IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星電子株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】光変調素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20221025BHJP
   G02F 1/29 20060101ALI20221025BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20221025BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALN20221025BHJP
【FI】
G02F1/01 D
G02F1/29
G01S7/481 A
B82Y20/00
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2018116999
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019020715
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0089156
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】朴 晶 鉉
(72)【発明者】
【氏名】慶 智 秀
(72)【発明者】
【氏名】金 善 日
(72)【発明者】
【氏名】申 昶 均
(72)【発明者】
【氏名】鄭 秉 吉
(72)【発明者】
【氏名】崔 秉 龍
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0168324(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0023803(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0045759(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0090221(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0223723(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00- 1/125
G02F 1/21- 7/00
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノアンテナと、
導電体と、
前記ナノアンテナと前記導電体との間に配置されたものであり、印加電圧によって、少なくとも一つの物性が変化する活性層と、
前記活性層と前記導電体との間に配置された第1誘電体層と、
前記活性層と前記ナノアンテナとの間に配置された第2誘電体層と、
独立して、前記導電体に第1電圧を印加し、前記ナノアンテナに前記第1電圧とは異なる第2電圧を印加するように構成された信号印加手段と、を含む光変調素子。
【請求項2】
前記信号印加手段は、
前記導電体と前記活性層との間に、前記第1電圧を印加するための第1電圧印加手段と、
前記活性層と前記ナノアンテナとの間に、前記第2電圧を印加するための第2電圧印加手段と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の光変調素子。
【請求項3】
前記信号印加手段は、前記活性層に第3電圧を印加するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の光変調素子。
【請求項4】
前記第3電圧は、前記第1電圧及び前記第2電圧に対する基準電圧であることを特徴とする請求項3に記載の光変調素子。
【請求項5】
前記第3電圧は、接地電圧であることを特徴とする請求項3または4に記載の光変調素子。
【請求項6】
前記活性層は、前記信号印加手段の電気的信号によって誘発された第1電荷濃度変化領域及び第2電荷濃度変化領域を含み、
前記第1電荷濃度変化領域は、前記第1誘電体層に隣接するように具備され、前記第2電荷濃度変化領域は、前記第2誘電体層に隣接するように具備されたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項7】
前記導電体は、前記活性層下に配置された下部反射板電極であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項8】
前記導電体は、金属層であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項9】
前記活性層は、第1活性層であり、
前記導電体と前記第1誘電体層との間に、前記導電体と電気的に接触した第2活性層をさらに含むことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項10】
前記活性層は、第1活性層であり、
前記第1誘電体層と前記第2誘電体層との間に、第2活性層が具備され、
前記第1活性層と前記第2活性層との間に、中間誘電体層が具備されたことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項11】
前記活性層は、下部層及び上部層を含む多層構造を有し、
前記下部層と前記上部層は、互いに異なる物質を含むか、あるいは互いに異なるドーピング特性を有することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項12】
前記導電体、前記第1誘電体層、前記活性層、前記第2誘電体層及び前記ナノアンテナは、1つの単位素子を構成し、
複数の前記単位素子が配列された構造を有することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項13】
前記複数の前記単位素子は、一次元的または二次元的に配列されたことを特徴とする請求項12に記載の光変調素子。
【請求項14】
前記導電体一つに対して、複数のナノアンテナが配置されたことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項15】
前記活性層は、前記信号印加手段によって印加される電気的信号によって誘電率が変わる電気光学物質を含むことを特徴とする請求項1~14のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項16】
前記活性層は、透明伝導性酸化物及び遷移金属窒化物のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1~15のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項17】
前記第1誘電体層及び第2誘電体層のうち少なくとも1層は、絶縁性シリコン化合物及び絶縁性金属化合物のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1~16のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項18】
前記光変調素子は、前記第2電圧を減少させながら同時に前記第1電圧を増加させることによって、または前記第2電圧を増加させながら同時に前記第1電圧を減少させることによって、入射光の反射位相を変化させるように構成されたことを特徴とする請求項1~17のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項19】
前記光変調素子は、入射光の反射位相を360゜まで変化させるように構成されたことを特徴とする請求項1~18のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の光変調素子を含む光学装置。
【請求項21】
前記光学装置は、前記光変調素子を利用し、一次元的または二次元的にビームを操向するように構成されたことを特徴とする請求項20に記載の光学装置。
【請求項22】
前記光学装置は、ライダー(LiDAR)装置、三次元イメージ獲得装置、ホログラフィックディスプレイ装置及び構造光発生装置のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項20または21に記載の光学装置。
【請求項23】
記導電体は互いに離間した複数の導電体を含み、前記ナノアンテナは、互いに離間した複数のナノアンテナを含むことを特徴とする請求項1に記載の光変調素子。
【請求項24】
前記光変調素子は、前記ナノアンテナによって反射された光の位相変調を誘導するように構成されたことを特徴とする請求項23に記載の光変調素子。
【請求項25】
前記信号印加手段は、前記複数の導電体のうち少なくとも2つに異なる電圧を印加し、
前記複数のナノアンテナのうち少なくとも2つに異なる電圧を印加するように構成されたことを特徴とする請求項23に記載の光変調素子。
【請求項26】
前記信号印加手段は、前記複数の導電体のそれぞれに独立して電圧を印加し、前記複数のナノアンテナのそれぞれに独立して電圧を印加するように構成されたことを特徴とする請求項23に記載の光変調素子。
【請求項27】
互いに離隔して配置された複数の導電要素と、
前記複数の導電要素に対向するように配置された複数のナノアンテナと、
前記複数の導電要素と前記複数のナノアンテナとの間に、それらと離隔して配置されたものであり、印加電圧によって少なくとも一つの物性が変化する活性層と、
前記活性層と前記複数の導電要素との間に配置された第1誘電体層と、
前記活性層と前記複数のナノアンテナとの間に配置された第2誘電体層と、
独立して、前記複数の導電要素それぞれに電圧を印加し、前記複数のナノアンテナそれぞれに前記複数の導電要素に印加した電圧とは異なる電圧を印加するように構成された電圧印加手段と、を含み、
前記複数の導電要素それぞれに独立して印加される電圧により、前記活性層の第1領域で発生する電荷濃度変化、及び前記複数のナノアンテナそれぞれに独立して印加される電圧により、前記活性層の第2領域で発生する電荷濃度変化を利用して、入射光を変調する光変調素子。
【請求項28】
前記電圧印加手段は、
前記複数の導電要素のうち少なくとも二つに互いに異なる電圧を印加し、それと独立して、前記複数のナノアンテナのうち少なくとも二つに互いに異なる電圧を印加するように構成されたことを特徴とする請求項27に記載の光変調素子。
【請求項29】
前記複数の導電要素は、第1導電要素及び第2導電要素を含み、
前記複数のナノアンテナは、前記第1導電要素に対応する第1ナノアンテナ、及び前記第2導電要素に対応する第2ナノアンテナを含み、
前記電圧印加手段は、前記第1導電要素、前記第1ナノアンテナ、前記第2導電要素及び前記第2ナノアンテナそれぞれに、独立して電圧を印加するように構成されたことを特徴とする請求項27に記載の光変調素子。
【請求項30】
前記複数のナノアンテナは、一次元的に配列され、
前記光変調素子は、一次元的方向に、ビームを操向するように構成されたことを特徴とする請求項27~29のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項31】
前記複数のナノアンテナは、二次元的に配列され、
前記光変調素子は、二次元的方向に、ビームを操向するように構成されたことを特徴とする請求項27~29のいずれか1項に記載の光変調素子。
【請求項32】
請求項27~3のいずれか1項に記載の光変調素子を含む光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光の透過/反射特性、位相、振幅、偏光、強度、経路などを変化させる光学素子は、多様な光学装置に活用される。光学システム内において、所望の方式で前述の光の性質を制御するために、多様な構造の光変調器が提示された。例えば、光学的異方性を有する液晶(liquid crystal)や、光遮断/反射要素の微小機械的動きを利用するMEMS(micro electro mechanical system)構造などが、一般的な光変調器に使用されている。最近では、入射光に対する表面プラズモン共振(surface Plasmon resonance)現象を利用するナノ構造体を光学素子に活用しようとする試みがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0054599号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、光を電気的方式で変調する素子(光変調素子)を提供することである。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、また、表面プラズモン共振現象を利用して光を変調する素子(光変調素子)を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、また、プラズモニックナノアンテナ(plasmonic nano-antenna)またはそのアレイを含む光変調素子を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、また、前記光変調素子を含む装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面(aspect)によれば、ナノアンテナ(nano-antenna)と、前記ナノアンテナと対向するように配置された導電体と、前記ナノアンテナと前記導電体との間に配置されたものであり、印加電圧によって物性が変化される活性層と、前記活性層と前記導電体との間に配置された第1誘電体層と、前記活性層と前記ナノアンテナとの間に配置された第2誘電体層と、前記ナノアンテナ、前記活性層及び前記導電体のうち少なくとも二つに、独立して電気的信号を印加するように構成された信号印加手段と、を含む光変調素子が提供される。
【0009】
前記信号印加手段は、前記導電体に第1電圧を印加し、前記ナノアンテナに第2電圧を印加するように構成されてもよい。
【0010】
前記信号印加手段は、前記導電体と前記活性層との間に、前記第1電圧を印加するための第1電圧印加手段と、前記活性層と前記ナノアンテナとの間に、前記第2電圧を印加するための第2電圧印加手段と、を含んでもよい。
【0011】
前記信号印加手段は、前記導電体に第1電圧を印加し、前記活性層に第2電圧を印加し、前記ナノアンテナに第3電圧を印加するように構成されてもよい。
【0012】
前記信号印加手段は、前記導電体に第1電圧を印加し、前記活性層に第2電圧を印加し、前記ナノアンテナに第3電圧を印加するように構成されてもよい。該第1電圧及び該第3電圧のうち少なくとも一つは、該第2電圧と異なってもよい。
【0013】
前記第2電圧は、前記第1電圧及び第3電圧に対する基準電圧でもある。
【0014】
前記第2電圧は、選択的に(optionally)、接地電圧でもある。
【0015】
前記活性層は、前記信号印加手段の電気的信号によって誘発された第1電荷濃度変化領域及び第2電荷濃度変化領域を含み、前記第1電荷濃度変化領域は、前記第1誘電体層に隣接するように具備され、前記第2電荷濃度変化領域は、前記第2誘電体層に隣接するように具備されてもよい。
【0016】
前記導電体は、前記活性層下に配置された下部反射板電極(back reflector electrode)でもある。
【0017】
前記導電体は、金属層でもある。
【0018】
前記活性層は、第1活性層でもあり、前記導電体と前記第1誘電体層との間に、前記導電体と電気的に接触した第2活性層がさらに具備されてもよい。
【0019】
前記第1誘電体層と前記第2誘電体層との間に、少なくとも2層の前記活性層が前記第1誘電体層から順に具備され、前記少なくとも2層の活性層間に、中間誘電体層が具備されてもよい。
【0020】
前記活性層は、下部層及び上部層を含む多層構造を有することができる。前記下部層と前記上部層は、互いに異なる物質を含むか、あるいは互いに異なるドーピング特性を有することができる。
【0021】
複数の前記導電体が互いに離隔して配置され、複数の前記ナノアンテナが互いに離隔して配置され、前記複数の導電体と前記複数のナノアンテナとの間に、前記活性層が具備されてもよい。
【0022】
前記複数の導電体のうち少なくとも二つに、互いに異なる電圧が印加され、前記複数のナノアンテナのうち少なくとも二つに、互いに異なる電圧が印加されもする。
【0023】
前記複数の導電体それぞれに、独立して電圧が印加され、前記複数のナノアンテナそれぞれに、独立して電圧が印加されもする。
【0024】
前記複数の導電体は、第1導電体及び第2導電体を含み、前記複数のナノアンテナは、前記第1導電体に対応する第1ナノアンテナ、及び前記第2導電体に対応する第2ナノアンテナを含み、前記第1導電体に第1電圧が印加され、これと独立して、前記第1ナノアンテナに第2電圧が印加され、前記第2導電体に第3電圧が印加され、これと独立して、前記第2ナノアンテナに第4電圧が印加されもする。
【0025】
前記導電体、前記第1誘電体層、前記活性層、前記第2誘電体層及び前記ナノアンテナは、一つの単位素子を構成することができ、前記光変調素子は、複数の前記単位素子が配列された構造を有することができる。
【0026】
前記複数の単位素子は、一次元的または二次元的に配列されてもよい。
【0027】
前記導電体一つに対して、前記ナノアンテナ一つが対応するように配置されるか、あるいは前記導電体一つに対して複数のナノアンテナが配置されてもよい。
【0028】
前記活性層は、それに印加される電気的信号によって誘電率(permittivity)が変わる電気光学(electro-optic)物質を含んでもよい。
【0029】
前記活性層は、透明伝導性酸化物(transparent conductive oxide)及び遷移金属窒化物(transition metal nitride)のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0030】
前記第1誘電体層及び第2誘電体層のうち少なくとも一つは、絶縁性シリコン化合物及び絶縁性金属化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0031】
前記光変調素子は、前記ナノアンテナによって反射する光の位相変調(phase modulation)を誘導するように構成された素子でもある。
【0032】
前記光変調素子は、入射光の反射位相を360゜まで変化させるように構成されてもよい。
【0033】
他の側面によれば、前述の光変調素子を含む光学装置が提供される。
【0034】
前記光学装置は、前記光変調素子を利用し、一次元または二次元的にビームを操向するように構成されてもよい。
【0035】
前記光学装置は、例えば、ライダー(LIDAR:light detection and ranging)装置、三次元イメージ獲得装置、ホログラフィック(holographic)ディスプレイ装置及び構造光(structured light)発生装置のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0036】
他の側面によれば、互いに離隔して配置された複数の導電要素と、前記複数の導電要素に対向するように配置された複数のナノアンテナと、前記複数の導電要素と前記複数のナノアンテナとの間に、それらと離隔して配置されたものであり、印加電圧によって物性が変化される活性層と、前記複数の導電要素それぞれ、及び前記複数のナノアンテナそれぞれに、独立して電圧を印加するように構成された電圧印加手段と、を含み、前記複数の導電要素それぞれに独立して印加される電圧により、前記活性層の第1領域で発生する電荷濃度変化、及び前記複数のナノアンテナそれぞれに独立して印加される電圧により、前記活性層の第2領域で発生する電荷濃度変化を利用して、入射光を変調する光変調素子が提供される。
【0037】
前記電圧印加手段は、前記複数の導電要素のうち少なくとも二つに互いに異なる電圧を印加し、それと独立して、前記複数のナノアンテナのうち少なくとも二つに互いに異なる電圧を印加するように構成されてもよい。
【0038】
前記複数の導電要素は、第1導電要素及び第2導電要素を含み、前記複数のナノアンテナは、前記第1導電要素に対応する第1ナノアンテナ、及び前記第2導電要素に対応する第2ナノアンテナを含み、前記電圧印加手段は、前記第1導電要素、前記第1ナノアンテナ、前記第2導電要素及び前記第2ナノアンテナそれぞれに、独立して電圧を印加するように構成されてもよい。
【0039】
前記光変調素子は、前記複数の導電要素と、前記活性層との間に具備された第1絶縁層と、前記複数のナノアンテナと、前記活性層との間に具備された第2絶縁層と、をさらに含んでもよい。
【0040】
前記複数のナノアンテナは、一次元的に配列され、前記光変調素子は、一次元的方向に、ビームを操向するように構成されてもよい。
【0041】
前記複数のナノアンテナは、二次元的に配列され、前記光変調素子は、二次元的方向に、ビームを操向するように構成されてもよい。
【0042】
他の側面によれば、前述の光変調素子を含む光学装置が提供される。
【0043】
前記光学装置は、前記光変調素子を利用し、一次元的または二次元的にビームを操向するように構成されてもよい。
【0044】
前記光学装置は、例えば、ライダー(LiDAR)装置、三次元イメージ獲得装置、ホログラフィックディスプレイ装置及び構造光発生装置のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、光を電気的方式で変調する素子(光変調素子)を具現することができる。また、表面プラズモン共振現象を利用して光を変調する素子(光変調素子)を具現することができる。また、プラズモニックナノアンテナまたはそのアレイを含む光変調素子を具現することができる。また、光変調効率を高め、ノイズを減らす光変調素子を具現することができる。また、反射位相の変化量を増加させることができる光変調素子を具現することができる。また、反射率の変化量を減らす光変調素子を具現することができる。
【0046】
さらに、前述の光変調素子を適用し、優秀な性能を有する多様な光学装置を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】一実施形態による光変調素子を示す断面図である。
図2】他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
図3】比較例による光変調素子を示す断面図である。
図4】比較例による光変調素子(図3の素子)の電圧印加条件による反射光の位相変化を示すグラフである。
図5】比較例による光変調素子(図3の素子)の電圧印加条件による反射率の変化を示すグラフである。
図6】実施形態による光変調素子(図1の素子)の電圧印加条件による反射光の位相変化を示すグラフである。
図7】実施形態による光変調素子(図1の素子)の電圧印加条件による反射率の変化を示すグラフである。
図8】他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
図9】他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
図10】他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
図11】他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
図12】他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
図13】他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
図14】他の実施形態による光変調素子を示す斜視図である。
図15】他の実施形態による光変調素子を示す斜視図である。
図16】他の実施形態による光変調素子を示す斜視図である。
図17】他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
図18】他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
図19A】実施形態による光変調素子に適用されるナノアンテナの構造/形態を示す斜視図である。
図19B】実施形態による光変調素子に適用されるナノアンテナの構造/形態を示す斜視図である。
図19C】実施形態による光変調素子に適用されるナノアンテナの構造/形態を示す斜視図である。
図19D】実施形態による光変調素子に適用されるナノアンテナの構造/形態を示す斜視図である。
図20】一実施形態による光変調素子を含むビームステアリング素子(beam steering device)について説明するための概念図である。
図21】他の実施形態による光変調素子を含むビームステアリング素子について説明するための概念図である。
図22】一実施形態による光変調素子を適用したビームステアリング素子を含む光学装置の全体的なシステムについて説明するためのブロック図である。
図23】一実施形態による光変調素子を含むライダー(LiDAR)装置を車両に適用した場合を示す概念図である。
図24】一実施形態による光変調素子を含むライダー(LiDAR)装置を車両に適用した場合を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、一実施形態による光変調素子及びその動作方法、並びに該光変調素子を含む装置について、添付された図面を参照して詳細に説明する。添付された図面に図示された層や領域の幅及び厚みは、明細書の明確性、及び説明の便宜性のために、若干誇張されてもいる。詳細な説明全体にわたって、同一参照番号は、同一構成要素を示す。
【0049】
図1は、一実施形態による光変調素子を示す断面図である。
【0050】
図1を参照すれば、導電体C10、及びそれと対向するように配置されたナノアンテナ(nano-antenna)N10が具備されてもよい。ナノアンテナN10は、プラズモニックナノアンテナ(plasmonic nano-antenna)であると言うことができる。導電体C10とナノアンテナN10との間に、活性層A10が具備されてもよい。活性層A10は、その電気的条件によって物性が変化される層でもある。例えば、活性層A10の少なくとも一つの物性は、それに印加される電圧によっても変化する。活性層A10、及びその周辺領域に係わる電気的条件(例えば、印加電圧)により、活性層A10の誘電率(permittivity)が変化する。活性層A10の誘電率変化は、活性層A10内領域の電荷濃度(電荷密度)の変化に起因したものでもある。言い換えれば、活性層A10内領域の電荷濃度変化により、活性層A10の誘電率が変化する。導電体C10と活性層A10との間に、第1誘電体層D10が配置されてもよい。活性層A10とナノアンテナN10との間に、第2誘電体層D20が配置されてもよい。第1誘電体層D10は、導電体C10と活性層A10とを電気的に分離する第1絶縁層でもあり、第2誘電体層D20は、活性層A10とナノアンテナN10とを電気的に分離する第2絶縁層でもある。
【0051】
本実施形態による光変調素子は、ナノアンテナN10、活性層A10及び導電体C10のうち少なくとも二つに、独立して電気的信号を印加するように構成された信号印加手段を含んでもよい。該信号印加手段は、導電体C10及びナノアンテナN10それぞれに、独立して電圧を印加するように構成されてもよい。例えば、前記信号印加手段は、導電体C10と活性層A10との間に、第1電圧を印加するための第1電圧印加手段V、及び活性層A10とナノアンテナN10との間に、第2電圧を印加するための第2電圧印加手段Vを含んでもよい。このとき、活性層A10は、接地されてもよい。
【0052】
活性層A10は、第1電圧印加手段Vにより、導電体C10と活性層A10との間に印加される電圧により、電荷濃度が変化する第1電荷濃度変化領域10を含んでもよい。また、活性層A10は、第2電圧印加手段Vにより、活性層A10とナノアンテナN10との間に印加される電圧により、電荷濃度が変化する第2電荷濃度変化領域20を含んでもよい。第1電荷濃度変化領域10は、第1誘電体層D10に隣接するように具備され、第2電荷濃度変化領域20は、第2誘電体層D20に隣接するように具備されてもよい。第1電荷濃度変化領域10と第2電荷濃度変化領域20は、独立して制御される。
【0053】
ナノアンテナN10は、特定波長(あるいは、周波数)の光(入射光、可視(visible)電磁波及び不可視(invisible)電磁波をいずれも含む)を、局所表面プラズモン共振(localized surface plasmon resonance)の形態に変換し、そのエネルギーを捕獲するものであり、光に対するナノ構造のアンテナであると言うことができる。ナノアンテナN10は、導電層パターン(例:金属層パターン)でもあり、該導電層パターンは、非導電層(例:誘電層)にも接触している。該導電層パターンと該非導電層(例:誘電層)との界面で、プラズモン共振が発生しうる。このとき、非導電層(例:誘電層)は、第2誘電体層D20か、第2誘電体層D20と別個の層にも具備される。便宜上、以下では、導電層パターン自体を、ナノアンテナN10と見なして説明する。該導電層パターンと該非導電層(例:誘電層)との界面のように、表面プラズモン共振が起きる境界面(interface)を通称し、「メタ表面」または「メタ構造」であると言うことができる。
【0054】
ナノアンテナN10は、伝導性物質からもなり、サブ波長(sub-wavelength)の寸法を有することができる。ここで、サブ波長とは、ナノアンテナN10の動作波長より小さい寸法を意味する。ナノアンテナN10の形状をなすある1つの寸法、例えば、厚み、横、縦、またはナノアンテナN10間の間隔、またはナノアンテナの配列周期(すなわち、横長または縦長と間隔との和)のうち少なくともいずれか一つがサブ波長の寸法を有することができる。ナノアンテナN10の形状や寸法によって共振波長が異なりもする。前記動作波長は、約1,550nmほどでもあり、前記ナノアンテナの配列周期(サブ波長の一例)は、約500nmほどでもあるが、それは例示的なものに過ぎず、本願は、それに限定されるものではない。
【0055】
ナノアンテナN10を形成する伝導性物質としては、表面プラズモン励起(surface Plasmon excitation)が発生しうる導電性が高い金属物質が採用される。例えば、Cu、Al、Ni、Fe、Co、Zn、Ti、Ru、Rh、Pd、Pt、Ag、Os、Ir、Auなどで構成されたグループのうちから選択された少なくとも一つの金属が採用され、それらのうち少なくとも一つを含む合金からもなる。また、ナノアンテナN10は、Au、Agなどの金属ナノ粒子が分散された薄膜、グラフェンやCNT(carbon nanotube)などの炭素ナノ構造体;ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリピロール(PPy)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)などの伝導性高分子を含むか、あるいは伝導性酸化物などを含んでもよい。
【0056】
活性層A10は、それに印加される電気的条件によって物性が変化する層でもあり、同時に、電極の機能を遂行することができる。例えば、活性層A10は、電気的条件によって誘電率が変化する層でもある。活性層A10に印加される電場により、活性層A10内領域の電荷濃度(電荷密度)が変化され、それにより、活性層A10の誘電率が変化する。例えば、活性層A10は、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、AZO(aluminum doped zinc oxide)、GZO(gallium doped zinc oxide)、AGZO(aluminium gallium zinc oxide)、GIZO(gallium indium zinc oxide)のような透明伝導性酸化物(TCO:transparent conductive oxide)を含んでもよい。または、TiN、ZrN、HfN、TaNのような遷移金属窒化物(transition metal nitride)を含んでもよい。それ以外にも、電気的信号が加えられれば、有効誘電率が変わる電気光学(EO:electro-optic)物質を含んでもよい。該電気光学物質は、例えば、LiNbO、LiTaO、タンタル酸二オブ酸カリウム(KTN)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの結晶性物質を含むか、あるいは電気光学特性を有する多様なポリマーを含んでもよい。
【0057】
活性層A10の誘電率は、波長によっても変わる。真空の誘電率εに対する相対誘電率(relative permittivity)εを誘電定数(dielectric constant)といい、活性層A10の誘電定数の実数部は、所定波長帯域において、0の値を示すことができる。該誘電定数の実数部が0、または0に非常に近い値を有するようになる波長帯域を、ENZ(epsilon near zero)波長帯域という。ほとんどの物質の誘電定数は、波長の関数で示され、複素数でも示される。真空の誘電定数は、1になり、一般的な誘電体の場合、誘電定数の実数部は、1より大きい正数である。金属の場合、誘電定数の実数部は、負数にもなる。ほとんどの波長帯域において、ほとんどの物質の誘電定数は、1より大きい値を有するが、特定波長において、誘電定数の実数部は、0の値を有することができる。誘電定数の実数部が0、または0に非常に近い値を有するとき、特異な光学的性質を示すと知られている。一実施形態の光変調素子は、動作波長帯域を、活性層A10のENZ波長帯域を含む領域と設定することができる。ナノアンテナN10の共振波長帯域と、活性層A10のENZ波長帯域とを類似して設定することにより、光変調性能が調節される範囲を拡大させることができる。活性層A10のENZ波長帯域は、第1電荷濃度変化領域10及び第2電荷濃度変化領域20の特性(電荷濃度)によっても異なる。
【0058】
導電体C10は、伝導性物質を含み、電極の機能を遂行することができる。導電体C10の伝導性物質は、ナノアンテナN10の伝導性物質と同一であるか、あるいは類似している。例えば、導電体C10は、Cu、Al、Ni、Fe、Co、Zn、Ti、Ru、Rh、Pd、Pt、Ag、Os、Ir、Auなどで構成されたグループのうちから選択された少なくとも一つの金属を含み、それらのうち少なくとも一つを具備する合金を含んでもよい。または、導電体C10は、Au、Agなどの金属ナノ粒子が分散された薄膜;グラフェンやCNTなどの炭素ナノ構造体;ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリピロール(PPy)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)などの伝導性高分子を含むか、あるいは伝導性酸化物などを含んでもよい。
【0059】
導電体C10は、活性層A10下に配置された下部反射板電極(back reflector electrode)でもある。よって、導電体C10は、光を反射させる役割を行いながら、同時に電極の機能を遂行することができる。導電体C10は、それに対応するナノアンテナN10と光学的にカップリング(coupling)されており、ナノアンテナN10と導電体C10との光学的相互作用によって光が反射することができる。後述する図8ないし図18において、図1の導電体C10に対応する導電体(導電要素)は、いずれも下部反射板電極でもある。
【0060】
第1誘電体層D10及び第2誘電体層D20は、絶縁性物質(誘電体物質)を含んでもよい。第1誘電体層D10及び第2誘電体層D20のうち少なくとも一つは、絶縁性シリコン化合物及び絶縁性金属化合物のうち少なくとも一つを含んでもよい。該絶縁性シリコン化合物は、例えば、シリコン酸化物(SiO)、シリコン窒化物(Si)、シリコン酸窒化物(SiON)などを含み、該絶縁性金属化合物は、例えば、アルミニウム酸化物(Al)、ハフニウム酸化物(HfO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、ハフニウムシリコン酸化物(HfSiO)などを含んでもよい。しかし、ここで提示した第1誘電体層D10及び第2誘電体層D20の具体的な物質は、例示的なものであり、それらに限定されるものではない。第1誘電体層D10と第2誘電体層D20は、同一物質から形成されるか、あるいは互いに異なる物質構成を有することもできる。
【0061】
第1電圧印加手段V及び第2電圧印加手段Vを利用して、活性層A10と導電体C10との間、及び活性層A10とナノアンテナN10との間に、独立して電圧を印加することができる。活性層A10が接地された場合、すなわち、活性層A10の電圧が0Vである場合、第1電圧印加手段Vにより、導電体C10に印加される電圧は、正(+)の電圧でもあり、負(-)の電圧でもある。導電体C10に印加される電圧が正(+)の電圧である場合、第1電荷濃度変化領域10は、電荷蓄積領域(accumulation region)でもあり、導電体C10に印加される電圧が負(-)の電圧である場合、第1電荷濃度変化領域10は、電荷空乏領域(depletion region)でもある。場合により、導電体C10にも、0Vの電圧を印加することができる。また、第2電圧印加手段VによってナノアンテナN10に印加される電圧は、正(+)の電圧でもあり、負(-)の電圧でもある。ナノアンテナN10に印加される電圧が正(+)の電圧である場合、第2電荷濃度変化領域20は、電荷蓄積領域でもあり、ナノアンテナN10に印加される電圧が負(-)の電圧である場合、第2電荷濃度変化領域20は、電荷空乏領域でもある。場合により、ナノアンテナN10にも、0Vの電圧を印加することができる。
【0062】
導電体C10及びナノアンテナN10に印加する電圧を独立して調節するために、第1電荷濃度変化領域10及び第2電荷濃度変化領域20の特性を独立して制御することができる。従って、第1電荷濃度変化領域10及び第2電荷濃度変化領域20のうちいずれか一つは、電荷蓄積領域でもあり、他の一つは、電荷空乏領域でもある。または、第1電荷濃度変化領域10及び第2電荷濃度変化領域20がいずれも電荷蓄積領域でもあり、電荷空乏領域でもある。第1電荷濃度変化領域10及び第2電荷濃度変化領域20が、いずれも電荷蓄積領域であり、電荷空乏領域である場合にも、それらの電荷濃度は、異なっても制御される。
【0063】
活性層A10の多数キャリア(majority carrier)が負(-)の電荷である場合、言い換えれば、活性層A10がN型電極であるか、あるいはN-ドーピングされた物質層である場合、導電体C10に印加される電圧が正(+)の電圧であるならば、第1電荷濃度変化領域10は、電子蓄積領域でもあり、負(-)の電圧であるならば、第1電荷濃度変化領域10は、電子空乏領域でもある。それと類似して、ナノアンテナN10に印加される電圧が正(+)の電圧であるならば、第2電荷濃度変化領域20は、電子蓄積領域でもあり、負(-)の電圧であるならば、第2電荷濃度変化領域20は、電子空乏領域でもある。場合により、活性層A10の多数キャリアは、正(+)の電荷でもある。言い換えれば、活性層A10は、P型電極であるか、あるいはP-ドーピングされた物質層でもある。その場合、導電体C10に印加される電圧が正(+)の電圧であるならば、第1電荷濃度変化領域10は、正孔空乏領域でもあり、負(-)の電圧であるならば、第1電荷濃度変化領域10は、正孔蓄積領域でもある。それと類似して、ナノアンテナN10に印加される電圧が正(+)の電圧であるならば、第2電荷濃度変化領域20は、正孔空乏領域でもあり、負(-)の電圧であるならば、第2電荷濃度変化領域20は、正孔蓄積領域でもある。
【0064】
導電体C10は、第1ゲート電極と言うことができ、ナノアンテナN10は、第2ゲート電極であると言うことができる。第1誘電体層D10は、第1ゲート絶縁層と言うことができ、第2誘電体層D20は、第2ゲート絶縁層であると言うことができる。導電体C10に印加される電圧は、第1ゲート電圧と言うことができ、ナノアンテナN10に印加される電圧は、第2ゲート電圧であると言うことができる。第1ゲート電圧及び第2ゲート電圧は、互いに独立して制御されるという側面で、本実施形態の光変調素子は、二重電極構造(二重ゲート電極構造)を有すると言うことができる。
【0065】
第1電圧印加手段V及び第2電圧印加手段Vを利用して、第1電荷濃度変化領域10及び第2電荷濃度変化領域20の特性を独立して制御することができ、それにより、素子の光変調特性が異なりもする。活性層A10の特性変化、そしてナノアンテナN10、活性層A10及び導電体C10の間の電気光学的相互作用により、光変調特性が制御される。例えば、所定の入射光LがナノアンテナN10によって反射される場合、反射光Lの特性が、第1電荷濃度変化領域10及び第2電荷濃度変化領域20の特性によっても変化する。言い換えれば、第1電圧印加手段Vで導電体C10に印加する電圧、及び第2電圧印加手段VでナノアンテナN10に印加する電圧により、反射光Lの特性が異なりもする。第1電荷濃度変化領域10の特性、及び第2電荷濃度変化領域20の特性の独立的制御は、光変調特性を大きく改善することができ、ノイズなどの問題を減らすことができる。それについては、追って図6及び図7などを参照してさらに詳細に説明する。
【0066】
図1においては、光変調素子に電気的信号を印加するための「信号印加手段」が導電体C10と活性層A10との間に連結された第1電圧印加手段V、及び活性層A10とナノアンテナN10との間に連結された第2電圧印加手段Vを含み、活性層A10は、接地された場合を図示したが、かような信号印加手段の構成は、異なりもする。その一例が図2に図示されている。
【0067】
図2は、他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
【0068】
図2を参照すれば、光変調素子に電気的信号を印加するための信号印加手段は、導電体C10、活性層A10及びナノアンテナN10それぞれに、独立して電圧を印加するように構成されてもよい。前記信号印加手段は、導電体C10に、第1電圧を印加するための第1電圧印加手段V1、活性層A10に第2電圧を印加するための第2電圧印加手段V2、及びナノアンテナN10に第3電圧を印加するための第3電圧印加手段V3を含んでもよい。ここで、該第1電圧は、該第2電圧より、高くとも低くともよい。また、該第3電圧は、該第2電圧より、高くとも低くともよい。場合により、該第1電圧及び該第3電圧のうち少なくとも一つが、該第2電圧と同じであってもよい。該第2電圧は、該第1電圧及び該第3電圧に対する基準電圧(reference voltage)でもある。該第2電圧は、選択的に(optionally)、接地電圧(ground voltage)でもある。その場合、図1において、活性層A10が接地された場合と類似している。
【0069】
導電体C10、活性層A10及びナノアンテナN10それぞれに、独立して電圧を印加することにより、それら間の電位差により、第1電荷濃度変化領域10及び第2電荷濃度変化領域20の特性を独立して制御することができる。
【0070】
図3は、比較例による光変調素子を示す断面図である。
【0071】
図3を参照すれば、比較例による光変調素子は、導電体C1上側に、ナノアンテナN1を有することができ、導電体C1に接触した活性層A1、そして、活性層A1とナノアンテナN1との間に具備された誘電体層D1を含んでもよい。また、該比較例による光変調素子は、導電体C1に対して、ナノアンテナN1に電圧を印加するための電圧印加手段Vを含む。導電体C1とナノアンテナN1との間に、電圧印加手段Vが連結され、導電体C1は、接地される。
【0072】
その場合、電圧印加手段Vにより、導電体C1とナノアンテナN1との間に印加される電圧により、活性層A1内に、1つの電荷濃度変化領域1が形成される。電荷濃度変化領域1は、誘電体層D1に隣接するように形成される。かような光変調素子は、単一ゲート電極構造を有すると言うことができる。
【0073】
図4は、比較例による光変調素子(図3の素子)の電圧印加条件による反射光の位相変化を示すグラフである。
【0074】
図4を参照すれば、電圧によって反射位相(゜)が変化するが、反射位相(゜)は、約270゜まで変化し、それ以上には変化させにくい。従って、全ての位相を表現することができないという限界がある。かような限界点は、光波操向、すなわち、ビームステアリング(beam steering)においてノイズを増大させるという問題を誘発してしまう。
【0075】
図5は、比較例による光変調素子(図3の素子)の電圧印加条件による反射率の変化を示すグラフである。
【0076】
図5を参照すれば、電圧によって、反射率(%)が大きく変化するということが分かる。反射率(%)が各電圧別に異なるために、生成された光波の波面に歪曲が発生する。その結果、光波操向でノイズが増大することになる。かようなノイズが多ければ、メインローブ(main lobe)のエネルギーが減ることになり、監視距離が短くなり、所望しない方向に操向されたビームによって反射された光が、情報の歪曲をもたらしてしまう。かような反射率(%)の変化は、反射波の位相変化時、振幅も共に変化するために発生しうる。
【0077】
図6は、一実施形態による光変調素子(図1の素子)の電圧印加条件による反射光の位相変化を示すグラフである。
【0078】
図6を参照すれば、一実施形態においては、上部のナノアンテナN10と、下部の導電体C10とに独立して電圧を印加することができるために、横軸を、上部電圧Vと下部電圧Vとの組み合わせで表示した。一実施形態によれば、電圧条件により、反射位相(゜)を360゜まで変化させることができる。それは、図4の比較例において、反射位相(゜)が270゜まで変化するところと比較される。
【0079】
図7は、一実施形態による光変調素子(図1の素子)の電圧印加条件による反射率の変化を示すグラフである。
【0080】
図7を参照すれば、電圧条件によって反射位相(゜)を変化させている中、反射率(%)が概して一定に維持される。例えば、測定範囲内において、反射率(%)の変化量は、およそ±15%以内でもある。それは、図5の比較例において、反射率(%)が大きく変化するところと比較される。また、図7の平均反射率(%)は、図5の最大反射率(%)よりはっきりと高いことが分かる。
【0081】
図6及び図7の結果のように、一実施形態によれば、反射位相(゜)は、360゜まで変化させることができ、反射率(%)は、概して一定に維持されるために、光波操向時、効率が上昇し、ノイズが減少し、歪曲が抑制される効果を得ることができる。特に、constant amplitude方式、2π(360゜)-full cover方式及びphase-only modulation方式の光変調に有利に適用される。
【0082】
図8は、他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
【0083】
図8を参照すれば、光変調素子は、導電体C10と第1誘電体層D10との間に、導電体C10と電気的に接触した第2活性層A20をさらに含んでもよい。このとき、第1誘電体層D10と第2誘電体層D20との間に存在する活性層A10は、第1活性層A10と言うことができる。第2活性層A20は、第1活性層A10と同一であるか、あるいは類似した物質からも形成される。第2活性層A20は、第1電圧印加手段Vにより、導電体C10と第1活性層A10との間に印加される電圧により、電荷濃度が変化する第3電荷濃度変化領域30を含んでもよい。第3電荷濃度変化領域30は、第1誘電体層D10に隣接するように配置されてもよい。本実施形態においては、第1電圧印加手段Vによって、第1活性層A10内に、第1電荷濃度変化領域10、及び第2活性層A20内に、第3電荷濃度変化領域30が誘発され、第2電圧印加手段Vによって、第1活性層A10内に、第2電荷濃度変化領域20が誘発されると言うことができる。第3電荷濃度変化領域30を含む第2活性層A20がさらに具備されるということを除いた残り構成は、図1と同一であるか、あるいは類似している。
【0084】
本実施形態においては、3つの電荷濃度変化領域10、20、30の特性変化を光変調に利用するために、光変調特性改善及び制御に有利である。
【0085】
図9は、他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
【0086】
図9を参照すれば、第1誘電体層D10と第2誘電体層D20との間に、少なくとも2層の活性層が具備されてもよい。ここでは、2層の活性層A11、A12が具備された場合が図示されている。2層の活性層A11、A12は、それぞれ第1活性層A11及び第2活性層A12と言うことができる。隣接した2層の活性層A11、A12の間には、中間誘電体層D15が具備されてもよい。第1活性層A11及び第2活性層A12は、図1の活性層A10と同一であるか、あるいは類似した物質から形成され、中間誘電体層D15は、第1誘電体層D10及び第2誘電体層D20と同一であるか、あるいは類似した物質からも形成される。第1活性層A11及び第2活性層A12は、互いに同じ物質、または異なる物質からも形成される。
【0087】
本実施形態による光変調素子は、導電体C10に電圧を印加するための第1電圧印加手段V10、第1活性層A11に電圧を印加するための第2電圧印加手段V20、第2活性層A12に電圧を印加するための第3電圧印加手段V30、及びナノアンテナN10に電圧を印加するための第4電圧印加手段V40を含んでもよい。従って、導電体C10、第1活性層A11、第2活性層A12及びナノアンテナN10それぞれに、独立して電圧を印加することができる。場合により、第1活性層A11及び第2活性層A12のうち一つは、接地されてもよい。
【0088】
第1活性層A11の下部領域及び上部領域に、それぞれ第1電荷濃度変化領域11及び第2電荷濃度変化領域21が形成される。それと類似して、第2活性層A12の下部領域及び上部領域に、それぞれ第3電荷濃度変化領域31及び第4電荷濃度変化領域41が形成される。導電体C10と第1活性層A11との電位差により、第1電荷濃度変化領域11が形成され、第1活性層A11と第2活性層A12との電位差により、第2電荷濃度変化領域21及び第3電荷濃度変化領域31が形成され、第2活性層A12とナノアンテナN10との電位差により、第4電荷濃度変化領域41が形成される。
【0089】
本実施形態においては、4つの電荷濃度変化領域11、21、31、41の特性変化を光変調に利用するために、光変調特性の改善及び制御に有利である。図示されていないが、第1誘電体層D10と第2誘電体層D20との間に、3層あるいはそれ以上の活性層を使用することができ、それらの間に、中間誘電体層を適用することができる。
【0090】
図10は、他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
【0091】
図10を参照すれば、1層の活性層A15は、多層構造を有することができる。例えば、活性層A15は、下部層A15a及び上部層A15bを含む多層構造を有することができる。下部層A15aと上部層A15bは、互いに異なる物質を含むか、あるいは互いに異なるドーピング特性を有することができる。下部層A15a内に、第1電荷濃度変化領域15が形成され、上部層A15b内に、第2電荷濃度変化領域25が形成される。下部層A15aと上部層A15bとの物質が異なるか、あるいは互いに異なるドーピング特性を有する場合、第1電荷濃度変化領域15及び第2電荷濃度変化領域25の特性は、図1の第1電荷濃度変化領域10及び第2電荷濃度変化領域20とは異なって制御される。場合により、活性層A15は、3層、あるいはそれ以上の多層構造を有することもできる。活性層A15が多層構造を有することを除いた残り構成は、図1と同一であるか、あるいは類似している。図10の活性層A15は、図2図8及び図9の素子に適用することができる。また、図8の構造のうち少なくとも一部と、図9の構造のうち少なくとも一部とを1つの素子に組み合わせることもできる。
【0092】
図1図2及び図8ないし図10の実施形態において、活性層A10、A11、A12、A15、A20の厚みは、数百nm以下、例えば、約300nm以下でもある。活性層A10、A11、A12、A15、A20の厚みは、約50nm以下、約30nm以下または約10nm以下と薄い。例えば、図1において、活性層A10の厚みが薄ければ、第1電荷濃度変化領域10と第2電荷濃度変化領域20との間隔が短くなり、それは、光変調特性の改善及び制御に有利に作用することができる。第1誘電体層D10、第2誘電体層D20及び中間誘電体層D15の厚みは、例えば、数nmないし数百nmほどでもあるが、それに限定されるものではない。また、第1誘電体層D10、第2誘電体層D20及び中間誘電体層D15の厚みを互いに異なって作ることもできる。
【0093】
図1図2図8ないし図10などを参照して説明した光変調素子を「単位素子」とするとき、複数の単位素子がアレイ構造をなすことができる。その例が、図11ないし図13に図示されている。
【0094】
図11は、他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
【0095】
図11を参照すれば、基板SUB100上に、複数の導電体C10a、C10b、C10nが相互離隔して配置され、複数の導電体C10a、C10b、C10nを覆う第1誘電体層D100が具備されてもよい。第1誘電体層D100上に、活性層A100が具備され、活性層A100上に、第2誘電体層D200が具備されてもよい。第2誘電体層D200上に、複数のナノアンテナN10a、N10b、N10nが相互離隔し、複数の導電体C10a、C10b、C10nそれぞれに対向するように配置されてもよい。
【0096】
複数の導電体C10a、C10b、C10nそれぞれ、及び複数のナノアンテナN10a、N10b、N10nそれぞれに、独立して電気的信号を印加するように構成された「信号印加手段」が具備されてもよい。前記信号印加手段は、電圧印加手段でもある。複数の導電体C10a、C10b、C10nそれぞれに、独立して電圧VB1、VB2、VBnが印加され、それと独立して、複数のナノアンテナN10a、N10b、N10nそれぞれに、独立して電圧VT1、VT2、VTnが印加されもする。このとき、活性層A100は、接地されてもよい。
【0097】
複数の導電体C10a、C10b、C10nそれぞれに独立して印加される電圧VB1、VB2、VBnにより、活性層A100に、複数の第1電荷濃度変化領域10a、10b、10nが形成される。複数のナノアンテナN10a、N10b、N10nそれぞれに独立して印加される電圧VT1、VT2、VTnにより、活性層A100に、複数の第2電荷濃度変化領域20a、20b、20nが形成される。複数の第1電荷濃度変化領域10a、10b、10nは、第1誘電体層D100に隣接するように配置され、複数の第2電荷濃度変化領域20a、20b、20nは、第2誘電体層D200に隣接するように配置されてもよい。複数の第1電荷濃度変化領域10a、10b、10nそれぞれ、及び複数の第2電荷濃度変化領域20a、20b、20nそれぞれの電荷濃度は、独立して制御される。
【0098】
1つの導電体(例:C10a)、それに対応するナノアンテナ(例:N10a)、及びそれらの間に位置する活性層A100領域が、1つの単位素子、例えば、単位セル(unitcell)を構成すると言うことができ、光変調素子にはかような単位素子(セル)が複数配列されてもよい。複数の導電体C10a、C10b、C10nのうち少なくとも二つに、互いに異なる電圧が印加され、それと独立して、複数のナノアンテナN10a、N10b、N10nのうち少なくとも二つに、互いに異なる電圧が印加されもする。複数の導電体C10a、C10b、C10nのうちいずれか一つ、及びそれと対応するナノアンテナに印加される電圧は、互いに異なってもよい。複数の単位素子それぞれによって発生する光の位相変調を、独立して制御することができる。該複数の単位素子による光の位相変調を適切に制御することにより、それらから出射されるビームの方向をステアリングすることができる。例えば、第1方向に配列された複数の単位素子で発生する位相変調が、第1方向に沿ってπ/2ほどずつ順に低減するように制御すれば、複数の単位素子によって反射される光の方向が、特定方向に制御(ステアリング)される。それは、光学的位相アレイ(optical phased array)方式のビームステアリングであると言うことができる。位相アレイの位相変異規則を調節し、光のステアリング方向を多様に調節することができる。
【0099】
前述の説明では、反射光が一方向にステアリングされることを例示的に説明したが、領域ごとに光を異なる方向にステアリングし、所定のビーム整形(beam shaping)を可能にすることも可能である。例えば、光変調素子は、それぞれ複数のセルを有する複数の領域を含み、複数の領域ごとに、他の方向にビームことをステアリングすることにより、所望形態へのビーム整形(beam shaping)が可能である。
【0100】
本実施形態によれば、複数の単位素子(セル)から発生する、言い換えれば、複数のナノアンテナN10a、N10b、N10nで発生する光の位相変調が360゜まで差があってもよい。また、位相が変化しても、複数の単位素子(セル)による反射率(%)は、概して一定に高く維持される。従って、光変調効率が改善され、ノイズ問題及び歪曲問題を抑制/防止することができる。
【0101】
図12は、他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
【0102】
図12を参照すれば、複数の導電体C10a、C10b、C10nと、第1誘電体層D100との間に、複数の導電体C10a、C10b、C10nにそれぞれ接触した複数の第2活性層A20a、A20b、A20nがさらに具備されてもよい。言い換えれば、複数の導電体C10a、C10b、C10nにそれぞれ接触した複数の第2活性層A20a、A20b、A20nが具備され、第1誘電体層D100は、複数の導電体C10a、C10b、C10n、及び複数の第2活性層A20a、A20b、A20nを覆うように具備されてもよい。複数の第2活性層A20a、A20b、A20nそれぞれに、第3電荷濃度変化領域30a、30b、30nが形成される。第2活性層A20a、A20b、A20n及び第3電荷濃度変化領域30a、30b、30nは、図8を参照して説明した第2活性層A20及び第3電荷濃度変化領域30にそれぞれ対応する。
【0103】
図13は、他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
【0104】
図13を参照すれば、第1誘電体層D100と第2誘電体層D200との間に、少なくとも2層の活性層が具備されてもよい。ここでは、2層の活性層、すなわち、第1活性層A110及び第2活性層A120が具備され、それら間に中間誘電体層D150がさらに具備された場合が図示されている。
【0105】
第1活性層A110に第1活性層電圧VA1が印加され、第2活性層A120に第2活性層電圧VA2が印加されもする。場合により、第1活性層A110及び第2活性層A120のうちいずれか1層は、接地されてもよい。複数の導電体C10a、C10b、C10nそれぞれに、独立して電圧VB1、VB2、VBnが印加され、それと独立して、複数のナノアンテナN10a、N10b、N10nそれぞれに、独立して電圧VT1、VT2、VTnが印加されもする。第1活性層A110に、複数の第1電荷濃度変化領域11a、11b、11n、及び複数の第2電荷濃度変化領域21a、21b、21nが形成される。第2活性層A120に、複数の第3電荷濃度変化領域31a、31b、31n、及び複数の第4電荷濃度変化領域41a、41b、41nが形成される。図13の単位構造は、図9の構造に対応するか、あるいはそれと類似している。
【0106】
本願の実施形態による光変調素子は、一次元的に配列されるか、あるいは二次元的に配列された複数の単位素子を含んでもよい。複数の単位素子が一次元的に配列された場合が、図14に図示され、二次元的に配列された場合が、図15に例示的に図示されている。
【0107】
図14を参照すれば、複数の導電体(導電要素)120が、第1方向、例えば、Y軸方向に互いに離隔して一次元的に配列され、複数の導電体120に対向する複数のナノアンテナ200が具備されてもよい。複数の導電体120と、複数のナノアンテナ200との間に、それらと離隔して配置された活性層160が具備されてもよい。複数の導電体120と活性層160との間に、第1誘電体層140が具備され、活性層160と複数のナノアンテナ200との間に、第2誘電体層180が具備されてもよい。
【0108】
複数の導電体120それぞれ、及び複数のナノアンテナ200それぞれに、独立して電圧を印加するための電圧印加手段が具備されてもよい。例えば、該電圧印加手段は、それぞれの導電体120と活性層160とに電圧を印加するための第1電圧印加手段V、及びそれぞれのナノアンテナ200と活性層160とに電圧を印加するための第2電圧印加手段Vを含んでもよい。活性層160は、接地されてもよい。
【0109】
本実施形態による光変調素子は、図1の単位素子複数個が一次元的にアレイされた場合であると言うことができる。その場合、一次元的な方向に、ビームをステアリングする装置を具現することができる。言い換えれば、複数の単位素子で発生する光変調(位相変調)特性を異なって制御することにより、それらの組み合わせによるビームのステアリング方向を一次元的に制御することができる。
【0110】
図15を参照すれば、複数の導電体(導電要素)120が二次元的に、例えば、X軸方向及びY軸方向に互いに離隔して配列されてもよい。複数の導電体120を覆う第1誘電体層140が具備され、第1誘電体層140上に、活性層160が具備され、活性層160上に、第2誘電体層180が具備されてもよい。第2誘電体層180上に、複数のナノアンテナ200が具備されてもよい。複数のナノアンテナ200は、複数の導電体120に対向するように配置されてもよい。
【0111】
図示されていないが、複数の導電体120それぞれに、独立して電圧を印加するための電圧印加手段が具備されてもよい。また、複数のナノアンテナ200それぞれに、独立して電圧を印加するための電圧印加手段が具備されてもよい。このとき、活性層160は、接地されてもよい。
【0112】
本実施形態による光変調素子は、図1の単位素子複数個が二次元的にアレイされた場合であると言うことができる。その場合、二次元的な方向に、ビームをステアリングする装置を具現することができる。言い換えれば、複数の単位素子で発生する光変調(位相変調)特性を、X軸方向及びY軸方向に異なって制御することにより、それらの組み合わせによるビームのステアリング方向を二次元的に制御することができる。
【0113】
図15において、複数のナノアンテナ200は、所定方向、例えば、X軸方向に延長された(連続された)構造を有することができる。また、複数の導電体120も、所定方向、例えば、X軸方向に延長された(連続された)構造を有することができる。その例が図16に図示されている。
【0114】
図16を参照すれば、複数の導電体120Lが互いに離隔して配列されてもよい。複数の導電体120Lは、X軸方向に延長された構造を有することができ、それらは、Y軸方向に相互離隔される。複数の導電体120Lを覆う第1誘電体層140が具備され、第1誘電体層140上に活性層160及び第2誘電体層180が順に具備され、第2誘電体層180上に、複数のナノアンテナ200Lが具備されてもよい。複数のナノアンテナ200Lは、複数の導電体120Lと類似し、X軸方向に延長された構造を有することができ、Y軸方向に相互離隔される。
【0115】
以上の実施形態においては、1つの導電体(導電要素)に、1つのナノアンテナが対応して具備される場合について主に説明したが、他の実施形態によれば、1つの導電体(導電要素)に、複数のナノアンテナが対応して具備されてもよい。その一例が、図17に図示されている。
【0116】
図17を参照すれば、基板100上に、複数の導電体(導電要素)125が相互離隔して具備されてもよい。複数の導電体125を覆う第1誘電体層140が具備され、第1誘電体層140上に、活性層160及び第2誘電体層180が順に具備されてもよい。第2誘電体層180上に、複数のナノアンテナ200が具備されてもよい。1つの導電体125に対して、2以上のナノアンテナ200が対応して配置されてもよい。従って、それぞれの導電体125は、2以上のナノアンテナ200をカバーするサイズ(幅)を有することができる。
【0117】
複数の導電体125それぞれ、及び複数のナノアンテナ200それぞれに、独立して電圧を印加するための電圧印加手段(図示せず)が具備されてもよい。活性層A160は、接地されてもよい。または、活性層A160に、所定電圧を印加するための他の電圧印加手段(図示せず)がさらに具備されてもよい。活性層160の第1層領域(下層部)に、複数の第1電荷濃度変化領域16が形成され、活性層160の第2層領域(上層部)に、複数の第2電荷濃度変化領域26が形成される。
【0118】
1つの導電体125、それに対応する2以上のナノアンテナ200、及びそれら間の領域が1つの単位領域R1を構成すると言うことができる。それぞれの導電体125において、ナノアンテナ200に対応する領域が、有効な電極領域として作用することができる。従って、有効な電極領域に対応する部分に、第1電荷濃度変化領域16が形成される。1つの単位領域R1において、導電体125に電圧が印加され、2以上のナノアンテナ200に、互いに異なる電圧が印加されもする。また、2以上のナノアンテナ200に印加される電圧は、導電体125に印加される電圧と異なってもよい。
【0119】
図18は、他の実施形態による光変調素子を示す断面図である。
【0120】
図18を参照すれば、回路基板CS100が設けられ、回路基板CS100上に、一実施形態による光変調素子構造、例えば、図11の素子構造が具備されてもよい。回路基板CS100内に、複数の導電体C10a、C10b、C10nそれぞれ、及び複数のナノアンテナN10a、N10b、N10nそれぞれに電気的信号を印加するための信号印加手段が形成される。該信号印加手段は、電圧印加手段でもある。具体的な例として、回路基板CS100は、複数のセル領域に区画され、それぞれのセル領域は、1T(transistor)-1C(capacitor)構成、2T-1C構成または2T-2C構成など多様な構成を有することができる。回路基板CS100の回路は、複数の導電体C10a、C10b、C10nそれぞれ、及び複数のナノアンテナN10a、N10b、N10nそれぞれに電気的に連結される。かような電気的連結は、多様な半導体素子で使用されるビアホールを利用した連結配線や、ボンディングワイヤなどによってなされる。活性層A100は、接地されもするが、活性層A100に所定電圧を印加するための別途の電圧印加手段が、回路基板CS100内にさらにも具備される。一方、場合により、基板SUB100は、排除されてもよい。
【0121】
以上の実施形態においては、ナノアンテナを例示的に単純に図示したが、ナノアンテナの構造は、多様に変化する。
【0122】
図19Aないし図19Dは、一実施形態による光変調素子に適用されるナノアンテナの多様な構造/形態を示す斜視図である。
【0123】
図19Aないし図19Dを参照すれば、ナノアンテナは、円形ディスク(図19A)、楕円形ディスク(図19B)、十字型(図19C)、星型(asterisk type)(図19D)など多様な構造/形状を有することができる。十字型(図19C)は、2つのナノロッド(nanorod)が互いに垂直方向に交差する形態でもあり、星型(図19D)は、3つのナノロッドが交差する星(*)状でもある。それ以外にも、図示されていないが、ナノアンテナは、円錐(cone)・三角錐(triangular pyramid)・球(sphere)・半球(hemisphere)・米粒(rice grain)・棒(rod)・フィッシュボーン(fish-bone)構造など多様な変形構造を有することができる。また、該ナノアンテナは、複数の層が重なった多層構造を有することができ、コア部と、少なくとも1つの殻部とを含むコア・シェル(core-shell)構造を有することもできる。さらに、2以上の互いに異なる構造/形態を有するナノアンテナが1つの単位をなして周期的に配列されてもよい。
【0124】
該ナノアンテナの構造/形態及びその配列方式により、共振波長、共振波長幅、共振偏光特性、共振角度、反射/吸収/透過特性などが異なりもする。従って、該ナノアンテナの構造/形態及び配列方式を制御することにより、目的に合う特性を有する光変調素子を製造することができる。
【0125】
一実施形態による光変調素子を利用すれば、ビームを所定方向に操向する素子を具現することができる。
【0126】
図20は、一実施形態による光変調素子を含むビームステアリング素子(beam steering device)について説明するための概念図である。
【0127】
図20を参照すれば、ビームステアリング素子1000Aを利用し、ビームを一次元的方向に操向することができる。例えば、所定被写体OBJに向けてビームを第1方向DD1に沿って操向することができる。ビームステアリング素子1000Aは、本願の実施形態による複数の光変調素子の一次元的アレイを含んでもよい。
【0128】
図21は、他の実施形態による光変調素子を含むビームステアリング素子について説明するための概念図である。
【0129】
図21を参照すれば、ビームステアリング素子1000Bを利用し、ビームを二次元的方向に操向することができる。例えば、所定被写体OBJに向けて、ビームを第1方向DD1、及びそれと垂直した第2方向DD2に沿って操向することができる。ビームステアリング素子1000Bは、本願の実施形態による複数の光変調素子の二次元的アレイを含んでもよい。
【0130】
図22は、一実施形態による光変調素子を適用したビームステアリング素子を含む光学装置の全体的なシステムについて説明するためのブロック図である。
【0131】
図22を参照すれば、光学装置A1は、ビームステアリング素子1000を含んでもよい。ビームステアリング素子1000は、図1図2図8ないし図19などを参照して説明した光変調素子を含んでもよい。光学装置A1は、ビームステアリング素子1000内に、光源部を含むか、あるいはビームステアリング素子1000と別途に具備された光源部を含んでもよい。光学装置A1は、ビームステアリング素子1000によって操向された光が、被写体(図示せず)によって反射された光を検出するための検出部2000を含んでもよい。検出部2000は、複数の光検出要素を含み、それ以外に、他の光学部材をさらに含んでもよい。また、光学装置A1は、ビームステアリング素子1000及び検出部2000のうち少なくとも一つに連結された回路部3000をさらに含んでもよい。回路部3000は、データを獲得して演算する演算部を含み、駆動部及び制御部などをさらに含んでもよい。また、回路部3000は、電源部及びメモリなどをさらに含んでもよい。
【0132】
図22においては、光学装置A1が1つの装置内に、ビームステアリング素子1000及び検出部2000を含む場合を図示したが、ビームステアリング素子1000及び検出部2000は、1つの装置として具備されず、別途の装置に分離して具備されてもよい。また、回路部3000は、ビームステアリング素子1000や検出部2000に有線で連結されず、無線通信でも連結される。それ以外にも、図22の構成は、多様に変化する。
【0133】
以上で説明した実施形態によるビームステアリング素子は、多様な光学装置に適用される。一例として、ビームステアリング素子は、ライダー(LiDAR)装置に適用される。ライダー(LiDAR)装置は、phase-shift方式またはTOF(time-of-flight)方式の装置でもある。かようなライダー(LiDAR)装置は、自律走行自動車、ドローン(drone)などの飛行物体、モバイル(mobile)機器、小型歩行手段(例えば、自転車、オートバイ、乳母車、ボードなど)、ロボット類、人/動物の補助手段(例えば、杖、ヘルメット、装身具、衣類、時計、かばんなど)、IoT(internet of things)装置/システム、保安装置/システムなどに適用される。
【0134】
図23及び図24は、一実施形態による光変調素子を含むライダー(LiDAR)装置を車両に適用した場合を示す概念図である。図23は、サイドで見た図面であり、図24は、上で見た図面である。
【0135】
図23を参照すれば、車両50にライダー(LiDAR)装置51を適用することができ、それを利用して、被写体60に係わる情報を獲得することができる。車両50は、自律走行機能を有する自動車でもある。ライダー(LiDAR)装置51を利用し、車両50が進行する方向にある物体や人を含んだ被写体60を探知することができる。また、送信信号と検出信号との時間差などの情報を利用して、被写体60までの距離を測定することができる。また、図24に図示されているように、スキャン範囲内にある近い被写体61と、遠くある被写体62とについての情報を獲得することができる。
【0136】
本願の多様な実施形態による光変調素子は、ライダー(LiDAR)以外に、多様な光学装置に適用される。例えば、多様な実施形態による光変調素子を利用すれば、スキャニングを介して、空間及び被写体の三次元的な情報を獲得することができるために、三次元イメージ獲得装置や三次元カメラなどに適用される。また、該光変調素子は、ホログラフィック(holographic)ディスプレイ装置及び構造光(structured light)発生装置にも適用される。また、該光変調素子は、多様なビームスキャン装置、ホログラム(hologram)生成装置、光結合装置、可変焦点レンズなど多様な光学成分/装置にも適用される。また、光変調素子は、「メタ表面」または「メタ構造」が利用される多様な分野にも適用される。それ以外にも、本願の実施形態による光変調素子、及びそれを含む光学装置は、多様な光学及び電子機器分野において、さまざまな用途に適用される。
【0137】
前述の説明で、多くの事項が具体的に記載されているが、それらは、具体的な実施の例示として解釈されなければならない。例えば、当該技術分野で当業者であるならば、図1図2及び図8ないし図19を参照して説明した光変調素子の構成は、多様に変形されるということを理解することができるであろう。具体的な例として、図11などで活性層は、複数の活性層要素にパターニングして使用することができ、それぞれの活性層要素に、独立して電気的信号(電圧)を印加することができるということを知ることができるであろう。また、一実施形態による光変調素子は、反射型素子だけではなく、半透過反射型素子または透過型素子にも適用されるということが分かるであろう。また、一実施形態による光変調素子の適用分野は、前述の説明内容に限定されるものではなく、多様に変化されるということを知ることができるであろう。従って、権利範囲は、説明された実施形態によって決められるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想によって決められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の、光変調素子及びその動作方法は、例えば、光学機器関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0139】
A10、A11、A12、A20 活性層
C10、C10a~C10n 導電体
CS100 回路基板
D10 第1誘電体層
D15 中間誘電体層
D20 第2誘電体層
N10、N10a~N10n ナノアンテナ
SUB100 基板
、V、V1~V3、V10~V40 電圧印加手段
10、11 第1電荷濃度変化領域
20、21 第2電荷濃度変化領域
30、31 第3電荷濃度変化領域
41 第4電荷濃度変化領域
100 基板
120、120L 導電体
140 第1誘電体層
160 活性層
180 第2誘電体層
200、200L ナノアンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図20
図21
図22
図23
図24