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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-24
(45)【発行日】2022-11-01
(54)【発明の名称】無線機
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/10 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
H04B1/10 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018179762
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020053786
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大窪 博
(72)【発明者】
【氏名】奥田 信一
(72)【発明者】
【氏名】白石 純一
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-178829(JP,A)
【文献】実開平06-034342(JP,U)
【文献】特開昭62-133827(JP,A)
【文献】特開昭54-150908(JP,A)
【文献】米国特許第06456833(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振幅変調された高周波信号を復調する復調器と、
前記高周波信号を第一直流信号に変換して受信信号強度信号を生成する第一回路と、
前記復調器で復調された復調信号の音声成分を除去し高域の雑音信号を生成する音声除去回路と、
前記音声除去回路で生成された前記雑音信号を第二直流信号に変換する第二回路と、
前記第一直流信号から第二直流信号を減算することにより、前記受信信号強度信号のレベルをノイズスケルチ機能である前記音声除去回路および前記第二回路により生成された雑音信号のレベルで補正する減算器と、
前記復調信号を音声帯域で帯域制限して音声信号を出力する低域フィルタと、
前記減算器により生成された信号に基づいて、前記低域フィルタにより生成された前記音声信号を遮断するかどうかを判定する判定回路と、
前記判定回路の判定結果に基づいて前記音声信号を出力または遮断するスケルチ動作を行うスイッチ回路と、
を備え
キャリアスケルチ機能である前記判定回路は、
前記減算器の減算結果が所定値を超える場合、対向無線機からの希望波であると判断して前記音声信号を出力するよう前記スイッチ回路を制御し、
前記減算器の減算結果が所定値以下の場合、近接の送信機からの送信雑音による干渉時と判断して前記音声信号を遮断するよう前記スイッチ回路を制御する無線機。
【請求項2】
請求項の無線機において、
前記第一回路は前記高周波信号を直流電圧に整流して前記第一直流信号を生成する整流子であり、
前記第二回路は前記雑音信号を直流電圧に整流して前記第二直流信号を生成する整流子である無線機。
【請求項3】
請求項の無線機において、
さらに、前記高周波信号を増幅する増幅器を備え、
前記復調器は前記増幅器で増幅された高周波信号を復調し、
前記第一回路は前記増幅器で増幅された高周波信号を前記第一直流信号に変換する無線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は無線機に関し、例えばキャリアスケルチ機能を備える振幅変調無線機に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
無線機において、無信号時にスピーカから出力される耳障りで不快な雑音(ノイズ)や、交信する必要のない相手方の送信する音声を遮断し、無音状態にするためにスケルチ回路が設けられる。スケルチ回路の方式には、キャリアスケルチ、ノイズスケルチ、トーンスケルチ、デジタルコードスケルチがある。キャリアスケルチは、受信キャリアのレベルによりスピーカをミュート(消音)する方式である。ノイズスケルチは、復調器出力のノイズ成分を検出し、そのレベルによりスピーカをミュートする方式である。両者は送信側で特別な信号を付加する必要がない。 振幅変調無線機のスケルチ機能は、一般的にキャリアスケルチである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-145859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャリアスケルチは、受信信号レベルをモニタしてスケルチのスイッチ回路のON/OFFを行っているため、入感した信号が対向無線機からの希望波か近接の送信機からの送信雑音なのか判別ができない。
本開示の課題は、入感した信号が対向無線機からの希望波か近接の送信機からの送信雑音なのか判別が可能な無線機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
すなわち、無線機は、振幅変調された高周波信号を復調する復調器と、前記高周波信号を第一直流信号に変換する第一回路と、前記復調器で復調された前記復調信号の音声成分を除去し高域の雑音信号を生成する音声除去回路と、前記音声除去回路で生成された雑音信号を第二直流信号に変換する第二回路と、前記第一直流信号を前記第二直流信号で補正した信号に基づいて、前記復調器で復調された復調信号を音声帯域で帯域制限した音声信号を遮断するかどうかを判定する判定回路と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
上記無線機によれば、入感した信号が対向無線機からの希望波か近接の送信機からの送信雑音なのか判別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】比較例の振幅変調無線機の受信機を説明する図である。
図2】送信雑音を説明する図である。
図3】実施形態の振幅変調無線機の受信機を説明する図である。
図4】近接の送信機と干渉した場合の受信機が復調した信号例を示す図である。
図5】希望波が入感した場合の受信機が復調した信号例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。
【0009】
半二重無線機である振幅変調無線機のスケルチ機能は、一般的にキャリアスケルチである。本願発明者が本願発明に先立って検討した技術(比較例)の振幅変調受信機について図1を用いて説明する。図1は比較例のキャリアスケルチを使用した振幅変調受信機の系統図である。
【0010】
比較例の振幅変調無線機10Rでは、(a)アンテナ11や帯域フィルタ14を介して受信した高周波信号を増幅器15で増幅し、増幅された高周波信号を整流子16によりDC電圧に変換し、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を表す信号(以下、RSSI信号という。)を生成する。RSSI信号は、受信高周波信号レベルが高い場合、電圧が高くなり、高周波信号レベルが低い場合は、電圧が低くなる。(b)RSSI信号をSQ判定するSQ判定回路21へ入力する。RSSI信号はキャリアスケルチ制御用の信号である。(c)SQ判定回路21は入力したRSSI信号が設定されたある一定レベルを超えた場合、スイッチ回路(SQSW)20を切替え、復調器18で復調された音声を低域フィルタ19で帯域制限(0~3kHzの音声が通過)された受信音声信号を出力する。RSSI信号が設定されたある一定レベル以下の場合、スイッチ回路(SQSW)20は受信音声信号を遮断する。
【0011】
送信機は、変調入力がない無変調の状態にあっても、図2に示すように、送信周波数を中心として広範囲に雑音が分布している。これを送信雑音という。非常に近い距離において、近い周波数で送信機が送信すると近接周波数の受信機の帯域内に送信雑音が感度点以上のレベルで入感する。
【0012】
上述したように、振幅変調無線機の受信機は、一般的にキャリアスケルチを使用している。キャリアスケルチは、受信信号レベルをモニタしてスケルチのスイッチ回路のON/OFFを行っているため、入感した信号が対向無線機からの希望波か近接の送信機からの送信雑音なのか判別ができない。
【0013】
また、送信機、受信機の距離や使用周波数が近いと、近接の送信機が送信するたびに受信機のスケルチのスイッチ回路が開いて干渉が発生する。
【0014】
これらの問題の対策としては、運用周波数を離隔したり、送信機と受信機の空中線間隔を離隔したりする方法しかない。運用周波数離隔は、運用周波数の変更となり、実質非常に困難である。また、空中線間隔の離隔は、空中線の接地する建築物の建設など設備面で非常に費用がかかる。よって、いずれも実現が困難な対策となっている。
【0015】
次に、実施形態の振幅変調受信機について図3を用いて説明する。図3は実施形態の振幅変調受信機の系統図である。
【0016】
比較例の問題点を解決するために、実施形態ではキャリアスケルチにノイズスケルチ機能を付加する。
【0017】
一般的にノイズスケルチは、周波数変調方式の無線機で使用される。音声帯域(300Hz~3kHz)より高域周波数(3kHz以上10kHz程度)のノイズレベルを監視しある一定レベル以上のノイズがある場合は、スケルチを動作させ復調音声を切る機能である。一般的にノイズスケルチは振幅変調無線機には使用しない。
【0018】
振幅変調無線機10は、アンテナ11から入感した振幅変調された高周波信号の信号レベルを減衰的に変化させる(電圧制御可能な)可変アッテネータ12と、復調するための信号に変換するための周波数変換器13と、高周波信号を帯域制限する帯域フィルタ14と、帯域制限された高周波信号を増幅する増幅器15と、を備える。振幅変調無線機10は、さらに、増幅器15で増幅された高周波信号を復調する復調器18と、復調器18で復調された復調信号を音声帯域で帯域制限し音声信号を出力する低域フィルタ19と、低域フィルタ19で帯域制限された音声信号を出力または遮断するスイッチ回路(SQSW)20と、を備える。振幅変調無線機10は、さらに、増幅器15で増幅された高周波信号を直流電圧に整流する整流子16と、整流子16で整流された直流電圧の直流信号を遅延して可変アッテネータ12および増幅器15を制御する信号を生成する時定数回路17と、を備える。振幅変調無線機10は、さらに、復調器18で復調された復調信号の音声成分を除去し高域の雑音信号を生成する音声除去回路22と、音声除去回路22で生成された雑音信号を直流電圧に整流する整流子23と、整流子16で整流された直流電圧から整流子23で整流された直流電圧を減算する減算器24と、を備える。振幅変調無線機10は、さらに、減算器24の減算結果が所定値を超える場合、音声信号を出力するようスイッチ回路20を制御し、減算器24の減算結果が所定値以下の場合、音声信号を遮断するようスイッチ回路20を制御するSQ判定回路21と、を備える。音声除去回路22はA/DコンバータやFPGA(Field Programmable Gate Array)等で構成される。SQ判定回路21はFPGA等で構成される。
【0019】
実施形態の振幅変調無線機10では、(A)アンテナ11より入感した振幅変調された高周波信号は、周波数変換器13で周波数変換され、増幅器15で増幅され、復調器18で復調される。(B)低域フィルタ19により音声帯域(~3kHz)で帯域制限される前の復調器18により復調した復調信号の音声成分を音声除去回路22で除去し高域の雑音信号のみとする。(C)雑音信号を整流子23により整流(DC電圧に変換)して直流信号にする。(D)一方で、増幅器15で増幅された高周波信号を整流子16によりDC電圧に変換し、キャリアスケルチ制御用の信号であるRSSI信号を生成する。(E)上記(D)で生成されたRSSI信号から上記(C)で直流化された雑音信号を減算し、SQ判定回路21へ入力する。(F)SQ判定回路21は入力したRSSI信号のレベルから雑音信号のレベルを差し引いた判定信号が設定されたある一定レベルを超えた場合、スイッチ回路(SQSW)20を切替え、復調器18で復調された音声を低域フィルタ19で帯域制限(0~3kHzの音声が通過)された受信音声信号を出力する。判定信号が設定されたある一定レベル以下の場合、スイッチ回路(SQSW)20は受信音声信号を遮断する。
【0020】
次に、干渉時および希望波が入力された場合の動作について図4、5を用いて説明する。図4は近接の送信機と干渉した場合の受信機が復調した信号例を示す図である。図5は希望波が入感した場合の受信機が復調した信号例を示す図である。
【0021】
図4に示すように、干渉時(近接の送信機からの送信雑音)の復調信号は、ノイズとなり広帯域(音声帯域周波数及び高域帯域周波数)に渡って信号レベルが増加する。この高域帯域周波数の信号(ノイズ)を音声除去回路22および整流子23のノイズスケルチ機能により検出し、RSSI信号のレベルをノイズスケルチ機能により検出したノイズのレベルで補正してキャリアスケルチ機能のSQ判定回路21で判定する。ノイズのレベルが大きいときは補正されたRSSI信号のレベルは小さくなるので、SQ判定回路21は干渉時と判定し、スケルチ動作させスイッチ回路(SQSW)20により復調信号(受信音声信号出力)を遮断する。
【0022】
一方、希望波が入感した場合は、図5に示すように、音声帯域周波数には復調した音声レベルが増加し、高域帯域周波数のレベルは低下する。この場合、RSSI信号のレベルは増加し、ノイズスケルチ機能により検出したノイズのレベルは低下するため、補正されたRSSI信号は小さくならないので、SQ判定回路21は希望波と判定し、スイッチ回路(SQSW)20により受信音声信号を出力する。
【0023】
これにより、妨害波による干渉か希望波による受信を判定することができる。
【0024】
本実施形態によれば、運用周波数の変更となり、実質非常に困難である周波数離隔が必要でなく、また、空中線の接地する建築物の建設など設備面で非常に費用がかかる空中線間隔の離隔が必要ではなく、A/DコンバータやFPGA等の安い部品のみでノイズスケルチ機能を構成して干渉を対策することが可能である。
【0025】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0026】
10・・・振幅変調無線機
11・・・アンテナ
12・・・可変アッテネータ
13・・・周波数変換器
14・・・帯域フィルタ
15・・・増幅器
16・・・整流子
17・・・時定数回路
18・・・復調器
19・・・低域フィルタ
20・・・スイッチ回路(SQSW)
21・・・SQ判定回路
22・・・音声除去回路
23・・・整流子
24・・・減算器
図1
図2
図3
図4
図5