IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本信号株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-案内システム 図1
  • 特許-案内システム 図2
  • 特許-案内システム 図3
  • 特許-案内システム 図4
  • 特許-案内システム 図5
  • 特許-案内システム 図6
  • 特許-案内システム 図7
  • 特許-案内システム 図8
  • 特許-案内システム 図9
  • 特許-案内システム 図10
  • 特許-案内システム 図11
  • 特許-案内システム 図12
  • 特許-案内システム 図13
  • 特許-案内システム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】案内システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/005 20060101AFI20221025BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
G08G1/005
G01C21/26 P
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018177566
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2019215840
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2018108978
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(72)【発明者】
【氏名】坂口 隆則
(72)【発明者】
【氏名】川崎 栄嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 朋紀
(72)【発明者】
【氏名】森山 麗
(72)【発明者】
【氏名】谷藤 竜太郎
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-103722(JP,A)
【文献】特開2012-181081(JP,A)
【文献】特開2017-116440(JP,A)
【文献】特開2004-192366(JP,A)
【文献】特開2015-200609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者との対話から目的対象を特定し、特定した目的対象に関する経路案内を行う複数の案内部と、
利用者に固有の特徴から利用者を個別認証可能に認識する利用者認識部と、
異なる位置に配置された前記複数の案内部と通信可能であり、利用者に対して、前記複数の案内部の間で連携された経路案内を行うとともに、経路外の位置にある案内部における利用者の存在を前記利用者認識部により確認する統括制御部とを備える案内システム。
【請求項2】
前記統括制御部は、前記利用者認識部により、経路から一定以上離れている位置にある案内部において利用者が認識された場合、当該利用者が経路案内に基づいて向かうべき方向から外れて間違った方向に向かっていると判断する、請求項1に記載の案内システム。
【請求項3】
前記利用者認識部は、前記複数の案内部又は前記統括制御部に設けられ、一の案内部又は前記統括制御部において認識された利用者の認識情報に基づいて、他の案内部又は前記統括制御部において照合することで、同一の利用者についての認証を行う、請求項1及び2のいずれか一項に記載の案内システム。
【請求項4】
前記複数の案内部又は前記統括制御部は、前記利用者認識部での利用者認識において、一致する情報が無い場合、当該利用者の目的対象を特定するための対話をし、利用者の新規登録を行う、請求項3に記載の案内システム。
【請求項5】
前記複数の案内部は、利用者を撮像する撮像部を有し、
前記利用者認識部は、前記撮像部で取得された情報に基づき利用者の認識をする、請求項~4のいずれか一項に記載の案内システム。
【請求項6】
前記利用者認識部は、前記撮像部により撮像された利用者の顔を認識する顔認識部を含む、請求項5に記載の案内システム。
【請求項7】
前記利用者認識部は、利用者の声に基づき認識をする声紋認識部を含む、請求項~6のいずれか一項に記載の案内システム。
【請求項8】
前記統括制御部は、利用者の情報と、当該利用者の目的対象の情報とを紐付けて保存する、請求項1~7のいずれか一項に記載の案内システム。
【請求項9】
前記統括制御部は、一の案内部での経路案内から外れた場所にいる利用者に対して、他の案内部により新たな経路案内を行わせる、請求項1~8のいずれか一項に記載の案内システム。
【請求項10】
前記統括制御部は、時間の経過に応じて、先の案内部での経路案内から変更した新たな経路案内を、後の案内部に行わせる、請求項1~9のいずれか一項に記載の案内システム。
【請求項11】
前記統括制御部は、前記複数の案内部による利用者への経路案内を終了したと判断した場合、当該利用者に関する情報を削除する、請求項1~10のいずれか一項に記載の案内システム。
【請求項12】
前記複数の案内部は、人型の立体構造物で構成されるロボットである、請求項1~11のいずれか一項に記載の案内システム。
【請求項13】
経路案内を行う所定の範囲内に設置され、前記統括制御部での制御に基づき利用者が保持する通信端末と通信を行う複数のビーコンを備え、
前記統括制御部は、前記複数のビーコンによる利用者との通信結果に基づき利用者の位置を特定し、経路案内を送信する、請求項1~12のいずれか一項に記載の案内システム。
【請求項14】
前記複数の案内部は、前記通信端末に対して経路案内を取得させるためのコード情報を発行し、
前記統括制御部は、前記通信端末からの前記コード情報に基づくアクセスを受け付けると、前記複数のビーコンのうち、一の案内部と他の案内部との間に配置されるビーコンを介して経路案内を継続する、請求項13に記載の案内システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地下鉄の構内や各種イベント会場、あるいは大型店舗といった複数の目的地等が生じ得る場所において、利用者に対して目的地への経路案内等を行う案内システムに関する。
【背景技術】
【0002】
目的地までの経路案内あるいは道案内を行うものとして、複数のロボットを利用するものが知られている(特許文献1,2参照)。例えば、特許文献1では、ロボット間でタスクを引き継ぐ態様となっており、これを利用して構内案内を引き継いでいくものとなっている。一方、特許文献2では、複数の移動ロボットが用意され、各移動ロボットが一貫して目的となる場所に誘導する態様となっている。
【0003】
また、屋内でも経路案内を可能とする経路案内システムとして、設置された複数のビーコンのうち利用者の近くにあるビーコンの位置情報を利用者の通信端末に送信するものも知られている(特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような場合、各ロボット間において予定通りに引き継がれていくことを前提としないと動作が成立しない可能性がある。また、上記特許文献2のような場合、1人の利用者に対して、1つの移動ロボットが対応することになり、多くの利用者が存在する場合には、適さない可能性がある。特に、利用者の目的地が一度の案内では経路を覚えきれない程度に遠い、といったような場合には、的確で迅速な経路案内ができなくなる可能性がある。なお、この問題については、特許文献3までを考慮しても、同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-103722号公報
【文献】特開2000-99871号公報
【文献】特開2015-200609号公報
【発明の概要】
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、例えば目的地や目的とする物といった利用者の目的対象に辿りつくまで遠いというような場合であっても、迅速で的確な経路案内を可能にする案内システムを提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するため案内システムは、利用者との対話から目的対象を特定し、特定した目的対象への経路案内を行う複数の案内部と、異なる位置に配置された複数の案内部と通信可能であり、利用者に対して、複数の案内部の間で連携された経路案内を行う統括制御部とを備える。


【0008】
上記案内システムでは、異なる位置にそれぞれ配置されている複数の案内部において、利用者との対話から目的対象を特定して、特定した目的対象に関する経路案内を行うものとなっている。この上で、統括制御部が、各案内部と通信可能となっており、利用者に対して、複数の案内部の間で連携された経路案内を行っている。この場合、異なる位置に配置された複数の案内部が統括制御部での制御下で連携して案内をすることで、利用者は、例えば自己の目的地や目的とする物のある場所まで遠く一度の案内では経路を覚えきれない、といった場合であっても、確実に目的の場所まで到達することができる。
【0009】
本発明の具体的な側面では、案内システムは、利用者に固有の特徴から利用者を個別認証可能に認識する利用者認識部を備える。この場合、個別認証された利用者に対して案内を行うことができる。
【0010】
本発明の別の側面では、利用者認識部は、複数の案内部又は統括制御部に設けられ、一の案内部又は統括制御部において認識された利用者の認識情報に基づいて、他の案内部又は統括制御部において照合することで、同一の利用者についての認証を行う。この場合、同一の利用者であるか否かに応じた案内が可能になる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、複数の案内部又は統括制御部は、利用者認識部での利用者認識において、一致する情報が無い場合、当該利用者の目的対象を特定するための対話をし、利用者の新規登録を行う。この場合、利用者の目的対象を特定するための対話を行った新規の利用者について登録を行うことで、当該利用者に対して、登録後、複数の案内部の間で連携された経路案内が可能になる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、複数の案内部は、利用者を撮像する撮像部を有し、利用者認識部は、撮像部で取得された情報に基づき利用者の認識をする。この場合、利用者を撮像した画像データに基づいて、利用者の認識ができる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、利用者認識部は、撮像部により撮像された利用者の顔を認識する顔認識部を含む。この場合、顔認識に基づいて利用者の特定ができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、利用者認識部は、利用者の声に基づき認識をする声紋認識部を含む。この場合、利用者の声紋認識に基づいて利用者の特定ができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、統括制御部は、利用者の情報と、当該利用者の目的対象の情報とを紐付けて保存する。この場合、利用者の目的に応じた案内が可能になる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、統括制御部は、一の案内部での経路案内から外れた場所にいる利用者に対して、他の案内部により新たな経路案内を行わせる。この場合、間違った方向に向かってしまった利用者に対して、経路案内の修正ができる。
【0017】
本発明のさらに別の側面では、統括制御部は、時間の経過に応じて、先の案内部での経路案内から変更した新たな経路案内を、後の案内部に行わせる。この場合、時間の経過に応じて修正された経路案内ができる。
【0018】
本発明のさらに別の側面では、統括制御部は、複数の案内部による利用者への経路案内を終了したと判断した場合、当該利用者に関する情報を削除する。この場合、例えば経路案内に際して保存するデータ量の増大を抑制できる。
【0019】
本発明のさらに別の側面では、複数の案内部は、人型の立体構造物で構成されるロボットである。この場合、例えば案内部が利用者との対話をするものであることを、利用者に気づかせやすくなる。
【0020】
本発明のさらに別の側面では、経路案内を行う所定の範囲内に設置され、統括制御部での制御に基づき利用者が保持する通信端末と通信を行う複数のビーコンを備え、統括制御部は、複数のビーコンによる利用者との通信結果に基づき利用者の位置を特定し、経路案内を送信する。この場合、複数のビーコンを介した経路案内が可能になる。
【0021】
本発明のさらに別の側面では、複数の案内部は、通信端末に対して経路案内を取得させるためのコード情報を発行し、統括制御部は、複数のビーコンのうち、一の案内部と他の案内部との間に配置されるビーコンを介して経路案内を継続する。この場合、案内部より提供されるコード情報に基づく経路案内後において、ビーコンによる当該経路案内の継続が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態に係る案内システムによる案内の様子について一例を示す概念図である。
図2】案内部としての案内用ロボットの一構成例について説明するための正面図である。
図3】案内システムの一構成例について説明するためのブロック図である。
図4】(A)及び(B)は、データベース部に格納される利用者の情報に関して説明するためのデータ表である。
図5】(A)~(C)は、データベース部に格納される案内を行うための情報に関して説明するためのデータ表である。
図6】案内システムにおける案内動作についての一例を説明するためのフローチャートである。
図7】(A)~(C)は、時間の経過に応じた案内について一例を説明するためのデータ表である。
図8】(A)は、案内終了について一例を説明するためのデータ表であり、(B)は、(A)に例示するデータ表に関する案内終了の判定動作について一例を説明するためのフローチャートである。
図9】第2実施形態に係る案内システムの一構成例について説明するためのブロック図である。
図10】第3実施形態に係る案内システムによる案内の様子について一例を示す概念図である。
図11】(A)及び(B)は、案内部によるコード情報の発行及び利用者の通信端末に対するビーコンを介した経路案内の継続について一例を示す概念図である。
図12】データベース部に格納される通信端末の情報に関して説明するためのデータ表である。
図13】案内システムの利用に関する一連の動作を説明するためのシーケンス図である。
図14】案内システムにおけるビーコンを利用した案内動作についての一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、図1等を参照して、第1実施形態に係る案内システムの一例について概要を説明する。
【0024】
本実施形態に係る案内システム100は、利用者との対話から目的対象を特定し、特定した目的対象に関する経路案内を行う案内部としてそれぞれ機能する複数の案内用ロボット10と、複数の案内用ロボット10を統括制御する統括制御部50と、利用者に提供するための情報を格納するデータベース部DBとを備える。ここでは、一例として、案内システム100は、駅構内及びその周辺に設置され、駅内や駅周辺の各施設等に関する経路案内を行うものとする。すなわち、案内システム100は、駅やその周辺の施設についての利用者に対して、利用者にとっての目的対象たる目的地(行き先)への経路情報を含む利用者の種々の要求に応じた情報を提供するためのシステムとして機能するものとなっている。ただし、これに限らず、案内システム100は、例えば各種イベント会場や大型ショッピングセンター、あるいはホームセンター等種々の場所に設けることが可能である。
【0025】
案内システム100のうち、複数の案内用ロボット10は、上記のようなシステムとしての目的を果たすべく、駅の出口や改札等種々の場所にそれぞれ原則固定して配置され、種々の案内を行う案内部として機能している。また、図示の例では、各案内用ロボット10は、人体の一部を模した形状の頭状部やこれを支持する胴体状部を有している。さらに、案内用ロボット10は、人の音声や指示等に対応すべく入力部(情報入手手段)としてのマイクや各種センサー等を有するとともに、画像表示部であるモニターやスピーカーといった出力部(情報出力手段)を有することで、情報案内の提供等の人に対する接客対応を可能としている。特に、本実施形態では、案内用ロボット10は、撮像部を備えており、撮像部を介して、利用者を撮像した画像データの取得が可能となっており、取得した画像データに基づいて、利用者の認識や照合等ができる。すなわち、データベース部DBにおいて一度登録された利用者を登録されている限りにおいて、統括制御部50によって認識し続けることが可能となっていることで、同じ利用者に対して異なる案内用ロボット10による情報提供ができる。なお、案内用ロボット10を構成する各部について詳しくは、図2等を参照して一例を説明する。
【0026】
また、図1に示すように、複数の案内用ロボット10は、例えばA駅において複数配置されるのみならず、B駅においても配置されている。この状況下において、利用者が1つの案内用ロボット10(例えばロボットA)に道を尋ねると、これに応じてロボットAが応答して該当する目的地までのルート(ルートX)を通知するのみならず、途中にいる他の案内用ロボット10(例えばロボットBやロボットC)が、連携して目的地までの案内を行う。
【0027】
統括制御部50は、複数の案内用ロボット10の全てに接続されており、これらを統括制御している。すなわち、統括制御部50は、全ての案内用ロボット10を構成する上述のような入出力部を適宜動作させることで、利用者との対話に加え、経路案内を行うことを可能にしている。特に、本実施形態では、統括制御部50によって、異なる位置に配置された全ての案内用ロボット10を統括制御することで、利用者に対して、上述したような複数の案内用ロボット10の間で連携された経路案内を行っている。
【0028】
なお、統括制御部50については、種々の態様が考えられるが、例えばクラウド型のサーバによって統括制御部50を構成し、ネットワーク回線INを通じて各案内用ロボット10と通信可能にすること等が考えられる。
【0029】
データベース部DBは、例えばデータ管理用のサーバ等で構成され、統括制御部50に接続されており、利用者に関する情報(以下、単に利用者情報とする。)や、案内を行うために必要な各種情報(以下、単に案内情報とする。)を格納している。
【0030】
なお、利用者情報については、典型的には、案内部である案内用ロボット10で取得された利用者に関する各種情報を、統括制御部50において各種処理を施すことで得られた情報が含まれる。また、案内情報については、典型的には、案内用ロボット10が設置された場所といった位置情報や目的地等の各種地図情報といった情報が含まれる。統括制御部50は、必要に応じて、データベース部DBに格納されているこれらの各種情報を読み出している。
【0031】
以上のように、上記の場合、異なる位置に配置された複数の案内部を構成る案内用ロボット10が、統括制御部50での制御下で連携して案内をすることで、利用者は、例えば自己の目的地や目的とする物のある場所まで遠く一度の案内では経路を覚えきれない、といった場合であっても、確実に目的の場所まで到達することができる。
【0032】
以下、図2を参照して、案内用ロボット10の一構成例について、外観構造を含めてより詳しく説明する。なお、ここでは、一例として、重力方向(垂直方向)を-Z方向とし、Z方向を上下方向とする。また、Z方向に対して垂直な面(水平面)内において互いに直交する方向をX方向及びY方向とする。すなわち、Z方向に垂直な面をXY面とする。また、これらのX方向、Y方向及びZ方向を基準方向とする。
【0033】
図2に示す案内用ロボット10は、人型の立体構造物で構成されるロボットとなるように、Z方向について最上部に設けられ球形に近い形状を有する頭状部HDと、頭状部HDの下側に設けられて頭状部HDを支持する胴体状部TRとを有して、人の上半身を模した形状になっている。
【0034】
また、案内用ロボット10は、統括制御部50の制御下で動作することで、利用者とのコミュニケーションを可能とするコミュニケーションロボットである。すなわち、統括制御部50が、案内用ロボット10を介して利用者の声を認識し、認識した音声情報に基づいて、案内用ロボット10を動作させることで、案内用ロボット10と利用者とのコミュニケーションが成立する。統括制御部50の制御下で上記動作が可能となるように、案内用ロボット10は、例えば、パネル部PLと、スピーカーSKと、マイクMCと、撮像部CMと、センサー部SEとを備える。
【0035】
パネル部PLは、情報発信のための1つの手段として、例えば液晶パネルや有機ELパネル等で構成される表示部であり、頭状部HDのうち、顔に相当する箇所である正面側に設けられている。例えば、パネル部PLに目鼻口等の画像を表示させることで、頭状部HDに顔のような画像を設け、最上部にある頭状部HDが人型のロボットの頭部であることを利用者に認識させることができる。図示の例では、大きな目玉のようなものを表示させている。なお、パネル部PLにおいて、各種案内を行うために必要な画像表示を行うことも可能である。
【0036】
スピーカーSKは、情報発信のための別の1つの手段として、例えば図示のように、頭状部HDに内蔵され、利用者に対して音声による発信を行う。
【0037】
撮像部CMは、例えばCCDやCMOS等の固体撮像素子で構成される撮像カメラであり、情報収集のための1つの手段として、図2に例示するように、パネル部PLの側方側に設置され、頭状部HDの姿勢の変化によって種々の方向について撮像する。特に、本実施形態では、案内システム100は、撮像部CMで取得された情報に基づき利用者の認識をする。より具体的には、撮像部CMにおいて取得された画像データに基づき、利用者の顔の特徴を捉えることで利用者を個別に特定可能に認識する顔認識や、利用者の服装の特徴を捉えることで利用者を個別に特定可能に認識する服装認識がなされる。
【0038】
マイクMCは、情報収集のための1つの手段として、頭状部HDの前方側に設けられており、利用者の声を集音する。特に、本実施形態では、案内システム100は、マイクMCで取得された情報に基づき利用者の認識をする。より具体的には、マイクMCにおいて取得された音声データに基づき、利用者の声の特徴を捉えることで利用者を個別に特定可能に認識する声紋認識がなされる。
【0039】
センサー部SEは、情報収集のための別の1つの手段として、案内用ロボット10の周囲にいる利用者を検知する、すなわち人を検知するために、案内用ロボット10の各部に設けられている人検知センサー部である。センサー部SEについては、周囲の人の位置や動きを捉えるための種々のものが採用可能であり、例えば周囲の人の位置や動きといった周囲の状況を捉えるための赤外線センサーや、レーザー照射を利用するライダー装置等が考えられる。また、図示の例では、胴体状部TRの下部を構成する座部TR2に沿って複数のセンサー部SEを配置しているが、周囲環境を捉えることができれば、これ以外にも種々の設置箇所が考えられる。例えばセンサー部SEにおいて人検知がなされ、これに応じて人が検知された方向に撮像部CMを向けることで、検知された人の顔や服装について、撮像可能となる。なお、画像データを取得するカメラ装置でセンサー部SEを構成することも考えられる。
【0040】
以上のように、案内用ロボット10のうち、パネル部PL及びスピーカーSKは、表示動作や音声出力動作をすることで、利用者に提供すべき情報を出力する出力部、すなわち情報発信のための手段として機能している。特に、本実施形態では、例えば、パネル部PLやスピーカーSKは、出力部として、利用者に案内すべき画像情報や音声情報を出力する。さらに、自身が経路案内等を行うためのロボットとして存在することを知らせるべく、存在をアピールするための各種出力動作を行うものともなっている。
【0041】
一方、案内用ロボット10のうち、撮像部CM、マイクMC及びセンサー部SEは、案内を受ける利用者の特定や、利用者の声を拾う入力部、すなわち情報収集のための手段として機能している。
【0042】
なお、パネル部PL等の情報発信手段及び撮像部CM等の情報収集手段をまとめて入出力部11とする。
【0043】
このほか、案内用ロボット10は、コミュニケーションの動作の一環として、各部が動作可能となっているものとする。すなわち、案内用ロボット10は、コミュニケーションの補助や円滑化等のために、例えば、発声とともに、前かがみになったり腰を振ったり、頷いたり、首を横に振ったり等の各種アクションをする、といったことが胴体状部TRによって可能になっている。具体的に説明すると、まず、胴体状部TRが、上方側に位置する胸部TR1と、下方側に位置する座部TR2と、胸部TR1と座部TR2との間を繋ぐ可変部CHとで構成されている。胸部TR1や座部TR2は、例えば樹脂等で構成され、ある程度の強度を有する部材である。一方、可変部CHは、例えばゴムや布等で構成され変形可能な素材で構成されている。また、可変部CHは、蛇腹のような構造であってもよい。以上のような構造を有することで、案内用ロボット10は、上記のような動きが可能となっている。
【0044】
また、例えば図示の例では、頭状部HDの正面側に点灯表示等を行う点灯部LU1~LU3がさらに設けられており、これらを各部での各種動作に合わせて点灯・点滅等させることで、コミュニケーションに利用したり、案内用ロボット10を目立たせて存在をアピールしたりしてもよい。
【0045】
以上のような動作をすることで、案内用ロボット10は、会話等のコミュニケーション動作を行い、この際に併せて胴体部を動かす、といったことができる。なお、これらの動作についても、統括制御部50からの指令指示に従ってなされていることで、コミュニケーションの内容に沿った動作となる。
【0046】
以下、図3のブロック図を参照して、案内を行うための案内用ロボット10や案内用ロボット10の動作制御を含む全体動作の制御を行う統括制御部50等で構成される案内システム100について、各部の内部構造の一例を説明する。
【0047】
図示のように、また、既述のように、本実施形態に係る案内システム100は、複数の案内部としての複数の案内用ロボット10と、複数の案内用ロボット10と接続しこれらの動作を統括制御する統括制御部50と、統括制御部50に接続されるとともに複数の案内用ロボット10の動作制御において必要となる各種情報を格納しているデータベース部DBとを備える。
【0048】
これらのうち、各案内用ロボット10は、既述のように、入出力部11として、パネル部PL、スピーカーSK、撮像部CM、マイクMC及びセンサー部SE等を有して構成されている。各案内用ロボット10において、入出力部11は、案内部として機能すべく利用者とのインターフェース部を構成するものであり、統括制御部50からの指令に従って動作することで、マイクMCやセンサー部SE等の情報収集手段である入力部により、利用者の顔や服装すなわち画像データや、利用者の声すなわち音声データといった利用者たるべき人物の特定のための情報や、利用者の目的等を特定するための情報の取得を行う。また、入出力部11は、統括制御部50からの指令に従って動作することで、パネル部PLやスピーカーSK等の情報発信手段である出力部により、利用者に対して表示や音声による情報提供を可能としている。
【0049】
統括制御部50は、例えば、CPU等で構成され、上記した入出力部11を構成する各部を動作させることにより、各種情報提供を含めたコミュニケーションの動作等に必要な各種処理を行っている。このため、統括制御部50は、主制御部20と、インターフェース部IFとを備える。なお、インターフェース部IFは、各案内用ロボット10と統括制御部50との間での各種情報の伝達すなわち各種情報の送受信を行う。
【0050】
統括制御部50は、全ての案内用ロボット10を介して取得される利用者についての情報を統括管理し、かつ、利用者に対する経路案内を統括管理することで、識別されデータに登録されている利用者に対して、各地に配置された案内用ロボット10を連携させて確実な経路案内を実現している。
【0051】
統括制御部50のうち、主制御部20は、CPU等で構成され、必要に応じて、データベース部DB等に格納された各種データやプログラム等を読み出して、統括制御部50における種々の動作制御を行う。ここでの一例では、主制御部20は、複数の案内用ロボット10においてそれぞれ案内を可能とするための動作に加え、これらによる連携した経路案内を可能とするため、利用者認識部30と、利用者情報管理部41と、案内経路管理部42と、言語選択受付部LAとを有している。
【0052】
主制御部20のうち、利用者認識部30は、利用者に固有の特徴から利用者を個別認証可能に認識するためのものである。ここでの一例では、利用者認識部30は、利用者の顔の特徴を抽出する顔特徴抽出部31と、利用者の服装の特徴を抽出する衣服特徴抽出部32と、利用者の声の特徴を抽出する声特徴抽出部33と、抽出された利用者の特徴からデータベース部DBに記録されている利用者のデータとの照合を行う利用者照合部34とを備える。
【0053】
利用者認識部30のうち、顔特徴抽出部31は、各案内用ロボット10の撮像部CMにおいて取得された利用者の画像データから利用者の顔を切り出すとともに、利用者の顔の画像から、他の人と当該利用者とを区別可能にする特徴的なデータを抽出することで、顔による利用者の認識(あるいは特定)を可能とする顔認識部である。
【0054】
利用者認識部30のうち、衣服特徴抽出部32は、各案内用ロボット10の撮像部CMにおいて取得された利用者の画像データから利用者の服装について切り出すとともに、利用者の衣服の画像から、他の人と当該利用者とを区別可能にする特徴的なデータを抽出することで、服装による利用者の認識(あるいは特定)を可能とする服装認識部である。
【0055】
なお、顔特徴抽出部31や衣服特徴抽出部32において、抽出するデータについては、顔の輪郭や目、鼻、耳等の形状や配置、髪型や肌の色等、あるいは服の大きさや色・柄、スタイル等、種々のものが想定され、顔識別や服装識別のための種々の既存の手法が採用できる。
【0056】
利用者認識部30のうち、声特徴抽出部33は、各案内用ロボット10の撮像部CMにおいて取得された音声データから利用者の声を抽出し、抽出した声(声紋)の特徴から他の人と当該利用者とを区別可能にする。すなわち、声特徴抽出部33は、利用者の声に基づき認識をする声紋認識部である。
【0057】
なお、主制御部20は、利用者認識部30を構成する顔特徴抽出部31、衣服特徴抽出部32及び声特徴抽出部33により抽出された利用者認識のための情報、すなわち利用者に固有の特徴から利用者を個別認証可能に認識するための情報を、データベース部DBの所定領域に格納する。
【0058】
利用者認識部30のうち、利用者照合部34は、顔特徴抽出部31等で抽出された情報が既にデータベース部DBに記録されている利用者のデータいるか否かを確認するためのデータの照合を行う。すなわち、複数ある案内用ロボット10のうちの一の案内用ロボット10において応対している利用者が、新規の利用者であるか、既に他の案内用ロボット10において案内を受けた利用者であるかの判断を行う。
【0059】
主制御部20のうち、利用者情報管理部41は、利用者認識部30において抽出された利用者に関するデータや、利用者についての照合結果について、データベース部DBにおいて各利用者を識別すべくID化し、利用者に関する各種情報である利用者情報をデータベース化して管理するための各種処理を行う。
【0060】
主制御部20のうち、案内経路管理部42は、利用者に対する経路案内を可能とすべく、各地に設置されている案内用ロボット10による利用者との対話を成立させるための各種制御動作を行うとともに、対話から必要な経路案内の内容を特定して、該当する案内用ロボット10に経路案内を実行させる。また、これとともに、案内経路管理部42は、利用者情報管理部41においてID化された利用者ごとに、経路案内の状況について統括管理する。
【0061】
以上のほかの機能として、主制御部20のうち、例えば言語選択受付部LAは、複数の言語から一の言語の選択を受け付ける。言語選択受付部LAについては、案内用ロボット10のパネル部PLをタッチパネル式とし、パネル部PLの画面上において、言語を選択可能な構成としておき、必要に応じてパネル部PLの表示動作を制御したり、あるいは、マイクMCで拾った音声を分析して利用者が話している言語を特定し、これに合わせた言語を使用するようにスピーカーSKから発する音声動作等を制御したりすることが考えられる。例えば、上記後段のような音声分析による利用者の言語特定の動作を、自動化することで、利用者の使用する言語を自動で認識する言語自動認識機能をもたせることが可能である。
【0062】
データベース部DBは、各種ストレージ等で構成され、案内用ロボット10の各種動作に必要な各種プログラムやデータが格納されている。また、記憶される内容については、必要に応じて適宜追加・削除・変更が可能になっている。ここでは、特に、案内用ロボット10による各種案内において必要となる情報を格納するための案内用データベースDBaが設けられている。具体的にここでの一例の案内用データベースDBaには、利用者認識部30において抽出された利用者に関する各種情報すなわち利用者情報を格納する利用者情報格納部USや、経路案内のために必要な各種情報すなわち案内情報を格納する案内情報格納部GSが設けられているものとする。
【0063】
利用者情報格納部USでは、図4(A)に例示するように、利用者の情報に関するものとして、利用者認識部30において抽出された利用者の顔や服装、声についての特徴をデータ化した各種識別データを利用者に付したID(人物ID)に基づいて、データベース化して格納し、管理がなされている。ここで、上記のような利用者の情報と、当該利用者の目的対象の情報としての目的地コードとが紐付けされて保存されている。なお、目的地コードは、データベース化して保存されている目的地に関する情報を示すものである。さらに、利用者情報格納部USには、図4(B)に例示するように、各利用者に付したID(人物ID)ごとに、各地に設置された案内用ロボット10による案内履歴が格納されている。図示の例では、案内時刻とともに、案内用ロボット10のロボット名と案内ルートについての変更があったか否かについて履歴として残している。
【0064】
案内情報格納部GSでは、図5(A)に例示するように、案内を行うための情報に関するものとして、利用者すなわち人との対話を成立させるための前提となる案内に関連した各種文字(ワード)に関するデータがインプットされている。ここでは、一例として、まず、駅や駅周辺に関する要所である目的地について、データ表DD1に例示するように、リスト化されている。さらに、これらの目的地に関連するキーワードについても、データ表DD2に示されるように、リスト化されている。具体的には、データ表DD2には、各目的地を示す単語そのもののほか、これらを特徴づける情報が掲載されており、これらのキーワードが関連する目的地と対応付けされている。
【0065】
主制御部20の案内経路管理部42は、各地に設置されている案内用ロボット10のマイクMCを通して解析・抽出された利用者との対話で出てきた言葉の中からデータ表DD2に例示するようなキーワードを見つけ出し、これと対応するデータ表DD1の目的地とを比較検討することで、案内すべき内容を絞り込んでいく。すなわち、利用者が経路案内として要求する目的地情報を特定する。
【0066】
また、案内情報格納部GSでは、図5(B)及び5(C)に例示するように、各地に設置されている案内用ロボット10の所在地から目的地までの経路(ルート)に関する情報を格納している。
【0067】
まず、図5(B)の例示では、案内用ロボット10の1つであるロボットA(図1参照)について、ロボットAの所在地から各目的地までのルートに関する情報が格納されていることが示されている。図示の例では、ロボットAは、A駅入口に設置されており、ロボットAの所在地(すなわちA駅入口)から特定された目的地までのルートが、図5(B)のデータ表から検索可能となっている。ここでは、図示のように、最終の目標地点である目的地までのルートのほか、目的地までのルート上において、ロボットAの所在地から直近の位置にある目標と当該目標までの行き方についてのデータがリスト化されている。例えば、利用者の目的地がB駅であることが対話の結果から判明した場合、統括制御部50は、利用者の最終目標がB駅であるものと判断してルートを設定(ルートXと設定)しつつ、A駅入口にいるロボットAには、A駅のホームへ向かう途中にあるロボットBを直近の目標(当座の目標)とし、まずは、ロボットBのいる位置へ利用者を向かわせるように、利用者に対する情報提供をロボットAに行わせる。
【0068】
また、図5(C)の例示では、案内用ロボット10の1つであるロボットC(図1参照)の所在地から各目的地までのルートに関する情報が格納されていることが示されている。図示の例では、ロボットCは、A駅のうちホームから外れたところにある広場に設置されている。ここでは、図1において、ロボットAとの会話から目的地がB駅であることが判明した利用者にとって、ロボットCは、進むべきルート(ルートX)上では、通り得ない位置に設置されているものとする。したがって、図1に例示するように、利用者が通るはずのないロボットCの前を通過するような場合、統括制御部50は、当該利用者が目的地(B駅)へ向かう方向から外れて間違った方向に向かっていると判断し、目的地であるB駅へ利用者を向かわせるべく新たなルート(ルートY)について、ロボットCを介して利用者に対する情報提供(新たな経路案内)を行う。つまり、一の案内部であるロボットAでの経路案内から外れた場所にいる利用者に対して、他の案内部であるロボットCにより新たな経路案内を行わせる。
【0069】
なお、図1の例示おいて、例えば、目的地であるB駅へ向かう利用者が、進むべきルートXに沿って進んでいる場合、統括制御部50は、ルートX上にある案内用ロボット10の1つであるロボットBに、向かっている道が正しいことを示すような内容の案内を行わせる。
【0070】
以下、図6のフローチャートを参照して、案内システム100における案内動作についての一例を説明する。なお、ここでは、説明を簡単にするため、利用者認識部30による利用者の認識については、顔特徴抽出部31による利用者の顔特徴の抽出により行うものとする。
【0071】
まず、案内システム100が起動して、各案内用ロボット10が動作すると、統括制御部50は、利用者の探索、すなわち各案内用ロボット10に設けたセンサー部SEや撮像部CM等により人の存在を確認させること等により案内を欲している人の存在を確認するとともに、確認した利用者の画像データを取得し、利用者認識部30の顔特徴抽出部31は、1つの案内用ロボット10において取得した利用者の画像データから利用者の顔特徴の算出(抽出)を行う(ステップS101)。
【0072】
次に、利用者認識部30の利用者照合部34は、データベース部DBの利用者情報格納部USに格納されているデータ中に、ステップS101において算出された顔特徴のデータとの照合を行う(ステップS102)。すなわち、図4(A)に例示したデータ表の中に、ステップS101において算出されたものと一致するデータが存在するか否かを確認する。
【0073】
利用者照合部34は、ステップS102での照合の結果、一致するものがあると判断された場合(ステップS103:Yes)、すなわち、画像データを取得した案内用ロボット10における存在確認よりも前に既に他の案内用ロボット10との会話によって案内すべき目的地が決まっている利用者であれば、統括制御部50は、図4(A)において保存されているデータに基づき該当する目的地に応じたルート(ここではルートAとする)の読込みを行い(ステップS104)、これに応じた経路案内を行う。具体的には、まず、読み込んだルートAに対して、当該利用者を捉えた案内用ロボット10の位置が適切であるか否かを判断すべく、物理的な距離として、案内用ロボット10の位置がルートAから一定以上離れている位置にあるか否かを確認する(ステップS105)。
【0074】
ステップS105において、案内用ロボット10の位置がルートAに対して一定以上離れていなければ(ステップS105:No)、統括制御部50は、当該利用者が正しいルートを通過していると判断し、例えば、案内用ロボット10での音声対話において、現在の進行方向で問題ない旨の通知を行う(ステップS106)。なお、以上の場合は、図1の例示において、A駅入口で最初の案内を受けてB駅に向かう利用者が、ルートXを正しく進んで、案内用ロボット10であるロボットBにおいて認識された場合に相当する。
【0075】
一方、ステップS105において、案内用ロボット10の位置がルートAに対して一定以上離れている場合(ステップS105:Yes)、統括制御部50は、当該利用者が正しいルートを通過していないと判断し、案内用ロボット10の現在位置と目的地から新たなルート(ここではルートBとする)を算出し(ステップS107)、新たに算出されたルートBによる経路案内を案内用ロボット10に行わせる(ステップS108)。なお、以上は、図1の例示において、B駅に向かうべき利用者が、ルートXを正しく進まず外れてしまい、案内用ロボット10であるロボットCにおいて認識された場合に相当する。
【0076】
ステップS106、あるいは、ステップS108による経路案内が完了すると、案内システム100は、一回の案内を終了する。なお、上記一回の案内を終了した案内用ロボット10は、再びステップS101からの動作を繰り返す。
【0077】
一方、利用者照合部34におけるステップS102での照合の結果、一致するものが無いと判断された場合(ステップS103:No)、すなわち、新規の利用者であると判断された場合、統括制御部50は、新規の利用者の画像データを取得した案内用ロボット10を介して、当該利用者との対話を開始し(ステップS201)、ステップS201での対話に基づいて案内すべき内容が特定されたか否かを確認する(ステップS202)。ステップS202において、案内内容が特定されない場合(ステップS202:No)、統括制御部50は、利用者との対話が終了していないと判断される限り(ステップS203:No)、ステップS201からの動作、すなわち対話と対話に基づく案内内容特定の判断を繰り返す。
【0078】
一方、ステップS202において、案内内容が特定された場合(ステップS202:Yes)、統括制御部50は、案内用ロボット10の現在位置と目的地から案内すべきルート(ここではルートαとする)を算出し(ステップS204)、利用者の顔特徴のデータを算出する(ステップS205)とともに、算出した顔特徴のデータを案内すべきルートαとともにデータベース部DBの利用者情報格納部USに保存する(ステップS206)。すなわち、新規の登録(利用者の新規登録)を行う。また、以上の動作とともに、統括制御部50は、当該新規の利用者に対して、案内用ロボット10にルートαによる経路案内を行わせる(ステップS207)。なお、ステップS205においては、ステップS101での算出結果を一時保存しておき、これを利用するものとしてもよい。
【0079】
以上のように、本実施形態の案内システム100では、異なる位置にそれぞれ配置されている複数の案内部である案内用ロボット10において、利用者との対話から目的対象を特定して、特定した目的対象に関する経路案内を行うものとなっている。この上で、統括制御部50が、各案内用ロボット10と通信可能となっており、利用者に対して、複数の案内用ロボット10の間で連携された経路案内を行っている。この場合、異なる位置に配置された複数の案内用ロボット10が統括制御部50での制御下で連携して案内をすることで、利用者は、例えば自己の目的地や目的とする物のある場所まで遠く一度の案内では経路を覚えきれない、といった場合であっても、確実に目的の場所まで到達することができる。
【0080】
また、上記の場合、利用者が案内した通りに動くすなわち前提通りに動く、という場合に限らず、これから逸脱したような場合であってもフォローして案内の内容を修正することができる。また、1つの案内用ロボット10が1人の利用者への案内に付きっきりになる、といった事態も回避できるので、より多くの利用者に対する対応が可能となる。
【0081】
以下、図7を参照して、一変形例について説明する。例えば、図1に示した場合のように、仮に利用者が案内すべきルートXの通りに進んだとしても、時間の経過の度合いによっては、案内すべきルートを変更したほうが良い場合も想定される。例えば図1の例では、A駅から1番線のホームの列車に乗ってB駅に向かうことになるが、この場合、列車の出発時刻までに1番線のホームに到着することが前提となる。しかし、利用者によっては、想定した出発時刻までにホームに到着できない、といったことも考えられる。本実施形態では、このような場合にも対応可能となっている。
【0082】
図7(A)~7(C)は、図1に例示した場合において、さらに、時間の経過に応じた案内について一例を説明するためのデータ表であり、図7(A)は、図1において、利用者とロボットAとの対話が成立して、B駅へ向かう案内経路(ルートX)が決まった時点での時間経過を含めた経路案内についてのデータ表の一例を示している。ここでは、統括制御部50によって、列車の時刻表やB駅へ向かう途中の経由地までの距離等に基づき、B駅へ向かう途中の経由地への到達想定時刻が設定されているものとする。図示の例では、1番線のホームへの到着時刻が列車の発車時刻よりも前となるように想定されている。
【0083】
しかしながら、上記のような設定において、例えば図7(B)に例示するように、1番線のホームよりも手前の経由地であるロボットBへの利用者の到着時刻が、既に列車の発車時刻を過ぎてしまっているといった場合も生じ得る。このような場合、統括制御部50は、例えば図7(C)に例示するような新たなルート(ここではルートZとする)を算出し、算出されたルートZによる経路案内をロボットBに行わせる。すなわち、図7(C)の場合、統括制御部50は、1番線ではなく3番線のホームへ向かわせるようにロボットBによって利用者を誘導する。
【0084】
以上のように、統括制御部50は、時間の経過に応じて、先の案内部であるロボットAでの経路案内(ルートX)から変更した新たな経路案内(ルートZ)を、後の案内部であるロボットBに行わせることで、時間の経過に応じて修正された経路案内ができる。
【0085】
以下、図8を参照して、案内終了後における利用者のデータの取り扱いについて一例を説明する。
【0086】
図8(A)は、案内終了について一例を説明するためのデータ表であり、図7(A)に例示した場合において、さらに、目的地への到達予定時刻(すなわちB駅への到達予定時刻)に基づいて、案内終了予定時刻を予め定めるものとする。なお、図8(A)での一例では、B駅への到達予定時刻の1時間後を案内終了予定時刻としている。
【0087】
以下、図8(B)のフローチャートを参照して、図8(A)に例示するデータ表の場合における案内システム100での案内終了の判定動作について一例を説明する。
【0088】
まず、統括制御部50は、図8(A)に例示するデータ表に該当する利用者のB駅への到達予定時刻になったか否かを確認し(ステップS301)、B駅への到達予定時刻の経過を確認すると(ステップS301:Yes)、B駅に設置されている案内用ロボット10であるロボットαにより、当該利用者のB駅の存在の有無を確認すべくロボットαに搭載された撮像部CM等を使用した検出を行う(ステップS302)。ステップS302での検出により、当該利用者が確認されない場合(ステップS303:No)、統括制御部50は、案内終了予定時刻が経過したか否かを確認し(ステップS304)、案内終了予定時刻が経過していない限り(ステップS304:No)、ロボットαによる利用者の検出を継続する(ステップS302~S304)。
【0089】
ステップS304において案内終了予定時刻が経過した場合(ステップS304:Yes)や、ステップS303において利用者が確認された場合(ステップS303:Yes)、統括制御部50は、当該利用者に対する経路案内を終了すべく、当該利用者に対応する人物IDに関する情報を削除する(ステップS305)。
【0090】
なお、上記の場合と異なり、目的地に案内用ロボット10が存在しない場合は、目的地の直近手前に設置されている案内用ロボット10によって上記と同様の検出動作を行うか、あるいは、案内用ロボット10によらず設定した案内終了予定時刻の経過をもって経路案内を終了し、該当する人物IDに関する情報を削除するようにしてもよい。
【0091】
以上のように、統括制御部50が、所定の条件を満たすことで、案内用ロボット10による利用者への経路案内を終了したと判断した場合に、当該利用者に関する情報を削除することで、例えば経路案内に際して保存するデータ量の増大を抑制できる。
【0092】
〔第2実施形態〕
以下、図9を参照して、本発明に係る第2実施形態の案内システムの一例について概要を説明する。なお、本実施形態に係る案内システム200は、第1実施形態の案内システム100の変形例であり、複数の案内用ロボット210及び統括制御部250に関する一部の構成を除いて同様であるので、共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0093】
図9は、本実施形態に係る案内システム200の一構成例について説明するためのブロック図であり、第1実施形態において参照した図3に対応する図である。本実施形態の案内システム200では、利用者認識部30を、複数の案内部である案内用ロボット210にそれぞれ設けている点において、第1実施形態の場合と異なっている。なお、図9においては、複数の案内用ロボット210について1つの案内用ロボット210のみ示し、他の案内用ロボットについては、同様の構成であるため省略している。
【0094】
この場合、利用者認識部30は、複数の案内部である複数の案内用ロボット210にそれぞれ設けられ、各案内用ロボット210は、利用者認識部30において抽出した利用者についての各種データを統括制御部250に送信し、統括制御部250の主制御部220は、これらのデータをデータベース部DBに格納して管理する。また、各案内用ロボット210は、抽出した利用者についての各種データとデータベース部DBに格納しているデータとの照合を行う。以上のように、本実施形態の場合、一の案内用ロボット210において認識された利用者の認識情報に基づいて、他の案内用ロボット210において照合することで、同一の利用者についての認証を行うことになる。
【0095】
本実施形態においても、複数の案内部である案内用ロボット210において、経路案内を行うに際して、統括制御部250での制御下で複数の案内用ロボット210を連携して案内をすることができる。
【0096】
〔第3実施形態〕
以下、図10等を参照して、本発明に係る第3実施形態の案内システムの一例について概要を説明する。なお、本実施形態に係る案内システム300は、第1実施形態の案内システム100等の変形例であり、複数の案内用ロボット10等に加え、複数のビーコンBEを配置し、統括制御部350においてこれらを統括制御している構成となっており、既出の各構成については、第1実施形態等の場合と同様であるので、共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0097】
図10は、本実施形態に係る案内システム300による案内の様子について一例を示す概念図であり、第1実施形態において参照した図1に対応する図である。本実施形態の案内システム300では、複数の案内用ロボット10による経路案内に加え、経路内に設置された複数のビーコンBEによる経路案内の継続あるいは補助が受けられる構成となっている。図10では、一例として、複数のロボット10が配置されたA駅において、ビーコンBEが複数配置されており、利用者が保持するスマホ等の通信端末MTに対して情報の発信が可能となっていることで、経路案内のための情報提供が可能になっている。
【0098】
以下、案内システム300の一構成例について概要を説明する。まず、図示のように、また、既述のように、案内システム300は、複数の案内用ロボット10と、複数のビーコンBEと、複数の案内用ロボット10及び複数のビーコンBEを統括制御する統括制御部350と、利用者に提供するための情報を格納するデータベース部DBとを備える。これにより、案内システム300は、利用者との対話から目的対象を特定し、特定した目的対象に関する経路案内を行う。特に、本実施形態では、経路案内に際して、複数のビーコンBEを介した通信端末MTの位置特定、すなわち通信端末MTを保持する利用者の位置特定を可能とする態様となっている。より具体的には、各ビーコンBEと利用者が携帯するスマホ等の通信端末MTとの通信により、利用者の位置を特定し、通信端末MTに対して経路案内を送信している。
【0099】
複数のビーコンBEは、例えば、超音波ビーコンで構成され、A駅において想定される経路案内を行う範囲内で、通信端末MTとの通信が途切れず、かつ、各ビーコンBEの位置を知ることによる通信端末MTの位置特定すなわち利用者の位置特定に十分な程度の間隔で、配置されている。位置特定に関して、具体的に説明すると、まず前提として、各ビーコンBEは、設置された位置ごとに異なる固有のIDが付与されている。以下、このIDをビーコン固有IDとする。各ビーコンBEは、自己のビーコン固有IDをそれぞれ発信している。通信端末MTは、各ビーコンBEからそれぞれ発信されるビーコン固有IDを受けることで、通信端末MT側すなわち利用者側で自己の位置把握が可能となり、さらに通信端末MTにおいて地図情報を得ることで、利用者の目的地までの経路案内が可能となっている。なお、図示の例では、各ビーコンBEを利用者よりも上方に配置するような態様となっているが、各ビーコンBEの設置箇所については、天井や壁、床等、種々の箇所へ配置することが考えられる。
【0100】
また、上記では、例示として、音波発信手段である超音波ビーコンによりビーコンBEを構成することで、位置特定に際して精度の高いものとしているが、必要な精度の位置特定が確保できれば、ビーコンBEの種類は、超音波タイプのものに限らず、例えば電波発信によるビーコン等、種々のものを適用できる。
【0101】
以下、図11を参照して、ビーコンBEを利用した経路案内あるいは経路案内の補助の動作に関して具体的一例を説明する。
【0102】
まず、図11(A)に示すように、ビーコンBEを利用した経路案内の前提として、案内用ロボット10との対話の結果、利用者は、案内用ロボット10から、経路情報を取得させるためのアドレスを、コード情報により利用者が保持する通信端末MTに統括制御部350を介して提供する態様となっている。なお、図示の例では、コード情報の一例として、QRコード(登録商標)に代表される2次元コードを、案内用ロボット10がパネル部PLに表示することにより、アドレスを提供し、利用者は、自己の通信端末MTに備えられている2次元コードリーダによって当該2次元コードを読み取ることでアドレスの提供を受けるものとなっている。次に、図11(B)に示すように、アドレスの提供を受けた利用者は、当該アドレスに基づく通信端末MTによる統括制御部350との通信により、目的地に向かうための地図データを取得する。また、利用者が取得した地図データを参照して移動をする間、通信端末MTは、目的の移動方向である矢印A1に示す移動方向に沿って配置されているビーコンBEから発信される信号すなわちビーコンBEの配置位置ごとに固有のビーコン固有IDの情報を受ける。これにより、送受信を行っているビーコンBEの位置に基づいて通信端末MTの現在地が特定され、通信端末MTの表示部に映し出された地図中に自己の現在地PTが示され、さらに、移動に応じて、地図中に示された現在地PTから先へ進むべき方向の矢印や、次に曲がる箇所等を表示や音声の情報が更新されていく。
【0103】
以上のような構成の場合、特に、地下道等のGPS機能による位置特定ができないような場所において、上記したように、ビーコンBEを配置するとともにビーコンBEからの発信を通信端末MTで受けることで、位置特定が可能となる。
【0104】
一方、案内用ロボット10により提供されたアドレスに基づいて、通信端末MTが、統括制御部350へアクセスすると、統括制御部350は、アクセスを受け付けた通信端末MTに関する各種情報を、データベース部DB(図10参照)に記憶する。統括制御部350は、提供を受ける通信端末MTが、正しい順路に沿って移動しているか否かを確認し、必要に応じて、通信端末MTに対して、ナビゲーションや注意喚起を行う。
【0105】
図12は、図10に示すデータベース部DBに格納される通信端末MTの情報に関する具体的内容の一例を説明するためのデータ表である。図示のように、この場合、通信端末MTを特定するための通信端末MTに固有の通信端末ID(以下、単に端末IDとする。)と、通信端末MTを保持する利用者の目的地とともに、案内用ロボット10やビーコンBEとの通信記録が格納される。つまり、通信端末MTは、案内用ロボット10やビーコンBEとの通信を継続することで、経路案内が継続される。ここでは、説明を簡略化するために、一の案内用ロボット10であるロボットA(図10参照)との対話の結果、他の案内用ロボット10であるロボットBを案内すべき最終目的地とし、ロボットBまでの経路案内がなされるまでの経路案内について説明する。なお、図12に示す具体的一例では、ロボットAにおいてルート設定がなされ、最終目的地であるロボットBに到達するまでに通過するビーコンBEとの通信記録が履歴として残されていく様子を示している。この場合、まず、ロボットAによる最初の経路案内の後、ロボットAとロボットBとの間に配置されるビーコンBEを介して経路案内を継続することになる。このため、ロボットAによる最初の経路案内の時点において、ロボットAからロボットBへ向かう途中に存在するビーコンBEが、通信端末MTとの通信がなされるべきビーコンとして設定される。これにより、例えば、図10において、ロボットAからロボットBへ向かう途中に存在するビーコンBEと通信端末MTとの間で通信がなされている場合には、利用者は正しい経路上を進行しているとの判断が、統括制御部350においてなされることになる。一方、例えばロボットAからロボットBへ向かうのであれば向かうはずのないロボットCへ向かう途中に存在するビーコンBEと通信端末MTとの間で通信がなされた場合には、利用者は経路案内から外れた間違った場所にいるとの判断が、統括制御部350においてなされることになる。本実施形態では、このような場合に、利用者に対して迅速に経路を修正させるべく報知を行うことで、より確実な経路案内を可能にしている。
【0106】
以下、図13のシーケンス図を参照して、上記のような態様を達成するための一連の処理として、一の案内用ロボット10(例えば図10のロボットA)による経路案内を受けた後、ビーコンBEを利用した経路案内あるいは経路案内の補助のための動作の一例について説明する。
【0107】
まず、前提として、統括制御部350は、配備されている複数のビーコンBEに対して起動指令を発している、すなわち各ビーコンBEに固有のビーコン固有IDをそれぞれ発信するように命じており、この結果、各ビーコンBEが、自己の位置を示す情報を発信し続ける状態が形成される。その上で、まず、案内用ロボット10(例えば図10のロボットA)から利用者の通信端末MTに対してコード情報の提供がなされると、案内用ロボット10は、通信端末MTへのコード情報の提供とともに提供を行った旨の報告を統括制御部350に対して行う。なお、案内用ロボット10は、例えば、当該報告に際して、統括制御部350に例えば利用者の目的地の情報や顔特徴のデータ等を送信する。
【0108】
一方、利用者による操作に従って、通信端末MTがコード情報に基づくアクセスを統括制御部350に対して行うと、統括制御部350は、既述のように、アクセスしてきた通信端末MTについての各種情報を取得するとともに、通信端末MTに対して返信する。すなわち、統括制御部350は、通信端末MTに、アクセス内容に応じた地図データを付与する。また、統括制御部350は、取得した通信端末MTについての各種情報をデータベース部DBに格納し、この際、通信端末MTを保有する利用者の目的地との関係から、通信端末MTが通信すべきビーコンBEすなわち正しい経路中にあるものと、通信すべきでないビーコンBEすなわち正しい経路中から外れているものとを確定する。これにより、統括制御部350は、通過したビーコンBEの位置に基づき利用者が正しい経路を通過しているか否かを判断できる。
【0109】
また、統括制御部350は、案内用ロボット10からのコード情報の提供を行った旨の報告の内容と通信端末MTからのアクセスとの整合性を判断し、整合する場合には、これらの情報を紐付けすることで、通信端末MTと通信端末MTを保持する利用者の顔特徴との紐付けをしてもよい。
【0110】
なお、通信端末MTは、地図データの付与を受けた後、ビーコンBEから発信される超音波の受信を、付属するマイクで、目的地に到達するまで受け続け、ビーコン固有IDを受信するたびに、受信した内容について、統括制御部350へのアクセス(問合せ)をする。
【0111】
以上のように、通信端末MTを保持した利用者が取得した地図データに基づいて移動を開始し、複数のビーコンBEのうちの一のビーコンBEと通信可能な位置に達すると、通信端末MTは、当該一のビーコンBEが発信するビーコン固有IDを受け取り、受け取ったビーコン固有IDを参照すべく統括制御部350に問合せをする。これに応じて、統括制御部350は、当該ビーコン固有IDの位置情報を通信端末MTに対して返信する。これにより、通信端末MTは、自己の位置を特定しつつ、経路案内の提供を受け続けることができる。
【0112】
この際、さらに、統括制御部350においては、経路案内についての妥当性の判断がなされる。つまり、統括制御部350は、通信端末MTからの問い合わせに応じて、データベース部DBに格納された通信端末MTの情報を読み出し、通信端末MTの経路が妥当であるか否かを判断する。より具体的には、問合せのあったビーコン固有IDが、通信端末MTを保有する利用者が通過すべき経路の途中に存在するビーコンBEについてのものであるか否かを判断し、その結果、妥当であると判断した場合には、統括制御部350は、通信端末MTに対して、さらに進むべき先についてのナビゲーション情報を提供する。具体的には、例えば、目的地の途中に存在する曲がり角や階段等のうち直近にあるものについて報知等をする。
【0113】
一方、統括制御部350は、問合せのあったビーコン固有IDの情報から、通信端末MTの経路が妥当でないと判断した場合には、通信端末MTに対して、その旨を注意喚起するとともに、新たな経路案内(別経路案内)をする。つまり、統括制御部350は、予定の経路案内から外れて間違った方向に向かってしまった利用者に対して、これに対応すべく、経路案内の修正をする。
【0114】
以上のようにして、利用者は、所持する通信端末MTによるビーコンBEとの通信でのビーコン固有IDの受取りと、受け取ったビーコン固有IDに基づく統括制御部350への問合せとが繰り返されることで、目的地までの経路案内あるいは経路案内の補助を受け続ける。この際、利用者が間違った方向に進むと、統括制御部350により、経路案内の修正すなわち進行方向についての修正の連絡を受け取ることで、利用者は、正しい経路に向かうことができる。
【0115】
以下、図14のフローチャートを参照して、案内システム300における案内動作についての一例を説明する。なお、ここでは、統括制御部350において案内用ロボット10からコード情報の提供を受ける処理以後の各種処理を中心にして説明することで、案内システム300における案内のための一連の流れを説明する。
【0116】
まず、案内システム300が起動して、各案内用ロボット10やビーコンBEが動作していることを前提とする。この場合において、統括制御部350は、一の案内用ロボット10において目的地までの経路に関する情報提供として通信端末MTにコード情報が提供されたか否かを確認する(ステップS401)。すなわち、案内用ロボット10によるコード情報の提供がなされた場合に各案内用ロボット10において併せて行われる、コード情報を提供した旨の報告の有無の検出を続ける。
【0117】
統括制御部350は、ステップS401において、案内用ロボット10から報告がなされたと判断すると(ステップS401:Yes)、さらに、その後なされるべきコード情報の提供を受けた通信端末MTからのアクセスを確認する(ステップS402)。すなわち、所定の時間が経過するまで通信端末MTからのアクセスを受け付け(ステップS403)、所定時間が経過するまでに(ステップS403:No)、通信端末MTからのアクセスを確認したら(ステップS402:Yes)、通信端末MTの端末IDを含む各種情報を取得して、通信端末MTに対する経路案内を開始する(ステップS404)。なお、ステップS403において、所定時間が経過しても通信端末MTからのアクセスが確認されない場合、案内用ロボット10がコード情報の提供をしたものの通信端末MTにおいて当該情報が利用されなかったものと判断し、一連の処理を終了する。あるいは、最初に戻って、次の案内用ロボット10からのコード情報を提供した旨の報告を待つ(ステップS401)。なお、ステップS404での通信端末MTの端末IDの取得に際して、例えばステップS401における案内用ロボット10からの報告の際に送信される利用者の目的地の情報や顔特徴のデータ等を、紐付けしてもよい。
【0118】
次に、ステップS404における通信端末MTに対する経路案内が開始されると、統括制御部350は、通信端末MTからのビーコン固有IDについての問合せ(参照要求)を待つ(ステップS405)。すなわち、所定の時間が経過するまでアクセスを受け付け(ステップS406)、所定時間が経過するまでに(ステップS406:No)、通信端末MTからのビーコン固有IDについての問合せ(参照要求)を確認したら(ステップS405:Yes)、取得したビーコン固有IDに基づく経路の妥当性を判断する(ステップS407)。なお、ステップS406において、所定時間が経過しても通信端末MTからの問合せ(参照要求)が確認されない場合、通信端末MTすなわち利用者にとって、当該経路案内が不要になったものと判断し、ステップS404において取得した通信端末MTの端末IDを含む各種情報を削除して(ステップS408)、一連の処理を終了する。あるいは、最初に戻って、次の案内用ロボット10からのコード情報を提供した旨の報告を待つ(ステップS401)。
【0119】
ステップS407における経路の妥当性の判断の結果、妥当であると判断した場合(ステップS409:Yes)、すなわち利用者が予定の案内経路を進行していると判断した場合、統括制御部350は、さらに、通信端末MTを保有する利用者が目的地に到達したか否かを確認する(ステップS410)。
【0120】
ステップS410において、目的地に到達したと判断しない場合(ステップS410:No)、統括制御部350は、通信端末MTに対して必要に応じて経路案内(ナビゲーション)を行う(ステップS411)。具体的には、例えば、利用者の直近前方に曲がり角や階段等がある場合、その旨を通信端末MTの画面や音声機能等を利用して通知する。一方、ステップS410において、目的地に到達したと判断した場合(ステップS410:Yes)、統括制御部350は、通信端末MTに対する経路案内が完了したものと判断し、ステップS404において取得した通信端末MTの端末IDを含む各種情報を削除して、一連の処理を終了する(ステップS412)。
【0121】
なお、ステップS410における目的地に到達したか否かの判断については、種々の態様が考えられるが、例えば上記例のように、経路案内における最終目的地がロボットBである場合、ロボットBに到達する直前の箇所に設置されたビーコンBEとの通信があったか否か、あるいは、ロボットBでの顔認識によってステップS404において予め通信端末MTの情報に紐付けしていた利用者の顔特徴と一致するか否か、等を判断基準にすることが考えられる。
【0122】
一方、ステップS407における経路の妥当性の判断の結果、妥当でないと判断した場合(ステップS409:No)、すなわち利用者が予定の案内経路から外れていると判断した場合、統括制御部350は、新たな経路案内(別経路案内)をすべく、まず、所定の範囲内に別の案内用ロボット10が存在するか否かを確認する(ステップS413)。すなわち、道に迷いつつある利用者に対して再度案内をし直すための案内用ロボット10が利用者のすぐ近くにいるか否かを確認する。
【0123】
ステップS413において、所定の範囲内に単数又は複数の案内用ロボット10が存在する場合(ステップS413:Yes)、統括制御部350は、利用者の直近にある案内用ロボット10までの経路案内の情報を通信端末MTに送信する(ステップS414)。なお、この場合、併せて違う方向へ進んでいる可能性があるため近くにいる案内用ロボット10により再度経路案内を行う旨を、通信端末MTを介して利用者に通知してもよい。
【0124】
一方、ステップS413において、所定の範囲内に案内用ロボット10が存在しない場合(ステップS413:No)、予定していた元の案内経路の範囲内に利用者を戻すべく新規経路案内を行う(ステップS415)。ステップS415の具体的な内容としては、例えば経路から外れているためもっと右へ行く、左へ行く、あるいは引き返す等の通知を、通信端末MTを介して利用者に対して行い、正しい経路中にあるビーコンBEが配列される方向に向かわせるようにすることが考えられる。
【0125】
なお、上記ステップS411,S414,S415のいずれかによる経路案内がなされると、統括制御部350は、再びステップS405からの処理動作を繰り返す。
【0126】
本実施形態においても、複数の案内部である案内用ロボット10において、経路案内を行うに際して、統括制御部350での制御下で複数の案内用ロボット10を連携して案内をすることができる。特に、本実施形態では、通信端末MTを保有する利用者に対して、さらに、ビーコンBEを利用した経路案内あるいは経路案内の補助ができる。これにより、例えば一の案内用ロボット10から他の案内用ロボット10までの間において道に迷う可能性をさらに低減できる。特に、本実施形態の場合、GPSが使えないような場所においても、利用者の確実な位置検知をして、位置検知に基づく経路案内ができる。
【0127】
なお、上記の場合、案内開始位置から目的地まで複数の経路をとり得るといった場合には、取り得る全ての経路中にあるビーコンBEを正しい経路上のものとして取り扱うことで、対応できる。
【0128】
また、上記では、統括制御部350での経路の妥当性の判断後における通信端末MTへの情報提供を統括制御部350との直接の通信により行うものとしているが、当該情報提供を通信端末MTと通信したビーコンBEを介して行う態様としてもよい。
【0129】
また、上記では、コード情報の一例として、QRコード(登録商標)に代表される2次元コードにより、アドレスを提供するものとしているが、これに限らず、種々のものをコード情報として採用してもよい。また、予め通信端末MTにアプリをダウンロードしておくことで、必要となる情報等の一部を予め通信端末MTに取得させておいてもよい。
【0130】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0131】
まず、上記実施形態において、案内部として、人型の立体構造物で構成される案内用ロボット10を採用しているが、これに限らず、種々の態様とすることが考えられる。例えば、駅の券売機や案内表示板等を案内部として利用する態様とすることも考えられる。また、上記の例では、人型の案内用ロボット10は、頭部と胴体部のみを有する構成としているが、例えばさらに手に相当する構造を設け、各種ジェスチャ-が行えるものとしてもよい。例えば手話が可能であったり、行き先を、手を使って示したりしてもよい。
【0132】
また、上記では、統括制御部50によって各案内用ロボット10における動作制御や情報管理を一元化しているが、さらに、統括制御部50とデータベース部DBとを統合した構成としてもよい。
【0133】
また、上記では、案内用ロボット10は、各設置場所において、原則固定されているものとしているが、例えば、限られた範囲内で動くようにしてもよい。例えば動くことで、より案内用ロボット10の存在を確認させやすくすること等が可能になる。例えば、許容される範囲においてできるだけ積極的に動いて登録された利用者を見つけるようにしてもよい。逆に、あまり積極的には動かず、訊かれたら応える、といった対応の仕方としてもよい。
【0134】
また、上記では、案内用ロボット10に設けた撮像部CMによって利用者を認識するための画像データを取得しているが、案内用ロボット10を配置する駅等の構内において別途用意しておいたカメラ等からの情報を、通信回線等により利用可能としてもよい。具体的には、例えば施設内(例えば駅等の天井部分)において監視用に設けた定点カメラのデータを受け付け、これを利用して利用者を認識するための画像データを取得するような構成となっていてもよい。
【0135】
また、上記では、一例として、案内用ロボット10を駅の構内等に配置するものとしつつ、各種イベント会場や大型ショッピングセンター、あるいはホームセンター等種々の場所に設けることが可能であるとしているが、さらに、駅の構内及び各種イベント会場等の双方に案内用ロボットを設置し、これら全てを1つの統括制御部において統括制御することで、駅から駅の先にある各種会場内までの案内を連携して行ってもよい。
【0136】
また、目的地についても、ランドマーク的な建物のような場合に限らず、種々の態様が考えられる。例えば大型ショッピングセンターであれば、利用者が欲する飲食物や商品・サービスの提供場所、ホームセンター等であれば購入したい物品の配置場所等が考えられる。すなわち、図5(A)に例示したデータ表DD1,DD2において、これらの商品名や製品番号等を目的の場所(目的地)と紐付けしておくことで、所望の目的が達成できる。すなわち、目的地や目的とする物といった利用者の目的対象に辿りつくようにすることができる。
【0137】
また、利用者を個別認証可能に認識するための方法について、上記例では、利用者の顔や、服装、声の特徴を利用することを例示したが、これに限らず種々の方法を利用することが考えられる。例えば、空港やアトラクション施設等において、本発明の案内システムを利用する場合、チケットやパスポート等を利用者の個別認証として使用することが考えられる。例えば、利用者が自ら自己のチケットやパスポート等を案内部に対して提示することで、情報提供を受けられるようにする、といったことも考えらえる。すなわち、利用者が個別認証できるものを所持している場合には、これらを利用することも考えられる。
【符号の説明】
【0138】
10…案内用ロボット(案内部)、11…入出力部、20…主制御部、30…利用者認識部、31…顔特徴抽出部、32…衣服特徴抽出部、33…声特徴抽出部、34…利用者照合部、41…利用者情報管理部、42…案内経路管理部、50…統括制御部、100…案内システム、200…案内システム、210…案内用ロボット、220…主制御部、250…統括制御部、CH…可変部、CM…撮像部、DB…データベース部、DBa…案内用データベース、DD1,DD2…データ表、GS…案内情報格納部、HD…頭状部、IF…インターフェース部、IN…ネットワーク回線、LA…言語選択受付部、LU1~LU3…点灯部、MC…マイク、PL…パネル部、SE…センサー部、SK…スピーカー、TR…胴体状部、TR1…胸部、TR2…座部、US…利用者情報格納部、300…案内システム、350…統括制御部、A1…矢印、BE…ビーコン、MT…通信端末、PT…現在地
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14