の感圧性粘着剤層の製造方法において説明した方法により製造することができる。具体的には、粘着剤組成物を基材上に塗布した後、前述の条件にて光を照射し重合することにより感圧性粘着剤層を有する粘着テープを得ることができる。本発明の粘着テープは、本発明の感圧性粘着剤層を有するため、被着面が粗面であっても優れた粘着性を有し、更に難燃性に優れるという特性を有する。
【0043】
<構成物>
本発明の構成物は、凹凸を有するシート材と、そのシート材の凹凸を有する面に設けられた感圧性粘着剤層とを備えるものである。シート材は、少なくとも一方の面が凹凸を有すればよいが、両面が凹凸を有してもよい。凹凸を有するシート材としては、編物、織物等の繊維材料が挙げられる。なお、ここでいう凹凸とは、例えば、編構造、織構造等の繊維構造に基づくミクロな凹凸を意味し、例えば、編物、織物から強制的に立ち上げられた部分などは除くものとする。
本発明の感圧性粘着剤層は、上記したように、難燃性が高いため、例えば、構成物全体に難燃性を付与することも可能である。また、感圧性粘着剤層のシート材に対する接着性が良好となって、シート材等の凹凸を有する表面へのアンカー性も向上する。すなわち、本構成物から別の被着体、剥離シートなどを剥離するとき等に生じる粘着剤層のアンカー剥がれを防止できる。なお、難燃性、接着性を良好にしつつアンカー性を向上させるためには、質量平均分子量、ゲル分率、膨潤度、非ハロゲンリン酸エステル系難燃剤(B)の量等をバランスよく調整するとよい。
【0044】
本構成物は、例えば、上記した粘着テープをシート材に貼り合わせたものであってもよい。この場合、粘着テープの基材が剥離シートであると、剥離シートを剥がして露出した粘着剤層によって、構成物を他の被着体に貼付することが可能になる。また、粘着テープが両面テープの場合にも、構成物を両面テープを介して他の被着体に貼付することが可能である。
構成物において、シート材の厚さは、例えば、0.05~5mmが好ましく、0.01~1.0mmがより好ましい。シート材の厚さは、例えば、シート材をマイクロスコープで観察して、シート材の一方の面から他方の面までの距離の平均値を求めたものである。ただし、上記距離は、一方の面の凸部先端から、他方の面の凸部先端(ただし、平滑面である場合には、平滑面)までの距離を意味する。
【0045】
また、感圧性粘着剤層が設けられる側のシート材の表面の凹凸高さは、シート材の厚さの5~60%であることが好ましい。なお、以下では、凹凸高さの厚さに対する割合を“凹凸割合”ともいう。本発明の感圧性粘着剤層は、このように凹凸割合が大きい面に対しても接着性、アンカー性が良好となる。ただし、アンカー性の効果をより効果的に発揮するためには、凹凸割合は、15~50%であることがより好ましい。
なお、凹凸高さとは、シート材の断面積をマイクロスコープで200倍に拡大して撮影した写真において測定した凹凸の高さの5点平均値である。凹凸高さとは、断面写真において、凹部と、その凹部に隣接する2つの凸部の高さ差の平均値である。
【実施例
【0046】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0047】
<評価>
〔引張貯蔵弾性率〕
23℃における引張貯蔵弾性率は、アィティー計測制御株式会社製、商品名「DVA-200/L2」の貯蔵弾性率測定装置により以下の測定条件により測定した。また、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度は、以下の設定昇温速度により温度を昇温させていき、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度を測定した。
(測定条件)
標線間長さ:3cm サンプル幅:0.6cm サンプル厚さ:0.2cm
変形モード:引張 静/動応力比:1.5 設定歪:0.10%
設定昇温速度:10℃/min 測定周波数10Hz
【0048】
〔感圧性接着剤層のゲル分率、及び膨潤度〕
感圧性接着剤層のゲル分率、及び膨潤度については、明細書中に記載の方法にしたがって、それぞれ測定した。
〔感圧性接着剤層の厚み〕
感圧性接着剤層の厚みは、ダイヤルゲージ(ミツトヨ製)により測定した。
〔質量平均分子量〕
(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出した。
なお、質量平均分子量は、重合性モノマー(a)のみを各実施例、比較例と同じ条件(同じ光重合開始剤の種類及び量、及び同じ硬化条件)で硬化させて得た(メタ)アクリル酸エステル系重合体(A)に対して測定した質量平均分子量である。
【0049】
〔残留モノマー量〕
残留モノマー量は、以下の要領で測定した。
(1)検量線の作成
0.001質量%、0.0003質量%、及び0.0001質量%濃度の2-エチルヘキシルアクリレートのアセトン溶液を作成し、ガスクロマトグラフ装置(Agilent 6890A及び7820A)にて下記測定条件で測定を行い、面積を測定した。各濃度溶液の測定面積Hと1mL当たりの2-エチルヘキシルアクリレートの重量Wとから作成された、縦軸をH,横軸をWとした直線を検量線とした。ただし、直線の相関係数が0.99以上とならない場合は再測定し、検量線の作成をやり直した。
(2)試料液の調製
試験管に測定対象としての感圧性接着剤層0.4gと、アセトン10mLとを入れ、室温にて12時間残留モノマーを抽出した。得られた抽出液をバイアル瓶に1mL採取して、オートサンプラーにバイアル瓶をセットした。
(3)残存モノマー量の測定
上記試料液についてガスクロマトグラフ装置(Agilent 6890A及び7820A)を用いて下記測定条件で測定を行い、測定面積と検量線とから残留モノマー重量Wを求め、下記式より未反応の残留モノマーの質量%を算出した。
(残留モノマー重量)÷(1mL当たりのサンプル重量)×100
(4)測定条件
カラム充填剤:ポリシロキサンポリマー(Agilent Technorogies社製DB-624)
担体:Chromosorb W カラムサイズ:180μm×20m
検出器:FID(水素炎イオン化検出器) キャリアーガス:ヘリウム
キャリアーガス流量:1mL/分 カラム温度:260℃
注入口温度:250℃
【0050】
〔燃焼試験〕
実施例及び比較例で得られた感圧性粘着剤層を5cm×10cmにカットした後、PETフィルムから剥がしたものを試験片とした。この試験片を金属枠に取り付け18リットル缶内に吊るし、パワートーチ8cmの炎を試験片の下端に12秒間接炎し、自己消火するものをA、パワートーチ8cmの炎では自己消火しないが、着火ライター4cmの炎を12秒接炎する場合に自己消炎するものをBとした。また、いずれの条件でも自己消炎しないものをCとする。なお、自己消炎とは、サンプルの末端まで燃焼する前に消火することを意味する。
【0051】
〔ボールタック試験〕
JIS Z 0237に準拠してボールタック試験を実施した。ただし、32/32インチのボールでも停止して動かない場合には、32/32インチより大きいボールについて、1/32ごとにボールを大きくしていき実施した。なお、表中に示したボールナンバー「A」は、A/32インチのボールであることを示す。
【0052】
<実施例1>
表1に記載の配合にしたがって、重合性モノマー(a)、架橋剤、難燃剤、微粒子、及び光重合開始剤を混合することにより粘着剤組成物を調製した。この粘着剤組成物に窒素をパージして溶存酸素を除去した。
次いで、離型処理した50μm厚のPETフィルム上に厚さ0.5mmのスペーサーを設置し、前記粘着剤組成物を前記PETフィルム上に塗布し、このPETフィルムを折り曲げて離型処理面が粘着剤組成物に接するように被覆した。
この状態で被覆側のPETフィルムにおける紫外線照射強度が5mW/cm2となるようにケミカルランプのランプ強度を調整し、10分間紫外線を照射することにより、感圧性粘着剤層を得た。感圧性粘着剤層の厚さは700μmであった。
【0053】
<実施例2~5、比較例1>
表1に記載の配合にしたがって粘着剤組成物を調製し、かつ表中の質量平均分子量、残留モノマーとなるように紫外線照射時間、紫外線強度を調整した以外は、実施例1と同様に感圧性粘着剤層を得た。
【0054】
なお、実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりであある。
重合性モノマー(a-1):三井化学株式会社製、2-エチルヘキシルアクリレート
重合性モノマー(a-2):三井化学株式会社製、アクリル酸
難燃剤(B):大八化学工業株式会社製、CR-741(ビスフェノールAビスジフェニルホスフェート)
架橋剤:液状水素化1,2-ポリブタジエンジアクリレート、日本曹達株式会社製、TEAI-1000
微粒子:ガラスバルーン、3Mジャパン株式会社製、グラスバブルズK-25(D50:55μm)
光重合開始剤:2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、BASF製、イルガキュア651
【0055】
【表1】
【0056】
実施例の結果から明らかなように、本発明の感圧性粘着剤層は、良好な粘着性を有し、かつ、優れた難燃性を備えることがわかる。それに対して、比較例1では、引張貯蔵弾性率が1×104Paとなる温度が205℃より高かったため、難燃性が十分に向上せず、燃焼試験の結果が不十分であった。