(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】酸化還元電位決定装置及びそれを備える脱硫装置、並びに酸化還元電位決定方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/50 20060101AFI20221025BHJP
B01D 53/64 20060101ALI20221025BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20221025BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B01D53/50 245
B01D53/64 100
B01D53/78 ZAB
B01D53/14 200
(21)【出願番号】P 2018137414
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平山 航一郎
(72)【発明者】
【氏名】牛久 哲
(72)【発明者】
【氏名】田中 義人
(72)【発明者】
【氏名】香川 晴治
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/014200(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/158781(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/041951(WO,A1)
【文献】特開2007-185558(JP,A)
【文献】特開2016-120438(JP,A)
【文献】特開2013-006144(JP,A)
【文献】国際公開第2015/013636(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34- 53/73
B01D 53/74- 53/85
B01D 53/92
B01D 53/96
B01D 53/14- 53/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収液との接触により硫黄分及び水銀を含む燃焼排ガスの脱硫を行うための空間を内部に有する脱硫装置において、前記吸収液の運転酸化還元電位を決定するための酸化還元電位決定装置であって、
前記酸化還元電位決定装置は、
前記吸収液における液相水銀割合又は固相水銀割合のうちの一方の水銀割合の目標値と、
前記水銀割合と前記吸収液の酸化還元電位との相関であって予め定められた相関と、
に基づいて、前記酸化還元電位の運転値を決定
し、前記水銀割合を任意に変更するための運転酸化還元電位決定部を備えることを特徴とする、酸化還元電位決定装置。
【請求項2】
前記酸化還元電位決定装置は、前記脱硫装置への流入水銀濃度と、液相水銀濃度又は固相水銀濃度のうちの一方の水銀濃度の目標値とに基づいて、前記水銀割合の前記目標値を決定するための目標水銀割合決定部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の酸化還元電位決定装置。
【請求項3】
前記目標水銀割合決定部は、さらに、前記脱硫装置の運転条件に基づいて、前記水銀割合の前記目標値を決定するように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の酸化還元電位決定装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の酸化還元電位決定装置と、
前記吸収液に空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方を供給するための供給装置と、
を備え、
前記供給装置は、前記酸化還元電位決定装置により決定された前記運転酸化還元電位になるように、前記空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方を供給するように構成されたことを特徴とする、脱硫装置。
【請求項5】
前記供給装置は、前記脱硫装置への流入水銀濃度が予め定められた閾値を超えたときに、前記空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方を供給するように構成されたことを特徴とする、請求項4に記載の脱硫装置。
【請求項6】
吸収液との接触により硫黄分及び水銀を含む燃焼排ガスの脱硫を行うための空間を内部に有する脱硫装置において、前記吸収液の運転酸化還元電位を決定するための酸化還元電位決定方法であって、
前記酸化還元電位決定方法は、
前記吸収液における液相水銀割合又は固相水銀割合のうちの一方の水銀割合の目標値と、
前記水銀割合と前記吸収液の酸化還元電位との相関であって予め定められた相関と、
に基づいて、前記運転酸化還元電位の運転値を決定
し、前記水銀割合を任意に変更する運転酸化還元電位決定ステップを含むことを特徴とする、酸化還元電位決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化還元電位決定装置及びそれを備える脱硫装置、並びに酸化還元電位決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力プラントから大気への水銀排出抑制を目的として、種々の水銀除去プロセスが開発されている。例えば、ボイラ、脱硝装置、電気集塵機、脱硫装置等を有する排煙処理システムにおいて、脱硝装置で水銀を易溶性の二価水銀(Hg2+)に酸化し、湿式脱硫装置の吸収液で捕集するプロセスが知られている。
【0003】
図8は、従来の脱硫装置110を備える排ガス処理システム100において、水銀除去の概念を説明するための図である。
図8は、特許文献1に記載の技術を説明するための図である(特に特許文献1の
図1参照)。排ガス処理システム100では、ボイラ111での燃料の燃焼により生じた燃焼排ガスの処理が行われる。ここでいう燃料は例えば重油であり、硫黄分、窒素分、水銀等を含む。
【0004】
ボイラ111の内部空間111aで燃料が燃焼されると、燃焼ガスが生成する。このとき、燃料中の硫黄分は硫黄酸化物として、燃料中の窒素分は窒素酸化物として、水銀は揮発により気体の水銀として、燃焼ガスに含まれる。また、ボイラ111では、燃焼ガスの生成とともに、燃焼灰が生成する。
【0005】
発生した燃焼ガスは、燃焼排ガスとして、還元型の脱硝装置112に供給される。脱硝装置112では、燃焼排ガス中の窒素分(窒素酸化物)が除去される。また、脱硝装置112では、燃焼排ガスに含まれる金属水銀(Hg0)が酸化されて、二価水銀(Hg2+)が生成する。従って、後段の集塵機113等に供給される燃焼排ガスには、二価水銀が含まれる。次いで、集塵機113(電気集塵機)において、燃焼排ガスに含まれる燃焼灰が除去される。ここで、燃焼灰とともに、燃焼排ガス中の水銀の一部が、集塵機113において気体状態で除去される。そして、窒素分、燃焼灰及び水銀の一部が除去された燃焼排ガスは、脱硫装置110に供給される。
【0006】
脱硫装置110は、例えば湿式の石灰石膏法に基づく脱硫装置であり、燃焼排ガスを吸収液と接触させることで、燃焼排ガス中の硫黄分を除去するためのものである。吸収液が例えば石灰水(炭酸カルシウムを含むスラリー)である場合には、燃焼排ガスを吸収液に接触させることで、以下の反応式(1)及び(2)が生じる。
【0007】
反応式(1):
SO2+CaCO3+1/2H2O→CaSO3・1/2H2O+CO2
反応式(2):
CaSO3・1/2H2O+3/2H2O+1/2O2→CaSO4・2H2O
【0008】
反応式(1)及び(2)に示すように、燃焼排ガス中の二酸化硫黄(硫黄酸化物)と吸収液中の炭酸カルシウムとが反応することで、亜硫酸カルシウムを経て、硫酸カルシウム(石膏)が生成する。硫酸カルシウムは水に難溶であるため、このようにすることで、燃焼排ガス中の硫黄分を固相として吸収液から分離できる。
【0009】
脱硫装置110は、燃焼排ガスを取り込むための内部空間3aを有する筐体3を備える。筐体3には、内部空間3aに燃焼排ガスを取り込むための流入口1と、内部空間3aから外部に浄化ガス(硫黄分を除去後の燃焼排ガス)を排出するための流出口2とを備える。また、脱硫装置110は、硫黄分を吸収するための吸収液を内部空間3aに散水するための散水装置4を備える。散水装置4は、高さ方向で流入口1と流出口2との間に水平方向に延在して配置される。
【0010】
散水装置4は、上方向に開口する孔(図示しない)を備えており、当該孔を通じ、吸収液が上方向に散水される。そのため、流入口1から流出口2に向かう上方向の燃焼排ガスと、同じく上方向に散水される吸収液とが、内部空間3aにおいて接触する。これにより、燃焼排ガス中の硫黄分が吸収液に吸収除去され、硫黄分が除去された後の燃焼排ガス、即ち、浄化ガスが流出口2から排出される。排出された浄化ガスは、煙突114を通じて大気に排出される。
【0011】
また、脱硫装置110は、筐体3の底部に滞留した吸収液を散水装置4に供給することで吸収液を循環させるための循環系統11と、循環系統11に吸収液を流すためのポンプ6とを備える。そして、脱硫装置110では、循環系統11を通じて筐体3の底部に滞留した循環液の一部が抜き出され、抜き出された吸収液は散水装置4によって内部空間3aに散水される。
【0012】
循環系統11には、筐体3の底部に滞留した吸収液の一部を循環系統11から抜き出すための抜出し系統12が接続される。抜出し系統12には、固液分離器7が接続される。固液分離器7では、固相として石膏が分離される。一方で、固液分離器7で残った液相としての液体には、石膏に付着しなかった水銀(二価水銀)が残存し得るため、液体も水銀(二価水銀)を含み得る。そのため、液体は、排水処理装置115において、例えばキレート剤の使用により、水銀除去処理が行われる。そして、水銀除去後の液体は外部に排水される。
【0013】
排ガス処理システム100では、筐体3の底部に滞留した吸収液の酸化還元電位(Oxidation-reduction Potential;以下ORPという)が測定される。ORPの測定は、筐体3の底部の吸収液中に配置されるとともに、ORP計109に接続されたセンサ部109aを用いて行われる。筐体3の底部に滞留した吸収液のORPが所定範囲になるように、吸収液に対して酸化剤が供給されることで、二価水銀の還元が抑制される。これにより、吸収液から浄化ガスへの水銀の再飛散抑制が図られている。
【0014】
これらのように、水銀は、脱硫装置110前段での集塵機113で燃焼灰とともに燃焼排ガスから分離されるほか、脱硫装置110においても燃焼排ガスから分離される。即ち、脱硫装置110に湿式石灰石膏法を用いる場合、吸収液に吸収された水銀は、主に次の3つの経路で系外に排出される。
【0015】
1つ目の経路は固相(石膏)であり、水銀は脱硫反応で生成した固相中で安定化された形で排出される。2つ目は液相(液体)であり、水銀は液相に溶解した状態で排出される。3つ目は、上記の特許文献1に記載の技術では抑制が図られているが、水銀は浄化ガスと混ざった状態で気相中へ排出される。これらのうち、特に3つ目の経路として、気相への排出は各国で厳しい規制が施行又は適用が検討されており、事実上水銀の排出経路は液相及び固相の2つしかないといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ところで、上記の
図8において、脱硫装置110において吸収液の液相部分に存在する吸収液体積当たりの水銀量を、「液相水銀濃度」と呼称する。また、吸収液の固相部分、具体的には吸収液のろ過後の残渣(主に石膏)に含まれる、吸収液体積当たりの水銀量を、「固相水銀濃度」と呼称する。また、吸収液体積当たりの水銀量を「全水銀濃度」と呼称する。全水銀濃度は、液相水銀濃度と固相水銀濃度との和に等しい。そして、液相水銀濃度を全水銀濃度で除することで、「液相水銀割合」が算出される。同様に、固相水銀濃度を全水銀濃度で除することで、「固相水銀割合」が算出される。
これらの用語の意味は、以下に記載する脱硫装置においても同様とする。
【0018】
一般的な脱硫装置では、液相水銀割合及び固相水銀割合は、脱硫装置を含むプラントの運転条件に依存して自ずと定まる。そのため、プラントの運転条件次第では、管理者等が所望する経路での水銀排出を行えない可能性がある。具体的に起こりうる問題として、液相水銀割合が過大となる場合は、排水処理装置が設置されていても水銀を十分に除去できず、排水水銀濃度の規制値に抵触する可能性がある。一方、固相水銀割合が過大となる場合は、水銀濃度が石膏取引における基準値を超え、石膏の再利用が難しくなる可能性がある。
【0019】
従って、管理者等の要求に応じて、液相水銀割合及び固相水銀割合を任意に変更できることが好ましい。しかし、特許文献1には、吸収液から浄化ガスへの水銀の再飛散抑制が記載されているにすぎず、液相水銀割合及び固相水銀割合を任意に変更できる方法は記載されていない。
【0020】
本発明の少なくとも一実施形態は、液相水銀割合及び固相水銀割合を任意に変更可能な酸化還元電位決定装置及びそれを備える脱硫装置、並びに酸化還元電位決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る酸化還元電位決定装置は、
吸収液との接触により硫黄分及び水銀を含む燃焼排ガスの脱硫を行うための空間を内部に有する脱硫装置において、前記吸収液の運転酸化還元電位を決定するための酸化還元電位決定装置であって、
前記酸化還元電位決定装置は、
前記吸収液における液相水銀割合又は固相水銀割合のうちの一方の水銀割合の目標値と、
前記水銀割合と前記吸収液の酸化還元電位との相関であって予め定められた相関と、
に基づいて、前記酸化還元電位の運転値を決定し、前記水銀割合を任意に変更するための運転酸化還元電位決定部を備えることを特徴とする。
【0022】
上記(1)の構成によれば、吸収液の酸化還元電位制御により、上記水銀割合を任意に変更できる。これにより、上記水銀濃度を管理者等が要求する目標値に制御できる。
【0023】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記酸化還元電位決定装置は、前記脱硫装置への流入水銀濃度と、液相水銀濃度又は固相水銀濃度のうちの一方の水銀濃度の目標値とに基づいて、前記水銀割合の前記目標値を決定するための目標水銀割合決定部を備える
ことを特徴とする。
【0024】
上記(2)の構成によれば、液相水銀濃度又は固相水銀濃度のうちの一方の水銀濃度を、管理者等が要求する目標値に制御できる。
【0025】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記目標水銀割合決定部は、さらに、前記脱硫装置の運転条件に基づいて、前記水銀割合の前記目標値を決定するように構成される
ことを特徴とする。
【0026】
上記(3)の構成によれば、脱硫装置の運転条件の変化により、運転酸化還元電位を変更していないにも関わらず水銀割合が変動した場合であっても、上記水銀濃度を目標値に制御できる。
【0027】
(4)本発明の少なくとも一実施形態に係る脱硫装置は、上記(1)~(3)の何れか1に記載の酸化還元電位決定装置と、
前記吸収液に空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方を供給するための供給装置と、を備え、
前記供給装置は、前記酸化還元電位決定装置により決定された前記運転酸化還元電位になるように、前記空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方を供給するように構成された
ことを特徴とする。
【0028】
上記(4)の構成によれば、空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方の供給量制御により、吸収液のORPを制御できる。これにより、液相水銀割合又は固相水銀割合のうちの一方の水銀割合を、管理者等が要求する目標値に制御できる。
【0029】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、
前記供給装置は、前記脱硫装置への流入水銀濃度が予め定められた閾値を超えたときに、前記空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方を供給するように構成された
ことを特徴とする。
【0030】
上記(5)の構成によれば、流入水銀濃度が少ないときには制御を行わないため、酸化還元電位決定装置の演算負荷を低減できる。
【0031】
(6)本発明の少なくとも一実施形態に係る酸化還元電位決定方法は、
吸収液との接触により硫黄分及び水銀を含む燃焼排ガスの脱硫を行うための空間を内部に有する脱硫装置において、前記吸収液の運転酸化還元電位を決定するための酸化還元電位決定方法であって、
前記酸化還元電位決定方法は、
前記吸収液における液相水銀割合又は固相水銀割合のうちの一方の水銀割合の目標値と、
前記水銀割合と前記吸収液の酸化還元電位との相関であって予め定められた相関と、
に基づいて、前記運転酸化還元電位の運転値を決定し、前記水銀割合を任意に変更する運転酸化還元電位決定ステップを含むことを特徴とする。
【0032】
上記(6)の方法によれば、吸収液の酸化還元電位制御により、上記水銀割合を任意に変更できる、これにより、上記水銀濃度を管理者等が要求する目標値に制御できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、液相水銀割合及び固相水銀割合を任意に変更可能な酸化還元電位決定装置及びそれを備える脱硫装置、並びに酸化還元電位決定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態に係る脱硫装置を示す系統図である。
【
図2】水銀に関する用語の定義を説明するための図である。
【
図5】吸収液のORPと液相水銀割合との相関である。
【
図6】吸収液のORPに対する液相水銀割合を示すグラフであり、本発明者らにより得られた実験結果をプロットして得られたグラフである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る酸化還元電位決定方法を示すフローチャートである。
【
図8】従来の脱硫装置を備える排ガス処理システムにおいて、水銀除去の概念を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、以下に実施形態として記載されている内容又は図面に記載されている内容は、あくまでも例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、任意に変更して実施することができる。また、各実施形態は、2つ以上を任意に組み合わせて実施することができる。さらに、各実施形態において、共通する部材については同じ符号を付すものとし、説明の簡略化のために重複する説明は省略する。
【0036】
また、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態に係る脱硫装置10を示す系統図である。脱硫装置10は、例えば上記の
図8に示した脱硫装置110に代えて適用可能なものである。脱硫装置10は、吸収液との接触により硫黄分及び水銀を含む燃焼排ガスの脱硫を行うための空間(内部空間3a)を内部に有するものである。ここでいう硫黄分は、一酸化硫黄、二酸化硫黄等の硫黄酸化物を含む。また、水銀は、燃焼排ガスにおいて気体の水銀として含まれる。
【0038】
図2は、水銀に関する用語の定義を説明するための図である。全水銀は、液相水銀(Hg
2+(液体l))と、固相水銀(HgX(固体s))とで構成される。液相水銀は、例えば、塩化水銀、水酸化水銀を含む。一方で、固相水銀は、例えば式HgX(Xは陰イオンを形成する1種以上の元素)で表される難溶性化合物を含む。固相水銀は、通常は、石膏に付着することで、吸収液中に存在する。
【0039】
詳細は後記するが、吸収液には、硫黄分とともに水銀(二価水銀(Hg2+))が吸収される。吸収された水銀は、例えば陰イオンとともに上記の難溶性化合物を形成して沈殿する。そして、沈殿した難溶性化合物は石膏に付着し、固相水銀として吸収液中に存在する。一方で、吸収液に吸収された後、二価水銀のまま液中に残存する水銀を液相水銀という。また、液相水銀には、いったん生成した固相水銀が溶解することで液中に生成した二価水銀も含まれる。
【0040】
なお、液相水銀と固相水銀とは、固液分離器7によって吸収液を固液分離することで、分離することができる。このとき、固相水銀は、分離された石膏に含まれる。さらに、液相水銀及び固相水銀の濃度は、固液分離器7により分離された液相(溶液)及び固相(石膏)のそれぞれについて、例えば誘導結合プラズマ質量分析計等を使用して測定できる。
【0041】
図1に戻って、脱硫装置10は例えば石灰石膏法(湿式)による脱硫を行うものであり、吸収液は例えば石灰水(炭酸カルシウムスラリー)である。脱硫装置10は、
図1の液柱塔方式のほかに、例えばスプレー方式、グリッド方式等の方式を採用できる。
【0042】
脱硫装置10は、燃焼排ガスの流入口1と、硫黄分及び水銀が除去された後の浄化ガスの流出口2と、内部で燃焼排ガスと吸収液とを接触させる内部空間3aを有する筐体3とを備える。また、脱硫装置10は、筐体3の内部に吸収液を散水するための散水装置4(例えば散水ノズル。多孔板等のトレイでもよい)と、吸収液中に空気を散気するための散気管5とを備える。散気管5を通じた吸収液への空気の供給は、空気供給系統15を通じて行われる。
【0043】
吸収液への空気供給量の制御は、空気供給系統15に備えられたポンプ21(供給装置)の回転速度制御により行われる。なお、空気供給量制御は、空気供給系統15に開度調整バブルを備えたうえで当該バルブの開度制御、ポンプ6の駆動台数制御,空気供給系統15に大気解放された分岐ラインを備えたうえで分岐ライン上に設けたバルブの開度調整等によって行うこともできる。
【0044】
なお、空気に代えて、又は空気とともに、任意の酸化剤を使用してもよい。この場合、酸化剤の状態(気体、液体、又は固体)に応じて、吸収液に散気又は添加されることができる。
【0045】
吸収液に供給される酸化剤は、上記の空気とともに、又は上記の空気に代えて、次亜塩素酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素等の任意の酸化剤であってもよい。さらには、吸収液には、吸収液の酸化還元電位の制御(後記する)のために、必要に応じて、上記の酸化剤とともに、又は、酸化剤に代えて、任意の還元剤(酸化還元剤の一形態)が供給されてもよい。還元剤としては、例えばチオ硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム等を使用することができる。従って、ポンプ21(供給装置)は、吸収液に空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方を供給するためのものである。
【0046】
また、脱硫装置10は、筐体3の底部に滞留した吸収液を散水装置4から散水することで吸収液を循環させるための循環系統11と、循環系統11に吸収液を循環させるためのポンプ6とを備える。循環系統11には抜出し系統12が接続され、抜き出し系統12には固液分離器7が接続される。そして、循環系統11を流れる吸収液の一部は、抜き出し系統12を通流し、固液分離器7に供給される。固液分離器7は、例えばベルトフィルタであり、燃焼排ガスとの接触により生じた吸収液中の固相が固液分離器7において分離される。分離された固相は、石膏として石膏系統13を通じて外部に排出される。
【0047】
固液分離器7において固相が分離されて残存する液相は、再び抜き出し系統12を流れ、再び筐体3に戻される。このとき、液相の一部は、排水系統14を通じて外部に排水される。
【0048】
抜出し系統12には、吸収液のORPを測定するためのORP計8と、吸収液のpHを測定するためのpH計9とが備えられる。なお、測定されるORP及びpHは、吸収液の液相のものであるが、吸収液のORP及びpHは固相の有無によらず同じであるため、本発明の一実施形態では、液相のORP及びpHが吸収液のORP及びpHとして使用される。測定された吸収液のORP及びpHは、演算制御装置50に入力される。
【0049】
なお、ここで測定された吸収液は、筐体3底部の吸収液貯留部、循環系統11及び散水装置4を通じて、筐体3の内部空間3aに散水される。そのため、ここで測定されたORP及びpHが、燃焼排ガスに接触させる吸収液のORP及びpHになる。
【0050】
ORP計8の構成について説明する。
図3は、ORP計8の構造を示す図である。ORP計8は、上記のように、抜出し系統12に配置される。より具体的には、ORP計8は、抜出し系統12を構成する配管8aの壁部8bに配置される。
【0051】
配管8aの壁部8bには、円形状の開口部101,105が形成される。開口部101には、配管8aの壁部8bを貫通するように、銀線表面に塩素処理されることで塩化銀皮膜を形成した比較電極102が配置される。比較電極102は、開口部101に嵌められた絶縁体103を介して、壁部8bに固定される。比較電極102には、演算制御装置50(
図3では図示しない)に接続される引き出し線104が接続される。そのため、比較電極102により測定された電位は、演算制御装置50に出力される。
【0052】
また、開口部105には、配管8aの壁部8bを貫通するように、白金により構成される指示電極106が配置される。指示電極106は、開口部105に嵌められた絶縁体107を介して、壁部8bに固定される。指示電極106には、演算制御装置50(
図3では図示しない)に接続される引き出し線108が接続される。そのため、指示電極106により測定された電位は、演算制御装置50に出力される。
【0053】
そして、演算制御装置50では、比較電極102の電位と指示電極106の電位とに基づき、配管8aを流れる吸収液のORP(即ち抜出し系統12を流れる吸収液のORP)が測定される。なお、
図3に示す例において、比較電極102の位置と指示電極106の位置とは、逆になっていてもよい。また、比較電極102と指示電極106とを一体化させた複合電極を用いてもよい。
図3ではORP計8は、配管110に直接配置されているが、別途設けた槽(図示しない)に対して差し込む方法であってもよい。また、槽が大気解放されているかは問わない。
【0054】
図1に戻って、演算制御装置50(酸化還元電位決定装置)は、吸収液の運転ORPを決定するためのものである。演算制御装置50について、
図4を参照しながら説明する。
【0055】
図4は、演算制御装置50のブロック図である。燃焼排ガスに含まれる水銀(二価水銀)は、吸収液との接触により、吸収液に吸収される。そして、吸収された水銀は、燃焼排ガスと接触したときの吸収液のORPによって、吸収液の液相又は固相のいずれに移行するのかが決定される。なお、上記の
図2を参照しながら説明した液相水銀は、液相に移行した水銀に相当し、上記の
図2を参照しながら説明した固相水銀は、固相に移行した水銀に相当する。
【0056】
演算制御装置50は、入力部51と、流入二価水銀濃度決定部52と、目標液相水銀割合決定部53と、運転ORP決定部54と、制御部55と、相関56とを備える。
【0057】
入力部51は、液相水銀濃度の目標値(排水中水銀濃度の管理値)を入力するためのものである。ここでいう目標値は、単一の値であってもよいし、例えば所定値以上、所定値以下等の範囲であってもよい。詳細は後記するが、入力された目標値に基づいて、液相水銀割合の目標値が決定される。なお、入力部51は、例えばキーボード、マウス、テンキー等により構成される。
【0058】
なお、入力部51には、液相水銀濃度の目標値に代えて固相水銀濃度の目標値が入力されてもよい。従って、入力部51には、液相水銀濃度又は固相水銀濃度のうちの一方の水銀濃度の目標値が入力される。
【0059】
流入二価水銀濃度決定部52は、脱硫装置10に流入する二価水銀(Hg2+)濃度を決定するためのものである。即ち、脱硫装置10の流入口1を通じて流入する燃焼排ガスに含まれる二価水銀の濃度が、流入二価水銀濃度決定部52により決定される。なお、二価水銀は、上記のように、脱硫装置10の前段に設けられた、例えば還元型の脱硝装置(図示しない。他の任意の還元装置でもよい)での金属水銀の酸化により生じる。
【0060】
燃焼排ガス中の二価水銀の濃度を決定する具体的な方法は特に制限されないが、例えば、脱硫装置10の上流側に接続されるボイラ等(図示しない)で燃焼される石炭の水銀含有濃度及び脱硫装置10の上流側の設備構成に基づいて決定できる。また、例えば、脱硫装置10に流入する燃焼排ガスについて、例えば水銀連続分析計を用いて決定することもできる。さらには、例えば、燃焼排ガスの一部を採取し、任意の分析装置を用いて手分析により決定してもよい。この場合には、決定された二価水銀濃度は、例えば入力部51を通じて入力されることで、流入二価水銀濃度決定部52に入力することができる。
【0061】
目標液相水銀割合決定部53(目標水銀割合決定部)は、脱硫装置10への流入水銀濃度と、液相水銀濃度又は固相水銀濃度のうちの一方の水銀濃度の目標値とに基づいて、水銀割合の目標値を決定するためのものである。具体的には、本発明の一実施形態では、目標液相水銀割合決定部53は、流入二価水銀濃度決定部52に入力された二価水銀濃度と、脱硫装置10に流入する燃焼排ガスの流量と、脱硫装置10における吸収液の循環流量と、入力部51で入力された液相水銀濃度の目標値とから、液相水銀割合の目標値を決定するためのものである。具体的には例えば、吸収液へ流入する二価水銀濃度が吸収液濃度換算で100μg/Lであり、液相水銀濃度の目標値(排水中水銀濃度の管理値)が10μg/Lである場合には、目標液相水銀割合の目標値は10/100=0.1[-]である。
【0062】
なお上記の入力部51に固相水銀濃度の目標値が入力された場合には、図示しない目標固相水銀割合決定部(目標水銀割合決定部)が、流入二価水銀濃度決定部52に入力された二価水銀濃度と、脱硫装置10に流入する燃焼排ガスの流量と、脱硫装置10における吸収液の循環流量と、入力部51で入力された固相水銀濃度の目標値とから、固相水銀割合の目標値を決定するようにしてもよい。即ち、図示しない目標水銀割合決定部は、流入二価水銀濃度決定部52に入力された二価水銀濃度と、脱硫装置10に流入する燃焼排ガスの流量と、脱硫装置10における吸収液の循環流量と、液相水銀濃度又は固相水銀濃度のうちの一方の水銀濃度の目標値とに基づいて、上記水銀割合の上記目標値を決定する。これにより、液相水銀濃度又は固相水銀濃度のうちの一方の水銀濃度を、管理者等が要求する目標値に制御できる。
【0063】
また、目標液相水銀割合決定部53(目標水銀割合決定部)は、さらに、脱硫装置10の運転条件に基づいて、水銀割合の目標値を決定するように構成される。具体的には例えば、運転条件は、例えば、流入する燃焼排ガス中の二酸化硫黄濃度(即ち、二酸化硫黄の入口濃度)等である。また、例えば、吸収液の組成によっては、液中水銀濃度とORPとの相関56(後記する)が変わる可能性がある。そこで、脱硫装置10の運転条件に基づいて、水銀割合の目標値を決定することで、脱硫装置10の運転条件の変化により、運転ORPを変更していないにも関わらず水銀割合が変動した場合であっても、上記水銀濃度を目標値に制御できる。
【0064】
運転ORP決定部54は、吸収液における液相水銀割合の目標値と、液相水銀割合と吸収液のORPとの相関56であって予め定められた相関56と、に基づいて、ORPの運転値を決定するためのものである。ただし、上記の入力部51に固相水銀濃度が入力された場合には、運転ORP決定部54は、吸収液における固相水銀割合の目標値と、固相水銀割合と吸収液のORPとの相関56であって予め定められた相関56と、に基づいて、ORPの運転値を決定してもよい。
【0065】
従って、運転ORP決定部54は、吸収液における液相水銀割合又は固相水銀割合のうちの一方の水銀割合の目標値と、水銀割合と吸収液のORPとの相関であって予め定められた相関と、に基づいて、ORPの運転値を決定する。運転ORP決定部54を備えることで、吸収液のORP制御により、水銀割合を任意に変更できる、これにより、水銀割合を管理者等が要求する目標値に制御できる。
【0066】
発明者らは、種々実験を行った結果、
図6の通り、吸収液の酸化還元電位(ORP)と吸収液中の液相水銀割合とが良好な相関性を示すことを見出し、本発明に至ったものである。
相関56について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、吸収液のORPと液相水銀割合との相関56である。相関56を示すグラフは、例えば設計段階での試験、脱硫装置10の試運転等によって予め定められ、演算制御装置50に予め記憶されている。例えば、脱硫装置10の管理者等が、入力部51を介して「液相水銀濃度の目標値(排水中水銀濃度の管理値)が10μg/L以下」と入力した場合、流入二価水銀濃度が100μg/Lであれば、目標とする液相水銀割合は0.1以下である。そこで、運転ORP決定部54は、相関56に基づいて、液相水銀割合0.1に対応する吸収液のORPを決定する。そして、この場合においては、ここで決定されたORPの値であるx1以下になるように、後記する制御部55により、燃焼排ガスに接触させる吸収液のORPが制御される。
なお、演算制御装置50に記憶される相関56は、グラフである必要はなく、例えば近似式、テーブル等でもよい。
【0067】
図6は、吸収液のORPに対する液相水銀割合を示すグラフであり、本発明者らにより得られた実験結果をプロットして得られたグラフである。
図6に示すように、吸収液のORP(横軸)が概ね300mV以下では、液相水銀割合(縦軸)が0.3以下である。従って、ORPが概ね300mV以下では、液相水銀濃度が相対的に小さく、固相水銀濃度が相対的に大きくなる。一方で、吸収液のORPが概ね300mV以上では、液相水銀割合が概ね0.3以上になる。従って、ORPが概ね300mV以上では、液相水銀濃度が相対的に大きく、固相水銀濃度が相対的に小さくなる。
【0068】
この
図6に示すように、本発明者らによる検討の結果、吸収液のORPと液相水銀割合との間に相関があることがわかった。そこで、本発明の一実施形態では、
図6のグラフに基づいて近似曲線を決定し、決定された近似曲線が
図5に示すような上記相関56として使用される。
【0069】
なお、
図5及び
図6には、一例として、ORPと液相水銀割合との相関を示したが、ORPと固相水銀割合との相関についても、例えば設計段階での試験等に基づいて同様に決定できる。
【0070】
図4に戻って、制御部55は、運転ORP決定部54により決定された運転ORPとなるように、吸収液への空気量制御を行うものである。具体的には、上記のように、空気供給量の制御は、制御部55によって例えばポンプ21の回転速度が制御されることで、行われる。即ち、上記のポンプ21は、運転ORP決定部54により決定された運転ORPになるように空気を供給するように構成される。これにより、循環系統11及び散水装置4を介して散水される吸収液であって、燃焼排ガスと接触させる吸収液のORPを制御できる。
【0071】
なお、制御部55は、例えばORP計8により吸収液のORPを監視しながら、空気量の制御を行うことができる。また、ORPの制御は、必要に応じて酸化還元剤を併用して行ってもよい。従って、ポンプ21(供給装置、
図1参照)は、演算制御装置50(酸化還元電位決定装置)により決定された運転ORPになるように、空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方を供給するように構成される。このようにすることで、空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方の供給量制御により、吸収液のORPを制御できる。これにより、液相水銀割合又は固相水銀割合のうちの一方の水銀割合を調整し、管理者等が要求する水銀濃度の目標値に制御できる。
【0072】
また、本発明の一実施形態では、ポンプ21(供給装置)は、脱硫装置10への流入二価水銀濃度(流入水銀濃度)が予め定められた閾値を超えたときに、空気又は酸化還元剤のうちの少なくとも一方を供給するように構成される。このようにすることで、流入二価水銀濃度が少ないときには制御を行わないため、演算制御装置50(酸化還元電位決定装置)の演算負荷を低減できる。
【0073】
なお、上記の演算制御装置50は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、I/F(InterFace)、制御回路等を備え、ROMに格納されている所定の制御プログラムがCPUによって実行されることにより具現化される。
【0074】
図7は、本発明の一実施形態に係るORP決定方法を示すフローチャートである。
図7に示すフローは、演算制御装置50(
図1及び
図2参照)により行われる。そこで、
図1及び
図2を適宜参照しながら、
図7の説明を行う。
【0075】
まず、入力部51に例えば液相水銀濃度の目標値(排水中水銀濃度の管理値)が入力されると、流入二価水銀濃度決定部52は脱硫装置10に流入する二価水銀濃度を決定する(ステップS1)。なお、入力部51には、液相水銀濃度の目標値ではなく、固相水銀濃度の目標値(石膏中水銀濃度の管理値)が入力されてもよい。次いで、目標液相水銀割合決定部53は、脱硫装置運転条件と上記目標値とから、適正な液相水銀割合を算出する(ステップS2)。
【0076】
ここで、脱硫装置運転条件について、脱硫装置運転条件が変化すると、液相水銀濃度及び固相水銀濃度が変化する可能性がある。具体的には例えば、脱硫量が増加した場合、石膏生成量が増加する。このため、流入二価水銀濃度が一定かつ液相水銀割合が一定であると、相対的に固相水銀濃度が低下する。そこで、本発明の一実施形態では、目標液相水銀割合決定部53は、さらに、脱硫装置10の運転条件に基づいて、液相水銀割合の目標値を決定する。
【0077】
次いで、運転ORP決定部54は、算出された液相水銀割合と、上記
図5に示したORPの相関56とから、運転ORPを決定する(ステップS3)。そして、制御部55は、決定された運転ORPとなるように、脱硫装置10に供給される空気量を制御する。これにより、液相水銀濃度が目標値以下(管理値以下)になる。また、算出された固相水銀割合から運転ORPを決定してもよい。
【0078】
吸収液のORPが制御された後、目標液相水銀割合決定部53は、脱硫装置10の運転条件を把握し、運転条件に変化が生じた否かを監視している(ステップS4)。運転条件に変化が生じていない場合には(No方向)、流入二価水銀濃度決定部52は、流入二価水銀濃度を把握し、流入二価水銀濃度に変化が生じたか否かを監視する(ステップS5)。そして、流入二価水銀濃度に変化が生じていない場合であって(No方向)、運転継続のときには(ステップS6のYes方向)、上記ステップS4以降が再度行われる。一方で、運転継続しないときには(No方向)、運転が終了する。
【0079】
また、上記のステップS4において、運転状態に変化が生じていれば(Yes方向)、上記のステップS2以降が繰り返される。さらには、上記のステップS5において、水銀流入濃度に変化が生じていれば(Yes方向)、上記のステップS1以降が繰り返される。
【0080】
以上のORP決定方法及びそれを含むORPの制御方法によれば、吸収液のORP制御により、水銀割合を任意に変更できる。これにより、水銀濃度を管理者等が要求する目標値に制御できる。
【0081】
1 流入口
2 流出口
3 筐体
3a,111a 内部空間
4 散水装置
5 散気管
6,7,21 ポンプ
7 固液分離器
8,109 ORP計
9 pH計
8a 配管
8b 壁部
10,110 脱硫装置
11 循環系統
12 系統
13 石膏系統
14 排水系統
15 空気供給系統
50 演算制御装置
51 入力部
52 流入二価水銀濃度決定部
53 目標液相水銀割合決定部
54 決定部
55 制御部
56 相関
100 排ガス処理システム
101,105 開口部
102 比較電極
103,107 絶縁体
104,108 引き出し線
106 指示電極
109a センサ部
111 ボイラ
112 脱硝装置
113 集塵機
114 煙突
115 排水処理装置