(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】ケーブルの固定構造およびケーブルの固定方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/00 20060101AFI20221025BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20221025BHJP
H05K 9/00 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
H05K7/00 P
H02G3/22
H05K9/00 G
(21)【出願番号】P 2018096265
(22)【出願日】2018-05-18
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000104630
【氏名又は名称】キヤノンプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(72)【発明者】
【氏名】松山 和樹
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-000498(JP,U)
【文献】特開平08-250187(JP,A)
【文献】特開2011-171057(JP,A)
【文献】特開2012-048818(JP,A)
【文献】特開2014-103273(JP,A)
【文献】特表2018-505528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
H02G 3/22
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルと、
前記ケーブルの外周を覆うように、前記ケーブルの端部に圧着されたスリーブと、
前記スリーブが圧入される開口部が設けられ、前記ケーブルを固定する筐体と、を有し、
前記ケーブルは、それぞれが絶縁層で覆われている複数の配線と、前記複数の配線の外周を覆う可撓性の外皮と、前記絶縁層と前記外皮との間に編組シールド体を備え、
前記編組シールド体は、前記ケーブルの端部において、前記スリーブと導通するように、前記外皮の外周を覆うように折り返されており、
前記開口部は、第1凸部および第1凹部を備え、
前記スリーブは、前記第1凸部と前記ケーブルの軸方向で当接するように係止される第2凹部と、前記第1凹部と前記開口部の開口方向で当接するように係止される第2凸部とを備えることを特徴とするケーブル固定構造。
【請求項2】
前記第1凸部は
、前記開口部の側面に、前記ケーブルの軸方
向に直交す
る方向に沿って設けられており、
前記第1凹部は
、前記開口部の側面の底部に、
前記ケーブルの軸方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル固定構造。
【請求項3】
前記第1凸部は
、前記開口部の側面に、前記ケーブルの軸方
向に直交す
る方向に沿って設けられており、
前記第1凹部は、前記開口部の底面に設
けられており、
前記開口部の底面に対して直角となる角度方向を90度とした場合に、90度より小さい角度方向に凹んでいることを特徴とする請求項1に記載のケーブル固定構造。
【請求項4】
前記第2凹部および前記第2凸部はそれぞれ、前記スリーブが前記開口部に圧入されることで、前記第1凸部および第1凹部に基づいて形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のケーブル固定構造。
【請求項5】
前記ケーブルの端部の断面および前記スリーブの断面の内外形は、四角形であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のケーブル固定構造。
【請求項6】
ケーブルの端部および前記ケーブルの端部の外周を覆うスリーブを、前記ケーブルの端部の断面および前記スリーブの断面の内外形が四角形に塑性変形するように、圧着させるステップと、
第1凸部および第1凹部を備える筐体の開口部に、前記スリーブに前記第1凸部と前記ケーブルの軸方向で当接するように係止される第2凹部と、前記第1凹部と前記開口部の開口方向で当接するように係止される第2凸部とが形成されるように、前記スリーブを圧入するステップとを有することを特徴とするケーブルの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの固定構造およびケーブルの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体にケーブルを固定する構造が提案されている。特許文献1では、ケーブルの外周に巻きつけたクランプ部品を筐体に設けられた開口部に嵌めることでケーブルが軸方向で係止されるケーブルの抜け止め装置が開示されている。また、特許文献2では、筐体の開口部に通されたケーブルを、開口部内壁が可塑的に変形するように開口部内壁に押し付けることでケーブルを固定する位置測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平04-065075号公報
【文献】特開2004-317494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のケーブルの抜け止め装置では、ケーブルは筐体の開口方向で係止されていないため、筐体の開口方向からケーブルが抜けるおそれがある。
【0005】
また、特許文献2の位置測定装置では、ケーブルの外皮がゴム系材料等で形成されている場合、ケーブルを押し付ける力がケーブルの外皮の変形で吸収されてしまい、大きな固定力を発揮できない。
【0006】
本発明は、筐体の開口方向およびケーブルの軸方向からケーブルが抜けることを防止可能であるとともに、ケーブルの外皮がゴム系の材料等で形成されている場合でも、ケーブルを強固に固定可能なケーブルの固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面としてのケーブルの固定構造は、ケーブルと、ケーブルの外周を覆うように、ケーブルの端部に圧着されたスリーブと、スリーブが圧入される開口部が設けられ、ケーブルを固定する筐体と、を有し、ケーブルは、それぞれが絶縁層で覆われている複数の配線と、複数の配線の外周を覆う可撓性の外皮と、絶縁層と外皮との間に編組シールド体を備え、編組シールド体は、ケーブルの端部において、スリーブと導通するように、外皮の外周を覆うように折り返されており、開口部は、第1凸部および第1凹部を備え、スリーブは、第1凸部とケーブルの軸方向で当接するように係止される第2凹部と、第1凹部と開口部の開口方向で当接するように係止される第2凸部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、筐体の開口方向およびケーブルの軸方向からケーブルが抜けることを防止可能であるとともに、ケーブルの外皮がゴム系の材料等で形成されている場合でも、ケーブルを強固に固定可能なケーブルの固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1のケーブルの固定構造を示す図である。
【
図2】ケーブルの断面構造の模式図である(実施例1および実施例2)。
【
図3】ケーブル端部の下処理の説明図である(実施例1および実施例2)。
【
図4】ケーブル端部の下処理後のケーブル断面構造の模式図である(実施例1および実施例2)。
【
図5】ケーブル端部の構造を示す図である(実施例1および実施例2)。
【
図6】ケーブル端部にスリーブを圧着する工程の説明図である(実施例1および実施例2)。
【
図8】実施例1の筐体にケーブルを固定する工程の説明図である。
【
図10】実施例2のケーブルの固定構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0011】
(ケーブルの固定構造)
図1を参照して、ケーブル1を筐体3に固定するための本実施例のケーブル1の固定構造について説明する。
図1は、本実施例のケーブル1の固定構造を示す図である、
図1(a)は、ケーブル1の固定構造を示す平面図である。
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
【0012】
ケーブル1の端部には、ケーブル1の外周を覆うようにスリーブ2が圧着されている。スリーブ2には、凹部(第2凹部)23と凹部(第2凹部)24が設けられている。筐体3には、開口部31が設けられている。開口部31の側面には、ケーブル1の軸方向および開口部31の開口方向に直交する第1の方向に沿って凸部(第1凸部)32と凸部(第1凸部)33が設けられている。
図1(a)に示されるように、凹部23と凸部32、および凹部24と凸部33がケーブル1の軸方向で当接するように係止されることで、ケーブル1を軸方向から抜くことはできない。
【0013】
また、
図1(b)に示されるように、開口部31の両側面の下部(底部)には、ケーブル1の軸方向および開口部31の開口方向に直交する第1の方向とは反対の方向(第2の方向)に沿って凹部(第1凹部)34と凹部(第1凹部)35が設けられている。また、スリーブ2には、凸部(第2凸部)21と凸部(第2凸部)22が設けられている。凸部21と凹部34、および凸部22と凹部35が開口部31の開口方向で当接するように係止されることで、ケーブル1を開口部31の開口方向から抜くことはできない。
(ケーブルの構造)
図2は、複数の配線を備えるケーブル1の断面構造を模式的に示している。
図2では、ケーブル1の部材の構成を認識しやすいように、配線12の数を4本とし、各層の厚さについては縮尺を変えて表している。配線12の外周は、絶縁層13で覆われている。絶縁層13は、編組シールド体14で覆われている。編組シールド体14は、可撓性樹脂やゴム系材料などからなる円筒状の外皮11で覆われている。
(ケーブル端部の下処理工程)
本実施形態では、ケーブル1の端部にスリーブ2を圧着する前に、ケーブル1の端部に下処理が施される。
図3を参照して、ケーブル1の端部の下処理について説明する。
図3は、ケーブル1の端部の下処理の説明図である。
図4は、ケーブル1の端部の下処理後のケーブル1の断面構造の模式図である。まず、
図3(a)に示されるようにケーブル1の端部から突出している編組シールド体14を、外皮11の外周面に重なるように折り返すことで、ケーブル1を
図3(b)の状態にする。次に、折り返された編組シールド体14の上にスリーブ2を被せることで、ケーブル1を
図3(c)の状態にする。ケーブル1の端部の下処理後、
図4に示されるように、外皮11の外周は編組シールド体14で覆われ、その上に円筒状のスリーブ2が被せられている。
(ケーブル端部の構造)
図5は、ケーブル1の端部の構造を示す図である。
図5(a)は、ケーブル1の端部周辺の平面図である。
図5(b)は、
図5(a)のB-B線断面図である。
図5(a)に示されるように、スリーブ2は、ケーブル1の端部に圧着されている。圧着方法については、
図6を用いて後述する。スリーブ2は圧着によって塑性変形し、断面の内外形が四角形になる。ケーブル1の外周は、スリーブ2の内側の4面で押圧されている。この押圧により、ケーブル1の外皮11は、丸形から四角形に弾性変形する。スリーブ2がケーブル1の外周を押圧する力と、押圧によって発生するケーブル1の外皮11の弾性力による摩擦により、スリーブ2はケーブル1に固定されている。また、スリーブ2には、圧着により、凸部21と凸部22が成形される。
(スリーブの圧着工程)
図6は、ケーブル1にスリーブ2を圧着する工程の説明図である。
図6(a)は、ケーブル1にスリーブ2を圧着する前のケーブル1の端部および圧着治具4の断面図である。
図6(b)は、ケーブル1の端部にスリーブ2を圧着した後のケーブル1の端部および圧着治具4の断面図である。
【0014】
ケーブル1にスリーブ2を圧着する場合、まず、
図6(a)に示されるように、スリーブ2を被せたケーブル1の端部を圧着治具4に設置する。次に、
図6(b)に示されるように、スリーブ2は、圧着台座41、圧着ブロック42、圧着ブロック43および圧着ブロック44によって押圧される。スリーブ2は、押圧によって内外形が四角形になるように塑性変形し、ケーブル1の端部に圧着される。圧着ブロック42には面取部421と面取り部422が設けられているため、スリーブ2には塑性変形により凸部21と凸部22が成形される。また、ケーブル1は、スリーブ2が圧着されると、スリーブ2を介して圧着台座41、圧着ブロック42、圧着ブロック43、圧着ブロック44によって押圧され、外周が四角形になるように弾性変形する。圧着治具4から取り外した状態でもスリーブ2の内外形は四角形を維持するため、ケーブル1の外周は四角形のままである。前述したように、スリーブ2が塑性変形することでケーブル1の外周を押圧する力と、押圧によって発生するケーブル1の外皮11の弾性力による摩擦により、スリーブ2はケーブル1に固定されている。また、スリーブ2は金属製であるため、スリーブ2と編組シールド体14は接触することで導通している。
(筐体開口部の構造)
図7は、本実施例の筐体3の構造を示す図である。
図7(a)は、筐体3の構造を示す平面図である。
図7(b)は、
図7(a)のC-C線断面図である。
図7(a)に示されるように、筐体3は、直方体形状でアルミなどの導電性金属材料で形成されている。筐体3には、スリーブ2を収容するための開口部31が設けられている。
図7(b)に示されるように、開口部31の側面には、凸部32と凸部33が設けられている。また、開口部31の両側面の下部には、凹部34と凹部35が設けられている。
(ケーブルの固定工程)
本実施形態では、ケーブル1の端部にスリーブ2が圧着された後、筐体3にケーブル1を固定する工程が実行される。
図8は、筐体3にケーブル1を固定する工程の説明図である。まず、
図8(a)に示されるように、ケーブル1の端部は、筐体3の開口部31に設置される。次に、
図8(b)に示されるように、ケーブル1の端部は、プレス治具5を用いて開口部31の側面に設けられた凸部32と凸部33との間に圧入される。スリーブ2の凸部21と凸部22は、プレス治具5から押圧されることで、
図8(c)に示されるように、筐体3の凹部34と凹部35の形に塑性変形する。
【0015】
図1は、筐体3にケーブル1を固定する工程(ケーブル固定工程)後の状態を示している。
図1(a)に示されるように、ケーブル1の端部が凸部32と凸部33との間に圧入されることで、スリーブ2は塑性変形し、凹部23と凹部24が成形される。凹部23と凸部32、および凹部24と凸部33がケーブル1の軸方向で当接するように係止されているため、ケーブル1が軸方向から抜けることを防止することができる。また、
図1(b)に示されるように、凸部21と凹部34、および凸部22と凹部35が開口部31の開口方向で当接するように係止されているため、ケーブル1が開口部31の開口方向から抜けることを防止することができる。
【0016】
また、ケーブル1の端部にはスリーブ2が圧着されているため、ケーブル1の外皮11がゴム系の材料等で形成されている場合でも、ケーブル1を筐体3に強固に固定可能である。
【0017】
また、凹部23と凸部32、および凹部24と凸部33は接触しているため、筐体3はスリーブ2を介して編組シールド体14と導通している。そのため、静電ノイズが筐体3に印加された場合、静電ノイズ電流がスリーブ2を介してグランドに流れるので、筐体3の内部に配置されている電気部品に対する静電気ノイズの影響を低減することができる。
【0018】
以上説明したように、本実施例のケーブル1の固定構造は、筐体3の開口部31の開口方向およびケーブル1の軸方向からケーブル1が抜けることを防止可能である。また、本実施例のケーブル1の固定構造は、ケーブル1の外皮11がゴム系の材料等で形成されている場合でも、ケーブル1を筐体3に強固に固定可能である。また、本実施例のケーブル1の固定構造は、静電ノイズの影響を低減できる。そのため、本実施例のケーブル1の固定構造は、シールド線付きのケーブルを備えるエンコーダに好適である。
【実施例2】
【0019】
図9は、本実施例の筐体3の構造を示す図である。
図9(a)は、筐体3の構造を示す平面図である。
図9(b)は、
図9(a)のD-D線断面図である。本実施例では、開口部31の底面には、ケーブル1の軸方向および開口部31の開口方向に直交する第1の方向と90度より小さい所定角度をなす方向(第2の方向)に沿って溝(第2の凹部)36と溝(第2の凹部)37が設けられている。
【0020】
図10は、本実施例のケーブル固定構造を示す図であり、ケーブル固定処理後の状態を示している。
図10(a)は、本実施例のケーブル1の固定構造を示す平面図である。
図10(b)は、
図10(a)のE-E線断面図である。
【0021】
凸部21と溝36、および凸部22と溝37は開口部31の開口方向で当接するように係止されているため、ケーブル1が開口部31の開口方向からケーブルが抜けることを防止することができる。
【0022】
また、本実施例では、筐体3はスリーブ2を介して編組シールド体14と導通している。そのため、静電ノイズが筐体3に印加された場合、静電ノイズ電流がスリーブ2を介してグランドに流れるので、筐体3の内部に配置されている電気部品に対する静電気ノイズの影響を低減することができる。
【0023】
以上説明したように、本実施例のケーブル1の固定構造は、筐体3の開口部31の開口方向およびケーブル1の軸方向からケーブル1が抜けることを防止可能である。また、本実施例のケーブル1の固定構造は、ケーブル1の外皮11がゴム系の材料等で形成されている場合でも、ケーブル1を筐体3に強固に固定可能である。また、本実施例のケーブル1の固定構造は、静電ノイズの影響を低減できる。そのため、本実施例のケーブル1の固定構造は、シールド線付きのケーブルを備えるエンコーダに好適である。
【0024】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 ケーブル
2 スリーブ
21 凸部(第2凸部)
22 凸部(第2凸部)
23 凹部(第2凹部)
24 凹部(第2凹部)
3 筐体
31 開口部
32 凸部(第1凸部)
33 凸部(第1凸部)
34 凹部(第1凹部)
35 凹部(第1凹部)