(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】パルス判別装置および心電図解析装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/308 20210101AFI20221025BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20221025BHJP
A61N 1/37 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61B5/308
A61B5/33 110
A61N1/37
(21)【出願番号】P 2018179346
(22)【出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小柳 敬志
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 一虎
(72)【発明者】
【氏名】久保 博
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-154342(JP,A)
【文献】特表平04-501213(JP,A)
【文献】特開2016-073373(JP,A)
【文献】特開2009-240623(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0023176(US,A1)
【文献】米国特許第05010887(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
A61N 1/36-1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の時間間隔で作用パルスが伝搬する生体からの電気信号を受信し、前記電気信号に含まれる前記作用パルスとノイズパルスを判別するパルス判別装置であって、
前記作用パルスは、生体に取り付けられたペーシング装置から前記所定の時間間隔で出力されて心臓を拍動させるペーシングパルスからなり、
前記生体
において2つの位置に配置される電極から受信される前記電気信号
を差分処理した信号の強度の変化に基づいて
、前記電気信号に含まれる電気パルスを順次検出するパルス検出部と、
前記パルス検出部で検出される前記電気パルスの検出間隔と前記所定の時間間隔に基づいて予め定められたパルス時間とに基づいて、前記パルス検出部で検出された前記電気パルスを前記作用パルスと前記ノイズパルスのいずれかに判別する
ことにより、前記ペーシング装置が前記ペーシングパルスを出力する合間に出力する別の電気パルスを前記ノイズパルスとして判別可能なパルス判別部とを備えるパルス判別装置。
【請求項2】
前記パルス判別部は、前記電気パルスの検出間隔が前記パルス時間内である場合に、前記パルス検出部で検出された前記電気パルスを前記ノイズパルスと判別する請求項1に記載のパルス判別装置。
【請求項3】
前記パルス判別部は、前記電気パルスの検出間隔が前記パルス時間以上である場合に、前記パルス検出部で検出された前記電気パルスを前記作用パルスと判別する請求項1または2に記載のパルス判別装置。
【請求項4】
前記パルス時間は、前記作用パルスのパルス幅の時間より大きい値に定められる請求項1~3のいずれか一項に記載のパルス判別装置。
【請求項5】
前記電気パルスの検出間隔を測定するタイマと、
前記電気パルスが前記パルス検出部で検出されることにより前記タイマの測定を開始し、測定時間が前記パルス時間に達した場合に前記タイマの測定を停止するタイマ制御部とをさらに有し、
前記パルス判別部は、前記タイマの測定時間が前記パルス時間に達する前に次の前記電気パルスが前記パルス検出部で検出された場合に、次の前記電気パルスを前記ノイズパルスと判別する請求項1~4のいずれか一項に記載のパルス判別装置。
【請求項6】
前記タイマ制御部は、前記タイマの測定時間が前記パルス時間に達するまでの間、次の前記電気パルスが前記パルス検出部で検出される度に前記タイマの測定時間をクリアし、
前記パルス判別部は、前記タイマの測定時間が前記パルス時間に達するまでの間に前記パルス検出部で検出された前記電気パルスを前記ノイズパルスと判別する請求項5に記載のパルス判別装置。
【請求項7】
前記パルス検出部は、前記電気信号の立上りと立下りに基づいて前記電気信号に含まれる電気パルスを検出する請求項1~
6のいずれか一項に記載のパルス判別装置。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載のパルス判別装置と、
生体から受信された電気信号に基づいて心電図を生成する心電図生成部と、
前記心電図生成部で生成された心電図を表示する表示部とを備える心電図解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パルス判別装置および心電図解析装置に係り、特に、所定の時間間隔で作用パルスが伝搬する生体からの電気信号を受信して電気信号に含まれる作用パルスとノイズパルスを判別するパルス判別装置および心電図解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ペースメーカーなどのペーシング装置から心臓を拍動させるために出力されるペーシングパルスと、ノイズパルスとを判別するパルス判別装置が提案されている。パルス判別装置は、ペーシング装置が取り付けられた生体からの電気信号を受信し、その電気信号に含まれるペーシングパルスとノイズパルスを判別する。例えば、生体情報モニタおよび心電計などの心電図解析装置にパルス判別装置を内蔵して、生体から受信される電気信号に基づいて心電図を生成すると共にその電気信号に含まれるペーシングパルスとノイズパルスを判別する。これにより、例えば、心電図にペーシングパルスおよびノイズパルスの出力タイミングを表示させることができ、心電図を詳細に解析することができる。
ここで、ペーシングパルスとノイズパルスの判別は、一般的に、生体から受信された電気信号を差分処理することにより行われる。
【0003】
例えば、特許文献1には、使用する電極部の個数を増やすことなくペーシングパルスの検出精度を向上させるペースメーカパルス検出装置が提案されている。このペースメーカパルス検出装置は、心電電極からの入力信号を差動増幅するため、入力信号に含まれるペーシングパルスとノイズパルスを判別してノイズパルスを除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、生体から受信される電気信号にはペーシングパルスに類似するノイズパルス、例えばペーシングパルスと同様に差動信号として入力されるノイズパルスが含まれる場合があり、特許文献1のペースメーカパルス検出装置のように、電気信号を差分処理するだけでは、電気信号に含まれるペーシングパルスとノイズパルスを高精度に判別できないおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、生体からの電気信号に含まれる作用パルスとノイズパルスを高精度に判別するパルス判別装置および心電図解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るパルス判別装置は、所定の時間間隔で作用パルスが伝搬する生体からの電気信号を受信し、電気信号に含まれる作用パルスとノイズパルスを判別するパルス判別装置であって、生体から受信される電気信号の強度の変化に基づいて電気信号に含まれる電気パルスを順次検出するパルス検出部と、パルス検出部で検出される電気パルスの検出間隔と所定の時間間隔に基づいて予め定められたパルス時間とに基づいて、パルス検出部で検出された電気パルスを作用パルスとノイズパルスのいずれかに判別するパルス判別部とを備えるものである。
【0008】
ここで、パルス判別部は、電気パルスの検出間隔がパルス時間内である場合に、パルス検出部で検出された電気パルスをノイズパルスと判別することが好ましい。
【0009】
また、パルス判別部は、電気パルスの検出間隔がパルス時間以上である場合に、パルス検出部で検出された電気パルスを作用パルスと判別することができる。
【0010】
また、パルス時間は、作用パルスのパルス幅の時間より大きい値に定めることが好ましい。
【0011】
また、電気パルスの検出間隔を測定するタイマと、電気パルスがパルス検出部で検出されることによりタイマの測定を開始し、測定時間がパルス時間に達した場合にタイマの測定を停止するタイマ制御部とをさらに有し、パルス判別部は、タイマの測定時間がパルス時間に達する前に次の電気パルスがパルス検出部で検出された場合に、次の電気パルスをノイズパルスと判別することができる。
【0012】
また、タイマ制御部は、タイマの測定時間がパルス時間に達するまでの間、次の電気パルスがパルス検出部で検出される度にタイマの測定時間をクリアし、パルス判別部は、タイマの測定時間がパルス時間に達するまでの間にパルス検出部で検出された電気パルスをノイズパルスと判別することができる。
【0013】
また、作用パルスは、生体に取り付けられたペーシング装置から所定の時間間隔で出力されて心臓を拍動させるペーシングパルスからなることが好ましい。
【0014】
また、パルス検出部は、電気信号の立上りと立下りに基づいて電気信号に含まれる電気パルスを検出することができる。
【0015】
この発明に係る心電図解析装置は、上記のパルス判別装置と、生体から受信された電気信号に基づいて心電図を生成する心電図生成部と、心電図生成部で生成された心電図を表示する表示部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、パルス判別部は、パルス検出部で検出される電気パルスの検出間隔がパルス時間内である場合に、パルス検出部で検出された電気パルスをノイズパルスと判別するので、生体からの電気信号に含まれる作用パルスとノイズパルスを高精度に判別するパルス判別装置および心電図解析装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るパルス判別装置を備えた心電図解析装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1の動作を示すフローチャートである。
【
図3】表示部に心電図が表示された様子を示す図である。
【
図4】実施の形態2に係る心電図解析装置の要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係るパルス判別装置を備えた心電図解析装置2の構成を示す。この心電図解析装置2は、一対の電極1aおよび1bと接続される。心電図解析装置2は、例えば心電図測定のための心電計であってもよく、他のバイタルサインパラメータ(呼吸、体温、脈拍数、血圧、等)を取得可能な生体情報モニタであってもよい。なお、生体情報モニタは、いわゆるベッドサイドモニタであってもよく、医用テレメータ等の携帯型の装置であってもよい。心電図解析装置2は、表示部5が着脱可能な構成または表示に用いる各種データを転送する構成であってもよい。
【0019】
電極1aおよび1bは、ペーシング装置が取り付けられた生体において2つの位置にそれぞれ配置され、生体からの電気信号を入力するものである。ここで、ペーシング装置は、生体に配置されて、心臓に向けてペーシングパルス(作用パルスの一種)を順次出力することで心臓を拍動させるものである。このため、電極1aおよび1bに入力される電気信号は、心臓の動きを示す信号だけでなく、ペーシングパルスを含むものとなる。また、電極1aおよび1bは、ペーシングパルスが互いに差動信号Pとして入力、すなわち電極1aに入力されるペーシングパルスと電極1bに入力されるペーシングパルスとが逆位相で入力されるようにペーシング装置に対して配置される。
なお、ペーシング装置としては、例えばペースメーカーなどが挙げられる。
【0020】
心電図解析装置2は、パルス判別装置2aと、A/D変換部3と、心電図生成部4と、表示部5とを有する。
パルス判別装置2aは、電極1aおよび1bに接続された受信部6を有し、この受信部6に差分処理部7、増幅部8、パルス検出部9およびパルス判別部10が順次接続され、パルス判別部10が表示部5に接続されている。また、パルス判別部10にタイマ制御部11およびタイマ12が順次接続され、パルス判別部10およびタイマ制御部11に本体制御部13が接続されている。
【0021】
受信部6は、電極1aおよび1bに入力された電気信号を受信するもので、電極1aおよび1bが取り外し可能に接続されている。
差分処理部7は、電極1aと電極1bから受信部6に受信された電気信号の差分を算出するもので、例えば差動増幅回路から構成することができる。
【0022】
増幅部8は、差分処理部7で差分された電気信号の強度を増幅させるものである。増幅部8は、例えば増幅回路から構成することができる。
パルス検出部9は、増幅部8で増幅された電気信号の強度の変化に基づいて、電気信号に含まれる電気パルスを順次検出するものである。具体的には、パルス検出部9は、電気信号の強度の変化が予め設定された閾値を超えた場合に、その信号を電気パルスとして検出する。
【0023】
タイマ12は、パルス検出部9で検出される電気パルスの検出間隔を測定するものである。
タイマ制御部11は、パルス検出部9での電気パルスの検出間隔に基づいてタイマ12を制御するものである。具体的には、タイマ制御部11は、パルス検出部9で電気パルスが検出されることによりタイマ12の測定を開始し、次の電気パルスがパルス検出部9で検出されることなく、測定時間が予め定められたパルス時間に達した場合にタイマの測定をクリアしてゼロに戻す。また、タイマ制御部11は、タイマ12の測定時間がパルス時間に達するまでの間、次の電気パルスがパルス検出部9で検出される度にタイマ12の測定時間をクリアしてゼロに戻し、再度スタートさせる。
【0024】
パルス判別部10は、パルス検出部9で検出される電気パルスの検出間隔と予め定められたパルス時間とに基づいて、パルス検出部9で検出される電気パルスをペーシングパルスとノイズパルスとに弁別する。具体的には、パルス判別部10は、電気パルスの検出間隔が予め定められたパルス時間内である場合に、パルス検出部9で検出された電気パルスをノイズパルスと判別する。一方、パルス判別部10は、電気パルスの検出間隔が予め定められたパルス時間以上である場合に、パルス検出部9で検出された電気パルスをペーシングパルスと判別する。
【0025】
ここで、パルス時間は、ペーシング装置から出力されるペーシングパルスの出力間隔に基づいて予め設定されるものであり、ペーシングパルスの立上りと立下りとの間のパルス幅より大きい値に定めることが好ましい。例えば、パルス時間は、ペーシングパルスのパルス幅より大きい値で且つペーシングパルスがペーシング装置から出力される時間間隔より小さい値に定めることができ、例えばパルス時間を8msに定めることができる。
また、ノイズパルスは、ペーシングパルスと異なるパルスであり、例えば同相ノイズおよび連続性パルスなどが該当する。
【0026】
本体制御部13は、パルス判別装置2a内の各部の制御を行うものである。
なお、パルス判別部10および本体制御部13は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0027】
A/D変換部3は、増幅部8に接続され、増幅部8で増幅されたアナログの電気信号をアナログ/デジタル変換して、デジタルの電気信号を生成する。
心電図生成部4は、A/D変換部3に接続され、A/D変換部3で生成されたデジタルの電気信号に基づいて心電図を生成する。
表示部5は、心電図生成部4とパルス判別部10にそれぞれ接続され、心電図生成部4で生成された心電図を表示すると共にパルス判別部10でペーシングパルスと判別された心電図の位置にペーシングパルスの検出を示すパルスマークを表示する。
【0028】
次に、
図2のフローチャートを参照して実施の形態1の動作について説明する。
まず、
図1に示す電極1aおよび1bが生体表面の2つの位置に配置され、ステップS1で、パルス検出部9によるパルス検出が有効化される。生体には、図示しないペーシング装置が取り付けられており、心臓を拍動させるためのペーシングパルスがペーシング装置から心臓に向けて所定の時間間隔で順次出力されている。このため、生体にはペーシングパルスを含む電気信号が伝搬し、その電気信号が電極1aおよび1bに入力されることになる。ここで、電極1aおよび1bは、ペーシングパルスを差動信号Pとして入力するような位置に配置されている。電極1aおよび1bに電気信号がそれぞれ入力されると、その電気信号が電極1aおよび1bからパルス判別装置2aの受信部6に出力される。
【0029】
電極1aおよび1bから出力された電気信号がそれぞれ受信部6で受信されると、受信部6は、電極1aおよび1bから受信した電気信号を差分処理部7に出力する。差分処理部7は、受信部6から入力される電気信号を差分処理、すなわち互いに異なる2つの位置で受信された電気信号の差分を算出する。このため、差動信号Pとして入力されるペーシングパルスなどは、差分処理により互いに高められて大きな値となる。一方、同相信号として入力される電気パルス、例えば外部装置の振動に起因するノイズパルスなどは、互いに打ち消されて小さな値、例えばゼロになる。差分処理された電気信号は、差分処理部7から増幅部8に出力されて増幅された後、パルス検出部9に入力される。
【0030】
このように、電極1aおよび1bから入力された電気信号を差分処理することにより、差動信号Pとして入力される電気信号を抽出することができる。
なお、増幅部8で増幅された電気信号は、増幅部8からA/D変換部3にも出力される。
【0031】
パルス検出部9は、増幅部8から入力される電気信号の強度の変化に基づいて電気信号に含まれる電気パルスの検出を行い、電気パルスを検出した場合には電気パルスの検出信号をパルス判別部10に出力する。パルス判別部10は、ステップS2で、パルス検出部9からの検出信号に基づいて電気パルスが検出されたか否かを判定する。具体的には、パルス判別部10は、検出信号が入力された場合には電気パルスが検出されたと判定し、ステップS3で、タイマ制御部11を介してタイマ12をスタートさせる。一方、パルス判別部10は、検出信号が入力されない場合には電気パルスが検出されていないと判定し、パルス検出部9から検出信号が入力されるまでステップS2を繰り返す。
【0032】
ステップS3でタイマ12がスタートされた後も、パルス検出部9は、次の電気パルスの検出を連続して行い、パルス判別部10が、ステップS4で、次の電気パルスが検出されたか否かを判定する。パルス判別部10は、次の電気パルスが検出されていないと判定した場合には、ステップS5に進み、タイマ12の測定時間が予め定められたパルス時間以上であるか否かを判定する。このとき、パルス時間は、例えば、ペーシングパルスのパルス幅より大きい値で且つペーシングパルスがペーシング装置から出力される時間間隔より小さい値に定めることができる。
【0033】
パルス判別部10は、タイマ12の測定時間がパルス時間以上と判定した場合には、ステップS6で、その電気パルスをペーシングパルスと判別し、ステップS7に進んで、ペーシングパルスの検出信号を表示部5に出力する。続いて、パルス判別部10は、ステップS8で、タイマ制御部11を介してタイマ12の測定を停止してクリアし、ステップS2に戻って、電気パルスの検出を繰り返し実行する。
一方、パルス判別部10は、ステップS5で、タイマ12の測定時間がパルス時間より小さいと判定した場合には、ステップS4に戻り、パルス検出部9が次の電気パルスを検出したか否かを再び判定する。
【0034】
また、パルス判別部10が、ステップS4で、タイマ12の測定時間がパルス時間に達する前に次の電気パルスが検出されたと判定した場合には、その電気パルスはパルス時間より短い間隔で検出されたものであり、ステップS9で、その連続して検出された電気パルスをノイズパルスと判別する。
【0035】
ここで、例えば、ペーシング装置は、ペーシングパルスを出力する合間に別の電気パルスを短い間隔で連続して出力する場合がある。このような電気パルスは、差動信号Pとして電極1aおよび1bから入力されるため、差分処理だけではペーシングパルスか否かの判別が困難であった。
そこで、パルス判別部10が、ペーシング装置から出力されるペーシングパルスの出力間隔に基づいてノイズパルスか否かを判別することにより、電極1aおよび1bから差動信号Pとして入力されるノイズパルスを高精度に判別することができる。
【0036】
このようにして、パルス判別部10が、連続して検出される電気パルスをノイズパルスと判別すると、ステップS10で、タイマ制御部11を介してタイマ12の測定を停止してクリアし、ステップS11に進んで、タイマ12を再度スタートさせる。
【0037】
続いて、パルス判別部10は、ステップS12で、パルス検出部9からの検出信号に基づいて、さらに次の電気パルスが検出されたか否かを判定する。パルス判別部10は、次の電気パルスが検出されていないと判定した場合には、ステップS13に進み、タイマ12の測定時間が予め定められたパルス時間以上であるか否かを判定する。
パルス判別部10は、タイマ12の測定時間がパルス時間以上と判定した場合には、ノイズパルスが検出されないとして、ステップS2に戻り、電気パルスの検出を繰り返し実行する。一方、パルス判別部10は、ステップS13で、タイマ12の測定時間がパルス時間より小さいと判定した場合には、ステップS12に戻り、パルス検出部9が次の電気パルスを検出したか否かを再び判定する。
【0038】
このようにして、パルス判別部10は、ステップS12で、タイマ12の測定時間がパルス時間に達する前に、さらに次の電気パルスが検出されたと判定した場合には、その電気パルスはノイズパルスであるとして、ステップS10に戻り、タイマ制御部11が、タイマ12を停止してクリアし、ステップS11でタイマを再度スタートさせる。なお、パルス判別部10は、ステップS9に戻った後、ステップS10およびS11を実行してもよい。
【0039】
このように、タイマ制御部11が、タイマ12の測定時間がパルス時間に達するまでの間、次の電気パルスがパルス検出部9で検出される度にタイマの測定時間をクリアして繰り返しスタートさせる。このため、パルス判別部10は、その間に連続して検出される電気パルスを余すこと無くまとめてノイズパルスと判別し、ペーシングパルスの判別から除くことができる。
【0040】
ここで、増幅部8からA/D変換部3に出力された電気信号は、A/D変換部3でデジタルの電気信号に変換された後、心電図生成部4に出力される。そして、心電図生成部4が、A/D変換部3から入力された電気信号に基づいて心電図を生成し、その心電図信号を表示部5に出力する。
【0041】
これより、表示部5には、
図3に示すように、生体の心臓の拍動を示す心電
図Eが表示される。また、表示部5には、ステップS7で、パルス判別部10から出力されたペーシングパルスの検出信号が入力される。このため、表示部5は、ペーシングパルスの検出に対応する位置に、ペーシング装置からのペーシングパルスの出力を示すペーシングマークMを心電
図Eに重畳表示する。
このとき、パルス判別部10が、電極1aおよび1bから差動信号Pとして入力されるノイズパルスを高精度に判別するため、表示部5にノイズパルスをペーシングパルスとして誤表示することを確実に抑制することができる。さらに、パルス判別部10は、短い間隔で連続して検出される電気パルスをまとめてノイズパルスと判別するため、例えばペーシング装置からペーシングパルスを出力する合間に別の電気パルスが連続して出力された場合に、
図3に示すように、そのノイズパルスNが誤表示されることを抑制することができる。
【0042】
なお、パルス判別部10で判別されたノイズパルスの判別情報は、表示部5における誤表示を抑制するための使用に限られるものではない。例えば、パルス判別部10は、ノイズパルスを検出した検出信号を心電図生成部4に出力することができる。これにより、心電図生成部4は、検出信号に基づいてノイズパルスの影響を除いた心電
図Eを生成することもできる。
【0043】
本実施の形態によれば、パルス判別部10が、ペーシングパルスのペーシング装置からの出力間隔と予め定められたパルス時間とに基づいて、その電気パルスをペーシングパルスとノイズパルスのいずれかに判別するため、電極1aおよび1bから差動信号Pとして入力されるノイズパルスを高精度に判別することができる。
【0044】
実施の形態2
上記の実施の形態1において、パルス検出部9は、電極1aおよび1bから入力される電気信号の立上りおよび立下りにおける強度の変化に基づいて、電気信号に含まれる電気パルスを検出することが好ましい。
例えば、
図4に示すように、実施の形態1のパルス検出部9に換えてパルス検出部21を配置し、増幅部8とパルス検出部21の間にハイパスフィルタ22を新たに配置することができる。
【0045】
ハイパスフィルタ22は、増幅部8で増幅された電気信号のうち所定の周波数より低い成分を減衰させて、周波数の高い成分、すなわち立上り成分と立下り成分を取り出すものである。
【0046】
パルス検出部21は、電極1aおよび1bから入力される電気信号の立上りと立下りを検出するもので、立上り検出部23および立下り検出部24を有する。
立上り検出部23は、ハイパスフィルタ22とパルス判別部10との間に接続され、ハイパスフィルタ22において立上り成分と立下り成分が取り出された電気信号を入力し、その電気信号の強度の変化に基づいて立上りを検出する。
立下り検出部24は、ハイパスフィルタ22とパルス判別部10との間に接続され、ハイパスフィルタ22において立上り成分と立下り成分が取り出された電気信号を入力し、その電気信号の強度の変化に基づいて立下りを検出する。
【0047】
このような構成により、実施の形態1と同様に、生体からの電気信号が、電極1aおよび1b、受信部6、差分処理部7および増幅部8を介してハイパスフィルタ22に入力されると、ハイパスフィルタ22は、電気信号の立上り成分と立下り成分を取り出して、パルス検出部21の立上り検出部23と立下り検出部24にそれぞれ出力する。
立上り検出部23に電気信号が入力されると、立上り検出部23は、電気信号の強度の変化に基づいて電気パルスの立上りを検出し、その検出信号をパルス判別部10に出力する。同様に、立下り検出部24に電気信号が入力されると、立下り検出部24は、電気信号の強度の変化に基づいて電気パルスの立下りを検出し、その検出信号をパルス判別部10に出力する。
このように、パルス検出部21が、電気信号の立上りおよび立下りにおける強度の変化を検出するため、電気信号に含まれる電気パルスを確実に検出することができる。
【0048】
立上り検出部23と立下り検出部24からそれぞれ出力された検出信号がパルス判別部10に入力されると、パルス判別部10は、実施の形態1と同様にして、電気信号に含まれるノイズパルスを判別する。
このとき、パルス判別部10は、立上り検出部23および立下り検出部24で検出された電気パルスからノイズパルスを判別するため、電気信号に含まれるノイズパルスをより高精度に判別することができる。
【0049】
本実施の形態によれば、パルス検出部21が、電気信号の立上りおよび立下りにおける強度の変化を検出するため、電気信号に含まれる電気パルスを確実に検出することができる。
【0050】
なお、上記の実施の形態1および2では、電極1aおよび1bは、受信部6に対して取り外し可能に接続されたが、受信部6と電気的に接続されていればよく、これに限られるものではない。例えば、電極1aおよび1bは、受信部6に対して一体に接続されてもよく、無線で接続されてもよい。
また、上記の実施の形態1および2では、電極1aおよび1bは、生体の2つの位置に配置されたが、生体の複数の位置から電気信号を受信できればよく、2つに限られるものではない。
【0051】
また、上記の実施の形態1および2では、パルス判別部10は、ペーシングパルスと異なる電気パルスをノイズパルスとして判別したが、所定の時間間隔で生体を伝搬する作用パルスと異なる電気パルスをノイズパルスとして判別することができればよく、これに限られるものではない。例えば、パルス判別部10は、所定の時間間隔で作用パルスが伝搬する生体からの電気信号を電極1aおよび1bを介して受信し、その電気信号に含まれる作用パルスと異なる電気パルスをノイズパルスとして判別することができる。
【符号の説明】
【0052】
1a,1b 電極、2 心電図解析装置、2a パルス判別装置、3 A/D変換部、4 心電図生成部、5 表示部、6 受信部、7 差分処理部、8 増幅部、9,21 パルス検出部、10 パルス判別部、11 タイマ制御部、12 タイマ、13 本体制御部、22 ハイパスフィルタ、23 立上り検出部、24 立下り検出部、P 差動信号、E 心電図、M ペーシングマーク、N ノイズパルス。