(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】音声認識システム及び音声認識方法
(51)【国際特許分類】
G10L 15/10 20060101AFI20221025BHJP
G10L 15/22 20060101ALI20221025BHJP
G10L 15/00 20130101ALI20221025BHJP
H04M 3/51 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G10L15/10 500Z
G10L15/22 453
G10L15/00 200Z
H04M3/51
(21)【出願番号】P 2018177526
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】呰上 興平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 隆司
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-159558(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069076(WO,A1)
【文献】特開2017-135642(JP,A)
【文献】特開2017-085411(JP,A)
【文献】特開2011-151497(JP,A)
【文献】特開2004-252668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 13/00-25/93
H04M 3/51
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の発話内容を録音する通話録音装置と、
前記通話録音装置に録音された
前記顧客の発話内容に対して音声認識を行う音声認識装置と、
前記音声認識装置により音声認識された前記顧客の発話内容の音声認識結果に基づいて、
オペレータが前記顧客から受けた負荷状態を評価して評価結果を求める認識結果管理装置と、
前記認識結果管理装置により求めた前記負荷状態の前記評価結果を負荷状態画面に表示する管理者端末と、
を有
し、
前記認識結果管理装置は、
前記負荷状態を評価するための評価値を規定した負荷評価値テーブルと、
前記オペレータの負荷となる負荷単語を規定した負荷単語テーブルと、
前記オペレータが前記顧客から受けた前記負荷状態を評価した前記評価結果を格納する負荷状態テーブルと、を有し、
前記認識結果管理装置は、
前記音声認識装置から取得した前記顧客の発話内容の前記音声認識結果と、前記負荷評価値テーブル及び前記負荷単語テーブルとを参照して、前記オペレータが前記顧客から受けた前記負荷状態を前記オペレータごとに評価して、前記評価結果を前記オペレータごとに前記負荷状態テーブルに蓄積し、
前記管理者端末は、
前記負荷状態テーブルに蓄積された前記評価結果を前記オペレータごと前記負荷状態画面に表示し、
前記認識結果管理装置は、
前記負荷評価値テーブルにおいて、前記評価値として、前記顧客の発話内容の非言語情報中に含まれる前記顧客の発話内容の音量と話速及び前記顧客の発話内容の言語情報中に含まれる前記負荷単語の件数を規定することを特徴とする音声認識システム。
【請求項2】
前記認識結果管理装置は、
前記音声認識装置から取得した前記顧客の発話内容の認識結果と、前記
負荷評価値テーブルで規定された前記評価値と比較することにより、前記顧客の発話内容が前記オペレータに対して負荷となるか否かを評価し、前記評価結果を負荷又は平常として前記負荷状態テーブルに蓄積することを特徴とする請求項1に記載の音声認識システム。
【請求項3】
前記認識結果管理装置は、
前記顧客の発話内容の前記音声認識結果から、前記顧客の発話内容の前記非言語情報を取得し、
前記非言語情報の中から発話音量を抽出し、
前記発話音量と前記音量の評価値を比較して、前記発話音量が前記音量の前記評価値よりも大きいかを判定し、
前記発話音量が前記音量の評価値よりも大きい場合には、前記音量の評価結果を前記負荷と規定し、
前記発話音量が前記音量の評価値よりも大きくない場合には、前記音量の評価結果を前記平常と規定することを特徴とする請求項
2に記載の音声認識システム。
【請求項4】
前記認識結果管理装置は、
前記顧客の発話内容の前記音声認識結果から、前記顧客の発話内容の前記非言語情報を取得し、
前記非言語情報の中から発話話速を抽出し、
前記発話話速と前記話速の評価値を比較して、前記発話話速が前記話速の前記評価値よりも大きいかを判定し、
前記発話話速が前記話速の評価値よりも大きい場合には、前記話速の評価結果を前記負荷と規定し、
前記発話話速が前記話速の評価値よりも大きくない場合には、前記話速の評価結果を前記平常と規定することを特徴とする請求項
2に記載の音声認識システム。
【請求項5】
前記認識結果管理装置は、
前記顧客の発話内容の前記音声認識結果から、前記顧客の発話内容の前記言語情報を取得し、
前記言語情報の中から単語情報を抽出し、
前記単語情報の中に、前記負荷単語テーブルに規定された前記負荷単語が存在するかを判定し、
前記負荷単語が存在する場合には、前記単語情報中の前記負荷単語の発話単語件数を算出し、
前記発話単語件数と前記負荷単語の評価値を比較して、前記発話単語件数が前記負荷単語の評価値よりも大きいかを判定し、
前記発話単語件数が前記負荷単語の評価値よりも大きい場合には、前記負荷単語の評価結果を前記負荷と規定し、
前記発話単語件数が前記負荷単語の評価値よりも大きくない場合には、前記負荷単語の評価結果を前記平常と規定することを特徴とする請求項
2に記載の音声認識システム。
【請求項6】
前記管理者端末は、設定用画面を表示し、
前記認識結果管理装置は、
前記
設定用画面を介して、前記負荷評価値テーブルに前記評価値を設定し、前記負荷単語テーブルに前記負荷単語を設定することを特徴とする請求項
1に記載の音声認識システム。
【請求項7】
顧客の発話内容を録音する通話録音装置と、
前記通話録音装置に録音された
前記顧客の発話内容に対して音声認識を行う音声認識装置と、
前記音声認識装置により音声認識された前記顧客の発話内容の音声認識結果に基づいて、
オペレータが前記顧客から受けた負荷状態を評価して評価結果を求める認識結果管理装置と、
前記認識結果管理装置により求めた前記負荷状態の前記評価結果を負荷状態画面に表示する管理者端末と、
を有
し、
前記管理者端末は、
前記評価結果を集計した集計結果を、前記オペレータ及び前記顧客ごとに、通話開始時刻にそって前記負荷状態画面に表示することを特徴とする音声認識システム。
【請求項8】
顧客の発話内容を録音する通話録音装置と、
前記通話録音装置に録音された
前記顧客の発話内容に対して音声認識を行う音声認識装置と、
前記音声認識装置により音声認識された前記顧客の発話内容の音声認識結果に基づいて、
オペレータが前記顧客から受けた負荷状態を評価して評価結果を求める認識結果管理装置と、
前記認識結果管理装置により求めた前記負荷状態の前記評価結果を負荷状態画面に表示する管理者端末と、
を有
し、
前記管理者端末は、
前記評価結果を集計した集計結果を、日毎又は週毎に、前記オペレータに負荷となる通話件数を前記オペレータの全体の通話件数で割ったパーセント表記で表示することを特徴とする音声認識システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声認識システム及び音声認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コールセンタやオフィスにおいて、通話先の顧客とオペレータの通話内容を録音して、後日のトラブルに備えたり、内容をレビューしたりすることが行われている。録音データは、音声認識してテキストデータに変換することにより、コンピュータシステムで検索したり表示あるいは印刷できるようになり、業務データとしてより有効活用することができる。
【0003】
コールセンタにおける音声認識の一般的な活用は、オペレータの発話内容から取得した認識結果による応対品質改善と、顧客の発話内容から取得した認識結果によるカスタマーサービス向上が主である。
【0004】
一方で、コールセンタ業務に従事するオペレータの離職率は高い傾向にあり、オペレータの離職率を抑えることが運用コストを下げることに繋がる。オペレータの離職理由のひとつとして、オペレータが電話対応時に顧客との通話から受ける負荷が挙げられる。
【0005】
オペレータの負荷状態を把握する技術として、例えば、特許文献1がある。特許文献1では、顧客からの問い合わせに対するオペレータの対応時間とオペレータに対するヒアリング等に基づいてオペレータの負荷状態を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、オペレータの負荷状態の把握は、オペレータの管理者がオペレータの対応時間に基づいてオペレータへのヒアリング等を元に行っている。この方法では、オペレータの潜在的な負荷状態の把握は困難である。その理由は、特許文献1では、顧客の発話に着目することなく、オペレータの発話に着目してオペレータの負荷状態の把握しているからである。
【0008】
本発明の目的は、音声認識システムにおいて、顧客の発話内容に着目することによりオペレータの潜在的な負荷状態を把握することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の音声認識システムは、顧客とオペレータと通話内容の内、前記顧客の発話内容と前記オペレータの発話内容とを別々に録音する通話録音装置と、前記通話録音装置に録音された前記顧客の発話内容と前記オペレータの発話内容に対して音声認識を行う音声認識装置と、前記音声認識装置により音声認識された前記顧客の発話内容の音声認識結果に基づいて、前記オペレータが前記顧客から受けた負荷状態を評価して評価結果を求める認識結果管理装置と、前記認識結果管理装置により求めた前記負荷状態の前記評価結果を負荷状態画面に表示する管理者端末を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様の音声認識方法は、顧客と複数のオペレータと通話内容の内、前記顧客の発話内容と前記オペレータの発話内容とを別々に録音し、録音された前記顧客の発話内容と前記オペレータの発話内容に対して音声認識を行い、音声認識された前記顧客の発話内容の音声認識結果に基づいて、前記オペレータが前記顧客から受けた負荷状態を評価して評価結果を前記オペレータごとに求め、前記負荷状態の前記評価結果を負荷状態画面に前記オペレータごとに表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、音声認識システムにおいて、顧客の発話内容に着目することによりオペレータの潜在的な負荷状態を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】負荷評価値テーブル(T-1)の構成を示す図である。
【
図3】負荷単語テーブル(T-2)の構成を示す図である。
【
図4】負荷状態テーブル(T-3)の構成を示す図である。
【
図5】負荷評価値テーブル(T-1)で定義された「音量」、「話速」、「単語」の基準値(評価値)の仕様を示す図である。
【
図6】オペレータに「単語」「音量」「話速」の評価値それぞれ設定した例を示す図である。
【
図8】オペレータAにおける2通話分の負荷状態の算出例を示す図である。
【
図13】音声認識システムの動作を説明するための図である。
【
図14】評価値の選定方法(5-1)を説明するためのフローチャートである。
【
図15】項目「音量」に関する負荷の分析フローである。
【
図16】項目「話速」に関する負荷の分析フローである。
【
図17】項目「単語」に関する負荷の分析フローである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施例について説明する。
【0014】
最初に、
図1を参照して、コールセンタシステムについて説明する。
コールセンタにおける音声認識システムでは、一般的に着番号等のCTI(Computer Telephony Integration)情報を音声認識エンジン(辞書)に紐付けて、音声認識を行う。CTI情報は、言語を特定することができる情報である。ここで、CTIとは、電話とコンピューターを連携して利用する技術の総称をいう。コールセンタなどで、顧客の電話番号から顧客情報をデータベースに照会したり、自動発信や自動転送したりする技術である。
【0015】
図1に示されるように、コールセンタシステムは、ネットワーク100を介して、IP-PBX(Internet Protocol-Private Branch eXchange:IP回線対応構内交換機)装置101、CTI装置102、音声通話処理システム103、オペレータ用端末104及び管理者用端末105が接続されて構成されている。
【0016】
IP-PBX装置101は、顧客106の通話端末107からの呼を受けて、IP網と公衆網108のプロトコル変換、発着信の呼制御などを行う。CTI装置102は、IP-PBX装置101から通話情報(着番号等)を取得して、音声通話処理システム103に送信する。
【0017】
オペレータ用端末104は、オペレータ109がオペレータ業務に使うオペレータPC端末である。オペレータ109は、通話端末(IP電話機)110を介して顧客106の通話端末107と公衆網108を介して通話を行う。管理者用端末105は、認識結果管理装置115により求めた負荷状態の評価結果を負荷状態画面に表示する。
【0018】
顧客106の通話端末107から公衆網108を介して接続されるIP-PBX装置101が、ネットワーク100を介して通話端末(IP電話機)110と接続して通話を行う。オペレータ109は、通話端末(IP電話機)110から電話操作をすることができ、顧客106からの着信があると、顧客106とオペレータ109は通話状態になる。
【0019】
音声通話処理システム103は、通話録音情報管理装置111、通話録音装置112、音声認識制御装置113、音声認識装置114、認識結果管理装置115を有する。
【0020】
通話録音情報管理装置111は、CTI情報や録音情報を蓄積する機能を持つ。
通話録音装置112は、ミラーリングした通話音声を取得して録音する機能および通話録音情管理装置111に送信する機能を持つ。
【0021】
通話録音装置112は、通話端末107でやりとりされる通話のデータストリームを、IP-PBX装置101を介して録音データとして録音する装置である。通話端末107での通話は、通話録音装置112に送られて録音ファイルとして保存される。
【0022】
具体的には、オペレータ109は、通話端末(IP電話機)110を使用し、IP-PBX装置101を介して公衆網108の顧客106と会話する。オペレータ109の音声(RTPパケット)は、通話端末(IP電話機)110から公衆網108へ送信される。顧客106の音声(RTPパケット)は、公衆網108から通話端末(IP電話機)110へ送信される。RTPパケットの送信元がIP電話機110であればオペレータ109の発話、RTPパケットの送信元が公衆網108であれば顧客106の発話と区別する。これにより、通話録音装置112は、顧客106の音声とオペレータ109の音声を別々に録音し、それぞれの音声のみの音声ファイルを作成する。具体的には、顧客106の音声は、顧客用音声ファイルに録音され、オペレータ109の音声は、オペレー用音声ファイルに録音される。
【0023】
通話録音装置112は、ミラーリングした通話音声を取得して録音して音声認識装置114に送信する。通話録音情報管理装置111は、通話情報と録音情報を対応付けて管理するためのサーバである。音声認識装置114は、音声認識を実行する音声認識エンジンを持ち、認識結果を認識結果管理装置115に送信する。音声認識装置114は、録音データを音声認識エンジンによりテキストデータに変換する。
【0024】
音声認識制御装置113は、音声認識装置114へ認識の実行を指示する機能を持つ。認識結果管理装置115は、音声認識装置114が出力するテキストデータをデータベースに格納し音声認識結果を蓄積して、その認識結果を出力する。
【0025】
認識結果管理装置115は、負荷状態を数値化するための評価値を定義した負荷評価値テーブル(T-1)(
図2参照)と、オペレータ109の負荷となる単語を規定した負荷単語テーブル(T-2)(
図3参照)、言語情報と非言語情報からオペレータの負荷状態を評価した評価結果を格納する負荷状態テーブル(T-3)(
図4参照)を有する。
【0026】
負荷評価値テーブル(T-1)及び負荷単語テーブル(T-2)は、管理者が評価値を設定する。具体的には、認識結果管理装置115は、管理者に対して、管理者用端末105に評価値設定用画面を提供して表示する。管理者は、評価値設定用画面を介して評価値を設定する。
【0027】
図2を参照して、負荷評価値テーブル(T-1)の構成について説明する。
図2に示すように、「負荷評価値テーブル」(T-1)には、顧客の発話内容から抽出した「音量」「話速」「単語」の負荷算出における基準値(評価値)をオペレータごと設定する。
【0028】
例えば、
図2に示すように、オペレータAに対しては、「音量」:40、「話速」:“d”、「単語」:10が設定される。オペレータBに対しては、「音量」:50、「話速」:“50”、「単語」:“d”が設定される。オペレータCに対しては、「音量」:“d”、「話速」:“20”、「単語」:“d”が設定される。また、“default”として、「音量」:30、「話速」:“40”、「単語」:“5”が設定される。ここで、“d”は、“default”の設定値を使用することを意味する。例えば、オペレータCに着目すると、「音量」として“d”が設定されているので、“default”の「音量」:30が提供され「音量」:30が設定される。
【0029】
ここで、
図5を参照して、「負荷評価値テーブル」(T-1)で定義された「音量」、「話速」、「単語」の基準値(評価値)の仕様について説明する。
図5に示すように、音量は、顧客の声の大きさを意味し、単位は「dB」である。話速は、顧客の1秒間に含まれる音節の件数を意味し、単位は「word/sec」である。単語は、負荷単語が顧客の発話内容に含まれる件数を意味し、単位は「件」である。「負荷評価観点」は、音量に関しては大きい程、負荷は増える。話速に関しては大きい程、負荷は増える。単語に関しては、大きい程、負荷は増える。
【0030】
図6を参照して、オペレータ109に単語、音量、話速の評価値それぞれ設定した例について説明する。
図6に示すように、オペレータAに対しては、「音量」:40、「話速」:2、「単語」:10が設定される。オペレータBに対しては、「音量」:“d”、「話速」:“d”、「単語」:“5”が設定される。オペレータCに対しては、「音量」:“d”、「話速」:“20”、「単語」:“d”が設定される。また、オペレータ“default”に対しては、「音量」:30、「話速」:“10”、「単語」:“2”が設定される。
【0031】
図6の各パラメータについて、”d”を設定している項目については、オペレータ“default”に設定した値を用いる。例えば、オペレータBの音量は”d”が設定されているので、“default”から値を取得して30を評価値とする。また、オペレータBの話速は”d”が設定されているので、“default”から値を取得して10を評価値とする。
【0032】
図3を参照して、「負荷単語テーブル」(T-2)の構成について説明する。
図3に示すように、「負荷単語テーブル」(T-2)には、オペレータにとって負荷となる負荷単語を設定する。例えば、負荷単語として、“AAAA”、“BBBB”、“ZZZZ“が設定される。
【0033】
図7を参照して、負荷単語の設定例について説明する。
図7に示すように、負荷単語の設定例は、例えば、「上司を呼んでくれ」(No.1)、「他の人に代わって」(No.2)等である。
【0034】
図4を参照して、負荷状態テーブル(T-3)の構成について説明する。
図4に示すように、負荷状態テーブル(T-3)では、オペレータA、B、Cごとに通話ID、外線発信番号、通話終了時間、評価結果が定義されている。ここで、評価結果として、音量、話速、単語を定義する。音量、話速、単語の評価結果は、“負荷”と“平常”で表す。
【0035】
例えば、オペレータAの通話ID“0x3001”に対しては、「音量」の評価結果は「負荷」であり、「話速」の評価結果は「負荷」であり、「単語」の評価結果は「負荷」である。オペレータBの通話ID“0x3007”に対しては、「音量」の評価結果は「平常」であり、「話速」の評価結果は「平常」であり、「単語」の評価結果は「平常」である。オペレータCの通話ID“0x3010”に対しては、「音量」の評価結果は「負荷」であり、「話速」の評価結果は「負荷」であり、「単語」の評価結果は「平常」である。
【0036】
次に、オペレータの負荷状態を求めて管理者用端末105に提供する方法について説明する。
【0037】
まず、管理者は、負荷評価値テーブル(T-1)の各項目と、負荷単語テーブル(T-2)に値を設定しておく。音声認識認装置114は、顧客107とオペレータ109の通話完了時に音声認識を行う。
【0038】
認識結果管理装置115は、音声認識装置114から取得した顧客107の認識結果と、負荷評価値テーブル(T-1)及び負荷単語テーブル(T-2)の内容からオペレータの負荷状態を評価して、評価結果を負荷状態テーブル(T-3)に格納する。ここで、音声認識装置114は、通話録音装置112に格納された顧客用音声ファイルに基づいて顧客107の音声を認識する。
【0039】
ここで、
図8にオペレータAにおける2通話分の負荷状態の算出例を示す。
図8に示すように、オペレータAの通話ID“0x3001”に対しては、「通話時間」は300秒であり、「音量」の評価結果は「負荷」であり、「話速」の評価結果は「負荷」であり、「単語」の評価結果は「正常」である。また、オペレータAの通話ID“0x3002”に対しては、「通話時間」は120秒であり、「音量」の評価結果は「負荷」であり、「話速」の評価結果は「負荷」であり、「単語」の評価結果は「負荷」である。
【0040】
認識結果管理装置115は、オペレータ及び通話顧客ごとに通話開始時刻にそって集計結果を求め、管理者用端末105に提供して負荷状態参照画面(管理者PC画面)に表示させる。管理者は、負荷状態参照画面を介して、認識結果管理装置115が評価した内容からオペレータ109の負荷状態を判断する。
【0041】
このように、実施例では、通話の顧客側の発話内容に着目し、顧客側の発話内容の音声認識結果から、オペレータ109への負荷を算出することで管理者に対してオペレータ109の負荷状態を提供する。
【0042】
従来の音声認識システムでは、オペレータの発話内容に着目してオペレータの対応改善を行っていた。これに対して、実施例では顧客側の発話内容に着眼点を変更したうえで、音声認識結果の判定条件をオペレータの対応改善ではなく、音声認識と分析によりオペレータに負荷を与える要素の評価とする。実施例の音声認識システムでは、顧客の発話内容に着目することによりオペレータの潜在的な負荷状態を把握する。
【0043】
負荷を与える認識結果の要素は、「言語情報」中に含まれる単語、「非言語情報」中に含まれる発話の音量及び話速を対象とする。単語評価として、顧客の発話内容中にオペレータの負荷となる単語の出現数を評価する。音量評価として、顧客の発話時の音量を評価する。話速評価として顧客の発話時の通話速度を評価する。評価項目について評価値を設定した上で、発話内容からの取得情報と評価値の大小関係から負荷状態を判断する。そして、評価したオペレータの負荷状態を管理者に対して集計結果として提供する。
【0044】
次に、管理者用端末105に表示される負荷状態参照画面(管理者PC画面)について説明する。管理者は、オペレータ109の負荷状態を管理者PC画面から判断する。
図9に示すように、負荷状態画面には、オペレータの通話に対する負荷分析結果を表示する。負荷状態画面は、管理者に対して、「負荷状態テーブル」(T-3)の内容から、1通話ごとの負荷状況を表示する。
【0045】
また、
図10に示すように、負荷状態画面には、オペレータの通話に対する負荷分析結果を表示する。負荷状態画面は、管理者に対して、「負荷状態テーブル」(T-3)から週を指定し指定週について、日毎の(負荷となる通話件数/オペレータの全体通話件数)をパーセント表記で表示する。
【0046】
また、
図11に示すように、負荷状態画面には、オペレータの通話に対する負荷分析結果を表示する。負荷状態画面は、管理者に対して、「負荷状態テーブル」(T-3)から月を指定し指定月について、週毎の(負荷となる通話件数/オペレータの全体通話件数)をパーセント表記で表示する。
【0047】
次に、
図12のシステム構成図及び
図13のフローチャートを参照して、コールセンタにおける音声認識システムの動作(着信から負荷算出までの動作)について説明する。
【0048】
例として、オペレータ109と顧客106との間の通話終了後に音声認識を実施((1)~(4))後、オペレータ109が顧客106の発話から受ける負荷を算出する(5)場合を説明する。
【0049】
(1)通話録音情報管理装置111は、CTI情報を受信する。
(2)通話録音装置112が、録音情報を通話録音情報管理装置111に送信する。
(3)通話録音情報管理装置111から音声認識制御装置113へCTI情報と録音情報を送信する。
(4)音声認識制御装置113は、音声認識装置112にCTI情報と録音情報を送信して音声認識装置112に音声認識の実行を依頼する。音声認識装置112は音声認識を行い、認識結果を音声認識制御装置113に送信する。音声認識制御装置113は、認識結果を認識結果管理装置115に送信する。
(5)認識結果管理装置115は、音声認識制御装置113から受信した認識結果と、「負荷価値テーブル」(T-1)及び「負荷単語テーブル」(T-2)とからオペレータが顧客から受けた負荷を分析し、分析結果を評価結果として「負荷状態テーブル」(T-3)に蓄積する。負荷分析は、後述のように、評価値の選定(5-1)、負荷の分析(5-2)、分析結果の保存(5-3)の順に行う。認識結果管理装置115は、管理者用端末105に認識結果を表示させ、管理者は認識結果を閲覧する。
【0050】
次に、
図14を参照して、評価値の選定方法(5-1)について説明する。
最初に、「負荷価値テーブル」(T-1)の評価値を取得する(S141)。
次に、通話情報のオペレータ名が「負荷価値テーブル」(T-1)上に存在するかを判定する(S142)。
【0051】
存在する場合には、「負荷価値テーブル」(T-1)のオペレータに対応するレコードの“音量”、“話速”、“単語”の値を取得する(S143)。
【0052】
存在しない場合には、「負荷価値テーブル」(T-1)のオペレータ名:defaultのレコード上の値を評価値とする(S144)。
【0053】
次に、「負荷価値テーブル」(T-1)のオペレータのレコード項目について値が“d”のものが存在するか判定する(S145)。
存在する場合には、値が0の項目は「負荷価値テーブル」(T-1)のオペレータ名:defaultのレコード上の値を評価値とする(S146)。
存在しない場合には、「負荷価値テーブル」(T-1)の値を評価値とする(S147)。
【0054】
次に、
図15~
図17を参照して、負荷の分析方法(5-2)について説明する。オペレータ109が顧客106の発話内容から受けた負荷の分析を「音量」、「話速」、「単語」について実施する。
【0055】
図15を参照して、項目「音量」に関する負荷の分析方法について説明する。
まず、認識結果から顧客106の発話内容に関する非言語情報を取得する(S151)。
次に、非言語情報の中から、音量を抽出する(S152)。
次に、顧客106の発話音量と音量評価値を比較する(S153)。
比較の結果、顧客106の発話音量が音量評価値よりも大きいかを判定する(S154)。
判定の結果、顧客106の発話音量が音量評価値よりも大きい場合には、通話から項目「音量」について評価結果を“負荷”とする(S155)。
判定の結果、顧客106の発話音量が音量評価値よりも大きくない場合には、通話から項目「音量」について評価結果を“平常”とする(S156)。
【0056】
次に、
図16を参照して、項目「話速」に関する負荷の分析方法について説明する。
まず、認識結果から顧客106の発話内容に関する非言語情報を取得する(S161)。
次に、非言語情報の中から、話速を抽出する(S162)。
次に、顧客106の発話話速と話速評価値を比較する(S163)。
比較の結果、顧客106の話速音量が話速評価値よりも大きいかを判定する(S164)。
判定の結果、顧客106の話速音量が音量評価値よりも大きい場合には、通話から項目「話速」について評価結果を“負荷”とする(S165)。
判定の結果、顧客106の話速音量が話速評価値よりも大きくない場合には、通話から項目「話速」について評価結果を“平常”とする(S166)。
【0057】
次に、
図17を参照して、項目「単語」に関する負荷の分析方法について説明する。
まず、認識結果から顧客106の発話内容に関する言語情報を取得する(S171)。
次に、非言語情報の中から、単語情報を抽出する(S172)。
次に、単語情報の中に「負荷単語テーブル」(T-2)に登録した単語が存在するかを判定する(S173)。
【0058】
存在する場合には、単語情報中に存在する「負荷単語テーブル」(T-2)に登録した単語の数をカウントする。カウントで算出した値を発話負荷単語数とする(S174)。
存在しない場合には、発話負荷単語数を0とする(S175)。
【0059】
次に、顧客106の発話負荷単語数と単語数評価値を比較する(S176)。
次に、比較の結果、顧客106の発話負荷単語数が単語数評価値よりも大きいかを判定する(S177)。
判定の結果、顧客106の発話負荷単語数が単語数評価値よりも大きい場合には、通話から項目「単語」について評価結果を“負荷”とする(S178)。
判定の結果、顧客106の発話負荷単語数が単語数評価値よりも大きくない場合には、通話から項目「単語」について評価結果を“平常”とする(S179)。
【0060】
最後に、分析結果の保存方法(5-3)について説明する。
分析した「単語」、「音量」、「話速」の負荷結果を「負荷状態テーブル」(T-3)に保存する。保存時には、負荷結果に加えて、通話に紐づく「オペレータ名」、「通話ID」、「外線発信番号」、「通話開始時刻」及び「通話時間」を音声認識制御装置113より取得してレコードとして記録する。
【0061】
実施例によれば、管理者はオペレータが顧客との通話から受ける負荷とオペレータの状態を把握することができる。さらに、管理者がオペレータの負荷傾向を早期に把握することで、電話対応における負荷の増大を事前に緩和することができる。
【0062】
尚、実施例では、顧客用音声ファイルに基づいてオペレータの負荷を求めているが、本発明はこれに限定されず、オペレー用音声ファイルをも併用してオペレータの負荷を求めても良い。
【符号の説明】
【0063】
100 ネットワーク
101 IP-PBX装置
102 CTI装置
103 音声通話処理システム
104 オペレータ用端末
105 管理者用端末
106 顧客
107 通話端末
108 公衆網
109 オペレータ
110 通話端末(IP電話機)
111 通話録音情報管理装置
112 通話録音装置
113 音声認識制御装置
114 音声認識装置
115 認識結果管理装置