IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図1A
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図1B
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図1C
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図2
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図3
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図4
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図5
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図6
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図7
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図8
  • 特許-半導体装置、超音波センサ、及び移動体 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】半導体装置、超音波センサ、及び移動体
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/526 20060101AFI20221025BHJP
   G01S 7/521 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G01S7/526 J
G01S7/521 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018097323
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019012059
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2017128554
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 一馬
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19540139(DE,A1)
【文献】特開2010-016129(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104820208(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0103507(US,A1)
【文献】国際公開第2015/037206(WO,A1)
【文献】特開2007-183185(JP,A)
【文献】特開2004-361884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バースト信号を生成し、圧電素子を駆動する送信部に前記バースト信号を供給するバースト信号生成部と、
前記圧電素子又は他の圧電素子が受信した受信信号を処理する信号処理部と、
前記信号処理部内のフィルタをリセットするリセット部と、
を備える半導体装置であって
前記フィルタは、前記フィルタに供給される信号の周波数帯域を制限するデジタルフィルタであり、
前記リセット部は、前記バースト信号に含まれるバースト波の発生開始タイミングから所定時間経過後に、前記フィルタをリセットし、
前記リセット部は、前記半導体装置の内部又は前記半導体装置の近傍に設けられる温度センサの出力信号に応じて前記所定時間を可変する、半導体装置。
【請求項2】
前記リセット部が前記フィルタをリセットした直後から前記受信信号に基づく物体に関する検知が開始される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記温度センサを備える、請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記リセット部が前記フィルタをリセットした直後に、減少幅が最大の状態で、前記受信信号に基づく物体に関する検知で用いる閾値が減少する、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体装置は下面視で矩形の半導体パッケージであって、前記受信信号を入力する入力端子及びアナログ用グランド端子が前記矩形の第1辺の中央に配置される、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体装置は下面視で矩形の半導体パッケージであって、前記圧電素子を駆動する端子と外部との通信用端子とが前記矩形の第2辺の中央に配置され、かつ、グランドにそれぞれ接続される2つの端子の間に配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置と、
前記半導体装置に接続される圧電素子と、
を備える、超音波センサ。
【請求項8】
請求項7に記載の超音波センサを備える、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサの性能向上技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波域の出力波信号を送信してその反射波信号を受信することにより、物体の有無や物体までの距離を検知する超音波センサが実用化されている。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-55599号公報(段落0043)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、超音波センサでは、圧電素子へのバースト波の供給が終わった後も圧電素子の振動が一定時間続く。この一定時間は一般的に残響時間と称される。
【0006】
従来の超音波センサでは、上記の残響時間のせいで、当該センサの近くに位置する物体(近距離物体)の有無や近距離物体までの距離を検知することができなかった。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑み、超音波センサの近距離検知性能を向上させることができる半導体装置並びにそれを備えた超音波センサ及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体装置は、バースト信号を生成し、圧電素子を駆動する送信部に前記バースト信号を供給するバースト信号生成部と、前記圧電素子又は他の圧電素子が受信した受信信号を処理する信号処理部と、前記信号処理部内のフィルタを強制的にリセットするリセット部と、を備える構成(第1の構成)とする。
【0009】
また、上記第1の構成である半導体装置において、前記リセット部が前記フィルタを強制的にリセットした直後から前記受信信号に基づく物体に関する検知が開始される構成(第2の構成)であってもよい。
【0010】
また、上記第1又は第2の構成である半導体装置において、前記リセット部は、前記バースト信号に含まれるバースト波の発生開始タイミングから所定時間経過後に、前記フィルタを強制的にリセットする構成(第3の構成)であってもよい。
【0011】
また、上記第3の構成である半導体装置において、前記リセット部は、前記半導体装置の内部又は前記半導体装置の近傍に設けられる温度センサの出力信号に応じて前記所定時間を可変する構成(第4の構成)であってもよい。
【0012】
また、上記第4の構成である半導体装置において、前記温度センサを備える構成(第5の構成)であってもよい。
【0013】
また、上記第1又は第2の構成である半導体装置において、前記信号処理部は、前記受信信号に基づく物体に関する検知で用いる閾値との比較対象となる信号を、前記受信信号を処理して生成し、前記リセット部は、前記受信信号に基づく物体に関する検知で用いる閾値との比較対象となる信号が所定値まで低下すると、前記フィルタを強制的にリセットする構成(第6の構成)であってもよい。
【0014】
また、上記第6の構成である半導体装置において、前記所定値は、前記受信信号に基づく物体に関する検知で用いる閾値との比較対象となる信号の最大値の40%~70%である構成(第7の構成)であってもよい。
【0015】
また、上記第1~第7いずれかの構成である半導体装置において、前記リセット部が前記フィルタを強制的にリセットした直後に、減少幅が最大の状態で、前記受信信号に基づく物体に関する検知で用いる閾値が減少する構成(第8の構成)であってもよい。
【0016】
また、上記第1~第8いずれかの構成である半導体装置において、前記半導体装置は下面視で矩形の半導体パッケージであって、前記受信信号を入力する入力端子及びアナログ用グランド端子が前記矩形の第1辺の中央に配置される構成(第9の構成)であってもよい。
【0017】
また、上記第1~第9いずれかの構成である半導体装置において、前記半導体装置は下面視で矩形の半導体パッケージであって、前記圧電素子を駆動する端子と外部との通信用端子とが前記矩形の第2辺の中央に配置され、かつ、グランドにそれぞれ接続される2つの端子の間に配置される構成(第10の構成)であってもよい。
【0018】
また、本発明に係る超音波センサは、上記第1~第10のいずれか一項に記載の半導体装置と、前記半導体装置に接続される圧電素子と、を備える構成(第11の構成)とする。
【0019】
また、本発明に係る移動体は、上記第11の構成である超音波センサを備える構成(第12の構成)とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、超音波センサの近距離検知性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】超音波センサの全体構成例を示す図
図1B】端子配置を示す半導体装置の概略下面図
図1C】端子配置を示す半導体装置の概略下面図
図2】送信部の一構成例を示す図
図3】信号処理部の一構成例を示す図
図4】信号処理部の出力信号を概略的に示すタイムチャート(リセットあり、物体なし)
図5】信号処理部の出力信号を概略的に示すタイムチャート(リセットなし、物体なし)
図6】信号処理部の出力信号を概略的に示すタイムチャート(リセットあり、物体あり)
図7】信号処理部の出力信号を概略的に示すタイムチャート(リセットなし、物体あり)
図8】超音波センサの他の全体構成例を示す図
図9】車両の外観図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<超音波センサの全体構成>
図1Aは、超音波センサの全体構成例を示す図である。本構成例の超音波センサ100は、外界に向けて超音波域(=人間の耳に聞こえない周波数帯域を指し、一般には20kHz以上)の出力波信号W1を送信し、その反射波信号W2を受信して物体200の接近検知や距離測定を行う近接センサ(外界センサの一種)であり、圧電素子1と半導体装置2と送信部3とを有する。なお、近接センサで使用される駆動周波数は、一般的に30~80kHzである。本構成例の超音波センサ100は、例えば、車のバンパーの角部にコーナーソナーまたはバックソナーとして利用される(後述する図9参照)。
【0023】
圧電素子1は、その両端間に印加される電圧信号に応じて機械的変位(振動)を生じる特性を持ち、出力波信号W1の送波器として機能する。また、圧電素子1は、自身に加わる機械的変位(振動)に応じてその両端間に起電力を生じる特性を持ち、反射波信号W2の受波器としても機能する。なお、圧電素子1の素材としては、ぺロブスカイト型セラミック(チタン酸バリウム、チタン酸鉛、及び、チタン酸ジルコン酸鉛など)などを好適に用いることができる。バースト信号S0に基づく駆動信号が圧電素子1に印加されている間、圧電素子1の超音波振動子の振動は続くが、バースト信号S0に基づく駆動信号の印加がカットされた後は残響信号が生じている。また、送信された超音波信号が障害物から反射され、圧電素子1の超音波振動子が反射された反射波を受信して振動することにより、圧電素子1が反射波に基づいた超音波信号に変換して出力する。
【0024】
半導体装置2は、圧電素子1及び送信部3を用いて出力波信号W1の送信動作を司り圧電素子1を用いて反射波信号W2の受信動作を司る制御主体である。半導体装置2は、バースト信号生成部10と、信号処理部20と、ロジック部30と、リセット部40と、を有する。また、半導体装置2は、装置外部との電気的な接続を確立する手段として、出力端子DRVと入力端子INと入出力端子I/Oとを有する。出力端子DRVには送信部3を介して圧電素子1の一端が接続され、入力端子INには圧電素子1の一端が直接接続される。圧電素子1の他端はグランド電位に接続される。半導体装置2に適用される半導体パッケージは特に限定されないが、図1Bでは半導体装置2にQFN(Quad Flat Non-leaded Package)を適用した場合を例示する。図1Bは、端子配置を示す半導体装置2の概略下面図である。図1Bに示す半導体装置2の四辺SD1~SD4それぞれに12個の端子が配置される。また、図1Bに示す半導体装置2の四隅それぞれにグランドパッドGP1~GP4が配置され、図1Bに示す半導体装置2の中央にグランドパッドGP5が配置される。入力端子IN及び端子TM1は辺SD1に設けられる。さらに、入力端子IN及び端子TM1は辺SD1の中央に配置される。端子TM1は入力端子INに隣接する端子である。端子TM1はアナログ用グランド端子である。また、端子TM1とグランドパッドGP1との間には他の端子が配置され、入力端子INとグランドパッドGP2との間には他の端子が配置される。出力端子DRV、入出力端子I/O、端子TM2、端子TM3、及び端子TM4は辺SD2に設けられる。辺SD2は辺SD1に隣接する辺である。端子TM2は出力端子DRVに一方に隣接する端子である。端子TM2はドライバ用グランド端子である。出力端子DRVの他方に隣接するのは、端子DRV′である。端子DRV′は圧電素子1の他端に接続される端子である。本実施例では、圧電素子1の他端が端子DRV′に接続され、端子DRV′が端子TM2に半導体装置2の内部で接続され、端子TM2を介してグランドに接続される。なお、当該ドライバはバースト信号生成部10の出力段である。また、端子TM2とグランドパッドGP2との間には他の端子が配置される。端子TM3は入出力端子I/Oに隣接する端子である。端子TM3は通信用グランド端子である。なお、当該通信はロジック部30の通信である。また、端子TM3とグランドパッドGP3との間には他の端子が配置される。出力端子DRV、入出力端子I/O、及び端子TM4は端子TM2と端子TM3との間に配置される。さらに、端子TM4は出力端子DRVと入出力端子I/Oとの間に配置される。端子TM4は半導体装置2で用いられる電源電圧(例えばDC12Vの電圧)を入力する端子である。換言すると、圧電素子1を駆動する端子RV及びDRV′とロジック部30の入出力端子I/Oとは、同じ辺SD2に配置され、かつ、グランドに接続される端子TM2と端子TM3の間に配置される。また、本実施形態とは異なり、バースト信号生成部10の出力がプッシュプル形式であり信号処理部20が圧電素子1から正負の信号を受け取りロジック部30の通信が送信と受信とで別個の端子を用いる場合には、図1Cに示すように、出力端子DRVは正側出力端子に該当し、出力端子DRV′は負側出力端子に該当し、入力端子INの代わりに正側入力端子INP及び負側出力端子INNを設け、入出力端子I/Oの代わりに受信信号入力用端子SI及び送信信号出力用端子SOを設けるとよい。
【0025】
バースト信号生成部10は、バースト信号S0を生成して送信部3に供給する。バースト信号S0は、例えばパルス、三角波、正弦波などのバースト波が間欠的に現れる信号である。バースト信号S0は、搬送波S1と変調波S2に基づき生成される。すなわち、バースト信号S0は、搬送波S1が変調波信号S2のインターバルで切り出され間欠的に生じる超音波信号である。バースト信号S0は、例えば図1Aに示ように4個の電圧ピークを有した、すなわち4波を有する。こうした状態はバースト波数が4波であるとして表される。搬送波S1はいわゆる超音波と称される、いわゆる人間の耳に聞こえない例えば周波数が20kHz以上の高い振動数を有する。本実施形態で用いられる搬送波S1の周波数は例えば40kHz~80kHzである。変調波S2は搬送波S1を変調する信号であり、その周波数は例えば数十Hzであり、搬送波S1の周波数に比べるとその周波数は2桁程度小さい。なお、「バースト波」とはバースト信号S0の一部となる搬送波S1の信号成分を指す。バースト信号生成部10からバースト信号S0を受け取った送信部3は、バースト信号S0に基づいて圧電素子1を駆動する。これにより、圧電素子1から出力波信号W1が出力される。
【0026】
信号処理部20は、圧電素子1が受信した受信信号を処理する。なお、受信信号の中には送信部3から送信されるバースト信号S0の超音波信号成分も含まれる。また、本実施形態では、圧電素子1の一端が入力端子INに直接接続されているが、圧電素子1の一端と入力端子INとの間に、受信部を設けてもよい。当該受信部は、圧電素子1の超音波振動子が振動することによって変換された超音波信号を受信し、信号処理部20に伝達する。なお、当該受信部は直流信号成分をカットし、かつ高周波信号を大きく減衰させる機能も合わせ有していてもよい。当該受信部を設けることによって、当該受信部は、送信部3及び圧電素子1の電気的特性が仮に変化した場合であっても、送受信部全体で決まる超音波信号を後段の回路部に伝達することができる。これによって、信号処理部20での信号処理を超音波センサの使用環境の変化に応じて適確に実行することができる。
【0027】
このように、本構成例では、半導体装置2に単一の圧電素子1が外部接続されており、この圧電素子1が送受波器として送信部3と信号処理部20の双方で共用されている。つまり、圧電素子1は、超音波信号の送信と受信を兼用する。
【0028】
ただし、半導体装置2に、圧電素子1とは別の圧電素子を外部接続すれば、送波器と受波器を個別に用意することもできる。また、そのような必要がなく、外部端子削減を優先すべきであれば、送信部3を半導体装置2に組み込んで、出力端子物体DRVと入力端子INを入出力端子として統合し、半導体装置2の内部において、当該入出力端子に送信部3と信号処理部20の双方を並列接続してもよい。
【0029】
ロジック部30は、物体200の接近検知や距離測定(=近辺に障害物があるか否かの探知)に際して、送信部10及び受信部20を制御する主体である。
【0030】
リセット部40は、信号処理部20内のフィルタを強制的にリセットする。
【0031】
なお、超音波センサ100で得られた物体200の接近検知結果や距離測定結果については、ホストとなる演算処理装置(CPU[central processing unit]など)に逐次出力してもよいし、或いは、不図示のレジスタに結果を格納しておき、演算処理装置から任意のタイミングで読み出すようにしてもよい。
【0032】
<送信部>
図2は、送信部3の一構成例を示す図である。送信部3は、圧電素子1が十分に駆動、振動するように、バースト信号S0を十分な大きさまで昇圧している。昇圧レベルは例えば80Vppである。本構成例の送信部3は、トランス3Aと、電流源3Bと、スイッチ3Cと、を含む。
【0033】
トランス3Aは、互いに電磁結合する一次巻線L1と二次巻線L2を含み、一次巻線L1に流れる駆動電流Idに応じて二次巻線L2の両端間に接続された圧電素子1を駆動する。このように、送信部3の増幅手段としてトランス3Aを用いることにより、送信部3に供給される電源電圧がそれほど高くなくても、圧電素子1を十分に駆動することができる電圧値まで、圧電素子電圧V1(=圧電素子1の両端間に印加される電圧)を高めることが可能となる。
【0034】
電流源3Bは、スイッチ3Cと接地端との間に接続されており、所定の駆動電流Idを生成する。
【0035】
スイッチ3Cは、トランス3Aの一次巻線L1と電流源3Bとの間に接続されており、バースト信号に応じて駆動電流Idのオン/オフ(=本図の例では、駆動電流Idが流れる電流経路の導通/遮断)を行う。
【0036】
<信号処理部>
図3は、信号処理部20の一構成例を示す図である。本構成例の信号処理部20は、アンプ20Aと、AD[analog-to-digital]コンバータ20Bと、バンドパスフィルタ20Cと、ローパスフィルタ20Dと、を含む。
【0037】
アンプ20Aは、圧電素子電圧V1(=入力波信号に相当)を増幅して増幅出力信号AMPOを生成する。なお、アンプ20Aとしては、そのゲインを任意に調整することのできるPGA[programmable gain amplifier]などを好適に用いることができる。アンプ20Aの電圧増幅度は受信信号の大きさに基づき、例えば20dB~100dBの範囲で適宜設定する。
【0038】
ADコンバータ20Bは、所定のサンプリング周波数(例えば1MHz)で動作することにより、アナログの増幅出力信号AMPOをデジタル出力信号DOに変換する。なお、超音波信号を信号処理部20でアナログ処理する場合にはADコンバータ20B及びバンドパスフィルタ20Cは不要となる。
【0039】
バンドパスフィルタ20Cはデジタル出力信号DOの帯域を制限するデジタルフィルタであり、ローパスフィルタ20Dはバンドパスフィルタ20Cの出力信号BOの高周波成分を除去するデジタルフィルタである。ローパスフィルタ20Dの出力信号LO(=信号処理部20の出力信号)はロジック部30において閾値と比較される。ロジック部30は、ローパスフィルタ20Dの出力信号LOと閾値との比較結果に基づいて、物体200の接近検知や距離測定を行う。
【0040】
<リセット部>
本実施例のリセット部40は、バースト信号に含まれるバースト波の発生開始タイミングから所定時間経過後に、バンドパスフィルタ20Cを強制的にリセットする。バンドパスフィルタ20Cがリセットされると、バンドパスフィルタ20Cの出力信号もリセットされる。
【0041】
バースト信号生成部10は、ロジック部30の制御に基づいてバースト信号を生成している。したがって、ロジック部30は、バースト信号に含まれるバースト波の発生開始タイミングを把握している。そこで、本実施例では、リセット部40は、バースト信号に含まれるバースト波の発生開始タイミングに関する情報をロジック部30から受け取るようにしている。
【0042】
上述した所定時間の適切値は、超音波センサ100毎の特性ばらつきに依存して超音波センサ100毎に異なる。したがって、超音波センサ100それぞれに対して上述した所定時間の適切値を評価テスト等によって求めて、その適切値をリセット部40内の不揮発性メモリ(不図示)に記憶すればよい。この不揮発性メモリへのデータ書き込みは例えばロジック部30を介して行えばよい。
【0043】
上述した所定時間の適切値は、バースト信号に含まれるバースト波の発生開始タイミングから、残響時間において信号処理部20の出力信号が小さくなりかけるタイミングまでの時間にすればよい。
【0044】
残響時間において信号処理部20の出力信号が小さくなりかけるタイミングとしては、例えば信号処理部20の出力信号の値が信号処理部20の出力信号の最大値の40%~70%内に収まるタイミングとすることが望ましい。信号処理部20の出力信号の値が信号処理部20の出力信号の最大値の70%より大きいときにバンドパスフィルタ20Cをリセットした場合には、バンドパスフィルタ20Cのリセット後に残響信号と反射波信号との判別がつかなくなるおそれがあり、信号処理部20の出力信号の値が信号処理部20の出力信号の最大値の40%より小さいときにバンドパスフィルタ20Cをリセットした場合には、超音波センサ100の近距離検知性能の向上が殆ど見込まれないからである。より望ましくは、信号処理部20の出力信号の値が信号処理部20の出力信号の最大値の略50%になるタイミングを、残響時間において信号処理部20の出力信号が小さくなりかけるタイミングとすればよい。
【0045】
図4図7は、信号処理部20の出力信号を概略的に示すタイムチャートである。
【0046】
図4は、リセット部40を動作させている状態で出力波信号W1を反射する物体200が存在しない場合のタイムチャートである。図5は、リセット部40を動作させていない状態(比較例)で出力波信号W1を反射する物体200が存在しない場合のタイムチャートである。
【0047】
図6は、リセット部40を動作させている状態で出力波信号W1を反射する物体200が超音波センサ100の近くに存在する場合のタイムチャートである。図7は、リセット部40を動作させていない状態(比較例)で出力波信号W1を反射する物体200が超音波センサ100の近くに存在する場合のタイムチャートである。
【0048】
図4図7中のMAXは信号処理部20の出力信号の最大値を示している。図4及び図6中のRはリセット部40がバンドパスフィルタ20Cをリセットするタイミングを示している。
【0049】
図4図7中のT1はバースト波が発生している時間を示しており、図4図7中のT2は残響時間を示している。
【0050】
図4図7中の一点鎖線は、ロジック部30において信号処理部20の出力信号と比較される閾値を示している。閾値に関するデータはロジック部30において不揮発的に記憶される。
【0051】
閾値はバースト信号に含まれるバースト波の発生開始から時間が経過するにつれて段階的に小さくなるように設定されている。バースト信号に含まれるバースト波の発生開始から時間が経過するにつれて超音波センサ100によって検知される物体200は超音波センサ100から離れていることになり、超音波センサ100に到達する反射波信号W2が減衰するからである。なお、本実施形態とは異なり、バースト信号に含まれるバースト波の発生開始から時間が経過するにつれて閾値を滑らかに減少させてもよい。
【0052】
図4図7中のΔMAXは、閾値の最大減少幅を示している。本実施例では、リセット部40がバンドパスフィルタ20Cを強制的にリセットした直後に、ロジック部30は減少幅を最大にした状態で閾値を減少させる。すなわち、本実施例では、リセット部40がバンドパスフィルタ20Cを強制的にリセットした直後に、閾値が最大減少幅ΔMAXで減少している。これにより、超音波センサ100の近くに存在する物体200が出力波信号W1を低反射率で反射する場合でも、超音波センサ100は物体200を適切に検知することができる。
【0053】
リセット部40がバンドパスフィルタ20Cをリセットすることにより、バンドパスフィルタ20Cのリセット直後から物体200の有無や物体200までの距離を検知することができる(図4及び図6参照)。換言すると、リセット部40がバンドパスフィルタ20Cをリセットすることにより、超音波センサ100の近距離検知性能が向上する。
【0054】
超音波センサ100では、バンドパスフィルタ20Cのリセット直後から物体200の有無や物体200までの距離を検知することができるので、ロジック部30は、バンドパスフィルタ20Cのリセット直後から信号処理部20の出力信号に基づく物体200に関する検知を開始すればよい。バンドパスフィルタ20Cがリセットされるまでは信号処理部20の出力信号に基づく物体200に関する検知を行わないようにすることで、物体200に関する誤検知を防止することができる。
【0055】
一方、比較例のようにリセット部40がバンドパスフィルタ20Cをリセットしなければ、残響信号がかなり小さくなるまで残響信号と反射波信号との判別がつかない(図5及び図7参照)。すなわち、比較例のようにリセット部40がバンドパスフィルタ20Cをリセットしなければ、残響時間のせいで、近距離物体の有無や近距離物体までの距離を検知することができない。
【0056】
<超音波センサの他の全体構成>
信号処理部20の出力信号に含まれる残響信号は温度特性を有している。この残響信号の温度特性を考慮して、超音波センサ100を図8に示すような構成にしてもよい。
【0057】
図8に示す超音波センサ100は、図1Aに示す超音波センサ100に温度センサ50を追加した構成である。温度センサ50は半導体装置2の内部に設けられる。温度センサ50としては、例えば半導体素子の温度特性を利用して温度を検出する温度検出回路を用いることができる。また、図8に示す構成例とは異なり、温度センサを半導体装置2の外部且つ半導体装置2の近傍に配置し、当該温度センサの出力を半導体装置2が受け取るようにしてもよい。半導体装置2の外部且つ半導体装置2の近傍に配置する温度センサとしては例えば熱電対を用いることができる。
【0058】
図8に示す超音波センサ100では、リセット部40内の不揮発性メモリ(不図示)が、上述した所定時間の適切値と温度センサ50によって検出される温度との関係を示すテーブルデータ、又は、上述した所定時間の適切値と温度センサ50によって検出される温度との関係を示す関係式を記憶するようにし、温度センサ50によって検出される温度に応じた所定時間の適切値を用いてリセット部40がバンドパスフィルタ20Cをリセットする。これにより、図8に示す超音波センサ100では、温度条件が変化した場合でも近距離検知性能の向上に支障が生じない。
【0059】
なお、信号処理部20の出力信号に含まれる残響信号は経時特性を有する可能性がある。残響信号の温度特性に代えて又は残響信号の温度特性に加えて、残響信号の経時特性も考慮するようにしてもよい。
【0060】
残響信号の経時特性は実験やシミュレーションによって求める。リセット部40内の不揮発性メモリ(不図示)が、上述した所定時間の適切値と超音波センサ100の製造完了時からの経過時間又は超音波センサ100の累積使用時間との関係を示すテーブルデータ、又は、上述した所定時間の適切値と超音波センサ100の製造完了時からの経過時間又は超音波センサ100の累積使用時間との関係を示す関係式を記憶するようにする。そして、信号処理部20内に設けられる計時部等で計測される超音波センサ100の製造完了時からの経過時間又は超音波センサ100の累積使用時間に応じた所定時間の適切値を用いてリセット部40がバンドパスフィルタ20Cをリセットする。
【0061】
超音波センサ100の製造完了時からの経過時間、超音波センサ100の累積使用時間のいずれかを用いるかは、残響信号の経時特性に関する実験やシミュレーションの結果等を参考にして決定すればよい。
【0062】
<車両用ソナー>
図9は、車両の外観図である。車両Xのフロントバンパーには、その左右角部と中央部にそれぞれフロントソナーX1(L、R、C)が設けられている。また、車両Xのリアバンパーにも、その左右角部と中央部にそれぞれバックソナーX2(L、R、C)が設けられている(ただし、図示の便宜上、バックソナーX2R及びX2Cは不図示)。
【0063】
このように、車両XにフロントソナーX1(L、R、C)及びバックソナーX2(L、R、C)を搭載することにより、車両Xの周囲における物体(=障害物、他車、または、通行人など)の接近検知や距離測定を行うことができるので、ドライバーの安全運転を支援することが可能となる。
【0064】
なお、上記のフロントソナーX1(L、R、C)及びバックソナーX2(L、R、C)としては、それぞれ、これまでに説明してきた超音波センサ100を適用することができる。
【0065】
<その他の変形例>
上記の実施形態では、バースト信号に含まれるバースト波の発生開始タイミングから所定時間経過後にリセット部40によってバンドパスフィルタ20Cが強制的にリセットされたが、信号処理部20の出力信号が所定値まで低下すると、リセット部40によってバンドパスフィルタ20Cが強制的にリセットされるようにしてもよい。
【0066】
例えば、信号処理部20の出力信号が所定値まで低下したか否かの判定をロジック部30が行い、上記判定の結果をリセット部40がロジック部30から受け取るようにするとよい。この所定値は、信号処理部20の出力信号の最大値の40%~70%内に収まることが望ましく、信号処理部20の出力信号の最大値の略50%であることがより望ましい。
【0067】
信号処理部20の出力信号が所定値まで低下すると、リセット部40によってバンドパスフィルタ20Cが強制的にリセットされるようにした場合、温度センサや計時部等を用いること無く、残響信号の温度特性や経時特性に応じたバンドパスフィルタ20Cのリセットを行うことができる。
【0068】
また、上記の実施形態では、超音波センサ100を車両用ソナーとして適用する例を挙げたが、超音波センサ100の適用対象はこれに限定されるものではなく、超音波センサ100は車両以外の移動体(例えばドローンなど)に搭載してもよい。
【0069】
また、超音波センサ100は移動体ではなく定置物に搭載してもよい。したがって、超音波センサ100は、例えば、駐車スペース毎に超音波センサ100が設けられた駐車管理システム、湿度センサ、積雪深計、ベルトコンベアの物体検知器、タンク注水時の液量検知器、自動ドアや侵入監視装置などの人体センサ、若しくは、各種の変位計測器などにも広く適用することが可能である。
【0070】
このように、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本明細書中に開示されている超音波センサは、例えば、車両の外界センサとして利用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 圧電素子
2 半導体装置
3 送信部
3A トランス
3B 電流源
3C スイッチ
10 バースト信号生成部
20 信号処理部
20A アンプ
20B ADコンバータ
20C バンドパスフィルタ
20D ローパスフィルタ
30 ロジック部
40 リセット部
50 温度センサ
100 超音波センサ
200 物体
X 車両
X1(L、R、C) フロントソナー
X2(L、R、C) バックソナー
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9