(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】周辺監視装置および周辺監視システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20221025BHJP
H04N 5/232 20060101ALI20221025BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G08G1/16 C
H04N5/232
G01C21/26
(21)【出願番号】P 2018033910
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-02-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度経済産業省「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:自動バレーパーキングの実証及び高度な自動走行システムの実現に必要な研究開発(セーフティ・セキュリティ技術評価環境の構築)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】591056927
【氏名又は名称】一般財団法人日本自動車研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石本 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】松元 利裕
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-329773(JP,A)
【文献】特開2015-148899(JP,A)
【文献】特開2012-117829(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0146618(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018101913(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
H04N 5/232
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物標の検知方式が異なる2以上のセンサから入力される前記物標の検知結果に基づいて車両周辺に存在する前記物標を検知する検知部と、
前記車両の走行予定地点における前記センサの性能劣化を予測する予測部と、
前記予測部によって予測される前記センサの性能の劣化度に基づいて前記センサ毎に前記センサのパラメータを調整する調整部と、
を備えた周辺監視装置。
【請求項2】
前記調整部は、
前記検知結果に対する重み付け値の前記パラメータを調整するように構成された、
請求項1に記載の周辺監視装置。
【請求項3】
前記調整部は、
前記センサによる前記物標の検知感度の前記パラメータを調整するように構成された、
請求項1または請求項2に記載の周辺監視装置。
【請求項4】
前記走行予定地点における前記車両の走行環境を示す情報を取得する取得部をさらに備え、
前記予測部は、
前記取得部によって取得される前記走行環境を示す情報に基づいて前記センサの性能劣化を予測するように構成された、
請求項1~3のいずれか一項に記載の周辺監視装置。
【請求項5】
前記調整部は、
前記予測部によって前記性能劣化が予測された前記センサの前記検知結果に対する重み付け値の前記パラメータを低くし、
前記予測部によって前記性能劣化が予測されなかった前記センサの前記物標の検知感度の前記パラメータを高くするように構成された、
請求項4に記載の周辺監視装置。
【請求項6】
前記予測部は、
前記2以上のセンサにカメラが含まれる場合、前記取得部によって取得される前記走行環境を示す情報に基づき予測する前記走行予定地点における車外の明度の変化に応じた前記カメラの性能劣化を予測するように構成された、
請求項4または請求項5に記載の周辺監視装置。
【請求項7】
前記取得部は、
前記走行環境を示す情報として前記走行予定地点における気象情報を取得し、
前記予測部は、
前記2以上のセンサにカメラまたはLiDAR(Light Detection And Ranging)が含まれる場合、前記取得部によって取得される前記気象情報に基づき予測する前記走行予定地点における天気に応じた前記カメラまたはLiDARの性能劣化を予測するように構成された、
請求項4~6のいずれか一項に記載の周辺監視装置。
【請求項8】
前記取得部によって取得される前記走行環境を示す情報に基づいて歩行者が存在する可能性が高い前記走行予定地点を判定する判定部をさらに備え、
前記調整部は、
前記判定部によって判定される前記歩行者が存在する可能性が高い前記走行予定地点までの距離に応じて前記パラメータを調整するように構成された、
請求項4~7のいずれか一項に記載の周辺監視装置。
【請求項9】
前記調整部は、
調整前の前記パラメータを現状値から目標値まで徐々に変化させて調整するように構成された、
請求項1~8のいずれか一項に記載の周辺監視装置。
【請求項10】
前記調整部は、
前記車両が前記走行予定地点に到る前に、予め前記パラメータを調整するように構成された、
請求項1~9のいずれか一項に記載の周辺監視装置。
【請求項11】
前記調整部は、
前記予測部によって前記センサの性能劣化が予測された前記走行予定地点に接近する場合に、少なくとも当該走行予定地点よりも手前の地点から前記パラメータの調整を開始するように構成された、
請求項1~10のいずれか一項に記載の周辺監視装置。
【請求項12】
前記調整部は、
前記予測部によって前記センサの性能劣化が予測された前記走行予定地点に接近する場合に、前記走行予定地点よりも所定の距離だけ手前を走行している時点で前記パラメータの調整を行うように構成された、
請求項1~11のいずれか一項に記載の周辺監視装置。
【請求項13】
物標の検知方式が異なる2以上のセンサと、
前記2以上のセンサから入力される前記物標の検知結果に基づいて車両周辺に存在する前記物標を検知する検知部と、
前記車両の走行予定地点における前記センサの性能劣化を予測する予測部と、
前記予測部によって予測される前記センサの性能の劣化度に基づいて前記センサ毎に前記センサのパラメータを調整する調整部と、
を備えた周辺監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、周辺監視装置、周辺監視システム、および周辺監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物標の検知方式が異なる2以上のセンサから入力される物標の検知結果に基づき車両周辺に存在する物標を検知する周辺監視装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
物標を検知するセンサとしては、例えば、送信する電波の物標による反射波に基づいて物標を検知するレーダ、照射するレーザ光の物標による反射光に基づいて物標を検知するLiDAR(Light Detection And Ranging)、車両周辺を撮像するカメラ等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、物標の検知方式が異なる各センサは、車両の走行環境によって物標の検知性能が劣化する場合がある。かかる場合に、周辺監視装置は、車両の走行環境によっては物標の検知精度が低下することがある。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、物標の検知精度を向上させることができる周辺監視装置、周辺監視システム、および周辺監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る周辺監視装置は、検知部と、予測部と、調整部とを備える。検知部は、物標の検知方式が異なる2以上のセンサから入力される物標の検知結果に基づいて車両周辺に存在する物標を検知する。予測部は、前記車両の走行予定地点における前記センサの性能劣化を予測する。調整部は、前記予測部によって予測される前記センサの性能の劣化度に基づいて前記センサ毎に前記センサのパラメータを調整する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様に係る周辺監視装置、周辺監視システム、および周辺監視方法は、物標の検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る周辺監視システムの構成の一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るセンサの性能および特性の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る劣化度情報の一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る調整部によるパラメータの具体的な調整例の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る調整部によるパラメータの具体的な調整例の説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る調整部によるパラメータの具体的な調整例の説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る調整部によるパラメータの具体的な調整例の説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る調整部によるパラメータの具体的な調整例の説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る周辺監視装置の制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、周辺監視装置、周辺監視システム、および周辺監視方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態に係る周辺監視システム10の構成の一例を示す説明図である。
【0011】
図1に示すように、実施形態に係る周辺監視システム10は、物標の検知方式が異なる複数のセンサの一例であるレーダ11、LiDAR(Light Detection And Ranging)12、およびカメラ13と、周辺監視装置1とを備える。
【0012】
周辺監視装置1は、レーダ11、LiDAR12、カメラ13、報知装置14、およびカーナビゲーション装置(以下、「カーナビ100」と記載する)と接続される。カーナビ100は、車両の乗員によって目的地が設定される場合に、現在地から目的地までの車両の走行経路を車両の乗員に案内する装置である。
【0013】
実施形態に係るカーナビ100は、通信ネットワークNを介して天気情報提供装置101と接続され、天気情報提供装置101から車両の走行予定地点における天気情報を取得して周辺監視装置1へ出力する。なお、周辺監視装置1による天気情報の利用方法については後述する。報知装置14は、例えば、液晶表示装置やスピーカ等を含む情報出力装置である。
【0014】
レーダ11は、例えば、車両の前方へ送信波となる電波(ミリ波)を送信し、送信波が物標によって反射された反射波を受信し、受信した反射波に基づいて物標を検知するセンサである。レーダ11は、物標の検知結果を示す情報を周辺監視装置1へ出力する。
【0015】
LiDAR12は、例えば、車両の周囲へレーザ光を照射し、レーザ光が物標によって反射された反射光を受光し、受光した反射光に基づいて物標を検知するセンサである。LiDAR12は、物標の検知結果を示す情報を周辺監視装置1へ出力する。
【0016】
カメラ13は、車両の周辺を撮像するイメージセンサである。カメラ13は、撮像した車両周辺の画像情報を物標の検知結果として周辺監視装置1へ出力する。これら、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13は、それぞれ物標を検知する性能や特性が異なる。
【0017】
ここで、
図2を参照し、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13の物標を検知する性能および特性の一例について説明する。
図2は、実施形態に係るセンサの性能および特性の一例を示す説明図である。
【0018】
図2に示すように、例えば、レーダ11は、200m先までは車両等の比較的大きな物標を検知することができ、100m先までは、人・バイク等の比較的小さな物標を検知することができる。
【0019】
また、レーダ11は、例えば、車両の前方を0°として左右±30°の範囲に存在する物標を検知することができる。かかるレーダ11は、比較的遠方に存在する物標の検知精度が高く、比較的近距離に存在する小さな物標については検知精度が低下する。
【0020】
また、LiDAR12は、150m先までは車両等の比較的大きな物標を検知することができ、60m先までは、人・バイク等の比較的小さな物標を検知することができる。また、LiDAR12は、例えば、車両の周囲360°、つまり車両の周囲の全方位に存在する物標を検知することができる。かかるLiDAR12は、比較的近距離に存在する小さな物標の検知精度が高く、比較的遠方に存在する物標については検知精度が低下する。
【0021】
また、カメラ13は、100m先までは車両等の比較的大きな物標を識別可能な画像を撮像することができ、30m先までは、人・バイク等の比較的小さな物標を識別可能な画像を撮像することができる。また、カメラ13は、車両の前部に設置される場合、車両の前方を0°として左右±60°の範囲に存在する物標を撮像することができる。
【0022】
なお、カメラ13は、車両の前部に加えて左右両側面に設けられることで、車両の周囲の全方位に存在する物標を撮像することができる。かかるカメラ13は、比較的近距離に存在する小さな物標の検知精度が高く、比較的遠方に存在する物標については検知精度が低下する。
【0023】
このように、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13は、それぞれ物標を検知する性能や特性が異なる。また、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13は、車両の走行環境によって物標を検知する性能が劣化することがある。かかる点については、
図3を参照して後述する。
【0024】
図1へ戻り、周辺監視装置1について説明する。周辺監視装置1は、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13から入力される物標の検知結果に基づいて車両周辺の物標を検知する装置である。周辺監視装置1は、物標を検知した場合に、その旨を示す情報を報知装置14へ出力し、車両の周辺に注意すべき物標が存在することを報知装置14によって車両の乗員へ報知させる。
【0025】
ここで、前述したように、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13は、それぞれ物標を検知する性能や特性が異なり、車両の走行環境によって物標を検知する性能が劣化することがある。
【0026】
そこで、周辺監視装置1は、車両の走行予定地点におけるレーダ11、LiDAR12、およびカメラ13の性能の劣化度を予測し、予測した劣化度に基づいてレーダ11、LiDAR12、およびカメラ13毎にセンサのパラメータを調整する。これにより、周辺監視装置1は、物標の検知精度を向上させることができる。
【0027】
かかる周辺監視装置1は、制御部2と、記憶部3とを備える。制御部2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。
【0028】
制御部2は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより機能する取得部21、予測部22、調整部23、および検知部24を備える。
【0029】
制御部2が備える取得部21、予測部22、調整部23、および検知部24は、それぞれの一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0030】
記憶部3は、例えば、RAMやフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶装置であり、劣化度情報31を記憶する。ここで、
図3を参照し、実施形態に係る劣化度情報31の一例について説明する。
図3は、実施形態に係る劣化度情報31の一例を示す説明図である。
【0031】
図3に示すように、劣化度情報31は、車両の走行環境と、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13による物標検知性能の劣化度とが対応付けられた情報である。
図3に示す○は、性能の劣化がないことを示しており、△は、性能の劣化があることを示している。
【0032】
車両の外が急に明るくなる場合、カメラ13の性能が劣化することがある。例えば、車両がトンネルから出た瞬間や暗い車庫から出庫した瞬間には、カメラ13の受光部へ急に強い光が入射する。これにより、カメラ13による撮像画像がほぼ白一色になり、撮像画像から物標を検知することが困難となる。したがって、カメラ13の性能が劣化する。
【0033】
これに対して、レーダ11およびLiDAR12は、車両の外が急に明るくなっても、性能に影響がない。このため、劣化度情報31では、「明るくなる」という走行環境に対して、レーダ11およびLiDAR12の性能に劣化がないことを示す○が対応付けられ、カメラ13の性能に劣化があることを示す△が対応付けられている。
【0034】
また、歩行者の出現確率が高くなる場合、レーダ11の性能が劣化することがある。例えば、車両が横断歩道に近づいた場合、比較的近距離で歩行者を検知することがある。かかる場合、前述したように、レーダ11は、比較的近距離の小さな物標について検知精度が低下する(
図2参照)。
【0035】
これに対して、LiDAR12およびカメラ13は、比較的近距離に存在する小さな物標の検知精度が高いので(
図2参照)、歩行者の出現確率が高くなっても性能が劣化しない。このため、劣化度情報31では、「歩行者の出現確率が高くなる」という走行環境に対して、レーダ11の性能に劣化があることを示す△が対応付けられ、LiDAR12およびカメラ13に性能の劣化がないことを示す○が対応付けられる。
【0036】
また、雨または雪が降る場合、LiDAR12およびカメラ13の性能が劣化することがある。例えば、雨や雪が降る場合、LiDAR12から照射するレーザ光が雨や雪によって遮られ、物標まで到達しない場合があり、かかる場合にLiDAR12の性能が劣化する。
【0037】
また、雨や雪が降る場合には、カメラ13による撮像画像に写る雨や雪によって物標の認識が困難となり、カメラ13の性能が劣化する。これに対して、雨や雪は、レーダ11の性能に影響がない。
【0038】
このため、劣化度情報31では、「雨または雪になる」という走行環境に対して、レーダ11の性能に劣化がないことを示す○が対応付けられ、LiDAR12およびカメラ13の性能に劣化があることを示す△が対応付けられる。
【0039】
また、車両がカーブや交差点に差し掛かると、レーダ11の性能が劣化することがある。前述したように、レーダ11は、車両の前方を0°として左右±30°の範囲が物標の検知範囲である(
図2参照)。
【0040】
このため、レーダ11は、例えば、カーブや交差点において、車両の進行方向で物標の検知範囲の外に歩行者が存在する場合に、歩行者を検知できないので性能が劣化する。これに対して、LiDAR12およびカメラ13は、レーダ11よりも物標の検知範囲が広角である。
【0041】
このため、劣化度情報31では、「進路が変化する」という走行環境に対して、レーダ11の性能に劣化があることを示す△が対応付けられ、LiDAR12およびカメラ13の性能に劣化がないことを示す○が対応付けられる。
【0042】
また、車両が坂道に差し掛かる場合、レーダ11の性能が劣化することがある。例えば、平坦な道路を走行中に車両が上り坂に差し掛かる場合、レーダ11から送信される電波は、上下方向の幅が比較的狭いため、上り坂の頂上付近に存在する物標を検知することができず性能が劣化することがある。
【0043】
これに対して、LiDAR12は、レーダ11に比べて上下方向の幅が広いレーザ光を照射する。また、カメラ13は、レーダ11が送信する電波の上下方向の幅よりも上下方向の画角が広い。このため、LiDAR12およびカメラ13は、車両が坂道に差し掛かっても性能に影響がない。
【0044】
このため、劣化度情報31では、「坂道に差し掛かる」という走行環境に対して、レーダ11の性能に劣化があることを示す△が対応付けられ、LiDAR12およびカメラ13の性能に劣化がないことを示す○が対応付けられる。
【0045】
なお、ここでは、劣化度情報31の理解を容易にするため、物標検知性能の劣化度が劣化のある場合と劣化がない場合という2種類であるものとして説明するが、これは一例である。劣化度情報31は、
図3に示す一つの走行環境を複数の段階に分割し、各段階に対してそれぞれ数値化した性能の劣化度が対応付けられてもよい。
【0046】
図1へ戻り、制御部2が備える取得部21、予測部22、調整部23、および検知部24について説明する。取得部21は、カーナビ100に目的地が設定されている場合、車両の走行予定地点における環境情報をカーナビ100から取得する。
【0047】
例えば、取得部21は、車両の走行予定地点に存在するトンネル、高架、歩道橋、建物、および街路樹等といった車両の外の明るさに影響をおよぼす可能性がある物の情報をカーナビ100から取得する。
【0048】
また、取得部21は、車両の走行予定地点に存在する横断歩道、スクールゾーン、および繁華街等といった歩行者の出現確率が高くなる場所の情報を取得する。また、取得部21は、目的地までの走行経路におけるカーブした道路や交差点等といった車両の進路が変化する場所の情報および坂道の場所の情報を取得する。
【0049】
さらに、取得部21は、通信ネットワークNを介して天気情報提供装置101からカーナビ100が取得する車両の走行予定地点における天気情報をカーナビ100から取得する。そして、取得部21は、カーナビ100から取得した情報を予測部22へ出力する。
【0050】
予測部22は、取得部21から入力される情報と記憶部3に記憶された劣化度情報31とに基づいて、車両の走行予定地点におけるレーダ11、LiDAR12、およびカメラ13の性能劣化を予測する。
【0051】
具体的には、まず、予測部22は、取得部21から入力される情報に基づいて、車両の走行予定地点における走行環境を判定する。その後、予測部22は、劣化度情報31を参照し、判定した走行環境に対応付けられたレーダ11、LiDAR12、およびカメラ13の性能の劣化度を示す情報を性能の劣化度の予測結果として調整部23へ出力する。
【0052】
調整部23は、予測部22から入力されるレーダ11、LiDAR12、およびカメラ13の性能の劣化度の予測結果に基づいて、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13のパラメータを調整する。
【0053】
かかる調整部23は、検知部24によって物標の検知に使用されるレーダ11、LiDAR12、およびカメラ13の検知結果に対する重み付け値のパラメータを調整する。例えば、調整部23は、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13のうち、車両の走行地点において性能の劣化が予測されるセンサによる検知結果の重み付け値を他に比べて低くする調整を行う。そして、調整部23は、調整した重み付け値のパラメータを検知部24へ出力する。
【0054】
また、調整部23は、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13による物標の検知感度のパラメータを調整する。そして、調整部23は、調整した検知感度のパラメータをレーダ11、LiDAR12、およびカメラ13へ出力する。かかる調整部23によるパラメータの具体的な調整例については、
図4~
図8を参照して後述する。
【0055】
検知部24は、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13から入力される物標の検知結果に基づいて車両周辺の物標を検知する。このとき、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13は、調整部23によって調整された検知感度で検知した物標の検知結果を検知部24へ出力する。
【0056】
また、検知部24は、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13から入力される物標の検知結果に対して、調整部23によって調整された重み付け値を使用した重み付けを行って物標の検知を行う。
【0057】
このため、検知部24による物標の検知結果は、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13のうち、重み付けが重いセンサの検知結果がより大きく反映された検知結果となる。これにより、検知部24は、調整部23によってパラメータの調整が行われない場合に比べて物標の検知精度を向上させることができる。
【0058】
そして、検知部24は、物標を検知した場合に、その旨を示す情報を報知装置14へ出力し、車両の周辺に注意すべき物標が存在することを報知装置14によって車両の乗員へ報知させる。
【0059】
次に、
図4~
図8を参照し、実施形態に係る調整部23によるパラメータの具体的な調整例について説明する。
図4~
図8は、実施形態に係る調整部23によるパラメータの具体的な調整例の説明図である。以下では、周辺監視装置1が搭載された車両を車両Vと記載する。
【0060】
図4に示すように、車両Vがトンネルを走行し、その後、車両Vがトンネルの出口に差し掛かる場合、車両Vの外が急に明るくなる。かかる場合、予測部22は、
図4の吹き出しW1に示すように、カメラ13の性能が劣化して標準よりも低くなると予測する。
【0061】
このため、調整部23は、車両Vがトンネルの出口から距離L1だけ手前を走行している時点で、
図4の吹き出しW2に示すように、カメラ13の重みづけ値のパラメータを事前に標準よりも低くする調整を行う。
【0062】
これにより、周辺監視装置1は、車両Vがトンネルの出口を出た瞬間に、性能が劣化した信頼性の低いカメラ13による物標の検知結果の影響を低減することによって、物標の検知精度を向上させることができる。
【0063】
また、調整部23は、車両Vがトンネルの出口から距離L1だけ手前を走行している時点で、
図4の吹き出しW3に示すように、カメラ13の感度のパラメータを事前に標準よりも低くする調整を行う。これにより、周辺監視装置1は、車両Vがトンネルの出口を出た瞬間のカメラ13の性能劣化を低減することができる。
【0064】
さらに、調整部23は、車両Vがトンネルの出口から距離L1だけ手前を走行している時点で、
図4の吹き出しW3に示すように、レーダ11およびLiDAR12の感度のパラメータを事前に標準よりも高くする調整を行う。
【0065】
これにより、周辺監視装置1は、車両Vがトンネルの出口から距離L1だけ手前の地点からトンネルの出口まで走行する期間に、感度を低下させたカメラ13による物標の検知能力を、レーダ11およびLiDAR12によって補うことができる。
【0066】
なお、
図4に示す距離L1は、例えば、レーダ11およびLiDAR12によって物標が検知されたことを車両Vの運転者に報知して、運転者が車両Vを安全に停車させることができる最短距離に設定される。
【0067】
また、
図5に示すように、車両Vが雨の降っていない道路を走行し、その後の走行予定地点で雨が降っている場合がある。かかる場合、予測部22は、雨が降っている地点では、
図5の吹き出しW4に示すように、LiDAR12およびカメラ13の性能が劣化して標準よりも低くなると予測する。
【0068】
このため、調整部23は、車両Vが雨の降り出す地点から距離L2だけ手前を走行している時点で、
図5の吹き出しW5に示すように、LiDAR12およびカメラ13の重みづけ値のパラメータを事前に標準よりも低くする調整を行う。
【0069】
これにより、周辺監視装置1は、車両Vが雨の降り出す地点に到着した地点で、性能が劣化した信頼性の低いLiDAR12およびカメラ13による物標の検知結果の影響を低減することによって、物標の検知精度を向上させることができる。
【0070】
また、調整部23は、車両Vが雨の降り出す地点から距離L2だけ手前を走行している時点で、
図5の吹き出しW6に示すように、LiDAR12およびカメラ13の感度のパラメータを事前に標準よりも低くする調整を行う。これにより、周辺監視装置1は、車両Vが雨の降り出す地点に到着した時点のLiDAR12およびカメラ13による物標の誤検知を抑制することができる。
【0071】
さらに、調整部23は、車両Vが雨の降り出す地点から距離L2だけ手前を走行している時点で、
図5の吹き出しW6に示すように、レーダ11の感度のパラメータを事前に標準よりも高くする調整を行う。
【0072】
これにより、周辺監視装置1は、車両Vが雨の降り出す地点から距離L2だけ手前の地点から雨の降り出す地点まで走行する期間に、感度を低下させたLiDAR12およびカメラ13による物標の検知能力を、レーダ11によって補うことができる。
【0073】
なお、
図5に示す距離L2は、例えば、レーダ11によって物標が検知されたことを車両Vの運転者に報知して、運転者が車両Vを安全に停車させることができる最短距離に設定される。
【0074】
また、
図6に示すように、車両Vが横断歩道と交差する道路を走行する場合がある。かかる場合、予測部22は、横断歩道から距離L3(例えば、L3=30m)よりも手前の地点では、
図6の吹き出しW7に示すように、LiDAR12およびカメラ13の性能が劣化して標準よりも低くなると予測する。このとき、横断歩道から車両Vまでの距離が60mよりも長い場合、カメラ13の性能の方がLiDAR12の性能よりも劣化する。
【0075】
このような走行環境では、周辺監視装置1は、横断歩道を横断する歩行者Mをいち早く検知する必要がある。このため、調整部23は、
図6の吹き出しW8に示すように、遠方の物標の検知精度が高いレーダ11の感度のパラメータを標準よりも高くする調整を行う。
【0076】
そして、調整部23は、遠方の物標の検知精度が高くないLiDAR12およびカメラ13の感度のパラメータを標準よりも低くする調整を行う。このとき、LiDAR12の方がカメラ13よりは遠方の物標の検知精度が高い。このため、調整部23は、LiDAR12の感度がカメラ13の感度よりも高くなるようにパラメータを調整する。
【0077】
さらに、調整部23は、
図6の吹き出しW9に示すように、LiDAR12およびカメラ13の重み付け値のパラメータを標準より低くする調整を行う。これにより周辺監視装置1は、横断歩道を横断する歩行者Mをいち早く検知することができる。
【0078】
その後、予測部22は、車両Vが横断歩道から距離L3だけ手前の地点まで走行すると、
図6の吹き出しW10に示すように、LiDAR12およびカメラ13の性能が標準まで高まると予測する。このため、調整部23は、
図6の吹き出しW11に示すように、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13の感度のパラメータを全て標準にする調整を行う。
【0079】
さらに、調整部23は、
図6の吹き出しW12に示すように、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13の重み付けのパラメータも全て標準にする調整を行う。これにより、周辺監視装置1は、性能が標準まで達したレーダ11、LiDAR12、およびカメラ13の検知結果に基づいて、横断歩道を横断する歩行者Mを高精度に検知することができる。
【0080】
その後、車両Vが走行してさらに横断歩道に接近する場合、レーダ11は、近距離の小さな物標(例えば、歩行者M)について検知精度が低下する(
図2参照)。かかる場合、予測部22は、
図6の吹き出しW13に示すように、レーダ11の性能が標準よりも低くなると予測する。
【0081】
このため、調整部23は、
図6の吹き出しW14に示すように、LiDAR12およびカメラ13の感度のパラメータを標準よりも高くする調整を行い、
図6の吹き出しW15に示すように、レーダ11の重み付け値のパラメータを標準より低くする調整を行う。
【0082】
これにより、周辺監視装置1は、性能が劣化した信頼性の低いレーダ11による物標の検知結果の影響を低減することによって、横断歩道を横断する歩行者Mの検知精度を向上させることができる。また、周辺監視装置1は、感度を低下させたレーダ11による歩行者Mの検知能力を、LiDAR12およびカメラ13によって補うことができる。
【0083】
また、
図7に示すように、車両Vがカーブに差し掛かる場合、レーダ11は、検知範囲11a幅がLiDAR12の検知範囲12aやカメラ13の検知範囲13aよりも狭いため、道路脇の近距離に存在する歩行者Mを検知できないことがある。かかる場合、予測部は、
図7の吹き出しW16に示すように、レーダ11の性能が標準より低くなると予測する。
【0084】
このため、調整部23は、車両Vがカーブの入り口から距離L4だけ手前を走行している時点で、
図6の吹き出しW17に示すように、レーダ11の重みづけ値のパラメータを事前に標準よりも低くする調整を行う。これにより、周辺監視装置1は、車両Vがカーブへ進入する際に、道路脇の近距離に存在する歩行者Mの検知精度を向上させることができる。
【0085】
また、このとき調整部23は、重み付け値のパラメータの調整に加えて、LiDAR12およびカメラ13の感度のパラメータを基準よりも高くし、レーダ11の感度のパラメータを基準より低くする調整を行ってもよい。これにより、周辺監視装置1は、車両Vがカーブへ進入する際に、道路脇の近距離に存在する歩行者Mの検知精度をさらに向上させることができる。
【0086】
なお、
図7に示す距離L4は、例えば、LiDAR12およびカメラ13によって物標が検知されたことを車両Vの運転者に報知して、運転者が車両Vを安全に停車させることができる最短距離に設定される。
【0087】
また、
図8に示すように、レーダ11の上下方向における検知範囲11aは、LiDAR12の上下方向における検知範囲12aやカメラ13の上下方向における検知範囲13aよりも狭い。これにより、レーダ11は、例えば、車両Vが上り坂に差し掛かる場合、坂道にいる歩行者Mの検知精度が低くなる。かかる場合、予測部22は、
図8の吹き出しW18に示すように、レーダ11の性能が劣化すると予測する。
【0088】
このため、調整部23は、車両Vが上り坂の入り口から距離L5だけ手前を走行している時点で、
図8の吹き出しW19に示すように、レーダ11の重みづけ値のパラメータを事前に標準よりも低くする調整を行う。これにより、周辺監視装置1は、車両Vが上り坂へ進入する際に、坂道にいる歩行者Mの検知精度を向上させることができる。
【0089】
また、このとき調整部23は、重み付け値のパラメータの調整に加えて、LiDAR12およびカメラ13の感度のパラメータを基準よりも高くし、レーダ11の感度のパラメータを基準より低くする調整を行ってもよい。これにより、周辺監視装置1は、車両Vが上り坂へ進入する際に、坂道にいる歩行者Mの検知精度をさらに向上させることができる。
【0090】
なお、
図8に示す距離L5は、例えば、LiDAR12およびカメラ13によって物標が検知されたことを車両Vの運転者に報知して、運転者が車両Vを安全に停車させることができる最短距離に設定される。
【0091】
次に、
図9を参照し、実施形態に係る周辺監視装置1の制御部2が実行する処理について説明する。
図9は、実施形態に係る周辺監視装置1の制御部2が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【0092】
制御部2は、車両Vの電源がONにされた場合に、
図9に示す処理を実行する。具体的には、
図9に示すように、制御部2は、車両Vの電源がONにされた場合に、まず、レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13による物標の検知結果に基づいて車両周辺の監視を開始する(ステップS101)。
【0093】
そして、制御部2は、物標を検知したか否かを判定する(ステップS102)。制御部2は、物標を検知したと判定した場合(ステップS102,Yes)、物標の検知結果を報知し(ステップS103)、処理をステップS109へ移す。
【0094】
また、制御部2は、物標を検知していないと判定した場合(ステップS102,No)、カーナビ100に目的地が設定されているか否かを判定する(ステップS104)。そして、制御部2は、目的地が設定されていないと判定した場合(ステップS104,No)、処理をステップS109へ移す。
【0095】
また、制御部2は、目的地が設定されていると判定した場合(ステップS104,Yes)、車両Vの走行予定地点の環境情報を取得する(ステップS105)。続いて、制御部2は、車両Vの走行環境が変化するか否かを判定する(ステップS106)。
【0096】
そして、制御部2は、車両Vの走行環境が変化しないと判定した場合(ステップS106,No)、処理をステップS109へ移す。また、制御部2は、車両Vの走行環境が変化すると判定した場合(ステップS106,Yes)、センサ(レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13)の性能の劣化度を予測する(ステップS107)。
【0097】
そして、制御部2は、予測した劣化度に基づきセンサ(レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13)のパラメータを調整し(ステップS108)、処理をステップS109へ移す。ステップS109において、制御部2は、車両Vの電源がOFFにされたか否かを判定する。
【0098】
そして、制御部2は、車両Vの電源がOFFにされていないと判定した場合(ステップS109,No)、処理をステップS102へ移す。また、制御部2は、車両Vの電源がOFFにされたと判定した場合(ステップS109,Yes)、処理を終了する。
【0099】
上述したように、実施形態に係る周辺監視装置1は、検知部24と、予測部22と、調整部23とを備える。検知部24は、物標の検知方式が異なる2以上のセンサ(レーダ11、LiDAR12、およびカメラ13)から入力される物標の検知結果に基づいて車両Vの周辺に存在する物標を検知する。
【0100】
予測部22は、車両Vの走行予定地点におけるセンサの性能の劣化度を予測する。調整部23は、予測部22によって予測される劣化度に基づいてセンサ毎にセンサのパラメータを調整する。これにより、周辺監視装置1は、物標の検知精度を向上させることができる。
【0101】
なお、上述した実施形態では、車両の走行環境が変化する場合、センサのパラメータを一度に調整する場合を例に挙げたが、実施形態に係る周辺監視装置は、走行環境が変化する場合に、徐々にパラメータを変化させてもよい。
【0102】
例えば、周辺監視装置は、車両の走行環境が変化する地点よりも所定距離前の地点から走行環境が変化する地点に到着するまでの期間に、調整前のセンサのパラメータを現状値から目標値まで徐々に変化させて調整することもできる。
【0103】
これにより、周辺監視装置は、センサのパラメータの調整を開始してからパラメータの調整が完了するまでの期間における物標の検知精度の低下を抑制することができる。
【0104】
また、上述した実施形態では、車両の走行環境が変化する場合に、センサによる検知結果に対する重み付け値のパラメータ、およびセンサの感度のパラメータを調整する場合を例に挙げたが、これは一例である。
【0105】
実施形態に係る周辺監視装置は、車両の走行環境が変化する場合、重み付け値のパラメータおよび感度のパラメータのうち、いずれか一方のパラメータを調整することもできる。これにより、周辺監視装置は、処理負荷を低減しつつ物標の検知精度を向上させることができる。
【0106】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 周辺監視装置
2 制御部
21 取得部
22 予測部
23 調整部
24 検知部
3 記憶部
31 劣化度情報
10 周辺監視システム
11 レーダ
12 LiDAR
13 カメラ
100 カーナビ
101 天気情報提供装置
V 車両
M 歩行者