(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】電気モジュール
(51)【国際特許分類】
H01G 9/20 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
H01G9/20 203B
H01G9/20 303B
H01G9/20 311
(21)【出願番号】P 2018164577
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】馬場 英輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】井川 博之
【審査官】増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-076893(JP,A)
【文献】特開2001-307786(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084317(WO,A1)
【文献】特開2013-201079(JP,A)
【文献】特開2008-204676(JP,A)
【文献】特開2006-202681(JP,A)
【文献】特開2009-266616(JP,A)
【文献】国際公開第2016/017776(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/142086(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素が吸着された半導体層が表面に形成された第1電極と、
前記第1電極の表面に対向する第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に充填される電解液と、
前記第1電極と前記第2電極との間に前記電解液を封止して前記半導体層を含む発電部を形成し、前記半導体層の一部を覆う封止材と、を備え
、
前記第1電極および前記第2電極はそれぞれ、絶縁性の基材を備え、
前記第1電極の基材と前記第2電極の基材とが直接、融着されることで形成され、前記封止材とともに前記電解液を封止する接合部を更に備えて
おり、
前記封止材は、前記半導体層を、前記第1電極および前記第2電極が積層される積層方向に対して直交する第1の方向に挟み込むように複数設けられ、
前記半導体層および前記封止材は、前記積層方向および前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる帯状に形成され、
前記封止材は、前記半導体層の一部を前記第2の方向の全長にわたって覆い、
前記接合部は、前記半導体層を、前記第2の方向に挟み込むように複数設けられている電気モジュール。
【請求項2】
前記半導体層の前記第1の方向の大きさaに対する、前記封止材のうち前記半導体層を覆う部分についての前記第1の方向の大きさbの比である第1の比b/aは、0より大きく0.08以下である請求項
1に記載の電気モジュール。
【請求項3】
前記封止材全体の前記第1の方向の大きさcに対する、前記封止材のうち前記半導体層を覆う部分についての前記第1の方向の大きさbの比である第2の比b/cは、0より大きく0.5以下である請求項
1または
2に記載の電気モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に記載の電気モジュールが知られている。この電気モジュールは、太陽電池モジュールである。太陽電池モジュールは、第一電極と、第二電極と、電解液と、封止材と、導通材と、絶縁ラインと、を備えている。第一電極の第一基材の表面には、透明導電膜が成膜されている。透明導電膜の表面には、第一の方向に延在する色素が吸着した帯状の半導体層が複数形成されている。第二基材の表面には、第一電極に対向するように対向導電膜が成膜されている。電解液は、第一電極の半導体層と第二電極との間に封止されている。封止材は、電解液を封止する。封止材は、平面視で第一の方向に直交する第二の方向に分割された複数のセルを配列する。導通材は、封止材に覆われた状態で設けられている。導通材は、第一電極と第二電極とを電気的に接続する。絶縁ラインは、第一電極及び第二電極に対して第二の方向に沿って延在する。第二の方向に配列される複数のセルは、直列配線により電気的に接続されている。第二の方向に隣り合うセル同士の間に配置された第一基材の第一絶縁部と、第二基材の第二絶縁部と、の間には、導通材が配置されている。これにより、隣り合うセル同士が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の電気モジュールでは、歩留まりを向上させることについて改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、歩留まりを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係る電気モジュールは、色素が吸着された半導体層が表面に形成された第1電極と、前記第1電極の表面に対向する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に充填される電解液と、前記第1電極と前記第2電極との間に前記電解液を封止して前記半導体層を含む発電部を形成し、前記半導体層の一部を覆う封止材と、を備えている。
【0007】
封止材が、半導体層の一部を覆っている。したがって、封止材が半導体層を覆っている領域において、第1電極(半導体層)と第2電極との間に封止材が介在し、第1電極と第2電極とが直接、対向しない。これにより、例えば、第1電極と第2電極との予期せぬ短絡を抑制することができる。その結果、電気モジュールの不良品の発生を抑えて電気モジュールの歩留まりを高めることができる。
【0008】
前記第1電極および前記第2電極はそれぞれ、絶縁性の基材を備え、前記第1電極の基材と前記第2電極の基材とが接合されることで形成され、前記封止材とともに前記電解液を封止する接合部を更に備えていてもよい。
【0009】
第1電極の基材と第2電極の基材とが接合されることで接合部が形成されている。接合部を形成するために、例えば第1電極と第2電極とを融着(超音波融着)させる場合がある。この場合であって、電気モジュールが、封止材が半導体層を覆っていない構成である場合には、封止材と半導体層との間の領域において、第1電極(半導体層)と第2電極との予期せぬ短絡が生じやすい。すなわち、接合部の近傍において、第1電極と第2電極とが接近して短絡する可能性がある。
これに対して、本発明に係る電気モジュールでは、封止材が半導体層の一部を覆っているため、前述のような予期せぬ短絡が生じにくい。その結果、電気モジュールの歩留まりを一層高めることができる。
【0010】
前記封止材は、前記半導体層を、前記第1電極および前記第2電極が積層される積層方向に対して直交する第1の方向に挟み込むように複数設けられ、前記半導体層および前記封止材は、前記積層方向および前記第1の方向に直交する第2の方向に延びる帯状に形成され、前記封止材は、前記半導体層の一部を前記第2の方向の全長にわたって覆い、前記接合部は、前記半導体層を、前記第2の方向に挟み込むように複数設けられていてもよい。
【0011】
前記半導体層の前記第1の方向の大きさaに対する、前記封止材のうち前記半導体層を覆う部分についての前記第1の方向の大きさbの比である第1の比b/aは、0より大きく0.08以下であってもよい。
【0012】
第1の比b/aが0より大きく0.08以下である。よって、電気モジュールの歩留まりを高めつつ、電気モジュールの発電性能を確保することができる。
すなわち、第1の比b/aが0.08より大きいと、封止材が半導体層を覆う領域が大きくなりすぎ、発電性能が低下するおそれがある。
【0013】
前記封止材全体の前記第1の方向の大きさcに対する、前記封止材のうち前記半導体層を覆う部分についての前記第1の方向の大きさbの比である第2の比b/cは、0より大きく0.5以下であってもよい。
【0014】
第2の比b/cが0より大きく0.5以下である。よって、電気モジュールの歩留まりを高めつつ、電気モジュールの発電性能を確保することができる。
すなわち、第2の比b/cが0.5より大きいと、封止材のうち半導体層を覆う部分(以下、「被覆部分」という。)が、封止材全体に対して大きすぎる。その結果、被覆部分を適度な大きさに抑えるため、封止材全体の大きさを過剰に小さくする必要が生じる。この場合、封止材そのもの機能、例えば、電解液を封止する機能などが十分に発揮されない可能性が生じ、電極モジュールの歩留まりが低下するおそれが生じる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保護層付き色素増感型太陽電池を対向電極側から見た平面図であって、防湿層を透過した状態を示す図である。
【
図2】
図1に示すII-II矢視断面図に相当する断面図であって、保護層付き色素増感型太陽電池の一部を拡大した図である。
【
図3】
図1に示す保護層付き色素増感型太陽電池のシール部を形成するときにおける導電材の状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の作用効果の検証試験の結果を示すグラフであって、突出部の幅と歩留まりとの関係を表すグラフである。
【
図5】本発明の作用効果の検証試験の結果を示すグラフであって、第1の比と歩留まりとの関係を表すグラフである。
【
図6】本発明の作用効果の検証試験の結果を示すグラフであって、突出部の幅と性能との関係を表すグラフである。
【
図7】本発明の作用効果の検証試験の結果を示すグラフであって、第1の比と性能との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る電気モジュール(太陽電池モジュール)の実施の形態について、
図1~
図3を適宜参照しながら、その構成を詳細に説明する。なお、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0018】
なお、以下の説明においては、本発明に係る電気モジュールの一例として、RtoR方式を用いて製造されるフィルム型の色素増感型太陽電池を挙げて説明する。ここで、本発明を適用した電気モジュールは、色素増感型太陽電池に限定されない。本発明は、絶縁処理が施された二枚の電極同士を、封止材を介在させて貼り合わせた構成であれば、色素増感型太陽電池以外の電気モジュールも全て含む。また、本発明に係る電気モジュールは、上記のRtoR方式を用いて製造される構成、即ち、基材を所定の方向に搬送しつつ連続的に製造されるものには限定されない。本発明は、例えば、予め切り分けられた基材毎にセル構造が形成されているものも含む。
【0019】
[保護層付き電気モジュール(保護層付き色素増感型太陽電池)の構成]
図1及び
図2に示すように、本発明を適用した本実施形態の保護層付き色素増感型太陽電池(保護層付き電気モジュール)1は、色素増感型太陽電池(電気モジュール)10と、色素増感型太陽電池10を保護する保護層2と、を備えている。
【0020】
[電気モジュール(色素増感型太陽電池)の構成]
本発明を適用した本実施形態の色素増感型太陽電池10は、光電極41(第1電極)と、対向電極42(第2電極)と、発電部44と、封止材46と、導通材48と、備えている。
図2に示すように、光電極41および対向電極42の表面同士は、間隔をあけて対向している。以下では、光電極41および対向電極42が対向する方向を積層方向D3(第3の方向、対向方向)という。
【0021】
光電極41は、光電極支持体21(絶縁性の基材)と、この光電極支持体21の表面21aに設けられた光電極導電層31(透明電極膜)と、色素が吸着され光電極導電層31に間欠的に積層された複数の無機半導体層12(半導体層)と、を有する。
【0022】
光電極支持体21は、光電極導電層31、無機半導体層12や封止材46、及び導通材48の基台となる部材である。光電極支持体21の材質は、RtoR方式を用いた太陽電池の連続生産に適用できる程度に柔軟性を有し、大面積フィルム状に形成可能な材質であれば、特に限定されない。このような光電極支持体21の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、又はポリイミド等の透明の樹脂材料が挙げられる。
なお、
図1に示すような光電極支持体21の平面視において、光電極支持体21は矩形状に形成されている。以下では、前記平面視において光電極支持体21の各辺が延びる方向をD1方向(第1の方向)およびD2方向(第2の方向)という。D1方向およびD2方向は、互いに直交する。D1方向およびD2方向は、積層方向D3に直交する。
【0023】
図2に示すように、光電極導電層31は、光電極支持体21の表面21a(即ち、光電極支持体21における対向電極42側の面)のD1方向全体にわたって成膜されている。光電極導電層31は、光電極支持体21の表面21aに全域にわたって積層されている。光電極導電層31の材質としては、例えば、酸化スズ(ITO)、酸化亜鉛等が挙げられる。
光電極支持体21および光電極導電層31は、いずれも透明であり、光電極支持体21の裏面から入射する光を透過させる。
【0024】
無機半導体層12は、光電極導電層31の表面(即ち、光電極導電層31における対向電極42側の面)に形成されている。言い換えると、無機半導体層12は、D1方向に間隔をあけて複数配置されている。各無機半導体層12は、D2方向に長い帯状に形成されている。
【0025】
無機半導体層12は、例えば、金属酸化物等に増感色素が担持されることによって染色された多孔質層であり、増感色素から電子を受け取って輸送する機能を有する。このような金属酸化物としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、又は酸化スズ(SnO2)等が挙げられる。
【0026】
上述の増感色素は、有機色素又は金属錯体色素から構成される。有機色素としては、例えば、クマリン系、ポリエン系、シアニン系、ヘミシアニン系、又はチオフェン系等の各種有機色素等が挙げられる。金属錯体色素としては、例えば、ルテニウム錯体等が挙げられる。
【0027】
対向電極42は、光電極支持体21に対向する対向電極支持体22(絶縁性の基材)と、対向電極支持体22の表面22a(対向電極支持体22における光電極41側の面)に設けられた対向電極導電層32(透明電極膜)とを有する。
【0028】
対向電極支持体22は、対向電極導電層32の基台となる部材である。対向電極支持体22の材質は、光電極支持体21と同様に、RtoR方式を用いた太陽電池の連続生産に適用できる程度に柔軟性を有し、大面積フィルム状に形成可能な材質であれば、特に限定されない。対向電極支持体22の材質としては、例えば、光電極支持体21と同様の樹脂材料が挙げられる。
【0029】
対向電極導電層32は、対向電極支持体22の表面22aのD1方向全体にわたって成膜されている。対向電極導電層32は、対向電極支持体22の表面22aに積層されている。対向電極導電層32の材質としては、例えば、光電極導電層31と同様の化合物等が挙げられる。
【0030】
発電部44は、光電極41と対向電極42との間に挟まれ、光電極41及び対向電極42の面方向(
図2中に示すD1方向)に沿って間隔をおいて複数設けられている。発電部44は、前述した無機半導体層12と、電荷移動体(電解液、電解質)14と、を含む。
【0031】
電荷移動体14は、光電極41と対向電極42との間に充填される。電荷移動体14は、無機半導体層12に接触するように充填されている。電荷移動体14としては、例えば、アセトニトリル、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム又はヨウ化ブチルメチルイミダゾリウム等のイオン液体等の液体成分に、ヨウ化リチウム等の支持電解質とヨウ素とが混合された溶液(具体的には、プロピオニトリル等の非水系溶剤)等が挙げられる。
【0032】
封止材46は、光電極41と対向電極42との間に電荷移動体14を封止して発電部44を形成する。封止材46は、
図1中に示すシール部60とともに、電荷移動体14を含む発電部44を封止する。封止材46は、
図1及び
図2中に示すD1方向に沿って発電部44の両側に設けられている。封止材46は、D1方向において発電部44と隣接して設けられている。封止材46は、無機半導体層12をD1方向に挟み込むように複数設けられている。封止材46は、D1方向に隣り合う無機半導体層12の間に配置されている。封止材46は、発電部44をD1方向に沿って複数形成している。なお封止材46は、D1方向に隣り合う発電部44の間に一対配置されている。封止材46は、D2方向に延びる帯状に形成されている。
【0033】
封止材46は、さらに、光電極41と対向電極42とを貼り合わせて互いを接着するための樹脂等を含む。このような封止材46の材質としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は紫外線硬化性樹脂のうち少なくとも一種を含む樹脂材料が挙げられる。
【0034】
封止材46の一部は、無機半導体層12の一部を覆っている(無機半導体層12の一部に積層されている)。封止材46は、本体部46aと、突出部46bと、を備えている。
本体部46aの積層方向D3の両面は、光電極導電層31の表面または対向電極導電層32の表面に接触している。本体部46aにおけるD1方向の両面のうち、無機半導体層12側(発電部44側)に位置する面は、無機半導体層12のD1方向の端部に接触している。
突出部46bは、本体部46aからD1方向に突出している。突出部46bの積層方向D3の両面は、無機半導体層12の表面または対向電極導電層32の表面に接触している。突出部46bは、封止材46のうち無機半導体層12の一部を覆う部分(無機半導体層12の一部に積層される部分)である。突出部46bは、無機半導体層12の一部に、D2方向の全長にわたって積層されている。
【0035】
ここで、無機半導体層12のD1方向の大きさを、無機半導体層12の幅aとする。封止材46のうちの突出部46bのD1方向の大きさを、突出部46bの幅bとする。封止材46全体のD1方向の大きさを、封止材46の幅cとする。無機半導体層12の幅aは、例えば、無機半導体層12のD1方向の両端縁間の距離となる。突出部46bの幅bは、例えば、無機半導体層12のD1方向の端縁(
図2におけるP1)と、突出部46bのD1方向の端縁(
図2におけるP2)との間の距離となる。封止材46の幅cは、例えば、封止材46のD1方向の両端縁間の距離となる。
【0036】
無機半導体層12の幅aに対する突出部46bの幅bの比である第1の比b/aは、0より大きく0.08以下である。封止材46の幅cに対する突出部46bの幅bの比である第2の比c/aは、0より大きく0.5以下である。なおこれら各種の数値条件は、D2方向に延びる帯状の発電部44のうち、D2方向に沿って一部のみが局所的に満たしていてもよく、発電部44の全長にわたって満たしていてもよい。また幅aは、例えば26mmや24.3mmであってもよい。幅bは、0mmより大きく2mm以下、より具体的には、0.4mmより大きく1mm以下であってもよい。幅cは、2mmより大きく4mm以下、2.4mmより大きく3mm以下であってもよい。
【0037】
D1方向に隣り合う発電部44の間に配置された一対の封止材46同士の間には、導通材48が設けられている。導通材48は、無機半導体層12、電荷移動体14を含む発電部44同士を電気的に接続し、導通させる。導通材48の材質としては、導通可能な素材であれば特に限定されない。前記材質としては、例えば、公知の導電材、導電ペースト、又は導電性微粒子と接着剤の混合物等が挙げられる。なお図示の例では、導通材48の一例として、エポキシ樹脂やフェノール樹脂等の接着剤38に適量の導電粒子36を混合した導通ペーストを採用している。この構成は、色素増感型太陽電池10を所望のパターンで切り出す際に、導通材48を容易に切断できる構成であるため好ましい。導通材48には、封止材46と同様の材料からなるバインダーを用いてもよい。
【0038】
図示の例では、導電粒子36は球状に形成されている。導電粒子36としては、例えば、平均粒子径が50.0±0.5μm、粒子径の標準偏差が2.3±0.2μmの材料(粒子群)を採用することができる。導電粒子36は、コア36aと、被覆層36bと、を備えている。コア36aは、例えば樹脂材料(一例としては、ポリメタクリル酸メチル樹脂)等が挙げられる。被覆層36bは、コア36aの表面を全面にわたって被覆する。被覆層36bの導電性は、コア36aの導電性よりも高い。被覆層36bは、例えば、金属材料により形成される。被覆層36bは、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。被覆層36bとしては、例えば、ニッケル(内側)に金(外側)が積層された構成を採用することができる。
【0039】
光電極導電層31及び対向電極導電層32には、第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bがそれぞれ設けられている。第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bは、
図2中に示したD1方向に直交する断面において、光電極導電層31及び対向電極導電層32の封止材46と重なる部分に設けられている。言い換えると、第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bは、封止材46と積層方向D3に重なっている。第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bは、平面視においてD2方向に長い帯状に設けられている。
【0040】
光電極41の光電極導電層31には第一絶縁部50Aが設けられている。対向電極42の対向電極導電層32には第二絶縁部50Bが設けられている。
図2に示す例においては、第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bは、光電極導電層31又は対向電極導電層32を厚み方向で貫通している。換言すると、第一絶縁部50Aは、光電極導電層31をD1方向に分断(電気的に遮断)している。第二絶縁部50Bは、対向電極導電層32をD1方向に分断(電気的に遮断)している。
【0041】
以上のように、導通材48が、光電極41および対向電極42を積層方向D3に電気的に接続している。かつ、第一絶縁部50A及び第二絶縁部50Bが、光電極41および対向電極42をD1方向に局所的に絶縁している。これにより、D1方向に隣り合う発電部44は、互いに電気的に直列に接続される。
【0042】
図1に示すように、色素増感型太陽電池10には、シール部60(融着部、超音波融着部、接合部)が設けられている。シール部60は、色素増感型太陽電池10のD2方向における所定の位置に設けられている。シール部60は、無機半導体層12を、D2方向に挟み込むように一対(複数)設けられている。シール部60では、色素増感型太陽電池10におけるD1方向の全長にわたって光電極41と対向電極42とが貼り合わされている。
【0043】
シール部60は、光電極支持体21と対向電極支持体22とが圧着(接合)されることで、電気的に絶縁された部分である。光電極支持体21と対向電極支持体22とは、光電極41及び対向電極42の厚み方向(積層方向D3)の外方(即ち、色素増感型太陽電池10の上方及び下方)から、例えば、超音波融着等の方法を用いて光電極41及び対向電極42に力を加えるか、又は押圧することによって、圧着することができる。なお、圧着された光電極支持体21と対向電極支持体22との間には、僅かな厚みで、光電極導電層31、対向電極導電層32、無機半導体層12及び電荷移動体14が介在している場合がある。しかしながら、これの各層は、シール部60においてほぼ分断された状態なので、シール部60に隣接する発電部44同士を電気的に接続しない。例えば
図3に示すように、シール部60が形成される過程で、導通材48では導電粒子36が破壊される。このとき、コア36aの破片36a1および被覆層36bの破片36b1が形成されるが、これらは発電部44同士を導通しない。
【0044】
図1に示すように、光電極41および対向電極42には、取り出し電極部71が設けられている。取り出し電極部71は、発電部44に電気的に接続されている。取り出し電極部71は、発電部44が発電した電力を取り出す。本実施形態では、取り出し電極部71は、光電極41におけるD1方向の端部に設けられている。取り出し電極部71は、光電極導電層31が、積層方向D3に沿う対向電極42側に露出されることで形成されている。図示の例では、光電極41が対向電極42よりもD1方向に大きく、光電極41の端部が対向電極42に対してD1方向に張り出している。その結果、光電極導電層31が、取り出し電極部71を形成している。取り出し電極部71は、D1方向よりもD2方向に長い。
【0045】
[保護層2の構成]
図1および
図2に示すように、保護層2は、色素増感型太陽電池10を封止する。
図2に示すように、保護層2は、色素増感型太陽電池10を積層方向D3に挟み込む光電極側防湿フィルム81および対向極側防湿フィルム82を備えている。
光電極側防湿フィルム81は、透光性が高いことが好ましい。光電極側防湿フィルム81は、光電極側バリア層83と、光電極側接着層84と、を備えている。光電極側バリア層83は、例えば樹脂基板にバリア性が付与されたフィルムであってもよい。
対向極側防湿フィルム82は、対向電極側バリア層85と、対向電極側接着層86と、を備えている。対向電極側バリア層85は、アルミニウム等の金属箔や、アルミニウムとポリエチレンテレフタレートとの複合フィルム等であってもよい。
なお、色素増感型太陽電池10が発電した電力は、図示しない配線によって保護層2の外部に取り出される。前記配線は、取り出し電極部71に導通される。前記配線は、例えば、光電極側防湿フィルム81および対向極側防湿フィルム82の間から、または、光電極側防湿フィルム81や対向極側防湿フィルム82に形成された開口から、外部に引き出されている。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係る色素増感型太陽電池10によれば、封止材46の一部(突出部46b)が、無機半導体層12の一部を覆っている(無機半導体層12の一部に積層されている)。したがって、封止材46が無機半導体層12を覆っている領域において、光電極41(無機半導体層12)と対向電極42との間に封止材46が介在し、光電極41と対向電極42とが直接、対向しない。これにより、例えば、光電極41と対向電極42との予期せぬ短絡を抑制することができる。その結果、色素増感型太陽電池10の不良品の発生を抑えて色素増感型太陽電池10の歩留まりを高めることができる。
【0047】
光電極側支持体21と対向電極側支持体22とが接合されることでシール部60が形成されている。シール部60を形成するために、例えば光電極41と対向電極42とを融着(超音波融着)させる場合がある。この場合であって、色素増感型太陽電池10が、封止材46が無機半導体層12を覆っていない構成である場合には、封止材46と無機半導体層12との間の領域において、光電極41(無機半導体層12)と対向電極42との予期せぬ短絡が生じやすい。すなわち、シール部60の近傍において、光電極41と対向電極42とが接近して短絡する可能性がある。
これに対して、本発明に係る色素増感型太陽電池10では、封止材46が無機半導体層12の一部を覆っているため、前述のような予期せぬ短絡が生じにくい。その結果、色素増感型太陽電池10の歩留まりを一層高めることができる。
【0048】
第1の比b/aが0より大きく0.08以下である。よって、色素増感型太陽電池10の歩留まりを高めつつ、色素増感型太陽電池10の発電性能を確保することができる。
すなわち、第1の比b/aが0.08より大きいと、封止材46が無機半導体層12を覆う領域が大きくなりすぎ、発電性能が低下するおそれがある。
【0049】
第2の比b/cが0より大きく0.5以下である。よって、色素増感型太陽電池10の歩留まりを高めつつ、色素増感型太陽電池10の発電性能を確保することができる。
すなわち、第2の比b/cが0.5より大きいと、封止材46の突出部46bが、封止材46全体に対して大きすぎる。その結果、突出部46bを適度な大きさに抑えるため、封止材46全体の大きさを過剰に小さくする必要が生じる。この場合、封止材46そのもの機能、例えば、電荷移動体14を封止する機能などが十分に発揮されない可能性が生じ、電極モジュールの歩留まりが低下するおそれが生じる。
【0050】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
第1の比b/aおよび第2の比b/cが、上記実施形態に示した範囲外の値でもよい。
【0052】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0053】
上記した作用効果を検証する検証試験を実施した。検証試験では、第1の比b/aと歩留まりとの関係、および第1の比b/aと性能との関係を検証した。
【0054】
この検証試験では、前記実施形態に係る実施例の色素増感型太陽電池10を、突出部46bの幅bを異ならせて複数種類製造した。具体的には、突出部46bの幅bを、0.2mm、0.5mm、1mm、2mm、3mmとした。また、突出部46bがない比較例の色素増感型太陽電池(便宜上、幅bが0mmとする)も製造した。さらに、封止材46が無機半導体層12からD1方向に0.2mm、0.5mm、1mm離間している比較例の色素増感型太陽電池(便宜上、それぞれ幅bが-0.2mm、-0.5mm、-1mmとする)も製造した。
【0055】
これらの各種色素増感型太陽電池を、各サイズについて20個製造した。そして各サイズについて歩留まり(良品率)、性能を測定した。各サイズの性能に関しては、良品と判断された複数の色素増感型太陽電池を、同一条件下で発電させたときの発電量の平均値を測定した。性能は、上記0mmに係る色素増感型太陽電池を基準とし、基準に対してどの程度、発電量の平均値が達しているかを比較した。
【0056】
結果を
図4から
図7のグラフに示す。
図4および
図5は、歩留まりについてのグラフであり、
図6および
図7は、性能についてのグラフである。
図4および
図5は、縦軸がいずれも歩留まり(%)である点で共通している。
図4の横軸は突出部46bの幅b(mm)であるのに対して、
図5の横軸は第1の比b/aである。
図6および
図7は、縦軸がいずれも性能(%)である点で共通している。
図6の横軸は突出部46bの幅b(mm)であるのに対して、
図7の横軸は第1の比b/aである。
図6および
図7では、封止材46が無機半導体層12から離間している色素増感型太陽電池については結果を記載していない。
【0057】
図4および
図5から、突出部46bがあることにより、飛躍的に歩留まりが向上していることが確認される。
また
図6および
図7から、突出部46bの幅b(被覆幅)の増加に伴う電池性能の低下が確認される。
【符号の説明】
【0058】
10 色素増感型太陽電池(電気モジュール)
12 無機半導体層(半導体層)
14 電荷移動体(電解液)
21 光電極支持体(基材)
22 対向電極支持体(基材)
41 光電極
42 対向電極
44 発電部
46 封止材
60 シール部(接合部)