(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】脱着可能な建築用外装材およびそれの脱着方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/12 20060101AFI20221025BHJP
E04D 3/362 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
E04F13/12 101B
E04D3/362 G
(21)【出願番号】P 2018165581
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 克也
(72)【発明者】
【氏名】和泉 正章
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-013320(JP,U)
【文献】実開平05-078747(JP,U)
【文献】実開昭61-020733(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0145872(US,A1)
【文献】実開昭53-045728(JP,U)
【文献】特開昭62-025656(JP,A)
【文献】特開2001-020470(JP,A)
【文献】登録実用新案第3008868(JP,U)
【文献】特開平07-305451(JP,A)
【文献】特開2001-090268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
E04F 15/00-15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材の左右方向もしくは上下方向の一側端部と他側端部のそれぞれの延在部分に
、一側端部側には下ハゼとなる嵌め受け構造部が形成されていると共に、他側端部側には上ハゼとなる掛止め構造部が形成されていて、左右方向もしくは上下方向にそれぞれの構造部どうしを掛け止め嵌合させて互いに連結されて用いる建築用外装材であって、
その一側端部には、その延在部分に、端面形状が逆くの字状である凹嵌合部と、その凹嵌合部の遊端上部から斜め下方に延びる前垂れ部とからなる嵌め受け構造部が、側縁に沿って形成されており、
一方、前記他側端部の延在部分には、前記一側端部側の前垂れ部に沿うように形成された折下げ部とその折下げ部の延在部分として斜め上向きに折り返されたL形折返し部とからなる掛止め構造部が、側縁に沿って形成されて
おり、
それぞれの構造部どうしを掛け止め嵌合させた際、先施工の嵌め受け構造部の奥行の深さに対して、後施工の掛止め構造部の先端が届かない掛け止め状態となることを特徴とする脱着可能な建築用外装材。
【請求項2】
前記嵌め受け構造部は、板材の一側端部の延在部分がまず、斜め上向きに起立した斜め上向き起立部となっていてその折り返し延在部分として逆向き斜め上向き部が形成されて全体として逆くの字状を呈するように曲成されて前記凹嵌合部を構成しており、さらにその逆向き斜め上向き部の遊端上部から斜め後下方に延びる斜め折下げ部とそれに続いて曲成された折上げ部とで構成されている前記前垂れ部が形成されており、そして該折上げ部の延在部分として前記逆向き斜め上向き部と平行な斜め折返し部が形成され、その斜め折返し部の延在部分には前記斜め
上向き起立部と平行な折返し起立部が形成され、該折返し起立部の延在部分の遊端部には折曲げて得られる前記板材と平行に延びる固定部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の脱着可能な建築用外装材。
【請求項3】
前記掛止め構造部は、板材の他側端部の延在部分として、前記一側端部の前垂れ部に沿うように形成された折下げ部とその延在部分としてやや斜め上向き後方に折り返されたL形折返し部が形成されていると共に、そのL形折返し部の遊端部をさらに下側に折り返してなるU形折曲げ部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の脱着可能な建築用外装材。
【請求項4】
前記両構造部どうしの嵌合状態が、前記嵌め受け構造部の前垂れ部とそれに続く前記逆向き斜め上向き部および前記掛止め構造部の前記L形折返し部とによって囲まれた空間が略三角形の空間を形造る
掛け止め嵌合構造を有することを特徴とする請求項
2に記載の脱着可能な建築用外装材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1に記載の建築用外装材の脱着方法であって、左右方向もしくは上下方向に複数の前記外装材が互いに嵌合しあって連結されている状態において、その連結されている外装材のうちの1つを取り外してから別の外装材を取り付ける際に、突当て部材と掛外し部材とからなる脱着治具を用い、その突当て部材を前記外装材の一側端部に形成されている嵌め受け構造部の逆くの字状押込み部に押し付けて押し込むと同時に、掛外し部材を外装材の他側端部の掛止め構造部のL形折返し部および一側端部の嵌め受け構造部の前垂れ部に引掛けて上方に撥ね上げることにより、外装材前記両構造部の嵌め外しを行い、その後、交換外装材の嵌合取付けを行なうことを特徴とする建築用外装材の脱着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋根または外壁に用いられる部分脱着の可能な建築用外装材およびそれの脱着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属板または樹脂板などの板材を成形加工して得られる建築用外装材は、屋根材あるいは外壁材などとして広く用いられているものである。これらの外装材は、例えば平板材をロール成形機などにより同一断面形状のものに連続成形して長い矩形の板状材としたものが一般的であり、建築現場において、例えばその長辺もしくは短辺同士を順次につなぎ合わせて屋根材などとして用いている。こうした外装材は通常、見栄えおよび防水性の観点から、下重ねとなる長辺方向の一側端部に嵌合部を形成した上でその一部を建築物の下地にねじ留めすると共に、隣り合う該外装材の他の側端部に上重ねするための嵌合部を形成して、当該長辺同士を嵌合連結させた上で、それらの連結部が仕上がり後に隠れて雨がかりにならないようにし、長期的に美観を維持し、高い水密性能を保つ工夫が施されている(特許文献1、2等)。それ故に、一旦施工が終わると、一般には連結した該外装材の1つを部分的に抜き出して補修することなどは極めて困難となるのが普通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-285682号公報
【文献】特開平10-72911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、多くの建築現場においては、資材の運搬や取付け施工中に製品同士または工具をぶつけてしまい、外装材をへこませたり傷つけたりすることがあり、時にはそのまま工事を終了し、作業足場の撤去後にその傷つきが判明するようなことがある。特に近年の外装材は、工場の連続生産ラインで焼付け塗装された高級カラー鋼板などを素材として用いることが多いため、目立たないように補修することは難しいものの、時として傷ついた外装材のみを交換しなければならない必要にせまられることがある。ところが、上述した(特許文献1、2)のような密着型の嵌合部が隠れた状態で連結されている外装材のような場合、交換対象となる外装材だけを部分的に外して交換することは極めて困難で、基本的には傷ついている外装材の後で施工(敷設)された外装材をすべて取り外さなければならないというような問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、従来技術が抱えている上述した問題を解決すべく、特に、施工後(敷設後)は互いの嵌合部が隠れているような状態であっても、交換対象となる外装材だけを部分的に交換できるような、即ち部分脱着の可能な、非密着型で掛止めタイプの嵌合構造を有する建築用外装材を提案すること、およびそうした外装材の部分脱着を可能とする脱着方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題の解決を目的として開発した技術であって、その第一のものは、板材の左右方向もしくは上下方向の一側端部と他側端部のそれぞれの延在部分に、一側端部側には下ハゼとなる嵌め受け構造部が形成されていると共に、他側端部側には上ハゼとなる掛止め構造部が形成されていて、左右方向もしくは上下方向にそれぞれの構造部どうしを掛け止め嵌合させて互いに連結されて用いる建築用外装材であって、
その一側端部には、その延在部分に、端面形状が逆くの字状である凹嵌合部と、その凹嵌合部の遊端上部から斜め下方に延びる前垂れ部とからなる嵌め受け構造部が、側縁に沿って形成されており、
一方、前記他側端部の延在部分には、前記一側端部側の前垂れ部に沿うように形成された折下げ部とその折下げ部の延在部分として斜め上向きに折り返されたL形折返し部とからなる掛止め構造部が、側縁に沿って形成されており、
それぞれの構造部どうしを掛け止め嵌合させた際、先施工の嵌め受け構造部の奥行の深さに対して、後施工の掛止め構造部の先端が届かない掛け止め状態となること、
を特徴とする脱着可能な建築用外装材である。
【0007】
なお、本発明のより詳しい特徴的な構成は次のとおりである。
(1)前記嵌め受け構造部は、板材の一側端部の延在部分がまず、斜め上向きに起立した斜め上向き起立部となっていてその折り返し延在部分として逆向き斜め上向き部が形成されて全体として逆くの字状を呈するように曲成されて前記凹嵌合部を構成しており、さらにその逆向き斜め上向き部の遊端上部から斜め後下方に延びる斜め折下げ部とそれに続いて曲成された折上げ部とで構成されている前記前垂れ部が形成されており、そして該折上げ部の延在部分として前記逆向き斜め上向き部と平行な斜め折返し部が形成され、その斜め折返し部の延在部分には前記斜め上向き起立部と平行な折返し起立部が形成され、該折返し起立部の延在部分の遊端部には折曲げて得られる前記板材と平行に延びる固定部が形成されていること。
(2)前記掛止め構造部は、板材の他側端部の延在部分として、前記一側端部の前垂れ部に沿うように形成された折下げ部とその延在部分としてやや斜め上向き後方に折り返されたL形折返し部が形成されていると共に、そのL形折返し部の遊端部をさらに下側に折り返してなるU形折曲げ部が形成されていること。
(3)前記両構造部どうしの嵌合状態が、前記嵌め受け構造部の前垂れ部とそれに続く前記逆向き斜め上向き部および前記掛止め構造部の前記L形折返し部とによって囲まれた空間が略三角形の空間を形造る掛け止め嵌合構造を有すること。
【0008】
また、本発明は、第2に、前記のような構成を有する建築用外装材の脱着方法であって、左右方向もしくは上下方向に複数の前記外装材が互いに嵌合しあって連結されている状態において、その連結されている外装材のうちの1つを取り外してから別の外装材を取り付ける際に、突当て部材と掛外し部材とからなる脱着治具を用い、その突当て部材を前記外装材の一側端部に形成されている嵌め受け構造部の逆くの字状押込み部に押し付けて押し込むと同時に、掛外し部材を外装材の他側端部の掛止め構造部のL形折返し部および一側端部の嵌め受け構造部の前垂れ部に引掛けて上方に撥ね上げることにより、外装材前記両構造部の嵌め外しを行い、その後、交換外装材の嵌合取付けを行なうことを特徴とする建築用外装材の脱着方法を提案する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のような建築用外装材、とくに掛止めタイプの非密着型嵌合構造とした外装材、ならびにそのための独自の脱着方法を採用することで、既に施工してある横葺屋根や外壁のような既設外装材のうちの部分的な取換えを必要とする外装材のみを、その周辺の外装材の取り外しを行なうことなく、また傷つけることなく、しかも容易に交換することができるようになることから、建築外装の工事をより低コストで効率よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】外装材の他側端部の端面図(a)、一側端部の端面図(b)、両側端部の係合の様子を示す端面図(c)である。
【
図3】本発明に係る外装材の一側端部と他側端部の脱着の様子(a~c)を示す略線図である。
【
図4】外装材の脱着作業を援助するための脱着治具の略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、第1に、屋根材とくに横葺き屋根材や建物の外壁材などとして使われる外装材に関して、図示例のような例えば、短辺側どうしの接合構造について提案する。ここで提案する外装材は、例えば横葺き屋根の場合、
図1に示す各種金属板のような矩形状の板材1の短辺側に当る側端部のそれぞれに、即ち一側端部には下ハゼとなる嵌め受け構造部1aを、そしてその他側端部には上ハゼとなる掛止め構造部1bとを形成してなるものであって、それぞれの構造部1a、1bどうしを互いに非密着型(掛け止め)嵌合させて順次に連結させて、屋根を葺き上げるときに用いられるものである。
【0012】
前記それぞれの構造部1a、1bは、
図2に示すとおり、板材1の短辺側に当たる一方の一側端部は端面形状が以下に説明するような嵌め受け構造部1aとして屈曲形成され、また、他方の他側端部は端面形状が以下に説明するような掛止め構造部1bとして屈曲形成されており、両者の嵌合状態は治具を使う弾性変形内の外力の付加によって開放することができる。なお、両構造部1a、1bの嵌合個所は実質的に外からは隠れた状態となるようにしてある。
【0013】
本発明は正に、上ハゼとなる前記掛止め構造部1bを下ハゼとなる嵌め受け構造部1aから、いかにスムーズに外して開放し、先施工した嵌め受け構造部1aの板材固定部8を露出させることができるようにするための、従来の密着型嵌合構造ではなく、非密着型の掛止め嵌合構造を提案するものである。そのためには、とくに先施工の嵌め受け構造部1aの奥行きの深さに対して、後施工の掛止め構造部1bの先端が届かない掛け止め状態の嵌め合い構造にした点に特徴がある。密着型でないこうした嵌合構造にすることで、治具を用いた少しの外力(弾性変形内)で嵌合状態を解除することができるようになるのである。
【0014】
そのための下ハゼとなる前記嵌め受け構造部1aは、
図2(a)に示す端面形状から明らかなように、板材1の短辺側である一側端部の側縁に沿って、以下に説明するような構造のものに屈曲成形される。即ち、この嵌め受け構造部1aは、板材1の左右方向もしくは上下方向、図示例は左右方向(短辺側)の一側端部の延在部分が、まず斜め上向きに屈曲させて得られる斜め上向き起立部2となっており、さらにそれの延在部分が斜め上向きに折り返されて逆向き斜め上向き部3が形成されることで、全体として空間を作りやすい逆くの字状を呈する凹嵌合部pを形造っている。
【0015】
そして、この逆くの字状に形成された凹嵌合部pの前記逆向き斜め上向き部3の延在部分として、斜め下方に延びる斜め折下げ部4とそれに続いてU形に折り曲げて得られる折上げ部5とによって形造られた前垂れ部aが形成されている。
【0016】
かかる逆くの字状凹嵌合部pと前垂れ部aとによって構成される前記嵌め受け構造部1aは、加圧されたときの補強のために、前記前垂れ部aの折上げ部5の延在部分として、前記逆向き斜め上向き部3と平行な斜め折返し部6が形成され、さらにその斜め折返し部6の延在部分には前記斜め上向き起立部2と平行に屈曲形成した折返し起立部7が形成され、さらにその折返し起立部7の延在部分の遊端部には折り曲げられて板材1と平行に延びる固定部8が形成されている。なお、この固定部8は、本発明の外装材を建物下地材9にねじ10を介して固定する部分である。
【0017】
次に、上ハゼとなる前記掛止め構造部1bは、
図2(a)に示す端面形状から明らかなように、板材1の他側端部の側縁に沿って、以下に説明するような構造に屈曲成形されている。即ち、この掛止め構造部1bは、板材1の短辺側の他側端部の延在部分が、まず前記一側端部の前垂れ部aに沿うように形成された折下げ部11と、それの延在部分としてやや斜め上向きに折り返し成形されたL形折返し部12とによって構成され、そのL形折返し部12の遊端部をさらに下側に折り返してなるU形折曲げ部12aを設けてなる構造である。
【0018】
略逆くの字形を呈する下ハゼとなる前記嵌め受け構造部1aと略L形を呈する上ハゼとなる前記掛止め構造部1bとは、
図2(c)に示すように非密着型の掛止め嵌合構造となるように順次に連結されて、例えば屋根葺きの施工が行なわれるが、これは建物外壁施工の場合も同様に行なわれる。
【0019】
前記両構造部1a、1bによる掛止め嵌合構造において、互いに連結した状態では、前記嵌め受け構造部1aの前記逆向き斜め上向き部3とその延在部分の前記前垂れ部a、および前記掛止め構造部1bのL形折返し部12とは、断面が略三角形状の空間Sを形造るように掛合させた非密着型嵌合構造とすることが望ましい。それは、両構造部1a、1bを素材(板材)の弾性限界内での変形で嵌め入れ、嵌め外しができるようにする上で好ましい形状と考えられるからである。
【0020】
次に、施工後の前記両構造部1a、1bの嵌合部分を、
図4に示す脱着治具Jを介して、既に複数の前記屋根材等の外装材を敷設施工した状態のものにおいて、その施工後の前後左右に連結されている外装材のうちの1つを取り外してから別の交換外装材に取り代える方法につき、
図3に基づいて説明する。
【0021】
図3(a)は、取り外し前の嵌合状態を示しており、
図3(b)は、
図4に示す脱着治具Jを使って嵌め外し(掛け外し)を行う準備状態であり、そして
図3(c)は該脱着治具Jの突き当て部材13と掛外し部材14とを使い、その突当て部材13を前進させて嵌め受け構造部1aの前記逆くの字状凹嵌合部pに突き当てて(押し込んで)前記逆斜め上向き部3ならびに斜め折下げ部4、前記前垂れ部aを上方に反り返らせると同時に、前記掛外し部材14の先端を前記掛止め構造部1bのL形折返し部12を跳ね上げると同時に手前に引き戻して両構造部1a、1bの掛止め嵌合状態を開放させる状態を示しており、このようにして施工済み状態下にある外装材の一部の取り外しと、同様に逆の操作を繰り返して新規な交換外装材の装着を行なうことができる。
【0022】
なお、
図4の脱着治具Jは、交換外装材の上に戴置する台板A上に、支持フレームBを介して傾動可能に支持されている操作杆Cを軸Dを中心に前後に傾動させることにより、突当て部材13の前進と、掛外し部材14の掛け上げとを行なう治具の構造を簡単に例示したものである。
【実施例】
【0023】
なお、本発明において利用する前記脱着治具Jは、上述したように、取り外したい外装材の前記押込み部に前記突当て部材13を押し付ける一方、掛外し部材14によって掛止め構造部1bを跳ね上げて拡開させることにより、両構造部の嵌合状態を解除して、引き出すという一連の連続した動作の中で容易に取り外すことができるが、一般的な考え方では押込みと引っ掛けの動作を同時に果す構造となっていないことから、例えば無理に嵌め外しを行なおうとすると、外装材を却って傷つけてしまうおそれがある。
【0024】
因みに、前記脱着治具Jを用いて屋根材を取り外した状況について、本発明品と従来の横葺屋根材とについて比較シミュレーションを実施した。なお、解析には、接触条件の再現と、形状および材料非変形状態を解析できるFEM解析プログラム「ADINA」を用いた。
【0025】
そして、嵌め受け構造部1aの前垂れ部a先端と掛止め構造部1bのL形折返し部12の遊端との取外し目標変位(
図2-C)、即ち取り外しが可能な変形量については、凹嵌合部pを押込み時の右移動距離とL形折返し部12の左移動距離との合計で10mmに達する場合の、必要荷重、外装材各部の曲げ応力度として求めた。
【0026】
その結果、本発明に適合する例での発生曲げ応力は370N/mm2(真応力)であったのに対し、一般品は620N/mm2(真応力)程度であり、本発明品では約40%の応力低減を図ることができた。その結果、本発明適合品では、素材の降伏点400N/mm2を超えることなく、健全な単独での取り外しが可能になったが、従来品の場合、大幅に超過してしまい、塑性変形が残ってしまうおそれのあることが分った。また、取り外しに必要な荷重については、本発明適合品では必要荷重屋根材長さ1mあたり580N/mであった。これは従来品の890N/mに比べて35%低減可能であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、主として横葺き屋根材のような建築外装材として、特にそれの部分脱着に際して優れた効力を発揮するものであるが、その他の建築物以外の各種構造物の外装材としても有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 板材
1a 嵌め受け構造部
1b 掛止め構造部
2 斜め上向き起立部
3 逆向き斜め上向き部
p 凹嵌合部
4 斜め折下げ部
5 折上げ部
a 前垂れ部
6 斜め折返し部
7 折返し起立部
8 固定部
9 建物下地材
10 ねじ
11 折下げ部
12 L形折返し部
12a U形折曲げ部
13 突当て部材
14 掛外し部材
A 台板
B 支持フレーム
C 操作杆
J 脱着治具
S 空間