(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】汚染識別装置および方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/82 20120101AFI20221025BHJP
G01N 1/44 20060101ALI20221025BHJP
G01N 1/42 20060101ALI20221025BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20221025BHJP
G01N 21/94 20060101ALI20221025BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20221025BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G03F1/82
G01N1/44
G01N1/42
G01N27/62 V
G01N21/94
G01N21/956 A
H01L21/304 645D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018000960
(22)【出願日】2018-01-09
【審査請求日】2021-01-08
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522189012
【氏名又は名称】ブルーカー ナノ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー イー レクレア
(72)【発明者】
【氏名】ケネス ジー レスラー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ブリンクリー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー エム フィリョリーニ
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-068446(JP,A)
【文献】特表2010-536066(JP,A)
【文献】特開平02-086128(JP,A)
【文献】特開2005-252176(JP,A)
【文献】特開2011-171584(JP,A)
【文献】特開2016-025233(JP,A)
【文献】特開2010-044310(JP,A)
【文献】Andrew C. Tam et al.,Laser cleaning of surface contaminants,Applied Surface Science,NL,Elsevier Science B. V.,1998年,Vol. 127-129,721-725
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/82
G01N 1/00
21/94
27/62
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクの表面上の汚染物を識別する方法であって、
汚染粒子が付着しているフォトマスクに向かって電磁波源から電磁波を差し向けるステップを含み、前記電磁波は、前記フォトマスクの吸収スペクトルの局所最大値と実質的に同一の波長を有し、
前記フォトマスクに温度上昇を生じさせるステップを含み、
熱エネルギーを前記フォトマスクから前記汚染物に伝達して前記フォトマスクの前記表面から前記汚染物の遊離分子を遊離させるステップを含み、
前記フォトマスクの上方に圧力差を生じさせて前記汚染物の遊離分子を前記フォトマスクから遠ざけるステップを含み、
液体窒素N
2により-195℃に冷却された収集基板上の前記汚染物の遊離分子を捕捉するステップを含み、
前記汚染物の組成を分析するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記電磁波は、レーザ光である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レーザ光の波長は、8マイクロメートルを超える、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記フォトマスクは、少なくとも1つの薄膜層を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記薄膜層は、パターン付けされ、前記薄膜層は、ボイド領域を有し、前記ボイド領域の下において前記フォトマスクのそれぞれ対応した部分が露出される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記フォトマスクの温度をしきい温度よりも低く維持して前記フォトマスクへの損傷を阻止するステップを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記フォトマスクは、少なくとも2種類の材料を含み、前記レーザ光の波長は、基板の吸収スペクトルの局所最大値と実質的に同一である、請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記圧力差は、前記フォトマスク全体に満たない部分上に局所化される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記圧力差は、前記レーザ光が前記フォトマスクに当てられている領域に局所化される、請求項
2記載の方法。
【請求項10】
前記圧力差は、前記フォトマスクへの前記電磁波源の周りの収集管内に作られる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記汚染物の遊離分子を捕捉するステップは、収集基板を0℃未満に冷却するステップと、前記圧力差を用いて前記汚染物の遊離分子を前記収集基板に差し向けるステップとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記フォトマスクおよび前記収集基板は、大気圧において乾燥環境内に位置する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記汚染物の組成を分析するステップは、分光法を利用する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記汚染物の組成を分析するステップは、質量分析法を利用する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記汚染物の組成を分析するステップは、汚染物のレベルおよび種類を突き止める、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記汚染物の組成を分析するステップは、前記汚染物のレベルおよび種類を前記フォトマスクに関するベンチマークと比較するステップを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
基板の表面上の汚染物を識別する方法であって、
大気圧の状態にある乾燥環境内に配置されていて汚染粒子が付着している基板に向かって電磁波を差し向けるステップを含み、前記電磁波は、前記基板の吸収スペクトルの局所最大値と実質的に同一の波長を有し、
前記基板に温度上昇を生じさせるステップを含み、
熱エネルギーを前記基板から前記汚染物に伝達して前記基板の前記表面から前記汚染物の遊離分子を遊離させるステップを含み、
冷却式収集装置内に配置された、液体窒素N
2により-195℃に冷却された収集基板上の前記汚染物の遊離分子を捕捉するステップを含み、
前記汚染物の組成を分析するステップを含む、方法。
【請求項18】
前記基板の温度をしきい温度よりも低く維持して前記基板への損傷を阻止するステップを更に含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記冷却式収集装置は、コールドプレートである、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記冷却式収集装置は、0℃未満に冷却されている、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記冷却式収集装置は、前記基板表面に密接して位置している、請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記冷却式収集装置は、入口ポートおよび出口ポートを備えた冷却式密閉容積部である、請求項17記載の方法。
【請求項23】
圧力差が前記冷却式密閉容積部と前記乾燥環境との間に作られ、その結果、前記汚染物の遊離分子が前記入口ポートを通って前記冷却式密閉容積部中に入るようになっている、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記乾燥環境は、-10℃未満の露点を有する、請求項17記載の方法。
【請求項25】
前記乾燥環境は、不活性ガス環境である、請求項17記載の方法。
【請求項26】
前記不活性ガスは、窒素である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
基板の表面を洗浄する方法であって、
大気圧の状態にある乾燥環境内に配置されていて汚染物が付着している基板に向かって電磁波源から電磁波を差し向けるステップを含み、前記電磁波は、前記基板の吸収スペクトルの局所最大値と実質的に同一の波長を有し、
前記基板に温度上昇を生じさせるステップを含み、
熱エネルギーを前記基板から前記汚染物に伝達して前記汚染物を分解するステップを含み、
液体窒素N
2により-195℃に冷却された収集基板上の分解された前記汚染物の分子を捕捉するステップを含み、
前記汚染物の組成を分析するステップを含む、方法。
【請求項28】
前記電磁波は、レーザ光である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記レーザ光の波長は、8マイクロメートルを超える、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記基板は、少なくとも1つの薄膜層を有する、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記薄膜層は、パターン付けされ、前記薄膜層は、ボイド領域を有し、前記ボイド領域の下において前記基板のそれぞれ対応した部分が露出される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記基板の温度をしきい温度よりも低く維持して前記基板への損傷を阻止するステップを更に含む、請求項27記載の方法。
【請求項33】
前記基板は、少なくとも2種類の材料を含み、前記レーザ光の波長は、基板の吸収スペクトルの局所最大値と実質的に同一である、請求項28記載の方法。
【請求項34】
前記乾燥環境は、-10℃未満の露点を有する、請求項27記載の方法。
【請求項35】
前記乾燥環境は、不活性ガス環境である、請求項27記載の方法。
【請求項36】
前記不活性ガスは、窒素である、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記基板は、表面洗浄が始まる前に大気圧状態にある乾燥環境内に配置される、請求項27記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、表面を洗浄する際に有用な装置および方法に関する。特に、本発明は、代表的には、半導体業界、オプティックスなどにおいて用いられるコンポーネントの表面を洗浄する際に有用な装置および方法に関する。開示する装置および方法は、フォトマスクレチクルの有効寿命の延長に利用できる。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2016年6月16日に出願された米国特許出願第15/048,774号の一部継続出願であり、この米国特許出願は、2015年3月12日に出願された米国特許出願第14/656,206号の継続出願であり、この米国特許出願は、2014年6月3日に出願された米国特許出願第14/294,728号(現在、米国特許第8,986,460号)の一部継続出願であり、この米国特許出願は、2013年11月11日に出願された米国特許出願第14/077,028号(現在、米国特許第8,741,067号)の継続出願であり、この米国特許出願は、2012年10月22日に出願された米国特許出願第13/657,847号(現在、米国特許第8,613,803号)の継続出願であり、この米国特許出願は、2008年11月24日に出願された米国特許出願第12/277,106号(現在、米国特許第8,293,019号)の継続出願であり、この米国特許出願は、2008年3月25日に出願された米国特許出願第12/055,178号(現在、米国特許第7,993,464号)の継続出願であり、この米国特許出願は、2007年8月9日に出願された米国特許仮出願第60/954,989号の優先権主張出願であり、これら特許文献を参照により引用し、これらの開示内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
表面洗浄のために長い間、電磁線が用いられている。これらプロセスの例としては、表面汚染の除去、薄い材料層皮膜、例えば塗料の除去または金属加工物表面からの油の除去が挙げられる。最も初期の例のうちの幾つかは、フラッシュランプ放射線源を利用した。これらシステムは、達成可能なピーク電力に鑑みて用途が制限される場合がある。
【0004】
レーザが達成可能な高いピーク電力、高いエネルギー安定性および波長選択性の理由でこれらの形式のプロセスにますます用いられている。これら特徴は、高い局所化、改良された材料選択性、および洗浄効果の深さ制御を可能にする。レーザ表面洗浄プロセスは、おおざっぱに言って、表面汚染層除去と粒子除去に大別できる。表面汚染層の除去は、通常、レーザアブレーションによって達成される。パーティクル除去では、汚染を全体として除去することが必要である。
【0005】
両方のカテゴリに属する洗浄プロセスは、高いピーク電力をもたらすようパルスレーザ放射線の使用から恩恵を受けることができる。特に、短パルス放射線は、向上した処理をもたらす。短パルス放射線は、レーザアブレーション処理において熱影響部を減少させることが判明している。これにより、アブレーション除去ならびに除去深さの微調整を向上させることができる。短パルス放射線はまた、パーティクルおよび/または基板内の熱の増加率を増大させ、それによりパーティクル除去を生じさせる加速力を増大させることによって粒子除去を促進することができる。
【0006】
基板損傷は、アブレーション除去プロセスと粒子除去プロセスの両方にとって課題となる場合があり、これら作用効果を最小限に抑えるために幾つかの技術が開発された。アブレーションプロセスに関し、汚染物の吸収率を増加させる波長を選択することにより、フルエンス要件を減少させることができ、したがって基板損傷を減少させることができる。加うるに、全汚染物除去のために多数のパルスを用いることにより、所要のフルエンスが減少する場合がある。しかしながら、選択された波長で高い吸収率を有する基板は、波長選択および多パルス除去プロセスを用いても汚染と一緒にアブレーションされる可能性が多分にある。基板インターフェースのところでの除去プロセスの終了可能性は、これらの場合では制限されよう。この問題は、小さなサイズの汚染については著しく大きくなり、と言うのは、汚染の吸収断面が基板に対して減少するからである。
【0007】
アブレーション除去プロセスの場合と同様、粒子除去プロセスもまた、デリケートな基板および処理波長で高い吸収率を有する基板に関して基板損傷を生じさせる場合がある。この問題は、パーティクルと基板との間の接着力の増大およびパーティクルの下のレーザのセルフフォーカシングのために小さなパーティクルの除去に関して大きくなる。パーティクル洗浄プロセスに関し、基板損傷の恐れを減少させる開発された装置および方法は、汚染表面の上方の環境の制御を必要とする。フルエンスレベルを減少させることができる粒子レーザプロセスの例としては、湿式レーザ洗浄、スチームレーザ洗浄、および増加湿度洗浄が挙げられる。レーザ洗浄プロセスと他の洗浄プロセス(エッチング、有機溶剤、および超音波を含む)の組み合わせは、洗浄有効性を高めることが判明しており、しかも基板損傷の恐れを減少させることができる。しかしながら、乾式レーザ洗浄プロセスを例外として、説明した粒子除去プロセスの全ては、基板表面の上方の環境への接近を必要とする。これは、幾つかのシステムにとっては非実用的である場合がある。
【0008】
別の乾式レーザ粒子洗浄プロセスが開発された。レーザ音波洗浄およびレーザ衝撃波洗浄は、粒子洗浄についても高評価された乾式レーザ洗浄方法である。レーザ音波洗浄は、基板に対する直接的な励起を必要とし、したがって、特に、説明した小さな粒子については基板損傷の高い潜在的可能性を免れない。レーザ衝撃波洗浄は、粒子除去具合を向上させることが判明しており、そして、レーザを基板表面の上方に集束し、そして粒子との衝撃波相互作用を利用することにより粒子損傷の恐れを減少させることができる。この技術はまた、小さな粒子除去に利用された場合には困難さが増した。加うるに、衝撃波は、基板の表面上またはその近くの他の敏感な特徴部を損傷させる場合がある。これは、特に基板表面の上方に敏感な物質が存在する場合に当てはまり、と言うのは、衝撃波を生じさせるには基板の上方に収束される比較的高いレーザ強度が必要だからである。
【0009】
最新の乾式レーザ技術であっても、かかる技術もまた、基板の上方の環境への接近が実行可能ではない場合(例えば、密閉システム)、制限される場合がある。除去プロセスは、密閉システムに関してはパーティクルを基板上の別の場所に移動させるに過ぎず、と言うのは、パーティクルは、全体として表面から除去されるからである。典型的には、これら技術は、パーティクルを洗浄中の基板から完全に除去する追加の制御装置および方法を利用する。これら方法としては、直接方向付けられた空気の流れ、減圧(真空)の使用または大部分が基板表面の上方の環境への制限のない接近を必要とする重力が挙げられる。
【0010】
半導体製造は、レーザ洗浄方法を含む表面洗浄プロセスを利用する主要な工業分野のうちの1つである。必要な洗浄プロセスのうちの多くは、許容可能な基板損傷レベルについて厳しい公差を持っている。加うるに、小さな製品特徴部により、製品破損を回避するために極めて小さなパーティクルを除去することが必要である。洗浄は、多くのウェーハ処理ステップにおける課題であり、かかる洗浄は、長時間にわたる汚染層(例えば、レジスト除去)および粒子汚染除去を含む。
【0011】
表面洗浄は、ウェーハ製造プロセスで用いられるオプティクス(例えば、フォトマスク)についての要件である。特に、フォトマスクに関し、汚染の蓄積は、ウェーハプリントプロセスの際にマスクの通常の使用中に観察される。これらマスクは、ウェーハ上に印刷する際に用いられる通常の処理の間、遠紫外(DUV)線に当てられる。この放射線への暴露により、照明放射線を吸収する小さなパーティクルの形態をした汚染成長が生じる。この成長は、ヘイズ(haze)と通称されている。
【0012】
ヘイズ生成は、ウェーハプリント(印刷)プロセスについて問題であり、と言うのは、パーティクルのサイズが増大すると、これらパーティクルがフォトマスクを通って伝送されている光の多くを遮断するからである。最終的に、ヘイズ汚染は、ウェーハ上のフォトマスクの印刷画像の欠陥を生じさせるのに足るほどの光を吸収する。ヘイズ汚染がこのレベルに達する前に、フォトマスク表面を洗浄しなければならない。この洗浄要件は、フォトマスクの使用可能な寿命を短くする作用効果を有する。と言うのは、現時点においてヘイズを除去するために用いられているプロセスは、マスク上の吸収膜を劣化させるからである。部分吸収膜に関し、現行の洗浄方法は、膜厚さを減少させ、したがって膜透過性および位相特性に悪影響を及ぼす。位相および/または透過率の変化は、許容可能な公差を超えてウェーハ上の印刷特徴部の寸法形状を変更することによってレチクル寿命を縮める。フォトマスクの使用可能な寿命をいったん超えても製造を続行するためには、フォトマスクについて同じものを2組作らなければならない。同じものの2組はまた、汚染されたフォトマスクが洗浄されている間に使用可能であることが必要である。フォトマスクを洗浄して検証する前に数日の時間的要件が存在する場合があり、と言うのは、洗浄プロセスは、典型的には、異なる施設で実施されるからである。半導体製造に必要な特徴部サイズが減少すると、印刷欠陥を生じさせることになるヘイズ成長のサイズもまた減少する。ヘイズ成長に対するこの感度の増大は、最新のフォトマスクが頻繁に洗浄される必要があり、これらフォトマスクの使用可能な寿命が短いことを意味している。
【0013】
加うるに、半導体基板上のヘイズならびに大抵の汚染物の組成および源は、突き止めるのが困難な場合が多い。この目的のため、汚染物を除去するだけでなくユーザが汚染物の物理的および化学的性質を突き止めることができるようにするツールおよび方法を開発することが有益である。これは、汚染物が基板から除去されるときに汚染物を分析のために収集することによって達成できる。汚染物の収集および次の分析は、汚染物の源を指示するのを助ける。次に、この情報を用いると、半導体製造プロセスにおける汚染の問題を軽減しまたはそれどころかなくすことができ、それにより処理時間と製造費の両方を節約することができる。
【0014】
基板の表面上のパーティクルの化学的組成または元素組成を識別することは、分析のために用いられる計測器の技術および分解能によって制限される。汚染物は、個々のパーティクルとして非常に小さくまたは表面に沿って膜として薄く分布して被着される場合があるが、多くの化学分析技術は、化学的組成を検出しまたは突き止める分解能を備えていない。例えば、様々な化学的組成の他種類の洗浄液にさらされるフォトリソグラフィで用いられるレチクル上において、各洗浄後に残っている汚染物は、化学的にまたはパーティクル検査によって検出可能ではない場合がある。経時的にかつエネルギーと周りの空中浮遊分子汚染の両方に対する常時暴露によって、これら残存する分子は、互いに結合して表面上で成長する傾向がある。かかる分子は、ナノメートル、場合によってはミクロンオーダーであり、標準の化学分析ツールでは検出できない。しかしながら、これら分子は、存在しており、そして最低数十ナノメートルまでのパーティクル検査機器によって観察可能なサイズまで成長する。これら分子が成長するにつれ、特に欠陥をウェーハ上で見分けることができるに足るほど大きい欠陥まで分子が成長したとき、これら分子は、ウェーハの製造能力を阻害する。かかる場合、レチクル上の分子の組成を識別することにより、製造業者は、その源を突き止めることができる。
【0015】
フォトマスク表面ヘイズ汚染を除去するための別の洗浄方法の利用は、フォトマスク表面に取り付けられたペリクルの使用によって阻害される。ペリクルは、フォトマスク表面に接着されたフレームと、ペリクルフレームの幅全体にわたって引き伸ばされた薄いメンブレンまたは薄いメンブレンとから成る。ペリクルは、外部で生じたパーティクルがプリントプロセスに悪影響を及ぼすフォトマスクの表面上にかかる粒子が積もるのを阻止するために用いられる。外部で生じたパーティクルは、これらパーティクルがプリントプロセスに及ぼす影響が著しく減少するマスク表面の上方でメンブレン上に積もる。圧力均衡を可能にするためのペリクルフレーム上の小さなフィルタ弁を除き、フォトマスクの頂面は、ペリクル取り付けによって局所環境から効果的に封止される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ヘイズ除去のために現在受け入れられている方法では、ウェーハ製造業者が汚染状態のフォトマスクをマスク制作者または第三者に送り戻す必要がある。ここでペリクルフレームをフォトマスクから除去し、マスクを洗浄し、欠陥があるかどうかについて検査し、そして新品のペリクルをフォトマスクに取り付け、多くの場合、マスクをパーティクル欠陥があるかどうかについて再検査し、その後、これをウェーハ製造業者に送り戻す。これは、典型的には、完了するのに数日かかり、追加の処理に起因してフォトマスク費用を増大させ、しかも洗浄プロセスに起因してフォトマスク品質を落とす。加うるに、通常、ペリクルからの接着剤が除去されてフォトマスクの印刷可能な領域上に落下するので、フォトマスクがヘイズ除去プロセスによって使用できないほど損傷を受ける可能性が僅かに存在する。
【0017】
フォトマスク上のヘイズ成長に関連した問題を改善する現行の技術的労力は、完全なペリクル洗浄に関連した問題点の故にペリクルを追加する前に具体化できるプロセスに集中している。これら技術的努力は、主として、表面前処理および洗浄プロセスにおける別の化学物質の使用に集中している。後者は、ヘイズ汚染種(活性種)を変化させるが、これらの成長を止めるわけではないということが判明している。両方の領域は、せいぜいのところ、成長速度の減少を示すが、洗浄のための要件をなくすわけではない。最近になって、不活性環境の使用がフォトマスク上のヘイズ生成の成長率を減少させることが判明した。この方法を利用するには、全てのプロセス機器を含むフォトマスクの暴露環境の全ての制御が必要である。開発中の他の方法の場合と同様、このプロセスは、成長率を減少させる潜在的可能性を有するが、洗浄のための要件および洗浄の有害な影響をなくすわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一観点では、基板の表面を洗浄する方法が提供される。この方法は、レーザを汚染粒子がくっついた基板の方へ差し向けるステップ、基板の温度上昇を生じさせるステップ、および熱エネルギーを基板から粒子に伝達して粒子を分解するステップを含む。レーザは、基板の吸収スペクトルの局所最大値と実質的に同一である波長を有する。
【0019】
本発明の別の観点では、フォトマスク基板の使用可能な寿命を延ばす方法が提供される。この方法は、汚染粒子がくっついている基板に向かって保護材を通って電磁線を差し向けるステップ、基板に温度上昇を生じさせるステップ、および熱エネルギーを基板から汚染物に伝達して粒子を分解するステップを含む。電磁波は、基板の吸収スペクトルの局所最大値と実質的に同一の波長を有する。
【0020】
本発明の別の観点では、ペリクル内に少なくとも部分的に収納された基板の表面を洗浄する方法が提供される。この方法は、汚染粒子層が被着されている基板に向かってペリクル膜を通ってレーザを差し向けるステップ、基板に温度上昇を生じさせるステップ、および熱エネルギーを基板から粒子層に伝達して粒子層の少なくとも一部分を分解するステップを含む。レーザは、基板の吸収スペクトルの局所最大値と実質的に同一である波長を有する。
【0021】
本発明の別の観点では、表面汚染の遊離および分析のための非破壊方法が提供される。この方法は、大気圧条件下で基板について実施可能であり、この方法は、真空と相容れない1つまたは2つ以上の部分を備えた基板の現場検出および分析を可能にする。この方法の主眼は、分子を基板から遊離させて空中浮遊分子汚染(AMC)を生じさせ、次にこれを高感度で検出しまたは分析することにある。この方法は、基板に当たって表面汚染を遊離させる電磁線源を含む。遊離したAMCを次に計測システムに送って検出または分析を行う。変形例として、遊離した汚染を二次収集基板上に堆積させても良く、その目的は、内部分析または外部計測システムへの送り出しのために汚染を濃縮することにある。部分局所真空を用いて表面から遊離した分子またはパーティクルの収集を助けるのが良い。
【0022】
かくして、本明細書における本発明の詳細な説明を良好に理解することができるようにする目的で、しかも当該技術分野に対する本発明の貢献を良好に理解することができるようにする目的で、本発明のある特定の実施形態の概要をかなり広義に説明した。当然のことながら、以下において説明するとともに本明細書に添付された特許請求の範囲の内容をなす本発明の追加の実施形態が存在する。
【0023】
この点に関し、本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その用途が以下の説明に記載されまたは図面に示されたコンポーネントの構成および配置の細部に限定されることがないことが理解されるべきである。本発明は、説明する実施形態に加えて他の形態で実施可能であるとともに種々の仕方で具体化されて実施可能である。また、理解されるべきこととして、本明細書ならびに要約書で用いられる語句および用語は、説明の目的のためであって本発明を限定するものとみなされてはならない。
【0024】
したがって、当業者であれば、この開示内容の基礎をなす概念を本発明の幾つかの目的を達成するための他の構造、方法およびシステムの設計のための基礎として容易に利用することができることは理解されよう。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明は、請求項の内容が本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、かかる均等構成例を含むものと解されることが重要である。
【0025】
本発明の種々の実施形態を示した複数の図が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】レーザ励起および表面汚染の状態を示す略図である。
【
図1B】汚染除去の仕方を示す基板表面の略図であり、本発明のある特定の実施形態によれば、多数の種をマスクから除去することができ、そしてこれらの種が気体、液体、固体などの形態にある場合があることを示す図である。
【
図2】膜および基板上の汚染を含む薄膜吸収体が頂部上に位置したフォトマスク表面の略図である。
【
図3】電磁スペクトルの遠紫外領域から遠赤外領域までの石英吸収スペクトルのプロットを示すグラフ図である。
【
図4】ペリクルを含む薄膜吸収体が取り付けられたフォトマスク表面の略図であり、本発明のある特定の実施形態によれば、膜および/または基板上に汚染が存在する場合のある状態を示す図である。
【
図5A】ペリクル付きのフォトマスクの略図であり、ペリクルを通って表面上に集束されたレーザビームを示す図である。
【
図5B】ペリクル上のビームスポットサイズと集束によって生じたマスク上のビームスポットサイズを比較する略図である。
【
図5C】ペリクル付きのフォトマスクの略図であり、ペリクルを通って表面上に集束されたレーザビームを示す図でありペリクル上のビームスポットの側面図である。
【
図6A】ビームエネルギーのガウス分布および対応して生じた温度分布の断面図である。
【
図6B】シルクハット形ビームエネルギー分布および対応した生じた温度分布の断面図であり、本発明のある特定の実施形態によれば、ガウスエネルギー分布、フラットトップ、および/またはシルクハット形エネルギー分布を用いることができる状態を示す図である。
【
図7】コールドプレートがマスクの底部に接触した状態のフォトマスクの略図であり、本発明のある特定の実施形態によれば、接触点が例えばコールドプレートを通る水(または他の液体もしくは気体)の流れか熱電冷却のための電気接点かのいずれかである場合があることを示す図である。
【
図8】フォトマスク上の領域の強制空冷の手法を示す略図であり、本発明のある特定の実施形態によれば、空気流がペリクルフレームに差し向けられている状態を示す図である。
【
図9A】局所熱堆積を最小限に抑えるための表面を横切るレーザビームの単一のパスを示す略図であり、スポット相互間の横方向間隔が大きい単一のロウ(横列)またはコラム(縦列)が示されている図である。
【
図9B】局所熱堆積を最小限に抑えるための表面を横切るレーザビームの2回のパスを示す略図であり、パルスの組相互間の間隔が大きい状態で互いにオーバーラップした2つの組をなすビームスポットを有する単一のロウが示されている図である。
【
図9C】基板の一区分の完全な洗浄を達成するための基板の領域上の多数回のレーザパスを示す略図である。
【
図9D】表面洗浄の第2の寸法方向を示す略図である。
【
図9E】表面上の連続して並んではいないパルスの使用を表わす略図である。
【
図10】残留物質の存在場所を制御するためのレーザパルスパターンの使用を示す略図である。
【
図11A】残留物質の存在場所を制御するための重力の使用を示す略図である。
【
図11B】残留物質の存在場所を制御するための重力の使用を示す略図である。
【
図12】熱電対または赤外温度モニタリング装置が設けられた汚染基板表面の略図である。
【
図13】汚染分析のための画像化システム、顕微鏡検査システム、分光システム、または組み合わせシステムが設けられた汚染基板表面の略図である。
【
図14】画像化システムが設けられた汚染基板表面の略図であり、画像化システムとレーザビーム送り出しが共通の経路である状態を示す図である。
【
図15】レーザビームに対する基板のロボット負荷およびX/Y/Zステージ運動を示すシステム略図である。
【
図16A】フォトマスク湿式洗浄プロセスを利用する代表的なウェーハ作製プロセスのボックス図である。
【
図16B】ペリクル除去が行われないレーザフォトマスク洗浄の使用を含むウェーハ作製プロセス流れのボックス図である。
【
図16C】洗浄プロセス中、追加のマスクセットが用いられないレーザフォトマスク洗浄の使用を含むウェーハ作製プロセスの流れのボックス図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、図面に含まれる図を参照して本発明を説明するが、図全体を通じて、同一の参照符号は、同一の部分を示している。本発明のある特定の実施形態によれば、基板損傷の恐れを減少させたレーザ表面洗浄方法が提供される。
【0028】
図1Aは、励起エネルギー2がエネルギー源、例えばレーザ1から来て汚染基板4の表面の方へ差し向けられ、その結果、基板4の表面から汚染粒子3または汚染層の熱伝達(例えば、対流または伝導による)が生じる本発明の実施形態を示している。しかしながら、レーザ以外のエネルギー源もまた使用できる(例えば、電磁スペクトルの全体にわたってエネルギーを輻射することができるランプおよび他の装置を用いることができ、かかる装置としては、X線、マイクロ波、赤外線、近紫外線などの発生器が挙げられる)。また、表面は、任意材料のもの(例えば、シリコンウェーハの表面)であって良い。汚染の際に結果的に生じる温度上昇は、典型的には、熱の作用による除去を生じさせ、その作用効果が
図1Bに示されており、かかる作用効果としては、昇華または蒸発物質6および分解物質5が挙げられるが、これらには限定されない。加うるに、汚染粒子3は、
図2に示されているようにフォトマスク上に見受けられ、
図2は、基板4および薄膜吸収体7上の汚染粒子3を示している。
【0029】
本発明のある特定の実施形態によれば、一般的に表面洗浄を行うために用いられる温度が基板4の材料の熱損傷レベルよりも低いので、本方法は、基板損傷の恐れを減少させる。基板損傷の恐れはまた、一般に、他の技術によっても軽減され、と言うのは、かかる技術が場合によっては相対的に長いパルス幅を利用することができ、それにより多光子吸収プロセスの可能性が減少することが多いからである。
【0030】
上述の例示の方法は、一般に、小さな汚染物/パーティクルの除去を向上させることができ、と言うのは、かかる方法は、粒径に対する依存性が最小限だからである。本方法は、汚染基板の上方の環境が実質的にまたは完全に密閉されている用途に特に有利であると言える。これらの場合、本方法は、基板に対して設けられていて基板の環境的エンクロージャの一部をなす材料を通ってビームを方向付けるステップを更に含むのが良い。例えば、本発明の方法を用いると、ペリクル化フォトマスクの表面からヘイズ汚染を洗浄除去することができる。
【0031】
汚染物種の分解がレーザ表面洗浄プロセスにおいて有利であることが示唆された。しかしながら、本発明の実施形態の開発以前においては、基板のレーザ加熱を利用して熱による表面洗浄を行うプロセスについての開示は存在していなかった。
【0032】
本発明のある特定の実施形態によれば、本方法は、基板の強吸収と実質的に一致したレーザ波長を選択するステップおよびレーザエネルギーおよびパルス幅を設定して所望の洗浄効果を生じさせるステップとを含む。基板の吸収率の増大によって、ある場合によっては、洗浄プロセスのためのレーザエネルギーを低くすることができる。したがって、レーザが表面に方向付けられまたはこれから反射しているときにレーザと相互作用する場合のある隣接の材料に対する損傷の恐れが減少する。要件ではないが、本発明のある特定の実施形態によれば、1種類または複数の汚染物によっても高度に吸収される波長が選択され、と言うのは、これは所望の熱的除去効果を向上させるからである。多くのレーザ波長および/またはレーザエネルギーの使用は、特に基板が2種類以上の材料から成る場合に洗浄プロセスにおいて行われる場合がある。多数のレーザエネルギーはまた、代表的には同じコンポーネントが所望の洗浄プロセスの第1ステップの間に1つまたは複数の材料特性の変化を受ける場合に同一のコンポーネントについても用いられる場合がある。例えば多くのレーザ源もしくは単一の波長可変レーザ源またはこれら両方を利用することによって多数の波長を生じさせることができる。多数のエネルギーは、レーザの内部または外部に設けられている制御部を用いてレーザ源の出力エネルギーの制御によって使用されるのが良い。
【0033】
実施例
【0034】
以下は、ウェーハ製作プロセスにおいて用いられるフォトマスク基板からのヘイズ汚染の表面洗浄に利用される本発明の一実施形態による方法の一例である。この実施例は、説明する本発明の方法の追加の実施形態全体にわたって使用できる。
【0035】
本発明のある特定の実施形態は、ウェーハ(例えば、シリコンウェーハ)の表面洗浄に利用できる。ある形式のヘイズ成長がこれらの基板についても観察され、かかるヘイズ成長は、これがウェーハ印刷に先立って除去されない場合には、場合によっては問題となることがある。環境制御の利用は、シリコンウェーハ上におけるヘイズ成長の制御のために示唆されている。しかしながら、本発明のある特定の実施形態は、表面上、例えばシリコンウェーハ上におけるヘイズ軽減または他形式の汚染除去のためである。具体的に説明すると、本発明の特定の実施形態によれば、シリコンウェーハ基板を熱損傷しきい値未満にレーザ励起することによって、ヘイズを除去することが可能である。
【0036】
本発明のある特定の実施形態の方法は、汚染前駆物質を洗浄除去することができ、と言うのは、かかる方法は、代表的には、基板上に位置する物質の直接吸収を利用しないからである。このように、本発明のある特定の実施形態としての方法は、汚染生成率を減少させる表面前処理技術として作用することができる。例えば、フォトマスクヘイズ成長を減少させるには、ウェーハ製作プロセスにおける使用に先立って本発明の方法を適用し、そしてヘイズ成長前駆物質(例えば、酸残基、水など)または核形成部位を除去しまたは再配置するのが良い。レチクルを本発明で処理した後にヘイズの再成長または再形成を更に抑制するために他の技術を本発明と関連して使用することができる。例えば、処理前、処理中、または処理後におけるペリクル化または環境制御に先立つ表面前処理は、ヘイズ再生中または再形成速度を減少させることによってレチクル寿命を延ばすことができる。
【0037】
多数の物質から成る基板への本発明のある特定の実施形態の方法の利用にあたり、物質パラメータならびに励起波長選択を含むビームパラメータの検討が必要な場合がある。洗浄プロセスに基づくと、基板の全ての汚染領域が典型的には基板の熱的損傷しきい値を超えないで除去のために必要な温度に実質的に近い温度に達することが特に望ましい。代表的には物質のうちの一方を処理温度に至らせるのに必要なレーザエネルギーが特に材料吸収率相互間に相当な差が存在する場合、他方の材料に熱的損傷を生じさせることが可能である。ビームの局所フルエンスを暴露中の材料に基づいて制御することができる。
【0038】
本発明のある特定の実施形態によれば、最大連続波(CW)レーザおよびかかる連続波レーザを含む長いレーザパルス幅が著しく互いに異なる吸収係数を有する物質相互間の熱平衡を向上させるために用いられる。しかしながら、かかる長いレーザパルス幅の使用により、システムに最も高い熱的増加が生じるので、基板表面に隣接して位置する材料がプロセス温度未満の熱的損傷しきい値を有する場合、長いレーザパルス幅を使用することができない場合がある。
【0039】
本発明のある特定の実施形態によれば、基板上の物質の全てに相当多くの吸収を呈するレーザ波長が選択される。同じレーザエネルギーは、次に、例えば基板材料の損傷しきい値のうちの任意のもの未満の所望のプロセス温度を生じさせるために使用されるのが良い。熱的性質(拡散率を含む)を考慮することによって、互いに異なる物質相互間の熱伝達を利用することが可能である。これにより、場合によっては、特に吸収率の高い物質からの熱エネルギーの流れが吸収率の低い物質に対して優先する場合、基板全体に関する除去を達成するために減少したプロセスフルエンスの使用が可能である。
【0040】
ビームパラメータの制御は、ヘイズ汚染のフォトマスク表面洗浄に関連した本発明の実施形態において特に望ましい。波長選択は、例えば、代表的なフォトマスクの物理的構造の故に極めて望ましい。
図2を参照すると、フォトマスクは、通常、薄い吸収膜7が重要な表面上に施された石英基板4から成る。金属膜の場合、代表的には、生成可能なレーザ波長の大部分について相当大きな吸収係数が存在するであろう。しかしながら、石英基板の場合、一般的に言えば、基板が相当大きな吸収率を有しかつレーザ源が一般的に利用できる限定された波長範囲が存在する。石英の熱的性質と金属層の熱的性質の関係を考慮すると、本発明の実施形態としてのある特定のプロセスは、石英基板材料によって高度に吸収される波長を利用し、その利用は、物質相互間の熱伝達が優先的に石英から金属層に起こるからである。
【0041】
上述の説明はまた、一般的に言って、部分吸収フォトマスク膜の場合に当てはまる。一般に、部分吸収性膜を備えたフォトマスクに関する熱的流れは、石英から膜に優先的に起こり、と言うのは、かかる膜が代表的には、金属成分を含み、石英の熱拡散率が比較的低いからである。しかしながら、これらの膜が純粋な金属の膜の場合とは異なってそれほど吸収することのない波長領域が存在する場合がある。これは、基板の石英区分を優先的に励起させるために使用できる波長範囲を増大させる可能性を有する。熱的流れに加えて、熱的に誘起される材料変化(例えば、酸化、アニーリングなど)は、部分吸収性膜について検討されなければならない。これら物質の相および透過特性は、これらの機能にとって極めて重要であり、これらの特性を熱処理によって変えることができる。熱による物質変化が膜の性能に悪影響を及ぼす場合、除去プロセスの最大温度を制限することが必要な場合がある。熱による材料の変化が有利な作用効果をもたらす場合、パルスの整形またはパルスオーバーラップによってプロセスユニフォーミティを制御することが必要な場合がある。
【0042】
本発明の代表的な方法の特定の実施例は、フォトマスクの表面からの硫酸アンモニウムによるヘイズの除去である。温度および他の領域‐硫酸アンモニウムは、280℃を超える温度で分解することが見込まれる。代表的なフォトマスクに関する最も低い熱損傷点は、代表的には、ベース石英基板に関する融解/リフロー点(すなわち、約1600℃)であろう。したがって、基板材料の損傷レベルを下回る汚染除去/洗浄のための温度が生じることができる潜在的なプロセスが存在する。
【0043】
フォトマスクから除去されている種そのものは、代表的には、プロセス温度要件だけを決定することに注目することが重要である。汚染物に相当大きな吸収率を提供することが有利な場合があるが、これは、要件ではない。上述したように、基板物質の相対的吸収率が物質吸収特性の潜在的な差の故に考慮されるのが一般的である。特に、石英基板は、主として吸収性膜への熱的流れが優先的であるので、プロセス波長で相当大きな吸収率を有することが望ましい場合がある。
【0044】
フォトマスクに用いられる石英基板は、代表的には、
図3の石英吸収スペクトルに示されているように遠紫外(DUV)波長範囲で高い透過率を有するよう特別に設計されている。これは、代表的には、極めて低い不純物レベルを有する合成的に形成された基板を用いることによって達成される。3μm波長に近い比較的低い吸収率を除き、これら物質は、代表的には、赤外領域にも高い透過率を有する。これら基板の主吸収率は、一般に、0.2μm未満の波長か8μmを超える波長かのいずれかで生じる。短い波長は、特に望ましい波長範囲内には存在せず、と言うのは、かかる短い波長は、通常、空気によって著しく吸収されるからであり、しかも短い波長は、高い光子エネルギーを有し、しかも多光子プロセスをもたらす可能性が高いからである。
【0045】
8μmを超え、例えば9μm石英吸収率に近い波長を選択することは、本発明のある特定の実施形態によれば特に望ましい。これは、代表的には、高い環境吸収を生じないで石英基板中に高い吸収率を生じさせる。特にフォトマスクが金属膜層(例えば、クロム)を有する場合、この波長は、追加の利点を有し、と言うのは、金属膜の反射率がこの領域における波長の増加につれて増大するからである。これにより、代表的には、膜によって吸収されるべき光が減少し、一般的に、石英に対する熱による励起のバイヤスが向上する。この波長はまた、石英についての比較的高い吸収係数により、部分吸収性膜コーティング(すなわち、MoSi)を有するフォトマスクにとって利点をもたらすことができる。一般に、一定フルエンスで到達する膜物質温度は、高い石英吸収率および石英と比較して部分吸収膜の高い熱拡散率のために石英に関する温度とほぼ同じであるべきである。これは、例え部分吸収性膜がこの波長範囲内において比較的高い吸収係数を有する場合であっても当てはまると見込まれる。
【0046】
本発明のある特定の実施形態による使用についてちょうど説明したプロセスは、代表的には、ヘイズをフォトマスク表面から除去するために用いられる現行の洗浄プロセスに取って代わることによってフォトマスクの使用可能な寿命を延ばす。ヘイズ洗浄のために用いられる代表的な化学的洗浄プロセスとは異なり、本発明のある特定の実施形態としてのレーザ除去プロセスは、一般的には、吸収膜の吸収膜厚さおよび/または線幅を減少させることはない。これは、フォトマスクがもはや使用できなくなる前に実施できる従来型「洗浄プロセス」の数に対する限界であり、と言うのは、物質の損失は、これらプロセスの結果だからである。これは、部分吸収性膜を備えたフォトマスクに特に当てはまり、と言うのは、物質の喪失の結果として、相の損失が生じるとともに膜を通る透過量が増大するからである。設計により吸収性膜フォトマスクの性能は、膜の相および透過率に極めて依存する。本発明に従って洗浄サイクルを何回でも無制限にレーザ洗浄プロセスに用いることができるということが考えられる。
【0047】
臨界範囲を下回った温度を採用することは、部分吸収性膜に物質変化をもたらす場合のあることが判明した。例えば、部分吸収性MoSi膜は、第1の温度でアニーリングし、膜をアニーリングした場合の影響として、膜を透過する光の相遅延が減少しまたは透過率が著しく減少するので、洗浄プロセスをこの第1の温度未満で実施することが必要になろう。もしそうでなければ、部分吸収性膜フォトマスクの寿命は、このフォトマスクがヘイズ除去に現在用いられている通常の湿式「洗浄プロセス」で処理されると短くなるであろう。しかしながら、本発明のプロセスの温度は、表面に提供されるエネルギーを調節し(例えば、パルス持続時間、パルス振幅、CWエネルギーなどを制御し)、それにより膜の臨界温度許容公差を回避することによって微調整できる。
【0048】
しかしながら、膜をアニーリングした場合の影響が膜を透過する光の相遅延の増大であり、しかも透過量の損失が最小限でありまたはゼロである場合、アニーリング温度を超えて洗浄プロセスを実施することは、有利な場合がある。標準の湿式「洗浄プロセス」は、フォトマスクの製造に必要不可欠でありしかも使用以前においても部分吸収性膜について許容できないほど低い相遅延を生じさせる場合がある。加うるに、湿式洗浄プロセスは、本発明の使用に追加して必要となることが考えられる。例えば、ヘイズに関連付けられない欠陥がフォトマスク上に存在しまたは現れる場合には湿式洗浄プロセスが必要になる場合がある。本発明の洗浄プロセスの実施中に部分吸収性膜に物質変化を生じさせると、湿式洗浄プロセスによる相遅延の損失を回復することにより、フォトマスクの寿命が延びる場合がある。また、本発明の方法を用いた部分吸収性膜の熱的改造例は、それ自体(ヘイズ洗浄のための要件なしで)湿式洗浄プロセス中の相遅延損失を回復することによってフォトマスクレチクルの寿命を延ばすことができるということもまた考えられる。
【0049】
強力な湿式洗浄プロセスを用いる理由のうちの1つは、フォトマスクからのペリクルフレームの除去により接着剤残渣が後に残るということにある。湿式洗浄プロセスは、一般に、接着剤残渣に悪影響を及ぼし、それにより接着剤がマスクの作業領域を汚染し、と言うのは、湿式洗浄プロセスは、ローカライズするのが一般的に困難だからである。しかしながら、本明細書において開示するレーザ洗浄プロセスのうちの幾つかは、接着剤残渣からローカライズでき、それにより接着剤残渣は、影響を受けないままの状態になる。ペリクルフレームおよび接着剤の大部分の制御された除去に続いて本発明の実施形態としてのレーザ洗浄プロセスを実施することにより、湿式洗浄要件(強力なまたはその他の)なしで次のペリクル取り付けが可能である。これは、本発明の実施形態としてのレーザ洗浄プロセスが別の結合方法を利用しまたはペリクル交換のための接着剤の暴露を必要としない多部分ペリクルの使用と組み合わされる場合に特に当てはまる。
【0050】
本発明のある特定の実施形態としての方法は、フォトマスクヘイズ洗浄に利用でき、かかる方法は、ペリクルの除去を必要としない。これらレーザ洗浄方法は、代表的には、ペリクル膜特性に悪影響を及ぼさないでペリクル膜材料を介して実施され、ペリクル膜特性が
図4に示されており、
図4は、ペリクル8、ペリクルフレーム9、および基板ペリクル接着剤10を示している。
【0051】
この場合、プロセス波長でのペリクル膜8の吸収率および基板4の表面のところのエネルギー密度(フルエンス)を検討するのが通例である。基板4および基板膜コーティング7の場合と同様、洗浄プロセスは、一般に、損傷しきい値を超えるペリクル膜の温度上昇を生じさせることはない。しかしながらペリクル膜に応じて、石英基板について9μm吸収ピークの近くにペリクル膜に相当大きな吸収率が存在する場合がある。しかしながら、相当大きなペリクル膜吸収率の領域での作動が依然として可能であり、と言うのは、ペリクル膜が基板表面の上方に位置決めされているからである。
【0052】
図5Aは、焦点レンズ11に通して励起エネルギー2を集束させる手法を示しており、焦点レンズ11は、集束ビーム12を生じさせてペリクル膜を通ってこれを基板4の表面上に被着された基板膜コーティング7に当て、それにより汚染粒子3を除去する。波長および集束特性は、互いに異なる高さ位置での集束を可能にし、しかもペリクル膜8の相対的温度上昇を減少させることができる。任意の物質の温度上昇は、次式に示されているように表面に加えられるフルエンスに比例する。
ΔT~F 方程式1
上式において、ΔTは、物質内の温度変化分であり、Fは、吸収レーザフルエンスである。
【0053】
一定密度またはビームパルスエネルギーの場合、フルエンスは、次式で示されるようにビームスポット半径の二乗に反比例する。
F~E/r2 方程式2
上式において、Fは、フルエンスであり、Eは、エネルギーであり、rは、基板表面上におけるビームの半径である。
【0054】
図5Bは、ペリクル上のスポットビームサイズを示している。ペリクルのところのビーム(ペリクルビーム14)半径とマスク表面4上のビーム(マスクビーム13)半径の比は、代表的には、ペリクルを通ってビームを集束させることによって大きくなり、したがって、フォトマスク基板表面と比較したペリクルフレーム上の相対的フルエンスを減少させることができる。
図5Cは、マスクビーム13の点のところでの表面4のところのコンバージェンスとペリクル8の入口点(ペリクルビーム14)のところの非集束エネルギーとの関係を示す側面図である。
【0055】
波長の検討に加えて、システム(例えば、長いパルス長または高い繰り返し率)に大きな温度上昇を生じさせるプロセスを利用することは、ペリクル膜の損傷しきい値によって制限される場合がある。これは、代表的には、多くのフォトマスクヘイズ成分に関するプロセス温度要件を下回る。
【0056】
パルス整形
【0057】
レーザのパルス幅、時間的パルス形状および空間分布を用いると、洗浄プロセスを促進しまたは本発明のある特定の実施形態としての処理について安全動作範囲を拡張することができる。短いパルス幅を用いると、システム(基板および汚染)への全体的熱入力を最小限に抑えることができる。長いパルス幅を用いると、長期間にわたってプロセス温度を維持することができ、それにより熱的除去プロセスの完了を促進することができる。時間的パルス形状を用いると、汚染種内の温度上昇を制御することができる。長い温度上昇を用いると、初期影響(例えば、溶融)を生じさせることができ、この初期効果に続き第2の効果(例えば、分解)が生じる。短い上昇時間は、場合によっては、分解プロセスを制限しながら汚染物の蒸発を促進することができる。また、短い時間的パルス形状および長い時間的パルス形状の組み合わせを用いると、除去プロセスを最適化することができる。多数のパルスの使用により、完全な洗浄に望ましいビームエネルギーを低くすることができ、それにより基板損傷の恐れを更に減少させることができる。
【0058】
レーザビームの空間分布を用いると、プロセス窓を拡大することができる。例えば、
図6Aは、基板16に温度勾配を生じさせることができる代表的なガウス空間分布15を示し、
図6Bは、基板4内により一様な温度上昇を可能にするフラットトップまたはシルクハット形空間分布17を示している。空間分布を用いると、プロセス窓を拡大することができる。例えば、フラットトップまたはシルクハット形空間分布を採用することにより、ビームスポット内の一様な温度上昇が可能であり、ガウス分布は、代表的には、ビームスポット内に温度勾配を生じさせる。基板損傷の恐れを回避するため、ビーム中の最大エネルギーは、代表的には、ガウス分布のピークによって制限される。上述したように、2種類以上の物質が基板上に存在する場合、長いパルス幅を用いると、基板上物質相互間の熱平衡を実現することができる。
【0059】
熱管理
【0060】
本発明のある特定の実施形態は、熱を利用したプロセスを含んでいるので、システムの温度全体を管理して熱に敏感なまたは容易に汚染される物質に対する損傷を回避することが望ましい場合がある。これは、ペリクルを除去しないフォトマスクヘイズ洗浄の場合に特に当てはまる。ペリクル膜は、代表的には、低い熱的損傷しきい値を有する。したがって、ペリクル物質に伝わるとともに/あるいはこれを損傷させる全体的システム温度蓄積を回避することが有用な場合がある。これは、ペリクルフレームおよびマスク表面とペリクル膜との間の密閉された環境を含む。
【0061】
システム温度を管理することは、幾つかのやり方で達成できる。以下の実施例は、数通りの代表的なサンプル冷却方法を示しており、他の方法が存在する場合のあることは言うまでもない。システム温度を管理する一手法は、接触冷却によるやり方である。例えばフォトマスクは、
図7に示されているようにマスクの前面上に生じた熱をマスクの裏に向かって引き寄せるためのヒートシンクとして働くプレート17と接触状態に配置するのが良く、プレート17は、熱交換管18,19を有する。これにより、マスク表面、ペリクル膜およびペリクルフレームとマスク表面との間の接着剤の上方の環境への熱伝達が減少する。冷却は、種々の仕方で達成でき、かかるやり方としては、水または他の冷却用流体もしくは気体をマスクおよび/またはペリクル上に流すこと、熱電冷却またはマスクおよび/またはペリクルの一部分または全体のレーザ誘導冷却が挙げられる。
【0062】
温度を制御する別の潜在的な手法は、強制対流冷却による手法である。濾過されるとともに/あるいは冷却された気体または液体の流れは、代表的には、マスクの複数の部分上に、ペリクル膜上に、フレーム上にかつ/あるいは接着剤上に差し向けられ、それにより
図8に示されているこれらの物質内における温度の蓄積を直接減少させる。冷却剤のトップフロー20、サイドフロー21またはボトムフロー22を利用すると、温度を制御することができる。これは、代表的には、ペリクル膜損傷の恐れを減少させるだけでなく、ペリクルフレームおよびペリクル膜接着剤からの汚染ガス発生を生じさせる恐れを減少させる。システム熱蓄積のハードウェア制御に加えて、処理時間の増加を許容することによって熱蓄積を減少させることが可能である。遅いパルス率をシステムに適用しまたは一連のパルス印加相互間の遅延を可能にすることにより、注入された熱を除くことができ、この場合、全システム温度が臨界レベルを超えて上昇することはない。
【0063】
パルス間(pulse to pulse)熱蓄積はまた、有利には、制御でき、かかるパルス間熱蓄積は、汚染物、基板および/または隣り合う物質の熱的特性に依存する場合がある。一般に、パルス間熱蓄積は、単位時間あたりに表面に当たるレーザパルスの数を減少させることによって制御できる。この温度増大はまた、隣り合うレーザパルス相互間の距離を増大させることによって制御できる。隣り合うパルス相互間に大きな側方変位をもたらすことが特に望ましい場合があり、この場合、物質(例えば、ペリクル膜材料)は、パルス間熱蓄積に特に敏感である。この場合、プロセスは、代表的には、レーザビームをほぼ同じ場所のところに多数回にわたって当てて標的表面の完全な洗浄を行うステップを含む。例えば、第1の一連のレーザパルス13を
図9Aに示されているように比較的大きな側方間隔で表面4に当てる。同一領域への第2のパスが追加の一連のレーザパルス13を当て、これらレーザパルスは、
図9Bに示されているように第1の組をなすスポットに対して僅かにずらされている。このプロセスは、領域全体が
図9Bに示されているようにレーザパルス13にさらされるまで続く。第2の方向におけるオーバーラップを本発明のある特定の実施形態に従って使用して
図9Dに示されているように基板表面4を完全に露出させるのが良い。本発明のある特定の実施形態によれば、特に洗浄プロセスが完全な除去のために多数のパルスを有することが望ましい場合、このプロセス全体を繰り返すとともに/あるいはパス相互間のオーバーラップを増大させる。図示のように表面に対するビームの位置を変化させることは、ビームを動かすとともに/あるいは基板を動かすことによって達成できる。加うるに、パルスを体系的に分布された仕方でマスクを横切って当てることにより、
図9Eに示されているようにマスク上の熱蓄積の恐れを一段と減少させることができる。
【0064】
残渣制御
【0065】
本発明のある特定の実施形態によれば、レーザ洗浄方法は、汚染の分解生成物に応じてフォトマスク表面上に残渣物質を生じさせる場合がある。残渣が基板材料の使用にもはや悪影響を及ぼさない場合であっても(すなわち、基板が効果的に洗浄されている場合であっても)、これらの存在場所または濃度を制御する理由が依然として存在する。残渣生成を制御し、例えば洗浄されるべき基板に方向付けられた空気流、水の流れを当てまたは減少した圧力をもたらす伝統的な方法を本発明のある特定の実施形態に従って用いることができる。しかしながら、密閉システム、例えばペリクル化フォトマスクの場合、典型的には、これら環境制御要因を用いることが望ましくない。したがって、残渣物質の存在場所を制御する別の方法が本発明のある特定の実施形態に従って密閉システム用に用いられる。例えば、本発明のある特定の実施形態によれば、レーザパルスのパターンが制御される。例えば、
図10は、レーザパルス13が基板4の表面の中央で始まり、そして直径が漸増する円または寸法が増大する正方形パターン23の状態に方向付けられ、残渣物質が優先的に
図10に示されているように基板の縁に向かって動かされる実施形態を示している。残渣を制御するための本発明のある特定の実施形態による別の方法は、重力を利用することである。表面が下に向いた状態でフォトマスクを配置する仕方が
図11Aにまたは
図11Bに示されているように傾斜位置24で示されており、ペリクル膜またはフォトマスクの片面上にそれぞれ残渣物質の優先的な堆積を可能にする。別の方法では、レチクルを本発明のある特定の実施形態と関連して回転(すなわち、高速回転)させて残渣物質がマスク中心から遠ざかるとともに/あるいはレチクル上の非活性領域に動く。加うるに、本発明のある特定の実施形態に従ってフォトマスク、ペリクル、ペリクルフレームの領域の温度を減少させることにより、これら表面への残渣物質の優先的な堆積が生じ、と言うのは、この物質は、
図8に示されているように気相から液相または固相への相転移を生じる可能性が多分にあるからである。例えば、これら冷却方法は、水、他の流体または気体を流すこと、熱電冷却、またはレーザ誘導冷却を好ましい堆積領域内にかつ/あるいはこの周りで生じさせることを含むが、これらには限定されない。
【0066】
ヘイズ成長および再生成の軽減
【0067】
本発明は、レチクル寿命を延ばすよう表面前処理または環境制御技術と関連して使用できる。これら技術の中には、ペリクル取り付け前に処理を必要とするものもあれば、ペリクル化後に実施できるものもある。例えば、ペリクル化に先立って本発明と関連して表面前処理方法を利用すると、洗浄相互間の時間を増大させることができる。これは、追加の洗浄(例えば、湿式洗浄)が必要になる前に本発明の方法の洗浄が可能な制限された回数が存在している場合に重要になることがある。本発明の方法の一実施形態は、シード結晶または他の核形成材料をレチクルの非活性領域でペリクルの下に配置することである。これらシード結晶は、ヘイズの優先的な成長部位としての働く場合がある。これは、フォトマスクの活性領域に利用できる残渣および前駆物質の濃度を効果的に減少させることができるとともにこれら領域における成長速度を減少させることができる。この発明の別の実施形態は、フォトマスクの表面を本発明の洗浄プロセスにより遊離された残渣および前駆物質と反応するとともに/あるいは中和する物質で被覆することである。これもまた、利用可能な反応種を制限することによってマスク上の活性領域のヘイズ成長速度を減少させることができる。
【0068】
ペリクル化後技術もまた、本発明と組み合わせて使用できる。例えば、ペリクル内とペリクル外の両方における環境制御または操作を本発明の洗浄プロセスと組み合わせて使用できる。一実施形態は、ペリクルの下の環境を洗浄プロセス後の非反応性ガスと置き換えることを含む。これは、ペリクルフレームに設けられているフィルタ付きベントを通るガス交換によってペリクル除去なしで実施できる。さらに、本発明と関連してペリクルの外の不活性環境を維持してヘイズ再成長または再形成を軽減することが有利であると言える。これら組み合わせプロセスは、本発明の方法による洗浄プロセス相互間の時間を延ばすことができ、しかも洗浄プロセスの制限された回数を使用することができる場合には重要な場合がある。
【0069】
本発明の追加のペリクル化後環境制御実施形態は、ペリクルの下の環境を排気し、そしてこの環境をヘイズ残渣および/または前駆物質と反応しまたはこれらを中和する物質を導入しまたはかかる物質と交換する。このプロセスは、洗浄プロセス前、洗浄プロセス中または洗浄プロセス後に実施できる。全ての場合において、洗浄プロセス中に遊離されたヘイズ残渣および/または前駆物質種は、導入され/交換された物質と反応して非ヘイズ形成種を作る。
【0070】
追加のペリクル化後技術を本発明と関連して使用すると、ヘイズ再成長または再形成を軽減することができる。これら技術は、本発明の熱的作用効果を利用して表面形態学的特徴および/または表面組成を変更してヘイズ成長および再形成を阻止することができる。例えば、石英リフロー温度でまたはその近くの温度で作動させることにより、石英基板の物質状態または形態学的特徴に変化を生じさせることができる。これは、結晶ヘイズ成長の核形成を生じさせると考えられる活性化部位を減少させまたはなくすことができ、それによりヘイズ成長または再形成速度を減少させることができる。変形実施形態は、表面前処理または環境制御法と本発明の方法の熱的作用効果を組み合わせて活性化/核形成部位を修正しまたはなくす。前駆物質は、熱処理によって活性化できまたは熱励起下において表面と相互作用してヘイズ成長および再形成を減少させることができる。
【0071】
計測学的技術
【0072】
本発明のある特定の実施形態としての方法はまた、臨界プロセスパラメータをモニタするとともに/あるいは洗浄プロセスの進展または完了を評価するために計測学的技術と組み合わせて使用できる。基板材料の局所的に生じた温度の測定は、例えば、洗浄プロセスと組み合わせて使用されるのが良い。温度測定は、温度関連損傷の恐れを検証するために洗浄プロセスの適用に先立って評価されるのが良い。加うるに、これら温度は、洗浄プロセス中にモニタされるのが良く、それによりプロセス制御を検証するとともに/あるいは物質損傷の恐れを軽減するよう洗浄プロセス中にモニタされるのが良い。例えば、本発明のある特定の実施形態によれば、基板および/または吸収膜の温度をプロセス中、モニタし、かかる温度は、所望のプロセスを維持するよう加えられるエネルギーのフィードバック制御を行いまたは大きすぎるほどの温度上昇が検出された場合に洗浄プロセスをターンオフする能力を有する。多数の温度モニタ方法が
図12に示されているように存在し、これら方法は、接点、例えば熱電対26および非接点例えば赤外線カメラ25技術を含む。
【0073】
計測学的技術はまた、
図13に示されている除去プロセス前、除去プロセス中および/または除去プロセス後の材料特性について汚染を分析するよう本発明のある特定の実施形態に従って使用される。洗浄プロセスの実行に先立つ汚染物の識別を用いると、理想的な処理パラメータを設定することができる。これは、最小限のプロセス温度の使用を可能にし、それにより基板損傷の恐れを減少させる。このプロセス中における汚染のモニタもまた使用すると、洗浄プロセスが進行しているときに測定信号の強度に基づいて洗浄プロセスの完了を評価することができる。加うるに、このプロセス中における代替物質に関するモニタもまた使用すると、このプロセスが別の汚染を生じさせている時期および/または基板材料中の望ましくない変化を生じさせている時期に関する信号を出すことができる。この情報を用いると、プロセスを制御するとともに/あるいは基板損傷の恐れおよび/または貧弱な洗浄結果を減少させることができる。
【0074】
表面上におけるパーティクルの化学または元素組成を求めるために利用できる多くの方法が存在する。かかる方法としては、分光法、質量分析法、電気化学分析、熱分析、分離、ハイブリッド技術(2つ以上の技術を含む)、顕微鏡検査が挙げられるが、これらには限定されない。本明細書において説明する装置の実施形態では、分光法、質量分析法またはこれらのハイブリッドが用いられる。本明細書において計測学的技術と言った場合、これは、かかる技術の種々のサブセットを広義に含むことは、理解されるべきである。例えば、分光法内に含まれる技術は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、赤外分光法、ラーマン分光法、レーザ誘導ブレークダウン分光法、電子常磁性共鳴分光法(EPR)、核磁気共鳴分光法(NMR)、オーガ(AUGER)電子分光法、X線光電子分光法、エネルギー分散X線分光法(EDSまたはEDX)、電子エネルギー損失分光法(EELS)、減衰全反射(ATR)および蛍光分光法である。一般に、基板上のパーティクルの化学的組成を突き止めるためのフォトリソグラフィで用いられる技術は、EDX、飛行時間二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)、ラーマン分光法、FTIR、および液体クロマトグラフィ‐質量分析法(LC‐MS)である。
【0075】
液体クロマトグラフィは、サンプル混合物を含む溶剤から粒子を分離するために吸収物質を用いる分離プロセスである。溶剤およびサンプル混合物を化合物に応じて互いに異なる速度で吸着物質を横切って分散させる。これにより、化合物を吸着物質の互いに異なる領域に隔離することができる。液体クロマトグラフィを質量分析法と関連して用いると、分子をより正確に識別することができる。
【0076】
質量分析法は、パーティクルをイオン化するとともに質量で選別して質量およびイオン電荷に基づいてスペクトルを生じさせることによって正確な化学的組成を決定することができる化学分析技術である。質量分析法は、破壊的である。一般的な技術としては、四重極質量フィルタおよびTOS‐SIMSが挙げられる。
【0077】
四重極質量フィルタ(QMF)がイオン源を用いてパーティクルをイオン化し、次にイオン加速器を用いてイオンをビームの状態で加速する。イオン経路の中心は、4本の互いに平行なロッドに位置し、このイオン経路は、これら4本の互いに平行なロッドに沿って延び、これら4本の互いに平行なロッドは、パルス化電磁波を発生させるために用いられる。ロッドは、180°の位相がずれた2つの組として働く。これにより、イオンは、これらがロッドに沿って軸方向に移動しているときにビームに沿って振動状態で半径方向に変位する。イオンは、ビームに沿って軸方向には加速されない。ロッドの端部には、イオンの半径方向位置を突き止める検出器が設けられている。検出器上のイオンの半径方向位置は、これらイオンが四重極を通過するときに質量と電荷の比に基づく。QMFの一利点は、他の質量分析ツールと比較して、比較的安価であることにある。四重極質量フィルタの使用に当たっては、2、3の欠点がある。四重極質量フィルタは、分解能が制限されており、ピークと質量応答を同調させなければならず、これら四重極質量フィルタは、パルスイオン化には好適ではない。
【0078】
飛行時間二次イオン質量分析法(TOF‐SIMS)は、基板の表面に一次ビームイオンを当てる技術である。二次イオンが遊離され、そして検出器によって集められる。一次イオンビームからの衝突時間および二次イオンの検出時間に基づいて、存在する化合物の質量スペクトルを識別することができる。これは、10億あたりの部(ppb)で表わされる分解能で現在利用できる最も感度の高い方法である。しかしながら、幾つかの問題点がある。TOF‐SIMSは、周囲雰囲気からの汚染を回避するために真空で実施されなければならない。この方法はまた、破壊的であり、遊離されたイオンは、基板の親物質の一部である場合が多く、基板の頂部上に存在する粒子そのものではない。幾つかの用途、例えばフォトリソグラフィの場合、これは、レチクルに施されているパターンを損傷させ、レチクルを役に立たないものにしてしまう。この方法は、多くの場合、定性的であり、多くの場合、結果は、機器のオペレータに応じてばらつきを生じる場合がある。
【0079】
ラーマン分光法は、分子に光子を当てるために単色光(一波長)を用いる。エネルギーを入射光子と分子との間で交換し、その結果、出て行く光子のエネルギーおよび波長が変化する。この現象は、散乱と呼ばれている。互いに異なる分子は、光子との互いに異なるエネルギー変換を行い、その結果、様々な波長が生じるとともに分子を識別するために用いられるスペクトルが生じる。ラーマン用の最新のかつ最も改良された技術は、表面増強ラーマン分光法(SERS)である。この技術は、単一の分子を検出することができる。この技術は、典型的には、銀または金のコロイドまたは基板を必要とする。多くの場合、サンプルは、多孔質シリコンウェーハ上の銀/金から成るナノ構造で構成されたプラズモ表面として調製される。サンプルは、作製するのが高価でありかつ時間がかかる場合がある。
【0080】
標準型ラーマン分光法を使用に当たっては、多くの利点がある。ラーマンは、固体および液体について使用でき、サンプル前処理は、不要であり、水が分析を邪魔することはなく、しかもラーマンは、非破壊的である。この技術は、化学物質を極めて高い信頼度で突き止めることができ、この方法の分析は、極めて迅速である。ラーマン分析を比較的小さいサンプルサイズ(<1μm)で利用でき、無機物は、IR分光法よりもラーマンによってより容易に検出される。ラーマンの最も顕著な利点のうちの1つは、この種の分析を標準雰囲気条件で実施できるということにある。
【0081】
フーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、化合物がIRスペクトル範囲にさらされたときの化学結合の振動応答を利用する技術である。この技術に基づき、IRスペクトルへの暴露中に放出されまたは吸収された赤外スペクトルを固体、液体または気体について観察し、そしてこれを用いて化合物を識別する。FTIRは、これが干渉、例えば蛍光との問題が少ないという点でラーマンと比較して利点を有する。しかしながら、FTIRは、元来、最小限の厚さ、ユニフォーミティおよび希釈を必要とする。
【0082】
計測学的技術もまた、
図13に示されているように除去プロセス前、除去プロセス中および/または除去プロセス後に基板4および/またはこの基板に隣接して位置する物質の材料特性を分析しまたはモニタするよう本発明の特定の実施形態に従って用いられる。例えば、基板上の部分吸収膜の材料特性の測定を用いると、処理前の物質の相遅延を計算することができる。これは、適当な相遅延を吸収膜中に誘導するために洗浄のためのプロセス温度を求めることができる。この計測学的技術はまた、処理中に相をモニタするとともにフィードバック情報をこのプロセスに提供することができまたはフィードバック情報がプロセス限度から外れている場合プロセスを停止させるために使用できる。基板の材料特性分析結果を用いると、正確なエネルギーを算定して所望の表面物質または形態学的特徴の変化を誘起することができる。加うるに、ペリクル膜の材料特性をモニタすると、悪影響がペリクル物質に対して起こっているかどうかを判定することができる。この上方を処理前に用いてプロセス温度を制限することができ、または処理中、損傷が観察された場合にはプロセスを停止させることができる。例えば、1つまたは2つ以上の楕円偏光計またはカメラ31を用いると、ペリクル膜、吸収膜および基板表面の物質応答を測定することができる。次に、このデータを用いると、膜厚さ、透過率および相を含む所望の材料特性を計算することができる。
【0083】
表面汚染の存在および表面汚染の量をモニタする別の計測学的技術が本発明の洗浄プロセスに先立って、洗浄プロセス中および/または洗浄プロセス後に利用することができる。例えば、汚染の存在を検出するために用いられる計測学的技術を本発明のある特定の実施形態に従って使用することができ、それにより測定された基板の領域にレーザパルスを印加するかどうかを判定することができる。次に、この情報を用いると、基板全体に印加されるパルスの数を最小限に抑えることができ、それによりシステムに加えられる全熱エネルギーならびに全体的洗浄プロセス時間が減少する。
【0084】
汚染物または汚染パーティクルの横方向サイズ/寸法、存在場所、数、密度および/または高さ(厚さ)を測定するための計測学的方法もまた洗浄プロセスと組み合わせて本発明のある特定の実施形態に従って使用することができる。例えば、これら測定を用いると、洗浄プロセス前および/または洗浄プロセス後に測定によるプロセスの効率および完了を評価することができる。プロセス中、これら測定値を用いると、プロセスの現場効率を評価することができる。例えば、多数のレーザパルスが除去を完全にするために用いられた場合、残りの汚染の検出結果を用いると、追加のパルスが必要である場合、除去に必要なパルスの数を評価することができる。この場合、計測学的技術は、本発明のある特定の実施形態によれば、洗浄プロセスが起こっている間、洗浄中の領域を観察するよう構成されている。これは、代表的には、レーザによって暴露されている領域を画像化することによって行われ、これは、
図14に示されているようにレーザ送り出しに用いられる同じ光学部品の使用を含むのが良い。撮像レンズ32は、部分反射性の鏡29を介して汚染粒子3の詳細な監視を可能にし、それによりモニタと洗浄を同時に行うことができる。
【0085】
パーティクルの検出およびパーティクルの寸法の評価を行う多数の方法が本発明の実施形態に従って存在する。これら方法としては、例えば、反射および透過光強度測定、撮像または画像化、ローアングル散乱光検出、干渉分光法、走査電子ビーム、走査トンネル顕微鏡法、近接場顕微鏡法、原子間力顕微鏡法などが挙げられる。追加の情報を得るために多数の方法を本発明のある特定の実施形態に従って組み合わせることができる。
【0086】
例えばフォトマスクの場合、多数の計測学的技術を本発明のある特定の実施形態としてのレーザ洗浄プロセスに組み込むことができる。例えばフォトマスク上の特定の汚染(例えば、硫酸アンモニウム)の存在を識別することにより、分解温度要件が定められ、場合によっては、洗浄プロセスを実施するのに足るほど高いレーザエネルギーの選択が可能になる。
【0087】
本発明のある特定の実施形態によれば、透過光強度を測定し、その結果をフォトマスク表面上の吸収膜のためのプログラムされた構造と比較する。次に、プログラムされた特徴と検出された特徴との差を用いて汚染を識別する。加うるに、空中イメージング測定を本発明のある特定の実施形態に従って用いてフォトマスクの印刷特性を評価する。この方法は、代表的には、フォトマスクの性能に対する汚染の影響を評価するために用いられる。この測定はまた、洗浄プロセスに起因して生じる吸収層に対する損傷を評価するために現場で使用できる。これは、部分吸収性膜の厚さがフォトマスク性能と直接的な関係を有する部分吸収性膜に関して特に適切である。本発明のある特定の実施形態によれば、散乱光検出と透過光検出の組み合わせにより、フォトマスクおよびフォトマスク膜の典型的には滑らかな表面とは異なっている不規則な表面トポグラフィを検出することによって汚染の識別具合が向上する。
【0088】
計測学的技術はまた、洗浄中の表面に隣接して位置する物質の特性をモニタするために本発明のある特定の実施形態に従って用いられる。例えば、フォトマスクの上方のペリクル膜の温度をモニタすると、ペリクル膜の損傷の恐れを減少させることができる。ペリクル膜の透過特性もまた、洗浄プロセス中または洗浄プロセス後、洗浄プロセスの影響を評価するために使用できる。加うるに、ペリクル膜の内側上の粒子の検出を洗浄プロセスの実施に先立って行うのが良くかつ/あるいはこのプロセス中にこれらの粒子の損失を検出するために使用できるとともに/あるいはペリクルおよび/または基板材料損傷の恐れを阻止するために好ましくはプロセスで用いられるエネルギーの限度が存在するかどうか判定することができる。
【0089】
本発明の1つまたは2つ以上の実施形態を実施する当業者であれば理解されるように、上述した計測学的技術の例は、本発明に含まれる全てであるということが意図されているわけではない。これとは異なり、これらの実施例は、本発明の幾つかの方法の範囲内で計測学的技術の使用を例示しているに過ぎない。
【0090】
汚染識別
【0091】
上述したように、フォトマスク基板は、代表的には、リソグラフィ暴露プロセスで用いられる放射線に対して透明であるベース基板と、暴露放射線を部分的にまたは完全に吸収する光学薄膜とから成る。これら基板の光学的性質は、これらの性能にとって重要なので、これらの表面からできるだけ化学汚染をなくすことが重要である。また、これら表面には暴露放射線のエネルギーおよび波長に起因した汚染がないことが重要である。この放射線は、残留表面汚染および場合によってはフォトマスクの性能に悪影響を及ぼす漸進的欠陥(ヘイズ)の形成という劣化を引き起こす場合がある。
【0092】
表面の汚染を最小限に抑えるためにフォトマスク洗浄プロセスに多大な労力が投入されたが、常にある程度の残留汚染レベルが存在し、このレベルは、フォトマスクごとに異なる場合がある。残留表面汚染に加えて、環境的な汚染蓄積も存在する場合がある。ウェーハ製作で用いられるフォトマスクの表面汚染のばらつきにより、製造中のフォトマスクの性能および寿命のばらつきが生じる場合がある。したがって、表面汚染の存在および表面汚染レベルを検出するとともにその化学的組成を分析できるようにすることが好ましい。
【0093】
フォトマスクまたは他の汚染基板から除去された汚染物の識別は、汚染源を識別してなくしまたは減少させるとともに除去方法を個別調整して基板損傷の恐れを最小限に抑える上で有用な場合がある。汚染の識別では、互いに異なる幾何学的形状および基板材料、サンプル前処理、および汚染物の化学的分析を考慮に入れて、汚染基板の表面からの分子の遊離が行われる。
【0094】
次に、
図17と関連してかかる識別を実行する多くの方法について説明し、この場合、各方法では、汚染基板4の表面を例えばレーザ31で付勢して汚染基板表面に光子を衝突させ、その結果、分子が光子から分子への運動量の伝達によるか、汚染物と基板表面との結合の光または熱結合の開裂によるか、分子が分解されまたは作られる光子誘導化学反応によるか、あるいは基板から生じた熱に起因する熱分解または発生によるかのいずれかによって遊離される。一実施形態では、汚染物を遊離する際、フォトマスクの温度は、フォトマスクへの損傷を阻止するためにしきい値温度未満に維持される。全ての方法において、分子を基板表面の近くで気相にする。圧力差を基板4の表面の近くで生じさせて遊離した分子を基板から遠ざけるのが良く、次に、分子を集めまたは捕捉して分析する。当業者であれば認識されるように、特にレーザが基板を照射している領域内の基板の局所化された領域に圧力差を生じさせることが有利である。一実施形態では、円筒形管38が付勢源31を包囲してかつ基板4の表面まで延びる状態で設けられている。基板の上方に位置するセンサ39を用いると、気体分析ツール40への入力を提供することができ、それにより汚染物を識別することができる。変形例として、例えば真空ポンプ41によって圧力差を円筒形管38内に作るのが良く、そしてこの圧力差を用いて自由に浮遊している分子を分析ツール内に引き込みまたは収集装置43に引き寄せるのが良い。検出または化学分析方法は、識別されるべき分子に応じて、しかも汚染物3が直接分析ツール47内に引き込まれるか収集装置43によって蓄積されるかどうかに応じて様々であって良い。
【0095】
多数の方法を用いて汚染基板の表面からの分子の遊離を実施することができ、かかる方法としては、熱蒸発、熱分解、もしくは物理的運動量移動、光分解結合開裂または表面汚染を遊離させる他の光分解手段が挙げられる。好ましい実施形態は、レーザを用いる。レーザ波長は、基板の材料および分析されるべき汚染に基づいて様々であって良い。ある特定の波長では、物質は、透明である場合があり、このことは、光子が基板を通過しているときに基板に及ぼされる影響がそれほど多くないことを意味している。他の波長では、基板および/または汚染物は、付勢源からの光子およびエネルギーの何割かまたは全てを吸収する部分または完全黒体として働くことができる。この結果、基板および/または汚染物温度の上昇が生じる。十分に高いエネルギー、光子密度および適正な波長では、これにより、基板表面からの汚染物の遊離を生じさせることができる。好ましい実施形態では、電磁波は、フォトマスクの吸収スペクトルの局所最大値と実質的に同一である波長を有する。
【0096】
本明細書において説明した汚染識別方法は、空中浮遊分子汚染物(AMC)が汚染基板から直接遊離されているときまたは空中浮遊分子汚染物が収集装置43内に蓄積された後、空中浮遊分子汚染物を分析することができる。汚染基板上の雰囲気中に遊離されたAMCの場合、本装置は、任意形式のセンサ39および気体分析ツール40を採用するのが良い。変形例として、汚染基板からの遊離AMCを収集容器44内にまたは収集基板45上に堆積させても良い。汚染基板から遊離したAMCを容器44内に閉じ込めまたは濃縮状態で収集基板45の表面上に凝縮させることができる。この収集装置43は、分析を実施する前にかつ収集基板45を多数の表面分析方法を用いて分析することができる場合、単一の汚染基板または多くの汚染基板サンプルからAMCを収集することができる。
【0097】
一実施形態では、収集基板45は、気相汚染物の凝縮が起こる可能性をより高くするよう0℃未満の状態にあるコールドプレートであるのが良い。例えば、収集基板を液体窒素N2により-195℃に冷却することができまたはペルチエ冷却デバイスにより所望の温度に冷却することができる。AMCを汚染基板4の上方の環境から低温収集基板の方へ引き寄せるために圧力差を生じさせるのが良く、それによりAMCの凝縮および堆積の可能性が高くなる。
【0098】
別の実施形態では、収集容器44は、入口および出口ポートを備えた密閉容積部であるのが良い。この容積部の内側は、気相汚染物の凝縮の可能性をより高くするために0℃未満に冷却されるのが良い。汚染基板4の上方の環境から入口ポートを通って密閉容積部中にAMCを引き込むために圧力差を生じさせるのが良く、それによりAMCの凝縮および堆積の可能性が高くなる。
【0099】
収集装置を冷却する際、圧力差によって生じた引き込み流中の全ての凝縮可能な気体が収集基板45上にまたは収集容器44内に凝縮することを理解することは極めて重要である。これは、収集装置43の周りの環境内の湿度に起因した任意の雰囲気中の水を含む。この理由で、汚染基板表面および収集装置43を、湿度が乾燥環境と呼ばれるこの箇所から前方に減少した環境内に配置することが推奨される。
【0100】
乾燥環境は、汚染基板および収集装置の周りの空気を乾燥ガス、好ましくは乾燥不活性ガス、例えば窒素、アルゴンまたはヘリウムで置き換えることによって達成できる。環境の乾燥度は、-10℃未満に保たれるべき露点を測定することによってモニタできる。これにより、収集基板上または収集容器内に凝縮する雰囲気からの水の量が最小限に抑えられ、しかも識別および定量化中に汚染物に対して行われる計測学的技術のSN比(信号対雑音比)が向上する。
【0101】
また、当業者であれば理解されるように、汚染基板表面への冷却収集装置の近接性が重要である。収集装置が汚染基板表面への密接度が高ければ高いほど、収集装置によって堆積するAMCがそれだけいっそう多くなる。これは、少量の汚染物を取り扱う際に重要である。
【0102】
AMCを収集装置内に堆積させた後、次に、計測学的技術、例えば質量分析法を用いてAMCを分析するのが良い。種々の気相分光法を用いてAMCを再蒸発させて気相の状態で分析することも可能である。
【0103】
分析のために用いられる方法としては、分光法、質量分析法、電気化学分析、熱分析、分離、ハイブリッド技術(2つ以上の技術を含む)、および顕微鏡法が挙げられるが、これらには限定されない。フォトマスク基板に関し、幾つかの分析技術、例えば分光法、質量分析法、分離およびハイブリッド技術がより多くの利点を有する。
【0104】
本発明の観点による汚染識別装置の設計はまた、幾何学的形状に応じて様々であって良い。幾つかの用途は、平坦な基板表面上であるのが良い。この用途では、固定状態の付勢源ならびに付勢表面および付勢源を包囲した収集管を採用するのが良い。他の用途は、幾何学的障害物を有する場合があり、本装置は、可調式収縮光学部品および入れ子式収集管を利用するのが良い。汚染基板が異種物質を含む場合、本装置は、様々な波長の付勢源を利用するのが良い。好ましい実施形態は、様々な幾何学的形状および多数の材料基板を考慮に入れる。
【0105】
フォトマスクの表面汚染の分析のための本発明の方法の用途は、フォトマスクの製造における時点で決まる。フォトマスクを最初に製造する場合、基板表面全体を雰囲気にさらす。フォトマスクの製造におけるこのステップでは、電磁線源をフォトマスク全体に適用するのが良い。放射線は、フォトマスク全体を一度に暴露させることができまたは放射線源を基板表面に向かって集束させることができ、そして表面および源を互いに対して走査することができる。遊離AMC汚染を雰囲気から直接汚染基板の上方に引き寄せるのが良く、そして計測学的ツールによって、例えば質量分析法によって直接分析するのが良い。変形例として、AMCを収集装置によって収集して後で分析しても良い。
【0106】
AMCがフォトマスク基板の上方で直接作られているときにAMCを分析することは、本発明のある特定の実施形態にとって利点を有する。例えば、本発明の一観点では、汚染物の存在、相対的量および識別をレーザが最初に基板に当てられているときに求める。次に、汚染レベルをフォトマスクの収集の平均レベルとまたは汚染に関して許容可能な公称値と比較するのが良い。汚染のレベルおよび汚染の形式を用いてレチクルが製造で使用されるに足るほど清浄であるかどうかを判定するのが良い。フォトマスクを使用から取り出すことができまたは別の洗浄プロセスに送って表面汚染を更に減少させることができる。汚染物を識別することによって、全体的なフォトマスク製造プロセスを調節して汚染物を除去することができ、それにより全体的製造品質が向上する。本発明のプロセスをフォトマスクに2度目に利用することができ、それにより汚染のレベルおよび識別度を求めることができる。この測定結果を先のレベルと比較するのが良く、そして本発明のプロセスで用いて洗浄プロセスが表面汚染を減少させているかどうかを判定することができる。洗浄プロセスおよび汚染識別プロセスを表面汚染の所望のレベルに達するまで繰り返し使用するのが良い。
【0107】
この方法は、他の直接的計測学的技術と比較して利点を有する。本発明のプロセスは、単一の分析技術には限定されない。ガスおよび基板サンプルを容易に調製することができ、それにより多くの強力な分析ツールの使用が可能である。AMCを遊離させる方法は、非破壊的であり、かくして、製品、例えばフォトマスクを無駄にすることがない。開示した方法は、分析を実施するための真空チャンバを必要としない。大抵の分析技術は、サンプルサイズによって制限される。本発明のプロセスは、プロセス領域によって制限される付勢パルスごとの局所プロセスである。しかしながら、連続パルスおよび汚染サンプル基板の移動により、サンプルサイズは、特に高精度ステージを組み込む場合には制限されない。
【0108】
本発明の別の観点では、AMCの存在、レベルおよび識別を検出するために用いられる電磁線を用いると、フォトマスクの表面の洗浄を助けることができる。この場合、表面汚染レベルは、放射線が表面に当てられているときに減少することが見込まれる。幾つかの部分またはフォトマスク表面全体の暴露の繰り返しを遊離汚染レベルのモニタと組み合わせて用いると、フォトマスクが製造の際に使用されるのに足るほど清浄である時点を求めることができる。
【0109】
フォトマスクの製造の後者の部分では、ペリクルをフォトマスク基板の頂面上に付け加える。ペリクルは、基板の一方のフェースに結合されていて頂部を横切って薄いフルオロポリマー膜(ペリクル)を有する中空長方形フレームから成る。ペリクルが設けられることにより、フォトマスクが真空システムと適合しなくなる。例えば、真空をフォトマスクに適用することにより、ペリクルフレームおよびグルーから揮発物が放出され、かかる揮発物は、フォトマスク表面を更に汚染する。本発明のプロセスをペリクルフレームの外側に位置するフォトマスクの頂面上の領域にまたはペリクルを備えていないフォトマスクの後側に利用するのが良い。変形例として、ペリクルを通って電磁線を利用しても良い。しかしながら、ペリクルメンブレンを透過することができるAMCの種しか検出されて識別されない可能性がある。本発明の方法をフォトマスクが製造された直後にまたはフォトマスクがある期間にわたって製造使用状態にあった後でフォトマスクに利用することができる。ペリクルが利用された直後にAMCのレベルおよび識別を測定することにより、製造の際の使用に先立って表面汚染レベルを求めることができる。フォトマスクを製造の際に使用した後における表面汚染レベルの分析により、フォトマスクが製造使用中に露出された環境汚染のレベルおよび形式を求めることができる。これは、製造の際のレチクルの破損が生じる前に表面汚染蓄積の早期検出および識別が可能であり、他方、製造業者は、それ以上の汚染を阻止するためにプロセスを調節することができる。
【0110】
典型的にはフォトマスク上の汚染のレベルが低いために、単一のフォトマスクから遊離した汚染を収集することが有利な場合がある。フォトマスクから遊離した物質を堆積させることにより、汚染の存在、レベルおよび識別を測定する能力を向上させることができる。加うるに、表面汚染の化学的分析では、代表的には、検出単独よりも多くのサンプル量が必要である。汚染レベルに応じて、多量の残留表面汚染を堆積させるために単一の収集基板上への多数のフォトマスク基板からの遊離したAMCの収集は、汚染物を識別して源の存在場所を突き止める上で極めて有用な場合がある。
【0111】
当業者であれば認識されるように、本明細書において開示した汚染識別装置および方法は、基板上の汚染物の現場または遠隔分析を可能にする。この分析は、破壊的であるか非破壊的であるかのいずれであっても良く、この分析を化学的分析、気体または表面分析方法に使用することができる。多くの分析形式をより正確な識別または自己較正のために同時に用いるのが良い。また、当業者であれば認識されるように、収集したサンプルは、汚染基板表面よりも非常に高い濃縮度を有するのが良く、それにより低レベルの汚染物の検出が可能である。多数の汚染基板表面について化学的分析を実施することができ、そして経時的にモニタすることができ、化学的分析を漸変する物質および幾何学的形状を備えた多数の汚染基板について実施することができる。
【0112】
装置
【0113】
本発明の実施形態としてのある特定の方法は、レーザ表面洗浄プロセスを実施するために用いられる装置に組み込まれる。かかる装置の一例が
図15に示されており、この実施例は、ロボットエンドエフェクタを用いて基板材料を取り扱って基板材料を正確に位置決めするロボット35および1本または2本以上の運動時苦戦が基板サンプルをレーザビームに対して位置決めするプラットフォーム34を更に有する。本装置は、例えば、上述したような計測学的技術のうちの1つまたは2つ以上を含むのが良くかつ/あるいは洗浄プロセス中、基板および/または隣接物質の温度を制御するやり方を含むのが良い。加うるに、本装置は、基板をステージングシステムおよびかくしてレーザビームに対して位置決めするために用いられる計測学的技術を含むのが良い。この計測学的技術は、コンピュータ制御視覚的認識システムを更に含むのが良い。さらに、本装置は、レーザ、運動および/または計測学的技術のコンピュータによる制御を利用するのが良く、しかも洗浄プロセスのソフトウェアを利用したレシピ制御を提供することができる。レーザ制御は、例えば、レーザパルスが加えられる時期ならびに洗浄プロセス中に加えられるエネルギーの量の制御を含む。
【0114】
ウェーハ作製プロセス
【0115】
本発明のある特定の実施形態としての方法および/または装置は、ペリクル化フォトマスク表面からのヘイズ形成物の除去を含む新規なウェーハ作製プロセスの一部として利用できる。代表的には、ヘイズのレベルがウェーハプリントプロセスに悪影響を及ぼすのに足るようになったときにフォトマスクをウェーハプリントプロセスから取り出す。フォトマスクを取り出す前の時点は、代表的には、高レベルのヘイズ汚染の直接的検出によって求められるか、ウェーハプロセス中におけるあらかじめ定められた持続時間および/または使用レベルに基づくかのいずれかである。代表的には、フォトマスクを別の施設に送ってペリクルを除去し、フォトマスクを洗浄し、そして別のペリクルをフォトマスクに取り付ける。これら他の施設(例えば、マスク工場)は、これらのタスクを達成するとともにフォトマスク補修およびウェーハ作製施設では必要ではない追加の検査を実行するのに必要な機器を保守する。代表的には、フォトマスクを洗浄させて新品のペリクルを取り付けるのに必要な時間の間、フォトマスクについて同じものを2組使用する。これら追加のフォトマスクは、高い材料費およびセットアップ費ならびに評価費が必要なので全体的ウェーハプリントプロセスのコストを著しく増大させる。
【0116】
本発明のある特定の実施形態としての新規なウェーハ作製方法は、フォトマスク表面からヘイズを除くために上述した方法のうちの1つまたは2つ以上を利用する装置を組み込む。本発明の一実施形態としての代表的なウェーハ作製プロセスは、
図16Aに示されているようにフォトマスク汚染を除去するための湿式洗浄プロセスの使用を示している。本発明のある特定の実施形態の範囲内に含まれる別の方法もまた、ウェーハ作製施設での洗浄作業を実施するよう上述したレーザ洗浄方法のうちの1つまたは2つ以上を利用し、ペリクル除去については、
図16Bの流れ図には示されていない。これは、追加のペリクル費用および/または現行の湿式洗浄プロセスによって得られるフォトマスク膜の劣化を最小限に抑えまたはなくすことができる。
【0117】
本発明のある特定の実施形態によれば、新規なウェーハ作製プロセスは、元の1組が洗浄されている間、製品製造のための追加のマスクまたはマスクセットの使用をなくす。この製造プロセスでは、元のフォトマスクを
図16Cの流れ図に示されている洗浄プロセスに続きすぐに生産に戻す。これは、2組の同じマスクを不要にするとともに2組の同じマスクセットを使用するための所要のセットアップ時間を短縮する可能性を有する。洗浄プロセスを検証するための検査計測学的技術の使用は、有利には、フォトマスクを生産に戻す前に行われるのが良い。この測定は、例えば、装置に組み込まれるのが良くまたはウェーハ作製または他の施設で追加の装置によって提供されるのが良い。計測学的技術にもかかわらず、フォトマスクヘイズ除去のための全体的プロセス時間が短縮される。
【0118】
本発明の多くの特徴および利点は、詳細な説明から明らかであり、かくして、本発明の真の精神および範囲に含まれる本発明のかかる全ての特徴および利点を包含することは、添付の特許請求の範囲の記載によって意図されている。さらに、多くの改造および変形が当業者には容易に想到されるので、本発明を図示するとともに説明した構成および作用そのものに限定することは、望ましくなく、したがって、本発明の範囲に含まれる全ての適当な改造例および均等例を利用することができる。
【符号の説明】
【0119】
1 レーザ
2 励起エネルギー
3 汚染粒子
4 基板
5 分解粒子
6 蒸発物質
7 薄膜吸収体
8 ペリクル
9 ペリクルフレーム
10 接着剤
11 合焦レンズ
12 収束レンズ
13 レーザパルスまたはマスクビーム
14 ペリクルビーム
17 空間分布
18,19 熱交換管
21 サイドフロー
20 ボトムフロー
23 パターン